(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964170
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】エタノール製剤
(51)【国際特許分類】
A01N 31/02 20060101AFI20160721BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20160721BHJP
C11D 1/74 20060101ALI20160721BHJP
C11D 1/825 20060101ALI20160721BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20160721BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20160721BHJP
A61K 31/77 20060101ALI20160721BHJP
A61K 31/22 20060101ALI20160721BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20160721BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20160721BHJP
A23L 3/349 20060101ALI20160721BHJP
A23L 3/3517 20060101ALI20160721BHJP
A01N 43/08 20060101ALI20160721BHJP
A01N 37/12 20060101ALI20160721BHJP
A01N 25/30 20060101ALI20160721BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20160721BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
A01N31/02
C11D3/20
C11D1/74
C11D1/825
C11D17/08
A61K31/045
A61K31/77
A61K31/22
A61P31/04
A61K9/08
A23L3/349 501
A23L3/3517
A01N43/08 G
A01N37/12
A01N25/30
A01P3/00
A01N25/02
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-172745(P2012-172745)
(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公開番号】特開2014-31334(P2014-31334A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】原田 真里
【審査官】
前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/035751(WO,A1)
【文献】
特開2010−248452(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/084211(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/093476(WO,A1)
【文献】
特開2005−104949(JP,A)
【文献】
特開2004−024064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 31/00
A01N 25/00
A01N 37/00
A01N 43/00
A01P 3/00
A23L 3/00
A61K 9/00
A61K 31/00
C11D 1/00
C11D 3/00
C11D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エタノールを10質量%以上、80質量%以下、(B)ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを0.01質量%以上、10質量%以下、及び(C)炭素数8以上、10以下の脂肪酸鎖長を有する脂肪酸モノグリセライドを0.01質量%以上、1質量%以下含有し、(B)の含有量と(C)の含有量の質量比(B)/(C)が0.4以上、100以下である、エタノール製剤。
【請求項2】
(C)がカプリン酸モノグリセライドである、請求項1記載のエタノール製剤。
【請求項3】
(B)が、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンである、請求項1又は2記載のエタノール製剤。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載のエタノール製剤を、食品加工設備の硬質表面、食品調理設備の硬質表面、食品加工器具の硬質表面、食品調理器具の硬質表面、及び食器の硬質表面から選ばれる1種以上の硬質表面に適用し、(B)を残留させる、菌の残留抑制方法。
【請求項5】
前記エタノール製剤を、前記硬質表面に適用し、(B)を残留させ、前記設備、器具又は食器を使用した後、水で濯ぐ、請求項4記載の菌の残留抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエタノール製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エタノールが微生物に対して高い殺菌性と増殖抑制性を有することは公知であり、またその安全性、簡便性等の観点から、厨房、食品工場、食品等の除菌製品としてエタノール製剤が広く用いられてきた。しかし、エタノールは揮発性が高く、除菌作用が持続し難く、微生物が十分に死滅していない場合は増殖を抑制することが困難となる。
【0003】
特許文献1には、低級アルコールと、有機酸もしくは無機酸又はこれらアルカリ金属塩と、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも一種の非イオン界面活性剤とを含有する殺菌消毒剤組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、エッセンシャルオイル成分と、10%から約50%の量のエタノール、乳化剤、酸化防止剤、又はカプセル化剤から成る群から選択された少なくとも1つの追加の安定剤と、を含む殺菌水性配合剤が開示されている。
【0005】
特許文献3には炭素数4〜30の脂肪族アルコール類とエトキシル化ソルビタンエステル類を含有する抗菌エマルジョンを使用する水性媒質中の生物付着抑制方法が開示されている。
【0006】
特許文献4にはエタノールとラウリン酸モノグリセリドを含有する殺菌剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−173641号公報
【特許文献2】特表2005−504102号公報
【特許文献3】特表2002−524257号公報
【特許文献4】特開2003−183105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜4の技術は、殺菌性能が不十分で菌の残留防止には十分な効果を示さない。その為、殺菌剤の効果を相乗的に高める添加剤を付与し、実際の使用場面においても高い除菌効果を示すことが出来るエタノール製剤が求められていた。また、食品等への安全性も考え、エタノール製剤に用いる添加剤は、食品添加物として認められたものであることが望ましい。
【0009】
本発明の課題は、硬質表面における菌の残留を抑制することのできるエタノール製剤を提供することである。また、本発明の課題は、エタノール製剤による、硬質表面における菌の残留を抑制する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(A)エタノール〔以下、(A)成分という〕を10質量%以上、80質量%以下、(B)脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン〔以下、(B)成分という〕を0.01質量%以上、10質量%以下、及び(C)炭素数8以上、10以下の脂肪酸鎖長を有する脂肪酸モノグリセライド〔以下、(C)成分という〕を0.01質量%以上、1質量%以下含有し、(B)の含有量と(C)の含有量の質量比(B)/(C)が0.4以上、100以下である、エタノール製剤に関する。
【0011】
また、本発明は、上記本発明のエタノール製剤を、食品加工設備の硬質表面、食品調理設備の硬質表面、食品加工器具の硬質表面、食品調理器具の硬質表面、及び食器の硬質表面から選ばれる1種以上の硬質表面に適用し、(B)を残留させる、菌の残留抑制方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、予め硬質表面に適用することにより、硬質表面における菌の残留を抑制することのできるエタノール製剤が提供される。また、本発明によると、エタノール製剤による、硬質表面における菌の残留を抑制する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のエタノール製剤は、(A)成分のエタノールを10質量%以上、80質量%以下含有する。エタノールは微生物に対して高い殺菌性と増殖抑制性を有し、食品分野では幅広く使用されてきた。エタノールの殺菌力は70%前後の濃度で最大となる。
【0014】
本発明のエタノール製剤は、(B)成分として、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンを含有する。脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンは、エチレンオキサイドの平均付加モル数が16以上、更に18以上、また、24以下、更に22以下であることが好ましく、20であることがより好ましい。また、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンは、炭素数12以上、更に14以上、また、炭素数18以下、更に16以下の脂肪酸とソルビタンとのエステルが好ましい。炭素数12〜18の1種又は2種以上の脂肪酸鎖長を有する脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンが好ましい。
【0015】
ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加させて得られる脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンは、ソルビトール又はその無水物と脂肪酸との部分エステルの混合物であるソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイド(以下、EOと表記する)を付加させたもので、非イオン界面活性剤として有用であり、化粧品、洗浄剤等に広く使用されている。また、2003年には新規指定の食品添加物として、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(EO平均付加モル数20)ソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(EO平均付加モル数20)ソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレン(EO平均付加モル数20)ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(EO平均付加モル数20)ソルビタンが指定されている。本発明でもこれらを(B)成分として使用することができる。
【0016】
(B)成分としては、硬質表面における菌の残留を抑制する観点から、トリステアリン酸ポリオキシエチレン(EO平均付加モル数が好ましくは16以上、より好ましくは18以上、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20)ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(EO平均付加モル数が好ましくは16以上、より好ましくは18以上、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20)ソルビタン、及びモノステアリン酸ポリオキシエチレン(EO平均付加モル数が好ましくは16以上、より好ましくは18以上、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20)ソルビタンから選ばれる1種以上が好ましく、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(EO平均付加モル数が好ましくは16以上、より好ましくは18以上、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20)ソルビタン、及びモノステアリン酸ポリオキシエチレン(EO平均付加モル数が好ましくは16以上、より好ましくは18以上、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20)ソルビタンから選ばれる1種以上がより好ましく、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(EO平均付加モル数が好ましくは16以上、より好ましくは18以上、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20)ソルビタンが更に好ましい。
【0017】
本発明のエタノール製剤は、(C)成分として、炭素数8以上、10以下の脂肪酸鎖長を有する脂肪酸モノグリセライドを含有する。
【0018】
脂肪酸モノグリセライドは、グリセリンと脂肪酸からなるモノエステルで、工業用及び食品用乳化剤として幅広く用いられている。本発明では、グリセリンと炭素数8以上、10以下の脂肪酸からなるモノエステルを用いる。
【0019】
(C)成分の脂肪酸の炭素数(脂肪酸鎖長)は、硬質表面における菌の残留を抑制する観点から、8以上、10以下であり、使用時の臭いの面から10が好ましい。脂肪酸は直鎖であっても、分岐鎖であってもよいが、好ましくは直鎖であり、飽和であっても不飽和であってもよい。
【0020】
(C)成分は、脂肪酸−1−モノグリセライドであっても、脂肪酸−2−モノグリセライドであってもよい。(C)成分は、硬質表面における菌の残留を抑制する観点から、脂肪酸−1−モノグリセライドであることが好ましい。
【0021】
(C)成分としては、具体的には、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、デカン酸、及びイソデカン酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸とグリセリンとのモノエステルが好ましい。本発明では、(C)の脂肪酸モノグリセライドとして、硬質表面における菌の残留を抑制する観点から、カプリン酸モノグリセライドが好ましい。カプリン酸モノグリセライドは、グリセリンとカプリン酸(デカン酸)とからなるモノエステルである。
【0022】
本発明のエタノール製剤は(A)成分、(B)成分、(C)成分の他に、本発明の効果を妨げない範囲で、従来アルコール製剤に用いられてきた有機酸、有機酸塩、植物抽出物等を含有してもよい。また、本発明のエタノール製剤は水を含有することが好ましい。水はエタノール製剤の残部であってよい。
【0023】
そのような有機酸としては、フマル酸、乳酸、酢酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、こはく酸、フィチン酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられる。中でも乳酸、クエン酸、リンゴ酸が、金属非腐食性の観点から好ましく用いられる。
【0024】
有機酸塩としては前記有機酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、又はカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、その中でもナトリウム塩が好ましく用いられる。
【0025】
植物抽出物としては、緑茶抽出物、甘草抽出物、ホップ抽出物、シソ抽出物、ショウガ抽出物、キラヤ抽出物、ソウキョウ抽出物、ムクロジ抽出物、サラシナショウマ抽出物などが挙げられる。硬質表面における菌の残留を抑制する観点から、緑茶抽出物、キラヤ抽出物、ソウキョウ抽出物、ムクロジ抽出物、ショウマ抽出物が好ましく、キラヤ抽出物がより好ましい。
【0026】
本発明のエタノール製剤は、前記有機酸、前記有機酸塩、及び前記植物抽出物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有することができる。
【0027】
本発明のエタノール製剤は、(A)成分のエタノールを10質量%以上、80質量%以下含有する。殺菌性の観点から、(A)成分の含有量は30質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。また、同様の理由により、本発明のエタノール製剤は、(A)成分のエタノールを、10〜80質量%、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは60〜80質量%含有する。
【0028】
本発明のエタノール製剤は、(B)成分の脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンを0.01質量%以上、10質量%以下含有する。硬質表面における菌の残留を抑制する観点から、(B)成分の含有量は0.02質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、表面塗布時の質感の観点から、(B)成分の含有量は5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以下であることがより更に好ましい。また、同様の理由により、本発明のエタノール製剤は、(B)成分を、0.01〜10質量%、好ましくは0.02〜7質量%、より好ましくは0.02〜5質量%、更に好ましくは0.05〜5質量%、より更に好ましくは0.05〜5質量%含有する。
【0029】
本発明のエタノール製剤は(C)成分の炭素数8以上、10以下の脂肪酸鎖長を有する脂肪酸モノグリセライドを0.01質量%以上、1質量%以下含有する。硬質表面における菌の残留を抑制する観点から、(C)成分の含有量は0.03質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、表面塗布時の質感の観点から、(C)成分の含有量は0.7質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。また、同様の理由により、本発明のエタノール製剤は、(C)成分を、0.01〜1質量%、好ましくは0.03〜1質量%、より好ましくは0.05〜1質量%含有する。
【0030】
本発明のエタノール製剤において、(B)成分と(C)成分の質量比(B)/(C)は、0.4以上であり、100以下である。硬質表面における菌の残留を抑制する観点から、質量比(B)/(C)は0.4以上であり、0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、1以上であることがより更に好ましい。また、表面塗布時の質感の観点から、質量比(B)/(C)は、100以下であり、10以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、2以下であることが更に好ましい。また、同様の理由により、質量比(B)/(C)は、0.4〜100であり、好ましくは0.6〜20、より好ましくは0.8〜10、更に好ましくは1〜5である。
【0031】
本発明のエタノール製剤中の有機酸及び有機酸塩から選ばれる化合物の含有量は、0.4質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましい。
【0032】
また、本発明のエタノール製剤中の無機酸及び無機酸塩から選ばれる化合物の含有量は、0.01質量%以下が好ましく、0.005質量%以下がより好ましく、0質量%であることが更に好ましい。本発明のエタノール製剤は無機酸及び無機酸塩から選ばれる化合物を含有しないことが好ましい。
【0033】
本発明のエタノール製剤は、菌が付着する可能性のある硬質表面、中でも食品加工設備、食品調理設備、調理器具の硬質表面、食器の硬質表面などのいわゆる厨房まわりの硬質表面に予め適用することで、硬質表面における菌の残留を抑制することができる。また、本発明のエタノール製剤を前記設備や器具の硬質表面に適用してから、前記設備や器具を使用した後、水で濯ぐことで、菌の残留を一層効率よく抑制することができる。ここで硬質表面に残留する菌数は実施例記載の方法で測定することが出来る。本発明のエタノール製剤は、表面に残留する菌数を10
4 cfu/cm
2以上低減することが出来るものが好ましい。つまり、処理を行わない場合の菌の残留が10
7 cfu/cm
2であった場合、菌の残留を10
3 cfu/cm
2以下、好ましくは10
2 cfu/cm
2以下にすることが出来るものが好ましい。
【0034】
本発明のエタノール製剤の好適な使用方法として、本発明のエタノール製剤を、食品加工設備の硬質表面、食品調理設備の硬質表面、食品加工器具の硬質表面、食品調理器具の硬質表面、及び食器の硬質表面から選ばれる1種以上の硬質表面(以下、厨房まわりの硬質表面という)に適用し、該硬質表面に(B)成分、好ましくは(B)成分と(C)成分とを残留させる、菌の残留抑制方法が挙げられる。詳細には、本発明のエタノール製剤を、好ましくはスプレー、刷毛塗り、流下などの方法で、前記厨房まわりの硬質表面に適用し、該硬質表面に少なくとも(B)成分が、好ましくは(B)成分と(C)成分が残留した状態で前記設備又は器具又は食器を使用する、菌の残留抑制方法が挙げられる。
【0035】
厨房まわりの設備や器具などは、使用中に菌が付着する。使用後、洗浄、水で濯ぐことにより、ある程度の菌は除去できるが、それにより除去しきれない菌も残留する。本発明は、この残留する菌の量を低減するものであり、殺菌効果だけでは測れない異質な効果を奏するものである。すなわち、(A)成分のエタノールは、硬質表面に適用した直後の殺菌には寄与するが、速やかに揮発して持続的な殺菌力は発現しない。一方、(B)成分、(C)成分は、殺菌力は比較的弱いが、硬質表面に留まり、食品加工設備や食品調理設備の使用中に付着した菌が硬質表面に残留することを抑制するものと考えられる。その際、本発明では、(B)成分と(C)成分の質量比が所定範囲にあることで、より優れた残留抑制効果が得られる。
【0036】
本発明のエタノール製剤の好適な使用方法では、菌の付着抑制効率の観点から、(B)成分、又は(B)成分及び(C)成分を硬質表面に残留させる時間(期間)は10分以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、6時間以上が更に好ましく、1日以上がより更に好ましく、作業性の観点から、1ヶ月以下が好ましく、2週間以下がより好ましく、1週間以下が更に好ましく、3日以下がより更に好ましい。
【0037】
本発明のエタノール製剤の好適な使用方法では、前記残留期間に、定期的又は不定期的に洗浄工程を行い、再度、本発明のエタノール製剤を補って(B)成分、又は(B)成分及び(C)成分を残留させることが好ましい。
【0038】
定期的に洗浄を行う場合、3日に1回、好ましくは1日に1回、より好ましくは12時間に1回洗浄を行い、洗浄後30分以内に、好ましくは洗浄後10分以内に、より好ましくは洗浄後5分以内に、更に好ましくは1分以内に、再度、本発明のエタノール製剤を補って(B)成分、又は(B)成分及び(C)成分を硬質表面に残留させるのが好ましい。また、不定期的に洗浄を行う場合も、洗浄後30分以内に、好ましくは洗浄後10分以内に、より好ましくは洗浄後5分以内に、更に好ましくは1分以内に、再度、本発明のエタノール製剤を補って(B)成分、又は(B)成分及び(C)成分を硬質表面に残留させるのが好ましい。
【0039】
本発明のエタノール製剤の好適な使用方法では、菌の付着抑制効率の観点から、(B)成分、又は(B)成分及び(C)成分が、硬質表面に10分以上、更に1時間以上、更に6時間以上、1日以上、本発明のエタノール製剤を硬質表面に適用することが好ましく、そして、作業性の観点から、1ヶ月以下、更に2週間以下、更に1週間以下、更に3日以下、本発明のエタノール製剤を硬質表面に適用することが好ましい。
【0040】
尚、食品加工設備としては、コンベアベルト、練り機、蒸し器、冷却機等、食品調理設備としては、調理台、ミキサー等、食品加工器具としては、アウミトレイ、プラスチックバット、スライサー等、食品調理器具としては、まな板、ざる、包丁、トレイ等、食器としては、皿、コップ、はし、ナイフ、フォーク、スプーン等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
表1に示す濃度で調製したエタノール製剤を100μL、ポリエチレン試験板(3cm×8cm(厚さ1mm)、日本テストパネル株式会社製)に塗布し、乾燥させて試験板Aを作製した。試験板Aに菌数10
8cfu/mLの菌液(使用菌種:Acinetobacter baumannii)を200μL塗布し、塗布した菌液が湿潤状態を維持する条件で、30℃で1時間静置した。その後50mLの滅菌水で菌液を洗い流し、試験板上に残留した菌をLP希釈液「ダイゴ」(日本製薬株式会社製)10mLで流し取って回収し、培養法でコロニーカウントを行い、試験板の残留菌数を求め、表1に示した(常用対数表記)。なお、実験は25℃にて行った。
【0042】
【表1】
【0043】
表1の化合物は以下のものである。また、表1の濃度は有効分の濃度である。
・エタノール:試薬(発酵アルコール95%、合同酒精株式会社製)
・モノステアリン酸ポリオキシエチレン(EO付加モル数20)ソルビタン:レオドールTW−S120V、花王株式会社製
・トリステアリン酸ポリオキシエチレン(EO付加モル数20)ソルビタン:レオドールTW−S320V、花王株式会社製
・カプリン酸モノグリセライド:サンソフト760H、太陽化学株式会社製
【0044】
(処方例1)
・エタノール 60質量%
・モノステアリン酸ポリオキシエチレン(EO付加モル数20)ソルビタン 0.1質量%
・カプリル酸モノグリセライド 0.1質量%
・水 39.8質量%