(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964163
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 7/06 20060101AFI20160721BHJP
H01Q 7/08 20060101ALI20160721BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
H01Q7/06
H01Q7/08
G06K19/077 264
G06K19/077 296
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-159333(P2012-159333)
(22)【出願日】2012年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-22909(P2014-22909A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】NECトーキン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】岡 利昭
(72)【発明者】
【氏名】池田 昌
【審査官】
岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/014939(WO,A1)
【文献】
特開2005−340759(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/122162(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00− 1/10
H01Q 1/27− 1/52
H01Q 5/00−11/20
G06K 17/00
G06K 19/00−19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び前記第1主面の裏面である第2主面と外縁を有する導体板であって、前記外縁又は前記外縁を含むエッジからなる閉路である閉ループエッジと前記閉ループエッジから分離された開口部とを備える導体板と、
前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に前記閉ループエッジの外側から前記開口部の内側まで延びるように設けられた磁性体と、
コイルとを備えるアンテナ装置であって、
前記コイルは、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に前記コイルによって囲まれた領域と前記導体板の前記閉ループエッジの外部とが少なくとも部分的に重複するように且つ前記コイルによって囲まれた領域と前記導体板の前記開口部とが重複しないように配置されており、
前記導体板には、前記外縁から前記開口部に向かって凹んだ凹部が形成されており、
前記凹部を構成する縁は前記外縁と共に前記閉ループエッジを構成しており、
前記コイルは、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に、前記凹部内の領域と前記コイルによって囲まれた領域とが少なくとも部分的に重複するように配置されている
アンテナ装置。
【請求項2】
第1主面及び前記第1主面の裏面である第2主面と外縁を有する導体板であって、前記外縁又は前記外縁を含むエッジからなる閉路である閉ループエッジと前記閉ループエッジから分離された開口部とを備える導体板と、
前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に前記閉ループエッジの外側から前記開口部の内側まで延びるように設けられた磁性体と、
コイルとを備えるアンテナ装置であって、
前記コイルは、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に前記コイルによって囲まれた領域と前記導体板の前記閉ループエッジの外部とが少なくとも部分的に重複するように且つ前記コイルによって囲まれた領域と前記導体板の前記開口部とが重複しないように配置されており、
前記導体板には、前記外縁に対してスリットで連結された付加的な開口部が形成されており、
前記スリットの両縁及び前記付加的な開口部を構成する縁は前記外縁と共に前記閉ループエッジを構成しており、
前記コイルは、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に、前記付加的な開口部内の領域と前記コイルによって囲まれた領域とが少なくとも部分的に重複するように配置されている
アンテナ装置。
【請求項3】
第1主面及び前記第1主面の裏面である第2主面と外縁を有する導体板であって、前記外縁又は前記外縁を含むエッジからなる閉路である閉ループエッジと前記閉ループエッジから分離された開口部とを備える導体板と、
前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に前記閉ループエッジの外側から前記開口部の内側まで延びるように設けられた磁性体と、
コイルとを備えるアンテナ装置であって、
前記コイルは、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に前記コイルによって囲まれた領域と前記導体板の前記閉ループエッジの外部とが少なくとも部分的に重複するように且つ前記コイルによって囲まれた領域と前記導体板の前記開口部とが重複しないように配置されており、
前記コイルは、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に、前記導体板と重複しないように配置されている
アンテナ装置。
【請求項4】
請求項3記載のアンテナ装置であって、
前記導体板には、前記外縁から前記開口部に向かって凹んだ凹部が形成されており、
前記凹部を構成する縁は前記外縁と共に前記閉ループエッジを構成しており、
前記コイルは、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に、前記凹部内の領域と前記コイルによって囲まれた領域とが少なくとも部分的に重複するように配置されている
アンテナ装置。
【請求項5】
請求項3記載のアンテナ装置であって、
前記導体板には、前記外縁に対してスリットで連結された付加的な開口部が形成されており、
前記スリットの両縁及び前記付加的な開口部を構成する縁は前記外縁と共に前記閉ループエッジを構成しており、
前記コイルは、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に、前記付加的な開口部内の領域と前記コイルによって囲まれた領域とが少なくとも部分的に重複するように配置されている
アンテナ装置。
【請求項6】
第1主面及び前記第1主面の裏面である第2主面と外縁を有する導体板であって、前記外縁又は前記外縁を含むエッジからなる閉路である閉ループエッジと前記閉ループエッジから分離された開口部とを備える導体板と、
前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に前記閉ループエッジの外側から前記開口部の内側まで延びるように設けられた磁性体と、
コイルとを備えるアンテナ装置であって、
前記コイルは、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に前記コイルによって囲まれた領域と前記導体板の前記閉ループエッジの外部とが少なくとも部分的に重複するように且つ前記コイルによって囲まれた領域と前記導体板の前記開口部とが重複しないように配置されており、
前記アンテナ装置は、付加的な導体板を更に備えており、
前記導体板と前記付加的な導体板は、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に、窓又はギャップを構成するように配置されており、
前記コイルは、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に、前記窓又はギャップと前記コイルによって囲まれた領域とが少なくとも部分的に重複するように配置されている
アンテナ装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2記載のアンテナ装置であって、
前記コイルは、少なくとも部分的に前記導体板の前記第2主面と前記磁性体との間に挟まれている
アンテナ装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のアンテナ装置であって、
前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に、前記磁性体は、前記コイルによって囲まれた領域と部分的に重複している
アンテナ装置。
【請求項9】
請求項8記載のアンテナ装置であって、
前記磁性体は、前記コイルによって囲まれた領域及び前記導体板の前記開口部の少なくとも一方又は両方の内部まで延びている又は内部を貫いている
アンテナ装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のアンテナ装置であって、
前記アンテナ装置は、相手側となる送信コイルと通信するものであり、
前記送信コイルは前記第1主面側に配置され、前記コイルは前記第2主面側に配置されている
アンテナ装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のアンテナ装置であって、
前記アンテナ装置は、シールド板を更に備えており、
前記磁性体は、少なくとも部分的に、前記導体板の前記第2主面と前記シールド板との間に位置している
アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電子機器内に設けられるアンテナ装置に関し、特に、RFID(Radio Frequency Identification)又はNFC(Near Field Communication)用のアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のアンテナ装置としては、例えば、特許文献1又は特許文献2に開示されたものがある。いずれのアンテナ装置も、導体板とコイルとを備えている。特許文献1の導体板には、開口部と、その開口部と導体板の外縁とを連結するスリットとが形成されている。特許文献1のコイルは、導体板の主面と直交する方向から見た場合に、コイルによって囲まれた領域が開口部内部と重複するように配置されている。特許文献2の導体板には、切り欠き部が形成されている。特許文献1のコイルは、導体板の主面と直交する方向から見た場合に、コイルによって囲まれた領域が切り欠き部内部と重複するように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4687832号公報
【特許文献2】特開2011−199343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、通信特性の更なる改善を達成し得る構造を有するアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者らは、研究の結果、導体板の外縁から分離された開口部(特許文献1のように外縁とスリットで連結されたオープンなものではなく、開口部の縁自体が閉ループを構成し得るようなもの)を導体板に設けると共に、導体板の外縁からなる閉路である閉ループエッジの外側から開口部の内側まで延びる磁性体を設けると通信距離の拡大を図ることができることを見出した。同様に、特許文献1のようにスリットとそのスリットにより外縁と連結された開口部(付加的な開口部)を有する場合(この場合には、導体板の外縁とスリットの縁と付加的な開口部の縁とで閉路である閉ループエッジが構成される)や、特許文献2のように凹部を有する場合(この場合には、導体板の外縁と凹部の縁とで閉路である閉ループエッジが構成される)にも、上述したような閉ループを構成し得る開口部を導体板に設けると共に閉ループエッジの外側から開口部の内側まで延びる磁性体を設けると通信距離の拡大を図ることができることを確認した。本発明は、かかる知見に基づきなされたものであり、以下に掲げるような具体的構成を備えている。
【0006】
本発明は、第1のアンテナ装置として、
第1主面及び前記第1主面の裏面である第2主面と外縁を有する導体板であって、前記外縁又は前記外縁を含むエッジからなる閉路である閉ループエッジと前記閉ループエッジから分離された開口部とを備える導体板と、
前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に前記閉ループエッジの外側から前記開口部の内側まで延びるように設けられた磁性体と、
コイルとを備えるアンテナ装置であって、
前記コイルは、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に前記コイルによって囲まれた領域と前記導体板の前記閉ループエッジの外部とが少なくとも部分的に重複するように且つ前記コイルによって囲まれた領域と前記導体板の前記開口部とが重複しないように配置されている
アンテナ装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、第2のアンテナ装置として、第1のアンテナ装置であって、
前記導体板には、前記外縁から前記開口部に向かって凹んだ凹部が形成されており、
前記凹部を構成する縁は前記外縁と共に前記閉ループエッジを構成しており、
前記コイルは、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に、前記凹部内の領域と前記コイルによって囲まれた領域とが少なくとも部分的に重複するように配置されている
アンテナ装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、第3のアンテナ装置として、第1のアンテナ装置であって、
前記導体板には、前記外縁に対してスリットで連結された付加的な開口部が形成されており、
前記スリットの両縁及び前記付加的な開口部を構成する縁は前記外縁と共に前記閉ループエッジを構成しており、
前記コイルは、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に、前記付加的な開口部内の領域と前記コイルによって囲まれた領域とが少なくとも部分的に重複するように配置されている
アンテナ装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、第4のアンテナ装置として、第1乃至第3のいずれかのアンテナ装置であって、
前記コイルは、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に、前記導体板と重複しないように配置されている
アンテナ装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、第5のアンテナ装置として、第1乃至第3のいずれかのアンテナ装置であって、
前記コイルは、少なくとも部分的に前記導体板の前記第2主面と前記磁性体との間に挟まれている
アンテナ装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、第6のアンテナ装置として、第1のアンテナ装置であって、
前記アンテナ装置は、付加的な導体板を更に備えており、
前記導体板と前記付加的な導体板は、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に、窓又はギャップを構成するように配置されており、
前記コイルは、前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に、前記窓又はギャップと前記コイルによって囲まれた領域とが少なくとも部分的に重複するように配置されている
アンテナ装置を提供する。
【0012】
また、本発明は、第7のアンテナ装置として、第1乃至第6のいずれかのアンテナ装置であって、
前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に、前記磁性体は、前記コイルによって囲まれた領域と部分的に重複している
アンテナ装置を提供する。
【0013】
また、本発明は、第8のアンテナ装置として、第7のアンテナ装置であって、
前記磁性体は、前記コイルによって囲まれた領域及び前記導体板の前記開口部の少なくとも一方又は両方の内部まで延びている又は内部を貫いている
アンテナ装置を提供する。
【0014】
更に、本発明は、第9のアンテナ装置として、
第1主面及び前記第1主面の裏面である第2主面と外縁を有する導体板であって、前記外縁又は前記外縁を含むエッジからなる閉路である閉ループエッジと前記閉ループエッジから分離された開口部とを備える導体板と、
コイルと、
前記コイルによって囲まれた領域を通り且つ前記導体板の前記第2主面と直交する方向に沿って見た場合に前記閉ループエッジの外側から前記開口部の内側まで延びるように設けられた磁性体と
を備える
アンテナ装置を提供する。
【0015】
また、本発明は、第10のアンテナ装置として、第9のアンテナ装置であって、
前記コイルは、前記第2主面と直交する面内における断面が角張ったJ字状となるように平面コイルを折り曲げて形成されたものである
アンテナ装置を提供する。
【0016】
また、本発明は、第11のアンテナ装置として、第9のアンテナ装置であって、
前記コイルは、前記磁性体を磁心として巻かれたバーアンテナを構成している
アンテナ装置を提供する。
【0017】
また、本発明は、第12のアンテナ装置として、第1乃至第11のいずれかのアンテナ装置であって、
前記アンテナ装置は、相手側となる送信コイルと通信するものであり、
前記送信コイルは前記第1主面側に配置され、前記コイルは前記第2主面側に配置されている
アンテナ装置を提供する。
【0018】
また、本発明は、第13のアンテナ装置として、第1乃至第12のいずれかのアンテナ装置であって、
前記アンテナ装置は、シールド板を更に備えており、
前記磁性体は、少なくとも部分的に、前記導体板の前記第2主面と前記シールド板との間に位置している
アンテナ装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、導体板の外縁から分離された閉ループを構成する開口部を導体板に設けると共に外縁を含むエッジからなる閉路である閉ループエッジの外側から開口部の内側まで延びるように磁性体を設け、更に、その磁性体により形成された磁路又はその近傍にコイルを設けることにより、磁場の分布を広げることができ、通信範囲の拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態によるアンテナ装置を示す上面図である。
【
図2】
図1のアンテナ装置を示す部分透過上面図である。
【
図4】
図2のアンテナ装置をIV--IV線に沿って示す断面図である。
【
図5】第1変形例によるアンテナ装置を示す上面図である。
【
図6】
図5のアンテナ装置のVI--VI線に沿った断面を模式的に示す図である。
【
図7】第2変形例によるアンテナ装置を示す上面図である。
【
図8】
図7のアンテナ装置のVIII--VIII線に沿った断面を模式的に示す図である。
【
図9】第3の変形例によるアンテナ装置を示す上面図である。
【
図10】
図9のアンテナ装置のX--X線に沿った断面を模式的に示す図である。
【
図11】第4の変形例によるアンテナ装置を示す底面図である。
【
図12】第5の変形例によるアンテナ装置を示す底面斜視図である。
【
図13】第6の変形例によるアンテナ装置を示す上面図である。
【
図14】
図13のアンテナ装置をXIV--XIV線に沿って示す断面図である。
【
図15】第7の変形例によるアンテナ装置を示す上面図である。
【
図16】第8の変形例によるアンテナ装置を示す上面図である。
【
図17】第9の変形例によるアンテナ装置の導体板を示す上面図である。
【
図18】第10の変形例によるアンテナ装置の導体板を示す上面図である。
【
図19】第11の変形例によるアンテナ装置の導体板及びコイルを示す上面図である。
【
図20】第12の変形例によるアンテナ装置の導体板及び付加的な導体板を示す上面図である。
【
図21】第13の変形例によるアンテナ装置の導体板及び付加的な導体板を示す上面図である。
【
図22】第14の変形例によるアンテナ装置を示す底面斜視図である。
【
図24】第15の変形例によるアンテナ装置を示す底面斜視図である。
【
図25】第1の実施例によるアンテナ装置の効果を示す図である。
【
図26】第1の実施例によるアンテナ装置の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1乃至
図4を参照すると、本発明の実施の形態によるアンテナ装置10は、導体板20と、磁性体60と、コイル80とを備えている。
【0022】
本実施の形態による導体板20は、送信装置(送信コイル100)側に向けて配置される第1主面22と、第1主面22の裏面である第2主面24と、外縁(即ち、導体板20の外周を構成するエッジ)26とを有している。導体板20には、第1主面22と第2主面24との間を貫通する開口部40と、外縁26から内側に向かって凹んだ凹部32が形成されている。本実施の形態において、外縁26と凹部32を構成する縁(エッジ)とは閉路である閉ループエッジ30を構成している。開口部40は、閉ループエッジ30から分離されている。即ち、開口部40を構成する縁(エッジ)は、閉じており、閉ループを構成している。
【0023】
本実施の形態による磁性体60は、軟磁性体からなるものであり、第1主面22の上方に位置する上部62と、第2主面24の下方に位置する下部64と、開口部40を貫通し且つ上部62と下部64とを開口部40内において接続する貫通部66と、凹部32内を通り上部62と下部64とを連結する連結部68とを有している。即ち、磁性体60は、閉磁路を構成している。上部62と下部64とは、第1主面22や第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、凹部32の内側(即ち、閉ループエッジ30の外側)から開口部40の内側まで延びている。磁性体60の材料としては、例えば、磁性シートやフェライトシート、フェライト焼結体等を用いることができる。
【0024】
本実施の形態によるコイル80は、磁性体60と導体板20の第2主面24との間に部分的に挟まれている。また、本実施の形態によるコイル80は、導体板20の第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、凹部32内の領域とコイル80によって囲まれた領域とが部分的に重複するように配置されている。即ち、コイル80は、導体板20の第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、コイル80によって囲まれた領域と閉ループエッジ30の外部とが部分的に重複するように配置されている。凹部32内の領域とコイル80によって囲まれた領域とが完全に重複していても良いし、コイル80によって囲まれた領域と閉ループエッジ30の外部とが完全に重複していても良い。また、コイル80は、導体板20の第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、コイル80によって囲まれた領域と導体板20の開口部40とが重複しないように配置されている。本実施の形態によるコイル80は、いわゆる平面コイルであり、例えば、FPCの形態や基板上に形成されたパターンの形態、巻き線等で構成される。
【0025】
図1乃至
図4から明らかなように、本実施の形態における磁性体60とコイル80とは、導体板20の第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、磁性体60の上部62及び下部64がコイル80によって囲まれた領域と部分的に重複するように配置されている。また、磁性体60とコイル80とは、連結部68がコイル80によって囲まれた領域を貫通するように配置されている。
【0026】
かかる構造を備えるアンテナ装置10によれば、通信の相手側となる送信コイル100によって囲まれた領域とコイル80によって囲まれた領域とが重なるような配置となった場合のみならず、通信の相手側となる送信コイル100によって囲まれた領域と導体板20の開口部40とが重なるような配置となって場合でも良好な通信距離を得ることができる。即ち、本実施の形態によれば、通信範囲の拡大効果を得ることができる。
【0027】
上述した実施の形態に対しては、様々な変形・応用が可能である。例えば、上述した実施の形態において、開口部40は四角形形状のものであったが、丸形状であっても良いし、任意の形状等であっても良い。
【0028】
また、上述した実施の形態において、開口部40は1つだけであったが、複数設けられていても良い。例えば、各実施例における開口部40が紙面左右方向又は紙面上下方向に延びる梁部によって2以上に分割されていても良い。
【0029】
また、上述した実施の形態において、開口部40と同様の開口部を有する一又は複数の他の導体板を本実施の形態における導体板20に重ねて開口部同士が重複するように配置することとしても良い。
【0030】
また、上述した実施の形態において、導体板20は一定の厚みを有するものであったが、導体板20のうち、コイル80や磁性体60が配置される部分の厚みを薄くして、当該薄い部分にコイル80や磁性体60を収容配置させることとしても良い。このように構成すると、アンテナ装置10の全体を薄くすることができる。
【0031】
また、上述した実施の形態において、コイル80は、導体板20の第2主面24側に配置されていたが、第1主面22側に配置することとしても良い。
【0032】
その他の代表的な変形例について図面を用いて以下に簡単に説明する。
【0033】
(第1変形例)
上述した実施の形態において、磁性体60は閉磁路を構成する閉ループ状の断面を有するものであったが、
図5及び
図6に示される第1変形例のように、アンテナ装置10aは、角張ったU字状の断面を有する磁性体60a(即ち、それ自体では閉磁路を構成しない磁性体60a)を備えていても良い。
【0034】
詳しくは、磁性体60aは、第2主面24の下方に位置する下部64と、下部64から開口部40内まで延びる第1柱部70と、下部64からコイル80によって囲まれた領域内まで延びる第2柱部72とを有している。下部64は、第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、凹部32内(即ち、閉ループエッジ30の外側)から開口部40の内側まで延びている。特に、本変形例において、下部64は、第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、コイル80によって囲まれた領域と部分的に重複するように配置されている。第2柱部72は、コイル80によって囲まれた領域を貫通している。この変形例において、第2柱部72は凹部32内までには達していないが、これは本発明を限定するものではなく、第2柱部72が凹部32内まで達していても良い。
【0035】
(第2変形例)
図7及び
図8に示される第2変形例のように、アンテナ装置10bは、平板状の磁性体60bを備えていても良い。図示された磁性体60bは、上述した実施の形態による磁性体60の下部64と同様の配置をとるものである。即ち、磁性体60bは、第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、凹部32内(即ち、閉ループエッジ30の外側)から開口部40の内側まで延びている。また、磁性体60bは、第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、コイル80によって囲まれた領域全体と磁性体60bの一部が重複するように配置されている。磁性体60bは、第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、コイル80によって囲まれた領域と部分的に重複するように配置されていても良い。
【0036】
(第3変形例)
図9及び
図10に示される第3変形例のように、アンテナ装置10cは、更に異なる形状の磁性体60cを備えていてもよい。図示された磁性体60cは、平板状の下部64cと、下部64cから開口部40内を貫通するように延びる第1柱部70cと、第1柱部70cの上端から開口部40の縁の上方を超えるように張り出した第1張出部74と、下部64からコイル80によって囲まれた領域内を貫通して凹部32内まで延びる第2柱部72cと、第2柱部72cの上端からコイル80の上方に張り出した第2張出部76とを備えている。
【0037】
下部64cは、第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、凹部32内(即ち、閉ループエッジ30の外側)から開口部40の内側まで延びている。特に、本変形例において、下部64cは、第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、コイル80によって囲まれた領域と部分的に重複するように配置されている。
【0038】
第1張出部74と第2張出部76との張り出している方向は、互いに逆方向である。第1張出部74は、導体板20の第1主面22上に位置しており、第2張出部76は、凹部32に位置している。但し、本発明はこれに限定されるわけではなく、第2柱部72cは、凹部32内を貫通していても良いし、第2張出部76は、第1主面22上に位置していても良い。
【0039】
(第4変形例)
上述した実施の形態において、磁性体60は、コイル80の底面側すべてを覆う形状ではなかったため、底面側からコイル80を確認することができたが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、
図11に示される第4変形例のように、アンテナ装置10dの磁性体60dは、コイル80の底面側のすべてを覆うように面積を拡張された下部64dを有していても良い。この場合、コイル80は、磁性体60dの下部64dに隠れることとなるので、底面側から視認することはできない。
【0040】
(第5変形例)
上述した第4変形例においては、単一部材たる磁性体60dの下部64dにより、コイル80の底面側のすべてを覆うこととしていたが、
図12に示される第5変形例のように、アンテナ装置10eは、磁性体60と、付加的な磁性体78との2つの部材を有していても良い。磁性体60は、上述した実施の形態によるものと同一形状を有している。付加的な磁性体78は、磁性体60の下部64に近接して設けられ、コイル80の底面側のほぼすべてを覆っている。これにより、磁性体60と付加的な磁性体78の間のわずかな隙間を除き、コイル80を底面側から確認することができなくなっている。
【0041】
(第6変形例〜第8変形例)
図13及び
図14に示される第6変形例のように、アンテナ装置10fは、導体板20、磁性体60及びコイル80に加えて、シールド板90を更に備えていても良い。本変形例によるシールド板90は、磁性体60の下部64の下方に配置されている。即ち、磁性体60の下部64は、導体板20の第2主面24とシールド板90との間に位置している。具体的には、シールド板90は、導体板20の第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、磁性体60の下部64とほぼ同一のサイズを有しており、従って、下部64は、シールド板90により完全に覆われており、視認することができない。シールド板90は、例えば、より大きなサイズを有していてもよい。また、
図15に示される第7変形例によるアンテナ装置10gのように、シールド板90gにはスリット92が設けられていてもよいし、スリット92の幅をより大きなものとしてシールド板90gを角張ったC字状に構成することとしても良い。また、
図16に示される第8変形例によるアンテナ装置10hのように、シールド板90hを2枚(複数)の導体板で構成し、それらの間にギャップ94を設けるように配することとしても良い。シールド板90,90g,90hに対してスリット92を設けたり、ギャップ94を設けたりすることとすると、コイル80や導体板20の開口部40で構成されるショートループとシールド板90,90g,90hに発生する渦電流との干渉を減らすことができる。
【0042】
(第9変形例及び第10変形例)
上述した実施の形態においては、導体板20の外縁26に凹部32が設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
例えば、
図17に示される第9変形例による導体板20iのように凹部32を有せず、従って、外縁26のみで四角形の閉ループエッジ30iを構成するものであっても良い。本変形例においては、導体板20iの第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、コイル(図示せず)によって囲まれた領域(破線で示す)が外縁26iを跨ぐようにコイル(図示せず)が設けられている。コイル(図示せず)は、コイル(図示せず)によって囲まれた領域全体が外縁26iの外部にあるように設けられていても良い。
【0044】
また、
図18に示される第10変形例による導体板20jのように、ショートループ(閉ループ)を構成する開口部40のみならず、外縁26jに対してスリット36で連結された付加的な開口部34を有していてもよい。この導体板20jの場合、スリット36の両縁(スリット36を挟む2つのエッジ)及び付加的な開口部34を構成する縁と外縁26jとが閉ループエッジ30jを構成している。本変形例においては、導体板20jの第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、コイル(図示せず)によって囲まれた領域(破線で示す)が付加的な開口部34内部の領域全体と重複するように設けられている。コイル(図示せず)は、コイル(図示せず)によって囲まれた領域が付加的な開口部34内部の領域と少なくとも部分的に重複するように設けられていても良い。
【0045】
(第11変形例)
上述した実施の形態においては、コイル80によって囲まれた領域が閉ループエッジ30と交差するようにコイル80が設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
図19に示される第11変形例のように、第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、コイル80が導体板20と重複しないように配置されていても良い。即ち、コイル80によって囲まれた領域全体が閉ループエッジ30の外側に位置するように、コイル80を配置することとしても良い。但し、コイル80はできるだけ閉ループエッジ30に近い位置に位置していることが好ましい。
【0046】
(第12変形例及び第13変形例)
上述した実施の形態においては、導体板20が一枚であったが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
例えば、
図20に示される第12変形例のように、導体板20iに加えて、直線状のエッジを有する付加的な導体板50を備えていても良い。図示されたように、導体板20iは、凹部32を有さない第9変形例によるものと同じであり、付加的な導体板50は、導体板20iのエッジと付加的な導体板50のエッジとが互いに対向してその間にギャップ52を構成するように配置されている。本変形例の場合、コイル(図示せず)は、第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、コイル(図示せず)によって囲まれた領域(破線で示す)がギャップ52と部分的に重複するように、配置される。
【0048】
また、
図21に示される第13変形例のように、導体板20に加えて、角張ったC字形状の付加的な導体板50kを備えていても良い。図示されたように、導体板20は、上述した実施の形態によるものと同じであり、付加的な導体板50kは、導体板20の外縁26と共に窓54を構成するように配置されている。本変形例の場合、第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に、コイル(図示せず)は、コイル(図示せず)によって囲まれた領域(破線で示す)が窓54と少なくとも部分的に重複するように、配置される。
【0049】
(第14変形例及び第15変形例)
上述した実施の形態において、コイル80は、導体板20の第2主面24と直交する方向に沿って見た場合にコイル80によって囲まれた領域と閉ループエッジ30の外部とが少なくとも部分的に重複するように配置されていたが、この点について、例えば、以下に示す第14変形例又は第15変形例によるアンテナ装置のように変更しても良い。
【0050】
図22及び
図23を参照すると、第14変形例によるアンテナ装置10lにおいて、コイル80lは、平面コイルを上下非対称となるように折り曲げて形成されたものであり、導体板20iの第2主面24と直交する面(垂直面)内において角張ったJ字状の断面を有している。
【0051】
磁性体60lは、平板状の上部62l及び下部64lと、開口部40内を貫通すると共に上部62lと下部64lとを接続する貫通部66lと、導体板20iの外縁26iの外側において上部62lと下部64lとを連結する連結部68lとを有している。下部64lは、導体板20の第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に閉ループエッジ30iの外側から開口部40の内側まで延びている。特に、本変形例による下部64lは、コイル80lによって囲まれた領域内を通っている。
【0052】
かかる変形例の場合、導体板20iと直交する方向のみならず、導体板20iと水平な方向においても通信距離を得ることができる。
【0053】
図24を参照すると、第15変形例によるアンテナ装置10mの磁性体60mは、第14変形例による磁性体60lと同様に、平板状の上部62m及び下部64mと、開口部40内を貫通すると共に上部62mと下部64mとを接続する貫通部66mと、導体板20iの外縁26iの外側において上部62mと下部64mとを連結する連結部68mとを有している。下部64mは、導体板20の第2主面24と直交する方向に沿って見た場合に閉ループエッジ30iの外側から開口部40の内側まで延びている。
【0054】
本変形例によるコイル80mは、磁性体60mの下部64mに巻き付けられている。即ち、下部64mはコイル80mの磁心として用いられており、コイル80mはバーアンテナを構成している。
【0055】
かかる変形例の場合も、導体板20iと直交する方向のみならず、導体板20iと水平な方向においても通信距離を得ることができる。
【0056】
上述した第14変形例及び第15変形例において、磁性体60l,60mを第1乃至第3変形例のように変形しても良い。また、導体板20iを実施の形態による凹部32を有する導体板20や第10変形例による導体板20jのように変形しても良い。
【実施例】
【0057】
上述した実施の形態によるアンテナ装置10の効果を検証すべく、実施例として、次のようなものを作製した。導体板20としては、80mm×50mmのアルミ板を用い、10mm×10mmの開口部40を設けると共に外縁26には15mm×7mmの凹部32を形成した。コイル80は、20mm×5mmのサイズとし、第2主面24の下方に凹部32と部分的に重複するように配置した。磁性体60は、厚み0.1mmの軟磁性シートを用いて
図1乃至
図4に示された形状を有するように構成した。
【0058】
比較例として、開口部は有さず凹部のみを有する導体板20′を用意した。コイル80は実施例と同サイズとし、当該コイル80の配置は、実施例と同様とした。即ち、コイル80は、導体板20′の第2主面の下方に凹部と部分的に重複するように配置した。磁性体については、サイズを20mm×5mmとしてコイル80と重複するように配置した。
【0059】
実施例によるアンテナ装置10と比較例によるアンテナ装置10′との夫々を直径70mmのサイズを有する送信コイルと対向させて特性について計測した。結果として、磁場強度の分布を
図25に示し、アンテナ間距離と結合係数との関係について
図26に示す。
図25から理解されるように、実施例によるアンテナ装置10の方が、比較例によるアンテナ装置10′と比較して磁場分布が広がっていることが理解される。即ち、本発明によれば、通信距離の拡大を図ることができる。また、
図26から明らかなように、実施例によるアンテナ装置10の方が、比較例によるアンテナ装置10′と比較してアンテナの結合係数が上昇している。
【符号の説明】
【0060】
10,10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h,10l,10m アンテナ装置
20,20i,20j,20′ 導体板
22 第1主面
24 第2主面
26,26i,26j 外縁
30,30i,30j 閉ループエッジ
32 凹部
34 付加的な開口部
36 スリット
40 開口部
50,50k 付加的な導体板
52 ギャップ
54 窓
60,60a,60b,60c,60d,60l,60m 磁性体
62,62l,62m 上部
64,64b,64c,64d,64l,64m 下部
66,66l,66m 貫通部
68,68l,68m 連結部
70,70c 第1柱部
72,72c 第2柱部
74 第1張出部
76 第2張出部
78 付加的な磁性体
80,80l,80m コイル
90,90g,90h シールド板
92 スリット
94 ギャップ
100 送信コイル