(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非特許文献1に開示されている位置標定システム1を、例えば、倉庫内や工場内における荷物や資材等の管理に適用すれば、荷物や資材等が置かれている位置を正確に把握することができ、荷物や資材等の管理を効率よく正確に行うことができる。
【0005】
しかし荷物や資材等が積層されて管理される場合や棚等に収納されて管理される場合には、平面的な位置だけでなく、荷物や資材が何段目に積載されているのか、荷物や資材が何段目の棚に置かれているのかといった、高さに関する情報まで簡便に把握することができればより一層便利である。
【0006】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたもので、位置標定システムを用いた高さ標定システム、及び高さ標定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一つは、
移動端末と、隣接して配置された複数のアンテナを有する基地局とを含み、前記移動端末が、当該移動端末の位置の標定に用いる無線信号である位置標定信号を送信し、前記基地局が、前記アンテナの夫々によって受信される前記位置標定信号の位相差Δθに基づき、当該基地局からみた前記移動端末が存在する方向Δφを求め、求めた前記方向Δφに基づき前記移動端末の位置標定を行う位置標定システムを用いて実現される、高さ標定システムであって、
前記移動端末が設けられた移動体が移動する平面から高さHの位置に前記基地局を設け、
前記移動体の不動部分の前記平面から高さh
1の位置に第1の前記移動端末を設け、
前記移動体の可動部分に第2の前記移動端末を設け、
前記基地局は、
前記高さH及び前記高さh
1を記憶し、
前記移動体が位置Xに存在する時に前記第1の移動端末について前記位置標定を行うことにより、前記基地局からみた前記第1の移動端末が存在する方向Δφ
1を取得し、
前記高さh
1及び前記方向Δφ
1を次式に代入することにより、前記移動体が位置Xに存在する時の、前記基地局の直下から前記第1の移動端末の直下までの前記平面上の距離d
1を求め、
d
1=(H−h
1)×tanΔφ
1
前記移動体が前記位置Xに存在する時に前記第2の移動端末について位置標定を行うことにより、前記基地局からみた前記第2の移動端末が存在する方向Δφ
2を取得し、
前記方向Δφ
2及び前記距離d
1を次式に代入することにより、前記移動体が前記位置Xに存在する時の前記第2の移動端末の前記平面からの高さh
2を求めることとする。
d
1=(H−h
2)×tanΔφ
2
【0008】
本発明によれば、既知である第1移動端末の高さh
1と、第1の移動端末について位置標定を行うことにより求まる第1の移動端末が存在する方向Δφ
1とに基づき、第1の移動端末の現在位置d
1を求め、求めた現在位置d
1と、第2の移動端末について位置標定を行うことにより求まる第2の移動端末が存在する方向Δφ
2とに基づき、第2の移動端末の高さh
2を求めるので、移動体の現在位置d
1が既知でない場合であっても、移動体が任意の位置Xに存在するときの第2の移動端末の高さh
2を簡便に取得することができる。
【0009】
本発明の他の一つは、上記高さ標定システムであって、前記移動体は、荷物が搭載された運搬車であり、前記不動部分は前記運搬車の本体部分であり、前記可動部分は前記本体部分に搭載された荷物であることとする。
【0010】
このように第1の移動端末を不動部分である運搬車の本体部分に設け、第2の移動端末を可動部分である荷物に取り付けた場合には、位置標定システムが位置標定の対象とするエリア内のいずれの位置に運搬車が存在していても、これに搭載されている荷物の高さを正確に特定することができる。このため、例えば運搬車が保管場所に移動して荷物の棚上げや棚卸しを行うような場合には、荷物が棚の何段目に置かれているかといった情報まで細かく管理することができる。
【0011】
本発明の他の一つは、移動端末と、隣接して配置された複数のアンテナを有する基地局とを含み、前記移動端末が、当該移動端末の位置の標定に用いる無線信号である位置標定信号を送信し、前記基地局が、前記アンテナの夫々によって受信される前記位置標定信号の位相差Δθに基づき、当該基地局からみた前記移動端末が存在する方向Δφを取得し、求めた前記方向Δφに基づき前記移動端末の位置標定を行う位置標定システムを用いて実現される、高さ標定システムであって、
前記移動端末が設けられた移動体が移動する平面から高さHの位置に前記基地局を設け、
前記移動体の可動部分に前記移動端末を設け、
前記基地局は、
前記高さH、及び前記移動端末が定位置に存在する時の高さh
1を記憶し、
前記移動体が位置Xに存在し、かつ、前記移動端末が前記定位置に存在する時に前記移動端末について前記位置標定を行うことにより、前記基地局からみた前記移動端末が存在する方向Δφ
1を取得し、
前記高さh
1及び求めた前記方向Δφ
1を次式に代入することにより、前記移動体が位置Xに存在する時の、前記基地局の直下から前記移動端末の直下までの前記平面上の距離d
1を求め、
d
1=(H−h
1)×tanΔφ
1
前記移動端末が前記定位置以外の高さh
2に存在する時に前記移動端末について位置標定を行うことにより、前記基地局からみた前記移動端末が存在する方向Δφ
2を取得し、
前記方向Δφ
2及び前記距離d
1を次式に代入することにより前記高さh
2を求めることとする。
d
1=(H−h
2)×tanΔφ
2
【0012】
このように移動体の可動部分に移動端末を設け、移動体が位置Xに存在し、かつ、移動体に移動端末が高さh
1の定位置に存在する時に位置標定を行うことにより取得される移動端末が存在する方向Δφ
1と高さh
1とに基づき移動端末の現在位置d
1を求め、求めた現在位置d
1と、移動体が位置Xに存在し、かつ、移動端末が上記定位置以外の位置h
2に存在する時に位置標定を行うことにより取得される移動端末が存在する方向Δφ
2とに基づき位置h
2を求めるので、移動体の現在位置d
1が既知でない場合であっても、移動体が任意の位置Xに存在するときの移動端末の高さh
2を求めることができる。また本発明によれば、移動体の可動部分に単数の移動端末を設けるだけで、移動端末の高さh
2を簡便に取得することができる。
【0013】
尚、前記移動端末は、例えば、自身が現在前記定位置に存在するか否かを判断するための情報を提供するセンサを有し、自身が現在定位置に存在する場合にその旨を示す情報を前記基地局に通知し、前記基地局は、前記通知に基づき前記移動端末が前記定位置に存在するか否かを判断する。
【0014】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、位置標定システムを用いて移動端末の高さに関する情報を簡便に取得することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
=位置標定システム=
図1に実施形態として説明する位置標定システム1の概略的な構成を示している。位置標定システム1は、例えば、人、荷物、貨物などの移動体3の現在位置を監視するシステム、移動体3の道案内や移動体3の目的地までの誘導を行うシステムなどに広く適用することができる。
【0018】
位置標定システム1はシステム管理センタやシステム監視センタなどに設けられるサーバ装置10、位置標定システム1が適用される地域の各所に設けられる複数の基地局20、及び移動体3に携帯もしくは取り付けられる移動端末30を含む。
【0019】
基地局20は、移動体3が移動する平面Zから所定の高さ位置に設けられる。例えば、位置標定システム1が屋内で用いられる場合には、基地局20は柱や建物の壁などに設けられる。また例えば、位置標定システム1が屋外で用いられる場合には、基地局20は電柱や鉄塔などに設けられる。
【0020】
基地局20及び移動端末30は、いずれもサーバ装置10と通信ネットワーク5を介して通信可能に接続している。通信ネットワーク5は、有線もしくは無線による通信手段であって、例えば、専用線、公衆回線、インターネット等である。
【0021】
図2にサーバ装置10の主なハードウエアを示している。同図に示すように、サーバ装置10は、中央処理装置11(CPU、MPU等)、記憶装置12(半導体メモリ(RAM、ROM、NVRAM等)、ハードディスク装置等)、入力装置13(キーボードやマウス等)、表示装置14(液晶ディスプレイ等)、サーバ装置10を通信ネットワーク5に接続する通信インタフェース15(NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール等)などを備える。このうち表示装置14には、例えば、移動体3の現在位置や移動方向などを示す情報がリアルタイムに表示される。同図に示すように、サーバ装置10の各構成要素はバス18を介して互いに通信可能に接続されている。
【0022】
図3にサーバ装置10が備える主な機能を示している。同図に示すように、サーバ装置10は、情報収集部101、情報提供部102、及び設定情報記憶部103を備える。これらの機能は、サーバ装置10が備えるハードウエアによって、もしくは、サーバ装置10の中央処理装置11が、記憶装置12に格納されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0023】
情報収集部101は、基地局20又は移動端末30から随時送られてくる、移動端末30の現在位置などの情報を受信して管理する。
【0024】
情報提供部102は、例えば、基地局20又は移動端末30に対して、移動体3の現在位置や移動方向などの監視情報、移動体3の安全確保に関する情報や道案内情報、目的地までの誘導情報、現在位置周辺の地理情報などを提供する。
【0025】
設定情報記憶部103は、例えば、基地局20の設置位置を示す情報(緯度、経度、設置高さ等)を設定情報として記憶する。
【0026】
図4に移動端末30の主なハードウエアを示している。同図に示すように、移動端末30は、中央処理装置31(CPU、MPU等)、記憶装置32(半導体メモリ(RAM、ROM、NVRAM等)、ハードディスク装置等)、後述する位置標定信号800の送信や他の装置との間での無線通信を行う無線通信インタフェース33(NIC、無線通信モジュール等)、無線通信インタフェース33によって行われる無線通信に用いられるアンテナ34、入力装置35(タッチパネル、操作ボタン等)、表示装置36(液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等)、及び端末状態検知センサ38を備える。尚、これらの各構成要素はバス39を介して互いに通信可能に接続されている。
【0027】
アンテナ34は、例えば、指向性アンテナである。アンテナ34は、移動端末30の筐体と一体に設けられていてもよいし、移動端末30の筐体とは別体に設けられていてもよい。移動端末30を壁等の障害物が存在する屋内等で用いる場合には、アンテナ34は円偏波指向性アンテナであることが望ましい。円偏波の反射波(又は定在波)の偏波面は、壁等の障害物で反射した際に反転するが、円偏波指向性アンテナを用いることで、反射波や定在波を効果的に減衰させることができる。
【0028】
端末状態検知センサ38は、例えば、加速度センサなどを用いて構成されている。端末状態検知センサ38は、移動端末30の現在の状態(例えば、3軸方向の加速度、3軸方向の速度等)を示す情報を出力する。
【0029】
図5に移動端末30が備える主な機能を示している。同図に示すように、移動端末30は、位置標定信号送信部301、情報送受信部302、情報表示部303、及び端末状態取得部304を備える。これらの機能は、移動端末30が備えるハードウエアによって、もしくは、移動端末30の中央処理装置31が記憶装置32に格納されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0030】
上記機能のうち、位置標定信号送信部301は、移動端末30の位置の標定に用いられる無線信号(以下、位置標定信号800と称する)を無線通信インタフェース33から送信する。位置標定信号送信部301は、例えば短い時間間隔で繰り返し(例えば周期的に)位置標定信号800を送信する。
【0031】
情報送受信部302は、無線通信インタフェース33による無線通信や通信ネットワーク5による有線通信によりサーバ装置10もしくは基地局20と通信し、移動体3に提示するための情報の受信(ダウンロード)や、サーバ装置10もしくは基地局20において用いられる各種情報の送信(アップロード)などを行う。
【0032】
情報表示部303は、移動体3である人などに提示する情報を表示装置36に出力する。
【0033】
端末状態取得部304は、端末状態検知センサ38が出力する情報に基づき、移動端末30が現在静止しているか否かを示す情報(以下、端末状態情報と称する。)を生成する。例えば、状態取得部305は、加速度センサによって取得される直近の所定時間内における移動端末30に作用した加速度の履歴、速度センサによって取得される直近の所定時間内における移動端末30の速度の履歴などに基づき、移動端末30が現在静止しているか否か(移動端末30が定位置にあるか否か)を判断する。
【0034】
図6に基地局20の主なハードウエアを示している。同図に示すように、基地局20は、中央処理装置21(CPUやMPU等)、記憶装置22(半導体メモリ(RAM、ROM、NVRAM等)、ハードディスク装置等)、基地局20を通信ネットワーク5に接続するための通信インタフェース23(NIC、無線通信モジュール等)、無線通信を行う無線通信インタフェース24(無線通信モジュール等)、複数のアンテナ25a〜25d(第2アンテナ)(以下の説明においてこれらをアンテナ25と総称することがある。)、及びアンテナ切替スイッチ26を備える。これらの各構成要素は、バス28を介して通信可能に接続されている。
【0035】
中央処理装置21は、記憶装置22に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、基地局20の様々な機能を実現する。無線通信インタフェース24は、移動端末30から送信された位置標定信号800を受信する。
【0036】
アンテナ25は、いずれも指向性アンテナである。アンテナ切替スイッチ26は、複数のアンテナ25a〜25dのうちのいずれかを順次選択してアンテナ25を無線通信インタフェース24に接続する。尚、位置標定システム1を壁等の障害物が存在する屋内等で用いる場合には、アンテナ25として円偏波指向性アンテナを用いることが好ましい。円偏波の反射波(又は定在波)の偏波面は壁等での反射時に反転するので、アンテナ25として円偏波指向性アンテナを用いることで反射波(又は定在波)を効果的に減衰させることができるからである。
【0037】
図7に基地局20が備える主な機能を示している。同図に示すように、基地局20は、通信処理部201、位置標定信号受信部202、設定情報記憶部203、位置標定部204、及び高さ標定部205を備える。尚、これらの機能は、基地局20が備えるハードウエアによって、もしくは、基地局20の中央処理装置21が記憶装置22に格納されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0038】
通信処理部201は、通信インタフェース23や無線通信インタフェース24を制御して移動端末30やサーバ装置10との間でデータの送信又は受信を行う。
【0039】
位置標定信号受信部202は、無線通信インタフェース24及びアンテナ切替スイッチ26を制御して移動端末30から送信された位置標定信号800を受信する。
【0040】
設定情報記憶部203は、前述した設定情報(例えば、当該基地局20の現在位置を示す情報(緯度、経度、高さH)、後述する、第1の移動端末30の高さh
1、後述する、移動端末30が定位置にある時の高さh
1等)を記憶する。
【0041】
位置標定部204は、移動体3(移動端末30)の位置標定を実施するタイミング(例えば、位置標定信号800を受信した時、予め設定した時刻が到来した時、移動体3の状態が変化した時(移動端末30の取り付け位置が変更された時)等)が到来すると、位置標定信号受信部202が受信した位置標定信号800に基づき移動端末30の現在位置を標定する。位置標定部204によって標定された移動端末30の現在位置は、通信処理部201によってサーバ装置10や移動端末30に随時送信されて様々な目的に利用される。位置標定の仕組みの詳細については後述する。
【0042】
高さ標定部205は、後述する仕組みにより、第2の移動端末30bの高さh
2、もしくは移動端末30の高さh
2を求める。
【0043】
<位置標定の原理>
次に位置標定システム1によって行われる移動端末30の現在位置の標定の仕組みについて説明する。尚、以下の説明の前提として、移動端末30は、十分に短い時間間隔で繰り返し位置標定信号800を送信するものとする。また基地局20は、4つのアンテナ25a〜25dを十分に短い周期で切り換えながら位置標定信号800を受信するものとする。
【0044】
図8に移動端末30のアンテナ34から送信される位置標定信号800の一例を示している。同図に示すように、位置標定信号800は、制御信号811、測定信号812、端末情報813、及び端末状態情報814を含む。このうち制御信号811は、変調波や各種の制御信号を含む。また測定信号812は、数m秒程度の無変調波(例えば、基地局20に対する移動端末30の存在する方向や基地局20に対するその移動端末30までの相対距離の検出に用いる信号(例えば、2048チップの拡散符号))を含む。端末情報813には、その移動端末30の端末IDが含まれる。端末状態情報814には、前述した端末状態情報が設定される。
【0045】
図9に基地局20と移動端末30の位置関係を示している。同図に示すように、基地局20は、移動体3が移動する平面Zから高さH(m)の位置に固定されている。また移動端末30は平面Zから高さh(m)の位置に存在する。尚、平面Z上、基地局20の直下から移動端末30の直下までの直線距離はL(m)である。
【0046】
図10に基地局20に設けられる4つのアンテナ25a〜25dを示している。同図に示すように、4つのアンテナ25a〜25dは、夫々、位置標定信号800の1波長(例えば、位置標定信号800として2.4GHz帯の電波を用いた場合は波長λ=12.5cm)以下の間隔(例えば3cm)を空けて平面的に略正方形状に隣接配置されている。尚、4つのアンテナ25a〜25dは、いずれも指向性アンテナ(例えば、円偏波指向性アンテナ)であり、これらのいずれについてもその指向方向は斜め下方向に向けられている。
【0047】
同図において、アンテナ25の高さ位置における水平方向とアンテナ25に対する移動端末30の方向とのなす角をαとすれば、これらの間には次の関係がある。
α=arcTan(D(m)/L(m))=arcSin(ΔL(cm)/3(cm))
・・・式1
【0048】
尚、ΔL(cm)は、アンテナ25を構成しているアンテナ25a〜25dのうち、特定の2つのアンテナ25と移動端末30との間の伝搬路長の差(以下、これを経路差とも称する。)である。
【0049】
ここで4つのアンテナ25a〜25dのうち、特定の2つのアンテナ25で受信される位置標定信号800の位相差をΔθとすれば、次の関係がある。
ΔL(cm)=Δθ/(2π/λ(cm)) ・・・式2
【0050】
ここで例えば位置標定信号800が2.4GHz帯の電波(波長λ=12.5(cm))である場合は
α=arcSin(Δθ/π) ・・・式3
となり、測定可能範囲(−π/2<Δθ<π/2)においてα=Δθ(ラジアン)となり、位相差Δθから基地局20が存在する方向αを特定することができる。
【0051】
尚、
図11に示すように、基地局20のアンテナ25の平面Zからの高さをH、移動端末30の平面Zからの高さをhとし、基地局20の直下の平面Z上の位置を原点として平面Z上に直交座標(X,Y)を設定し、上記方向αから求まる、基地局20から移動端末30の方向とX軸とがなす角をΔφ(x)、上記方向αから求まる、基地局20から移動端末30の方向とY軸とがなす角をΔφ(y)とすれば、原点に対する移動端末30の位置Δd(x),Δd(y)は次式から求めることができる。
Δd(x)=(H−h)×Tan(Δφ(x)) ・・・式4
Δd(y)=(H−h)×Tan(Δφ(y)) ・・・式5
【0052】
そして基地局20から平面Zに下ろした垂線が平面Zと交わる点を原点(X1,Y1)とすれば、移動端末30の現在位置(Xx,Yy)は次式から求めることができる。
Xx=X1+d(x) ・・・式6
Yy=Y1+d(y) ・・・式7
【0053】
尚、移動端末30の位置をd、位置標定により取得される基地局20から見た移動端末30が存在する方向をΔφとすれば、式4,5は、座標系を特定しない、次の形で表わすことができる。
d=(H−h)×tanΔφ ・・・式8
【0054】
以上に説明した位置標定の原理については、例えば、特開2004−184078号公報、特開2005−351877号公報、特開2005−351878号公報、及び特開2006−23261号公報等に詳述されている。
【0055】
=高さ標定システム=
次に以上に説明した位置標定システム1を用いて構成した、移動体3によって運搬される荷物や資材等の運搬物の高さを標定するシステム(以下、高さ標定システム2と称する。)について説明する。高さ標定システム2は、例えば、倉庫や工場の敷地内でフォークリフトや運搬車両、台車などによって運搬される荷物や資材等の所在の管理を支援するための環境をユーザに提供する。
【0056】
<第1実施例>
図12に第1実施例として説明する高さ標定システム2の概略的な構成を示している。同図に示すように、第1実施例では、移動体3の不動部分3aに第1の移動端末30aを、移動体3の可動部分3bに第2の移動端末30bを設けている。尚、移動体3が例えばフォークリフトである場合、不動部分3aは例えばフォークリフトの本体部分であり、可動部分3bはフォークリフトのフォークやフォークリフトによって運搬される荷物や資材などである。
【0057】
同図に示すように、第1の移動端末30aは移動体3の不動部分3aに固定されており、移動体3が平面上を移動してもその高さh
1は一定である。一方、第2の移動端末30bは移動体3の可動部分3bに設けられており、その高さh
2は可動部分3bの動きに応じて変化する。
【0058】
基地局20は、自身の平面からの高さH、及び第1の移動端末30aの高さh
1を記憶している。基地局20は予め記憶している自身の平面からの高さH、及び第1の移動端末30aの高さh
1を用いて、次のようにして第2の移動端末30bの高さh
2を取得する。
【0059】
まず基地局20は、第1の移動端末30aについて位置標定を実施し、基地局20からみた第1の移動端末30aが存在する方向Δφ
1を取得する。
【0060】
続いて基地局20は、記憶している自身の高さH、記憶している第1の移動端末30aの高さh
1、及び取得した方向Δφ
1を次式に代入することにより、移動体3が位置Xに存在する時の、基地局20の直下から第1の移動端末30aの直下までの平面上の距離d
1を求める。
d
1=(H−h
1)×tanΔφ
1 ・・・式9
【0061】
尚、距離d
1と基地局20の直下から第2の移動端末30bの直下までの平面上の距離d
2との差は距離d
1に比べて十分に小さく、これらはほぼ一致する(d
1≒d
2)ものとする。
【0062】
次に基地局20は、移動体3が位置Xに存在する時に第2の移動端末30bについて位置標定を実施し、基地局20からみた第2の移動端末30bが存在する方向Δφ
2を取得する。
【0063】
そして基地局20は、記憶している自身の高さH、取得した方向Δφ
2、及び求めた距離d
1を次式に代入することにより、移動体3が位置Xに存在する時の第2の移動端末30bの高さh
2を求める
d
1=(H−h
2)×tanΔφ
2 ・・・式10
【0064】
図13は以上の方法により基地局20が第2の移動端末30bの高さh
2を取得しようとして行う処理(以下、高さ標定処理S1300と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともに高さ標定処理S1300について説明する。
【0065】
同図に示すように、基地局20は、第2の移動端末30bの高さh
2の標定を開始するか否かを随時判断している(S1311)。尚、基地局20は、例えば、予め設定された時刻が到来したこと、位置標定システム1による移動体3の位置標定を行った結果、移動体3が所定の位置に到達したことを検知したこと(例えば、移動体3が荷物や資材等の収納先の棚の近傍に到達したこと)などを契機として、第2の移動端末30bの高さh
2の標定を開始する。
【0066】
基地局20は、第2の移動端末30bの高さの標定を開始すると(S1311:YES)、第1の移動端末30aからの位置標定信号800(以下、第1位置標定信号800と称する。)の受信を待機する(S1312)。尚、第1の移動端末30aは、第1位置標定信号800を短い時間間隔で繰り返し(例えば周期的に)送信しているものとする。
【0067】
基地局20は、第1の移動端末30aから第1位置標定信号800を受信すると(S1312:YES)、第1の移動端末30aの位置標定を実施して第1の移動端末30aが存在する方向Δφ
1を取得する(S1313)。そして基地局20は、記憶している自身の高さH、記憶している第1の移動端末30aの高さh
1、及び取得した方向Δφ
1を、前述した式9に代入することにより、第1の移動端末30aの現在位置(距離d
1)を求める(S1314)。
【0068】
次に基地局20は、第2の移動端末30bからの位置標定信号800(以下、第2位置標定信号800と称する。)の受信を待機する(S1315)。尚、第2の移動端末30bは、第2位置標定信号800を短い時間間隔で繰り返し(例えば周期的に)送信しているものとする。
【0069】
基地局20は、第2の移動端末30bから第2位置標定信号800を受信すると(S1315:YES)、第2の移動端末30bの位置標定を実施して第2の移動端末30bが存在する方向Δφ
2を取得する(S1316)。そして基地局20は、記憶している自身の高さH、取得した方向Δφ
2、及び求めた距離d
1を前述した式10に代入することにより、第2の移動端末30bの高さh
2を求める(S1317)。
【0070】
以上に説明したように、高さ標定システム2によれば、第2の移動端末30bの高さh
2を簡便に取得することができる。そしてこれにより、例えば、倉庫内や工場内における荷物や資材等の管理を行おうとする場合、荷物や資材等の高さを自動的に把握することができ、例えば、荷物や資材が現在、何段目に積載されているのか、荷物や資材が何段目の棚に置かれているのかといった情報まで細かく把握することができる。
【0071】
また以上に説明したように、基地局20は、第2の移動端末30bの高さh
2を求める際に必要となる移動体3の現在位置(第1の移動端末30aの距離d
1)を、第1の移動端末30aについて位置標定を実施することにより取得するので、移動体3が、基地局20が位置標定を行うことが可能ないずれの位置に存在する場合でも、第2の移動端末30bの正確な高さh
2を確実に取得することができる。
【0072】
尚、以上のようにして取得された第2の移動端末30bの高さh
2は、例えば、サーバ装置10や移動端末30に送信されてサーバ装置10もしくは移動端末30がユーザに提供するサービスに用いることができる。
【0073】
<第2実施例>
図14に第2実施例として説明する高さ標定システム2の概略的な構成を示している。同図に示すように、第2実施例では、移動体3の可動部分3bに移動端末30を設けている。尚、移動体3が例えばフォークリフトである場合、不動部分3aは例えばフォークリフトの本体部分であり、可動部分3bはフォークリフトのフォークやフォークリフトによって運搬される荷物や資材などである。
【0074】
移動端末30は移動体3の可動部分3bに固定されており、その高さhは可動部分3bが移動することにより変化する。
【0075】
基地局20は、自身の平面からの高さH、及び移動端末30が定位置にある時(例えばフォークリフトのフォークが最下点にある時)の移動端末30の高さh
1を記憶している。そして基地局20は、予め記憶している自身の平面からの高さH、及び移動端末30が定位置にある時の移動端末30の高さh
1を用いて、次のようにして移動端末30が上記定位置以外にある時の移動端末30の高さh
2を取得する。
【0076】
まず基地局20は、移動端末30が定位置にある時(移動端末30の高さがh
1の時)に移動端末30について位置標定を実施し、基地局20からみた移動端末30が存在する方向Δφ
1を取得する。尚、移動端末30が定位置(高さh
1)にあるか否かは、例えば、移動端末30から送られてくる位置標定信号800に含まれている、前述した端末状態情報に基づき判断する。例えば、基地局20は、移動端末30に現在、重力の加速度が作用していない場合に移動端末30が定位置にあると判断する。
【0077】
続いて基地局20は、自身の高さH、移動端末30が定位置にある時の移動端末30の高さh
1、及び取得した方向Δφ
1を次式に代入することにより、基地局20の直下から移動端末30の直下までの平面上の距離d
1を求める。
d
1=(H−h
1)×tanΔφ
1 ・・・式12
【0078】
次に基地局20は、当該移動端末30についての位置標定を再度実施して、基地局20からみた移動端末30が存在する方向Δφ
2を取得する。そして基地局20は、記憶している自身の高さH、取得した方向Δφ
2、及び求めた距離d
1を次式に代入することにより、移動端末30が定位置以外の位置にある時の移動端末30の高さh
2を求める
d
1=(H−h
2)×tanΔφ
2 ・・・式13
【0079】
図15は以上の方法により基地局20が移動端末30の高さh
2を取得しようとして行う処理(以下、高さ標定処理S1500と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともに高さ標定処理S1500について説明する。
【0080】
同図に示すように、基地局20は、移動端末30の高さh
2の標定を開始するか否かを随時判断している(S1511)。基地局20は、例えば、予め設定された時刻(周期的、スケジュールされた時刻等)が到来した場合に移動端末30の高さh
2の標定を開始する。また基地局20は、例えば、位置標定システム1の標定結果等から移動体3が所定の位置に到達したことを検知した場合(例えば、移動体3が荷物や資材等の収納先の棚の近傍に到達した場合)に移動端末30の高さh
2の標定を開始する。
【0081】
基地局20は、移動端末30の高さの標定を開始することを決定すると(S1511:YES)、移動端末30からの位置標定信号800の受信を待機する(S1512)。尚、移動端末30は、位置標定信号800を、連続的にもしくは短い時間間隔で繰り返し送信しているものとする。
【0082】
基地局20は、移動端末30から位置標定信号800を受信すると(S1512:YES)、受信した位置標定信号800の端末状態情報814に基づき、移動端末30が現在、定位置にあるか否かを判断する(S1513)。移動端末30が現在、定位置にある場合は(S1513:YES)S1514に進み、移動端末30が現在、定位置にない場合は(S1513:NO)、S1512に戻る。
【0083】
S1514では、基地局20は、受信した位置標定信号800に基づき、移動端末30の位置標定を実施して移動端末30が存在する方向Δφ
1を取得する。そして基地局20は、自身の高さH、移動端末30が定位置にある時の移動端末30の高さh
1、及び取得した方向Δφ
1を前述した式12に代入することにより、移動端末30の現在位置(距離d
1)を求める(S1515)。
【0084】
次に基地局20は、移動端末30からの位置標定信号800の受信を待機する(S1516)。基地局20は、位置標定信号800を受信すると(S1516:YES)、移動端末30の位置標定を実施して、移動端末30が存在する方向Δφ
2を取得する(S1517)。そして基地局20は、記憶している自身の高さH、取得した方向Δφ
2、及び求めた距離d
1を前述した式13に代入することにより、移動端末30の高さh
2を求める(S1518)。
【0085】
以上に説明したように、この高さ標定システム2によれば、移動端末30の高さh
2を簡便に取得することができる。そしてこれにより、例えば、倉庫内や工場内における荷物や資材等の管理を行おうとする場合、荷物や資材等の高さを把握することができ、例えば、荷物や資材が現在、何段目に積載されているのか、荷物や資材が何段目の棚に置かれているのかといった情報まで細かく把握することができる。
【0086】
また以上に説明したように、基地局20は、移動端末30の高さh
2を求める際に必要となる移動体3の現在位置(距離d
1)を、移動端末30についての位置標定を実施することにより取得するので、移動体3が、基地局20が位置標定を行うことが可能ないずれの位置に存在する場合でも、移動端末30の正確な高さh
2を確実に取得することができる。
【0087】
また第2実施例の高さ標定システム2によれば、可動部分3bに単数の移動端末30を設けるだけで、移動端末30の高さh
2を取得することができる。また可動部分3bが定位置h
1にあるか否か等は、例えば、移動端末30から送られてくる位置標定信号800に含まれている、移動端末30に搭載された簡易なセンサから取得された端末状態情報に基づき判断するので、移動端末30等に特別な仕組みを設けることなく移動端末30の高さh
2を取得する仕組みを実現することができる。
【0088】
尚、以上のようにして取得された移動端末30の高さh
2は、例えば、サーバ装置10や移動端末30に送信されてサーバ装置10もしくは移動端末30がユーザに提供するサービスに用いることができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0090】
例えば、以上の実施形態では、移動端末30のアンテナ34から位置標定信号800を送信し、基地局20のアンテナ25でこれを受信して位置標定を行うようにしているが、これとは逆に位置標定信号800を基地局20から送信し、移動端末30が位置標定信号800を受信し、移動端末30が、直接波を受信している可能性の高いアンテナ34を選択し、選択したアンテナ34が受信する位置標定信号800に基づく位置標定を行うようにしてもよい。また移動端末30が標定した当該移動端末30の現在位置を示す情報を、移動端末30から通信ネットワーク5や無線通信によりサーバ装置10や基地局20に送信するようにすれば、サーバ装置10や基地局20において移動体3の現在位置を把握することができる。
【0091】
移動端末30は、例えば、アクティブ型もしくはパッシブ型のRFIDタグとして機能するものであってもよい。この場合、位置標定信号800を、電磁誘導によってRFIDタグが備えるアンテナコイルから自発的にもしくは受動的に、基地局20に送信もしくは基地局20から受信するようにしてもよい。