特許第5964098号(P5964098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5964098自動車内装材用半硬質ポリウレタンフォームの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964098
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】自動車内装材用半硬質ポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/48 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   C08G18/48 F
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-68747(P2012-68747)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-199587(P2013-199587A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113517
【氏名又は名称】BASF INOACポリウレタン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】東 正敏
(72)【発明者】
【氏名】田中 覚
(72)【発明者】
【氏名】徳原 渡
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−208059(JP,A)
【文献】 特開2008−019353(JP,A)
【文献】 特開2011−202026(JP,A)
【文献】 特開2010−052440(JP,A)
【文献】 特開2010−077216(JP,A)
【文献】 特開2011−202051(JP,A)
【文献】 特開平05−287046(JP,A)
【文献】 特開平05−001128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08G 18/00 − 18/87
C08G 71/00 − 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール類、ポリイソシアネート、触媒、発泡剤および整泡剤を含むポリウレタン原料を型に充填して発泡硬化させる自動車内装材用半硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、
前記ポリオール類には、少なくとも、水酸基価150〜280mgKOH/g、数平均分子量600〜1000のひまし油ポリオールと、水酸基価15〜100mgKOH/g、数平均分子量2000〜8000のポリエーテルポリオールと、水酸基価20〜50mgKOH/g、数平均分子量3000〜6000のポリマーポリオールとを併用し、
前記ポリエーテルポリオールは、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの比率が、10:90〜15:85であり、
前記ポリオール類100質量部に対して、前記ひまし油ポリオールを1〜40質量部、前記ポリエーテルポリオールを30〜80質量部、前記ポリマーポリオールを15〜30質量部含み、
前記発泡剤として水を含み、
前記ポリイソシアネートとしてポリメリックMDIを含むことを特徴とする自動車内装材用半硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネル等の自動車内装材に適した半硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、ポリオール類およびイソシアネートを発泡剤および触媒等の存在下反応させて得られるものであり、寝具、自動車内装材などに多用されている。
【0003】
ポリウレタンフォームには、軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、またその中間に位置する半硬質ポリウレタンフォームがあり、半硬質ポリウレタンフォームは良好な衝撃吸収性を有するため、インストルメントパネル等の自動車内装材に多く用いられている。
【0004】
近年、地球環境負荷低減の観点から植物由来のポリオールを用いたポリウレタンフォームが開発されている。
特許文献1には、植物由来のポリオールとしてひまし油ポリオールを用いた自動車座席用ポリウレタンフォームが提案されている。
【0005】
特許文献2には、耐湿熱老化性の向上のため、末端水酸基が2級または3級、かつ水酸基価が20〜350mgKOH/gのひまし油ポリオールを用いてポリウレタンフォームを製造する方法が開示されている。
特許文献3には、ポリウレタンフォームからなる制振吸音材を、ポリオールとしてひまし油ポリオールを用いて製造する方法が開示されている。
特許文献4には、植物由来ポリオール、3級アミノ基を含むポリエーテルポリオール、水、触媒、整泡剤およびポリイソシアネートを混合し、反応させて自動車内装材用のポリウレタンフォームを製造する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、従来の植物由来ポリオール(ひまし油ポリオールを含む)用いるポリウレタンフォームの製造方法では、通常のポリオールを用いる場合よりもモールド成形時の脱型時間が長くなって作業効率が悪くなる問題や高価な高分子量のアミンポリオールが必要になってコストが嵩む問題などがある。なお、モールド成形は、ポリウレタン原料を型(モールド)に充填して発泡させ、その後に発泡体を脱型する成形方法であり、自動車内装材等に用いられるウレタンフォームの製造に多用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−320437号公報
【特許文献2】特開2008−019353号公報
【特許文献3】特開2008−274092号公報
【特許文献4】特開2011−068719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、植物由来であるひまし油ポリオールを用いた自動車内装材用半硬質ポリウレタンフォームを、従来の汎用原料を用いて安価に、かつ短時間で脱型できる製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、ポリオール類、ポリイソシアネート、触媒、発泡剤および整泡剤を含むポリウレタン原料を型に充填して発泡硬化させる自動車内装材用半硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、前記ポリオール類には、少なくとも、水酸基価150〜280mgKOH/g、数平均分子量600〜1000のひまし油ポリオールと、水酸基価15〜100mgKOH/g、数平均分子量2000〜8000のポリエーテルポリオールと、水酸基価20〜50mgKOH/g、数平均分子量3000〜6000のポリマーポリオールとを併用し、前記ポリエーテルポリオールは、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの比率が、10:90〜15:85であり、前記ポリオール類100質量部に対して、前記ひまし油ポリオールを1〜40質量部、前記ポリエーテルポリオールを30〜80質量部、前記ポリマーポリオールを15〜30質量部含み、前記発泡剤として水を含み、前記ポリイソシアネートとしてポリメリックMDIを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリオール類として、少なくとも、水酸基価150〜280mgKOH/g、数平均分子量600〜1000のひまし油ポリオールと、水酸基価15〜100mgKOH/g、数平均分子量2000〜8000のポリエーテルポリオールと、水酸基価20〜50mgKOH/g、数平均分子量3000〜6000のポリマーポリオールとを併用し、ポリエーテルポリオールは、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの比率が、10:90〜15:85であり、ポリオール類100質量部に対して、前記ひまし油ポリオール1〜40質量部、前記ポリエーテルポリオール30〜80質量部、前記ポリマーポリオール15〜30質量部含むことにより、反応のバランスがとれ、ひまし油ポリオールと併用するポリオールに高価なポリオールを使用しなくても、自動車用内装材用に適する半硬質ポリウレタンフォームを短い脱型時間で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明における自動車用内装材用半硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール類、ポリイソシアネート、触媒、発泡剤および整泡剤を含むポリウレタン原料を混合撹拌して型に充填し、発泡硬化させた後、発泡体を脱型するものであり、インストルメントパネル、アームレスト、ドアトリム等の製造に好適なものである。なお、前記型の内面にに予め表皮や基材等をセットするインサート成形も本発明の製造方法に含まれる。また、本発明における自動車用内装材用に適する半硬質ポリウレタンフォームの定義は、JIS K 6400−5:2004に基づく引張強さが300〜800kPa(ダンベル2号)、伸びが30〜150%(ダンベル2号)、引裂強さが10〜25N/cm(4号形試験片)、日本ゴム協会標準規格(SRIS)0101(アスカーC型)硬度が20〜65を満たすウレタンフォームである。
【0013】
本発明において使用するポリオール類には、ひまし油ポリオールとポリエーテルポリオールとポリマーポリオールの三種類が併用される。
前記ひまし油ポリオールは、半硬質ポリウレタンフォームを中硬度(20〜65)で歪みの少ないものとするため、水酸基価(OHV)40〜350mgKOH/g、数平均分子量400〜3200、官能基数が2〜6のものが選択される。さらに水酸基価100〜300mgKOH/g、数平均分子量550〜1500、官能基数2〜4のものがより好ましく、特に水酸基価150〜280、数平均分子量600〜1000が好ましい。前記ひまし油ポリオールの配合量は、前記ポリオール類100質量部中1〜40質量部が好ましい。1質量部より少ない場合には、ひまし油ポリオールの使用料が少なく、環境負荷低減効果が低くなり、一方、40質量部より多い場合には、成形品にボイドやヒケを生じるようになる。
【0014】
前記ポリエーテルポリオールは、多価アルコールなどを開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合したものであり、本発明ではひまし油ポリオールを除くものである。前記多価アルコールは、2官能のものとして、プロピレングリコール、エチレングリコール等、3官能のものとして、グリセリン、トリメチロールプロパン等、4官能のものとしては、ペンタエリスリトール等、6官能のものとしてソルビトール、8官能のものとしてスクロース等を挙げることができる。また、前記ポリエーテルポリオールは、水酸基価(OHV)15〜100mgKOH/g、数平均分子量2000〜8000、官能基数2〜4のものが好ましく、より好ましくは水酸基価25〜60mgKOH/g、数平均分子量2000〜8000、官能基数2〜3のものがより好ましい。さらに、前記ポリエーテルポリオールは、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)の比率が、5:95〜30:70のものが好ましく、特に10:90〜15:85のものがより好ましい。前記ポリエーテルポリオールの配合量は、前記ポリオール類100質量部中25〜80質量部が好ましく、より好ましくは30〜80質量部である。25質量部より少ない場合にはひまし油ポリオールもしくはポリマーポリオールが過剰となり、成形品のヒケやボイドを生じるようになり、一方、80質量部より多い場合にはひまし油ポリオールの使用量が低減してしまうか、ポリマーポリオールの添加量が不足して引張強度や引裂強度、硬度が低下する。
【0015】
前記ポリマーポリオールは、ポリエーテルポリオールに、スチレンまたはアクリロニトリル、あるいはスチレンとアクリロニトリルを重合したものが好ましい。スチレンとアクリロニトリルの比率は0/100〜50/50が好ましい。前記ポリマーポリオールは水酸基価(OHV)20〜50mgKOH/g、数平均分子量3000〜6000、官能基数2〜4のものが好ましく、特に水酸基価20〜40mgKOH/g、数平均分子量4000〜6000、官能基数2〜3のものがより好ましい。前記ポリマーポリオールの配合量は、前記ポリオール類100質量部中10〜35質量部が好ましく、より好ましくは15〜30質量部である。10質量部より少ない場合には引張強度や引裂強度、硬度が低下してしまい、一方、35質量部より多い場合には成形品のヒケやボイドを生じるようになる。
【0016】
前記ポリイソシアネートは、ポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)を含む。ポリメリックMDIは、ウレタンフォームの製造方法において汎用されているイソシアネートである。本発明では、汎用のポリメリックMDIを使用することによっても半硬質ポリウレタンフォームを安価に生産することができる。なお、本発明における前記ポリイソシアネートは、ポリメリックMDIのみに限定されるものではなく、ポリメリックMDIを含むものであればよく、MDI、TD1等を併用してもよいが、ポリメリックMDIのみとするのが特に好ましい。
【0017】
前記ポリイソシアネートの配合量は、イソシアネートインデックス(INDEX)が95〜120となる量が好ましい。イソシアネートインデックスが95未満の場合には引張強度や引裂強度、硬度が低下し、一方120を超えると脆さが発現して、引裂強さが低下する。なお、イソシアネートインデックスは、ポリウレタン原料中の活性水素基(例えば、ポリオールの水酸基、発泡剤として用いられる水などの活性水素基)の合計に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比を百分率で示す値であり、ポリウレタフォームの分野で使用されている指標である。
【0018】
発泡剤は、ポリウレタンフォーム用として公知のものを使用することができる。たとえば、水、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、炭酸ガス等が用いられ、特に水が好適である。発泡剤の配合量は適宜の量とされるが、水の場合には、通常、ポリオール類100質量部に対して1〜3質量部程度とされる。
【0019】
触媒は、ポリウレタンフォーム用として公知のものを使用することができ、特に限定されない。使用可能な触媒として、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等の錫触媒や、フェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)が挙げられる。触媒の配合量は、触媒の種類によって適宜決定されるが、ポリオール類100質量部に対し0.3〜4.0質量部程度が一般的である。
【0020】
整泡剤は、ポリウレタンフォーム用として公知のものを使用することができ、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤及び界面活性剤を挙げることができる。特に、シリコーン系整泡剤は好適なものである。シリコーン系整泡剤としては、シロキサン鎖主体からなるもの、シロキサン鎖とポリエーテル鎖が線状の構造をとるもの、分岐し枝分かれしたもの、ポリエーテル鎖がシロキサン鎖にペンダント状に変性されたもの等が挙げられる。
【0021】
前記ポリウレタン原料には、その他適宜助剤が配合される。助剤としては、例えば鎖延長剤、着色剤、難燃剤、抗菌剤、安定剤、可塑剤等を挙げることができる。鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等の低分子量の多価アルコール類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子量のアミンポリオール類、又はエチレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンビスオルソクロルアニリン等ポリアミン類等を挙げることができる。
【0022】
なお、前記ポリウレレタン原料の型への注入は、公知の注入装置(低圧注入装置、高注入装置)を用いて行なわれる。また、前記ポリウレタン原料の型への注入は、型を開いた状態で注入し、その後に型を閉じるオープン注入、あるいは型を閉じた状態で型に形成されている注入口から注入するクローズド注入の何れであってもよい。
【実施例】
【0023】
以下、実施例及び比較例を具体的に示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
後述の表1〜表5に示す配合からなるポリウレタン原料480gを高圧成形機(PEC社製PU-30)を使用して、試作用の300×1000×10mmの矩形の型に充填し、その後に脱型することにより、自動車内装品用の半硬質ポリウレタンフォームをモールド成形した。使用した原料は以下の通りである。
(1)ひまし油ポリオール1:水酸基価32mgKOH/g、数平均分子量3510、平均官能基数2
(2)ひまし油ポリオール2:水酸基価50mgKOH/g、数平均分子量3000、平均官能基数2.7
(3)ひまし油ポリオール3:水酸基価160mgKOH/g、数平均分子量950、平均官能基数2.7
(4)ひまし油ポリオール4:水酸基価270mgKOH/g、数平均分子量620、平均官能基数3
(5)ひまし油ポリオール5:水酸基価340mgKOH/g、数平均分子量500、平均官能基数3
(6)ポリエーテルポリオール1:水酸基価28mgKOH/g、数平均分子量8000、平均官能基数4
(7)ポリエーテルポリオール2:水酸基価33mgKOH/g、数平均分子量5000、平均官能基数3
(8)ポリエーテルポリオール3:水酸基価29mgKOH/g、数平均分子量4000、平均官能基数2
(9)ポリエーテルポリオール4:水酸基価56mgKOH/g、数平均分子量2000、平均官能基数2
(10)ポリエーテルポリオール5:水酸基価102mgKOH/g、数平均分子量1100、平均官能基数2
(11)ポリマーポリオール1:水酸基価43mgKOH/g、数平均分子量3000、平均官能基数3、スチレン/アクリロニトリル比50:50、ポリマー含有量26%
(12)ポリマーポリオール2:水酸基価28mgKOH/g、数平均分子量5000、平均官能基数2.7、スチレン/アクリロニトリル比0:100、ポリマー含有量20%
(13)ポリマーポリオール3:水酸基価21mgKOH/g、数平均分子量6000、平均官能基数3、スチレン/アクリロニトリル比50:50、ポリマー含有量40%
(14)鎖延長剤1:水酸基価795mgKOH/gである3級アミンポリオール、数平均分子量350、平均官能基数5
(15)触媒1:水酸基価989mgKOH/gであるTEDA33%含有のジプロピレングリコール溶液、品番:ダブコ33LV、三共エアプロダクト社製
(16)触媒2:水酸基価251mgKOH/gであるビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、品番:カオーライザーNo.12P、花王社製
(17)発泡剤:水
また、ポリイソシアネートは全て汎用のポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)を使用した。
【0024】
以下の表において、ボイドは発泡過程において発生する大きな気泡であり、脱型後のフォームを前記成形後のフォーム表面300×1000mmの片面において目視によって判断し、ボイドが多数ある場合を×、10〜20個ある場合を△、数個ある場合を○、無い場合を◎とした。ヒケは発泡後の収縮によってフォーム表面に発生する凹みで、脱型後のフォーム表面を目視で判断し、外周の30%以上に発生している場合を×、発生はしているが30%以下の場合を△、発生していない場合を○とした。一方、キュア時間は、基本的に1分間、硬化が不十分で脱型しにくい場合は8分間とし、ストップウォッチによって測定した。さらに、脱型後のポリウレタンフォームについてJIS K 6400−5:2004に基づいて引張強さと伸びについてダンベル2号で測定し、引裂強さを4号試験片で測定した。また、硬度(Asker C)について日本ゴム協会標準規格(SRIS)0101(アスカーC型)に準じて測定した。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】
【表5】
【0030】
表1における参考例1〜4は、ポリオール類にひまし油ポリオールを含まない例である。また、表1及び表2の比較例1〜5は、ひまし油ポリオールの量が本発明から外れる例である。
一方、表2の参考例1a、実施例2〜3は、ひまし油ポリオール3とポリエーテルポリオール2、ポリエーテルポリオール3及びポリマーポリオール2の量を本発明の範囲で変化させた例である。具体的に説明すると、参考例1aは、ひまし油ポリオール3を40質量部、ポリエーテルポリオール3を25質量部、ポリマーポリオール2を35質量部にした例、実施例2は、参考例1aにおけるポリエーテルポリオール2を0から20質量部にすると共に、ポリエーテルポリオール3を25質量部から20質量部に減らし、ポリマーポリオール2を35質量部から20質量部に減らした例である。実施例3は、参考例1aにおけるひまし油ポリオール3を40質量部から25質量部に減らし、ポリエーテルポリオール2を0から30質量部にし、ポリマーポリオール2を35質量部から20質量部に減らした例である。
【0031】
表3の比較例6は水酸基価及び数平均分子量が本発明の範囲から外れるひまし油ポリオール1を使用した例、比較例7はひまし油ポリオールの量が本発明の範囲よりも多い例である。一方、表3の参考例4a、実施例5、実施例6、参考例7は、ひまし油ポリオールの種類及び量を異ならせた例である。具体的に説明すると、参考例4aは、実施例2のひまし油ポリオール3の代わりにひまし油ポリオール2を用いてキュア時間を8分とした例である。実施例5は、実施例2のひまし油ポリオール2を40質量部から25質量部に減らし、ポリエーテルポリオール2を20質量部から30質量部に増やし、ポリエーテルポリオール3を20質量部から25質量部に増やした例である。実施例6は実施例2のひまし油ポリオール3の代わりにひまし油ポリオール4を用いた例である。参考例7は実施例2のひまし油ポリオール3の代わりにひまし油ポリオール5を用いた例である。
【0032】
表4の実施例8、参考例9、実施例10、参考例11、実施例12は、実施例2のポリエーテルポリオールの量とポリマーポリオールの種類及び量を変化させた例である。具体的には、実施例8は、実施例2のポリエーテルポリオール2とポリエーテルポリオール3を共に20質量部から15質量部に減らし、ポリマーポリオール2の代わりにポリマーポリオール1を30質量部用いた例である。参考例9は、実施例2のポリエーテルポリオール2を20質量部から10質量部に減らし、ポリエーテルポリオール3を20質量部から15質量部に減らし、ポリマーポリオール2を20質量部から35質量部に増やした例である。実施例10は、実施例2のポリエーテルポリオール2とポリエーテルポリオール3を共に20質量部から15質量部に減らし、ポリマーポリオール2を20質量部から30質量部に増やした例である。参考例11は、実施例2のポリエーテルポリオール2とポリエーテルポリオール3を共に20質量部から25質量部に増やし、ポリマーポリオール2を20質量部から10質量部に減らした例である。実施例12は、実施例2のポリエーテルポリオール2とポリエーテルポリオール3を共に20質量部から15質量部に減らし、ポリマーポリオール2の代わりにポリマーポリオール3を30質量部用いた例である。
【0033】
表5の実施例は、ひまし油ポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリマーポリオールを本発明の範囲で変化させた例である。具体的には、実施例13と実施例14は、ひまし油ポリオール3、ポリエーテルポリオール1及びポリマーポリオール2の量を変化させた例である。実施例10、実施例2及び実施例15は、ひまし油ポリオール3、ポリエーテルポリオール2、ポリエーテルポリオール3及びポリマーポリオール2の量を変化させた例である。実施例16と実施例17は、ひまし油ポリオール3、ポリエーテルポリオール4及びポリマーポリオール2の量を変化させた例である。
一方、表5の比較例8は、水酸基価及び数平均分子量が本発明の範囲から外れるポリエーテルポリオール5を使用した例である。
【0034】
参考例1〜4の半硬質ポリウレタンフォームは、キュア時間が短く、ボイドもヒケも無く、自動車内装材用として好適なものであるが、ひまし油ポリオールを用いていないため、地球環境負荷低減の観点で劣るものである。
参考例1a、実施例2〜3、参考例4a、実施例5、実施例6、参考例7、実施例8、参考例9、実施例10、参考例11、実施例12〜17の半硬質ポリウレタンフォームは、何れもキュア時間が短く、ボイドもヒケも少なく、自動車内装材用として好適なものであり、しかもひまし油ポリオールを使用するため、地球環境負荷低減の観点でも優れるものである。なお、参考例4aについてはキュア時間を1分としたときにはフォームが型に付着して脱型が困難であったためにキュア時間を8分とした。
【0035】
一方、ポリオール類をひまし油ポリオール100%とした比較例1と比較例2は、何れも反応不良でフォームにならなかった。また、ひまし油ポリオールの量が本発明の範囲から外れる比較例3と比較例4及び比較例5は、何れもボイドが多くかつヒケも大きく、製品として使用できるものではなかった。さらに、ひまし油ポリオールの量が本発明の範囲よりも多い比較例3及び比較例4は、キュア時間が8分と長く、脱型に時間が掛かかるものであり生産性に劣っている。
【0036】
また、水酸基価及び数平均分子量が本発明の範囲から外れるひまし油ポリオール1を使用した比較例6は、反応不良でフォームにならなかった。ひまし油ポリオール3の量が本発明の範囲よりも多い比較例7は、ボイドが多く、かつヒケも大きいため、製品として使用できるものではなかった。また、水酸基価及び数平均分子量が本発明の範囲から外れるポリエーテルポリオール5を使用した比較例8は、ボイドが多く、かつヒケも大きいため、製品として使用できるものではなかった。
【0037】
このように、本発明の自動車内装材用半硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、植物由来であるひまし油ポリオールと従来の汎用原料を用いて安価に、かつ短時間で半硬質ポリウレタンフォームを脱型することができ、生産性に優れる効果がある。