特許第5964173号(P5964173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964173
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】キッチン収納庫
(51)【国際特許分類】
   A47B 77/16 20060101AFI20160721BHJP
   A47B 88/00 20060101ALI20160721BHJP
   A47B 77/02 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   A47B77/16
   A47B88/00 H
   A47B77/02
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-177162(P2012-177162)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-33861(P2014-33861A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104973
【氏名又は名称】クリナップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】並木 一誠
【審査官】 蔵野 いづみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−11404(JP,A)
【文献】 特開平6−113925(JP,A)
【文献】 特開2007−89785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 77/00−77/18
A47B 88/00−88/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンロの脇に引出が設置されたキッチン収納庫であって、
キャビネットに対して前記引出を走行させるレールと、
前記引出の下部に取り付けられ前記レールの下側に突出する爪部材と、
前記レールの下方に設置され前記爪部材を下方からキャッチして前記キャビネットの奥に向かって引き込む緩衝装置と、
前記引出に上方から当接して該引出が前記レールから浮き上がることを抑えるガイドローラとを備えたことを特徴とするキッチン収納庫。
【請求項2】
前記ガイドローラは、前記引出の側壁の上面が当接する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のキッチン収納庫。
【請求項3】
前記ガイドローラは、前記キャビネットの開口部近傍に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のキッチン収納庫。
【請求項4】
前記ガイドローラはブラケットに2つ取り付けられ、
前記引出に対して前記2つのガイドローラが平行に配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のキッチン収納庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンロの脇に引出が設置されたキッチン収納庫に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチン収納庫に設けられた引出は、収納力を高めるために大小様々な引出が設けられている。これらの引出はレール機構を用いている場合が多いが、開閉を円滑にするための付加的な構成を備えている場合がある。
【0003】
特許文献1には、引出の脱輪防止の構成が提案されている。特許文献1に記載の構成では、引出の箱の後方上端に水平面内で回転するローラを設け、キャビネット壁面には引出の開放端でローラを受けるガイドレールを設けている。これにより引出を閉める際に端側を押した場合でも、引出が回転運動をせずにスムーズに平行移動すると述べている。
【0004】
特許文献2には、引出の引き込みをアシストし、緩やかに閉じる、いわゆるソフトクローズ機能を提供するための緩衝装置が記載されている。特許文献2に記載の緩衝装置においては、ダンパーを備えたピストンロッドの先端にキャッチ部材を連結している。一方、引出には爪部材(ストライカー)を設けていて、キャッチ部材が下方から係合する。引出を引き出すと爪部材がキャッチ部材から離脱し、引出を閉める際に再び爪部材がキャッチ部材と係合する構成となっている。
【0005】
一方、特許文献3に記載されているように、キッチン収納庫にはコンロの脇に引出が設置されているものがある。コンロ脇の引出はスペースを有効利用する目的で設置され、コンロとキャビネットの寸法に依存して引出の寸法が決定する。このためコンロ脇の引出は一般に幅が狭く、奥行き方向に細長い引出となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−178617号公報
【特許文献2】特開2010−269176号公報
【特許文献3】特開2009−011404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の引出は大型のものが対象となっていて、収容物も重量のあるものが想定されている。このため特許文献1で引出の円滑な開閉を阻害するものは引出のゆがみによる脱輪であった。このため、左右方向の移動を規制する水平ローラとガイドレールによって特許文献1では課題を解決している。
【0008】
しかしながらコンロ脇の引出においては、軽く小さな引出である。このため、引出自身のゆがみは問題とならず、上下方向のがたつきが問題となる。そして上下方向にがたつきが生じた場合、特許文献2に記載したような緩衝装置を用いると、爪部材がキャッチ部材を乗り越えてしまってソフトクローズ機能が作動しないという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、コンロ脇の引出において確実に緩衝装置を作動させることが可能なキッチン収納庫を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、コンロの脇に引出が設置されたキッチン収納庫であって、キャビネットに対して引出を走行させるレールと、引出の下部に取り付けられレールの下側に突出する爪部材と、レールの下方に設置され爪部材を下方からキャッチしてキャビネットの奥に向かって引き込む緩衝装置と、引出に上方から当接して該引出がレールから浮き上がることを抑えるガイドローラとを備えたことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、幅が狭く奥行き方向に細長いコンロ脇の引出において、上下方向のがたつきを抑えることができる。したがって引出の爪部材が緩衝装置のキャッチ部材を乗り越えてしまうことがなく、確実に緩衝装置を作動させることが可能となる。
【0012】
ガイドローラは、引出の側壁の上面が当接する位置に配置されていることが好ましい。これにより引出に特別の構造を設ける必要がなく、簡略な構造とすることができる。
【0013】
ガイドローラは、キャビネットの開口部近傍に配置されていることが好ましい。これにより、より確実に爪部材とキャッチ部材とを係合させることができる。
【0014】
ガイドローラはブラケットに2つ取り付けられ、引出に対して2つのガイドローラが平行に配置されることが好ましい。これにより引出の水平性を保ちやすくなり、より効果的に浮き上がりを抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コンロ脇の引出において確実に緩衝装置を作動させることが可能なキッチン収納庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態にかかるキッチンの外観図である。
図2】コンロ脇引出を説明する図である。
図3】コンロキャビネット側の構成を説明する図である。
図4】コンロ脇引出をコンロキャビネットに取り付けた状態を説明する図である。
図5】ガイドローラがある場合とない場合を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
本実施形態ではキッチン収納庫の例としてシステムキッチンを例に用いて説明する。図1は、本実施形態にかかるキッチン100の外観図である。キッチン100は、加熱調理器としてのコンロ110が設置されているコンロキャビネット120と、水栓130およびシンク140が設置されているシンクキャビネット150と、調理スペース160が設けられていて食器洗い機等を収容可能なベースキャビネット170との3つのキャビネットで構成されている。
【0019】
コンロ脇引出200は、コンロ110の脇において、キャビネットに対しスライド自在に設けられている。図1においてコンロ脇引出200はコンロ110の片側(図では左側)のみに設けられているが、コンロ110の構成によっては両側に設置されていてもよい。以下、本実施形態にかかるコンロ脇引出200を詳細に説明する。
【0020】
図2はコンロ脇引出200を説明する図であって、図2(a)は後方斜視図、図2(b)は下面斜視図である。図2(a)に示すように、コンロ脇引出200は、天面が開放された箱状の枠体202と、枠体202の前面に設けられた前板204と、枠体202の両側面に設けられた引出側レール206と、キャビネット側レールを走行するローラ208を備えている。引出側レール206は断面が逆L字型の部材であって、枠体202の壁面に沿う側面206a(取付面)と、壁面から立設する上リブ206bとを有している。引出側レール206は、キャビネット側レールと組となって、コンロキャビネット120に対してコンロ脇引出200を走行させる。
【0021】
また図2(b)に示すように、コンロ脇引出200の下部に爪部材210が取り付けられている。爪部材210は、ブロック状の部材であって、その先端210aがキャビネット側レール300の下側に突出する。そして爪部材210は、後述する緩衝装置310のキャッチ部材312と係合する。
【0022】
図3はコンロキャビネット120側の構成を説明する図であって、図3(a)は一方の壁面を示す図、図3(b)は他方の壁面を示す図である。図4はコンロ脇引出200をコンロキャビネット120に取り付けた状態を説明する図であって、図4(a)はレールを説明する図、図4(b)(c)は緩衝装置のキャッチ部材312を説明する図、図4(d)はガイドローラ320を説明する図である。
【0023】
図3(a)に示すように、一方の壁面にはキャビネット側レール300、緩衝装置310、およびガイドローラ320が設けられている。図3(b)に示すように、他方側の壁面にはキャビネット側レール300のみが設けられている。緩衝装置310およびガイドローラ320は左右どちらの壁面に設けられていてもいいが、これらは同じ壁面に設ける。
【0024】
キャビネット側レール300は、コンロキャビネット120の開口部122から奥に向かって延びるように設けられる。キャビネット側レール300は断面コの字状の部材であって、コンロキャビネット120の壁面に沿う側面300a(取付面)と、側面300aの上辺から立設する上リブ300b、下辺から立設する下リブ300cを備えている。キャビネット側レール300の開口部側端部には、引出側レール206を走行させるローラ302を備えている。
【0025】
図4(a)では、レールについて理解を容易とするために、緩衝装置310およびガイドローラ320を省略している。引出側レール206の上リブ206bは、キャビネット側レール300の上リブ300bの下側(内側)に位置する。引出側の上リブ206bは、キャビネット側のローラ302の上を走行する。引出側のローラ208は引出側の上リブ206bから外れた位置にあり、キャビネット側の上リブ300bまたは下リブ300cのいずれかに接して走行する。ただしガイドローラ320がない状態では、引出側レール206はキャビネット側レール300に対して上下方向に大きながたつきを有している。
【0026】
図3(a)に示すように、キャビネット側レール300の下方には、緩衝装置310が備えられている。緩衝装置310は内部にダンパーを備えたピストンロッドを備え(不図示)、ピストンロッドの先端にキャッチ部材312を連結している。キャッチ部材312は下方からコンロ脇引出200の爪部材210と係合する。
【0027】
コンロ脇引出200を引き出すと、爪部材210によってキャッチ部材312が引き出された上で、図4(b)に示すように爪部材210がキャッチ部材312から離脱する。コンロ脇引出200が引き出されるときに、緩衝装置310では内部の引張バネにエネルギーが蓄えられる。キャッチ部材312は、爪部材210が離脱するときには、水平移動しているときよりも低い位置に移動し、緩衝装置310の本体にラッチされる。コンロ脇引出200を閉める際には、図4(c)に示すように、再びキャッチ部材312が爪部材210に下方から係合する。詳しくは、爪部材210がキャッチ部材312に衝突してこれを引き起こして、キャッチ部材312のラッチが解除される。これにより、緩衝装置310の内部の引張バネによってコンロ脇引出200が引き込まれると共に、ダンパによって緩やかに閉じる構成となっている。
【0028】
ガイドローラ320は、図3(a)に示すように、キャビネット側レール300の上方に設置されている。そして図4(d)に示すように、ガイドローラ320はコンロ脇引出200の枠体202の側壁の上面202aに上方から当接して、コンロ脇引出200がキャビネット側レール300から浮き上がることを抑える。このように側壁の上面202aに当接することにより、コンロ脇引出200に特別の構造を設ける必要がなく、簡略な構造とすることができる。
【0029】
ガイドローラ320はブラケット322に取り付けられていて、ブラケット322はガイドローラ320の回転軸より上方でコンロキャビネット120に取り付けられている。
【0030】
またガイドローラ320はブラケット322に2つ取り付けられていて、コンロ脇引出の上面202aに対して2つのガイドローラ320が平行に配置されている。これにより、コンロ脇引出200の水平性を保ちやすくなり、より効果的に浮き上がりを抑えることができる。
【0031】
図5はガイドローラ320がある場合とない場合を比較する図である。図5(a)に示すようにガイドローラ320がある場合には、コンロ脇引出200はキャビネット側レール300から浮き上がることがなく、上下方向のがたつきを抑えることができる。したがってコンロ脇引出200の爪部材210が緩衝装置310のキャッチ部材312を乗り越えてしまうことがなく、図5(b)に示すように、確実に緩衝装置310を作動させることが可能となる。
【0032】
一方、ガイドローラ320がない場合には、がたつきによりコンロ脇引出200が上方に移動可能である。このため図5(c)に示すように、爪部材210の先端210aがキャビネット側レールの下リブ300cとキャッチ部材312の隙間を通り、すなわちキャッチ部材312を乗り越えて奥に入ってしまう場合がある。このような状態となると、緩衝装置310の利益を得られないばかりか、次回にコンロ脇引出200を引き出す際に爪部材210がキャッチ部材312に後側からつっかえるため、かえって使い心地が悪い印象を与えてしまうおそれがある。
【0033】
これに対し本発明によれば、幅が狭く奥行き方向に細長いコンロ脇の引出において、安価な汎用のレール206、300を用いつつも、ガイドローラ320を設けるという簡単で構成によって上下方向のがたつきをなくし、確実に緩衝装置を作動させることができる。
【0034】
なお、ガイドローラ320は、コンロキャビネット120の開口部122近傍に配置されていることが好ましい。換言すれば、キャッチ部材312よりも開口部122側に配置されていることが好ましい。これにより、より確実に爪部材210とキャッチ部材312とを係合させることができる。
【0035】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、コンロの脇に引出が設置されたキッチン収納庫として利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
100…キッチン、110…コンロ、120…コンロキャビネット、122…開口部、130…水栓、140…シンク、150…シンクキャビネット、160…調理スペース、170…ベースキャビネット、200…コンロ脇引出、202…枠体、202a…上面、204…前板、206…引出側レール、206a…側面、206b…上リブ、208…ローラ、210…爪部材、210a…先端、300…キャビネット側レール、300a…側面、300b…上リブ、300c…下リブ、302…ローラ、310…緩衝装置、312…キャッチ部材、320…ガイドローラ、322…ブラケット
図1
図2
図3
図4
図5