特許第5964172号(P5964172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964172
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】硬質表面への菌の付着抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20160721BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   A61L2/18
   C08J7/04 ZCES
   C08J7/04CET
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-176969(P2012-176969)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-33827(P2014-33827A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】原田 真里
(72)【発明者】
【氏名】亀山 明代
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 浩二郎
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−527168(JP,A)
【文献】 特開平4−185795(JP,A)
【文献】 特開平3−152169(JP,A)
【文献】 特表2000−504768(JP,A)
【文献】 特開2005−66496(JP,A)
【文献】 特開平11−124594(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第2956008(FR,A1)
【文献】 国際公開第2012/077119(WO,A1)
【文献】 特開2012−51834(JP,A)
【文献】 特開平7−149608(JP,A)
【文献】 特開2001−39812(JP,A)
【文献】 米国特許第6310091(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/18
C08J 7/04
A01P 3/00
A01N 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キラヤ、ソウキョウ、ムクロジ、及びショウマから選ばれる1種又は2種以上の植物から抽出されたサポニンを含有する溶液、及び前記植物から抽出されたサポニンを含有する抽出物を含有する溶液から選ばれる溶液を硬質表面に適用した後、該硬質表面を乾燥させて8×10-7〜1.6×10-4g/cm2の割合でサポニン又はサポニンを含有する抽出物を残留させる、硬質表面への菌の付着抑制方法。
【請求項2】
サポニン又はサポニンを含有する抽出物の適用を、サポニンを含有する溶液、及びサポニンを含有する植物抽出物を含有する溶液から選ばれる溶液の塗布により行う、請求項1記載の硬質表面への菌の付着抑制方法。
【請求項3】
硬質表面の材質が、プラスチック、金属、陶磁器、及びガラスから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1又は2記載の硬質表面への菌の付着抑制方法。
【請求項4】
溶液中のサポニン又はサポニンを含有する植物抽出物の含有量が0.001〜0.2質量%である、請求項の何れか1項記載の硬質表面への菌の付着抑制方法。
【請求項5】
溶液が水溶液である、請求項の何れか1項記載の硬質表面への菌の付着抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬質表面への菌の付着抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工工場、厨房、病院、介護施設などは、食中毒や感染症などのリスクを低減するため、高い衛生状態を保つ必要がある。そのため、殺菌剤を用い、時間とコストをかけた洗浄が行われている。しかし、一度表面に付着した菌やスライム化した菌は、殺菌剤に対して耐性を有するため、殺菌洗浄が難しく菌が残存する場合もあり課題となっている。そこで、硬質表面への菌の付着、更にはスライム等の生成を抑制することで、菌残存の課題を低減し、更には洗浄の手間やコストも低減できるものと考えている。
【0003】
例えば、特許文献1には製紙工場の抄紙工程における硬質表面にカチオンポリマー及びカチオン界面活性剤を適用し、スライムを形成する微生物あるいは藻類を殺滅または抑制する方法が開示されている。また、特許文献2には、次亜塩素酸あるいは次亜塩素酸を発生させる化合物とカチオン重合体を、一般の工業用水系、及び排水系に適用し、鉄バクテリアの抑制方法が開示されている。
【0004】
一方、植物由来のサポニンは界面活性剤でありながら、好ましい抗微生物性を示す。この性質を利用して、サポニンを保存料や殺菌料として飲料、食物、また塗料中などへ含有させる試みがなされている。例えば、特許文献3には、ユッカ抽出物を用いて食品の保存性を向上させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−260392号公報
【特許文献2】特開2003−71464号公報
【特許文献3】特開平8−89224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
食品加工工場、厨房、病院、介護施設等においては衛生管理が重要であるが、従来の硬質表面に用いられる化合物には、用途の制限がより少なく、また、人や環境に優しい性質を有することが望まれる。
【0007】
特許文献1のようにカチオンポリマー及びカチオン界面活性剤を適用すると、抗微生物性が付与されるなどの利点が見られるが、適用範囲に制限があった。つまり、剤塗布後に水洗を行わない表面、調理器具や食器、コンテナ、食品への適用は困難と言える。
【0008】
また、特許文献2のように次亜塩素酸による殺菌を行うと、殺菌効果は高いが、次亜塩素酸特有のニオイの発生や、剤作用後に水洗を行う必要があるなど、作業環境と適用範囲の点で課題がある。
【0009】
特許文献3は、食品の保存、殺菌を目的として、所定の抗菌性物質とステロイドサポニンとを食品に添加もしくは付着させるものであり、硬質表面への菌の付着抑制についての課題は記載も示唆もない。
【0010】
本発明の課題は、人に優しい有機化合物による硬質表面への菌の付着抑制方法を提供することである。尚、本発明において「人に優しい化合物」とは、人体に悪影響を及ばさない化合物であり、可食性天然物、食品添加物などとして知られている化合物が包含される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、キラヤ、ソウキョウ、ムクロジ、及びショウマから選ばれる1種又は2種以上の植物から抽出されたサポニン又は前記植物から抽出されたサポニンを含有する抽出物を硬質表面に適用し、8×10-7〜1.6×10-4g/cm2の割合でサポニン又はサポニンを含有する抽出物を残留させる、硬質表面への菌の付着抑制方法に関する。
【0012】
また、本発明は、上記本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法に用いる、キラヤ、ソウキョウ、ムクロジ、及びショウマから選ばれる1種又は2種以上の植物から抽出されたサポニン又は前記植物から抽出されたサポニンを含有する抽出物を含有する硬質表面への菌の付着抑制剤に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、人に優しいサポニンによる硬質表面への菌の付着抑制方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法は、所定量のキラヤ、ソウキョウ、ムクロジ、及びショウマから選ばれる1種又は2種以上の植物から抽出されたサポニン又は前記植物から抽出されたサポニンを含有する植物抽出物を硬質表面に適用し残留させる。
【0015】
サポニンは、主に植物から抽出される配糖体の一種であり、界面活性能を示す。これらは糖鎖単位と非炭水化物アグリコンを含み、アグリコンの種類からステロイドサポニンとトリテルペンサポニンに分類される。現在までに多数のステロイドサポニン、トリテルペンサポニンが同定されている。
【0016】
本発明の硬質表面の菌の付着抑制方法に用いるサポニン又はサポニンを含有する植物抽出物は、硬質表面の菌の付着抑制の観点から、キラヤ、ソウキョウ、ムクロジ、及びショウマから選ばれる1種又は2種以上の植物から抽出されたサポニン、又は前記植物から抽出されたサポニンを含有する植物抽出物である。
【0017】
植物からサポニンを含有する植物抽出物を調製する方法としては、一例として次の調製方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、「天然有機化合物実験法-生理活性物質の抽出と分離」(講談社サイエンティフィク、1977年発行)に記載の方法も採用できる。
【0018】
[サポニンを含有する植物抽出物の調製方法の例]
各植物試料(植物の溶媒抽出物)を減圧下、溶媒を留去して固形物を得る。これに水:水飽和n−ブタノール=1:1(25℃における体積比)を加え、分液ロートで振り混ぜた後、分層させる。上層をとり、減圧下、溶媒を留去して粗サポニン画分を得る。これにアセトンを加え、25℃にて30分間撹拌した後これをろ過し、ろ紙に残った固形物を回収して乾燥させ、サポニンを含有する植物抽出物を得る。
【0019】
本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法において、硬質表面の単位面積当たりのサポニン又はサポニンを含有する抽出物の残留量は、菌の付着抑制の観点から、8×10-7〜1.6×10-4g/cm2であり、2×10-6〜1.2×10-4g/cm2が好ましく、3×10-6〜8×10-5g/cm2が更に好ましい。また、本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法において、硬質表面の単位面積当たりのサポニン又はサポニンを含有する抽出物の残留量は、菌の付着抑制の観点から、8×10-7g/cm2以上であり、2×10-6g/cm2以上、更に3×10-6以上が好ましく、そして、1.6×10-4g/cm2以下であり、1.2×10-4g/cm2以下、更に8×10-5g/cm2以下が好ましい。
【0020】
本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法では、硬質表面に適用したサポニン又はサポニンを含有する抽出物の全量のうち、50〜100質量%、更に60〜100質量%、更に70〜100質量%、更に80〜100質量%、更に90〜100質量%が残留することが好ましい。
【0021】
本発明において、硬質表面の材質は特に限定はなく、ポリエチレン、ポリプロピレンやポリスチレン等のプラスチック、金属、陶磁器、ガラス等が挙げられる。硬質表面の材質として、プラスチック、金属、陶磁器、及びガラスから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。例えば、用途として、食器、調理器具、床、タイル、鏡、窓ガラス、トイレタリー用品等種々の用途に適用できる。また、食品に適用してもよい。
【0022】
また、本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法の対象となる菌としては、対象エリアに存在、また、食材などから間接的に対象エリアに付着する菌に対して有効であり、当該微生物は特に限定されないが、グラム陽性菌又はグラム陰性菌に対しても有効で、これら菌の状態が芽細胞又は栄養細胞であっても有効である。
【0023】
例えば、グラム陰性菌としては、S. dysenteria(赤痢菌A亜群),S. flexneri(赤痢菌B亜群),S. boydii(赤痢菌C亜群),S. sonnei(赤痢菌D亜群)等の赤痢属(Shigella)細菌、ブルセラ属(Brucella)細菌、E. coli.O157等の大腸菌群(Escherichia coli)、S. typhi(チフス菌),S. paratyphi A(パラチフスA菌),S. paratyphi B(パラチフスB菌),S. Typhimurium (ネズミチフス菌)S. Enteritidis(ゲルトネル菌)等のサルモネラ属(Salmonella)細菌、V. cholerae(コレラ菌),V. parahaemolyticus(腸炎ビブリオ)等のビブリオ属(Vibrio)細菌:緑膿菌(P. aeruginosa)等のシュードモナス属(Pseudomonas)細菌、A. hidrophila(エロモナス・ヒドロフィア),A.sobria(エロモナス・ソブリア),A.caviae(エロモナス・キャビエ),A.salmonicida(エロモナス・サルモニサイダ)等のエロモナス(Aeromonas)属細菌、C. jejuni ,C. coli等のカンピロバクター属(Campylobacter)細菌、A.baumannii(アシネトバクター・バウマニー)等のアシネトバクター属(Acinetobacter)細菌、S.marcescens(セラチア・マルセッセンス)等のセラチア属(Serratia)細菌、K.pneumoniae(クレブシエラ・ニューモニエ)等のクレブシエラ属(Klebsiella)細菌等が挙げられる。
【0024】
また、例えば、グラム陽性菌としては、B.subtilis(枯草菌),炭疽菌B.anthracis(炭疽菌),B.cereus(セレウス菌)等のバシラス(Bacillus)属細菌、L.monocytogenes(リステリア・モノサイトゲネス菌)L.ivanovii(リステリア・イバノヴィ菌),L.seeligeri(リステリア・シーリゲリー菌)等のリステリア(Listeria)属細菌、Al.acidoterrestris(旧B.acidoterrestris)等のアリシクロバチルス(Alicyclobacillus)属細菌、S.aureus(黄色ブドウ球菌),S.pyogenes等のブドウ球菌(Staphylococcus)属細菌、C.botulinum(ボツリヌス菌),C.perfringens(ウェルシュ菌),C.difficile ,C.sporogens等のクロストリジウム(Clostridium)属細菌、Leuconostoc mesenteroides等のリューコノストック(Leuconostoc)属細菌をはじめとする乳酸球菌、Lactobacillus plantarum等のラクトバチルス(Lactobacillu)属細菌をはじめとする乳酸桿菌、Desulfotomaculum nigrificans等のデスルフォマクルム(Desulfotomaculum)属細菌、Enterococcus faecalis等のエンテロコッカス(Enterococcus)細菌、Y.enterocolitica(エルシニア・エンテロコリチカ)等のエルシニア(Yersinia)属細菌等が挙げられる。
【0025】
本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法は、上記の菌のうち、アシネトバクター属(Acinetobacter)細菌、シュードモナス属(Pseudomonas)細菌から選ばれる菌、更にアシネトバクター属(Acinetobacter)細菌から選ばれる菌に対してより有効である。
【0026】
本発明において、硬質表面への菌の付着抑制とは、サポニン又はサポニンを含有する抽出物の残留により硬質表面に付着する菌数が低減されることである。ここで、硬質表面に付着する菌数は実施例記載の方法で測定することができる。
【0027】
本発明の硬質表面における菌の付着抑制方法によると、実施例記載の方法による菌付着抑制率を90%以上、更に99%以上とすることができる。
【0028】
本発明の硬質表面における菌の付着抑制方法によると、菌の付着数を90%以上、好ましくは99%以上低減することができる。
【0029】
本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法において、サポニン又はサポニンを含有する抽出物を硬質表面に適用する方法としては、サポニン又はサポニンを含有する抽出物を硬質表面に接触させる方法が好ましく、サポニン又はサポニンを含有する植物抽出物を含有する液体組成物、例えば溶液などを用いることが好ましい。サポニン又はサポニンを含有する植物抽出物を含有する液体組成物、例えば溶液を用いる場合、該組成物を硬質表面にスプレーする、該組成物を硬質表面に流下する、該組成物を硬質表面に刷毛塗りする、該組成物に硬質表面を浸漬する等の方法により、硬質表面に塗布することが好ましい。本発明では、サポニンを含有する溶液、及びサポニンを含有する植物抽出物を含有する溶液から選ばれる溶液を硬質表面に適用、例えば塗布することが好ましい。サポニン又はサポニンを含有する抽出物の硬質表面への適用は、常温(25℃)で行うことができる。
【0030】
本発明の硬質表面における菌の付着抑制方法において、簡便性の観点から、サポニン又はサポニンを含有する植物抽出物を含有する液体組成物、好ましくは溶液を硬質表面に塗布して、サポニン又はサポニンを含有する抽出物を硬質表面に残留させることが好ましい。また、硬質表面を有する物品を浸漬する方法も好ましい。簡便性の観点から、サポニン又はサポニンを含有する植物抽出物を含有する液体組成物、好ましくは溶液を塗布して、サポニン又はサポニンを含有する抽出物を硬質表面に残留させることがより好ましい。
【0031】
サポニン又はサポニンを含有する植物抽出物を含有する液体組成物は、水、エタノール等のアルコール等を含有することができ、溶液の溶媒としては、水、エタノールが挙げられ、水が好ましい。
【0032】
本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法に用いる、サポニン又はサポニンを含有する植物抽出物を含有する液体組成物(好ましくは溶液)中のサポニン又はサポニンを含有する抽出物の含有量は、硬質表面への菌の付着抑制の観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、そして、0.2質量%以下である。また、本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法に用いる、サポニン又はサポニンを含有する植物抽出物を含有する液体組成物(好ましくは溶液)中のサポニン又はサポニンを含有する植物抽出物の含有量は、好ましくは0.001〜0.2質量%、より好ましくは0.005〜0.2質量%、更に好ましくは0.01〜0.2質量%である。
【0033】
また、本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法に用いる、サポニン又はサポニンを含有する植物抽出物を含有する液体組成物は水溶液であることが好ましい。該水溶液中の水の含有量は、50質量%以上、更に60質量%以上、更に70質量%以上、更に90質量%以上、更に99質量%以上、更に99.5質量%以上が好ましく、そして、99.999質量%以下、更に99.99質量%以下、更に99.9質量%以下、更に99質量%以下が好ましい。また、50〜99.999質量%、更に60〜99.999質量%、更に70〜99.99質量%、更に90〜99.9質量%、95〜99質量%が好ましい。
【0034】
本発明では、サポニン又はサポニンを含有する植物抽出物を0.001質量%以上、更に0.005質量%以上、更に0.01質量%以上、そして、0.2質量%以下含有する液体組成物を用いることが好ましい。
【0035】
また、本発明では、サポニン又はサポニンを含有する植物抽出物を0.001〜0.2質量%、更に0.005〜0.2質量%、より更に0.01〜0.2質量%含有する液体組成物を用いることが好ましい。
【0036】
本発明では、水を50質量%以上、更に60質量%以上、更に70質量%以上、更に90質量%以上、更に99質量%以上、更に99.5質量%以上が好ましく、そして、99.999質量%以下、更に99.99質量%以下、更に99.9質量%以下、更に99質量%以下含有する液体組成物、更に水溶液を用いることが好ましい。
【0037】
また、本発明では、水を50〜99.999質量%、更に60〜99.999質量%、70〜99.99質量%、更に90〜99.9質量%、更に95〜99質量%含有する液体組成物、更に水溶液を用いることが好ましい。
【0038】
本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法では、サポニン又はサポニンを含有する抽出物を硬質表面に残留させる。残留させる方法としては、サポニン又はサポニンを含有する植物抽出物を含有する溶液、具体的にはサポニン又はサポニンを含有する植物抽出物と水とを前記範囲で含有する水溶液を硬質表面に適用した後、例えば5〜25℃で、5〜10分、より好ましくは10〜30分放置することにより乾燥させる方法が挙げられる。この方法は、簡単に硬質表面にサポニン又はサポニンを含有する抽出物の薄膜を形成させることができるため、本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法で行うのに好ましい。
【0039】
本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法では、菌の付着抑制効率の観点から、サポニン又はサポニンを含有する抽出物を硬質表面に残留させる時間(期間)は10分以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、6時間以上が更に好ましく、1日以上がより更に好ましく、作業性の観点から、1ヶ月以下が好ましく、2週間以下がより好ましく、1週間以下が更に好ましく、3日以下がより更に好ましい。
【0040】
本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法では、前記残留期間に、定期的又は不定期的に洗浄工程を行い、再度、サポニン又はサポニンを含有する抽出物を補って残留させることが好ましい。すなわち、本発明は、サポニン又はサポニンを含有する抽出物を硬質表面に適用し、8×10-7〜1.6×10-4g/cm2の割合でサポニン又はサポニンを含有する抽出物を残留させる工程、前記硬質表面を洗浄する工程を有する硬質表面への菌の付着抑制方法が好ましく、更に、サポニン又はサポニンを含有する抽出物を硬質表面に適用し、8×10-7〜1.6×10-4g/cm2の割合でサポニン又はサポニンを含有する抽出物を残留させる工程、前記硬質表面を洗浄する工程を有し、これらの工程を交互にそれぞれ複数回行う、硬質表面への菌の付着抑制方法が好ましい。定期的に洗浄を行う場合、3日に1回、好ましくは1日に1回、より好ましくは12時間に1回洗浄を行うことが好ましい。定期的に洗浄を行う場合も不定期的に洗浄を行う場合も、洗浄後30分以内に、好ましくは洗浄後10分以内に、より好ましくは洗浄後5分以内に、更に好ましくは1分以内に、再度所定量のサポニン又はサポニンを含有する抽出物を硬質表面に残留させるのが好ましい。
【0041】
本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法では、菌の付着抑制効率の観点から、サポニン又はサポニンを含有する抽出物が、硬質表面に10分以上、更に1時間以上、更に6時間以上、1日以上、前記所定範囲で残留する量で、サポニン又はサポニンを含有する抽出物を硬質表面に適用することが好ましく、そして、作業性の観点から、1ヶ月以下、更に2週間以下、更に1週間以下、更に3日以下、前記所定範囲で残留する量で、サポニン又はサポニンを含有する抽出物を硬質表面に適用することが好ましい。
【0042】
本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法に用いる、硬質表面への菌の付着抑制剤は、菌の付着抑制の観点から、好ましくは0.001〜0.2質量%、より好ましくは0.005〜0.2質量%、更に好ましくは0.01〜0.2質量%のサポニン又はサポニンを含有する植物抽出物を含有する。また、該付着抑制剤は、水、エタノール等の液体成分、好ましくは水を含有することができる。該付着抑制剤は、水を50〜99.999質量%、更に60〜99.999質量%、更に70〜99.99質量%、更に90〜99.9質量%、更に95〜99質量%含有することが好ましい。
【0043】
本発明の硬質表面への菌の付着抑制方法により、菌による硬質表面の汚染を防止でき、食品加工工場、厨房、病院、介護施設等における衛生管理に有用である。
【実施例】
【0044】
<実施例1〜4、比較例1>
[菌付着抑制率]
表1に示す濃度(有効分濃度)で調製した菌付着抑制剤を200μL、ポリエチレン試験板(3cm×8cm(厚さ1mm)、日本テストパネル株式会社製)の全面に塗布し、25℃にて30分間自然乾燥した試験板Aを作製した。この方法では、ポリエチレン試験板に適用した有効分(サポニン等)の全量が該試験板上に残留する。試験板Aに菌数109cfu/mLの菌液(使用菌種:Acinetobacter baumannii)を200μL塗布し、塗布した菌液が湿潤状態を維持する条件で、30℃で3時間静置した。その後50mLの滅菌水で菌液を洗い流し、基板上に付着した菌をLP希釈液「ダイゴ」(日本製薬株式会社製)10mLで流し取って回収し、培養法でコロニーカウントを行い、試験板への付着菌数を求めた。付着抑制率を下記の式(1)により算出し表1に記載した。なお、試験板Aにおける有効分(水以外の成分)の残留量は、塗布した菌付着抑制剤中の有効分の量を試験板の面積で除することにより求めると、4.2×10-6g/cm2程度となる(比較例1を除く)。
【0045】
付着抑制率(%)=(Ac−As)/Ac×100 (1)
ここで、
Ac:コントロール菌数(cfu/cm2)=水をサンプル液とした時の付着菌数
As:サンプル菌数(cfu/cm2)=菌付着抑制剤をサンプル液とした時の付着菌数
【0046】
[殺菌性の評価方法]
表1に示す濃度(有効分濃度)で調製した菌付着抑制剤2mLに、菌数108cfu/mLの菌液(使用菌種:Acinetobacter baumannii)を100μL添加した。この際初期菌数は106.3cfu/mLであった。1分後、段階希釈を行い培養法でコロニーをカウントし、菌付着抑制剤接触後の菌数を表1に記載(対数表記)した。なお実験は全て25℃にて行った。表1に結果を示す。何れも、初期菌数106.3cfu/mLに対して差が1桁以内の菌数であるので、殺菌性はないと判断した。尚、本殺菌性の評価方法は、浮遊菌に対する試験であり、硬質表面に付着した菌に対する試験よりも殺菌性が発現しやすいものとなっている。そのため、この試験で殺菌性が生じない場合は、硬質表面での殺菌性も生じない。
【0047】
【表1】
【0048】
以下に表1で用いた薬剤について説明する。尚、ある植物X(Xは植物名)から抽出したサポニンを含有する植物抽出物をXサポニン(Xは植物名)と呼ぶ。即ち、例えば、キラヤから抽出したサポニンを含有する植物抽出物のことをキラヤサポニンと呼ぶ。植物抽出物中のサポニン含有程度を1H−NMR及び13C−NMRにより分析した結果を下記の様に記載する。また、表1中の濃度は、植物抽出物の量に基づく濃度である。
【0049】
[サポニンの含有程度]
A:サポニンのアグリコン及び糖鎖に由来するピークを主に観測したことから、サポニンが主たる構成成分であると判断した。
B:サポニンのアグリコン及び糖鎖に由来するピークを他の成分由来のピークと共に検出したので、サポニンが構成成分として含まれていると判断した。
【0050】
<サポニン含有植物抽出物>
・キラヤサポニン:下記抽出方法1で得られたキラヤサポニン、サポニン含有程度A
・ソウキョウサポニン:下記抽出方法2で得られたソウキョウサポニン、サポニン含有程度A
・ムクロジサポニン:下記抽出方法3で得られたムクロジサポニン、サポニン含有程度A
・ショウマサポニン:下記抽出方法4で得られたショウマサポニン、サポニン含有程度A
【0051】
(1)抽出方法1(キラヤサポニン)
丸善製薬株式会社製キラヤニンS-100(バラ科キラヤ科のキラヤQuillaja saponaria Molより調製したキラヤ抽出物を含有)10.5gをとり、これを減圧下、溶媒を留去して固形物2.1gを得た。これに水500mLおよび水飽和n−ブタノール500mLを加え、分液ロートで振り混ぜた後、分層させた。上層をとり、減圧下、溶媒を留去して粗サポニン画分0.6gを得た。これにアセトン60mLを加え、25℃にて30分間撹拌した後これをろ過し、ろ紙に残った固形物を回収して乾燥させ、キラヤサポニン0.5gを得た。
【0052】
(2)抽出方法2(ソウキョウサポニン)
マメ科サイカチ属のGleditsia sinensis Lam.(シナサイカチ)の奇形果実(新和物産株式会社より購入)100gをとり、これを割った後、80vol%エタノール1Lを加え、室温(25℃)下で10日間抽出を行い、ろ過して抽出液890mLを得た。減圧下、溶媒を留去、乾燥させて抽出物16.4gを得た。これに水500mLおよび水飽和n−ブタノール500mLを加え、分液ロートで振り混ぜた後、分層させた。上層をとり、減圧下、溶媒を留去して粗サポニン画分4.8gを得た。これにアセトン480mLを加え、25℃にて30分間撹拌した後これをろ過し、ろ紙に残った固形物を回収して乾燥させ、ソウキョウサポニン4.3gを得た。
【0053】
(3)抽出方法3(ムクロジサポニン)
ムクロジ科ムクロジ属の無患子(ムクロジ)Sapindus mukurossiの果実(新和物産株式会社より購入)100gをとり、これを粉砕した後、80vol%エタノール1Lを加え、25℃にて10日間抽出を行い、ろ過して抽出液930mLを得た。減圧下、溶媒を留去、乾燥させて抽出物20.6gを得た。これに水500mLおよび水飽和n−ブタノール500mLを加え、分液ロートで振り混ぜた後、分層させた。上層をとり、減圧下、溶媒を留去して粗サポニン画分7.8gを得た。これにアセトン780mLを加え、25℃にて30分間撹拌した後これをろ過し、ろ紙に残った固形物を回収して乾燥させ、ムクロジサポニン3.4gを得た。
【0054】
(4)抽出方法4(ショウマサポニン)
キンポウゲ科ショウマ属の升麻(ショウマ)Cimicifuga foetidaの根茎(新和物産株式会社より購入)100gをとり、これを細断した後、80vol%エタノール1Lを加え、室温下で10日間抽出を行い、ろ過して抽出液870mLを得た。減圧下、溶媒を留去、乾燥させて抽出物13.7gを得た。これに水500mLおよび水飽和n−ブタノール500mLを加え、分液ロートで振り混ぜた後、分層させた。上層をとり、減圧下、溶媒を留去して粗サポニン画分7.2gを得た。これにアセトン720mLを加え、25℃にて30分間撹拌した後これをろ過し、ろ紙に残った固形物を回収して乾燥させ、ショウマサポニン6.1gを得た。