(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可撓性シート材をフレーム材に取り付ける方法としては、フレーム材の周縁をフレーム材に溶着又は接着したり、フレーム材を樹脂で製造するにおいて可撓性シート材をインサート成形したり、或いは
、押さえ板を介して可撓性シート材の周縁部を押さえ固定したりといった方法もあるが、特許文献1のように縁部材を溝条に嵌め込む方式を採用すると、溶着・接着・インサート成形に比べて、可撓性シート材の取り付けを簡単に行える利点や、可撓性シート材の交換が容易である利点、フレーム材と可撓性シート材との色等の組み合わせを任意に選択できる等の利点がある。
【0005】
さて、例えば正面視で概ね
四角形になっている背もたれの場合、縁部材を背フレーム材の各辺ごとに溝条に嵌め込むことになるが、例えば
、左右両辺、上辺、下辺の順で嵌め込みを行うとすると、左右側辺と上辺の嵌め込みに際しては
、可撓性シート材は軽い力で簡単に引っ張ることができるため嵌め込みは簡単に行えるが、下辺の溝条に縁部材を嵌め込むに際しては、可撓性シート材の左右両辺と上辺とが拘束されているため、強い力で可撓性シート材を引っ張らないと縁部材を溝条に嵌め込むことができない。
【0006】
さりとて、嵌め込みの容易性を優先して、可撓性シート材を強く引っ張らなくても下辺を溝条に嵌め込みできるように設定しておくと、取り付けた後に可撓性シート材に弛みが発生しやすくなったり、着座者の体圧が作用した際のバウンド現象で縁部材が溝条から外れたりする問題がある。つまり、従来は、可撓性シート材の取り付けの容易性と取り付け強度とが相反していた。
【0007】
本願発明は、この問題を解消することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、請求項1に記載したように、
「背もたれ又は座若しくは両方
が、着座者の体圧が
支持される可撓性シート材
と、前記可撓性シート材の周縁
の略全周にわたって
固定された縁部材
と、前記縁部材
が取付けられるフレーム材とを有しており、
前記縁部材は、周方向に分離した第1縁部材と第2縁部材とから成っていて、少なくとも前記第2縁部材は剛体構造であり、前記第1縁部材をフレーム材に取り付けた状態で前記第2縁部材がフレーム材に取付けられる構成であって、
前記第2縁部材は、前記第1縁部材に近接した両端部を支点にして着座者の体圧がかかる方向に回動させることによって前記フレーム材に重なる構成であり、
前記可撓性シート材を、前記第2縁部材のうち回動支点と反対側の部位にも取付ける
ことと、前記第2縁部材を、前記可撓性シート材のテンションで容易に変形しない剛体構造と成すことにより、前記第2縁部材の回動によって前記可撓性シート材のテンションが変化するようになっている」、
というものである。
【0009】
本願発明は様々に展開できる。その例を請求項2以下で提示している。このうち請求項2の発明は、請求項1において、
前記フレーム材に、前記第2縁部材の回動を許容するヒンジ手段が設けられている。
請求項3の発明は、請求項1において、
前記第1縁部材は撓み変形可能な素材から成っていてテープ状の形態を成しており、前記フレーム材の外周面には、前記テープ状の第1縁部材が嵌まる溝条を外向きに開口するように形成している、前記第1縁部材は撓み変形可能な素材から成っていてテープ状の形態を成しており、前記フレーム材
の外周面には、前記テープ状の第1縁部材が嵌まる溝条が外向きに開口するように形成
している。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1において、前記第1縁部材も剛体になっている。
請求項5の発明は、請求項1〜3のうちのいずれかにおいて、前記可撓性シート材は、前記第2縁部材に対して、縫着又は接着若しくは他の手段で直接に固定されているか、撓み変形可能なテープ状の補助部材を介して固定されている。
請求項6の発明は、請求項1〜4のうちのいずれかにおいて、背もたれを、
可撓性シート材が前記第1縁部材及び第2縁部材を介して背フレーム材に取り付けられた構成としており、前記背フレーム材は、着座者の腰に向けて突出するランバーサポート部を有していて側面視で曲がっており、前記第2縁部材は、前記ランバーサポート部の前端よりも下方の部位に配置されている。
請求項
7の発明は、請求項
6において、前記
背フレーム材は、前記ランバーサポート部の前端が位置する部位の左右幅が最も大き
くて、ランバーサポート部を挟んだ上下両側に向けて
左右幅が窄まっている。
【0011】
請求項
8の発明は、請求項
2において、前記第2縁部材は樹脂の成形品であり、この第2縁部材と前記フレーム材とは、それらに形成した係合爪と係合穴との噛み合わせ又は係合爪同士の噛み合わせによって離反不能に保持されており、前記第2縁部材をフレーム材に重ね合わせると、前記係合爪はいったん撓んでから戻り変形することで係合穴又は係合爪に噛み合うようになっている。
【0012】
【発明の効果】
【0013】
従来技術において、可撓性シート材の取り付けの最後の段階で当該可撓性シート材に強いテンションを掛けるのが厄介であったが、その理由は、縁部材
は簡単に撓み変形するテープ状で
あるため強く掴み難くて力を掛けにくいことと、可撓性シート材
に、取り付け
た後の状態よりも更に強いテンションが掛かるように縁部材を引っ張って
(弾性変形させて)、縁部材をフレーム材の外周に回り込ませなければならないこととに起因している。
【0014】
他方、本願発明では、先に第1縁部材をフレーム材に取り付け
ておいてから、第2縁部材を最後にフレーム材に取り付けることにより、第1縁部材
がテープ状であってもフレーム材に簡単に取り付けることができるが、第2縁部材は剛体構造であるため、可撓性シート材に強いテンションを掛けることを軽い力で簡単に行える。しかも、第2縁部材は、
着座者の体圧の作用方向と同じ方向から
フレーム材に重ね合わせられるため、可撓性シート材を必要以上に大きく引っ張る必要はない。
【0015】
このように、本願発明では、第1縁部材を軽い力でフレーム材に取り付けることができると共に、第2縁部材は、可撓性シート材に強いテンションを掛けた状態
にて、軽い力で簡単にフレーム材に取り付けることができる。従って、本願発明によると、可撓性シート材は、高い取り付け強度を確保しつつ容易に取り付けることができる。
【0016】
第1縁部材は
、例えば線材などを使用することも可能であるが、請求項2のように可撓性のあるテープ状の素材を使用すると、例えば
、ミシン掛けによる縫着で容易に可撓性シート材に固定できる利点がある。また、可撓性シート材と第2縁部材との関係に関しては、可撓性シート材を直接固定することも可能であるが、第1縁部材と同様のテープ状の補助部材を介して固定すると、補助部材は第1縁部材と一緒にミシン掛け等で可撓性シート材に容易に固定することができる一方、補助部材はある程度の腰・強度があることから、例えば
、係合突起と係合穴との嵌め合わせのようなスナップ係合で第2縁部材に取り付けることができるため、可撓性シート材への第2縁部材の取り付けを容易に行える。
【0017】
第2縁部材を可撓性シート材のどこに配置するかは特に限定はなく、背もたれの場合、第2縁部材を可撓性シート材の上部
(従った背フレーム材の上部の箇所)に配置することも可能であるが、第2縁部材を目立たなくしたり引き起こしの外力が作用することを防止するという点からは
、第2縁部材は可撓性シート材の下端部に設けるのが好ましいと言える。
【0018】
他方、可撓性シート材を有する背もたれにおいても、着座者の腰部(特に第3腰椎のあたり)を支えるようにランバーサポート部を設けていることが多いが、請求項
6のように
、第2縁部材をランバーサポート部の前端より下方に配置すると、着座者の体圧が
、第2縁部材をフレーム材に押さえるように作用するため、外れ防止を確実化できる利点もある。
【0019】
請求項
7のように、背もたれを正面視でランバーサポート部の上と下とに窄まった形状にすると、第1縁部材をフレーム材の左右両側辺部に取り付けるにおいて可撓性シート材を左右方向に強く引っ張る必要はないため、第1縁部材の取り付けをより簡単に行える利点がある。
【0020】
すなわち、第1縁部材のうちランバーサポート部の上に位置した部位は、若干上に位置させた状態でフレーム材に取り付けることで、可撓性シート材に強くテンションを掛けることなく取り付けるができるのであり、そして、第1縁部材を全体的に下向きに引っ張った状態で、第1縁部材のうちランバーサポート部の下方の部位をフレーム材に取り付けることで、可撓性シート材は
、ランバーサポート部の上の部位においてもピンと張った状態に保持される。従って、第1縁部材の取り付けをより軽い力で簡単に行える。
【0021】
第2縁部材をフレーム材に離反不能に保持する手段としては、例えばビス(又はビスとナット)やブラインドリベットのようなファスナ(締結具)を使用することも可能であるが、請求項
8のように、第2縁部材とフレーム材とに一体に形成した係合爪等の係合手段を採用すると、第2縁部材の取り付けをワンタッチ的に行えると共に、部材管理の手間も抑制できる利点がある。
【0022】
第2縁部材が剛体構造であることにより、請求項
1のように、第2縁部材はその一端部を支点にした倒し回動によってフレーム材に重ねることができる。そして、可撓性シート材に強いテンションを掛けた状態でも
、第2縁部材の倒
し回動はごく軽い力で確実にかつ簡単に行えるため、
本願発明では、可撓性シート材を強いテンションが掛かった状態でフレーム材に簡単に取り付けることを、的確に実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下では方向を特定するため前後や左右の文言を使用するが、これら
の方向は、椅子に腰掛けた人を基準にしている。正面視は、椅子に腰掛けた人と対向した方向から見た状態である。
【0025】
(1).椅子の概要
まず、
図1〜6に基づいて概要を説明する。本実施形態の椅子は事務用に広く使用されている回転椅子であり、椅子は、ガスシリンダとしての脚支柱1を有する脚体と、脚支柱1で支持されたベース2を備えている。ベース2の上方には
、中間部材(図示せず)を介して座3が配置されている。また、ベース3には、
図2,3に示すように
、後ろ向きに延びる傾動部材4が後傾動自在に連結されており、傾動部材4に背支持体5が固定されていて、背支持体5に背もたれ6が取り付けられている。なお、傾動部材4と背支持体5とは単一構造品とすることも可能である。脚支柱1は、放射方向に広がる枝足を有する脚本体の筒部に嵌まっており、枝足の先端にはキャスタを設けている。
【0026】
背もたれ6は、前後に開口した背フレーム材7と、これに取り付けられたメッシュ状の可撓性シート材8とを主要部材として構成されている。背フレーム材7は、上下方向に長い左右のサイドメンバー9と、左右サイドメンバー9の上端に繋がった正面視略水平姿勢のアッパメンバー10と、左右サイドメンバー9の下端に繋がった正面視略水平姿勢のロアメンバー11とで構成されている。アッパメンバー10は
、平面視で前向き凹状に湾曲している。
【0027】
なお、本実施形態の背フレーム材7は樹脂の一体成形を採用しているが、アルミダイキャストのような金属製品を使用したり、板金加工品を使用したりすることも可能である。また、背フレーム材7は
、複数の部材を組み立てて構成することも可能である。
【0028】
図1(B)に明示するように、背フレーム材7は、着座者の腰のあたりの高さに位置するランバーサポート部7aが最も前に位置するように側面視でくの字状に曲がっており、かつ、正面視では、ランバーサポート部7aの箇所の左右横幅が最も大きくて、ランバーサポート部7aから上下に行くに従って左右間隔が狭くなっている(ランバーサポート部7aが膨れた形状になっている。)。従って、正面視では、下膨れ六角形の外観を呈している。サイドメンバー9は、ランバーサポート部7aの箇所で最も左右横幅が大きくて、ランバーサポート部7aから上方と下方とに行くに従って左右幅が小さくなるように設定している。従って、背フレーム材7の外形と内形とは相違している。
【0029】
本実施形態では、背フレーム材7は、初期角度を複数段階(例えば3段階)調節できるようになっている。すなわち、まず、例えば
図5に示すように、背フレーム材7のうちランバーサポート部7aの裏面部に左右横長の支軸12を一体に設ける一方、
例えば図3に示すように、背支持体5に背フレーム材7の左右両側に立ち上がった角状の支柱部13を一体に設けて、支柱部13に、支軸12が嵌まる軸受け部14を一体に設けて、これにより、背フレーム材7が支軸12を中心にして前後回動し得るように設定している。
【0030】
更に、
例えば図2,3,6のように、背フレーム材7におけるロアメンバー11の左右中間部に、下向きに開口したケース状の可動受け部15を下向き突設する一方、背支持体5には、可動受け部15が上から嵌まる固定受け部16を一体に設け、固定受け部16と可動受け部15とに左右横長の操作レバー17を回転自在に挿通すると共に、可動受け部15の内部に、
図6のとおり、操作レバー17に固定された周面カム18を固定している。
【0031】
操作レバー17を回転すると、周面カム18による可動受け部15の支持位置が前後に変化し、これにより、背もたれ6の初期姿勢が複数段階に切り替えられる。操作レバー17にはグリップを設けているが、図では省略している。
【0032】
可撓性シート材8は背フレーム材7の全体を覆っているので、背フレーム材7の外形と殆ど同じ形状になっており、可撓性シート材8も、着座した人の腰が当たる部分はランバーサポート部8aになっている(可撓性シート材8のランバーサポート部7aが、本来の意味でのランバーサポート部であると言える。)。
【0033】
そして、例えば
図7(A)に示すように、可撓性シート材8の周縁のうちランバーサポート部7aの下半分程度よりも上の側縁でかつ上端よりもやや下の範囲にはサイド第1縁部材19aを縫着で固定し、可撓性シート材8の周縁のうちサイド第1縁部材19aの固定箇所より上の部位にはアッパ第1縁部材19bを縫着で固定し、更に、可撓性シート材8の周縁のうちサイド第1縁部材19aの固定箇所より下の部位には
、補助部材21を介して第2縁部材20が固定されている。補助部材21は
、可撓性シート材8に縫着で固定されている。
【0034】
第1縁部材19a,19b及び補助部材21は、それぞれポリプロピレンシートのような樹脂シートを打ち抜き加工又は曲げ加工
したものであるか、又は
、ポリプロピレン等の樹脂を素材にした成形品であり、サイド第縁部材19aと補助部材21は
、背フレーム材7に倣った正面形状になっている。アッパー第1縁部材19bは
、背フレーム材7から分離した状態では下向き凹の弓形になっているが、これは、背フレーム材8のアッパメンバー10が平面視で前向き凹状に湾曲しているためである。アッパ第1縁部材19bの左右両端には、背フレーム材7におけるサイドメンバー9の上端部に嵌まる足部19b′を設けている。
【0035】
なお、
図7(A)では、第1縁部材19a,19bと補助部材21とを可撓性シート材8の手前に表示しているが、実際には、第1縁部材19a,19bと補助部材21とは
、可撓性シート材8の後ろに隠れる(例えば
図8,
図11参照)。つまり、可撓性シート材8は、第1縁部材19a,19bと補助部材21の裏面に固定されていて、手前に回り込んでいる。
【0036】
詳細は後述するが、補助部材21は
、樹脂の成形品である剛体構造の第2縁部材20に取り付けられている。なお、可撓性シート材8を第2縁部材20に取り付ける手段としては、接着やタッカー止め
、若しくはインサート成形等の手段で直接に固定することも可能である。更に、第2縁部材20のうち可撓性シート材8が重なる部分をミシン針が通る程度の薄板部に形成して、この薄板部に可撓性シート材8を縫着することも可能である。
【0037】
第1縁部材19a,19b及び補助部材21は単純な平板構造であるが、
図7(B)に示すように2つ折り方式に構成したり、2枚の部材で可撓性シート材8を挟むサンドイッチ構造にしたりすることも可能である。例えば
図6に示すように、背フレーム材7には、第1縁部材19が嵌まる溝条22と、第2縁部材20が手前から重なる段部23とが形成されている。
【0038】
図7(A)に示すように、アッパ第1縁部材19bの左右中間部とサイド第1縁部材19aの上部と下部とには、それぞれ内向きに開口した位置決め用係合溝19cを形成しており、また、サイド第1縁部材19aのうちランバーサポート部7aに対応した部位よりも上の部位には、上下適宜間隔で複数個(3個)の係合穴19dを形成している。位置決め用係合溝19cは
、開口縁に行くに従って溝幅が広がるようにテーパ状になっている(ストレート形状でもよい。)。また、係合穴19dは上下に細長い形状になっている(円形や正方形などでもよい。)。
【0039】
(2).背もたれの詳細
次に、背もたれ6の詳細を
図7以下の図面も参照して説明する。
図8(B)に示すように、サイドメンバー9はランバーサポート部7aの近傍部を除いて菱形に近い平断面形状になっており、前面は
、内側に位置に行くに従って後ろにずれるように傾斜している。外周面のうち手前側の部位に
、既述の溝条22が形成されている。また、サイドメンバー9の前面には、肉厚を均等化するための凹所25が形成されている。
【0040】
図9(A)に示すように、背フレーム材7を構成するサイドメンバー9の溝条22には、サイド第1縁部材19aの係合穴19dが嵌まる係合爪22aを形成している。サイド第1縁部材19aは、可撓性シート材8を押し潰すように弾性変形させることで位置決め爪22aに押し込まれて、押し込み切ると係合穴19dが係合爪22aに嵌まると共に、可撓性シート材8が戻り変形することで、係合穴19dが係合爪22aに嵌まった状態が保持される。図では
、可撓性シート材8はサイド第1縁部材19aより薄く描いているが、可撓性シート材8は立体構造の編地であって実際にはサイド第1縁部材19aより厚いため、係合穴19dが係合爪22aに嵌まった状態はしっかり保持される。
【0041】
図9(B)に示すように、背フレーム材7の溝条22には、サイド第1縁部材19aの位置決め用係合溝19cが嵌まる位置決めリブ22bも形成している。
図9(B)では
、可撓性シート材8で位置決め用係合溝19cが後ろから覆われた状態に描いているが、可撓性シート材8のうち位置決め用係合溝19cの箇所に切り込みを入れておけば、位置決め用係合溝19cは位置決めリブ22bにスムースに嵌まる(可撓性シート材8を変形させて嵌め込むことも可能である。)。背フレーム材7のうちアッパメンバー10の溝状20にも、アッパ第1縁部材19bの位置決め用係合溝19cが嵌まる位置決めリブ
を形成
している。
【0042】
アッパメンバー10は、平面視で手前に向けて凹となるように湾曲しており、
図8(A)に示すように、前面は前向き凸に緩く湾曲している。アッパメンバー10の溝条22とサイドメンバー9の溝条22とは一連に連続している。なお、
図5(A)に示すように、アッパメンバー10の裏面のうち左右中間にはハンガー取り付け部26を設けている。
【0043】
次に、第2縁部材20とその取り付け構造を説明する。第2縁部材20は樹脂の成形品であり、背フレーム材7の前面のうち、ロアメンバー11の全体とサイドメンバー9の下端部とに重なっている。従って、
例えば図12(B)に示すように、左右両端は上向き部20aになっており、正面視では上向き凹の外観を呈している。また、
図12,13等に示すように、背フレーム材7の可動受け部15はロアメンバー11の前面までかかっているので、第2縁部材20には、可動受け部15を逃がすための下向き開口のセンター凹所28を形成している。
【0044】
既述のように、背フレーム材7の下端部には第2縁部材20が重なる段部23
(例えば図8(C)や図12(B)参照)が形成されており、このため、段部23の内側は土手部27になっている。敢えて述べるまでもないが、
土手部27の前面と第2縁部材20の前面とは滑らかに連続するように設定されている。
【0045】
例えば
図4(B)から理解できるように、補助部材21は第2縁部材20の前面に重なっている。補助部材21は基本的には第2縁部材20に似た形態であり、左右中間部には背フレーム材7の可動受け部15を逃がすためのセンター凹所28が形成されているが、左右全長にわたって
第2縁部材20よりも幅狭になっており、第2縁部材20には、補助部材21が後ろから重なる平坦部20bを形成している。補助部材21の左右両端部は幅広部21aになっており、このため、第2縁部材20の平坦部20bの左右両端部も内周側に向けて入り込んだ幅広部20cになっている。
【0046】
補助部材21を第2縁部材20に取り付ける(固定する)手段として、本実施形態では、
図4(B)や
図10に示すように、第2縁部材20に設けた頭付き係合突起37に補助部材21の係合穴21cを嵌め込む構造を採用している。係合突起37及び係合穴21bは
、センター凹所28,28′の近傍と幅広部21a,20cとに形成しているが、位置や個数は任意に設定できる。なお、係合穴21cは若干上下に長い長穴になっており、係合突起37の頭は左右方向に張り出している。
【0047】
第2縁部材20は、基本的には板を曲げたような形態を成しており、例えば
図12,13
,図4(B)に示すように、第2縁部材20における左右上向き部20aの上端には、
ヒンジ手段(支点手段)
の一環として、左右横長で両端支持方式のボス体29を一体に形成している。ボス体29の下方は空間になっているが、空間を塞ぐことも可能である。
【0048】
背フレーム材7の段部23のうち左右両端の上端には
、ヒンジ手段
の一環として、第2縁部材20のボス体29を手前から覆う庇体30を下向きに突設している。このため、第2縁部材20は、ボス体29を庇体30の内側に嵌め込むことにより、
図14(B)や
図15(A)に示すように、ボス体29を中心にして下向きに回動させて背フレーム材7に重ね合わせることができる。
【0049】
庇体30はボス体29が回動可能に嵌まる軸受け凹所を形成する手段であるが、単なる凹所とすることも可能である。また、雌雄の関係を逆にして、段部23に軸部のような突起を形成して、第2縁部材20に凹部を形成することも可能である。また、ボス体29や庇体30を形成せずに、段部23の左右上端に第2縁部材20の左右上端
が当たることを利用して、第2縁部材20を回動させることが可能である。但し、実施形態のように庇体30
の後ろにボス体29が下方から入り込む方式(上下方向からの嵌合方式)を採用すると、第2縁部材20の左右上端は手前に離反不能に保持される利点がある。
【0050】
第2縁部材20は、背フレーム材7から前向き離脱不能に保持されている必要がある。そこで、本実施形態では、第2縁部材20の保持手段として、
図7,11,13に示すように、第2縁部材20に、左右内側に位置した第1係合爪31と左右外側に位置した第2係合爪32とを後ろ向きに突設し、これら係合爪31,32を、ロアメンバー11に形成した第1係合凹所33及び第2係合凹所34に噛み合わせている。ロアメンバー11の係合凹所33,34は爪状の形態を成している。係合爪31,32は、弾性に抗して変形してから戻ることで、係合凹所33,34に噛み合う。
【0051】
第1係合爪31は平面視鉤形の形態であり、第2係合爪32は縦断側面視で鉤形の形態を成している。すなわち、第1係合爪31と第2係合爪32とは姿勢が異なっている。このため、第2縁部材20が変形しても、いずれかの係合爪31,32が係合凹所33,34に噛み合った状態に保持される利点がある。
【0052】
第2縁部材20は段部23に嵌まっていることで基本的には位置決めされているが、更に、
図13に示すように、第2縁部材20
に複数の位置決め突起35を設けている一方、背フレーム材7には、位置決め突起35が嵌まる位置決め穴36を形成している。このため、第2縁部材20は上下左右にずれ不能の状態にしっかりと保持されている。
【0053】
(3).まとめ
可撓性シート材8の取り付けは、例えば、第1縁部材19を、アッパメンバー10→
一方のサイドメンバー9→
他方のサイドメンバー9の順序で溝条22に嵌め込むか、又は、
一方のサイドメンバー9→アッパメンバー10→
他方のサイドメンバー9の順序で溝条22に嵌め込むかして、最後に第2縁部材20を取り付ける、という手順を取る。この場合、第2縁部材20を取り付け
ていない状態では
、可撓性シート材8には強いテンションは掛かっていないため、
溝条22への第1縁部材19の嵌め込みはごく簡単に行える。
【0054】
そして、第2縁部材20の取り付けは、可撓性シート材8を弛ませた状態で左右上端のボス体29をサイドメンバー9の庇体30の箇所に嵌め込んでから、ボス体29を支点にして下向きに倒し回動させて
、背フレーム材7の段部23に重ね合わせる、というワンタッチ的な操作
によって、軽い力で簡単に行える。第2縁部材20が背フレーム材7に重なると、可撓性シート材8はピンと強く張った状態に保持される。また、第2縁部材20は、係合爪31,32が係合凹所33,34に噛み合うことで離脱不能に保持される。
【0055】
可撓性シート材8のテンション及び着座者の体圧で、第2縁部材20には上向きに引っ張られる外力が作用するが、本実施形態のように、背フレーム材7の内周側に土手部27が形成された構成を採用すると、第2縁部材20の上向き動が土手部27で阻止されるため、高い取り付け強度を確保できる利点がある。
【0056】
(4).改良された構成
本実施形態は、縁部材に関して独立した発明たり得る改良を施している。この点を次に説明する。
【0057】
さて、従来は、縁部材としてストレート状の樹脂テープを使用しているのが普通であり、一般に、可撓性シート材は縁部材に縫着されている。しかるに、例えば
、可撓性シート材のランバーサポート部
が外向きに張り出していると云うように
、可撓性シート材の縁部が湾曲していると、ストレート状の樹脂テープを使用した場合は、適当な長さに切断して湾曲に倣わしたり、適当な間隔でVカットを形成
して湾曲に倣わしたりすることになるが、これでは、可撓性シート材の保形性が低いため、可撓性シート材を背フレーム材に対して正確に位置決めしにくかったり、例えば
、可撓性シート材が背フレーム材に対してずれ動きやすくなったりする虞がある。
【0058】
これに対して
、本実施形態のように
、サイド第1縁部材19aのような縁部材をフレーム材の形状に倣った形状に形成しておくと、縁部材がフレーム材にきっちり重なって位置決めされやすくなると共に、フレーム材に対して可撓性シート材のずれ防止機能を向上できる利点がある。この点、本実施形態の1つの利点である。
【0059】
なお、サイド第1縁部材19aは
、外向き凹状の姿勢で可撓性シート材8に縫着されてから180°反転させて背フレーム材7に取り付けられるが、サイド第1縁部材19aが曲がっているため(袋状の立体構造であるため)
、ミシン掛けしにくい問題がある。この点については、
図7(A)に示すように、サイド第1縁部材19aのうち
、ランバーサポート部7aに対応した曲がり部に
、外向きに開口した複数のスリット19eを飛び飛びに形成しておくと、サイド第1縁部材19aを伸ばした状態でミシン掛けできるため、ミシン掛けを容易に
行える。
【0060】
更に述べると、サイド第1縁部材19aは、使用状態と逆に
、基本的には外向き凹状に湾曲した姿勢で可撓性シート材8に縫着されるが、その場合、スリット19eを利用して伸ばした姿勢とすることで、使用状態では曲がっているサイド第1縁部材19aに可撓性シート材8をミシン掛けで縫着することができる。スリット19dは内向きに開口させてもよいし、スリットに代えて切り込みを採用することも可能である。
【0061】
また、従来は、サイド縁部材とアッパ縁部材とはコーナー部で分離しているのが普通であるが、この場合も、アッパ縁部材の左右位置が正確に位置決めされないというように、可撓性シート材がコーナー部で正確に位置決めされずに、テンションが不均一になる現象が生じる可能性がある。これに対して
、本実施形態のように、アッパ第1縁部材19bの左右両端に足部19b′を設けて
、これをサイドメンバー9の溝条22に嵌め込む構成を採用すると、アッパ第1縁部材19bは左右動しにくい状態に保持されるため、この場合も
、可撓性シート材8の位置決めの精度向上に貢献できると共に、可撓性シート材のずれ防止機能を向上できる。
【0062】
可撓性シート材の下端にロア縁部材を設けて
、これをフレーム材の下面に形成した溝条に嵌め込む構造の場合は、ロア縁部材の左右両端に上向きの足部を設けたらよい。すなわち、アッパ縁部材とロア縁部材とのうちいずれか一方又は両方に足部を設けたらよい。
【0063】
更に、本実施形態のように
、縁部材とフレームとに、互いに嵌合する位置決め用係合溝19cと位置決めリブ22bや、互いに嵌合する係合穴19dと係合爪22aのような嵌合手段を設けると、可撓性シート材8の位置決め精度を向上できる。位置決めのための嵌合手段は、複数の縁部材のうち少なくとも1つに設けたらよいが、平行に延びる2つの縁部材に設けるのが好ましく、更に、全ての縁部材に設けると更に好ましい。
【0064】
また、係合穴と係合爪は
、縁部材の外れ防止手段としても機能している。このように、縁部材とフレーム材とに互いに嵌まり合って縁部材の外向き移動を阻止する外れ防止手段を設けると、可撓性シート材8に使用者の体圧で振動がかかるようなこ
とがあっても、縁部材の離脱を的確に阻止できる。外れ防止手段は、少なくともサイド縁部材に設けたらよい(
ここに最も大きな力がかかるからである。)。
【0065】
(5).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、上記の実施形態は初期姿勢を変更できる背もたれに適用したが、初期姿勢が固定的な背もたれにも適用できることはいうまでもない。また、第2縁部材は、必ずしも可撓性シート材の下部に設ける必要はないのであり、例えば、可撓性シート材の上端部に設けたり、上端部と下端部との両方に設けたりすることも可能である。
【0066】
第1縁部材はテープ状である必要はなく、例えば
、線材を使用することも可能である。
剛体構造の第2縁部材も樹脂の成形品である必然性はないのであり、板金製品としたり線材製としたりすることも可能である。第1縁部材と第2縁部材とを共に線材製として、第2縁部材を上き開口コ字形に形成して、左右両端を支点にしてフレーム材に向けて倒し回動させて、フレーム材に形成した溝条に嵌め込んで離脱不能に保持することも可能である。
【0067】
また、背フレーム材の場合、第2縁部材はロアメンバーの下面やアッパメンバーの上面に重なる構成とすることも可能である。つまり、第2縁部材は
、背フレーム材の前面に重ねなくてもよい。第2縁部材を縦断側面視L形に形成して、背フレーム材の前面と下面又は上面との両方に重ねることも可能である。実施形態のように第2縁部材を正面視でコ字形に形成すると、回動させるに際して大きなモーメントを掛けることができる利点があるが、単なる左右横長の板状とすることも可能である。
【0068】
本願発明は、座にも適用できる。座に適用する場合、第2縁部材は
、可撓性シート材の後端部に設けたり前端部に設けたりすることができる。或いは、背もたれ及び座のいずれにおいても、4つのコーナー部を有する基本形態において、少なくとも1つのコーナー部に第2縁部材を設けることが可能である(4つのコーナー部の全てに第2縁部材を設けることも可能であるが、第2縁部材は、隣り合った2つのコーナー部又は対角方向の2つのコーナー部に設けるだけでよい。)。
【0069】
背もたれにしても座にしても、フレーム材は前後又は上下に開口している必要はなく、シェル構造とすることも可能である。また、例えば背フレーム材を例にとると、前後に開口させつつ、左右のサイドメンバーを横長の1本又は複数本の桟部材で連結することも可能である。なお、本願発明は、肘掛けやヘッドレストにも転用可能である。