(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、ダイヤフラム弁に取り付けられるダイヤフラムは、金型を使用してゴムや樹脂等の材料を所定形状に成型することにより製造されている。
通常、ダイヤフラムの成型は、ダイヤフラムが下降した状態(流路を閉鎖した状態)の形状で成型される場合(閉形成型)と、ダイヤフラムが上昇した状態(流路を開放した状態)の形状で成型される場合(開形成型)のいずれかで行われる。
閉形成型にて製造されたダイヤフラムは、下方向に湾曲した形状(例えば、下記特許文献1の
図19参照)となり、開形成型にて製造されたダイヤフラムは上方向に湾曲した形状(例えば、下記特許文献2の
図8参照)となる。
【0003】
しかしながら、このような従来の下方向又は上方向に湾曲した形状をもつダイヤフラムは、ダイヤフラム弁の開閉操作によるダイヤフラムの昇降に伴って大きく変形する。即ち、下方向湾曲形状に成型されたダイヤフラムは流路の開放時に上方向に大きく変形し、上方向湾曲形状に成型されたダイヤフラムは流路の閉鎖時に下方向に大きく変形する。
そのため、ダイヤフラム弁の開閉操作が繰り返されると、ダイヤフラムに大きな変形が繰り返し生じることとなるため、変形の基端となる湾曲部の外縁付近に亀裂が発生し易いという問題があった。
【0004】
また、ダイヤフラムの強度を高めて耐久性を向上させるために、ゴム素材からなるダイヤフラムを基布で補強した布入りダイヤフラムが存在している(例えば、下記特許文献2参照)。
このような布入りダイヤフラムは、基布をダイヤフラムの形状に沿わせて厚み方向の略中間位置に入れる必要があり、基布の位置が偏ると、十分な強度が得られず耐久性の向上効果が得られない。
しかしながら、上記したような従来の下方向又は上方向の湾曲形状をもつダイヤフラムでは、湾曲が大きいために、基布をダイヤフラムの形状に沿わせて厚み方向の略中間位置に入れることが困難であった。具体的には、基布がダイヤフラムの中心付近において厚み方向の中間位置より下方にずれてしまうという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、ダイヤフラム弁の流路開閉に伴うダイヤフラムの昇降に起因する亀裂の発生を抑制することができる、耐久性に優れたダイヤフラム及びこのダイヤフラムを備えたダイヤフラム弁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、ダイヤフラム弁に取り付けられるダイヤフラムであって、流路の開閉に伴って変形して昇降する膜部と、前記膜部の周囲に設けられてバルブボディとボンネットとの間に挟持されるフランジ部とを備えており、前記膜部の下面の変形前の形状が、外縁部から中心部に向けて、下降してから上昇する曲面に形成され
、前記膜部下面の上部位置と最下部位置との上下方向距離が、前記膜部の直径に対して10%以下であり、厚み方向の略中間位置に補強布が内在されていることを特徴とするダイヤフラムに関する。
【0010】
請求項
2に係る発明は、前記補強布がナイロンからなることを特徴とする請求項
1に記載のダイヤフラムに関する。
【0011】
請求項
3に係る発明は、表面が樹脂フィルムで薄膜状に被膜されたことを特徴とする請求項1
に記載のダイヤフラムに関する。
【0012】
請求項
4に係る発明は、請求項1乃至
3のいずれか
一項に記載のダイヤフラムを備えていることを特徴とするダイヤフラム弁に関する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、流路の開閉に伴って変形して昇降する膜部の下面の変形前の形状が、外縁部から中心部に向けて下降してから上昇する曲面に形成されていることから、従来の下方向又は上方向のみに湾曲した形状をもつダイヤフラムと比べて、ダイヤフラム弁の開閉操作によるダイヤフラムの昇降に伴う変形量を減少させることができる。そのため、ダイヤフラム弁の開閉操作を繰り返しても、ダイヤフラムに亀裂が発生しにくくなり、耐久性に優れたダイヤフラムが得られる。
また、従来のダイヤフラムと比べて湾曲が小さいため、成型時において、ダイヤフラム
の形状に沿って厚み方向の略中間位置に補強布を入れることが容易となる。そのため、補
強布による補強効果が確実に発揮され、優れた耐久性の向上効果が得られる。
さらに、膜部下面の最上部位置と最下部位置との上下方向距離が、膜部の直径に対して10%以下であることから、ダイヤフラム弁の開閉操作によるダイヤフラムの昇降に伴う変形量を大幅に減少させることができ、非常に耐久性に優れたダイヤフラムが得られる。
またさらに、厚み方向の略中間位置に補強布が内在されていることから、補強布による補強効果が十分に発揮され、優れた耐久性をもつダイヤフラムが得られる。
【0016】
請求項
2に係る発明によれば、補強布がナイロンからなることから、補強布による高い補強効果が発揮され、非常に優れた耐久性をもつダイヤフラムが得られる。
【0017】
請求項
3に係る発明によれば、表面が樹脂フィルムで薄膜状に被膜されていることから、樹脂フィルムによる補強効果が発揮され、優れた耐久性をもつダイヤフラムが得られる。
【0018】
請求項
4に係る発明によれば、請求項1乃至5いずれかに記載のダイヤフラムを備えているダイヤフラム弁であるから、優れた耐久性を有するダイヤフラムを備えたダイヤフラム弁となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るダイヤフラム及びダイヤフラム弁の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るダイヤフラムを示す図であって、(a)は平面図、(b)はA−A線端面図、(c)は底面図である。
図2(a)は
図1(b)の円内拡大図、(b)はその変更例を示す図である。
【0021】
本発明に係るダイヤフラム(1)は、ダイヤフラム弁の流路の開閉に伴って変形して昇降する平面視円形状の膜部(2)と、この膜部(2)の周囲に設けられてダイヤフラム弁のバルブボディとボンネットとの間に挟持されるフランジ部(3)とを備えている。
【0022】
本発明に係るダイヤフラム(1)は、膜部(2)の変形前の形状に特徴を有している。
ここで、「変形前の形状」とは、ダイヤフラムをダイヤフラム弁に取り付ける前の状態の形状であり、言い換えればダイヤフラムの金型成型時における形状である。
図1,2及び
図5は変形前の形状を示している。
【0023】
本発明に係るダイヤフラム(1)は、膜部(2)の下面の変形前の形状が、外縁部(21)から中心部(22)に向けて、下降してから上昇する曲面に形成されている。
具体的には、膜部(2)の下面は、
図1(b)に示す如く、外縁部(21)と中心部(22)の間の中間部(23)において最も下方に位置し、外縁部(21)から中間部(23)に向けて下降する曲面状(第1曲面(I)と称す)に形成され、中間部(23)から中心部(22)に向けて上昇する曲面状(第2曲面(II)と称す)に形成されている。言い換えると、ダイヤフラム(1)の下面は、縦断面形状が略W字状に連続する曲線状に形成されている。
【0024】
第1曲面(I)と第2曲面(II)とは連続している。中心部(22)には、後述する縦断突条(32)が形成されている。第1曲面(I)は外縁部(21)から中間部(23)に向けて下降している。第2曲面(II)は中間部(23)から内方(中心方向)に向けて上昇して縦断突条(32)に到達した後、縦断突条(32)において中心部(22)に向けて下降している。
第2曲面(II)は、中心部(22)以外は中間部(23)よりも上方位置にあり、中心部(22)は中間部(23)と上下方向位置が略等しい。
【0025】
尚、本発明において、上下方向とはダイヤフラム弁のステム軸に沿う方向であり、上方向とはダイヤフラム弁のステムと連結される吊り金具(4)が突出する方向(
図1(b)における上方向)であり、下方向とはその逆方向(
図1(b)における下方向)である。
【0026】
図4乃至
図7は、本発明に係るダイヤフラム(1)を備えたダイヤフラム弁を示す図である。
図4はダイヤフラム弁の平面図(組付け状態、流路全開状態、流路全閉状態に共通する平面図)である。
図5乃至
図7はそれぞれ本発明に係るダイヤフラムを備えたダイヤフラム弁の組付け状態(
図5)、流路全開状態(
図6)、流路全閉状態(
図7)を示す図であって、各図において(a)は
図4のA−A線断面図、(b)は
図4のB−B線断面図である。
ダイヤフラム弁は、流体が流通する流路を備えたバルブボディ(5)と、流路に対して当接離反することにより流路を開閉するダイヤフラム(1)と、バルブボディ(5)との間でダイヤフラム(1)のフランジ部(3)を挟持固定するボンネット(6)と、ダイヤフラム(1)に対して吊り金具(4)を介して接続されたステム(7)と、ステム(7)を昇降させるための操作機構(8)とを備えている。
操作機構(8)は、
図4乃至
図7では空圧式アクチュエータが示されているが、これに限定されず、手動式のハンドル等であってもよい。
【0027】
本発明に係るダイヤフラム(1)は、膜部(2)の下面の変形前の形状が外縁部(21)から中心部(22)に向けて下降してから上昇する曲面に形成されている形状であることにより、
図5乃至
図7から理解できるように、従来の下方向又は上方向のみに湾曲した形状をもつダイヤフラムと比べて、ダイヤフラム(1)の昇降に伴う膜部(2)の変形量が少なくなる。
そのため、ダイヤフラム弁の開閉操作を繰り返しても、ダイヤフラム(1)に亀裂が発生しにくくなり、耐久性に優れたダイヤフラムが得られる。
【0028】
本発明に係るダイヤフラム(1)は、
図1(b)に示すように、膜部(2)の下面の最上部位置は膜部(2)の外縁部(21)にあり、最下部位置は外縁部(21)と中心部(22)の間の中間部(23)にある。
ここで、膜部(2)の下面の最上部位置と最下部位置との上下方向距離(L)が、膜部(2)の直径(D)に対して10%以下であることが好ましい。尚、膜部(2)の直径(D)は、ボンネット(6)のダイヤフラム(1)上面に当接する部分の内径と等しい。
このように膜部全体としての湾曲の程度を小さく設定する(10%以下とする)ことにより、ダイヤフラム(1)の昇降に伴う膜部(2)の変形量が非常に少なくなり、耐久性の向上効果を確実に得ることが可能となる。
但し、湾曲の程度が小さくなり過ぎると、流路の開閉を確実に行うことが困難となるおそれがあるため、距離(L)を直径(D)に対して5〜10%の範囲に設定することがより好ましい。例えば、直径(D)がφ54mmのとき、距離(L)は約5mmに設定される。
【0029】
本発明に係るダイヤフラム(1)の材質は特に限定されないが、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレンゴム、フッ素ゴム(FPM)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等のゴム材料が好適に使用される。
本発明に係るダイヤフラム(1)は、上記ゴム材料からなる単層構造のダイヤフラムであってもよいし、上記ゴム材料からなるゴム膜とポリ四フッ化エチレン樹脂(PTFE)等の合成樹脂膜とを積層した二層構造のダイヤフラムであってもよい。
【0030】
図1、2には、ゴム材料からなる単層構造のダイヤフラムが示されている。
ダイヤフラム(1)の厚み方向の略中間位置には、ダイヤフラム(1)の形状に略沿うように補強布(9)が内在されている。補強布(9)は破線で示されている。
本発明に係るダイヤフラム(1)は、上述した通り、従来のダイヤフラムと比べて湾曲が小さいため、金型成型時において、ダイヤフラムの形状に沿って厚み方向の略中間位置に補強布(9)を入れることが容易となる。そのため、補強布による補強効果が確実に発揮され、優れた耐久性の向上効果が得られる。
【0031】
補強布(9)の材質は特に限定されず、炭素繊維、合成樹脂、金属、炭素繊維等を使用することができるが、ダイヤフラムの繰り返し変形に対する耐久性が優れているナイロンが好適に使用される。
【0032】
また、図示はしないが、耐久性を向上させるため、ダイヤフラム表面を樹脂フィルムで薄膜状に被膜しても良い。樹脂フィルムにはPTFE製フィルムが好適に使用される。
【0033】
ダイヤフラム(1)のフランジ部(3)には、円環状突条(31)と、円環状突条(31)を縦断する縦断突条(32)が設けられている。
円環状突条(31)は、上方に突出する上方突条(311)と、ダイヤフラム(1)の半径方向において上方突条(311)に対応する位置から下方に突出する下方突条(312)とからなる。尚、縦断突条(32)は下方にのみ突出している。
【0034】
上方突条(311)は、内側上方突条(311a)と、この内側上方突条(311a)より突出高さが低い外側上方突条(311b)とが、階段状に連続して形成されている。
これにより、外側上方突条(311b)が内側上方突条(311a)の変形を抑制し、内側上方突条(311a)に応力緩和が生じ、シール性が低下することを防ぐことができる。その結果、耐久性に優れたダイヤフラムが得られる。
尚、本明細書における「高さ」は、ダイヤフラムの上面においては「より上方にある部分ほど高い」と定義し、ダイヤフラムの下面においては「より下方にある部分ほど高い」と定義する。
【0035】
内側上方突条(311a)の内側近傍部(313)の高さは、外側上方突条(311b)の高さより低く形成されている。
これにより、内側上方突条(311a)の内側近傍部(313)の付け根部分(P)に大きな応力が加わることが防がれる。そのため、付け根部分(P)を起点として短期間で亀裂が発生することがより確実に防止され、より一層耐久性に優れたダイヤフラムが得られる。
【0036】
以下、上述したダイヤフラムの亀裂発生に関して、
図3等を参照してより詳しく説明する。
ダイヤフラム(1)をダイヤフラム弁に取り付けた状態(
図5乃至
図7参照)において、ダイヤフラム(1)の上面はボンネット(6)により押さえ付けられる。
ボンネット(6)のダイヤフラム(1)と当接する下面には、
図3の円内に示すように、内側上方突条(311a)が嵌まる位置合わせ用溝が設けられる。この溝の内側エッジ部分(61)がダイヤフラム(1)の内側上方突条(311a)の内側付け根部分(P)に当接することにより、ダイヤフラムの変形時に内側付け根部分(P)に大きな応力がかかり、亀裂発生の起点となる。
本発明においては、内側上方突条(311a)の内側近傍部(313)の高さが外側上方突条(311b)の高さより低く形成されていることにより、位置合わせ用溝のエッジ部分(61)が内側上方突条(311a)の付け根部分(P)に当接せず、付け根部分(P)を起点とする亀裂発生を防止することが可能となる。
【0037】
内側上方突条(311a)の付け根部分(P)は、内側上方突条(311a)から内側近傍部(313)に向けて徐々に高さが低くなるように形成してもよいし(
図2(a)参照)、内側上方突条(311a)から内側近傍部(313)に向けて一旦低くなってから高くなるように凹ませて形成してもよい(
図2(b)参照)。
【0038】
下方突条(312)は、内側下方突条(312a)と、この内側下方突条(312a)より突出高さが高い外側下方突条(312b)とが、階段状に連続して形成されている。これにより、シール面として機能する内側下方突条(312a)をバルブボディ(5)に対して広い面積で確実に密接させることが可能となり、シール性を向上させることができる。
【0039】
内側下方突条(312a)の突出高さは、外側下方突条(312b)の外側近傍部(314)の高さより高く形成されている。
これにより、シール面として機能する内側下方突条(312a)をバルブボディ(5)に対して高い圧力で密接させることが可能となり、シール性を向上させることができる。
【0040】
但し、本発明において、ダイヤフラムの突条の形態は図示例のものに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない限り、公知の様々な形態の突条を適宜採用することができる。
【0041】
また、本発明に係るダイヤフラム弁は、図示例のような流路内で弁座が隆起しているウェア型のダイヤフラム弁に限定されず、隆起した弁座を有さないダイヤフラム弁であってもよい。