(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964139
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ダイヤフラム及びダイヤフラム弁
(51)【国際特許分類】
F16J 3/02 20060101AFI20160721BHJP
F16K 7/12 20060101ALI20160721BHJP
F16K 7/17 20060101ALI20160721BHJP
F16J 15/52 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
F16J3/02 C
F16K7/12 B
F16K7/17 A
F16J15/52 Z
F16J3/02 B
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-123792(P2012-123792)
(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-249867(P2013-249867A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】小原 俊治
(72)【発明者】
【氏名】下村 嘉徳
(72)【発明者】
【氏名】曽我尾 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 圭吾
【審査官】
岩谷 一臣
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/122424(WO,A1)
【文献】
実開平05−096630(JP,U)
【文献】
特開昭62−221537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 3/00− 3/06
F16J15/40−15/56
F16K 7/12
F16K 7/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤフラム弁に取り付けられるダイヤフラムであって、
ゴム材料からなる単層構造であり、
流路の開閉に伴って変形して昇降する膜部と、前記膜部の周囲に設けられてバルブボディとボンネットとの間に挟持されるフランジ部とを備えており、
前記フランジ部には、円環状の突条が設けられており、
前記突条は、上方に突出する上方突条と、前記上方突条に対応する位置から下方に突出する下方突条とからなり、
前記上方突条は、内側上方突条と、この内側上方突条より突出高さが低い外側上方突条とが、階段状に連続して形成されており、
前記下方突条は、内側下方突条と、この内側下方突条より突出高さが高い外側下方突条とが、階段状に連続して形成されていることを特徴とするダイヤフラム。
【請求項2】
前記内側上方突条の内側近傍部の高さが、前記外側上方突条の高さより低いことを特徴とする請求項1記載のダイヤフラム。
【請求項3】
前記内側下方突条の高さが、前記外側下方突条の外側近傍部の高さより高いことを特徴とする請求項1記載のダイヤフラム。
【請求項4】
厚み方向の略中間位置に補強布が内在されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のダイヤフラム。
【請求項5】
前記補強布がナイロンからなることを特徴とする請求項4記載のダイヤフラム。
【請求項6】
表面が樹脂フィルムで薄膜状に被膜されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のダイヤフラム。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載のダイヤフラムを備えていることを特徴とするダイヤフラム弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤフラム及びダイヤフラム弁に関し、より詳しくは、ダイヤフラム弁の流路開閉の繰り返しに起因するシール性の低下や亀裂の発生を抑制することができる高耐久性のダイヤフラム及びダイヤフラム弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイヤフラム弁に取り付けられるダイヤフラムとしては、PTFE等からなる合成樹脂膜とEPDMやFPM等からなるゴム膜との二層構造からなるものが知られている。(例えば、下記特許文献1参照)
【0003】
図8は、二層構造のダイヤフラムの一例を示す縦断面図である。
このダイヤフラムは、PTFE等からなる合成樹脂膜(A)の上方に、EPDMやFPM等からなるゴム膜(B)が積層された二層構造を有している。
合成樹脂膜(A)の外縁近傍には、ダイヤフラム弁への取り付け時のガイドの役割を果たす円環状の突条が設けられている。この突条は、上方に突出する上方突条(C)と、上方突条に対応する位置から下方に突出する下方突条(D)とからなる。下方突条(D)の内方には溝(E)を挟んでバルブボディに密接してシール性を確保するための下シール突条(F)が設けられている。
ゴム膜(B)は、合成樹脂膜(A)の上方突条(C)の内側に積層されており、その外縁部にはボンネットに密接してシール性を確保するための上シール突条(G)が設けられている。
【0004】
しかしながら、このような二層構造のダイヤフラムは、単層構造のダイヤフラムに比べると、部材の点数が多くなり、製造工数が増加し、製造コストの上昇を招くという問題があった。また、PTFE膜は、ゴム膜に比べて柔軟性に乏しいため、異物の噛み込みが起こるとシール性が大きく低下するという問題もあった。
【0005】
一方、ゴム材料のみからなる単層構造のダイヤフラムの場合、上記問題が生じないが、耐久性が低くなるという問題があった。
例えば、仮に
図8に示した形状のダイヤフラムをゴム材料のみからなる単層構造とした場合、バルブボディとボンネットの間でダイヤフラムの周縁部を締め付け固定した時に、PTFE層を備える二層構造のダイヤフラムに比べて大きく圧縮変形する。このとき、上シール突条(G)の内側付け根部分(H)及び外側付け根部分(I)には、ボンネットの下面に形成された上シール突条(G)が嵌まる溝のエッジが当接して大きな応力が加わる。
そのため、流路開閉のためにダイヤフラムを繰り返し昇降させると、これらの付け根部分(H)(I)を起点として短期間で亀裂が発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4232939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、ゴム材料のみからなる単層構造でありながら、繰り返しの昇降に伴ってシール性の低下及び亀裂の発生が起こりにくい、経済的で且つ耐久性に優れたダイヤフラム及びこのダイヤフラムを備えたダイヤフラム弁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、ダイヤフラム弁に取り付けられるダイヤフラムであって、ゴム材料からなる単層構造であり、流路の開閉に伴って変形して昇降する膜部と、前記膜部の周囲に設けられてバルブボディとボンネットとの間に挟持されるフランジ部とを備えており、前記フランジ部には、円環状の突条が設けられており、前記突条は、上方に突出する上方突条と、前記上方突条に対応する位置から下方に突出する下方突条とからなり、前記上方突条は、内側上方突条と、この内側上方突条より突出高さが低い外側上方突条とが、階段状に連続して形成されていることを特徴とするダイヤフラムに関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記内側上方突条の内側近傍部の高さが、前記外側上方突条の高さより低いことを特徴とする請求項1記載のダイヤフラムに関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記下方突条は、内側下方突条と、この内側下方突条より突出高さが高い外側下方突条とが、階段状に連続して形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のダイヤフラムに関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記内側下方突条の高さが、前記外側下方突条の外側近傍部の高さより高いことを特徴とする請求項3記載のダイヤフラムに関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、厚み方向の略中間位置に補強布が内在されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のダイヤフラムに関する。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記補強布がナイロンからなることを特徴とする請求項5記載のダイヤフラムに関する。
【0014】
請求項7に係る発明は、表面が樹脂フィルムで薄膜状に被膜されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のダイヤフラムに関する。
【0015】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7いずれかに記載のダイヤフラムを備えていることを特徴とするダイヤフラム弁に関する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、ゴム材料からなる単層構造のダイヤフラムにおいて、フランジ部に設けられた円環状突条の上方突条が、内側上方突条とこの内側上方突条より突出高さが低い外側上方突条とが階段状に連続して形成されている構造を有することから、外側上方突条が内側上方突条の変形を抑制することができる。そのため、内側上方突条に応力緩和が生じてシール性が低下することを防止できる。その結果、ゴム材料からなる単層構造のダイヤフラムであるにも関わらず、耐久性に優れたダイヤフラムが得られる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、内側上方突条の内側近傍部の高さが、外側上方突条の高さより低いことから、内側上方突条の付け根部分に大きな応力が加わることが防がれる。そのため、付け根部分を起点として短期間で亀裂が発生することが防止され、より一層耐久性に優れたダイヤフラムが得られる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、下方突条が、内側下方突条と、この内側下方突条より突出高さが高い外側下方突条とが、階段状に連続して形成されていることから、シール面として機能する内側下方突条をバルブボディに対して広い面積で確実に密接させることが可能となり、シール性を向上させることができる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、前記内側下方突条の高さが、前記外側下方突条の外側近傍部の高さより高いことから、シール面として機能する内側下方突条をバルブボディに対して高い圧力で密接させることが可能となり、シール性を向上させることができる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、厚み方向の略中間位置に補強布が内在されていることから、補強布による補強効果が十分に発揮され、優れた耐久性をもつダイヤフラムが得られる。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、補強布がナイロンからなることから、補強布による高い補強効果が発揮され、非常に優れた耐久性をもつダイヤフラムが得られる。
【0022】
請求項7に係る発明によれば、表面が樹脂フィルムで薄膜状に被膜されていることから、樹脂フィルムによる補強効果が発揮され、優れた耐久性をもつダイヤフラムが得られる。
【0023】
請求項8に係る発明によれば、請求項1乃至7いずれかに記載のダイヤフラムを備えているダイヤフラム弁であるから、ダイヤフラム弁の流路開閉の繰り返しに起因するシール性の低下や亀裂の発生を抑制することができる、経済的で且つ優れた耐久性を有するダイヤフラムを備えたダイヤフラム弁となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係るダイヤフラムを示す図であって、(a)は平面図、(b)はA−A線端面図、(c)は底面図である。
【
図2】(a)は
図1(b)の円内拡大図、(b)はその変更例を示す図である。
【
図3】本発明に係るダイヤフラム及びこのダイヤフラムを上方から押さえるボンネットの部分拡大図である。
【
図4】本発明に係るダイヤフラムを備えたダイヤフラム弁を示す平面図(組付け状態、流路全開状態、流路全閉状態に共通する平面図)である。
【
図5】本発明に係るダイヤフラムを備えたダイヤフラム弁の組付け状態を示す図であって、(a)は
図4のA−A線断面図、(b)は
図4のB−B線断面図である。
【
図6】本発明に係るダイヤフラムを備えたダイヤフラム弁の流路全開状態を示す図であって、(a)は
図4のA−A線断面図、(b)は
図4のB−B線断面図である。
【
図7】本発明に係るダイヤフラムを備えたダイヤフラム弁の流路全閉状態を示す図であって、(a)は
図4のA−A線断面図、(b)は
図4のB−B線断面図である。
【
図8】従来の二層構造のダイヤフラムの一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るダイヤフラム及びダイヤフラム弁の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るダイヤフラムを示す図であって、(a)は平面図、(b)はA−A線端面図、(c)は底面図である。
図2(a)は
図1(b)の円内拡大図、(b)はその変更例を示す図である。
【0026】
本発明に係るダイヤフラム(1)は、ダイヤフラム弁の流路の開閉に伴って変形して昇降する平面視円形状の膜部(2)と、この膜部(2)の周囲に設けられてダイヤフラム弁のバルブボディとボンネットとの間に挟持されるフランジ部(3)とを備えている。
【0027】
本発明に係るダイヤフラム(1)は、ゴム材料からなる単層構造のダイヤフラムである。ゴム材料としては、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレンゴム、フッ素ゴム(FPM)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等が好適に使用されるが、特にエチレンプロピレンゴム(EPDM)が好適に使用される。
【0028】
ダイヤフラム(1)のフランジ部(3)には、円環状突条(31)と、円環状突条(31)を縦断する縦断突条(32)が設けられている。
円環状突条(31)は、上方に突出する上方突条(311)と、ダイヤフラム(1)の半径方向において上方突条(311)に対応する位置から下方に突出する下方突条(312)とからなる。尚、縦断突条(32)は下方にのみ突出している。
【0029】
上方突条(311)は、内側上方突条(311a)と、この内側上方突条(311a)より突出高さが低い外側上方突条(311b)とが、階段状に連続して形成されている。
これにより、外側上方突条(311b)が内側上方突条(311a)の変形を抑制し、内側上方突条(311a)に応力緩和が生じ、シール性が低下することを防ぐことができる。その結果、耐久性に優れたダイヤフラムが得られる。
尚、本明細書における「高さ」は、ダイヤフラムの上面においては「より上方にある部分ほど高い」と定義し、ダイヤフラムの下面においては「より下方にある部分ほど高い」と定義する。
【0030】
内側上方突条(311a)の内側近傍部(313)の高さは、外側上方突条(311b)の高さより低く形成されている。
これにより、内側上方突条(311a)の内側近傍部(313)の付け根部分(P)に大きな応力が加わることが防がれる。そのため、付け根部分(P)を起点として短期間で亀裂が発生することが防止され、より一層耐久性に優れたダイヤフラムが得られる。
【0031】
以下、上述したダイヤフラムの亀裂発生に関して、
図3等を参照してより詳しく説明する。
ダイヤフラム(1)をダイヤフラム弁に取り付けた状態(
図5乃至
図7参照)において、ダイヤフラム(1)の上面はボンネット(6)により押さえ付けられる。
ボンネット(6)のダイヤフラム(1)と当接する下面には、
図3の円内に示すように、内側上方突条(311a)が嵌まる位置合わせ用溝が設けられる。この溝の内側エッジ部分(61)がダイヤフラム(1)の内側上方突条(311a)の内側付け根部分(P)に当接することにより、ダイヤフラムの変形時に内側付け根部分(P)に大きな応力がかかり、亀裂発生の起点となる。
本発明においては、内側上方突条(311a)の内側近傍部(313)の高さが外側上方突条(311b)の高さより低く形成されていることにより、位置合わせ用溝のエッジ部分(61)が内側上方突条(311a)の付け根部分(P)に当接せず、付け根部分(P)を起点とする亀裂発生を防止することが可能となる。
【0032】
内側上方突条(311a)の付け根部分(P)は、内側上方突条(311a)から内側近傍部(313)に向けて徐々に高さが低くなるように形成してもよいし(
図2(a)参照)、内側上方突条(311a)から内側近傍部(313)に向けて一旦低くなってから高くなるように凹ませて形成してもよい(
図2(b)参照)。
【0033】
下方突条(312)は、内側下方突条(312a)と、この内側下方突条(312a)より突出高さが高い外側下方突条(312b)とが、階段状に連続して形成されている。これにより、シール面として機能する内側下方突条(312a)をバルブボディ(5)に対して広い面積で確実に密接させることが可能となり、シール性を向上させることができる。
【0034】
内側下方突条(312a)の突出高さは、外側下方突条(312b)の外側近傍部(314)の高さより高く形成されている。
これにより、シール面として機能する内側下方突条(312a)をバルブボディ(5)に対して高い圧力で密接させることが可能となり、シール性を向上させることができる。
【0035】
本発明に係るダイヤフラム(1)は、膜部(2)の変形前の形状にも特徴を有している。
ここで、「変形前の形状」とは、ダイヤフラムをダイヤフラム弁に取り付ける前の状態の形状であり、言い換えればダイヤフラムの金型成型時における形状である。
図1,2及び
図5は変形前の形状を示している。
【0036】
本発明に係るダイヤフラム(1)は、膜部(2)の下面の変形前の形状が、外縁部(21)から中心部(22)に向けて、下降してから上昇する曲面に形成されている。
具体的には、膜部(2)の下面は、
図1(b)に示す如く、外縁部(21)と中心部(22)の間の中間部(23)において最も下方に位置し、外縁部(21)から中間部(23)に向けて下降する曲面状(第1曲面(I)と称す)に形成され、中間部(23)から中心部(22)に向けて上昇する曲面状(第2曲面(II)と称す)に形成されている。言い換えると、ダイヤフラム(1)の下面は、縦断面形状が略W字状に連続する曲線状に形成されている。
【0037】
第1曲面(I)と第2曲面(II)とは連続している。中心部(22)には、後述する縦断突条(32)が形成されている。第1曲面(I)は外縁部(21)から中間部(23)に向けて下降している。第2曲面(II)は中間部(23)から内方(中心方向)に向けて上昇して縦断突条(32)に到達した後、縦断突条(32)において中心部(22)に向けて下降している。
第2曲面(II)は、中心部(22)以外は中間部(23)よりも上方位置にあり、中心部(22)は中間部(23)と上下方向位置が略等しい。
【0038】
尚、本発明において、上下方向とはダイヤフラム弁のステム軸に沿う方向であり、上方向とはダイヤフラム弁のステムと連結される吊り金具(4)が突出する方向(
図1(b)における上方向)であり、下方向とはその逆方向(
図1(b)における下方向)である。
【0039】
図4乃至
図7は、本発明に係るダイヤフラム(1)を備えたダイヤフラム弁を示す図である。
図4はダイヤフラム弁の平面図(組付け状態、流路全開状態、流路全閉状態に共通する平面図)である。
図5乃至
図7はそれぞれ本発明に係るダイヤフラムを備えたダイヤフラム弁の組付け状態(
図5)、流路全開状態(
図6)、流路全閉状態(
図7)を示す図であって、各図において(a)は
図4のA−A線断面図、(b)は
図4のB−B線断面図である。
ダイヤフラム弁は、流体が流通する流路を備えたバルブボディ(5)と、流路に対して当接離反することにより流路を開閉するダイヤフラム(1)と、バルブボディ(5)との間でダイヤフラム(1)のフランジ部(3)を挟持固定するボンネット(6)と、ダイヤフラム(1)に対して吊り金具(4)を介して接続されたステム(7)と、ステム(7)を昇降させるための操作機構(8)とを備えている。
操作機構(8)は、
図4乃至
図7では空圧式アクチュエータが示されているが、これに限定されず、手動式のハンドル等であってもよい。
【0040】
本発明に係るダイヤフラム(1)は、膜部(2)の下面の変形前の形状が外縁部(21)から中心部(22)に向けて下降してから上昇する曲面に形成されている形状であることにより、
図5乃至
図7から理解できるように、従来の下方向又は上方向のみに湾曲した形状をもつダイヤフラムと比べて、ダイヤフラム(1)の昇降に伴う膜部(2)の変形量が少なくなる。
そのため、ダイヤフラム弁の開閉操作を繰り返しても、ダイヤフラム(1)に亀裂が発生しにくくなり、耐久性に優れたダイヤフラムが得られる。
【0041】
本発明に係るダイヤフラム(1)は、
図1(b)に示すように、膜部(2)の下面の最上部位置は膜部(2)の外縁部(21)にあり、最下部位置は外縁部(21)と中心部(22)の間の中間部(23)にある。
ここで、膜部(2)の下面の最上部位置と最下部位置との上下方向距離(L)が、膜部(2)の直径(D)に対して10%以下であることが好ましい。尚、膜部(2)の直径(D)は、ボンネット(6)のダイヤフラム(1)上面に当接する部分の内径と等しい。
このように膜部全体としての湾曲の程度を小さく設定する(10%以下とする)ことにより、ダイヤフラム(1)の昇降に伴う膜部(2)の変形量が非常に少なくなり、耐久性の向上効果を確実に得ることが可能となる。
但し、湾曲の程度が小さくなり過ぎると、流路の開閉を確実に行うことが困難となるおそれがあるため、距離(L)を直径(D)に対して5〜10%の範囲に設定することがより好ましい。例えば、直径(D)がφ54mmのとき、距離(L)は約5mmに設定される。
【0042】
ダイヤフラム(1)の厚み方向の略中間位置には、ダイヤフラム(1)の形状に略沿うように補強布(9)が内在されている。補強布(9)は破線で示されている。
本発明に係るダイヤフラム(1)は、上記した通り、従来のダイヤフラムと比べて湾曲が小さいため、金型成型時において、ダイヤフラムの形状に沿って厚み方向の略中間位置に補強布(9)を入れることが容易となる。そのため、補強布による補強効果が確実に発揮され、優れた耐久性の向上効果が得られる。
【0043】
補強布(9)の材質は特に限定されず、炭素繊維、合成樹脂、金属、炭素繊維等を使用することができるが、ダイヤフラムの繰り返し変形に対する耐久性が優れているナイロンが好適に使用される。
【0044】
また、図示はしないが、耐久性を向上させるため、ダイヤフラム表面を樹脂フィルムで薄膜状に被膜しても良い。樹脂フィルムにはPTFE製フィルムが好適に使用される。
【0045】
尚、本発明において、ダイヤフラム(1)の膜部(2)の変形前の形状(湾曲形状)は図示例のものに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない限り、公知の様々な形状のものを適宜採用することができる。
【0046】
また、本発明に係るダイヤフラム弁は、図示例のような流路内で弁座が隆起しているウェア型のダイヤフラム弁に限定されず、隆起した弁座を有さないダイヤフラム弁であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば微生物の培養装置におけるサンプリング配管や供給液配管等の開閉に用いられるダイヤフラム弁に対して好適に利用される。
【符号の説明】
【0048】
1 ダイヤフラム
2 膜部
3 フランジ部
31 円環状突条
32 縦断突条
311 上方突条
311a 内側上方突条
311b 外側上方突条
312 下方突条
312a 内側下方突条
312b 外側下方突条
313 内側上方突条の内側近傍部
314 外側近傍部
5 バルブボディ
6 ボンネット
7 ステム
8 操作機構