(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964130
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
F16F 15/08 20060101AFI20160721BHJP
F16F 1/36 20060101ALI20160721BHJP
F16F 1/373 20060101ALI20160721BHJP
F16B 21/06 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
F16F15/08 E
F16F1/36 K
F16F1/373
F16B21/06 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-116337(P2012-116337)
(22)【出願日】2012年5月22日
(65)【公開番号】特開2013-242015(P2013-242015A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】蛇谷 茂樹
【審査官】
塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭50−023771(JP,Y1)
【文献】
実開昭52−075104(JP,U)
【文献】
特開2002−039330(JP,A)
【文献】
特開平07−190030(JP,A)
【文献】
特開2004−150476(JP,A)
【文献】
特開2006−162008(JP,A)
【文献】
米国特許第04575114(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/36、1/373
F16F 15/00−15/36
F16B 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状弾性体よりなり、筒状を呈し、外周面に取付部材の穴部の周縁部を嵌め込む溝部を設けた防振用のグロメットにおいて、
当該グロメットは、軸方向に2分割されることにより前記穴部に対し軸方向一方から挿入される一方の分割体と、軸方向他方から挿入される他方の分割体とを備え、
前記一方および他方の分割体は、前記挿入後、互いに係合して抜け止めをなす抜け止め用係合部を備え、
当該グロメットは、前記溝部の溝底部に相当する小径環状部位と、前記小径環状部位の軸方向一方に配置された第1大径環状部位と、前記小径環状部位の軸方向他方に配置された第2大径環状部位とを備え、このうち前記第1大径環状部位および前記小径環状部位の円周上一部である第1円弧部が前記一方の分割体によって形成されるとともに前記第2大径環状部位および前記小径環状部位の円周上残り一部である第2円弧部が前記他方の分割体によって形成され、
前記第1および第2円弧部に前記抜け止め用係合部が設けられていることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
ゴム状弾性体よりなり、筒状を呈し、外周面に取付部材の穴部の周縁部を嵌め込む溝部を設けた防振用のグロメットにおいて、
当該グロメットは、軸方向に2分割されることにより前記穴部に対し軸方向一方から挿入される一方の分割体と、軸方向他方から挿入される他方の分割体とを備え、
前記一方および他方の分割体は、前記挿入後、互いに係合して抜け止めをなす抜け止め用係合部を備え、
前記一方および/または他方の分割体における前記溝部の内面に相当する位置に、当該グロメットを前記取付部材に対し回り止めすべく前記取付部材に設けた係合部に係合する回り止め用係合部が設けられていることを特徴とするグロメット。
【請求項3】
ゴム状弾性体よりなり、筒状を呈し、外周面に取付部材の穴部の周縁部を嵌め込む溝部を設けた防振用のグロメットにおいて、
当該グロメットは、軸方向に2分割されることにより前記穴部に対し軸方向一方から挿入される一方の分割体と、軸方向他方から挿入される他方の分割体とを備え、
前記一方および他方の分割体は、前記挿入後、互いに係合して抜け止めをなす抜け止め用係合部を備え、
当該グロメットは、前記溝部の溝底部に相当する小径環状部位と、前記小径環状部位の軸方向一方に配置された第1大径環状部位と、前記小径環状部位の軸方向他方に配置された第2大径環状部位とを備え、このうち前記第1大径環状部位および前記小径環状部位の円周上一部である第1円弧部が前記一方の分割体によって形成されるとともに前記第2大径環状部位および前記小径環状部位の円周上残り一部である第2円弧部が前記他方の分割体によって形成され、
前記第1および第2円弧部に前記抜け止め用係合部が設けられ、
前記一方および/または他方の分割体における前記溝部の内面に相当する位置に、当該グロメットを前記取付部材に対し回り止めすべく前記取付部材に設けた係合部に係合する回り止め用係合部が設けられていることを特徴とするグロメット。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のグロメットにおいて、
前記一方および他方の分割体は、互いに同種のゴム材料によって成形され、または互いに異なる種類のゴム材料によって成形されていることを特徴とするグロメット。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載のグロメットにおいて、
前記一方および他方の分割体は、ゴム硬度を互いに同一に設定され、またはゴム硬度を互いに異なるように設定されていることを特徴とするグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振技術に係るグロメットに関する。本発明のグロメットは例えば自動車等車両の関連分野で用いられ、または一般産業用機械の分野などで用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来から
図4に示すように、ゴム状弾性体よりなる筒状のグロメット51が知られており、このグロメット51は図示するように、その外周面に設けた溝部53に一方の取付部材61の穴部62の周縁部63を嵌め込むことにより一方の取付部材(例えば吸気管ブラケット)61に取り付けられるとともに、その中心軸穴52に差し込んだボルト64をナット65に締結することにより他方の取付部材(例えば車両ボディ)66に取り付けられ、両取付部材61,66を防振のうえ連結する機能を発揮する。
【0003】
しかしながら、このグロメット51はゴム状弾性体による一体の成形品として成形されているために、以下の問題がある。
【0004】
すなわち、グロメット51の外径が一方の取付部材61の穴部62の内径より大きく設定されているため、グロメット51を一方の取付部材61に取り付ける際にグロメット51を大きく弾性変形させる必要がある。したがって取付時、グロメット51に亀裂などが発生することがある。
【0005】
また、このようにグロメット51を大きく弾性変形させつつグロメット51に亀裂などが発生しないように慎重に取り付ける必要があるため、取付作業に熟練を要し、多くの手間と時間がかかる。また、このようにグロメット51を取り付けにくいと云うことは、グロメット51を取り外しにくいと云うことでもある。
【0006】
また、ボルト64およびナット65の締結時、グロメット51に回転トルクが作用するため、グロメット51が供回りして円周方向に捩れた状態で取り付けられ、これがボルト64およびナット65の締結が早期に緩む原因となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−95885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の点に鑑みて、グロメットを取付部材に取り付ける際にグロメットを大きく弾性変形させる必要がなく、よってグロメットに亀裂などが発生することがなく、取付作業を容易化することもできるグロメットを提供することを目的とする。
【0009】
またこれに加えて、ボルト・ナットの締結時にグロメットが供回りすることがなく、よってグロメットが円周方向に捩れた状態で取り付けられることがないグロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるグロメットは、ゴム状弾性体よりなり、筒状を呈し、外周面に取付部材の穴部の周縁部を嵌め込む溝部を設けた防振用のグロメットにおいて、当該グロメットは、軸方向に2分割されることにより前記穴部に対し軸方向一方から挿入される一方の分割体と、軸方向他方から挿入される他方の分割体とを備え、前記一方および他方の分割体は、前記挿入後、互いに係合して抜け止めをなす抜け止め用係合部を
備え、当該グロメットは、前記溝部の溝底部に相当する小径環状部位と、前記小径環状部位の軸方向一方に配置された第1大径環状部位と、前記小径環状部位の軸方向他方に配置された第2大径環状部位とを備え、このうち前記第1大径環状部位および前記小径環状部位の円周上一部である第1円弧部が前記一方の分割体によって形成されるとともに前記第2大径環状部位および前記小径環状部位の円周上残り一部である第2円弧部が前記他方の分割体によって形成され、前記第1および第2円弧部に前記抜け止め用係合部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2によるグロメットは、
ゴム状弾性体よりなり、筒状を呈し、外周面に取付部材の穴部の周縁部を嵌め込む溝部を設けた防振用のグロメットにおいて、当該グロメットは、軸方向に2分割されることにより前記穴部に対し軸方向一方から挿入される一方の分割体と、軸方向他方から挿入される他方の分割体とを備え、前記一方および他方の分割体は、前記挿入後、互いに係合して抜け止めをなす抜け止め用係合部を備え、前記一方および/または他方の分割体における前記溝部の内面に相当する位置に、当該グロメットを前記取付部材に対し回り止めすべく前記取付部材に設けた係合部に係合する回り止め用係合部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3によるグロメットは、
ゴム状弾性体よりなり、筒状を呈し、外周面に取付部材の穴部の周縁部を嵌め込む溝部を設けた防振用のグロメットにおいて、当該グロメットは、軸方向に2分割されることにより前記穴部に対し軸方向一方から挿入される一方の分割体と、軸方向他方から挿入される他方の分割体とを備え、前記一方および他方の分割体は、前記挿入後、互いに係合して抜け止めをなす抜け止め用係合部を備え、当該グロメットは、前記溝部の溝底部に相当する小径環状部位と、前記小径環状部位の軸方向一方に配置された第1大径環状部位と、前記小径環状部位の軸方向他方に配置された第2大径環状部位とを備え、このうち前記第1大径環状部位および前記小径環状部位の円周上一部である第1円弧部が前記一方の分割体によって形成されるとともに前記第2大径環状部位および前記小径環状部位の円周上残り一部である第2円弧部が前記他方の分割体によって形成され、前記第1および第2円弧部に前記抜け止め用係合部が設けられ、前記一方および/または他方の分割体における前記溝部の内面に相当する位置に、当該グロメットを前記取付部材に対し回り止めすべく前記取付部材に設けた係合部に係合する回り止め用係合部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の
請求項4によるグロメットは、上記した
請求項1、2または3記載のグロメットにおいて、前記一方および他方の分割体は、互いに同種のゴム材料によって成形され、または互いに異なる種類のゴム材料によって成形されていることを特徴とする。
【0015】
更にまた、本発明の
請求項5によるグロメットは、上記した
請求項1、2、3または4記載のグロメットにおいて、前記一方および他方の分割体は、ゴム硬度を互いに同一に設定され、またはゴム硬度を互いに異なるように設定されていることを特徴とする。
【0016】
上記構成を備える本発明においては、グロメットが、軸方向に2分割されることにより取付部材の穴部に対し軸方向一方から挿入される一方の分割体と、軸方向他方から挿入される他方の分割体とを備えているため、これら分割体はいずれも、取付部材に取り付ける際に大きく弾性変形する必要のない形状とすることが可能とされる。また、これら分割体は穴部への挿入後、互いに係合して抜け止めをなす抜け止め用係合部を備えているため、取付部材から外れにくい。
【0017】
ゴム状弾性体よりなり、筒状を呈し、外周面に取付部材の穴部の周縁部を嵌め込む溝部を設けた防振用のグロメットは、これを仕分け直すと、溝部の溝底部に相当する小径環状部位と、小径環状部位の軸方向一方に配置された第1大径環状部位と、小径環状部位の軸方向他方に配置された第2大径環状部位とを備えているため、上記2分割に際しては、このうち第1大径環状部位および小径環状部位の円周上一部である第1円弧部を一方の分割体によって形成するとともに第2大径環状部位および小径環状部位の円周上残り一部である第2円弧部を他方の分割体によって形成するのが好適であり、これによれば取付部材の穴部に対し軸方向一方から第1円弧部を挿入するとともに軸方向他方から第2円弧部を挿入することにより、各分割体を大きく弾性変形させることなく取り付けることが可能とされる。この場合、抜け止め用係合部はこれら第1および第2円弧部に設けられる。
【0018】
抜け止め用係合部の具体例としては、抜け止め方向に互いに係合する一対の爪状部の組み合わせとするのが好適であり、これによれば爪状部同士が係合することにより、確実な抜け止めが図られる。またこの場合、一方の爪状部の先端部に、他方の爪状部が挿入時に弾性変形しやすくするための傾斜面状の案内面を設けるのが好適であり、これによれば分割体同士を軸方向に押し付けることにより一方の爪状部を他方の爪状部が容易に乗り越えるため、爪状部同士を容易に係合させることが可能とされる。
【0019】
また、一方および/または他方の分割体における溝部の内面に相当する位置に回り止め用係合部を設けてこれを取付部材に設けた係合部と係合することにより、ボルト・ナットの締結時にグロメットが供回りするのを抑制することが可能とされる。
【0020】
一方および他方の分割体は、これらを互いに同種のゴム材料によって成形しても良いが、互いに異なる種類のゴム材料によって成形しても良い。また一方および他方の分割体は、ゴム硬度を互いに同一に設定しても良いが、ゴム硬度を互いに異なるように設定しても良く、これらによればゴム材料またはゴム硬度についての組み合わせが多様化されるため、製品仕様を多様化することが可能とされる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0022】
すなわち、本発明においては上記したように、グロメットが、軸方向に2分割されることにより取付部材の穴部に対し軸方向一方から挿入される一方の分割体と、軸方向他方から挿入される他方の分割体とを備えているため、これら分割体はいずれも、取付部材に取り付ける際に大きく弾性変形する必要のない形状とすることが可能とされている。また、これら分割体は穴部への挿入後、互いに係合して抜け止めをなす抜け止め用係合部を備えているため、取付部材から外れにくい。したがって、グロメットを取付部材に取り付ける際にグロメットを大きく弾性変形させる必要がないため、グロメットに亀裂などが発生するのを防止することができ、併せて取付作業を容易化することができる。
【0023】
抜け止め用係合部を一対の爪状部の組み合わせとする場合には、爪状部同士が係合することにより確実な抜け止めを図ることができ、一方の爪状部の先端部に傾斜面状の案内面を設ける場合には、分割体同士を軸方向に押し付けることにより爪状部同士を容易に係合させることができる。
【0024】
また、分割体における溝部の内面に相当する位置に突起状の回り止め部を設けてこれを取付部材に設けた凹部に係合する場合には、ボルト・ナットの締結時にグロメットが供回りするのが抑制されるため、グロメットが円周方向に捩れた状態で取り付けられるのを防止することができる。
【0025】
また、一方および他方の分割体を互いに異なる種類のゴム材料によって成形したり、ゴム硬度を互いに異なるように設定したりする場合には、製品仕様を多様化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施例に係るグロメットを示す図で、(A)は同グロメットを組み立てる前の状態を示す斜視図、(B)は同グロメットを組み立てた後の状態を示す斜視図
【
図2】同グロメットを示す図で、(A)は同グロメットを組み立てる前の状態を示す断面図、(B)は同グロメットを組み立てた後の状態を示す断面図
【
図3】同グロメットを示す図で、(A)は同グロメットを取付部材に取り付ける前の状態を示す断面図、(B)は同グロメットを取付部材に取り付けた後の状態を示す断面図
【
図4】従来例に係るグロメットの取付状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)本発明では、グロメットを2分割することで組み付け性を向上し、組み付けによる変形、亀裂を防止する。
(2)また、2分割タイプにすることで違うゴム材料・ゴム硬度を組み合わせることができ、それぞれ取り付ける場所により要求仕様(耐熱性、耐油性、支持荷重等)が異なる場合でも違うゴム材料・ゴム硬度を組み合わせることで対応することが可能となる。
(3)グロメットを2分割することで突起を設け易くなり、突起をストッパとして使用することで捩り方向への供回りを防止する。
【実施例】
【0028】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0029】
図1〜
図3は、本発明の実施例に係るグロメット11を示している。当該実施例に係るグロメット11は、ゴム状弾性体よりなり、筒状を呈し、外周面に一方の取付部材61の穴部62の周縁部63を嵌め込むための環状の溝部13を設けた防振用のグロメットであって、軸方向(図では上下方向)に2分割されることにより取付部材61の穴部62に対し軸方向一方(図では下方)から挿入される一方の分割体14と、軸方向他方(図では上方)から挿入される他方の分割体15とを備え、これら一方および他方の分割体14,15に、挿入後、互いに係合して穴部62からの抜け止めをなすための抜け止め用係合部16が設けられている。
【0030】
一方の取付部材61は、プレート状の部材であって例えば自動車等車両における吸気管系のブラケットであり、この一方の取付部材61に設けた穴部62の周縁部63を溝部13に嵌め込むことにより当該グロメット11が一方の取付部材61に取り付けられる。またグロメット11は、その中心軸穴12にボルト(図示せず)を差し込んでナット(図示せず)に締結することにより他方の取付部材(図示せず)に取り付けられる。グロメット11およびボルト間にはボルト締めを定寸止めするため、金属等剛材製のブッシュ(図示せず)が介装されることが多い。他方の取付部材は例えば自動車等車両における車両ボディである。したがって当該グロメット11はこの両取付部材を防振のうえ連結する機能を発揮する。
【0031】
また、当該実施例に係るグロメット11は
図2(B)に示すように、溝部13の溝底部に相当する小径環状部位11Aと、この小径環状部位11Aの軸方向一方に配置された第1大径環状部位11Bと、小径環状部位11Aの軸方向他方に配置された第2大径環状部位11Cとを備え、このうち第1大径環状部位11Bおよび小径環状部位11Aの円周上一部(平面上ほぼ180度範囲の部位)である第1円弧部11Aaが一方の分割体14によって形成されるとともに、第2大径環状部位11Cおよび小径環状部位11Aの円周上残りの一部(平面上ほぼ180度範囲の部位)である第2円弧部11Abが他方の分割体15によって形成され、第1および第2円弧部11Aa,11Abの円周上端部にそれぞれ抜け止め用係合部16が設けられている。
【0032】
この抜け止め用係合部16は、抜け止め方向に互いに係合する一対の爪状部17,18の組み合わせよりなり、一方の爪状部17の先端部に、他方の爪状部18が挿入時に弾性変形しやすくするための先端へ向けて下り勾配の傾斜面状の案内面19が設けられ、他方の爪状部18の先端部にも対応して同様の傾斜面状の案内面20が設けられている。
【0033】
また、一方の分割体14における溝部13の内面に相当する位置であって第1大径環状部位11Bの端面位置に、当該グロメット11を一方の取付部材61に対し回り止めすべく取付部材61に設けた穴状の係合部67に係合する突起状の回り止め用係合部21が設けられ、他方の分割体15における溝部13の内面に相当する位置であって第2大径環状部位11Cの端面位置にも、当該グロメット11を一方の取付部材61に対し回り止めすべく取付部材61に設けた穴状の係合部68に係合する突起状の回り止め用係合部22が設けられている。穴状の係合部67,68はこれに代えて凹部状の係合部であっても良く、凹凸の関係は反対であっても良い。
【0034】
上記構成を備えるグロメット11においては、軸方向に2分割されることにより一方の取付部材61の穴部62に対し軸方向一方から挿入される一方の分割体14と、軸方向他方から挿入される他方の分割体15とが備えられ、これら分割体14,15がいずれも、取付部材61に取り付ける際に大きく弾性変形する必要のない形状とされている。また、これら分割体14,15は穴部62への挿入後、互いに係合して抜け止めをなすための抜け止め用係合部16を備えているため、取付部材61から外れることがない。したがってグロメット11を取付部材61に取り付ける際にグロメット11を大きく弾性変形させる必要がないため、グロメット11に亀裂などが発生するのを防止することができ、併せて取付作業、更には取外し作業を容易化することができる。
【0035】
また、抜け止め用係合部16が、第1および第2円弧部11Aa,11Abの円周上端部にそれぞれ設けた爪状部17,18を互いに係合させるものとされているため、確実な係合、延いては確実な抜け止めを実現することができる。
【0036】
また、爪状部17,18の先端部に傾斜面状の案内面19,20が設けられているため、分割体14,15同士を軸方向に押し付けるのみで一方の爪状部17を他方の爪状部18が容易に乗り越える。したがって容易に係合するとともに外れにくい構造の爪状部17,18による抜け止め構造を提供することができる。
【0037】
また、一方および他方の分割体14,15における溝部13の内面に相当する位置に突起状の回り止め用係合部21,22が設けられているため、この回り止め用係合部21,22を取付部材61に設けた穴状の係合部67,68と係合することにより、ボルト・ナットの締結時にグロメット11が供回りするのが抑制される。したがってグロメット11が円周方向に捩れた状態で取り付けられるのを防止することができ、延いてはボルト・ナットの締結が早期に緩むのを防止することができる。
【0038】
尚、上記一方および他方の分割体14,15は、互いに同種のゴム材料によって成形されるが、互いに異なる種類のゴム材料によって成形されるものであっても良い。また一方および他方の分割体14,15は、ゴム硬度を互いに同一に設定されるが、ゴム硬度を互いに異なるように設定されるものであっても良い。そして、これらによればゴム材料またはゴム硬度についての組み合わせが多様化されるため、グロメット製品仕様を多様化することができる。
【符号の説明】
【0039】
11 グロメット
11A 小径環状部位
11Aa 第1円弧部
11Ab 第2円弧部
11B 第1大径環状部位
11C 第2大径環状部位
12 中心軸穴
13 溝部
14 一方の分割体
15 他方の分割体
16 抜け止め用係合部
17,18 爪状部
19,20 案内面
21,22 回り止め用係合部
61 取付部材
62 穴部
63 周縁部
67,68 係合部