(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964136
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】無線デマンド制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20160721BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20160721BHJP
G01R 21/00 20060101ALI20160721BHJP
G01R 11/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
H02J3/14
H02J13/00 301A
H02J13/00 311T
G01R21/00 Q
G01R11/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-119730(P2012-119730)
(22)【出願日】2012年5月25日
(65)【公開番号】特開2013-247764(P2013-247764A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】大橋 均
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】森田 拓実
【審査官】
田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−045948(JP,A)
【文献】
特開2011−125095(JP,A)
【文献】
特開2011−065350(JP,A)
【文献】
特開2005−006034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/14
G01R 11/00
G01R 21/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線路から電力を受電するキュービクルと、前記キュービクルから供給された電力を使用する負荷機器とを備えた施設において、
前記負荷機器の使用電力を計測する計測ユニットと、使用電力の計測値が目標値を超えると予測された場合にデマンド制御指令を出力する監視ユニットと、前記デマンド制御指令に応答して前記負荷機器の稼動を制御する制御ユニットとを備え、
前記計測ユニットを前記キュービクルの筐体に内蔵する一方、前記監視ユニットを前記施設の建物に設置し、
前記筐体に設けられた窓ガラスの補強用金網でアンテナを構成し、当該アンテナを介して前記計測ユニットの計測データを前記監視ユニットに無線送信することで、前記使用電力の計測データを前記計測ユニットから前記監視ユニットに送信することを特徴とするデマンド制御システム。
【請求項2】
前記デマンド制御指令を無線通信によって監視ユニットから制御ユニットに送信することを特徴とする請求項1記載のデマンド制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に小口需要家の電力管理に適したデマンド制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、原子力発電設備の稼動停止に伴い、電力不足の長期化が予想されている。デマンド制御システムは、節電を目的とする電力管理を行うため、電力不足に対処するに有効なシステムである。しかし、現状このシステムは、大口需要家に普及しているものの、小売店舗や小規模工場等の小口需要家の間では、導入コストが高くつくため、普及率が極めて低い。
【0003】
そこで、従来、小口需要家向けの電力管理システムが提案されている。例えば、特許文献1には、コンビニ等の小規模施設の敷地に専用キュービクルと店舗建物を新設し、専用キュービクルに計測ユニットと制御ユニットを設置し、店舗建物内に省エネ電気機器と通信装置を設置し、外部の電力管理サーバで店舗の消費電力量を管理するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−96906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来技術によると、新規出店時であれば、システムをキュービクルや省エネ機器と合せて比較的安価に導入できるが、既存施設の場合は、付帯工事に多くの費用がかかる問題点があった。特に、キュービクルと店舗建物との間の通信線は地中埋設工事または架空工事を必要とするため、通信用配線工事費が高くつき、小口需要家がシステムの導入をためらう大きな要因となっていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、通信用配線工事を不要にし、小口需要家の既存施設へより安価に導入できるデマンド制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、配電線路から電力を受電するキュービクルと、キュービクルから供給された電力を使用する負荷機器とを備えた施設において、次のようなデマンド制御システムを提供する。
【0008】
(1)負荷機器の使用電力を計測する計測ユニットと、使用電力の計測値が目標値を超えると予測された場合にデマンド制御指令を出力する監視ユニットと、デマンド制御指令に応答して負荷機器の稼動を制御する制御ユニットとを備え、計測ユニットをキュービクル
の筐体に内蔵する一方、監視ユニットを施設の建物に設置し、
筐体に設けられた窓ガラスの補強用金網でアンテナを構成し、当該アンテナを介して計測ユニットの計測データを監視ユニットに無線送信することで、使用電力の計測データ
を計測ユニットから監視ユニットに送信することを特徴とするデマンド制御システム。
【0009】
(2)デマンド制御指令を無線通信によって監視ユニットから制御ユニットに送信することを特徴とするデマンド制御システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用電力の計測データを無線通信で計測ユニットから監視ユニットに送信するので、キュービクルと建物との間における通信用配線工事を不要にし、小口需要家の既存施設にデマンド制御システムを安価に導入できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態を示す店舗の外観図である。
【
図2】店舗のデマンド制御システムを示す全体図である。
【
図3】計測、監視、制御ユニットの構成を機能的に示すブロック図である。
【
図4】監視ユニットの変更例を示すブロック図である。
【
図5】計測ユニットおよびアンテナを示すキュービクルの一部立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す店舗1は、敷地内に建物2、キュービクル3、駐車場4を備えている。建物2の内外には、照明、冷凍、冷蔵、空調等の各種負荷機器5(代表的に空調室外機を図示)が設備されている。キュービクル3は、鋼板製の筺体31に受配電機器(図示略)を内蔵し、配電線路6から受電した高圧を所要の低圧に変圧したのち、地中または架空給電線(図示略)を介して、低圧電力を負荷機器5に供給するようになっている。
【0014】
図2に示すように、店舗のデマンド制御システム11は、負荷機器5の使用電力を計測する計測ユニット12、店舗全体の電力使用状況を監視する監視ユニット13、負荷機器5を制御する制御ユニット14、設定値や電力使用履歴等を閲覧する閲覧ユニット15、および、監視ユニット13と閲覧ユニット15を外部管理サーバー17にネットワーク接続する通信ユニット16から構成されている。そして、計測ユニット12がキュービクル3に設置され、その他のユニット13〜16が建物2に設置されている。
【0015】
図3に示すように、計測ユニット12は、電力計測部121と無線通信部122とを備えている。電力計測部121は、キュービクル3内の電力量計18が発信したサービスパルスを受信し、所定の時間間隔(例えば1分)で各負荷機器5の使用電力を計測する。そして、無線通信部122が使用電力の計測データを無線通信によって計測ユニット12から監視ユニット13に送信するようになっている。
【0016】
監視ユニット13は、計測および制御ユニット12,14と通信を行う無線通信部131と、計測ユニット12から受信した計測データに基づいて、所定時限(例えば30分)単位で使用電力を累積する累積部132と、電力会社との契約値であるデマンド目標値を設定する設定部133と、使用電力の累積値がデマンド目標値を超えると予測された場合にデマンド制御指令を出力するデマンド制御部134とを備え、その制御指令を無線通信部131が監視ユニット13から制御ユニット14に無線送信するように構成されている。
【0017】
制御ユニット14は、無線通信部141と機器制御部142とを備え、無線通信部141が監視ユニット13からデマンド制御指令を受信し、この指令に応答し、機器制御部142が予め定められた手順、例えば、一部の負荷機器5への電力供給を遮断したり、複数の負荷機器5を順番で省エネ運転したりするなどの手順に従って、負荷機器5の稼動を制御し、店舗全体の使用電力を節減できるようになっている。
【0018】
なお、各ユニット12,13,14の無線通信部122,131,141は、特定周波数帯域(例えば920MHz)の近距離無線用電波を使用し、暗号化処理したデータを送受信する。また、
図4に示すように、監視ユニット13に、デマンド目標値設定部133に加えて時間帯目標値設定部135を設け、一日のうち特定の時間帯、例えば、店舗1の開店前および/または閉店後の時間帯に、負荷機器5の省エネ運転を強化するなどの制御を行うこともできる。
【0019】
図5に示すように、計測ユニット12は、キュービクル3の鋼板製筐体31に内蔵され、裏面の永久磁石123によって筐体31の適宜場所に着脱可能に装備されている。筐体31の外面、例えば前面扉32には、窓ガラス33の補強用金網34を兼用したアンテナ35が設けられている。アンテナ35は、給電線36を介して計測ユニット12の無線通信部122(
図3参照)に接続され、金属製の筐体31に妨げられることなく、計測データの無線通信を中継できるようになっている。
【0020】
従って、この実施形態のデマンド制御システム11によれば、使用電力の計測データを無線通信によって計測ユニット12から監視ユニット13に送信するので、キュービクル3と建物2との間における通信用の地中配線工事や架空配線工事を不要にできる。また、工事期間中に休業する必要もなくなるので、店舗1の既存施設にデマンド制御システム11を安価なコストで導入できる。しかも、デマンド制御指令を無線で監視ユニット13から制御ユニット14に送信するので、システム11の導入にあたり、建物2内の配線工事も簡単に済ませることができる。
【0021】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、次に例示するように、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の構成を適宜に変更して実施することも可能である。
(1)本発明の無線デマンド制御システム11を事務所、工場、倉庫などの各種小規模施設に適用すること。
(2)計測ユニット12のアンテナ35を前面扉32のハンドル37(
図1参照)、筐体31の換気口38など、キュービクル3の外面各所に設置すること。
【符号の説明】
【0022】
1 店舗
2 建物
3 キュービクル
5 負荷機器
6 配電線路
11 デマンド制御システム
12 計測ユニット
13 監視ユニット
14 制御ユニット
35 アンテナ