特許第5964102号(P5964102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964102
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】扁平電極体を備えた電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20160721BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20160721BHJP
   H01M 2/18 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   H01M10/04 W
   H01M2/26 A
   H01M2/18 Z
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-71530(P2012-71530)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-206587(P2013-206587A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101823
【弁理士】
【氏名又は名称】大前 要
(72)【発明者】
【氏名】津島 達也
(72)【発明者】
【氏名】溝延 行洋
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−087364(JP,A)
【文献】 特開2009−289662(JP,A)
【文献】 特開2009−054376(JP,A)
【文献】 特開2009−295297(JP,A)
【文献】 特開2010−198987(JP,A)
【文献】 特開2010−244936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 2/18
H01M 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極タブが取り付けられた正極板と、負極タブが取り付けられた負極板とを、セパレータを介して積層ないし巻回して電極体を作製する電極体作製工程と、
2つの加圧治具を用いて前記電極体を加熱及びプレスし、厚みが4mm以下の扁平電極体となすホットプレス工程と、を備え、
前記加圧治具の少なくとも一方の前記電極体と対向する面には、前記正極タブ及び前記負極タブと重なる領域に凹部が設けられている、扁平電極体を備えた電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の扁平電極体を備えた電池の製造方法において、
前記正極タブ上、前記負極タブ上の少なくとも一方には、絶縁部材層が設けられており

前記凹部は、前記絶縁部材層と重なる領域に設けられている、
ことを特徴とする扁平電極体を備えた電池の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の扁平電極体を備えた電池の製造方法において、
前記電極体作製工程で作製される電極体が、巻回電極体である、
ことを特徴とする扁平電極体を備えた電池の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の扁平電極体を備えた電池の製造方法において、
前記正極タブ及び前記負極タブが、ともに前記巻回電極体の巻回中心側に位置する、
ことを特徴とする扁平電極体を備えた電池の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の扁平電極体を備えた電池の製造方法において、
前記正極板は、正極芯体が露出した正極芯体露出部と、前記正極芯体上に形成された、正極活物質を有する正極活物質層とを備え、
前記巻回電極体の最外周には、前記正極芯体露出部が位置する、
ことを特徴とする扁平電極体を備えた電池の製造方法。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1項に記載の扁平電極体を備えた電池の製造方法において

扁平電極体の最外周に巻回された前記セパレータの、R部と凹部相当部分とにおける透気度の比(凹部相当部分における透気度/R部における透気度)が1.0〜1.10であることを特徴とする扁平電極体を備えた電池の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の扁平電極体を備えた電池の製造方法において

前記電池は、金属層と樹脂層とが積層されたフィルム状外装体をさらに備える、
ことを特徴とする扁平電極体を備えた電池の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の扁平電極体を備えた電池の製造方法において

前記ホットプレス工程は、前記加圧治具と前記電極体との間にポリテトラフルオロエチレンシートが存在した状態で行われる、
ことを特徴とする扁平電極体を備えた電池の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の扁平電極体を備えた電池の製造方法において

前記加圧治具の前記電極体と対向する面には、ポリテトラフルオロエチレン被覆が施されている、
ことを特徴とする扁平電極体を備えた電池の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の扁平電極体を備えた電池の製造方法において

製造された電池の体積エネルギー密度が470Wh/L以上である、
ことを特徴とする扁平電極体を備えた電池の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の扁平電極体を備えた電池の製造方法において、
前記ホットプレス工程における前記加圧治具の温度が、40〜100℃である、
ことを特徴とする扁平電極体を備えた電池の製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の扁平電極体を備えた電池の製造方法において、
前記ホットプレス工程の前に、前記ホットプレス工程よりも弱い圧力で前記電極体をプレスする予備プレス工程をさらに備える、
ことを特徴とする扁平電極体を備えた電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平電極体を備えた電池の製造方法に関し、特に扁平電極体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコン、PDA等の移動情報端末の小型・軽量化や高機能化が急速に進展しており、その駆動電源としての二次電池には、移動情報端末内部に実装しやすいこと、及び大電流を取り出しやすいことが求められている。
【0003】
角型外装缶やラミネート外装体内に、正負電極板と正負電極板間に介在するセパレータと、を巻回ないし積層し、扁平形状となした扁平電極体を収容した電池は、正負極の対向面積が大きいために大電流を取り出し易く、且つ、移動情報端末内部に実装し易いことから、移動情報端末の駆動電源として有用である。
【0004】
このような扁平電極体は、正負極及びセパレータを重ね合わせ、これらを巻回ないし積層した後、プレスすることにより作製される。最近では、電池の小型化の要望が高まっており、高い圧力でプレスすることや、常温(25℃)よりも高い温度でプレスすることが行われている。
【0005】
ここで、プレスにより扁平電極体を作製する技術としては、特許文献1〜3が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-198987号公報
【特許文献2】特許第3005493号
【特許文献3】特開2002-246069号公報
【0007】
特許文献1の技術は、第1の電極シートと第2の電極シートとセパレータとを、積層して、または積層・巻回して得られる電極群を、ヒーター部を備えた加圧加熱成型器を使用して、加熱下に加圧する技術である。この技術によると、動作時の電極群構成部材間の隙間の増加、電極群の変形を抑制することができ、性能の劣化、安全性の低下をより防ぐことができるとされる。
【0008】
特許文献2の技術は、シート状正極とシート状負極とこれらの電極を絶縁するために間に配置される多孔質プラスチックシートが積層され扁平状に巻かれた電極群を、缶ケースに挿入する前に60〜120℃で高温圧縮成形する技術である。この技術によると、巻緩みが無く、また電池缶ケースヘの挿入後に電極群中心部に空間が無く、さらに正極シートとプラスチックシート間、負極シートとプラスチックシート間の隙間が無い電極群を提供できるとされる。
【0009】
特許文献3の技術は、上型の押圧面と、成形型の成形凹部の底部との間で一定時間、一定温度で加熱されるとともに、一定圧力で加圧して、偏平形状に成形された電極積層体を得る技術である。この技術によると、製造時間を短縮して製造コストを低減することができるとされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らが、プレスにより扁平電極体を製造する方法について鋭意研究したところ、外部端子に接続する、ないしその一部が電池外部に突出して外部端子として機能する電極タブを取り付けた正極板や負極板を用いて、厚みの薄い扁平電極体を作製する場合には、充放電によって電極体厚みが大幅に増加し、これにより電池厚みが大きく増加することを知った。
【0011】
本発明は、本発明者らが上記問題についてさらに研究を行い完成されたものであって、充放電による扁平電極体の膨れを招くことないプレス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、正極タブが取り付けられた正極板と、負極タブが取り付けられた負極板とを、セパレータを介して積層ないし巻回して電極体を作製する電極体作製工程と、2つの加圧治具を用いて前記電極体を加熱及びプレスし、厚みが4mm以下の扁平電極体となすホットプレス工程と、を備え、前記加圧治具の少なくとも一方の前記電極体と対向する面には、前記正極タブ及び前記負極タブと重なる領域に凹部が設けられている、扁平電極体を備えた電池の製造方法である。
【0013】
電極体を強く圧縮するためには、常温(25℃)よりも高い温度に加圧治具を加熱してプレス(ホットプレス)することが好ましい。ここで、正極タブ及び負極タブに重なる領域に凹部を設けていない(平板状の)治具を用いてホットプレスすると、電極体におけるタブ部分の厚みが他の部分よりも厚いため、タブ部分では強くプレスされ、他の部分では弱くプレスされることになる。このため、強くホットプレスされた部分では、セパレータの孔がつぶされてセパレータの透気度が大きくなる。これにより、リチウムイオンの透過性が悪くなって電極上でリチウムが析出しやすくなり、これが電池の膨れの要因となる。また、弱くプレスされた部分では、充放電に起因する電極板の体積変動によってプレスが緩んでしまい、さらに電池が膨れることになる。この問題は、作製される扁平電極体の厚みが、4mm以下の場合に顕著に生じる。
【0014】
上記本発明では、正極タブ及び負極タブに重なる領域に凹部を設けているので、タブ部分に強いプレス圧がかからず、全体的に均質にプレスされるので、プレスのアンバランスが起こらない。よって、上記問題が起こらず、電池の膨れが抑制される。
【0015】
なお、ホットプレス工程は、加圧治具を予め加熱した状態で電極体をプレスする方法であってもよく、電極体を加圧治具によりプレスした状態で当該加圧治具を加熱する方法であってもよいが、生産性等の観点から前者の方が好ましい。
【0016】
なお、加圧治具の加熱方法は、特に限定されることはなく、公知の方法を採用できる。
【0017】
上記凹部は、正極タブ及び負極タブが近接していない場合には、それぞれ別個に設けることができる。この場合、凹部の大きさは、それぞれが重なるタブよりも大きければよく、正極タブと負極タブのサイズが異なる場合に、正極タブ及び負極タブの双方よりも大きい凹部を2つ設ける必要はない。また、正極タブ及び負極タブが近接している場合(例えば、両者間の距離が5mm以下)には、正極タブ及び負極タブ及び両者間のエリアと重なる領域に1つの凹部を設ける構成とすることができる。また、正極タブ及び負極タブは、相互に重なりあわない構成とすることが好ましい。
【0018】
また、上記凹部は、2つの加圧治具の一方にのみ設ける構成とすることができるが、より好ましくは双方に設ける。
【0019】
ところで、正極タブ上ないし負極タブ上には、タブがセパレータ等を突き破って短絡することを防止するために、当該タブを覆うように絶縁部材層が設けられることがある。この場合には、加圧治具の凹部は、前記絶縁部材層と重なる領域に(絶縁部材層のサイズよりも大きく)形成することが好ましい。絶縁部材層としては、薄板状の絶縁シートの一方面に粘着層が設けられた絶縁テープや、絶縁性無機粒子と絶縁結着剤とを備えた絶縁層を用いることができる。また、絶縁部材層は、タブ上のみに設けてもよく、タブ上とタブ近傍の極板部分とを覆うように設けてもよいが、短絡を効果的に防止するためには、後者の方が好ましい。
【0020】
電極体作製工程で作製される電極体としては、製造が容易であることから、巻回電極体であることが好ましい。巻回電極体は、円筒状に巻回されたものであってもよく、扁平な楕円状や長円状に巻回されたものであってもよい。
【0021】
巻回電極体においては、正極タブ及び負極タブが、ともに巻回中心側に位置することが好ましい。
【0022】
巻回電極体の最外周に、正極活物質層が形成されていない正極芯体露出部を位置させると、最外周の電気抵抗が低くなり、釘刺し等の異常時における発熱を低減でき、安全性を向上させることができる。
【0023】
また、扁平巻回電極体の最外周に巻回されたセパレータの、R部と凹部相当部分とにおける透気度の比(凹部相当部分における透気度/R部における透気度)が、ホットプレス後において1.0〜1.10であると、電池の膨れをより抑制することができる。
【0024】
扁平電極体を備えた電池の外装体として、金属層と樹脂層とが積層されたフィルム状外装体を用いると、このフィルムは薄く軽量であるため、電池を小型・軽量化することができる。
【0025】
ホットプレス工程は、治具と前記電極体との間にポリテトラフルオロエチレンシートが存在した状態で行う、ないし、加圧治具の電極体と対向する面には、ポリテトラフルオロエチレン被覆が施されていると、ホットプレス工程後の電極体と加圧治具との剥離性が高まり、生産性が高まる。
【0026】
製造された電池の体積エネルギー密度は、470Wh/L以上であることが好ましい。
【0027】
また、ホットプレス工程における加圧治具の温度は、40〜100℃であることが好ましい。また、プレス時に加える力は1〜10トン(tf)、時間は1〜100秒であることが好ましい。
【0028】
また、ホットプレス工程を、ホットプレス工程よりも弱い圧力で電極体をプレス(予備プレス)した後に行うことにより、電極体が急激に加圧されることが抑制され、より電池の膨れを抑制できる。予備プレスは、40℃未満で行うことが好ましく、常温(25℃)で行ってもよく、加熱した条件で行ってもよいが、好ましくは常温で行う。
【0029】
また、加圧治具の一方にのみ凹部を設ける場合には、凹部の深さは、凹部が重なるタブの厚みないしタブと絶縁部材層の合計厚みよりも大きい構成とすることが好ましい。また、加圧治具の双方に凹部を設ける場合には、対向する凹部の深さの和は、凹部が重なるタブの厚みないしタブと絶縁部材層の合計厚みよりも大きい構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
上記本発明によると、プレス後の扁平電極体のセパレータの透気度のムラを抑制でき、これにより充放電に伴う電池厚みの増大を抑制し得た二次電池を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、扁平巻回電極体の巻き始め部分を示す部分拡大断面図である。
図2図2は、ホットプレス工程を示す断面図である。
図3図3は、ホットプレス後の扁平巻回電極体を示す正面図である。
図4図4は、サイクル数と厚み増加率との関係を示すグラフである。
図5図5は、ホットプレス工程の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明を実施するための形態を、本発明を非水電解質二次電池に適用した例を用いて、図面に基づいて説明する。なお、本発明は下記の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0033】
(実施例1)
〈正極の作製〉
正極活物質としてのリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)と、導電剤としてのカーボンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンとを、質量比90:5:5で混合し、さらにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と混合して正極活物質スラリーとした。この正極活物質スラリーを、アルミニウム製の正極集電体(厚み15μm、幅102.0mm、長さ865.5mm)の両面に塗布した。この時、芯体の両端部には、活物質スラリーを塗布せず、芯体を露出させたままとした。芯体露出部分の長さは、一方で46mm、他方で236mmとした。
【0034】
この極板を加熱乾燥し、スラリー調製時に必要であったNMPを揮発除去した。この後、厚みが0.109mmとなるように圧延して正極板を作製した。この後、短いほうの芯体露出部分にアルミニウム製の正極タブ(厚み0.1mm、幅5mm、長さ49.5mm)を取り付け、正極板の正極タブ上に、絶縁テープ(厚み0.03mm、幅7mm、長さ31.5mm)を張り付けた。また、後述するラミネート外装体の封止部と正極タブとが重なる領域に、カルボン酸変性ポリプロピレン製のタブフィルムを取り付けた。このタブフィルムは、ラミネート外装体の樹脂層とも密着性を高めるとともに、封止時の圧力によってラミネート外装体の金属層とタブとが接触することを防止するものであるが、本発明の必須の構成ではない。
【0035】
〈負極の作製〉
負極活物質としての黒鉛と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)と、結着剤としてのスチレン−ブタジエンゴム(SBR)と、を質量比98:1:1で混合し、さらに水を混合して負極活物質スラリーとした。この後、この負極活物質スラリーを銅箔製の負極集電体(厚み8μm、幅103.5mm、長さ830.0mm)の両面に塗布した。この時、芯体の両端部には、活物質スラリーを塗布せず、芯体を露出させたままとした。芯体露出部分の長さは、一方で78mm、他方で131mmとした。
【0036】
この極板を加熱乾燥し、スラリー調製時に必要であった水を揮発除去した。この後、厚みが0.108mmとなるように圧延して負極板を作製した。この後、短いほうの芯体露出部分にニッケル製の負極タブ(厚み0.1mm、幅5mm、長さ49.5mm)を取り付け、負極板の負極タブ上に、絶縁テープ(厚み0.03mm、幅8mm、長さ31.5mm)を張り付けた。また、後述するラミネート外装体の封止部と負極タブとが重なる領域に、カルボン酸変性ポリプロピレン製のタブフィルムを取り付けた。
【0037】
〈電極体の作製〉
上記正極板及び負極板を、ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを介して、正負電極体が巻き始め側(巻回中心側)となり、正極の芯体露出部分が最外周となるように、断面円形の巻芯を用いて巻回することにより、円筒状の巻回電極体を作製した。
【0038】
《予備プレス》
この後、押圧面(電極体と接する面)が平面状の加圧治具を用いて、常温(25℃)で正極タブ6及び負極タブ7の厚み方向に対して平行な方向から予備プレス(25℃、0.4トンで5秒)して扁平形状となした。この予備プレス後の電極体10は、図1に示すように、正極タブ6が取りつけられた正極1と、負極タブ7が取りつけられた負極2と、両電極間に介在するセパレータ3と、を備えている。
【0039】
《ホットプレス》
図2に示すように、扁平形状の電極体10を、正極タブ6及び負極タブ7上に貼り付けられた絶縁テープ8・8に対応する部分に、当該絶縁テープ8・8よりも大きい凹部21がそれぞれ設けられた2つの加圧治具20を用いて、正極タブ6及び負極タブ7の厚み方向に対して平行な方向からホットプレス(40℃、4トンで60秒)して、図3に示すような、厚み3.1mm、幅L6=66.6mm、長さL7=105.5mmの扁平電極体となした。ここで、絶縁テープ8の幅L1=7mm、8mm、絶縁テープ8とタブの合計厚みL2=0.13mm、凹部の幅L3=10mm、凹部の深さL4=0.1mmであり、L1<L3,L2<2×L4となっている。また、絶縁テープ8の長さ≦凹部の長さL5であり、より好ましくは、絶縁テープ8の長さ<L5である。また、加圧治具20の電極体と接する面には、剥離性を高めるために、ポリテトラフルオロエチレンによる被覆層が形成されている。
【0040】
ホットプレス後の電極体10においては、図3に示すように、プレスで凹部と接触した部分に、絶縁テープ8よりもサイズの大きい凸部(凹部の痕跡)40が形成されることになる。また、電極体10の一辺から正極タブ6までの距離L9は31.3mm、負極タブ7までの距離L8は14.3mmである。電極体10から突出したタブ6,7の根元部分には、タブフィルム60が取り付けられている。
【0041】
〈非水電解質の調製〉
エチレンカーボネートと、プロピレンカーボネートと、ジエチルカーボネートと、を体積比1:1:8(25℃、1気圧条件)で混合し、LiPFを1.0M(モル/リットル)となるように溶解して、非水電解質となした。
【0042】
〈電池の組み立て〉
厚み15μmのポリアミド層、厚み5μmのドライラミネート接着剤層、厚み35μmアルミニウム層、厚み5μmのカルボン酸変性ポリプロピレン層、厚み25μmのポリプロピレン層が積層されてなるアルミラミネートを用意した。このラミネートを、ポリアミド層が外側となるように折り返し、折り返された一方をカップ状に成型して収納空間を形成した。上記扁平電極体を、正負極タブが折り返し部と反対側から突出するように上記収納空間内に収容した。この後、ラミネートフィルムが重なった二方向端部を熱溶着し、熱溶着されていない一方向端部から上記の方法で調製した非水電解質を注入した。そして、熱溶着されていない一方向端部を熱溶着して封口することにより、実施例1に係る非水電解質二次電池を作製した。この時、各封止部の幅は、2.8mmとした。
【0043】
(比較例1)
凹部を設けていない治具を用いてホットプレスしたこと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例1に係る非水電解質二次電池を作製した。
【0044】
〔サイクル試験〕
上記と同様にして、実施例1、比較例1に係る電池をそれぞれ2つ作製した。これらの電池に対して、以下の条件で充放電サイクルを行い、100サイクル毎に電池の厚みを測定した。下記式により算出した膨れ率の平均値を、図4に示す。
【0045】
〈充放電サイクル条件〉
充電:定電流1It(3680mA)で4.3Vまで、その後定電圧4.3Vで電流が0.05It(184mA)となるまで
放電:定電流1It(3680mA)で2.75Vまで
【0046】
膨れ率(%)=(nサイクル後厚み−初期厚み)÷初期厚み×100
【0047】
図4から、500サイクル後の膨れ率が、実施例1では1.7%であるのに対し、比較例1では3.8%と、実施例の方が顕著に小さいことがわかる。
【0048】
このことは、次のように考えられる。比較例1では、タブ部分に凹部を設けていない(平板状の)治具を用いてホットプレスを行っているが、タブ部分の厚みは他の部分よりも厚いため、タブ部分では強くプレスされ、他の部分では弱くプレスされることになる。このため、強くホットプレスされた部分では、セパレータの透気度が大きく(セパレータの孔が小さく)なり、リチウムイオンの透過性が悪くなって電極上でリチウムが析出しやすくなり、これが電池の膨れの要因となる。また、弱くプレスされた部分では、充放電に起因する電極板の体積変動によってプレスが緩んでしまい、さらに電池が膨れることになる。他方、タブ部分に凹部を設けた実施例1では、タブ部分に直接プレス圧がかからず、全体的に均質にプレスされ、プレスのアンバランスが起こらないので、上記問題が起こらず、電池の膨れが抑制される。
【0049】
なお、ホットプレス後の扁平電極体を解体し、R部における透気度と凹部相当部分における透気度(いずれも、電極体最外周に巻回されたもの)を測定したところ、実施例1ではR部で177.3ml/sec、凹部相当部分で193.3ml/secであり、その比(凹部/R部)は、1.09であった。
【0050】
(追加事項)
上記実施例では、ラミネート外装体を用いた例を使用して説明したが、これ以外に角形外装缶を用いた電池に本発明を適用することもできる。また、電極タブは、その一部が露出して外部端子として機能する態様ではなく、外部端子に接続される態様であってもよい。
【0051】
本発明で使用することのできる正極活物質としては、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMnO、LiNi1−xMn(0<x<1)、LiNi1−xCo(0<x<1)、LiNiMnCo(0<x,y,z<1、x+y+z=1)などのリチウム遷移金属複合酸化物、LiFePOなどのオリビン構造を有するリチウム含有遷移金属リン酸化合物が好ましい。
【0052】
また、本発明で使用することのできる負極活物質としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素及び易黒鉛化性炭素などの炭素原料、LiTiO及びTiOなどのチタン酸化物、ケイ素及びスズなどの半金属元素、またはSn−Co合金等が挙げられる。
【0053】
また、本発明で使用することのできる非水溶媒としては、エチレンカーボネート・プロピレンカーボネート・ブチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル、水素原子の少なくとも一部がフッ素化された環状炭酸エステル、γ−ブチルラクトン・γ−バレロラクトンなどの環状カルボン酸エステル、ジメチルカーボネート・エチルメチルカーボネート・ジエチルカーボネート・メチルプロピルカーボネート・ジノルマルブチルカーボネートなどの鎖状炭酸エステル、ピバリン酸メチル・ピバリン酸エチル・メチルイソブチレート・メチルプロピオネートなどの鎖状カルボン酸エステル、N、N'−ジメチルホルムアミド・N−メチルオキサゾリジノンなどのアミド化合物、スルホランなどの硫黄化合物、テトラフルオロ硼酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウムなどの常温溶融塩などが例示できる。これらは2種以上混合して用いることが望ましい。この中でもエチレンカーボネート・プロピレンカーボネート、鎖状炭酸エステル、3級カルボン酸エステルが特に好ましい。
【0054】
また、本発明で使用する電解質塩としては、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiAsF、LiClO、Li10Cl10、Li12Cl12など及びそれらの混合物が例示される。これらの中でも、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)が特に好ましい。非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、0.5〜2.0mol/Lとすることが好ましい。
【0055】
なお、非水電解液中には、添加剤として、さらに、ビニレンカーボネート、ビニルエチルカーボネート、無水コハク酸、無水マイレン酸、グリコール酸無水物、エチレンサルファイト、ジビニルスルホン、ビニルアセテート、ビニルピバレート、カテコールカーボネート、ビフェニルなどを添加してもよい。これらの化合物は、2種以上を適宜に混合して用いることができる。また、非水電解質は液状のものに限定されず、ポリマーマトリクス内に非水電解質が保持されたゲル状のものであってもよい。
【0056】
また、本発明における扁平電極体は、巻回型電極体に限定されず、積層型電極体やつづら折状に積層された電極体のいずれであってもよい。
【0057】
また、セパレータとしては、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン材料から形成された微多孔膜を用いることが好ましい。また、いわゆるシャットダウン応答性を確保するために、低融点樹脂を混合することができる。また、耐熱性を得るために高融点樹脂と積層ないしブレンドさせた樹脂としてもよい。
【0058】
また、図5に示すように、加圧治具20と電極体10との間にポリテトラフルオロエチレンシート30を介在させた状態でホットプレスを行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上に説明したように、本発明によれば、プレスに用いる治具に凹部を設けるという簡便な方法によって、電池厚みの増大を抑制できるという優れた効果を奏する。したがって、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0060】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
6 正極タブ
7 負極タブ
8 絶縁テープ
10 電極体
20 加圧治具
21 凹部
30 ポリテトラフルオロエチレンシート
40 凸部(凹部の痕跡)
60 タブフィルム
図1
図2
図3
図4
図5