【0016】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)端面リップのへたりによる反発力(接触力)低下を抑制するため、端面リップの背面にバックアップリップを設定する。このバックアップリップが端面リップを背面から支持することにより、長期に渡り安定した反発力(接触力)を発生することができる。本発明技術により、端面リップのへたり(劣化)による反発力の低下を長期に渡り抑制できる。これにより、油漏れの改善、および車両寿命の向上が図れる。
(2)端面リップのへたりによる反発力(接触力)低下を抑制するため、端面リップの背面にバックアップシールを設定し、バックアップシールと端面リップの接触力をスプリングの荷重により制御する。このバックアップシールが端面リップを背面から支持することにより、長期に渡り安定した反発力(接触力)を発生することができる。本発明技術により、端面リップのへたり(劣化)による反発力の低下を長期に渡り抑制できる。これにより、油漏れの改善、および車両寿命の向上が図れる。
【実施例】
【0017】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0018】
第1実施例・・・
図1(A)は、本発明の第1実施例に係る密封装置の要部断面を示している。当該実施例に係る密封装置は例えば、自動車関連の分野においてエンジンシールとして用いられるものであって、機内Aの油が機外Bへ漏洩するのを抑制するとともに機外Bの外部ダストが機内Aへ侵入するのを抑制する。
【0019】
当該実施例に係る密封装置は、相対回転する二部材のうちの一方の部材(例えば軸、図示せず)に装着されるスリンガー11と、他方の部材(例えば軸ハウジング、図示せず)に装着されるリップ部材21とを有し、これらの組み合わせによって構成されている。
【0020】
スリンガー11は、金属材よりなり、筒状部12の軸方向一方(機内A側)の端部に径方向外方へ向けてフランジ部(外向きフランジ部)13を一体成形したものであって、筒状部12の内周面をもって一方の部材の外周面に嵌合される。筒状部12およびフランジ部13はそれぞれ、図示するような段差部14,15を備えるものであっても良い。
【0021】
リップ部材21は、取付環22と、この取付環に被着されたゴム状弾性体31とを有している。取付環22は、金属材よりなり、筒状部23の軸方向他方(機外B側)の端部に径方向内方へ向けてフランジ部(内向きフランジ部)24を一体成形したものであって、筒状部23の外周面をもって他方の部材の内周面に嵌合される。筒状部23は、図示するような段差部25を備えるものであっても良く、フランジ部24は、図示するようなテーパー面26を備えるものであっても良い。
【0022】
ゴム状弾性体31は、取付環に22被着された被着ゴム部32と、この被着ゴム部32に支持されてスリンガー11のフランジ部13の軸方向端面に摺動自在に密接する端面リップ(サイドリップ)33と、同じく被着ゴム部32に支持されて端面リップ33の根元部内周側に設けられたサブリップ34とを一体に有し、更に被着ゴム部32の軸方向他方の端面に装着用の段差部35が設けられて、この段差部35に、スリンガー11の筒状部12の外周面に摺動自在に密接する合成樹脂製のラジアルリップ36が組み付けられている。端面リップ33は主に機内Aの油をシールするものであって、この機能を発揮するため、リップ端を機内A側であって径方向外方へ向けている。サブリップ34はスリンガー11に対し非接触とされている。ラジアルリップ36は主に機外Bの外部ダストをシールするものであって、この機能を発揮するため、スリンガー11との組み合わせ状態においてそのリップ端を機外B側であって軸方向他方へ向けている。ラジアルリップ36は合成樹脂製の単独リップでなく、ゴム状弾性体31によって成形された、端面リップ33等と一体のものであっても良い。
【0023】
また、当該実施例に係る密封装置は、更なる特徴として、以下の構成を有している。
【0024】
すなわち
図1(A)に示すように、端面リップ33のへたりによる反発力の低下を抑制するためのバックアップリップ37が端面リップ33の背面(軸方向他方の面)33aに接触するように設けられており、当該実施例ではこのバックアップリップ37が端面リップ33の根元部の外周側に位置してゴム状弾性体31によって一体に成形されている。上記したように端面リップ33はそのリップ端を径方向斜め外方へ向けて設けられているが、バックアップリップ37は反対にそのリップ端を径方向斜め内方へ向けて設けられている。
【0025】
また、このバックアップリップ37は
図1(B)に示すように、スリンガー11を組み付ける以前の状態において端面リップ33に対し非接触であるところ、スリンガー11が組み付けられると
図1(A)に示したように、端面リップ33がスリンガー11のフランジ部13に押圧されて軸方向他方へ向けて弾性変形する結果として、端面リップ33がバックアップリップ37に接触する。したがってこの過程でバックアップリップ37には、端面リップ33をスリンガー11のフランジ部13に向けて押し付ける軸方向一方へ向けての弾性復元力が備えられる。
【0026】
上記構成の密封装置においては、端面リップ33のへたりによる反発力の低下を抑制するためのバックアップリップ37が端面リップ33の背面33aに接触するように設けられているために、このバックアップリップ37が端面リップ33を背面33a側から押圧・支持することによって、長期間に亙って安定した反発力を維持することが可能とされる。したがって端面リップ33のシール性が長期間に亙って維持されるため、端面リップ33による油漏れ抑制効果を長期間に亙って維持することができる。
【0027】
尚、上記バックアップリップ37に係る特徴的構成は、以下のようなものであっても良い。
【0028】
第2実施例・・・
上記第1実施例では、バックアップリップ37はそのリップ端を径方向斜め内方へ向けて設けられているが、第2実施例として示す
図2(A)(B)のように、バックアップリップ37はそのリップ端を径方向斜め外方へ向けて設けられても良い。
【0029】
第3実施例・・・
上記第1実施例では、バックアップリップ37はゴム状弾性体31によって一体に成形されているが、第3実施例として示す
図3(A)(B)のように、バックアップリップ37は、リップ部材21に組み付けた金属製取付環38によって保持されていても良い。金属製取付環38は、リップ部材21における取付環22の筒状部23の内周側にフランジ部24に突き当てるかたちにて嵌合されている。金属製取付環38にはゴム状弾性体39が被着され、このゴム状弾性体39によってバックアップリップ37が成形されている。バックアップリップ37はそのリップ端を径方向斜め内方へ向けて設けられている。リップ部材21の取付環22に被着されたゴム状弾性体31と金属製取付環38に被着されたゴム状弾性体39とは、同種のゴム材料であっても良いが、異種のゴム材料であっても良い。
【0030】
第4実施例・・・
上記第3実施例では、金属製取付環38は、リップ部材21における取付環22の筒状部23の内周側にフランジ部24に突き当てるかたちにて嵌合されているが、これに代えて、金属製取付環38をリップ部材21における取付環22の筒状部23に対し軸方向フリー(変位可能)にするとともにスプリング40によって軸方向一方へ向けて弾性付勢するようにしても良い。スプリング40としては組み付けが容易なコイル状のスプリングが用いられている。