(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
<<充電回路10の概要>>
図1は、本発明を適用した充電回路10の構成を示す図である。充電回路10は、2セルのリチウムイオン電池(以下、単に電池と称する)15,16を、定電流または定電圧で充電する回路である。なお、1セルのリチウムイオン電池の電圧は、例えば、2.4Vから4.2Vまで変化するため、2セルの電池15,16に発生する電圧は、4.8V〜8.4Vとなる。また、充電回路10は、例えばUSB(Universal Serial Bus)バスから供給される電源17に基づいて、電池15,16を充電する。
【0011】
充電回路10は、充電制御IC(Integrated Circuit)20、コンデンサ21〜24、インダクタ25、及び抵抗26を含んで構成される。
【0012】
充電制御IC20(充電制御回路)は、インダクタ25に流れるインダクタ電流ILを制御することにより、電源17からの入力電圧Vin(例えば、5V)より高い出力電圧Voutを生成する回路であり、NMOSトランジスタ30〜32、入力電流検出回路33、出力電流検出回路34、スイッチング制御回路35、及び端子A〜Gを含んで構成される。なお、NMOSトランジスタ31,32は外付け部品としてもよく、NMOSトランジスタ32については、ダイオード若しくはPMOSトランジスタとしてもよい。
【0013】
端子Aには、電源17(入力電源)からの入力電圧Vinが印加されるとともに、入力電圧Vinを安定化させるためのコンデンサ21が接続されている。
【0014】
NMOSトランジスタ30は、ドレインが端子Aに接続され、ソースが端子Bに接続されている。
【0015】
入力電流検出回路33は、電源17からの端子Aを介して入力される入力電流Iinを検出し、入力電流Iinの増加に応じて上昇する電圧Va(第2電圧)を生成する回路である。なお、入力電流検出回路33は、電流検出抵抗や、NMOSトランジスタ30のカレントミラー回路等を用いて入力電流Iinを検出する。また、入力電流検出回路33は、出力電圧Voutが昇圧されている際に、NMOSトランジスタ30がフルオン状態となる電圧をNMOSトランジスタ30のゲートに印加する。
【0016】
端子Bには、コンデンサ22とインダクタ25の一端が接続され、端子Cには、インダクタ25の他端、NMOSトランジスタ31のドレイン、NMOSトランジスタ32のソースが接続されている。また、接地された端子Fには、NMOSトランジスタ31のソースが接続されている。
【0017】
このため、インダクタ25,NMOSトランジスタ31,32は、入力電圧Vinを昇圧する昇圧チョッパ回路(昇圧回路)を構成する。具体的には、NMOSトランジスタ32がオフし、NMOSトランジスタ31がオンすると、インダクタ25に流れるインダクタ電流ILは増加する。そして、NMOSトランジスタ31がオフし、NMOSトランジスタ32がオンすると、インダクタ25に蓄えられたエネルギーは、端子Gを介してコンデンサ24に放出される。したがって、端子Gに発生する出力電圧Voutは昇圧される。また、端子Gには、電池15,16が接続される。なお、電池15,16及び端子Gの間のスイッチSWは実際には設けられていないが、電池15,16が端子Gに接続されているか否かの理解を容易にするために描かれている。また、端子Gには、出力電圧Voutで動作するマイコン等の負荷(不図示)が接続されている。
【0018】
出力電流検出回路34は、NMOSトランジスタ31に流れる電流Ibの増加に応じて上昇する電圧Vbを生成する回路である。なお、出力電流検出回路34も、入力電流検出回路33と同様に、電流検出抵抗や、NMOSトランジスタ31のカレントミラー回路等を用いて電流Ibを検出する。
【0019】
スイッチング制御回路35は、電圧Va,Vb、出力電圧Voutに基づいて、NMOSトランジスタ31,32のスイッチングを制御する。スイッチング制御回路35は、
図2に示すように、充放電回路50、放電回路51、判定回路52、及びスイッチング回路53を含んで構成される。なお、
図2は、スイッチング制御回路35の詳細を説明するための図であるため、
図2においては、
図1に示された端子Aや、NMOSトランジスタ30等は適宜省略している。
【0020】
充放電回路50は、入力電流Iinが、充電回路10が電池15,16を定電流充電する際の電流I1(第1電流)より小さい場合、コンデンサ23を充電し、入力電流Iinが電流I1より大きい場合、コンデンサ23を放電する。充放電回路50は、レジスタ60、バイアス電圧生成回路61、及びトランスコンダクタンスアンプ62を含んで構成される。
【0021】
レジスタ60(記憶回路)は、端子Dを介してマイコン(不図示)から送信されるデータDAを記憶する。なお、データDAは、電流I1の電流値を示すデータである。
【0022】
バイアス電圧生成回路61(電圧生成回路)は、レジスタ60に格納されたデータDAに基づいて、電流I1の電流値に応じた電圧V1(第1電圧)を生成する。本実施形態では、設定される電流I1の電流値が高くなるにつれて、電圧V1の電圧値も高くなる。
【0023】
トランスコンダクタンスアンプ62は、入力電流Iinが増加すると高くなる電圧Vaと、電流I1を示す電圧V1とに応じた電流でコンデンサ23を充放電する。具体的には、電流Iinが電流I1より低い場合、つまり、電圧Vaが電圧V1より低い場合には、トランスコンダクタンスアンプ62は、コンデンサ23を充電する。一方、電流Iinが電流I1より高い場合、つまり、電圧Vaが電圧V1より高い場合には、トランスコンダクタンスアンプ62は、コンデンサ23を放電する。なお、ここでは、コンデンサ23の充電電圧を電圧Vcapとする。
【0024】
放電回路51は、入力電流Iinが、所定の電流I2(>I1)より大きくなると、コンデンサ23を放電する。放電回路51は、バイアス電圧生成回路70、コンパレータ71、スイッチ72、及び定電流回路73を含んで構成される。
【0025】
バイアス電圧生成回路70は、電流I2(第2電流)の電流値に応じた電圧V2を生成する。なお、本実施形態では、電流I2が電流I1より大きくなるよう、電圧V2の電圧値は、電圧V1の電圧値より高く設定される。
【0026】
コンパレータ71(制御回路)は、電圧Vaが電圧V2より高くなると、スイッチ72をオンし、電圧Vaが電圧V2より低くなると、スイッチ72をオフする。スイッチ72の一端はコンデンサ23に接続され、他端は定電流回路73に接続されている。したがって、スイッチ72がオンすると、定電流回路73はコンデンサ23の電荷を定電流で放電する。
【0027】
判定回路52は、電圧Vbに基づいて、NMOSトランジスタ31に流れる電流Ibが、過電流であるか否かを判定する。具体的には、判定回路52は、電流Ibが過電流を示す所定の電流I3(>I2)より大きい場合、電流Ibが過電流であることを判定する回路である。
【0028】
スイッチング回路53は、抵抗90〜92、基準電圧回路93、オペアンプ94、コンデンサ95、及び駆動回路96を含んで構成される。
【0029】
抵抗90,91は、出力電圧Voutを分圧して帰還電圧Vfbを生成し、基準電圧回路93は、出力電圧Voutの最大値(例えば、8.4V)に応じた所定の基準電圧Vrefを生成する。
【0030】
オペアンプ94は、2つの非反転入力端子(+)と、1つの反転入力端子(−)を有し、2つの非反転入力端子(+)の夫々に印加された電圧のうち、低い方の電圧と、反転入力端子(−)に印加された電圧との誤差に応じた電圧を出力する。ここでは、2つの非反転入力端子(+)のうち、一方の端子には基準電圧Vrefが印加され、他方の端子には電圧Vcapが印加されている。したがって、電圧Vcapが基準電圧Vrefより低い場合、電圧Vcapと帰還電圧Vfbとの誤差が増幅され、基準電圧Vrefが電圧Vcapより低い場合、基準電圧Vrefと帰還電圧Vfbとの誤差が増幅される。オペアンプ94の出力には、スイッチング回路53の帰還ループの位相を補償するための抵抗92及びコンデンサ95が接続されている。なお、コンデンサ95の電圧を電圧Vcとする。
【0031】
駆動回路96は、電流Ibが過電流でないと判定されている場合、電圧Vcのレベルに基づいて、NMOSトランジスタ31と、NMOSトランジスタ32とを相補的にスイッチングする。具体的には、駆動回路96は、電圧Vcのレベルが高くなるにつれて出力電圧Voutが上昇するよう、NMOSトランジスタ31,32をスイッチングする。また、駆動回路96は、電流Ibが過電流であると判定された場合、NMOSトランジスタ31をオフする。なお、NMOSトランジスタ31がオンした際に流れる電流Ibは、入力電流Iinとほぼ等しい。このため、入力電流Iinの電流値は電流I3の電流値で制限される。
【0032】
<<電池15,16が接続されている状態での充電回路10の動作>>
==定電流充電==
まず、電圧Vcapが基準電圧Vrefよりも低く、充電回路10が定電流で電池15,16を充電する際の動作を説明する。
【0033】
例えば、電池15,16の充電電流の増加に応じて入力電流Iinが電流I1より大きくなると、電圧Vaが所定の電流I1を示す電圧V1より高くなる。これにより、トランスコンダクタンスアンプ62は、コンデンサ23を放電するため電圧Vcapは低下する。また、電圧Vcapが低下するとコンデンサ95は放電されるため、出力電圧Voutは低下する。電池15,16の充電に用いられる出力電圧Voutが低下すると、電池15,16の充電電流は減少するため、入力電流Iinも減少することになる。このように、入力電流Iinが電流I1より大きくなると、充電回路10は入力電流Iinを減少させる。
【0034】
一方、例えば、充電電流の減少に応じて入力電流Iinが電流I1より小さくなると、前述した場合とは逆に出力電圧Voutが高くなる。この結果、充電電流及び入力電流Iinは増加することになる。このように、スイッチング制御回路35は、入力電流Iinが電流I1となるように、電池15,16を定電流で充電する。
【0035】
ところで、電池15,16が定電流(電流I1)で充電されると、電池15,16の電池電圧Vbatは徐々に高くなる。このような状態で、仮に出力電圧Voutが一定であると、充電電流及び入力電流Iinは徐々に減少することになる。しかしながら、電池電圧Vbatは徐々に高くなり入力電流Iinが減少すると、スイッチング制御回路35は、前述のように電圧Vcapを上昇させて出力電圧Voutを上昇させる。この結果、充電回路10は、電池電圧Vbatが上昇した場合であっても、精度良く電池15,16を定電流で充電し続けることができる。
【0036】
==定電圧充電==
前述のように、電池15,16を定電流で充電し続けると、電池電圧Vbatが上昇する。そして、電池電圧Vbatが最大値である8.4Vに近づくと、トランスコンダクタンスアンプ62は、出力電圧Voutが8.4Vより高くなるよう、コンデンサ23を充電する。この結果、電圧Vcapは、出力電圧Voutが8.4Vの際の基準電圧Vrefよりも高くなる。このため、本実施形態では、電池電圧Vbatが最大値である8.4Vに近づくと、スイッチング回路53は、帰還電圧Vfbのレベルが、基準電圧Vrefのレベルに一致するよう、NMOSトランジスタ31,32をスイッチングすることになる。つまり、充電回路10は、充電電圧Vbatが高くなると、入力電流Iinを電流I1に一致させて電池15,16を定電流で充電する定電流モードから、8.4Vの出力電圧Voutで電池15,16を充電する定電圧モードで動作する。
【0037】
<<電池15,16が端子Gに接続された際の充電回路10の動作>>
つぎに、
図3を参照しつつ、充電余地が十分ある電池15,16が端子Gに接続された際の充電回路10の動作について説明する。なお、
図3は、電池15,16が端子Gに接続される前後における充電回路10の主要な波形を示す図である。また、本実施形態では、端子Gに接続されているマイコン等の負荷(不図示)の消費電流は、電流I1より十分小さいこととする。
【0038】
このような状態では、入力電流Iinは電流I1より小さく、電圧Vaは電圧V1より低い。したがって、コンデンサ62は、トランスコンダクタンスアンプ62により充電され続け、電圧Vcap(実線)は、トランスコンダクタンスアンプ62を動作させる電源電圧Vddのレベル近くまで上昇する。また、この際、電圧Vcapは、基準電圧Vref(一点鎖線)より高くなるため、8.4Vの出力電圧Voutが生成され続ける。
【0039】
時刻t1に、8.4Vの出力電圧Voutが印加されている端子Gに、例えば電池電圧Vbatが6Vの電池15,16が接続されると、充電回路10の入力側から電池15,16に対して過電流が流れる。このため、入力電流Iinは急激に増加する。ただし、前述のように、本実施形態では、入力電流Iinは電流I3で制限される。またこの際、入力電流Iinは電流I1よりも大きいため、トランスコンダクタンスアンプ62はコンデンサ23の放電を開始する。さらに、ここでは、入力電流Iinは電流I2(I1<I2<I3)よりも大きくなっている。したがって、
図2におけるスイッチ72がオンとなり、定電流回路73もコンデンサ23を放電する。これにより、電圧Vcapは急激に低下することになる。なお、この際は、電圧Vcapは基準電圧Vrefより高いため、充電回路10は、定電圧モードで動作している。
【0040】
そして、時刻t2に電圧Vcapが基準電圧Vrefより低くなると、充電回路10は、定電流モードの動作を開始する。このため、入力電流Iinは、電流I1となるよう制御される。
【0041】
以上、本発明の一実施形態である充電制御IC20を適用した充電回路10について説明した。本実施形態では、過電流が発生すると、コンデンサ23は、トランスコンダクタンスアンプ62及び定電流回路73の両方により放電される。このため、例えば、コンデンサ23がトランスコンダクタンスアンプ62のみにより放電される場合と比べると、定電圧モードから定電流モードに移行する時間が短くなる。また、定電流モードで充電回路10が動作すると、入力電流Iin(充電電流)は電流I1で制限される。このように、充電回路10は、入力電流Iinが過電流となった際に、入力電流Iinを電流I1まで減少させるまでの時間を短くできる。したがって、充電回路10は、過電流を低減することができる。
【0042】
また、コンデンサ23は定電流回路73で放電されることとしたが、例えば、スイッチ72で直接コンデンサ23の電荷を放電しても良い。このような場合であっても、過電流を低減することが可能となる。
【0043】
スイッチ72でコンデンサ23を直接放電すると、入力電流Iinが小さくなりすぎ、入力電流Iinを電流I1まで増加させるまで時間がかかることもある。コンデンサ23を定電流回路73で放電すると、コンデンサ23の電圧Vcapが低くなりすぎるのを防ぐことができる。したがって、このような場合、より短い時間で入力電流Iin(充電電流)を電流I1とすることができるため、充電時間を短くすることができる。
【0044】
また、電流I1は、データDAに基づいて定められる。したがって、充電回路10は、充電電流(入力電流Iin)を利用者の所望の値とすることができる。
【0045】
また、駆動回路96は、NMOSトランジスタ31に流れる電流Ibが過電流(電流I3)となると、NMOSトランジスタ31をオフする。このため、駆動回路96は、NMOSトランジスタ31等が過電流により破壊されることを防ぐことができる。
【0046】
なお、上記実施例は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。