特許第5964143号(P5964143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5964143光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964143
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/132 20060101AFI20160721BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20160721BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20160721BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20160721BHJP
   H01S 5/022 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   G02B6/132
   G02B6/12 301
   G02B6/42
   H01L31/02 C
   H01S5/022
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-124610(P2012-124610)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-250416(P2013-250416A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2014年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】日本メクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】松 田 文 彦
【審査官】 奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−221195(JP,A)
【文献】 特開2007−293308(JP,A)
【文献】 特開2008−261956(JP,A)
【文献】 特開2009−058923(JP,A)
【文献】 特開2009−288341(JP,A)
【文献】 特開2005−284302(JP,A)
【文献】 特開2001−004870(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/043609(WO,A1)
【文献】 特開2005−201937(JP,A)
【文献】 特開2001−108853(JP,A)
【文献】 特開2007−004043(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/026435(WO,A1)
【文献】 特開2012−098465(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/053888(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12− 6/14
G02B 6/26− 6/27
G02B 6/30− 6/34
G02B 6/42− 6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面および前記第1の主面の反対側の第2の主面を有するフレキシブルプリント配線板と、前記フレキシブルプリント配線板の前記第1の主面に沿って設けられたフレキシブル光導波路と、いずれも前記フレキシブルプリント配線板の前記第2の主面に実装された面発光素子および面受光素子とを備える光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
可撓性を有する第1のクラッド層と、可撓性を有するコア層とを貼り合わせた後、前記コア層をパターニングすることにより、一端の幅が前記面発光素子の発光部よりも大きく、かつ他端の幅が前記面受光素子の受光部よりも小さいコアを形成する工程と、
前記コアを覆うように前記第1のクラッド層に可撓性を有する第2のクラッド層を貼り合わせることにより、前記フレキシブル光導波路を作製する工程と、
前記フレキシブルプリント配線板の前記第1の主面の所定の位置に、接着剤シートを介して前記フレキシブル光導波路を貼り合わせる工程と、
前記フレキシブルプリント配線板に貼り合わせられた前記フレキシブル光導波路を加工することにより、端面での光反射によって信号光の光路を変換する第1の光路変換ミラー及び第2の光路変換ミラーを、前記コアの前記一端及び前記他端にそれぞれ形成する工程と、
前記面発光素子の発光部から出射された信号光が前記第1の光路変換ミラーで反射し前記コア内を伝搬するように、前記面発光素子を前記フレキシブルプリント配線板に実装する第1の超音波接合工程と、
前記第2の光路変換ミラーで反射した信号光が前記面受光素子の受光部に入射するように、前記面受光素子を前記フレキシブルプリント配線板に実装する第2の超音波接合工程と、
を備え
前記第1の超音波接合工程では、前記フレキシブルプリント配線板の所定の位置に載置された前記面発光素子に厚さ方向の圧力を印加しつつ前記コアの幅方向に進む超音波を前記面発光素子に印加することにより、前記発光部と同じ面に設けられた前記面発光素子の第1の電極を、前記フレキシブルプリント配線板の前記第2の主面に設けられた第1のパッドに電気的に接続させ、
前記第2の超音波接合工程では、前記フレキシブルプリント配線板の所定の位置に載置された前記面受光素子に厚さ方向の圧力を印加しつつ前記コアの幅方向に進む超音波を前記面受光素子に印加することにより、前記受光部と同じ面に設けられた前記面受光素子の第2の電極を、前記フレキシブルプリント配線板の前記第2の主面に設けられた第2のパッドに電気的に接続させる、
ことを特徴とする光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
第1の主面および前記第1の主面の反対側の第2の主面を有するフレキシブルプリント配線板と、前記フレキシブルプリント配線板の前記第1の主面に沿って設けられたフレキシブル光導波路と、いずれも前記フレキシブルプリント配線板の前記第2の主面に実装された面発光素子および面受光素子とを備える光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
前記フレキシブルプリント配線板の前記第1の主面の所定の位置に、可撓性および接着性を有する第1のクラッド層を貼り合わせる工程と、
前記フレキシブルプリント配線板上の前記第1のクラッド層に可撓性を有するコア層を貼り合わせる工程と、
前記コア層をパターニングすることにより、一端の幅が前記面発光素子の発光部よりも大きく、かつ他端の幅が前記面受光素子の受光部よりも小さいコアを形成する工程と、
前記コアを覆うように前記第1のクラッド層に可撓性を有する第2のクラッド層を貼り合わせることにより、前記フレキシブル光導波路を作製する工程と、
前記フレキシブル光導波路を加工することにより、端面での光反射によって信号光の光路を変換する第1の光路変換ミラー及び第2の光路変換ミラーを、前記コアの前記一端及び前記他端にそれぞれ形成する工程と、
前記面発光素子の発光部から出射された信号光が前記第1の光路変換ミラーで反射し前記コア内を伝搬するように、前記面発光素子を前記フレキシブルプリント配線板に実装する第1の超音波接合工程と、
前記第2の光路変換ミラーで反射した信号光が前記面受光素子の受光部に入射するように、前記面受光素子を前記フレキシブルプリント配線板に実装する第2の超音波接合工程と、
を備え
前記第1の超音波接合工程では、前記フレキシブルプリント配線板の所定の位置に載置された前記面発光素子に厚さ方向の圧力を印加しつつ前記コアの幅方向に進む超音波を前記面発光素子に印加することにより、前記発光部と同じ面に設けられた前記面発光素子の第1の電極を、前記フレキシブルプリント配線板の前記第2の主面に設けられた第1のパッドに電気的に接続させ、
前記第2の超音波接合工程では、前記フレキシブルプリント配線板の所定の位置に載置された前記面受光素子に厚さ方向の圧力を印加しつつ前記コアの幅方向に進む超音波を前記面受光素子に印加することにより、前記受光部と同じ面に設けられた前記面受光素子の第2の電極を、前記フレキシブルプリント配線板の前記第2の主面に設けられた第2のパッドに電気的に接続させる、
ことを特徴とする光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記コアの前記一端の幅は、前記第1の光路変換ミラーに照射された信号光の前記幅方向の径に、前記第1の超音波接合工程で発生する前記面発光素子の前記幅方向の位置ずれ量を加えた値よりも大きことを特徴とする請求項1又は2に記載の光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
少なくとも前記第1の光路変換ミラーと前記第2の光路変換ミラーが形成された領域で挟まれた伝搬領域において、前記コアの幅は前記一端から前記他端に向かって単調に減少することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記コアは、第1の伝搬領域と、前記第1の光路変換ミラーが形成された領域と前記第1の伝搬領域とで挟まれた第2の伝搬領域と、前記第1の伝搬領域と前記第2の光路変換ミラーが形成された領域とで挟まれた第3の伝搬領域とを有し、
前記コアの幅は、前記第2の伝搬領域において前記一端から前記他端に向かって単調に減少し、前記第1の伝搬領域において一定であり、前記第3の伝搬領域において前記第1の伝搬領域と同じ幅を維持し、あるいは前記一端から前記他端に向かって単調に減少する、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記コアは、第1の伝搬領域と、前記第1の光路変換ミラーが形成された領域と前記第1の伝搬領域とで挟まれた第2の伝搬領域と、前記第1の伝搬領域と前記第2の光路変換ミラーが形成された領域とで挟まれた第3の伝搬領域とを有し、
前記コアの幅は、前記第2及び第3の伝搬領域において一定であり、前記第1の伝搬領域において前記一端から前記他端に向かって単調に減少する、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
前記第1の光路変換ミラーが形成された領域における前記コアの幅は前記一端の幅に等しく、前記第2の光路変換ミラーが形成された領域における前記コアの幅は前記他端の幅に等しいことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
前記第1及び第2の光路変換ミラーを金属膜により被覆することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
前記金属膜を形成した後に、前記第1及び第2の光路変換ミラーを封止樹脂で埋設することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法、より詳しくは、フレキシブルプリント配線板と、該フレキシブルプリント配線板に設けられたフレキシブル光導波路とを備える光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法、及び光電気混載フレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び高機能化がますます進展しており、それにつれて、フレキシブルプリント配線板が、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話、ゲーム機などの小型電子機器を中心に広く用いられている。
【0003】
上記の電子機器が扱う情報量は特に増加傾向にあり、信号伝送速度はますます高速化している。例えばパソコンの場合、2010年から2011年にかけて伝送速度が6Gbpsの規格へ移行しており、伝送線路における信号損失を考慮することの重要性がますます増加している。
【0004】
加えて、近年、高速でパルス信号を発信するために、信号源の信号振幅電圧が低電圧化していく傾向にある。このため、外部または信号源自身から発するスパイクノイズにより、正確な信号伝送が妨げられ易い状況となっている。通常、高速信号伝送を行う基板はインピーダンス整合させた伝送線路を有する。しかしながら、そのような基板を用いた場合でも、伝送線路における信号損失を許容できない状況になりつつある。
【0005】
上記のスパイクノイズに対しては、伝送線路や電子機器においてノイズ対策を講じる必要がある。具体的には、伝送線路に対しては電磁シールドを設けなければならないが、電磁シールドを設けることにより伝送線路の厚みが増す。そのため、例えば、ノートパソコンのディスプレイとキーボードを繋ぐヒンジの屈曲性を確保することが困難な場合があった。
【0006】
そこで、電気信号を高速伝送する際の伝送損失やノイズ耐性の問題を解決すべく、長距離信号伝送の分野で実用化されている光ファイバーによる高速信号伝送技術を、上記の小型電子機器に適用することが検討されている。
【0007】
さらに、光による高速信号伝送技術をノートパソコンのヒンジなどに適用するため、可撓性を有する有機ポリマーからなるポリマー光導波路と、フレキシブルプリント配線板(以下、単に「FPC」ともいう。)とを組み合わせた光電気混載フレキシブルプリント配線板が知られている(例えば特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−054617号公報
【特許文献2】特開2009-58923号公報
【特許文献3】特開2010−286777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
フレキシブル光導波路を介して通信可能なように、面型の光半導体素子(面発光素子または面受光素子)が光電気混載フレキシブルプリント配線板のFPCに実装される。光半導体素子の搭載位置については厳しい条件が課せられる。このため、リフローの加熱温度が光半導体素子の耐熱温度(例えば300℃)以下であっても、光半導体素子の実装は、通常、リフローではなく、超音波接合(金―金超音波接合など)により行われる。その理由は、リフローの場合、クリームはんだの溶融によりFPC上に載置された光半導体素子が所定の位置から動いてしまうため、搭載位置精度(例えば±10μm以下)を満たすことが困難であるからである。
【0010】
一方、超音波接合の場合、FPCの厚さ方向に適当な圧力を印加した状態で、FPCの面方向に進む超音波を印加する。超音波で誘起された原子拡散により、光半導体素子の電極とFPCのパッドとが電気的に接合される。このため、実装工程における光半導体素子の位置ずれは、リフローの場合よりも小さくなることが期待される。
【0011】
しかしながら、実際には、光電気混載フレキシブルプリント配線板に対して超音波接合を用いた場合、以下の新たな問題が生じる。
【0012】
光電気混載フレキシブルプリント配線板のフレキシブル光導波路は、有機ポリマーなど、弾性率の低い材料から構成される。このため、超音波接合を行う際に印加される圧力や超音波を光電気混載フレキシブルプリント配線板に有効に作用させることが困難である。即ち、厚さ方向の圧力を増やしても、それに応じてフレキシブル光導波路が変形するため、光半導体素子とFPCとが接触する部分に十分な圧力がかからない。よって、光半導体素子及びFPC間の十分な接合強度を得ることができないという問題がある。
【0013】
この問題に対し、十分な接合強度を確保すべく、超音波出力を高く設定することが考えられる。しかしながら、超音波出力を高くした場合、超音波の振幅も大きくなり、光半導体素子の搭載位置精度が低下してしまう。搭載位置のずれにより、信号光の一部が光路変換ミラーに照射されなくなる事態が想定される。その場合、面受光素子が受光する信号光の光パワーは大幅に低下してしまう。このように、接合強度と搭載位置精度とはトレードオフの関係にあり、接合強度を増加させようとすると搭載位置精度は低下してしまうという問題がある。
【0014】
上記のように、従来、接合強度と位置精度を両立させることは困難であり、そのことが光電気混載フレキシブルプリント配線板の歩留りを低下させる要因となっていた。
【0015】
本発明は、上記の技術的認識に基づいてなされたものであり、光半導体素子及びフレキシブルプリント配線板間の接合強度と、光半導体素子の搭載位置精度とを両立させ、光電気混載フレキシブルプリント配線板の歩留りを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様による光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法は、
第1の主面および前記第1の主面の反対側の第2の主面を有するフレキシブルプリント配線板と、前記フレキシブルプリント配線板の前記第1の主面に沿って設けられたフレキシブル光導波路と、いずれも前記フレキシブルプリント配線板の前記第2の主面に実装された面発光素子および面受光素子とを備える光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
可撓性を有する第1のクラッド層と、可撓性を有するコア層とを貼り合わせた後、前記コア層をパターニングすることにより、一端の幅が前記面発光素子の発光部よりも大きく、かつ他端の幅が前記面受光素子の受光部よりも小さいコアを形成する工程と、
前記コアを覆うように前記第1のクラッド層に可撓性を有する第2のクラッド層を貼り合わせることにより、前記フレキシブル光導波路を作製する工程と、
前記フレキシブルプリント配線板の前記第1の主面の所定の位置に、接着剤シートを介して前記フレキシブル光導波路を貼り合わせる工程と、
前記フレキシブルプリント配線板に貼り合わせられた前記フレキシブル光導波路を加工することにより、端面での光反射によって信号光の光路を変換する第1の光路変換ミラー及び第2の光路変換ミラーを、前記コアの前記一端及び前記他端にそれぞれ形成する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の別態様による光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法は、
第1の主面および前記第1の主面の反対側の第2の主面を有するフレキシブルプリント配線板と、前記フレキシブルプリント配線板の前記第1の主面に沿って設けられたフレキシブル光導波路と、いずれも前記フレキシブルプリント配線板の前記第2の主面に実装された面発光素子および面受光素子とを備える光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
前記フレキシブルプリント配線板の前記第1の主面の所定の位置に、可撓性および接着性を有する第1のクラッド層を貼り合わせる工程と、
前記フレキシブルプリント配線板上の前記第1のクラッド層に可撓性を有するコア層を貼り合わせる工程と、
前記コア層をパターニングすることにより、一端の幅が前記面発光素子の発光部よりも大きく、かつ他端の幅が前記面受光素子の受光部よりも小さいコアを形成する工程と、
前記コアを覆うように前記第1のクラッド層に可撓性を有する第2のクラッド層を貼り合わせることにより、前記フレキシブル光導波路を作製する工程と、
前記フレキシブル光導波路を加工することにより、端面での光反射によって信号光の光路を変換する第1の光路変換ミラー及び第2の光路変換ミラーを、前記コアの前記一端及び前記他端にそれぞれ形成する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る光電気混載フレキシブルプリント配線板は、
第1の主面および前記第1の主面の反対側の第2の主面を有し、かつ、前記第2の主面に第1及び第2のパッドが設けられたフレキシブルプリント配線板と、
コアと、前記コアの外周を覆うクラッドを有し、前記フレキシブルプリント配線板の前記第1の主面に沿って設けられたフレキシブル光導波路であって、前記フレキシブル光導波路の一端及び他端には、端面での光反射によって信号光の光路を変換する第1及び第2の光路変換ミラーがそれぞれ設けられた、フレキシブル光導波路と、
信号光を出射する発光部と、前記発光部と同じ面に設けられた第1の電極とを有し、前記発光部から出射された信号光が前記第1の光路変換ミラーで反射し前記フレキシブル光導波路のコア内を伝搬するように前記フレキシブルプリント配線板の前記第2の主面に実装された面発光素子と、
信号光を受光する受光部と、前記受光部と同じ面に設けられた第2の電極とを有し、前記第2の光路変換ミラーで反射した信号光が前記受光部に入射するように前記フレキシブルプリント配線板の前記第2の主面に実装された面受光素子と、
を備え、
前記コアの前記一端の幅は前記発光部よりも大きく、かつ前記コアの前記他端の幅は前記受光部よりも小さく、前記面発光素子の前記第1の電極は、前記フレキシブルプリント配線板の前記第1のパッドと超音波接合により電気的に接続され、前記面受光素子の前記第2の電極は、前記フレキシブルプリント配線板の前記第2のパッドと超音波接合により電気的に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、一端の幅が面発光素子の発光部よりも大きく、かつ他端の幅が面受光素子の受光部よりも小さいコアを形成することにより、面発光素子および面受光素子の、コア幅方向の搭載位置ずれに対するマージン(許容量)を増加させることができる。これにより、接合強度を確保するために超音波出力を高く設定しても、信号光パワーの減少率を低く抑えることができる。
【0020】
よって、本発明よれば、光半導体素子及びフレキシブルプリント配線板間の接合強度と、光半導体素子の搭載位置精度とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】本発明の第1の実施形態に係る光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための図である。
図1B図1Aに続く、本発明の第1の実施形態に係る光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための図である。
図1C図1Bに続く、本発明の第1の実施形態に係る光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための図である。
図1D図1Cに続く、本発明の第1の実施形態に係る光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための図である。
図1E】本発明の第1の実施形態に係る光電気混載フレキシブルプリント配線板の概略的構成を示す断面図である。
図2A】本発明の第2の実施形態に係る光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための図である。
図2B図2Aに続く、本発明の第2の実施形態に係る光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための図である。
図2C図2Bに続く、本発明の第2の実施形態に係る光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための図である。
図2D】本発明の第2の実施形態に係る光電気混載フレキシブルプリント配線板の概略的構成を示す断面図である。
図3】フレキシブル光導波路のコア形状の例を示す平面図である。
図4】信号光パワーの減少率をシミュレーションにより求めた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は省略する。また、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、実施形態の説明中の数値はいずれも例示的な値であり、本発明はそれらの値に限定されるものではない。
【0023】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る光電気混載フレキシブルプリント配線板の概略的な構成について説明する。
【0024】
図1Eは、第1の実施形態に係る光電気混載フレキシブルプリント配線板1の断面図を示している。図1Eに示すように、本実施形態による光電気混載フレキシブルプリント配線板1は、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板2と、フレキシブルプリント配線板2の下面(第1の主面)に接着剤シート6を介して貼り合わせられた可撓性を有するフレキシブル光導波路3と、フレキシブルプリント配線板2の上面(第2の主面)に実装された面発光素子4及び面受光素子5とを備えている。なお、以下の説明において、面発光素子4及び面受光素子5を光半導体素子と総称する場合がある。
【0025】
図1Eに示すように、面発光素子4と面受光素子5で挟まれた領域が光電気混載フレキシブルプリント配線板1のケーブル部となる。光電気混載フレキシブルプリント配線板1はケーブル部において屈曲させることができる。
【0026】
フレキシブルプリント配線板2は、ポリイミド等の絶縁ベースフィルムを有し、面発光素子4用のパッド2a及び面受光素子5用のパッド2bが上面(第2の主面)に設けられている。このパッド2a,2bは配線パターン(図示せず)と一体的に設けられている。パッド2a,2bは、例えば、銅箔を所定の形状に加工し、表面を金メッキしたものである。なお、図示しないが、フレキシブルプリント配線板2には、光半導体素子とフレキシブル光導波路6との位置合わせ用のターゲットマークの他、光半導体素子駆動用の回路や、信号変換用の回路配線等が形成されている。
【0027】
なお、図1Eではフレキシブルプリント配線板2として、単層の片面フレキシブルプリント配線板を示しているが、これに限らない。フレキシブルプリント配線板2は、例えば、上面だけでなく下面にも配線パターンが設けられた両面フレキシブルプリント配線板でもよいし、あるいは、多層フレキシブルプリント配線板でもよい。
【0028】
フレキシブル光導波路3は、クラッド層3a,3bからなるクラッドと、所定の形状に加工されたコア3bとを有する。コア3bの外周はクラッドにより覆われている。コアの屈折率はクラッドの屈折率よりも高い。コア3bの形状については後で詳しく述べる。
【0029】
また、図1Eに示すように、フレキシブル光導波路3の一端及び他端には、端面での光反射によって信号光の光路を変換する光路変換ミラー7,8がそれぞれ設けられる。これらの光路変換ミラー7,8は、図1Eに示すように、信号光の光路に設けられている。
【0030】
面発光素子4及び面受光素子5は、通常、ベアチップ型の素子である。面発光素子4は、信号光を出射する発光部4aと、発光部4aと同じ面に設けられた電極4bとを有する。電極4bはパッド2aと超音波接合により電気的に接続されている。この面発光素子4として、例えばVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER:垂直共振器面発光レーザ)が用いられる。面受光素子5は、信号光を受光する受光部5aと、受光部5aと同じ面に設けられた電極5bとを有する。電極5bは、パッド2bと超音波接合により電気的に接続されている。この面受光素子5として、面発光素子4の波長(例えば850nm)に感度を有するフォトダイオードが用いられる。
【0031】
なお、面発光素子4及び面受光素子5の実装工程において、超音波接合として金−金超音波接合を用いる場合には、電極4b,5bの表面を金メッキしておく。
【0032】
面発光素子4及び面受光素子5のサイズについては、一辺の長さが約0.3mmである。発光部4aの直径は約30μmであり、受光部5aの直径は約80μmである。
【0033】
次に、図1A図1Eを用いて、第1の実施形態に係る光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法を説明する。
【0034】
まず、図1A(1)に示すように、可撓性を有するクラッド層3aと、可撓性を有するコア層とを貼り合わせる。クラッド層3a及びコア層の厚さはそれぞれ例えば20μm及び50μmである。その後、該コア層をパターニングすることにより、一端の幅(W1)が面発光素子4の発光部4aよりも大きく、かつ他端の幅(W2)が面受光素子5の受光部5aよりも小さいコア3bを形成する。幅W1及びW2は、例えば、それぞれ80μm及び30μmである。なお、図1A(1L)及び(1R)はそれぞれ、図1A(1)に示すクラッド層3a及びコア3bを左側及び右側から見た側面図である。
【0035】
本工程において、コア3bの一端の幅(W1)は、光路変換ミラー7に照射された信号光の、コア3bの幅方向の径に、後述の超音波接合工程で発生する面発光素子4の幅方向の位置ずれ量を加えた値よりも大きくなるように形成することが好ましい。加えて、コア3bの他端の幅(W2)は、光路変換ミラー8に照射された信号光の、コア3bの幅方向の径に、後述の超音波接合工程で発生する面受光素子5の幅方向の位置ずれ量を加えた値よりも大きくなるように形成することが好ましい。
【0036】
なお、コア層の加工方法としては、UV光による露光工程、およびアルカリ溶液(又は有機溶剤)等を用いた現像工程を含むフォトファブリケーション手法が挙げられる。また、これに限らず、フォトブリーチング手法、あるいはインプリント手法などを用いてもよい。フォトブリーチング手法は、単一の材料から露光・加熱処理のみで、屈折率の異なるコアとクラッドを有するポリマー光導波路を作製することが可能である。単一の材料からポリマー光導波路を作製可能であるため、コスト的に有利である。また、インプリント手法は、コアのパターンに対応したパターンの凹凸を有する原版を用いる。UV硬化型の屈折率の異なる透明なコア材料とクラッド材料から構成された光導波路材料に該原版を接触させ、その後、UV光を照射してコア材料を硬化させる。その後、原版を硬化したコア材料から引き離すことで、所望の光導波路パターンを得る。上記のフォトブリーチング手法及びインプリント手法のいずれも、現像工程が不要である。また、コア3bの平面形状は、直線状に限らず、曲線状でもよいし、分岐を有する形状であってもよい。
【0037】
次に、図1B(2)に示すように、コア3bを覆うように、クラッド層3aに可撓性を有するクラッド層3cを貼り合わせる。そして、クラッド層3a,3cとコア3bをUV光又は熱などで硬化させることにより、フレキシブル光導波路3を作製する。クラッド層3cの厚さは例えば70μmである。なお、図1B(2L)及び(2R)はそれぞれ、図1B(2)に示すフレキシブル光導波路3を左側及び右側から見た側面図である。フレキシブル光導波路3は、好ましくはポリマー光導波路であり、コア3b及びクラッド層3a,3cのいずれも、透明性が高く柔らかいベース樹脂(アクリル樹脂等)を用いた有機ポリマーからなる。
【0038】
次に、図1C(3)に示すように、フレキシブルプリント配線板2の下面の所定の位置に、接着剤シート6(シート状の光学接着剤)を介してフレキシブル光導波路3を貼り合わせる。その後、UV光などを照射することにより、接着剤シート6を硬化させる。
【0039】
なお、接着剤シート6は面発光素子4から出射される信号光の波長において吸収の少ないものが好ましい。接着材シート6による信号光の吸収が許容できる場合には、図1C(3)に示すように、信号光の光路を跨ぐように接着剤シート6を配置してもよい。一方、許容できない場合には、光路を避けるように開口を設けた接着剤シート6を用いる。
【0040】
また、接着剤シート6がフレキシブル光導波路3の全体にわたって設けられている必要はなく、例えば、フレキシブル光導波路3の端部にのみ接着剤シート層6が設けられてもよい。
【0041】
なお、フレキシブルプリント配線板2の絶縁ベースフィルムの厚さは、例えば12.5μm、25μm又は50μmであり、パッド2a,2bの厚さは例えば12μmである。
【0042】
また、フレキシブルプリント配線板2には、光路に対応する領域に貫通孔(図示せず)が設けられていてもよい。これにより、フレキシブルプリント配線板2の絶縁ベースフィルムによる信号光の吸収が大きい場合にも、面受光素子5が受信する信号光の強度を向上させることができる。
【0043】
次に、図1C(4)に示すように、フレキシブルプリント配線板2に貼り合わせられたフレキシブル光導波路3を加工する。これにより、コア3bの一端に光路変換ミラー7を形成し、コア3bの他端に光路変換ミラー8を形成する。これら光路変換ミラー7,8は、フレキシブルプリント配線板2の下面と所定の角度(例えば45度)をなすように形成され、その位置は信号光の光路に基づいて決められる。より具体的には、光路変換ミラー7,8は、面発光素子4の発光部4a、及び面受光素子5の受光部5aの実装予定位置の直下にそれぞれ形成される。
【0044】
光路変換ミラー7,8の形成は、例えば、ダイシング加工で用いる円形のブレードにより行う。この場合、ブレードの刃端とフレキシブルプリント配線板2との間隔をミクロンオーダで制御し、ブレードの刃先の形状に応じた傾斜面を形成する。その他、レーザ加工により光路変換ミラー7,8を形成してもよい。
【0045】
光路変換ミラー7,8を封止樹脂10で保護する場合には、スパッタ法又は蒸着法等を用いて、光路変換ミラー7,8を金(Au)等の金属膜(図示せず)により被覆しておく。封止樹脂10は、金属膜の形成に続いて形成してもよいし、あるいは、後述の封止樹脂11を形成する工程において形成してもよい。
【0046】
次に、図1D(5)に示すように、面発光素子4及び面受光素子5をフレキシブルプリント配線板2の上面に実装する。より詳しくは、面発光素子4及び面受光素子5は、フリップチップボンダなどを用いた高精度な位置決めにより、光軸が光路変換ミラーに合うように実装する。
【0047】
面発光素子4については、発光部4aから出射された信号光が光路変換ミラー7で反射しコア3b内を伝搬するように、フレキシブルプリント配線板2に実装する。この実装は超音波接合により行う。より詳しくは、フレキシブルプリント配線板2の所定の位置に載置された面発光素子4に厚さ方向の圧力を印加しつつ、コア3bの幅方向S(短軸方向)に進む超音波を面発光素子4に印加する。これにより、面発光素子4の電極4bを、フレキシブルプリント配線板2のパッド2aに電気的に接続させる。
【0048】
面受光素子5については、光路変換ミラー8で反射した信号光が面受光素子5の受光部5aに入射するように、フレキシブルプリント配線板2に実装する。この実装は超音波接合により行う。より詳しくは、フレキシブルプリント配線板2の所定の位置に載置された面受光素子5に厚さ方向の圧力を印加しつつ、コア3bの幅方向S(短軸方向)に進む超音波を面受光素子5に印加する。これにより、面受光素子5の電極5bを、フレキシブルプリント配線板2のパッド2bに電気的に接続させる。
【0049】
なお、超音波の印加方向Sは図1Dの下方向に限らず上方向でもよい。また、リフロー工程により光半導体素子に熱が加わることを回避するため、光半導体素子を実装する前に、光半導体素子の制御ICや受動素子などの電子部品をフレキシブルプリント配線板2に実装しておくことが好ましい。
【0050】
次に、図1Eに示すように、透明性の高い(即ち信号光の吸収の少ない)封止樹脂11で面発光素子4及び面受光素子5を固定する。この封止樹脂11は、光半導体素子を固定するとともに、光半導体素子とフレキシブルプリント配線板2との間の空間に充填され、接続部分を保護する。なお、この封止樹脂11内を信号光が伝搬するため、封止樹脂11としては透明性の高い(即ち信号光の吸収の少ない)樹脂を用いることが好ましい。また、信号光を通すための貫通孔がフレキシブルプリント配線板2に設けられている場合は、ボイドが発生しないように、封止樹脂11を該貫通孔に充填する。
【0051】
本工程において、金属膜で被覆された光路変換ミラー7,8を封止樹脂10で埋設してもよい。この封止樹脂10としては、透明性を考慮せずに、封止樹脂11と異なる樹脂を用いてもよい。
【0052】
上記の工程を経て、図1Eに示す光電気混載フレキシブルプリント配線板1を得る。
【0053】
上記のように、面発光素子4の発光部4aの大きさ(φ30μm)に比べて、コア3bの入力端の幅(W1=80μm)は十分に大きい。さらに、面発光素子4の超音波接合による位置ずれがコア3bの幅方向(超音波の振動方向)に発生するように、コア3bの幅方向(短軸方向)に進む超音波を面発光素子4に印加する。これにより、接合強度を確保するために超音波の出力を上げた場合でも、面発光素子4を良好な搭載位置、即ち、面発光素子4から出射された信号光が光路変換ミラー7の外に照射されない位置に搭載することができる。このように、超音波出力を上げることによって搭載位置にずれ(例えば±10〜±15μm)が生じても、面発光素子4から出射された信号光は光路変換ミラー7内に照射される。
【0054】
また、面受光素子5の受光部5aの大きさ(φ80μm)に比べて、コア3bの出力端の幅(W2=30μm)は十分に小さい。さらに、面受光素子5の超音波接合による位置ずれがコア3bの幅方向(超音波の振動方向)に発生するように、コア3bの幅方向(短軸方向)に進む超音波を面受光素子5に印加する。よって、接合強度を確保するために超音波の出力を上げた場合でも、面受光素子5を良好な搭載位置、即ち、光路変換ミラー8で反射した信号光が受光部5aの外に照射されない位置に搭載することができる。このように、超音波出力を上げることによって搭載位置にずれ(例えば±10〜±15μm)が生じても、光路変換ミラー8で反射した信号光は受光部5a内に入射する。
【0055】
よって、本実施形態によれば、光半導体素子(面発光素子4、面受光素子5)及びフレキシブルプリント配線板2間の接合強度と、光半導体素子の搭載位置精度とを両立させることができる。その結果、光半導体素子の実装工程を安定化することが容易となり、光電気混載フレキシブルプリント配線板の歩留りを改善することができる。
【0056】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態による光電気混載フレキシブルプリント配線板の製造方法について説明する。第2の実施形態と第1の実施形態との相違点の一つは、接着剤シート6の有無である。以下、図2A図2Dを用いて、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0057】
図2Dは、第2の実施形態による光電気混載フレキシブルプリント配線板1Aの断面図を示している。図2Dに示すように、本実施形態による光電気混載フレキシブルプリント配線板1Aは、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板2と、フレキシブルプリント配線板2の下面(第1の主面)に直接貼り合わせられた可撓性を有するフレキシブル光導波路3と、フレキシブルプリント配線板2の上面(第2の主面)に実装された面発光素子4及び面受光素子5とを備えている。クラッド層3aは接着性を有しており、フレキシブル光導波路3はフレキシブルプリント配線板2に接着剤層を介さずに直接貼り合わせられている。なお、図2Dに示すように、面発光素子4と面受光素子5で挟まれた領域が光電気混載フレキシブルプリント配線板1Aの屈曲可能なケーブル部となる。
【0058】
次に、光電気混載フレキシブルプリント配線板1Aの製造方法について、図2A図2Dを参照しつつ説明する。図2Aの上側の図はフレキシブルプリント配線板2、クラッド層3a及びコア3bの断面図を示し、下側の図はクラッド層3a及びコア3bの下面図を示す。図2Bの上側の図はフレキシブルプリント配線板2及びフレキシブル光導波路3の断面図を示し、下側の図はフレキシブル光導波路3の下面図を示す。図2Cの上側の図は面発光素子4及び面受光素子5が実装されたフレキシブルプリント配線板2の上面図であり、下側の図はその断面図である。
【0059】
まず、図2Aに示すように、フレキシブルプリント配線板2の下面(第1の主面)の所定の位置に、可撓性および接着性を有するクラッド層3aを貼り合わせる。なお、クラッド層3aを貼り合わせた後、クラッド層3aを所望の材料特性に変化させるためにUV光などを照射してもよい。
【0060】
次に、フレキシブルプリント配線板2上のクラッド層3aに可撓性を有するコア層を貼り合わせる。
【0061】
なお、信号光の光路に貫通孔が設けられたフレキシブルプリント配線板2を用いる場合には、貼り合わせる際にクラッド層やコア層の一部が該貫通孔に入る込むことを避けるため、平坦度を得ることが容易な平板プレス等を使用することが好ましい。
【0062】
次に、図2Aに示すように、コア層をパターニングすることにより、一端の幅が面発光素子4の発光部4aよりも大きく、かつ他端の幅が面受光素子5の受光部5aよりも小さいコア3bを形成する。コア3bの形成は第1の実施形態で説明した方法と同様にして行う。なお、フォトファブリケーション手法によりコア層を加工する場合は、本工程においてフレキシブルプリント配線板2のパッド2a,2bを形成してもよい。
【0063】
次に、図2Bに示すように、コア3bを覆うように可撓性を有するクラッド層3cをクラッド層3aに貼り合わせる。クラッド層3cとして、クラッド層3aと同じ材料を用いてもよい。そして、クラッド層3a,3cとコア3bをUV光又は熱などで硬化させることにより、フレキシブルプリント配線板2に貼り付けられたフレキシブル光導波路3を作製する。
【0064】
次に、図2Cに示すように、フレキシブル光導波路3を加工することにより、端面での光反射によって信号光の光路を変換する光路変換ミラー7及び光路変換ミラー8を、コア3bの一端及び他端にそれぞれ形成する。光路変換ミラー7,8の形成は第1の実施形態で説明した方法と同様にして行う。
【0065】
なお、光路変換ミラー7,8を封止樹脂10で保護する場合には、第1の実施形態で説明したように、光路変換ミラー7,8を金属膜(図示せず)により被覆する。
【0066】
次に、図2Cに示すように、第1の実施形態で説明した方法と同様にして、超音波接合により面発光素子4及び面受光素子5をフレキシブルプリント配線板2の上面に実装する。その後、図2Dに示すように、透明性の高い封止樹脂11で面発光素子4及び面受光素子5を固定する。
【0067】
上記の工程を経て、図2Dに示す光電気混載フレキシブルプリント配線板1Aを得る。
【0068】
第2の実施形態に係る製造方法は、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。即ち、第2の実施形態によれば、光半導体素子及びフレキシブルプリント配線板2間の接合強度と、光半導体素子の搭載位置精度とを両立させることができる。その結果、光半導体素子の実装工程を安定化することが容易となり、光電気混載フレキシブルプリント配線板の歩留りを改善することができる。
【0069】
(コア形状の変形例)
上記第1及び第2の実施形態では、コアの平面形状は一様なテーパ状であったが、その他のコア形状を想定することも可能である。コアの平面形状は、信号光の入射端の幅が発光部4aよりも広く、出射端が受光部5aよりも狭くなるようにコア幅が変化していればよい。したがって、コアとしては、入射端から出射端まで連続的にコア幅が変化するものだけでなく、コア幅が連続的に変化している領域と、コア幅が一定の領域が混在するものでもよい。
【0070】
図3を用いて、コア形状の変形例について説明する。図3(a),(b),(c)は、クラッド層3a及びその上に形成されたコア3bの平面図である。
【0071】
図3(a)に示すコアは、光路変換ミラー7,8が形成された領域M,Nにおいて、コア3bの幅は一定である。即ち、領域Mにおけるコア3bの幅は左端(一端)の幅に等しく、領域Nにおけるコア3bの幅は右端(他端)の幅に等しい。また、領域M,Nで挟まれた伝搬領域P(長さ100mm)において、コア3bの幅は、光路変換ミラー7側(一端)から光路変換ミラー8側(他端)に向かって単調に減少している。
【0072】
光路変換ミラー7,8がフレキシブルプリント配線板2の下面と45度をなすように形成されている場合、領域M,Nの長さはコア3bの厚さに等しい。図3(a)の変形例では、コア3bの厚さが50μmなので領域M,Nの長さも50μmである。図3(b)及び(c)についても同様である。領域M,Nのコア幅を一定にすることで、光半導体素子の搭載位置ずれに対するマージンを確保することが容易となる。
【0073】
次に、図3(b)に示すコアは、3つの伝搬領域(A,B,C)を有する。伝搬領域A,B及びCの長さはそれぞれ、10mm、80mm及び10mmである。伝搬領域Aは、光路変換ミラー7が形成された領域Mと伝搬領域Bとで挟まれた領域である。伝搬領域Cは、伝搬領域Bと、光路変換ミラー8が形成された領域Nとで挟まれた領域である。
【0074】
図3(b)に示すように、コア3bの幅は、伝搬領域Aにおいて光路変換ミラー7側(一端)から光路変換ミラー8側(他端)に向かって単調に減少し、伝搬領域Bにおいて一定であり、伝搬領域Cにおいて伝搬領域Bと同じ、あるいは光路変換ミラー7側(一端)から光路変換ミラー8側(他端)に向かって単調に減少する。
【0075】
具体的には、コア幅は、伝搬領域Aにおいて60〜80μmから50μmまで減少し、伝搬領域Bにおいて50μmに維持され、伝搬領域Cにおいて50μmから最大で30μmまで減少する。なお、伝搬領域Cのコア幅は伝搬領域Bの幅と同じ値に維持してもよい。また、伝搬領域Bの平面形状は直線状に限らず、S字状などの曲線であってもよい。コアの厚みはいずれの伝搬領域においても同じであり、例えば50μm〜80μmである。
【0076】
次に、図3(c)に示すコアは、3つの伝搬領域(A,B,C)を有する。伝搬領域A,B及びCの長さはそれぞれ、10mm、80mm及び10mmである。伝搬領域Aは、光路変換ミラー7が形成された領域Mと伝搬領域Bとで挟まれた領域である。伝搬領域Cは、伝搬領域Bと、光路変換ミラー8が形成された領域Nとで挟まれた領域である。
【0077】
図3(c)に示すように、コア3bの幅は、伝搬領域A及びCにおいて一定であり、伝搬領域Bにおいて光路変換ミラー7側(一端)から光路変換ミラー8側(他端)に向かって単調に減少する。具体的には、コア幅は、伝搬領域Aにおいて一定であり、伝搬領域Bにおいて60〜80μmから30〜50μmに減少し、伝搬領域Cにおいて一定である。コアの厚みはいずれの伝搬領域においても同じであり、例えば50μm〜80μmである。
【0078】
次に、図3(a)〜(c)に示した3種類のコアについて、信号光のパワーの減少率をシミュレーションした結果について説明する。図4(a)〜(c)はそれぞれ図3(a)〜(c)のコアについて、コア幅が伝搬領域の全長にわたって一定(50μm)の場合と比較した信号光パワーの減少率を示している。なお、各表における「入射側」及び「出射側」はそれぞれ、各伝搬領域の入射端及び出射端におけるコア幅を示している。また、「パワー(mW)」はコアから出射した信号光パワーを示している。
【0079】
図4(a)〜(c)からわかるように、上記3種類のコアのいずれについても、信号光パワーの減少率は5%以内に収まっている。5%の減少率は、伝送損失が約0.1dB増加することに相当する。一方、光半導体素子の搭載位置がずれることによる信号光パワーの減少率は約20%である。この減少率は、伝送損失が約0.8dB増加することに相当する。このように、コア幅を変化させることによる伝送損失の増加は、光半導体素子の搭載位置がずれることによる増加よりもずっと小さい。コア幅を変化させることにより、光半導体素子の搭載位置精度のマージンを増やすことができる。よって、本発明によれば、接合強度と搭載位置精度を両立すること可能となる。
【0080】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1,1A 光電気混載フレキシブルプリント配線板
2 フレキシブルプリント配線板
2a,2b パッド
3 フレキシブル光導波路
3a,3c クラッド層
3b コア
4 面発光素子
4a 発光部
4b 電極
5 面受光素子
5a 受光部
5b 電極
6 接着剤シート
7,8 光路変換ミラー
10,11 封止樹脂
A,B,C,P 伝搬領域
M,N 光路変換ミラー形成領域
S 超音波印加方向
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4