特許第5964126号(P5964126)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964126
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】利器のホルダー
(51)【国際特許分類】
   B26B 21/10 20060101AFI20160721BHJP
   A45D 24/18 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   B26B21/10 A
   A45D24/18
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-105345(P2012-105345)
(22)【出願日】2012年5月2日
(65)【公開番号】特開2013-233174(P2013-233174A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 昌宏
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−293265(JP,A)
【文献】 米国特許第01998452(US,A)
【文献】 特許第3513153(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 21/02
B26B 21/08
A45D 24/18
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する一対の側板とその両側板間に介在させるスペーサとにそれぞれ互いに分離されてその両側板及びスペーサを互いに固定した支持部を備え、この側板の対辺側でそれぞれ支持部には機能部材に設けた取付部が着脱可能に挿着される溝を側板の対辺に沿って延設し、前記スペーサはこの両溝間で溝の延設方向に沿って互いに分離されて並設した複数の間隔保持部材を有し、スペーサで互いに隣接する両間隔保持部材間には両溝を互いに連通する通路を設けて両溝をそれぞれ支持部の外側へ開放し、
各間隔保持部材のうち少なくとも一つの間隔保持部材は、両側板に挿着されてかしめられる両端軸部と、その両端軸部間に設けられて両側板の間隔を保持する中間軸部とを有している
ことを特徴とする利器のホルダー。
【請求項2】
前記側板の対辺側においてそれぞれ、一対の側板で溝を挟んで相対向する側面の間隔は、溝の底面に対し相対向する開口側で狭くなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の利器のホルダー。
【請求項3】
前記各間隔保持部材は、前記支持部における溝の延設方向の両端部で両側板間に介在させた端間隔保持部材と、それらの端間隔保持部材間で両側板間に介在させた中間間隔保持部材とを備え、この端間隔保持部材は両側板に固着した駒であり、この中間間隔保持部材は前記両端軸部と中間軸部とを有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の利器のホルダー。
【請求項4】
前記両端間隔保持部材のうち一方の端間隔保持部材側で溝には機能部材の取付部が挿入される入口部を有していることを特徴とする請求項3に記載の利器のホルダー。
【請求項5】
前記両端間隔保持部材のうち他方の端間隔保持部材には前記入口部から溝に挿入された機能部材の取付部が当接するストッパ部を有していることを特徴とする請求項4に記載の利器のホルダー。
【請求項6】
前記中間間隔保持部材において中間軸部の外周面は両端軸部を結ぶ中心線を中心とする円形状に形成されていることを特徴とする請求項3〜5のうちいずれか一つの請求項に記載の利器のホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、櫛付きカットレザーなどの利器において、ガード付き刃体や櫛などの機能部材を取り付けるホルダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、板材を断面U状に折曲して両側板部間に溝を形成した支持部や、溝を切削加工して断面U状の両側板部を形成した支持部を有するホルダーにおいて、その溝に機能部材を取り付けていた(例えば下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−326001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようにして溝を形成した支持部については、溝の寸法誤差が生じ易くなり、その溝に機能部材を取り付ける際に、溝と機能部材との間に緩みが生じたり、溝に対する機能部材の挿入抵抗が大きくなったりするおそれがあった。そのため、機能部材に合った溝の寸法調整を必要としていた。
【0005】
この発明は、櫛付きカットレザーなどの利器において、機能部材に合った溝の寸法を容易に設定することができる構造を有するホルダーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜5)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる利器(例えば櫛付きカットレザー)のホルダー(1)においては、相対向する一対の側板(4)とその両側板(4)間に介在させるスペーサ(5)とにそれぞれ互いに分離されてその両側板(4)及びスペーサ(5)を互いに固定した支持部(3)を備えている。この側板(4)の対辺側でそれぞれ支持部(3)には機能部材(例えばガード付き刃体18や櫛19)に設けた取付部(18a,19a)が着脱可能に挿着される溝(11,12)を側板(4)の対辺に沿ってを延設している。前記スペーサ(5)はこの両溝(11,12)間で溝(11,12)の延設方向(X)に沿って互いに分離されて並設した複数の間隔保持部材(6,7,8)を有している。スペーサ(5)で互いに隣接する両間隔保持部材(6,7,8)間には両溝(11,12)を互いに連通する通路(13)を設けて両溝(11,12)をそれぞれ支持部(3)の外側へ開放している。各間隔保持部材(6,7,8)のうち少なくとも一つの間隔保持部材(8)は、両側板(4)に挿着されてかしめられる両端軸部(9)と、その両端軸部(9)間に設けられて両側板(4)の間隔を保持する中間軸部(10)とを有している。
請求項1の発明は下記の特徴(イ)〜(ト)を有している。
(イ) 利器のホルダー(1)においては、相対向する一対の側板(4)間にスペーサ(5)を介在させた支持部(3)を有し、その支持部(3)には機能部材(18,19)に設けた取付部(18a,19a)が挿着される溝(11,12)を延設している。従って、スペーサ(5)において両側板(4)の間隔を保持する部分の寸法を機能部材(18,19)の取付部(18a,19a)に合わせて容易に設定することができる。
【0008】
(ロ) 側板(4)の対辺側でそれぞれ支持部(3)に設けた溝(11,12)を互いに連通する通路(13)を設けて両溝(11,12)でそれぞれ支持部(3)の外側へ開放している。従って、両溝(11,12)にそれぞれ機能部材(18,19)の取付部(18a,19a)を挿着することができるとともに、ホルダー(1)の支持部(3)の洗浄時に洗浄水が通路(13)を通って流れ易い。
【0011】
(ハ) スペーサ(5)は、支持部(3)における溝(11,12)の延設方向(X)に沿って並設した複数の間隔保持部材(6,7,8)を有している。従って、スペーサ(5)を複数の間隔保持部材(6,7,8)に分けたので、スペーサ(5)において両側板(4)の間隔を保持する部分の寸法を間隔保持部材(6,7,8)ごとに機能部材(18,19)の取付部(18a,19a)に合わせて容易に設定することができる。
【0012】
(ニ) 支持部(3)は一対の側板(4)とスペーサ(5)とにそれぞれ互いに分離されてその両側板(4)及びスペーサ(5)を互いに固定したものである。従って、一対の側板(4)に対しスペーサ(5)を分離したので、スペーサ(5)において両側板(4)の間隔を保持する部分の寸法を機能部材(18,19)の取付部(18a,19a)に合わせて容易に設定することができる。
(ホ) 各間隔保持部材(6,7,8)のうち少なくとも一つの間隔保持部材(8)は、両側板(4)に挿着されてかしめられる両端軸部(9)と、その両端軸部(9)間に設けられて両側板(4)の間隔を保持する中間軸部(10)とを有している。従って、両側板(4)を間隔保持部材(8)の両端軸部(9)により締め付けて両側板(4)の間隔を間隔保持部材(8)の中間軸部(10)により維持することができる。
(ヘ) 互いに隣接する両間隔保持部材(6,7,8)間には、側板(4)の対辺側でそれぞれ支持部(3)に設けた溝(11,12)を互いに連通する通路(13)を設けて両溝(11,12)でそれぞれ支持部(3)の外側へ開放している。従って、互いに隣接する両間隔保持部材(6,7,8)を離して配置するだけで通路(13)を容易に設けることができるとともに、ホルダー(1)の支持部(3)の洗浄時に洗浄水が通路(13)を通って流れ易い。
(ト) 機能部材(18,19)の取付部(18a,19a)は、支持部(3)の溝(11,12)に対し着脱可能に挿着し得る。従って、一つのホルダー(1)で各種の機能部材(18,19)を利用することができる。
【0013】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記側板(4)の対辺側においてそれぞれ、一対の側板(4)で溝(11,12)を挟んで相対向する側面(11b,12b)の間隔(W)は、溝(11,12)の底面(11a,12a)に対し相対向する開口(11c,12c)側で狭くなるように形成されている。例えば、底面(11a,12a)側から開口(11c,12c)側へ向うに従い次第に狭くなる。従って、機能部材(18,19)の取付部(18a,19a)が開口(11c,12c)側の両側面(11b,12b)間で係止されて溝(11,12)から開口(11c,12c)側へ抜けるのを規制することができる。
【0014】
請求項2の発明にかかる利器のホルダー(1)の組付け方法おいては、一対の側板(4)の対辺側を組付け前に予め折曲し、相対向させた両側板(4)間にスペーサ(5)を介在させてその両側板(4)及びスペーサ(5)を互いに固定した支持部(3)を設け、この支持部(3)において両側板(4)の対辺側間に設けた溝(11,12)を挟んで相対向する側面(11b,12b)の間隔(W)は、溝(11,12)の底面(11a,12a)に対し相対向する開口(11c,12c)側で狭くなるように形成する。例えば、底面(11a,12a)側から開口(11c,12c)側へ向うに従い次第に狭くなる。従って、両側板(4)を予め折曲した後に両側板(4)及びスペーサ(5)を互いに固定するので、支持部(3)の組み付け後に両側板(4)を折曲する必要がなくなり、機能部材(18,19)の取付部(18a,19a)に合わせた溝(11,12)を容易に設けることができる。
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記各間隔保持部材は、前記支持部(3)における溝(11,12)の延設方向(X)の両端部で両側板(4)間に介在させた端間隔保持部材(6,7)と、それらの端間隔保持部材(6,7)間で両側板(4)間に介在させた中間間隔保持部材(8)とを備え、この端間隔保持部材は両側板(4)に固着した駒(6,7)であり、この中間間隔保持部材(8)は前記両端軸部(9)と中間軸部(10)とを有している。従って、両側板(4)の間隔を保持する部分の寸法を駒(6,7)及び中間間隔保持部材(8)により機能部材(18,19)の取付部(18a,19a)に合わせて容易に設定することができる。
請求項3の発明を前提とする請求項4の発明にかかる両端間隔保持部材(6,7)のうち一方の端間隔保持部材(6)側で溝(11,12)には機能部材(18,19)の取付部(18a,19a)が挿入される入口部(14)を有している。従って、支持部(3)の溝(11,12)に対し入口部(14)から挿入された機能部材(18,19)を所定位置に容易に保持することができる。
請求項4の発明を前提とする請求項5の発明にかかる両端間隔保持部材(6,7)のうち他方の端間隔保持部材(7)には前記入口部(14)から溝(11,12)に挿入された機能部材(18,19)の取付部(18a,19a)が当接するストッパ部(15)を有している。従って、支持部(3)の溝(11,12)に対し機能部材(18,19)を所定位置に容易に保持することができるとともに、スペーサ(5)でストッパ部(15)を兼用して部品点数を減らすことができる。
【0020】
請求項3〜5のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項6の発明において、前記中間軸部(10)の外周面は前記両端軸部(9)を結ぶ中心線を中心とする円形状に形成されている。従って、洗浄水が中間軸部(10)の円形外周面に案内されて通路(13)を流れ易い。
【0023】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項1〜6のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする第7の発明において、前記支持部(3)に取り付けた把持部(2)を有している。従って、利器(例えば櫛付きカットレザー)を扱い易い。
【0025】
請求項1〜6のうちいずれか一つの請求項の発明、または第7の発明を前提とする第8の発明において、前記機能部材は刃体(18)または櫛(19)である。従って、櫛付きカットレザーとして利用することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、櫛付きカットレザーなどの利器の支持部(3)において、機能部材(18,19)に合った溝(11,12)の寸法をスペーサ(5)により容易に設定して、溝(11,12)の寸法誤差を生じにくくし、その溝(11,12)に機能部材(18,19)を取り付ける際に、溝(11,12)と機能部材(18,19)との間の緩みや、溝(11,12)に対する機能部材(18,19)の挿入抵抗の増大を規制することができる。従って、支持部(3)の溝(11,12)に機能部材(18,19)を円滑に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】(a)(b)はそれぞれ櫛付きカットレザーを示す組付け斜視図である。
図2】(a)は櫛付きカットレザーにおけるホルダーの支持部を示す分解斜視図であり、(b)はその支持部を示す組付け斜視図である。
図3】(a)は櫛付きカットレザーにおけるホルダーの支持部を正面側から見た断面図であり、(b)は図2(b)のA−A線断面図であり、(c)は図2(b)のB−B線断面図であり、(d)は図2(b)のC−C線断面図である。
図4】(a)は櫛付きカットレザーを示す一部切欠き分解正面図であり、(b)は櫛付きカットレザーを示す一部切欠き組付け正面図である。
図5】(a)は図4(b)に示す櫛付きカットレザーの一部を切欠いて正面側から見た断面図であり、(b)は図4(b)のD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態にかかる利器としての櫛付きカットレザーについて図面を参照して説明する。
図1(a)(b)に示す櫛付きカットレザーにおいて、ホルダー1は、例えばステンレス鋼などの金属からなり、把持部2に対し一体的に取り付けられた支持部3を有している。図2(a)(b)に示すように、支持部3は、把持部2に対し分離して形成され、相対向する一対の側板4と、相対向する両側板4間に介在されるスペーサ5とを有している。両側板4にはかしめ孔4aが貫通されて並設されている。スペーサ5は、図2(a)に示すように、互いに分離された先端駒6(端間隔保持部材)と基端駒7(端間隔保持部材)と複数の軸8(中間間隔保持部材)とからなる。各軸8は、同一部品であって、両端軸部9と、その両端軸部9間で形成された中間軸部10とからなる。中間軸部10は、両端軸部9間の主軸部10aと、両端軸部9と主軸部10aとの境界で主軸部10aの外周に形成された鍔部10bとを有している。両端軸部9及び中間軸部10の外周面は両端軸部9を結ぶ中心線を中心とする円形状に形成されている。先端駒6と基端駒7と各軸8の中間軸部10とにおいて、両側板4の間隔を保持する部分の寸法はほぼ同一に設定されている。
【0029】
スペーサ5においては、図3(a)(b)(d)に示すように、先端駒6が両側板4の先端部間に挟持されているとともに、基端駒7が両側板4の基端部間に挟持され、図3(a)(c)に示すように、先端駒6と基端駒7との間で各軸8が両側板4間に挟持されて並設されている。各軸8の両端軸部9は両側板4の各かしめ孔4aに挿入されている。各軸8の中間軸部10は両鍔部10bで両側板4の間隔を保持している。
【0030】
両側板4の先端部と基端部との間で互いに分離された先端駒6と基端駒7と各軸8とは、図2(b)及び図3(a)に示すように、支持部3の長手方向Xに沿って並び、長手方向Xに対し直交する幅方向Yにおける両側板4間の対辺側でそれぞれ溝11,12が先端駒6と基端駒7とにわたり長手方向Xに沿って延設されている。両溝11,12は、図3(a)に示すように、先端駒6と基端駒7と各軸8とを結ぶ長手方向Xの中心線に対し平行で且つ先端駒6を通る想定底面11a,12aを有している。先端駒6及び基端駒7と各軸8との間並びに各軸8間にはそれぞれ両溝11,12の想定底面11a,12aを互いに連通する通路13が幅方向Yに形成されて両側板4間の対辺側で幅方向Yの外側へ開放されている。両側板4の先端縁は長手方向Xへ膨らみ、先端駒6はその先端縁上に合わせて配置されている。両溝11,12は、先端駒6上の想定底面11a,12aで長手方向X(溝11,12の延設方向)の外側へ開放された入口部14を有し、想定底面11a,12aから幅方向Yに延びるように基端駒7に形成されたストッパ部15により閉塞されている。幅方向Yの両側で基端駒7を挟む部分は開放部7aで溝11,12の延設方向へ開放されている。先端駒6と基端駒7と両溝11,12の想定底面11a,12aとで区画された部分の容積において、各通路13の容積和は各軸8の中間軸部10の容積和と比較してかなり大きくなっている。ちなみに、先端駒6における幅方向Yの寸法は約2.6mmに設定され、両溝11,12の想定底面11a,12a間に収容された各中間軸部10の主軸部10aの直径は約1.8mmに設定されている。
【0031】
一対の側板4の対辺側は組付け前に金属板のプレス成形により予め折曲され、相対向させた両側板4間にスペーサ5(先端駒6と基端駒7と軸8)を介在させてその両側板4及びスペーサ5を互いに組み付けた支持部3を設ける。支持部3において両側板4の対辺側間に設けられた溝11,12を挟んで相対向する側面11b,12bの間隔Wは、溝11,12の想定底面11a,12aに対し相対向する開口11c,12c側で、想定底面11a,12a側から開口11c,12c側へ向うに従い次第に狭くなるように形成されている。このようにして組み付けられた支持部3において、先端駒6及び基端駒7を両側板4に対し溶接により固着した後に、各軸8の両端軸部9を両側板4の各かしめ孔4aに対しかしめ、または、逆にかしめた後に固着する。両端軸部9のかしめ部分は、各かしめ孔4aの外周縁に形成された面取り部に入り込んで係止されている。そのかしめ部分の表面は外観できないように研磨により仕上げられている。また、先端駒6及び基端駒7の溶接部の表面も外観できないように研磨により仕上げられている。支持部3は幅方向Yで線対称形状になっている。
【0032】
図1(a)(b)に示すように、ホルダー1の把持部2においては、指掛け凹部16aを有する一対の側板16が互いに重ね合わされて溶接され、図5(a)に示すように両側板16間が中空状に形成されている。その溶接部分の表面は外観できないように研磨により仕上げられる。このように互いに分離して形成された把持部2と支持部3とは互いに突き合わされて溶接され、その溶接部分の表面が外観できないように研磨により仕上げられる。それらの突き合わせ部分において、幅方向Yの両側にはくびれ部17が形成されている。ちなみに、支持部3の側板4における幅方向Yの寸法は約13mmに設定され、ホルダー1における長手方向Xの寸法は約185mmに設定されている。
【0033】
図4(a)に示すように、機能部材としてのガード付き刃体18では金属製の刃板がプラスチック製のガードで覆われ、そのガードに取付部18aが形成されている。また、櫛19の全体はアルミニウムにより成形され、各櫛歯の基部に取付部19aが形成されている。ガード付き刃体18の取付部18aは、図4(b)及び図5(a)(b)に示すように、把持部2の指掛け凹部16a側である腹側に隣接する支持部3の腹側で溝11に対し入口部14から長手方向Xへ着脱可能に挿入され、ストッパ部15に当接して停止する。櫛19の取付部19aは、図4(b)及び図5(a)(b)に示すように、把持部2の指掛け凹部16a側に対する反対側である背側に隣接する支持部3の背側で溝12に対し入口部14から長手方向Xへ着脱可能に挿入され、ストッパ部15に当接して停止する。それらの取付部18a,19aが溝11,12の開口11c,12cで両側板4の側面11b,12bにより圧接されて挟持されるように、相対向する側面11b,12bの間隔Wが設定されている。
【0034】
このような櫛付きカットレザーを使用する場合について説明する。
ホルダー1の支持部3にガード付き刃体18及び櫛19を共に取り付けた場合には、図1(a)に示すように、ホルダー1の把持部2を握って指掛け凹部16aやくびれ部17に指を当てがい、ガード付き刃体18を下向きにした状態でそのガード付き刃体18により頭髪をカットする。また、頭髪を梳いたり整えたりする場合には、図1(b)に示すように、同じ手で把持部2を握ったまま持ち変えて櫛19を下向きにする。櫛付きカットレザーをこのようにして使用した後、ガード付き刃体18及び櫛19をホルダー1の支持部3から取り外して、それらを洗浄することができる。洗浄水は両溝11,12と通路13とを通って流れる。支持部3は幅方向Yで線対称形状になっているので、使用時には両溝11,12のうちどちらにガード付き刃体18や櫛19を挿着してもよい。
【0035】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) ホルダー1の支持部3において、ガード付き刃体18や櫛19の取付部18a,19aに合った溝11,12の寸法をスペーサ5により容易に設定して、溝11,12の寸法誤差を生じにくくし、その溝11,12にそれらの取付部18a,19aを取り付ける際に、溝11,12と取付部18a,19aとの間の緩みや、溝11,12に対する取付部18a,19aの挿入抵抗の増大を規制することができる。従って、支持部3の溝11,12にガード付き刃体18や櫛19を円滑に挿入することができる。
【0036】
(2) ホルダー1の支持部3を洗浄する際に洗浄水が各通路13を通って支持部3の外側へ流れ易くなり、洗浄効果を高めることができる。
(3) スペーサ5を複数の間隔保持部材(先端駒6と基端駒7と軸8)に分けてスペーサ5の形態を変更するだけで、通路13を容易に設けることができる。
(4) 各軸8は、両側板4に挿着されてかしめられる両端軸部9と、その両端軸部9間に設けられて両側板4の間隔を保持する中間軸部10とを有しているので、両側板4を軸8の両端軸部9により締め付けて両側板4の間隔を軸8の中間軸部10により維持することができる。
【0037】
(5) 両側板4を予め折曲した後に両側板4及びスペーサ5(先端駒6と基端駒7と軸8)を互いに固定するので、支持部3の組み付け後に両側板4を折曲する必要がなくなり、ガード付き刃体18や櫛19の取付部18a,19aに合わせた溝11,12を容易に設けることができる。
【0038】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
【0040】
スペーサ5の通路13については、複数または一つ設け、両溝11,12でそれぞれ外側へ開放させるようにしてもよい。
【0041】
ガード付き刃体18や櫛19以外の機能部材、例えば、毛染め用刷毛や調理用刃物や工具用刃体やスクレーパを支持部3の溝11,12に対し着脱可能に挿着してもよい。また、両溝11,12共にガード付き刃体18または櫛19を挿着してもよく、その場合にはそれらの種類を変えることができる。
【0042】
・ 把持部2や側板4や先端駒6や基端駒7や軸8については、樹脂により成形してもよい。また、それらを金属射出成形により成形してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…ホルダー、2…把持部、3…支持部、4…側板、5…スペーサ、6…端間隔保持部材としての先端駒、7…端間隔保持部材としての基端駒、8…中間間隔保持部材としての軸、9…軸の両端軸部、10…軸の中間軸部、11,12…溝、13…通路、14…入口部、15…ストッパ部、18…機能部材としてのガード付き刃体、19…機能部材としての櫛、18a,19a…取付部、X…長手方向(溝の延設方向)、Y…幅方向。
図1
図2
図3
図4
図5