【実施例】
【0047】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0048】
なお、以下の実施例において、目的化合物の(メタ)アクリル酸エステルの収率は、アルコールを基準にし、目的とする(メタ)アクリル酸エステルの理論生成量に対する実際の生成量の比から求めた。また、メチルアルコール、シクロヘキサン、イソヘキサンおよび(メタ)アクリル酸メチルの各収量は、ガスクロマトグラフィー(以下、GCという)分析装置(アジレント社製、検出器FID、カラムキャピラリーDB−1:30m)を用い、GCによる面積百分率から求めた。
【0049】
実施例1
2L容のガラス製の4口フラスコにオールダーショウ20段、還流冷却器および空気導入管を取り付け、当該フラスコ内に、アクリル酸メチル694g(8.06モル)、N,N−ジメチルアミノエチルアルコール552g(6.20モル)、重合防止剤としてフェノチアジン1.76g、エステル交換触媒としてジブチルスズオキシド22.1g、反応溶媒としてイソヘキサン20gおよびシクロヘキサン60gを仕込んだ。酸素ガスを8体積%含有する窒素ガスを20mL/minの流量でフラスコ内に吹き込みながらフラスコ内の内容物を83〜94℃に加熱し、大気圧下でエステル交換反応を開始した。
【0050】
蒸留塔の塔頂温度は、副生するメチルアルコールと反応溶媒であるイソヘキサンとの共沸温度である45〜46℃が保たれるように塔頂の還流比を調節した。塔頂から系外に留出した凝縮液を20℃に冷却し、デカンターに導いた。
【0051】
デカンター内で分離した2層のうち、上層のイソヘキサンを主成分とする層を蒸留塔の下から10段目に還流させた。メチルアルコールを主成分とする下層は、デカンターの分離界面が一定となるように連続的に取出した。取出した下層にはメチルアルコール以外にイソヘキサンが含まれていることから、反応系内におけるイソヘキサンの量が減少することを防止するために、取り出した下層に含まれているイソヘキサンと等量のイソヘキサンを反応系内に追加しながら反応温度を83〜94℃に調整した。アクリル酸メチルとN,N−ジメチルアミノエチルアルコールのエステル交換反応は、反応開始から約12時間で終了した。
【0052】
生成したアクリル酸N,N−ジメチルアミノエチルの収量は852gであり(収率:96%)、反応溶液中のマイケル付加物の合計濃度は0.02質量%以下であった。また、反応の際に取出したメチルアルコールを主成分とする下層には、メチルアルコール54.7質量%、シクロヘキサン0.6質量%およびイソヘキサン44.7質量%が含まれていたが、アクリル酸メチルの量は検出限界(検出限界:10ppm)以下であった。
【0053】
次に、前記下層をオールダーショウ10段の蒸留塔を用いて蒸留を行なった。当該蒸留塔の塔頂から沸点45〜50℃の留分を取出したところ、その留分には、イソヘキサン82重量%、メチルアルコール17.6重量%およびシクロヘキサン0.4質量%が含まれていた。この留分は、反応溶媒として使用することができた。また、前記フラスコ内の残液には、メチルアルコール99.6重量%、イソヘキサン0.3重量%およびシクロヘキサン0.1重量%が含まれていた。
【0054】
実施例2
2L容のガラス製の4口フラスコにオールダーショウ20段、還流冷却器および空気導入管を取り付け、当該フラスコ内に、2−エチルへキシルアルコール781g(6.00モル)、アクリル酸メチル672g(7.80モル)、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.55g、エステル交換触媒としてテトラメトキシチタン2.1g、反応溶媒としてイソヘキサン20gおよびシクロヘキサン80gを仕込んだ。酸素ガスを8体積%含有する窒素ガスを20mL/minの流量でフラスコ内に吹き込みながらフラスコ内の内容物を90〜110℃に加熱し、大気圧下でエステル交換反応を開始した。
【0055】
蒸留塔の塔頂温度は、副生するメチルアルコールと反応溶媒であるイソヘキサンとの共沸温度である45〜46℃に保つように塔頂の還流比を調節した。塔頂から系外に留出した凝縮液を20℃に冷却し、デカンターに導いた。
【0056】
デカンター内で分離した2層のうち、上層のイソヘキサンを主成分とする層を蒸留塔の下から10段目に還流させた。メチルアルコールを主成分とする下層は、デカンターの分離界面が一定となるように連続的に取出した。取出した下層にはメチルアルコール以外にイソヘキサンが含まれていることから、反応系内におけるイソヘキサンの量が減少することを防止するために、取り出した下層に含まれているイソヘキサンと等量のイソヘキサンを反応系内に追加しながら反応温度を90〜110℃に調整した。アクリル酸メチルと2−エチルヘキシルアルコールのエステル交換反応は、反応開始から約6時間で終了した。
【0057】
生成したアクリル酸2−エチルへキシルの収量は1078gであり(収率:98%)、反応溶液中のマイケル付加物の合計濃度は0.05質量%以下であった。また、反応の際に取出したメチルアルコールを主成分とする下層には、メチルアルコール54.7質量%、シクロヘキサン0.6質量%およびイソヘキサン44.7質量%が含まれていたが、アクリル酸メチルの量は検出限界(検出限界:10ppm)以下であった。
【0058】
次に、前記下層をオールダーショウ10段の蒸留塔を用いて蒸留を行なった。当該蒸留塔の塔頂から沸点45〜50℃の留分を取出したところ、その留分には、イソヘキサン82重量%、メチルアルコール17.6重量%およびシクロヘキサン0.4質量%が含まれていた。この留分は、反応溶媒として使用することができた。また、前記フラスコ内の残液には、メチルアルコール99.6重量%、イソヘキサン0.3重量%およびシクロヘキサン0.1重量%が含まれていた。
【0059】
実施例3
2L容のガラス製の4口フラスコにオールダーショウ20段、還流冷却器および空気導入管を取り付け、当該フラスコ内に、ベンジルアルコール659g(7.00モル)、アクリル酸メチル783g(9.1モル)、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.52g、テトラメトキシチタン1.1g、イソヘキサン20gおよびシクロヘキサン80gを仕込んだ。酸素ガスを8体積%含有する窒素ガスを20mL/minの流量でフラスコ内に吹き込みながらフラスコ内の内容物を85〜100℃に加熱し、大気圧下でエステル交換反応を開始した。
【0060】
蒸留塔の塔頂温度は、反応で副生するメチルアルコールと反応溶媒であるイソヘキサンとの共沸温度である45〜46℃に保つように、塔頂の還流比を調節した。塔頂から系外に留出した凝縮液を20℃に冷却し、デカンターに導いた。
【0061】
デカンター内で分離した2層のうち、上層のイソヘキサンを主成分とする層を蒸留塔の下から10段目に還流させた。メチルアルコールを主成分とする下層は、デカンターの分離界面が一定となるように連続的に取出した。取出した下層にはメチルアルコール以外にイソヘキサンが含まれていることから、反応系内におけるイソヘキサンの量が減少することを防止するために、取り出した下層に含まれているイソヘキサンと等量のイソヘキサンを反応系内に追加しながら反応温度を85〜100℃に調整した。アクリル酸メチルとベンジルアルコールのエステル交換反応は、反応開始から約8時間で終了した。
【0062】
生成したアクリル酸ベンジルの収量は996gであり(収率:96%)、反応溶液中のマイケル付加物の合計濃度は0.1質量%以下であった。また、反応の際に取出したメチルアルコールを主成分とする下層には、メチルアルコール55.0質量%、シクロヘキサン0.6質量%およびイソヘキサン44.4質量%が含まれていたが、アクリル酸メチルの量は検出限界(検出限界:10ppm)以下であった。
【0063】
次に、前記下層をオールダーショウ10段の蒸留塔を用いて蒸留を行なった。当該蒸留塔の塔頂から沸点45〜50℃の留分を取出したところ、その留分には、イソヘキサン82重量%、メチルアルコール17.6重量%およびシクロヘキサン0.4質量%が含まれていた。この留分は、反応溶媒として使用することができた。また、前記フラスコ内の残液には、メチルアルコール99.6重量%、イソヘキサン0.3重量%およびシクロヘキサン0.1重量%が含まれていた。
【0064】
実施例4
2L容のガラス製の4口フラスコにオールダーショウ20段、還流冷却器および空気導入管を取り付け、当該フラスコ内に、2−メトキシエチルアルコール647g(8.50モル)、アクリル酸メチル951g(11.05モル)、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.6g、ジブチルスズオキシド6.4g、イソヘキサン20gおよびシクロヘキサン60gを仕込んだ。酸素ガスを8体積%含有する窒素ガスを20mL/minの流量でフラスコ内に吹き込みながらフラスコ内の内容物を85〜100℃に加熱し、大気圧下でエステル交換反応を開始した。
【0065】
蒸留塔の塔頂温度は、反応で副生するメチルアルコールと反応溶媒であるイソヘキサンとの共沸温度である45〜46℃に保つように、塔頂の還流比を調節した。塔頂から系外に留出した凝縮液を20℃に冷却し、デカンターに導いた。
【0066】
デカンター内で分離した2層のうち、上層のイソヘキサンを主成分とする層を蒸留塔の下から10段目に還流させた。メチルアルコールを主成分とする下層は、デカンターの分離界面が一定となるように連続的に取出した。取出した下層にはメチルアルコール以外にイソヘキサンが含まれていることから、反応系内におけるイソヘキサンの量が減少することを防止するために、取り出した下層に含まれているイソヘキサンと等量のイソヘキサンを反応系内に追加しながら反応温度を85〜100℃に調整した。アクリル酸メチルと2−メトキシエチルアルコールのエステル交換反応は、反応開始から約12時間で終了した。
【0067】
生成したアクリル酸2−メトキシエチルの収量は1051gであり(収率:95%)、反応溶液中のマイケル付加物の合計濃度は0.1質量%以下であった。また、反応の際に取出したメチルアルコールを主成分とする下層には、メチルアルコール54.9質量%、シクロヘキサン0.6質量%およびイソヘキサン44.5質量%が含まれていたが、アクリル酸メチルの量は検出限界(検出限界:10ppm)以下であった。
【0068】
次に、前記下層をオールダーショウ10段の蒸留塔を用いて蒸留を行なった。当該蒸留塔の塔頂から沸点45〜50℃の留分を取出したところ、その留分には、イソヘキサン82重量%、メチルアルコール17.6重量%およびシクロヘキサン0.4質量%が含まれていた。この留分は、反応溶媒として使用することができた。また、前記フラスコ内の残液には、メチルアルコール99.6重量%、イソヘキサン0.3重量%およびシクロヘキサン0.1重量%が含まれていた。
【0069】
実施例5
2L容のガラス製の4口フラスコにオールダーショウ20段、還流冷却器および空気導入管を取り付け、当該フラスコ内に、テトラヒドロフルフリルアルコール616g(7.0モル)、メタクリル酸メチル911g(9.1モル)、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.6g、ジブチルスズオキシド6.4g、イソヘキサン30gおよびシクロヘキサン70gを仕込んだ。酸素ガスを8体積%含有する窒素ガスを20mL/minの流量でフラスコ内に吹き込みながらフラスコ内の内容物を85〜100℃に加熱し、大気圧下でエステル交換反応を開始した。
【0070】
蒸留塔の塔頂温度は、反応で副生するメチルアルコールと反応溶媒であるイソヘキサンとの共沸温度である45〜46℃に保つように、塔頂の還流比を調節した。塔頂から系外に留出した凝縮液を20℃に冷却し、デカンターに導いた。
【0071】
デカンター内で分離した2層のうち、上層のイソヘキサンを主成分とする層を蒸留塔の下から10段目に還流させた。メチルアルコールを主成分とする下層は、デカンターの分離界面が一定となるように連続的に取出した。取出した下層にはメチルアルコール以外にイソヘキサンが含まれていることから、反応系内におけるイソヘキサンの量が減少することを防止するために、取り出した下層に含まれているイソヘキサンと等量のイソヘキサンを反応系内に追加しながら反応温度を85〜100℃に調整した。アクリル酸メチルとテトタヒドロフルフリルアルコールのエステル交換反応は、反応開始から約12時間で終了した。
【0072】
生成したメタクリル酸テトラヒドロフルフリルの収量は1039gであり(収率:95%)、反応溶液中のマイケル付加物の合計濃度は0.1質量%以下であった。また、反応の際に取出したメチルアルコールを主成分とする下層には、メチルアルコール57.0質量%、シクロヘキサン0.5質量%およびイソヘキサン42.5質量%が含まれていたが、メタクリル酸メチルの量は検出限界(検出限界:10ppm)以下であった。
【0073】
次に、前記下層をオールダーショウ10段の蒸留塔を用いて蒸留を行なった。当該蒸留塔の塔頂から沸点45〜50℃の留分を取出したところ、その留分には、イソヘキサン82重量%、メチルアルコール17.6重量%およびシクロヘキサン0.4質量%が含まれていた。この留分は、反応溶媒として使用することができた。また、前記フラスコ内の残液には、メチルアルコール99.6重量%、イソヘキサン0.3重量%およびシクロヘキサン0.1重量%が含まれていた。
【0074】
実施例6
2L容のガラス製の4口フラスコにオールダーショウ20段、還流冷却器および空気導入管を取り付け、当該フラスコ内に、テトラヒドロフルフリルアルコール616g(7.0モル)、メタクリル酸メチル911g(9.1モル)、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.6g、ジブチルスズオキシド6.4g、イソヘキサン40gおよびシクロヘキサン60gを仕込んだ。酸素ガスを8体積%含有する窒素ガスを20mL/minの流量でフラスコ内に吹き込みながらフラスコ内の内容物を80〜97℃に加熱し、大気圧下でエステル交換反応を開始した。
【0075】
蒸留塔の塔頂温度は、反応で副生するメチルアルコールと反応溶媒であるイソヘキサンとの共沸温度である45〜46℃に保つように、塔頂の還流比を調節した。塔頂から系外に留出した凝縮液を20℃に冷却し、デカンターに導いた。
【0076】
デカンター内で分離した2層のうち、上層のイソヘキサンを主成分とする層を蒸留塔の下から10段目に還流させた。メチルアルコールを主成分とする下層は、デカンターの分離界面が一定となるように連続的に取出した。取出した下層にはメチルアルコール以外にイソヘキサンが含まれていることから、反応系内におけるイソヘキサンの量が減少することを防止するために、取り出した下層に含まれているイソヘキサンと等量のイソヘキサンを反応系内に追加しながら反応温度を85〜100℃に調整した。メタクリル酸メチルとテトラヒドロフルフリルアルコールのエステル交換反応は、反応開始から約12時間で終了した。
【0077】
生成したメタクリル酸テトラヒドロフルフリルの収量は1039gであり(収率:95%)、反応溶液中のマイケル付加物の合計濃度は0.1質量%以下であった。また、反応の際に取出したメチルアルコールを主成分とする下層には、メチルアルコール55.2質量%、シクロヘキサン0.3質量%およびイソヘキサン44.5質量%が含まれていたが、アクリル酸メチルの量は検出限界(検出限界:10ppm)以下であった。
【0078】
次に、前記下層をオールダーショウ10段の蒸留塔を用いて蒸留を行なった。当該蒸留塔の塔頂から沸点45〜50℃の留分を取出したところ、その留分には、イソヘキサン82重量%、メチルアルコール17.6重量%およびシクロヘキサン0.4質量%が含まれていた。この留分は、反応溶媒として使用することができた。また、前記フラスコ内の残液には、メチルアルコール99.6重量%、イソヘキサン0.3重量%およびシクロヘキサン0.1重量%が含まれていた。
【0079】
比較例1
2L容のガラス製の4口フラスコにオールダーショウ30段、還流冷却器および空気導入管を取り付け、当該フラスコ内に、2−メトキシエチルアルコール647g(8.50モル)、アクリル酸メチル951g(11.05モル)、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.6g、ジブチルスズオキシド6.4gおよびシクロヘキサン200gを仕込んだ。酸素ガスを8体積%含有する窒素ガスを20mL/minの流量でフラスコ内に吹き込みながらフラスコ内の内容物を87〜94℃に加熱し、大気圧下でエステル交換反応を開始した。
【0080】
蒸留塔の塔頂温度は、反応で副生するメチルアルコールと反応溶媒であるシクロヘキサンとの共沸温度である54〜56℃に保つように、塔頂の還流比を調節した。塔頂から系外に留出した凝縮液を20℃に冷却し、デカンターに導いた。
【0081】
デカンター内で分離した2層のうち、上層のシクロヘキサンを主成分とする層を蒸留塔の下から10段目に還流させた。メチルアルコールを主成分とする下層は、デカンターの分離界面が一定となるように連続的に取出した。取出した下層にはメチルアルコール以外にシクロヘキサンが含まれていることから、反応系内におけるシクロヘキサンの量が減少することを防止するために、取り出した下層に含まれているシクロヘキサンと等量のシクロヘキサンを反応系内に追加しながら反応温度を87〜94℃に調整した。アクリル酸メチルと2−メトキシエチルアルコールのエステル交換反応は、反応開始から約10時間で終了した。
【0082】
生成したアクリル酸2−メトキシエチルの収量は1029gであり(収率:93%)、反応溶液中のマイケル付加物の合計濃度は0.2質量%以下であった。また、反応の際に取出したメチルアルコールを主成分とする下層には、メチルアルコール61質量%、シクロヘキサン30質量%およびアクリル酸メチル9質量%が含まれていた。
【0083】
比較例2
2L容のガラス製の4口フラスコにオールダーショウ30段、還流冷却器および空気導入管を取り付け、当該フラスコ内に、2−メトキシエチルアルコール647g(8.50モル)、アクリル酸メチル951g(11.05モル)、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.6g、ジブチルスズオキシド6.4gおよびノルマルヘキサン150gを仕込んだ。酸素ガスを8体積%含有する窒素ガスを20mL/minの流量でフラスコ内に吹き込みながらフラスコ内の内容物を82〜91℃に加熱し、大気圧下でエステル交換反応を開始した。
【0084】
蒸留塔の塔頂温度は、反応で副生するメチルアルコールと反応溶媒であるノルマルヘキサンとの共沸温度である49〜51℃に保つように塔頂の還流比を調節した。塔頂から系外に留出した凝縮液を20℃に冷却し、デカンターに導いた。
【0085】
デカンター内で分離した2層のうち、上層のノルマルヘキサンを主成分とする層を蒸留塔の下から10段目に還流させた。メチルアルコールを主成分とする下層は、デカンターの分離界面が一定となるように連続的に取出した。取出した下層にはメチルアルコール以外にノルマルヘキサンが含まれていることから、反応系内におけるノルマルヘキサンの量が減少することを防止するために、取り出した下層に含まれているノルマルヘキサンと等量のノルマルヘキサンを反応系内に追加しながら反応温度を82〜91℃に調整した。アクリル酸メチルと2−メトキシエチルアルコールのエステル交換反応は、反応開始から約11時間で終了した。
【0086】
生成したアクリル酸2−メトキシエチルの収量は1040gであり(収率:94%)、反応溶液中のマイケル付加物の合計濃度は0.2質量%以下であった。また、反応の際に取出したメチルアルコールを主成分とする下層には、メチルアルコール60質量%、ノルマルヘキサン35質量%およびアクリル酸メチル5質量%が含まれていた。
【0087】
比較例3
2L容のガラス製の4口フラスコにオールダーショウ20段、還流冷却器および空気導入管を取り付け、当該フラスコ内に、2−メトキシエチルアルコール647g(8.50モル)、アクリル酸メチル951g(11.05モル)、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.6g、ジブチルスズオキシド6.4gおよびイソヘキサン80gを仕込んだ。酸素ガスを8体積%含有する窒素ガスを20mL/minの流量でフラスコ内に吹き込みながらフラスコ内の内容物を72〜82℃に加熱し、大気圧下でエステル交換反応を開始した。
【0088】
蒸留塔の塔頂温度は、反応で副生するメチルアルコールと反応溶媒であるイソヘキサンとの共沸温度である45〜46℃に保つように、塔頂の還流比を調節した。塔頂から系外に留出した凝縮液を20℃に冷却し、デカンターに導いた。
【0089】
デカンター内で分離した2層のうち、上層のイソヘキサンを主成分とする層を蒸留塔の下から10段目に還流させた。メチルアルコールを主成分とする下層は、デカンターの分離界面が一定となるように連続的に取出した。取出した下層にはメチルアルコール以外にイソヘキサンが含まれていることから、反応系内におけるイソヘキサンの量が減少することを防止するために、取り出した下層に含まれているイソヘキサンと等量のイソヘキサンを反応系内に追加しながら反応温度を72〜82℃に調整した。アクリル酸メチルと2−メトキシエチルアルコールのエステル交換反応は、反応開始から約17時間で終了した。
【0090】
生成したアクリル酸2−メトキシエチルの収量は1040gであり(収率:94%)、反応溶液中のマイケル付加物の合計濃度は0.2質量%以下であった。また、反応の際に取出したメチルアルコールを主成分とする下層には、メチルアルコール55質量%およびイソヘキサン45質量%が含まれていたが、アクリル酸メチルは含まれていなかった。
【0091】
したがって、比較例3の方法は、アクリル酸メチルと2−メトキシエチルアルコールのエステル交換反応を行なうのに長時間を要することから、工業的生産性に劣ることがわかる。
【0092】
以上の結果より、各実施例によれば、原料として(メタ)アクリル酸メチルを用いてエステル交換法によって(メタ)アクリル酸エステルを製造する際に、イソヘキサンとシクロヘキサンとが併用されていることから、反応温度を高めることができるので、反応時間を短縮させることができることがわかる。さらに、各実施例によれば、反応系外に取り出されたメチルアルコールには、原料の(メタ)アクリル酸メチルがほとんど混入しないことから、当該メチルアルコールは、例えば、(メタ)アクリル酸メチルなどの化合物の原料、溶媒、燃料などとして効率よく利用することができることがわかる。