(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964179
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】締め固め杭造成による地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/10 20060101AFI20160721BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
E02D3/10 104
E02D3/12 102
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-186310(P2012-186310)
(22)【出願日】2012年8月27日
(65)【公開番号】特開2014-43703(P2014-43703A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年3月30日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 一般社団法人日本建築学会が、平成24年7月20日に発行した2012年度大会(東海)学術講演梗概集・建築デザイン発表梗概集DVD−ROM
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100096448
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 嘉明
(72)【発明者】
【氏名】深田 久
(72)【発明者】
【氏名】吉富 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】武田 尚也
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 彰洋
【審査官】
富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−105945(JP,A)
【文献】
特開平09−158166(JP,A)
【文献】
特開平06−200520(JP,A)
【文献】
特開昭48−037906(JP,A)
【文献】
特開2004−143708(JP,A)
【文献】
1.3 サンドコンパクションパイル工法,液状化対策の調査・設計から施工まで,日本,1993年 2月20日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/10
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中へのケーシングパイプの引き抜き・打ち戻しを行う地盤改良施工機械を用いて、ケーシングパイプを地盤中の所定深度まで貫入し、貫入後、ケーシングパイプより粉粒体を地盤中に排出しながらケーシングパイプを引き抜き、引き抜き後、ケーシングパイプを打ち戻して排出した粉粒体を拡径しながら締め固めて、これを上方に向かって繰り返し行うことにより、粉粒体を拡径しながら締め固めた杭を地盤中に造成すると共に、その周囲の地盤を造成した杭によって締め固めるようにした締め固め杭造成による地盤改良方法において、
ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値を現場において実測し、この実測したケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値に基づいてケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係を予め求めて、この求めたケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係に基づいて目標とする杭造成後の杭間N値を満足するためのケーシングパイプの押力を算出し、ケーシングパイプを打ち戻して粉粒体を締め固めるとき、この算出したケーシングパイプの押力で行うことで、地盤中に杭を造成すると共に、その周囲の地盤を目標とする杭造成後の杭間N値となるように締め固めるようにしたことを特徴とする締め固め杭造成による地盤改良方法。
【請求項2】
予め求めるケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係については、多くの現場においてケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値を実測してデータとして集めておき、この集めたデータから土質の条件によりケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係をパターン化し、このパターン化したものの中から、現場の地盤に応じた最適なものを選択することにより、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係を求めるようにしたことを特徴とする請求項1記載の締め固め杭造成による地盤改良方法。
【請求項3】
ケーシングパイプの打ち戻し時の地盤改良施工機械の昇降装置に作用する力とケーシングパイプの押力の関係を、予め現場の地盤にて求めておき、この求めた昇降装置に作用する力とケーシングパイプの押力の関係に基づいて昇降装置に作用する力から押力を算出するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の締め固め杭造成による地盤改良方法。
【請求項4】
前記地盤改良施工機械にあっては、昇降装置に作用する力あるいはケーシングパイプの押力をモニタリングして表示するモニターを備えると共に、
昇降装置に作用する力あるいはケーシングパイプの押力を表示するモニターを用いて、ケーシングパイプの押力を、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係に基づいて算出した押力を満足するような値にコントロールしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の締め固め杭造成による地盤改良方法。
【請求項5】
ケーシングパイプの押力を、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係に基づいて算出した押力を満足するような値にコントローラによって、自動でコントロールしたことを特徴とする請求項4記載の締め固め杭造成による地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中に粉粒体を拡径しながら締め固めた杭を造成すると共に、その周囲の地盤を造成した杭によって締め固めるようにした締め固め杭造成による地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の締め固め杭造成による地盤改良方法は、SAVEコンポーザー工法やサンドコンパクションパイル工法といったものが知られていた。
【0003】
例えば、SAVEコンポーザー工法としては、特許第2879314号公報に示されているように、上部に昇降装置や回転装置を取り付けた地盤改良施工機械を用いて、地盤中へのケーシングパイプの引き抜き・打ち戻しを行うようにして、このケーシングパイプを地盤中の所定深度まで貫入し、貫入後、ケーシングパイプの先端より粉粒体を地盤中に排出しながらケーシングパイプを引き抜く。そして、引き抜き後、ケーシングパイプを打ち戻して排出した粉粒体を拡径しながら締め固める。この引き抜きと打ち戻しを上方に向かって繰り返し行う。これにより、粉粒体を拡径しながら締め固めた杭を地盤中に造成することで、この地盤中に造成する杭によって、その周囲の地盤を締め固めるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2879314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来の締め固め杭造成による地盤改良方法では、作業する現場の地盤の土質などによって、地盤中に杭を造成してその周囲の地盤を締め固める際、締め固めようとする周囲の地盤にばらつきが生じるおそれがあり、このため、作業者はこれらの点に注意し、経験を生かして、周囲の地盤を良く締まった安定した地盤になるように作業を行うようにしていた。
【0006】
しかしながら、地盤中に造成する杭によって、その周囲の地盤を良く締まった安定した地盤にすることは、現場の地盤の土質などによって大きく左右されるものであり、なかなか容易なものではなかった。そして、作業後に行うボーリング検査において、良く締まった安定した地盤でない不適合な地盤となると、良く締まった安定した地盤にするために、ここに追加の杭を造成しなければならず、このため、工期が長くなったり工費が高くなったりするといった問題が生じるおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、地盤中に造成する杭によって、その周囲の地盤を良く締まった安定した地盤にするための作業を容易なものにすることにより、作業後に良く締まった安定した地盤でない不適合な地盤となるのを大幅に低減し、追加の杭を造成するといったことを無くして、良く締まった安定した地盤に常に確実に改良することで、工期の短縮及び工費が高くなるのを防いで経済的にも優れた工事方法を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の発明は、地盤中へのケーシングパイプの引き抜き・打ち戻しを行う地盤改良施工機械を用いて、ケーシングパイプを地盤中の所定深度まで貫入し、貫入後、ケーシングパイプより粉粒体を地盤中に排出しながらケーシングパイプを引き抜き、引き抜き後、ケーシングパイプを打ち戻して排出した粉粒体を拡径しながら締め固めて、これを上方に向かって繰り返し行うことにより、粉粒体を拡径しながら締め固めた杭を地盤中に造成すると共に、その周囲の地盤を造成した杭によって締め固めるようにした締め固め杭造成による地盤改良方法において、
ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値を現場において実測し、この実測したケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値に基づいてケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係を
予め求めて、この求めたケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係に基づいて目標とする杭造成後の杭間N値を満足するためのケーシングパイプの押力を算出し、ケーシングパイプを打ち戻して粉粒体を締め固めるとき、この算出したケーシングパイプの押力で行うことで、地盤中に杭を造成すると共に、その周囲の地盤を目標とする杭造成後の杭間N値となるように締め固めるようにした締め固め杭造成による地盤改良方法である。
【0009】
第二の発明は、第一の発明において、予め求めるケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係については、多くの現場においてケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値を実測してデータとして集めておき、この集めたデータから土質の条件によりケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係をパターン化し、このパターン化したものの中から、現場の地盤に応じた最適なものを選択することにより、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係を求めるようにした締め固め杭造成による地盤改良方法である。
【0010】
第三の発明は、第一又は第二の発明において、ケーシングパイプの打ち戻し時の地盤改良施工機械の昇降装置に作用する力とケーシングパイプの押力の関係を、予め現場の地盤にて求めておき、この求めた昇降装置に作用する力とケーシングパイプの押力の関係に基づいて昇降装置に作用する力から押力を算出するようにした締め固め杭造成による地盤改良方法である。
【0011】
第四の発明は、第一乃至第三のいずれかの発明において、前記地盤改良施工機械にあっては、昇降装置に作用する力あるいはケーシングパイプの押力をモニタリングして表示するモニターを備えると共に、昇降装置に作用する力あるいはケーシングパイプの押力を表示するモニターを用いて、ケーシングパイプの押力を、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係に基づいて算出した押力を満足するような値にコントロールした締め固め杭造成による地盤改良方法である。
【0012】
第五の発明は、第四の発明において、ケーシングパイプの押力を、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係に基づいて算出した押力を満足するような値にコントローラによって、自動でコントロールした締め固め杭造成による地盤改良方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係に基づいて目標とする杭造成後の杭間N値を満足するためのケーシングパイプの押力を算出し、ケーシングパイプを打ち戻して粉粒体を締め固めるとき、この算出したケーシングパイプの押力で行うようにしたことで、この造成した杭によって、その周囲の地盤を目標とする杭造成後の杭間N値を満足する良く締まった安定した地盤に確実に改良することができ、すなわち、地盤強度を極めて最良な値にする地盤改良を行うことができる。
【0014】
また、このように地盤強度を極めて最良な値にする地盤改良を行えることで、その作業も容易なものとなり、これにより、作業後に行うボーリング検査において、良く締まった安定した地盤でない不適合な地盤となるのを大幅に低減し、追加の杭を造成するといったことを無くして、良く締まった安定した地盤に常に確実に改良することができ、すなわち、締め固め杭造成による地盤改良において極めて高い品質での地盤改良を行うことができ、これらのことから、工期の短縮及び工費が高くなるのを防いで経済的にも優れたものにすることができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、ケーシングパイプの押力の算出には、予め求めたケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係に基づいて算出するようにしており、この杭造成後の杭間N値という一つの要素のみによって、目標とする杭造成後の杭間N値を満足する押力を算出することができ、いろいろな要素から押力を算出する場合と異なり、算出する作業が簡単かつ容易となり、また算出した押力も精度の高いものにすることができ、最終的に地盤強度を極めて最良な値にする地盤改良を行うことができる。
【0016】
また、本発明によれば、ケーシングパイプの押力を、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係に基づいて算出した押力を満足するような値にコントロールすることで、ケーシングパイプの打ち戻し時の作業を常に最適な状態を保ちながら行うことができ、地盤中に造成する杭によって、その周囲の地盤も目標とする杭造成後の杭間N値を満足する良く締まった安定した地盤に確実に改良することができる。
【0017】
また、このケーシングパイプの押力のコントロールを、コントローラによって、自動で行うようにしたことで、作業者にあってはほとんど負担がかからず、作業的にも良好なものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の締め固め杭造成による地盤改良方法に用いる地盤改良施工機械の正面図である。
【
図2】本発明の締め固め杭造成による地盤改良方法に用いる地盤改良施工機械の側面図である。
【
図4】締め固め杭造成による地盤改良方法の作業工程を示す説明図である。
【
図5】ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係をタイプ別に分けてパターン化した状態を示す説明図である。
【
図6】昇降装置の油圧モータの油圧とケーシングパイプの押力の関係を示す図表である。
【
図7】油圧と杭造成後の杭間N値の関係を示す図表である。
【
図8】ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係を示す図表である。
【
図9】ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係の一例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による締め固め杭造成による地盤改良方法の一実施形態について説明する。
この締め固め杭造成による地盤改良方法としては、SAVEコンポーザー工法であるが、これに限定されるものではなく、他の工法でも良い。
【0020】
この締め固め杭造成による地盤改良方法に用いる地盤中へのケーシングパイプの引き抜き・打ち戻しを行う地盤改良施工機械としては、
図1、
図2に示すように、自走可能となる車体本体1を備え、この車体本体1の上部に運転室2を設けると共に、各種の動力源を搭載している。
【0021】
そして、この車体本体1の前部に縦に向かうリーダー3を立設し、このリーダー3に沿うように、地盤中に貫入可能となるケーシングパイプ4を縦に向けて装着する。このケーシングパイプ4の上部には、ケーシングパイプ4を回転させる回転装置5やケーシングパイプ4を昇降させる昇降装置6などを取り付けており、昇降装置6としては、ラック・アンド・ピニオン方式にしている。なお、この昇降装置6はラック・アンド・ピニオン方式に限定されるものではなく、例えば、
図3に示すように、ワイヤーロープ8をウインチ9によって牽引する方式、さらにはチェーンやスプロケットを用いた方式など他の方式でも良い。また、ケーシングパイプ4の上部には、粉粒体を投入するホッパー7を取り付けて、ここから粉粒体をケーシングパイプ4内に投入するようにしている。粉粒体は、通常、砂を用いるものであるが、これに限定されるものではなく、砂利、砕石、スラグあるいはこれらの混合物、さらには砂、砂利、砕石、スラグに固化材を混合したものなどを用いるようにしても良い。
【0022】
次に、締め固め杭造成による地盤改良方法は、基本的には従来と同様、地盤改良施工機械を用いて、
図4に示すように、地盤中へのケーシングパイプ4の引き抜き・打ち戻しを行うようにして、このケーシングパイプ4を地盤中の所定深度まで貫入し、貫入後、ケーシングパイプ4の先端より粉粒体を地盤中に排出しながらケーシングパイプ4を引き抜く。そして、引き抜き後、ケーシングパイプ4を打ち戻して排出した粉粒体を拡径しながら締め固める。この引き抜きと打ち戻しを上方に向かって繰り返し行う。これにより、粉粒体を拡径しながら締め固めた杭を地盤中に造成することで、この地盤中に造成する杭によって、その周囲の地盤を締め固める。
【0023】
そして、このような締め固め杭造成による地盤改良方法において、ケーシングパイプ4を打ち戻して粉粒体を締め固めるとき、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係に基づいて目標とする杭造成後の杭間N値を満足するためのケーシングパイプの押力を算出し、この算出したケーシングパイプの押力で行う。
【0024】
これは、まず、予めケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係を求める。このケーシングパイプの押力とは、作業時にケーシングパイプ4が地盤を押す力のことである。また、杭造成後の杭間N値とは、杭を地盤中に造成した後の周辺地盤N値のことであり、杭を造成した後の周辺地盤の実際のN値そのもので示したものである。なお、この杭造成後の杭間N値は、これに限定されるものではなく、杭造成前と杭造成後の杭間N値の差、杭造成前の杭間N値と杭造成後の杭間N値との比率などで示したものでも良い。
【0025】
そして、予め求めるケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係ついては、土質などが異なる多くの現場においてケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値を実測してデータとして集めておき、多くの現場において集めたデータから土質などの条件によりケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係を、
図5に示すように、例えば、土質A、土質B、土質C、・・・というように何種類かのタイプに分けてパターン化する。そして、このパターン化したものの中から、現場の地盤に応じた最適なタイプを選択して、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係を求めるようにしている。なお、現場の土質が深度によって変化する場合が考えられるが、このような場合、深度に応じてパターン化したものから複数選択して、変化する土質に対応するようにしても良い。
【0026】
また、現場の土質が今までのデータにない全く新しいタイプの場合は、その現場の地盤において、作業するときにケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値を実測してこの実測したものからケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係を求めて、これに基づいて行うようにしても良い。
【0027】
なお、このケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係については、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値との間に比例関係があることを突き止め、これを実験によって確認した。これについては後で述べる。
【0028】
そして、このようにして求めたケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係に基づいて目標とする杭造成後の杭間N値を満足するためのケーシングパイプの押力を算出し、ケーシングパイプ4を打ち戻して粉粒体を締め固めるとき、この算出したケーシングパイプの押力で行うことにより、造成した杭によって、その周囲の地盤を目標とする杭造成後の杭間N値を満足する良く締まった安定した地盤に確実に改良することができる。
【0029】
一方、ケーシングパイプの押力については、ケーシングパイプ4の打ち戻し時の地盤改良施工機械の昇降装置に作用する力とケーシングパイプの押力の関係を、予め現場の地盤にて求めておき、この求めた昇降装置に作用する力とケーシングパイプの押力の関係に基づいて昇降装置に作用する力から押力を算出する。このケーシングパイプの打ち戻し時の地盤改良施工機械の昇降装置に作用する力とは、ラック・アンド・ピニオン方式の昇降装置6のピニオンギアを駆動する油圧モータの油圧である。ただし、昇降装置6がワイヤーロープ8をウインチ9によって牽引する方式の場合、昇降装置に作用する力とは、ウインチ引き込み時のモータの負荷から割り出した引き込み力である。
【0030】
このケーシングパイプの打ち戻し時の地盤改良施工機械の昇降装置に作用する力である油圧モータの油圧とケーシングパイプの押力の関係は、現場におけるケーシングパイプ4重量や昇降装置6の油圧モータの仕様などによって変化するものであり、実際の現場においてそれぞれ計測する。
【0031】
この計測については、ロードセルを載荷板の四隅の下に設置し、載荷板をケーシングパイプ4にて押すことで、ロードセルにてケーシングパイプの押力を直接計測し、油圧センサーにてその時の昇降装置の油圧モータの油圧も計測する。その後、杭造成時(ケーシングパイプ4の引き抜き・打ち戻し時)の昇降装置の油圧モータの油圧を0.05s毎に計測する。このロードセルにて計測したケーシングパイプの押力と油圧センサーにて計測した昇降装置の油圧モータの油圧との結果から、
図6に示すような、昇降装置の油圧モータの油圧とケーシングパイプの押力の関係を導き出す。
【0032】
この
図6に示した図表から明らかなように、ケーシングパイプ4の打ち戻し時の昇降装置に作用する力である昇降装置の油圧モータの油圧とケーシングパイプの押力との間に、比例関係があることがわかる。これにより、昇降装置の油圧モータの油圧とケーシングパイプの押力との関係に基づいて昇降装置の油圧モータの油圧から押力を算出することができる。
【0033】
次に、前述したケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係について、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値との間に比例関係があることを突き止め、これを実験によって確認した点について説明する。
【0034】
これは、実際の作業の現場において、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値を実測する。具体的には、いろいろな現場、例えばA現場、B現場、C現場の3個所の現場において、実際の作業時に、昇降装置6の油圧モータの油圧センサーにて油圧を計測し、その時の杭造成後の杭間N値も計測する。これを、3個所それぞれの現場(A現場、B現場、C現場)において複数回にわたって行う。そして、3個所それぞれの場所において行った計測した結果から、
図7に示すような、いろいろな現場での油圧と杭造成後の杭間N値の関係を導き出す。
【0035】
この
図7に示した図表から明らかなように、どこの現場においても、油圧と杭造成後の杭間N値との間に、比例関係があることがわかる。
【0036】
そして、前述の昇降装置の油圧モータの油圧とケーシングパイプの押力との関係に基づいて昇降装置の油圧モータの油圧から押力を算出できることで、油圧と杭造成後の杭間N値の関係から、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係を算出して、
図8に示すように、いろいろな現場でのケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係を導き出す。
【0037】
この
図8に示す図表から明らかなように、どこの現場においても、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値との間に、比例関係があることがわかる。
【0038】
次に、例えば、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係が、
図9に示すような場合での実際の作業内容、要するに、目標とする杭造成後の杭間N値を満足するためのケーシングパイプの押力の算出及びその後の作業について説明する。
【0039】
地盤改良を行うとき、例えば、目標とする杭造成後の杭間N値を15とした場合、これを満足するためのケーシングパイプの押力は、
図9に示したケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係から、350kNであることが分かる。そして、この350kNの押力で、ケーシングパイプ4を打ち戻して粉粒体を拡径しながら締め固めることにより、杭造成後の杭間N値を目標とする15以上に確実にすることができ、杭造成後の地盤を良く締まった安定した地盤に改良することができる。しかも、このとき、地盤を必要以上の極端な杭間N値にすることが無く、最適な地盤へと改良することができる。また、作業後に行うボーリング検査において、良く締まった安定した地盤でない不適合な地盤となるのを大幅に低減し、追加の杭を造成するといったことを無くして、良く締まった安定した地盤に常に確実に改良することができ、すなわち、締め固め杭造成による地盤改良において極めて高い品質での地盤改良を行うことができる。
【0040】
また、この地盤改良の作業時における作業者の負担を軽減するため、前記地盤改良施工機械の運転室2内に、昇降装置に作用する力であるケーシングパイプの押力をモニタリングして表示するモニターを備えるようにしても良い。このモニターにあっては、ケーシングパイプの押力を表示しているが、この代わりに昇降装置の油圧モータの油圧を表示しても良い。ただし、昇降装置の油圧モータの油圧を表示した場合は、その油圧を換算してケーシングパイプの押力を算出する必要がある。
【0041】
そして、このケーシングパイプの押力を表示するモニターを用いて、ケーシングパイプの押力を、ケーシングパイプの押力と杭造成後の杭間N値の関係に基づいて算出した押力を満足するような値にコントロールしている。
【0042】
このコントロールについては、コントローラを備えて、このコントローラによって、自動で押力を満足するような値にコントロールするのが最も作業者に負担がかからず、作業的にも良好なものになるが、コントローラを備えることから、ある程度の費用がかかってしまう。これに対して、費用をかけないで行うのであれば、作業者がモニターを用いて、手動で押力を満足するような値にコントロールするというやり方もある。
【符号の説明】
【0043】
1…車体本体、2…運転室、3…リーダー、4…ケーシングパイプ、5…回転装置、6…昇降装置、7…ホッパー、8…ワイヤーロープ、9…ウインチ