特許第5964119号(P5964119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964119
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】円環状ゴム部材の成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 47/92 20060101AFI20160721BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20160721BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20160721BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20160721BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20160721BHJP
【FI】
   B29C47/92
   B29D30/06
   B29K21:00
   B29L23:00
   B29L30:00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-91121(P2012-91121)
(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公開番号】特開2013-216070(P2013-216070A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪谷 壮祐
(72)【発明者】
【氏名】宮本 亮史
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−061691(JP,A)
【文献】 特開2011−235525(JP,A)
【文献】 特開2010−234707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するテーブル上に押出機により口金を介してゴムを帯状に押し出しながら円環状に貼り付けて、その帯状ゴムの端部同士を接合する円環状ゴム部材の成形方法であって、
口金を前記テーブルに対して垂直方向から近接させて、帯状ゴムの押し出しを開始し、口金からの押出量を所定量まで増加させるとともに、前記口金を前記テーブルから一定距離まで徐々に離隔させる貼り始め工程と、
口金からの押出量を所定量に維持したまま帯状ゴムを円環状に貼り付けていく貼り付け工程と、
帯状ゴムの貼り付け終了直前には、口金からの押出量を所定量から減少させて、帯状ゴムの端部同士を接合する貼り終り工程とを備え、
帯状ゴムの断面形状に対応した形状の開口と、前記開口の外周部にゴムを送り込むための外周側流路と、前記開口の内周部にゴムを送り込むための内周側流路と、を有する口金を用いて、
前記外周側流路での外周側ゴム流量と前記内周側流路での内周側ゴム流量を増減させることで口金からの前記押出量を増減させ、かつ、前記外周側ゴム流量を前記内周側ゴム流量よりも大きくすることで押し出した帯状ゴムを湾曲させるものであり、
前記貼り始め工程及び貼り終り工程における前記外周側ゴム流量と前記内周側ゴム流量との流量比を、前記貼り付け工程における流量比と異ならせることを特徴とする円環状ゴム部材の成形方法。
【請求項2】
前記円環状ゴム部材は外周部分が内周部分よりも薄肉となっており、前記貼り始め工程及び貼り終り工程における前記外周側ゴム流量の前記内周側ゴム流量に対する比率を、前記貼り付け工程における比率よりも小さくすることを特徴とする請求項1に記載の円環状ゴム部材の成形方法。
【請求項3】
前記円環状ゴム部材が、外周部分が先細りした断面三角形状のビードフィラーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の円環状ゴム部材の成形方法。
【請求項4】
前記円環状ゴム部材が、サイドウォールゴムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の円環状ゴム部材の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ構成部材としてのビードフィラーなどに代表される円環状ゴム部材の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、タイヤは、サイドウォールゴム2やトレッドゴム3、カーカスプライ4、インナーライナーゴム5など種々のゴム部材を組み合わせて構成される。ビード部材10は、一対のビード部1の各々に配設され、これを挟み込むようにしてカーカスプライ4の幅方向端部が巻き返される。ビード部材10は、図11に示すように、断面三角形状の硬質ゴムからなる円環状のビードフィラー1bと、ゴム被覆された鋼線等の収束体からなるビードコア1aとを有する。
【0003】
ビード部材10は、例えば図12に示すように、押出機81により口金82を介して帯状に押し出したビードフィラー1bを、予め円環状に形成したビードコア1aに供給し、ビードフィラー1bの内周にビードコア1aを貼り合わせることにより製造される(下記特許文献1参照)。ビードコア1aは、r方向に回転自在に支持されており、その回転速度はビードフィラー1bの押出速度に対応するように制御される。ビードフィラー1bは、所定の長さで切断された後、その端部同士が貼り合わされて円環状に成形される。
【0004】
ところが、帯状のビードフィラー1bを上記のように円環状に成形すると、その内外周差に起因して、ビードフィラー1bの外周部分に周方向の引張応力が作用するため、ビードフィラー1bがビードコア1aとは逆方向(X方向)に変形し、端部同士の貼り合わせに支障を来たすことがあった。特にビードフィラー1bの場合には、外周部分が薄肉であることから、口金82内部のゴム流路において外周部のゴムの流れが内周部よりも悪くなる傾向にあり、前述した不具合が顕著であった。
【0005】
下記特許文献2には、口金の外周側流路でのゴム流量を内周側流路でのゴム流量よりも大きくすることで、口金の外周部に対してより多くのゴムを送り込み、押し出した帯状ゴムを湾曲させることができる円環状ゴム部材の成形方法が記載されている。これにより、帯状ゴムの変形を抑制でき、端部同士を適切に貼り合わせて円環状に精度良く成形することができる。
【0006】
しかしながら、押し出された帯状ゴムを所定の長さで切断して、端部同士を貼り合わせて円環状に成形する場合、そのジョイント部分では段差やセパレーションが生じやすい。また、押出機の他に切断装置などの付帯設備が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−297603号公報
【特許文献2】特開2009−61691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、押出機により押し出した帯状ゴムの端部同士を接合して円環状に成形する際、内外周差による変形を抑制しつつ、端部同士を精度良く接合できる円環状ゴム部材の成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る円環状ゴム部材の成形方法は、回転するテーブル上に押出機により口金を介してゴムを帯状に押し出しながら円環状に貼り付けて、その帯状ゴムの端部同士を接合する円環状ゴム部材の成形方法であって、口金を前記テーブルに対して垂直方向から近接させて、帯状ゴムの押し出しを開始し、口金からの押出量を所定量まで増加させるとともに、前記口金を前記テーブルから一定距離まで徐々に離隔させる貼り始め工程と、口金からの押出量を所定量に維持したまま帯状ゴムを円環状に貼り付けていく貼り付け工程と、帯状ゴムの貼り付け終了直前には、口金からの押出量を所定量から減少させて、帯状ゴムの端部同士を接合する貼り終り工程とを備え、帯状ゴムの断面形状に対応した形状の開口と、前記開口の外周部にゴムを送り込むための外周側流路と、前記開口の内周部にゴムを送り込むための内周側流路と、を有する口金を用いて、前記外周側流路での外周側ゴム流量と前記内周側流路での内周側ゴム流量を増減させることで口金からの前記押出量を増減させ、かつ、前記外周側ゴム流量を前記内周側ゴム流量よりも大きくすることで押し出した帯状ゴムを湾曲させるものである。
【0010】
本発明の円環状ゴム部材の成形方法によれば、口金の外周側流路での外周側ゴム流量を内周側流路での内周側ゴム流量よりも大きくすることで、開口の外周部に対してより多くのゴムを送り込み、押し出した帯状ゴムを湾曲させることができるため、押出機により押し出した帯状ゴムを円環状に成形する際、内外周差による変形を抑制できる。また、貼り始め工程において、口金からの押出量を所定量まで増加させるとともに、口金をテーブルから一定距離まで徐々に離隔させることにより、帯状ゴムの始端部の厚みを徐々に厚くすることができ、一方、貼り終り工程において、口金からの押出量を所定量から減少させることで、帯状ゴムの終端部の厚みを徐々に薄くすることができる。これにより、帯状ゴムの端部同士を接合する際、接合部分での厚みがその他の部分の厚みと略同じとなり、端部同士を精度良く接合できる。
【0011】
本発明の円環状ゴム部材の成形方法において、前記貼り始め工程及び貼り終り工程における前記外周側ゴム流量と前記内周側ゴム流量との流量比を、前記貼り付け工程における流量比と異ならせることが好ましい。
【0012】
外周側ゴム流量と内周側ゴム流量を増減させることで口金からの押出量を増減させることができるが、例えば円環状ゴム部材の厚みが外周部分と内周部分とで異なる場合、すなわち、開口の高さが外周部と内周部とで異なる場合、貼り始め工程及び貼り終り工程において、外周側ゴム流量と内周側ゴム流量との流量比を維持したまま口金からの押出量を増減させただけでは、端部同士の接合部分で円環状ゴム部材が所望の断面形状とならない場合がある。貼り始め工程及び貼り終り工程における外周側ゴム流量と内周側ゴム流量との流量比を、貼り付け工程における流量比と異ならせることで、帯状ゴムの両端部での断面形状を適切に制御可能となり、端部同士をより一層精度良く接合できる。
【0013】
本発明の円環状ゴム部材の成形方法において、前記円環状ゴム部材は外周部分が内周部分よりも薄肉となっており、前記貼り始め工程及び貼り終り工程における前記外周側ゴム流量の前記内周側ゴム流量に対する比率を、前記貼り付け工程における比率よりも小さくすることが好ましい。
【0014】
円環状ゴム部材の外周部分が内周部分よりも薄肉となっている場合、すなわち、開口の外周部が内周部よりも低い場合、貼り始め工程及び貼り終り工程において、外周側ゴム流量の内周側ゴム流量に対する比率を維持したまま口金からの押出量を増減させただけでは、端部同士の接合部分で円環状ゴム部材の外周部分が所望の厚みより大きくなる場合がある。貼り始め工程及び貼り終り工程における前記外周側ゴム流量の前記内周側ゴム流量に対する比率を、前記貼り付け工程における比率よりも小さくすることで、帯状ゴムの両端部で外周部分の厚みを小さくすることができ、端部同士の接合部分でも円環状ゴム部材を所望の断面形状とすることができる。
【0015】
本発明の円環状ゴム部材の成形方法は、円環状ゴム部材が、外周部分が先細りした断面三角形状のビードフィラーである場合に特に有用である。外周部分が薄肉となったビードフィラーであっても、上述した本発明によれば、内外周差による変形を抑制しつつ、端部同士を精度良く接合できる。また、本発明の円環状ゴム部材の成形方法は、円環状ゴム部材がサイドウォールゴムである場合にも有用である。内外周差が比較的大きいサイドウォールゴムであっても、上述した本発明によれば、内外周差による変形を抑制しつつ、端部同士を精度良く接合できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】円環状ゴム部材の成形装置の全体を示す概略構成図
図1B図1Aの成形装置を上方から見た平面図
図2】押出機及び口金の一例を示す概略構成図
図3】口金を開口側から見た斜視図
図4】円環状ゴム部材の一例を示す斜視断面図
図5】円環状ゴム部材の成形工程を説明するための説明図
図6】帯状ゴムの端部同士を接合する様子を示す模式図
図7】貼り始め工程と貼り終り工程での押出機のスクリュー回転数の制御の一例を示す図
図8】円環状ゴム部材の接合部分における複数の断面図
図9】円環状ゴム部材(参考例)の接合部分における複数の断面図
図10】空気入りタイヤの一例を示す断面図
図11】ビード部材を一部破断させて示した斜視図
図12】従来の方法によりビード部材を製造する様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、円環状ゴム部材が、図4に示すような外周部分が内周部分よりも薄肉となった断面形状を有する帯状ゴムを円環状に成形する例を示す。図1Aは、円環状ゴム部材の成形装置の全体を示す概略構成図である。図1Bは、図1Aの成形装置を上方から見た平面図である。図2は、押出機及び口金の一例を示す概略構成図である。
【0018】
この成形装置は、口金15と、口金15を介してゴムを帯状に押し出す押出機(本実施形態では2台の押出機20,30)と、制御装置40とを備え、口金15に対向する位置にテーブル50をさらに備える。押出機20は、ゴム材料が投入されるホッパー21と、ゴム材料に熱を与えながら前方に送り出すスクリュー22と、スクリュー22を内蔵する円筒状のバレル23と、スクリュー22を駆動する駆動装置24とを備える。押出機30は、押出機20と同様に構成され、ホッパー31、スクリュー32、バレル33及び駆動装置34を備える。制御装置40は、スクリュー22,32の駆制動及び回転量を制御する。
【0019】
口金15は、押出機20,30のバレル23,33の先端側に連結され、その前面に形成された開口11から帯状ゴムSが押し出される。押し出された帯状ゴムSは、後述するように矢印R1の方向に向かって湾曲する。図3は口金15を開口側から見た斜視図である。なお、図3には帯状ゴムSを破線で示している。開口11は、図3に示すように帯状ゴムSの断面形状に対応した形状を有し、図の右側が開口11の外周部11o、左側が開口11の内周部11iとなる。
【0020】
口金15は、分岐部12と合流部13で構成されている。なお、この例では分岐部12と合流部13は別々の部材で構成されているが、一つの部材で構成されてもよい。口金15の内部には、押出機20,30から供給されたゴムが通るゴム流路が設けられており、その下流側に開口11が形成されている。分岐部12は、外周側流路12oと内周側流路12iとを有し、それらが合流部13にて合流する。外周側流路12oは、合流部13の外周側に連通し、押出機20により供給されたゴムを開口11の外周部11oに送り込む。また、内周側流路12iは、合流部13の内周側に連通し、押出機30により供給されたゴムを開口11の内周部11iに送り込む。本実施形態では、外周側流路12oと内周側流路12iとは略同等の断面積を有する。
【0021】
円環状ゴム部材を成形する際には、まず、ゴム材料をホッパー21,31に投入し、それらをスクリュー22、32によって混練しながら前方に送り出して口金15に供給する。口金15に供給されたゴムは、外周側流路12o及び内周側流路12iを通って合流部13で合流し、開口11から所望の断面形状を有する帯状ゴムSが押し出される。このとき、開口11の外周部11oには、主として外周側流路12oを経由したゴムが送り込まれ、開口11の内周部11iには、主として内周側流路12iを経由したゴムが送り込まれる。
【0022】
そして、本発明では、帯状ゴムSを押し出す際に、外周側流路12oでの外周側ゴム流量を内周側流路12iでの内周側ゴム流量よりも大きくする。これにより、開口11の外周部11oに対してより多くのゴムを送り込み、図2に示すように押し出した帯状ゴムSを湾曲させることができる。この帯状ゴムSは、引っ張りにより湾曲させたものではないため、内外周差による変形が抑制される。
【0023】
外周側流路12oでの外周側ゴム流量を内周側流路12iでの内周側ゴム流量よりも大きくする具体的手法としては、スクリュー22の回転数をスクリュー32よりも大きくすることや、バレル23の容量をバレル33よりも大きくすることが挙げられる。また、これら以外にも、単位時間に流れる各流路のゴム量に差を設けうる手段を適宜に採用できる。更に、外周側流路12oを通るゴムの粘度を、内周側流路12iを通るゴムよりも低くして流動性を高めると効果的である。
【0024】
本実施形態では、外周側流路12oにゴムを供給する押出機20と内周側流路12iにゴムを供給する押出機30とが別個に構成されているため、各押出機20,30の作動を適宜に制御することで、ゴム流量のバランスを簡易に調整することができる。
【0025】
テーブル50は、不図示のサーボモータによりR2方向に回転可能に構成されている。サーボモータの回転数は、制御装置40により制御される。テーブル50には、口金15を介して押し出された帯状ゴムSが貼り付けられる。回転するテーブル50上に帯状ゴムSを貼り付けていくことで、帯状ゴムSは円環状に成形される。
【0026】
<円環状ゴム部材の成形方法>
上記のような成形装置を用いて円環状ゴム部材を成形する方法を説明する。本発明の円環状ゴム部材の成形方法は、回転するテーブル50上に押出機20,30により口金15を介してゴムを帯状に押し出しながら円環状に貼り付けて、その帯状ゴムSの端部同士を接合することで円環状ゴム部材を成形するものである。
【0027】
図5は、円環状ゴム部材の成形工程を説明するための説明図であり、斜視図及び平面図である。図6は、帯状ゴムSの端部同士を接合する様子を示す模式図である。
【0028】
初めに、口金15をテーブル50に対して垂直方向から近接させて(図5(a)、図6(a))、帯状ゴムSの押し出しを開始する。このとき、テーブル50はまだ回転していない。帯状ゴムSの押し出しを開始した後、テーブル50の回転を開始し、口金15からの押出量を所定量まで増加させるとともに、口金15をテーブル50から一定距離まで徐々に隔離させる(図5(b)、図6(b)〜(c))。この工程を貼り始め工程P1と称する。
【0029】
次いで、口金15からの押出量を所定量に維持したまま帯状ゴムSを円環状に貼り付けていく(図5(c)、図6(d)〜(e))。この工程を貼り付け工程P2と称する。
【0030】
帯状ゴムSの貼り付け終了直前には、口金15からの押出量を所定量から減少させて、帯状ゴムSの端部同士を接合する(図5(d)、図6(f))。この工程を貼り終り工程P3と称する。
【0031】
図7は、押出機20,30のスクリュー22,32の回転数の制御の一例を示しており、(a)は貼り始め工程P1、(b)は貼り終り工程P3の付近を示している。
【0032】
図7(a)において、3秒までが貼り始め工程P1であり、それ以後が貼り付け工程P2である。貼り付け工程P2では、外周側ゴム流量を決定付ける押出機20のスクリュー22の回転数を10rpm、内周側ゴム流量を決定付ける押出機30のスクリュー32の回転数を5rpmとすることで、外周側ゴム流量を内周側ゴム流量よりも大きくしている。これにより、開口11の外周部11oに対してより多くのゴムを送り込み、図2に示すように押し出した帯状ゴムSを湾曲させることができる。
【0033】
貼り付け工程P2では、外周側ゴム流量と内周側ゴム流量との流量比が2:1となっている。これに対し、貼り始め工程P1では、外周側ゴム流量と内周側ゴム流量との流量比を、貼り付け工程P2での流量比(2:1)と異ならせている。具体的には、貼り始め工程P1において、押出機30のスクリュー32の回転数は、ゼロから5rpmへ線形的に増加させているが、押出機20のスクリュー22の回転数は、ゼロから10rpmへ段階的に増加させている。より具体的には、押出機20のスクリュー22の回転数は、0〜2.5秒でゼロから5rpmへ増加させ、2.5〜3秒で5rpmから10rpmへ増加させている。
【0034】
図7(b)において、30秒までが貼り付け工程P2であり、それ以後が貼り終り工程P3である。貼り付け工程P2では上記の通りである。これに対し、貼り終り工程P3では、外周側ゴム流量と内周側ゴム流量との流量比を、貼り付け工程P2での流量比(2:1)と異ならせている。具体的には、貼り終り工程P3において、押出機30のスクリュー32の回転数は、5rpmからゼロへ線形的に減少させているが、押出機20のスクリュー22の回転数は、10rpmからゼロへ段階的に減少させている。より具体的には、押出機20のスクリュー22の回転数は、30〜30.5秒で10rpmから5rpmへ減少させ、30.5〜33秒で5rpmからゼロへ減少させている。
【0035】
図8は円環状ゴム部材の接合部分における複数の断面形状を示す。断面図の下側が帯状ゴムSの始端部S1、上側が帯状ゴムSの終端部S2である。また、断面図には、目標の断面形状を太線で示している。図8に示すように、端部同士の接合部分においても外周部分の厚みを適切に薄くして、円環状ゴム部材を所望の断面形状を得ることができている。
【0036】
一方、図9は貼り始め工程P1及び貼り終り工程P3で、外周側ゴム流量と内周側ゴム流量との流量比を貼り付け工程P2と同じにして成形した円環状ゴム部材の接合部分における複数の断面形状を参考に示す。この参考例におけるスクリュー22,32の回転数を図7(a)及び図7(b)に示す。この例では、接合部分において外周部分の厚みが目標とする厚みよりも厚くなっている。これは、貼り始め工程P1において、口金15から押し出された帯状ゴムSは、口金15の先端で擦られるようにしてテーブル50上に貼り付けられていくため、抵抗の少ない外周部分へゴムが流れて厚くなりやすいからである。
【0037】
<別実施形態>
(1)前述の実施形態では、貼り始め工程P1及び貼り終り工程P3において、外周側ゴム流量を2段階で所定量まで増加させているが、これに限定されるものではない。すなわち、外周側ゴム流量を3段階以上で増加させたり、放物線状に増加させたりしてもよい。
【0038】
(2)前述の実施形態では、開口11の外周部にゴムを送り込むための外周側流路12oと、開口11の内周部にゴムを送り込むための内周側流路12iと、を有する口金15を用いているが、口金15は、開口11の中央部にゴムを送り込むための中央部流路を更に有するようにしてもよい。これに合わせて、中央部流路にゴムを供給する押出機を更に備えるようにしてもよい。
【0039】
(3)前述の実施形態では、口金15を移動させてテーブル50に対して近接させているが、テーブル50を移動させて口金15に対して近接させても構わない。
【符号の説明】
【0040】
1 ビード部
1a ビードコア
1b ビードフィラー
10 ビード部材
11 開口
11i 内周部
11o 外周部
12 分岐部
12i 内周側流路
12o 外周側流路
13 合流部
15 口金
20 押出機
30 押出機
50 テーブル
P1 貼り始め工程
P2 貼り付け工程
P3 貼り終り工程
S 帯状ゴム
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12