(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発熱判定部が、前記半導体基板の温度が所定値を超えたことを検出すると、前記制御回路は、前記発熱検知信号に応答して、前記制御回路への入力信号によらず、所定の信号を前記送信回路へ出力する、請求項11記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載ある場合を除き、必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態の図面において、同一の参照符号や参照番号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。また、実施の形態の説明において、同一の参照符号等を付した部分等に対しては、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0012】
<実施の形態1>
図1を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1および半導体装置LSI2を搭載した信号伝達モジュールMD1の構成を説明する。
【0013】
信号伝達モジュールMD1は、半導体装置LSI1および半導体装置LSI2の各チップを1つのパッケージに収納したSiP(System in Package)である。信号伝達モジュールMD1は複数のリード2を備える。リード2は、半導体装置LSI1および半導体装置LSI2に形成されたパッド3とボンディングワイヤ1で電気的に接続される。
【0014】
なお、半導体装置LSI1および半導体装置LSI2のパッド3とリード2との電気的接続手段はボンディングワイヤ1に限られず、適宜変更可能である。
図1において、符号3を付与していない同様の矩形パタンも、特に他の符号を付しているもの(P11、P12等)を除き、パッド3を示す。
【0015】
半導体装置LSI1は、交流結合素子であるオンチップトランスフォーマOCT1、送信回路TX1、受信回路RX1、制御回路CTL1、発熱判定部EDET1、低電圧保護回路UVLO、および温度モニタ部TS1を備える。オンチップトランスフォーマOCT1は、第1エレメントおよび第2エレメントのいずれか一方である1次側コイル(図示せず)と、第1エレメントおよび第2エレメントのいずれか他方である2次側コイル(図示せず)を備える。これらの回路には、リード2に印加される電源電圧GND1(例えば、0V)、および電源電圧VDD1(例えば、5V)が供給される。
【0016】
リード2に印加された信号In1は、ボンディングワイヤ1およびパッド3を介して制御回路CTL1に入力される。後述の通り、制御回路CTL1は、信号In1と、低電圧保護回路UVLOおよび発熱判定部EDET1の出力とに基づき生成した信号を送信回路TX1へ出力する。送信回路TX1は、信号In1に基づき、オンチップトランスフォーマOCT1の1次側コイルを電流駆動する。1次側コイルと磁気的に結合された2次側コイルの一端はパッドP11と、その他端はパッドP12と接続される。両パッド間には、電磁誘導による起電力が発生する。
【0017】
オンチップトランスフォーマOCT1近傍の半導体基板には、温度モニタ部TS1が形成される。後述の通り、温度モニタ部TS1はダイオードであり、そのアノードおよびカソードは、配線saおよび配線scと各々接続され、配線saおよび配線scは発熱判定部EDET1と接続される。オンチップトランスフォーマOCT1の1次側コイルと2次側コイル間の絶縁膜が高電圧で破壊されると、両コイル間の短絡電流に起因する異常発熱が発生する。温度モニタ部TS1は、この異常発熱による半導体基板の温度変化をダイオードの順方向電圧の変化に変換し、配線saを介して、発熱判定部EDET1へ出力する。以降、配線saの電圧を、温度モニタ信号saと記載する。
【0018】
半導体装置LSI2は、交流結合素子であるオンチップトランスフォーマOCT2、送信回路TX2、受信回路RX2、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)駆動回路DRV、IGBT過電流検知部OCD、IGBT過熱検知部OHD、低電圧保護回路UVLO、発熱判定部EDET2、および制御回路CTL2を備える。これら回路には、リード2に印加される電源電圧GND2(例えば、0〜500V)、および電源電圧VDD2(例えば、GND2+5V)が供給される。
【0019】
送信回路TX2はオンチップトランスフォーマOCT2の1次側コイル(図示せず)の電流を制御する。その1次側コイルと磁気的に結合された2次側コイル(図示せず)の一端はパッドP21と、その他端はパッドP22と接続される。受信回路RX2には、半導体装置LSI1のパッドP11およびパッドP12の電圧が印加される。IGBT駆動回路DRVは、受信回路RX2の出力に基づき、図示しないIGBTのゲートに駆動信号IGDrvを出力する。
【0020】
オンチップトランスフォーマOCT2近傍の半導体基板には、ダイオードである温度モニタ部TS2が形成される。ダイオードのアノードおよびカソードは、配線saおよび配線scと各々接続される。配線saおよび配線scは発熱判定部EDET2と接続される。温度モニタ部TS1と同様に、温度モニタ部TS2は、オンチップトランスフォーマOCT2における絶縁膜破壊に起因する異常発熱を検出し、温度モニタ信号saを発熱判定部EDET2へ出力する。
【0021】
IGBT過電流検知部OCDは、図示しないIGBTの電流モニタ回路で生成される信号Csenに基づき、IGBTの過電流発生有無を検出する。IGBT過熱検知部OHDは、図示しないIGBTの温度測定手段で生成される信号Tempに基づき、IGBTの異常過熱の有無を検出する。後述の通り、制御回路CTL2は、IGBT過電流検知部OCD、IGBT過熱検知部OHD、および低電圧保護回路UVLOの出力に基づき、送信回路TXおよびIGBT駆動回路DRVへ信号を出力する。
【0022】
図2を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1の回路構成を説明する。
送信回路TX1は、制御回路CTL1の出力信号に基づき、オンチップトランスフォーマOCT1の1次側コイルL11の駆動電流を生成する。その1次側コイルL11と磁気的に結合された2次側コイルL12の一端はパッドP11と、他端はパッドP12と接続される。受信回路RX1は、半導体装置LSI2のオンチップトランスフォーマOCT2の2次側コイルから出力される信号In11および信号In12に基づき、信号Rxo1を出力する。
【0023】
オンチップトランスフォーマOCT1の直下またはその近傍には、温度モニタ部TS1が配置される。温度モニタ部TS1の一端は配線saを介して発熱判定部EDET1と接続され、その他端には配線scを介して電源電圧GND1が印加される。半導体装置LSI1の電源パッドVDD1および電源パッドGND1には、各々、電源電圧VDD1および電源電圧GND1が印加される。
【0024】
発熱判定部EDET1は、温度モニタ信号saに基づき、オンチップトランスフォーマOCT1形成領域における異常発熱の発生を示す発熱検知信号Err1を出力する。異常発熱を検出した場合、発熱判定部EDET1は発熱検知信号Err1をロウレベル(電源電圧GND1)からハイレベル(電源電圧VDD1)に変化させる。低電圧保護回路UVLOは、電源電圧VDD1の電圧が所定値以下に低下した場合、その出力信号をロウレベルからハイレベルに変化させる。
【0025】
制御回路CTL1はゲート回路101で構成され、信号In1、信号Rxo1、低電圧保護回路UVLOの出力信号、および発熱検知信号Err1の論理演算(論理積)結果を送信回路TX1へ出力する。後述の通り、信号Rxo1は、半導体装置LSI2が駆動するIGBTの異常動作等の発生を示す信号である。従って、信号伝達モジュールMD1が正常に動作している場合、信号Rxo1、低電圧保護回路UVLOの出力信号、および発熱検知信号Errはいずれもロウレベルとなり、制御回路CTL1は、信号In1に基づき、送信回路TX1へ出力する信号を生成する。
【0026】
一方、オンチップトランスフォーマOCT1の1次側コイルL11および2次側コイルL12間の絶縁膜破壊、さらには両コイルの短絡により、オンチップトランスフォーマOCT1で異常過熱が発生した場合、発熱判定部EDET1は発熱検知信号Err1をハイレベルに設定する。この発熱検知信号Err1の変化に基づき、制御回路CTL1は送信回路TX1の動作を制御する。
【0027】
図3を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI2の回路構成を説明する。
送信回路TX2は、制御回路CTL2の出力信号Ct2に基づき、オンチップトランスフォーマOCT2の1次側コイルL21の駆動電流を生成する。その1次側コイルL21と磁気的に結合された2次側コイルL22の一端はパッドP21と、他端はパッドP22と接続される。受信回路RX2は、半導体装置LSI1のオンチップトランスフォーマOCT1の2次側コイルから出力される信号In21および信号In22に基づき、信号Rxo2を出力する。この信号Rxo2に基づき、IGBT駆動回路DRVは、図示しないIGBTのゲートに駆動信号IGDrvを出力する。オンチップトランスフォーマOCT2の直下またはその近傍には、温度モニタ部TS2が配置される。温度モニタ部TS2の一端は配線saを介して発熱判定部EDET2と接続され、その他端には配線scを介して電源電圧GND2が印加される。
【0028】
IGBT駆動回路DRVの近傍には、温度検知部30が配置される。温度検知部30は、IGBT駆動回路DRVの出力段近傍の温度を検出する。IGBT駆動回路DRVの駆動電流が過度に増加し、半導体基板の温度が所定値を超えた場合、制御回路CTL2は、半導体装置LSI2をシャットダウンさせる。このシャットダウンにより、半導体装置LSI2の熱破壊が事前に回避される。
【0029】
発熱判定部EDET2は、温度モニタ信号saに基づき、オンチップトランスフォーマOCT2形成領域における異常発熱の発生を示す発熱検知信号Err2を出力する。異常発熱を検出した場合、発熱判定部EDET2は発熱検知信号Err2をロウレベル(電源電圧GND2)からハイレベル(電源電圧VDD2)に変化させる。過電流検知部OCDは、IGBTのエミッタ電流モニタ回路(図示せず)からの出力信号Docdに基づき、IGBTにおける過電流発生を検知し、その出力信号をロウレベルからハイレベルに変化させる。過熱検知部OHDは、IGBTの温度モニタ回路(図示せず)からの出力信号Dohdに基づき、IGBTにおける異常温度上昇を検知し、その出力信号をロウレベルからハイレベルに変化させる。低電圧保護回路UVLOは、電源電圧VDD2が所定値以下に低下した場合、その出力信号をロウレベルからハイレベルに変化させる。
【0030】
制御回路CTL2はゲート回路201で構成され、発熱検知信号Err2、過電流検知部OCDの出力、過熱検知部OHDの出力、および低電圧保護回路UVLOの出力の論理演算(論理和)結果である信号Ct2を、送信回路TX2とIGBT駆動回路DRVへ出力する。半導体装置LSI2を搭載する信号伝達モジュールMD1が駆動するIGBTにおいて、何らかの原因で過電流や異常過熱が検出された場合、制御回路CTL2は信号Ct2により、IGBT駆動回路DRVを制御するとともに、その異常発生を送信回路TX2およびオンチップトランスフォーマOCT2を介して、半導体装置LSI1へ通知する。
【0031】
図4を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1が備える温度モニタ部TS1の構成を説明する。
【0032】
図4(a)は、温度モニタ部TS1の平面配置図である。温度モニタ部TS1は、半導体基板に形成された複数のpn接合ダイオード(温度検出素子)で構成され、各pn接合ダイオードはアノード(p型不純物領域)Aとカソード(n型不純物領域)Cを有する。
図4(a)では、横型pn接合ダイオードの構造が示されているが、半導体基板に形成されたn型不純物領域(カソード)にp型不純物領域(アノード)を形成した縦型pn接合ダイオードとしても良い。
【0033】
後述の通り、オンチップトランスフォーマOCT1の直下にはpn接合ダイオードDu1〜Du8が、その中心部にはpn接合ダイオードDcが、その外周部にはpn接合ダイオードDoが、形成される。pn接合ダイオードDu1〜Du8、およびDcの各アノードAは配線sa1と接続され、各カソードCは配線sc1と接続される。pn接合ダイオードDoのアノードAおよびカソードCは、各々、配線sa2および配線sc2と接続される。配線sa1、配線sc1、配線sa2、配線sc2、配線tx11、配線tx12、配線sld1、および配線sld2は、例えば、第1配線層で形成される。
【0034】
図4(b)は、
図4(a)に示す温度モニタ部TS1の等価回路図である。pn接合ダイオードDu1〜Du8、およびpn接合ダイオードDcは、第1系統の配線sa1および配線sc1間に並列接続され、pn接合ダイオードDoは、第2系統の配線sa2および配線sc2と接続される。
【0035】
図5を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1が備えるオンチップトランスフォーマOCT1の構成を説明する。
【0036】
オンチップトランスフォーマOCT1は、半導体基板上に、下層配線層と上層配線層で各々コイルを形成し、両コイルを層間絶縁膜で絶縁分離した構成を有する。
図5(a)は、オンチップトランスフォーマOCT1の1次側コイルL11となる下層配線層パタンを示し、例えば、第2配線層で形成される。1次側コイルL11の両端は、配線tx11および配線tx12(図示せず)を介して、送信回路TX1と接続される。1次側コイルL11の中央部にはシールド層S1が形成される。1次側コイルL11の外周部には、シールド層S2およびシールド層S3が形成される。
【0037】
オンチップトランスフォーマOCT1とは別に、第2配線層で、配線sa12、配線sc12、および配線sld12が形成される。破線の矩形で囲まれる各配線の両端部における層間絶縁膜には、第1配線層と接続するためのビアホールv12が各々形成される。シールド層S2は、ビアホールv12を介して、配線sld2(
図4(b)参照)と接続される。シールド層S1およびシールド層S3は、各ビアホールv12を介して、いずれも配線sld1と接続される。
【0038】
図5(b)は、オンチップトランスフォーマOCT1の2次側コイルL12となる上層配線層パタンであり、例えば、第5配線層で形成される。2次側コイルL12の一端は、その中央部に第5配線層で形成されたパッドP11と接続され、その他端は、2次側コイルL12の外周部に第5配線層で形成されたパッドP12と接続される。シールド層S1およびシールド層S2は、各々、パッドP11およびパッドP12と重なるように形成される。
【0039】
図6を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1が備える温度モニタ部TS1およびオンチップトランスフォーマOCT1の配置関係を説明する。
【0040】
図6(a)は、第1配線層と、オンチップトランスフォーマOCT1の1次側コイルL11を形成する第2配線層とを重ねた平面図である。シールド層S1およびシールド層S3は、ビアホールv12を介して、ともに配線sld1と接続される。シールド層S2は、ビアホールv12を介して、配線sld2と接続される。配線sld1および配線sld2は、ビアホールv12を介して、電源電圧GND1が印加された配線sld12と接続される。即ち、シールド層S1〜S3には電源電圧GND1が印加される。
【0041】
配線sa12とビアホールv12を介して接続された配線sa1および配線sa2は、ともに配線saと接続される。配線sc12とビアホールv12を介して接続された配線sc1および配線sc2は、ともに配線scと接続される。配線saは発熱判定部EDET1と接続され、配線scには電源電圧GND1が印加される。
【0042】
図6(b)は、温度モニタ部TS1を構成する各pn接合ダイオードとシールド層S1〜S3との配置関係を示す。シールド層S1は、オンチップトランスフォーマOCT1の中央部に形成されているpn接合ダイオードDcと、それに接続される配線sa1および配線sc1とを覆うように形成される。シールド層S2は、1次側コイルL11の外周部に配置されるダイオードDoと、それに接続される配線sa2および配線sc2とを覆うように形成される。シールド層S3は、オンチップトランスフォーマOCT1近傍の配線sa1、配線sc1、配線tx11、および配線tx12(いずれも、第1配線層で形成される)を覆うように配置される。
【0043】
図7を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1が備える温度モニタ部TS1およびオンチップトランスフォーマOCT1のX−X’方向の断面図を説明する。
【0044】
図7(a)は、温度モニタ部TS1を備える半導体基板上に形成したオンチップトランスフォーマOCT1の平面図である。第5配線層で形成した2次側コイルL12、パッドP11、およびパッドP12と、第2配線層で形成した1次側コイルL11およびシールド層S1〜S3とが示されている。
【0045】
図7(b)は、
図7(a)のX−X’における断面図を示す。pn接合ダイオードDu4およびpn接合ダイオードDu8は、オンチップトランスフォーマOCT1の直下領域の半導体基板Subに形成される。pn接合ダイオードDcは、オンチップトランスフォーマOCT1形成領域で囲まれた中央部の半導体基板Subに形成される。各pn接合ダイオードは、アノードAおよびカソードCを有する。各アノードAおよびカソードCは、コンタクトcntを介して、各々、第1配線層M1で形成された配線sa1および配線sc1と接続される。なお、
図7(b)のX−X’の断面図には、各pn接合ダイオードの位置および方向の関係で、配線sa1やコンタクトcntが現れないものもある。
【0046】
第1配線層M1の上層には、絶縁層を挟んで第2配線層M2が形成される。オンチップトランスフォーマOCT1の1次側コイルL11、シールド層S1、およびシールド層S3は第2配線層M2で形成される。1次側コイルL11はビアホールv12を介して、送信回路TX1の駆動電流を流す第1配線層で形成される配線tx12と接続される。シールド層S1は、pn接合ダイオードDcのアノードAと接続される配線sa1を覆うように形成される。シールド層S3は、オンチップトランスフォーマOCT1近傍の配線sa1、配線sc1、配線tx11、および配線tx12を覆うように形成される。
【0047】
第2配線層M2の上層には、絶縁層を挟んで、第5配線層M5により、オンチップトランスフォーマOCT1の2次側コイルL12、およびパッドP11が形成される。オンチップトランスフォーマOCT1は、その直径はおよそ300μmで、半導体基板Subからおよそ5〜30μmの高さに形成される。なお、
図7(b)において、第1配線層M1および第2配線層M2間の絶縁層と、第2配線層M2および第5配線層M5間の絶縁層は、特に、明示されていないが、各配線層間に、適宜選択された材質、膜厚、製法により形成される。
【0048】
図8を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1が備える温度モニタ部TS1およびオンチップトランスフォーマOCT1のY−Y’方向の断面図を説明する。
【0049】
図8(a)は、
図7(a)と同一の平面図である。
図8(b)は、
図8(a)のY−Y’における断面図を示す。オンチップトランスフォーマOCT1の直下領域のpn接合ダイオードDu2およびpn接合ダイオードDu6と、その中央部のpn接合ダイオードDcと、その外周部のpn接合ダイオードDoとが、半導体基板Subに形成されている様子が示される。各pn接合ダイオードのアノードAおよびカソードCは、コンタクトcntを介して、第1配線層M1で形成された配線sa1および配線sc1と各々接続される。
【0050】
第1配線層M1の上層には、絶縁層を挟んで第2配線層M2が形成される。オンチップトランスフォーマOCT1の1次側コイルL11、シールド層S1、およびシールド層S2は第2配線層M2で形成される。シールド層S1は、pn接合ダイオードDcと接続される配線sa1および配線sc1を覆うように形成され、シールド層S2は、pn接合ダイオードDoと接続される配線sa2および配線sc2を覆うように形成される。第2配線層M2の上層には、絶縁層を挟んで第5配線層M5により、オンチップトランスフォーマOCT1の2次側コイルL12、パッドP11、およびパッドP12が形成される。
【0051】
オンチップトランスフォーマOCT1の直下領域、中央部、および外周部には、pn接合ダイオードDu2等、pn接合ダイオードDc、およびpn接合ダイオードDoが、各々配置される。直下領域とは、1次側コイルL11または2次側コイルL12が形成されている直下における半導体基板の領域である。中央部とは、直下領域で囲まれている半導体基板における領域である。外周部とは、直下領域の外周部の領域である。中央部および外周部を総称して、オンチップトランスフォーマOCT1の隣接領域とする。
【0052】
後述の通り、1次側コイルL11および2次側コイルL12間に高電圧を長時間印加し続けると、両コイル間を絶縁する絶縁膜が破壊される場合がある。絶縁膜が破壊されると、その破壊箇所では、1次側コイルL11および2次側コイルL12間の短絡電流が発生する。短絡電流の発生は、絶縁膜の破壊箇所およびその近傍における半導体基板の急激な温度上昇をもたらす。pn接合ダイオードDoおよびpn接合ダイオードDcは、隣接領域に配置される。隣接領域に配置されたpn接合ダイオードDoおよびpn接合ダイオードDcは、直下領域に配置されたpn接合ダイオードDu2等とほぼ同時刻に、この短絡電流に起因する半導体基板の急激な温度上昇を検出する。
【0053】
図9を参照して、発明者が検討した、オンチップトランスフォーマのコイル間で絶縁破壊が発生した場合の絶縁抵抗値の時間的変化を説明する。
【0054】
横軸は任意スケールの時刻を示し、縦軸は1次側コイルと2次側コイル間の絶縁膜の抵抗値を示す。パッドと接続されている2次側コイルにサージ電圧が印加されると、絶縁膜は劣化する場合がある。劣化する前の正常な絶縁膜の抵抗は1GΩ以上で、リーク電流は1μA以下である。絶縁膜が劣化した状態で1次側コイルと2次側コイル間に高電圧を長時間印加し続けると、次第に絶縁膜の抵抗値は低下し、リーク電流が徐々に増加する。例えば、抵抗値が100kΩまで低下している絶縁膜に500Vの電圧を印加した場合、500V÷100kΩ=5mAの電流が流れ、絶縁膜での発熱量は500V*5mA=2.5Wとなる。ここで、記号”÷”は除算を、記号”*”は乗算を意味する。
【0055】
チップ内の局所的なエリアで2.5Wの発熱が発生すると、直近エリアの温度は、数10ms後には150℃に達する(時刻t1)。その後、絶縁膜の抵抗値が1kΩまで低下した場合は、絶縁膜に流れる電流は0.5A、絶縁膜の発熱量は250Wに達する。この場合、チップ温度は瞬時に150℃以上に達するが、0.5A程度の電流は、電源回路等のチップに搭載される周辺回路を焼損させる程ではない。従って、温度モニタ部TS1で半導体基板Subの温度を測定することにより(時刻t2)、絶縁膜の破壊を検出することが可能となる。
【0056】
さらに時刻が経過すると、絶縁膜の絶縁破壊が進行してその抵抗値は低下し続け、絶縁膜を介して周辺回路に流れる電流は数10Aから数百Aに達する(時刻t3)。このような大電流が、オンチップトランスフォーマを搭載した半導体装置からプリント基板に搭載されている他の電子回路に流れると、焼損や発火を引き起こす電子回路が現れる危険性が懸念される。
【0057】
それに対し、時刻t2で温度モニタ部TS1で絶縁破壊を検出し、その検出した時点で高電圧源の遮断等の制御を行うことにより、時刻t3でプリント基板に搭載された電子回路の焼損が発生する前に、システムを安全停止させることが可能となる。時刻t2から時刻t3までの時間は数ms〜数10ms程度と見込まれる。絶縁破壊検出(時刻t2)から数msの時間があれば、
図1の信号伝達モジュールMD1でIGBTをオフさせるようにゲート電圧を制御することが可能であり、さらに、数10msの時間があれば、IGBTと高電圧源を接続する機械式リレーをオフさせることが可能となる。
【0058】
図10を参照して、発明者が検討した、絶縁破壊箇所で発生した熱の伝達時間を説明する。
【0059】
図10(a)は、熱の伝達時間を概算するために想定した、一辺が3mm角の正方形で、厚さが200μmのシリコン基板(チップ)を示す。チップの重量は、3mm*3mm*0.2mm*2.33mg/mm
3(シリコンの密度)=4.2mg、となる。シリコンの比熱は0.7J/g℃である。従って、チップの熱容量は、0.7J/g℃*4.2mg=2.94mJ/℃、となる。
【0060】
図10(b)は、チップ上の2か所における接合温度Tjの時間的変化を示す。直線120は、チップの熱抵抗を考慮しない場合(熱は瞬時にチップ内に拡散し、チップ内温度は場所によらず一様に変化する)のチップ温度の時間的変化を示す。時刻0msにチップが10Wで発熱し、そのチップの熱が空中に放出されない場合、室温(25℃)から150℃までのチップの過熱時間を検討する。10W(500V、20mA)発熱時の温度上昇率は、10J/s÷2.94mJ/℃=3.4℃/ms、となる。従って、チップを25℃から150℃まで過熱する時間は、125℃÷3.4℃/ms=36ms、となる(直線120)。実際には、温度が高くなるほど空中への放熱量が多くなるため、チップの温度は高温になるほど緩やかに上昇し、発熱量と放熱量が平衡する温度に維持される。
【0061】
一方、チップの熱抵抗を考慮した場合、熱がチップ内で拡散するにはある程度の時間を要する。従って、発熱する絶縁破壊箇所(熱源)の近くでは温度上昇の傾きは急峻になり(直線121)、熱源から離れた場所では温度上昇の傾きは緩やかになる(直線122)。例えば、直線121に示される通り、時刻0msに熱源で10Wの発熱が発生した場合、10ms程度経過後には、その熱源に近い場所では接合温度Tjは150℃に達する。また、直線122に示される通り、熱源から遠い場所では接合温度Tjが150℃に達するには、100ms程度の時間を要する。
【0062】
従って、絶縁破壊箇所における急激な温度上昇を速やかに検出するために、温度モニタ部TS1を、絶縁破壊箇所となるオンチップトランスフォーマOCT1の直下領域、または隣接領域に配置することが好ましい。一方、オンチップトランスフォーマOCT1および発熱判定部EDET1間の距離は、オンチップトランスフォーマOCT1および温度モニタ部TS1間の距離よりも大きく設定することが好ましい。チップの温度上昇は、発熱源である絶縁破壊箇所から離れるに従い、絶縁破壊発生時刻から遅れて発生する。発熱源の近くに温度モニタ部TS1を配置し、発熱源から離れた位置に発熱判定部EDET1を配置する。この配置により、発熱判定部EDET1は、接合温度Tjが150℃に達するまでの遅延時間(数10msから数100ms)内に、動作保証温度に維持された条件下で、発熱検知信号Err1を正常に出力することが可能となる。
【0063】
図11を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1が備える温度モニタ部TS1(シールド層無し)、および発熱判定部EDET1による異常過熱検出のメカニズムを説明する。
【0064】
図11(a)は、
図6(b)に示すオンチップトランスフォーマOCT1、および温度モニタ部TS1の等価回路と、
図2に示す送信回路TX1および発熱判定部EDET1との接続関係を示す。但し、
図11(a)では、オンチップトランスフォーマOCT1が、
図6(b)に示すシールド層S1〜S3を備えていない場合を想定している。その結果、両シールド層に電源電圧GND1を供給する配線sld1、配線sld2、および配線sld12の配線パタンは削除されている。
【0065】
オンチップトランスフォーマOCT1の1次側コイルL11の両端には、配線tx11および配線tx12を介して、送信回路TX1の駆動電流が印加される。2次側コイルL12の両端には、パッドP11およびパッドP12が接続される。第1系統の配線sa1および配線sc1間に並列接続されるpn接合ダイオードと、第2系統の配線sa2および配線sc2に接続されるpn接合ダイオードとは、配線sa12および配線sc12を介して、さらに並列接続される。温度モニタ部TS1が有する全てのpn接合ダイオードのアノードおよびカソードは、各々、配線saおよび配線scと接続される。温度モニタ信号saは発熱判定部EDET1に入力され、配線scには電源電圧GND1が印加される。
【0066】
図11(b)は、
図7(b)に示すシールド層S1およびシールド層S3を備えていない場合の構成に対応する。オンチップトランスフォーマOCT1の1次側コイルL11および2次側コイルL12間の絶縁膜が破壊された場合、両コイルは絶縁抵抗Rinsで接続された状態に近似される。焼損箇所の絶縁抵抗Rinsの値は、数kΩオーダー以下と考えられる。この焼損箇所で発生する異常発熱により、pn接合ダイオードDu4が形成される領域を中心に半導体基板Subの温度が上昇し、pn接合ダイオードDu4およびその近傍に配置されたpn接合ダイオードの順方向電圧が低下する。
【0067】
焼損箇所の異常発熱によりpn接合ダイオードDu4のアノードおよびカソードと接続される配線sa1および配線sc1が熔断した場合は、その隣に配置されるpn接合ダイオードDu3〜Du1やpn接合ダイオードDoにより、半導体基板Subの急激な温度上昇が検出される。一組の配線sa1および配線sc1の一部が熔断した場合であっても、その熔断箇所と発熱判定部EDET1間の配線sa1および配線sc1間に並列接続されているダイオードにより、半導体基板Subの温度上昇を示す情報(ダイオードの順方向電圧の減少)は発熱判定部EDET1に出力される。発熱判定部EDET1は、複数並列接続されたpn接合ダイオードの順方向電圧(温度モニタ信号sa)と基準電圧とを比較し、異常発熱の発生を示す発熱検知信号Err1を出力する。
【0068】
図12を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1が備える温度モニタ部TS1(シールド層有り)、および発熱判定部EDET1による異常検出のメカニズムを説明する。
【0069】
図12(a)は、
図6(b)に示すオンチップトランスフォーマOCT1(シールド層S1〜S3、および配線sld12を備える)、および温度モニタ部TS1の等価回路と、
図2に示す送信回路TX1および発熱判定部EDET1との接続関係を示す。
図12(b)に示す通り、pn接合ダイオードDu4の配置領域上部で絶縁膜が破壊された場合、短絡電流は、2次側コイルL12と1次側コイルL11間の絶縁抵抗Rinsと、2次側コイルL12とシールド層S1間の絶縁抵抗Rsldに流れる。シールド層S1に流れた短絡電流が電源配線GND1に流出することで、シールド層S1で覆われている配線sa1および配線sc1と、2次側コイルL12との短絡を回避することが可能となる。
【0070】
同様に、短絡電流を2次側コイルL12からシールド層S2またはシールド層S3を介して電源配線GND1へ流出させることで、それぞれのシールド層で覆われている第1配線層の配線と2次側コイルL12との短絡を回避することが可能となる。この結果、オンチップトランスフォーマOCT1の絶縁膜破壊に伴う異常発熱の検出が可能となる。
【0071】
温度モニタ部TS1は、
図11(a)に示す通り、第1系統の配線sa1および配線sc1間に並列接続されるpn接合ダイオードDu1〜Du8およびDcと、第2系統の配線sa2および配線sc2に接続されるpn接合ダイオードDoで構成される。全てのpn接合ダイオードは、配線sa12および配線sc12を介してさらに並列接続される。並列接続されたpn接合ダイオードのアノードの電圧である温度モニタ信号saは、発熱判定部EDET1に入力される。一方、並列接続されたpn接合ダイオードのカソードには、配線scにより電源電圧GND1が印加される。
【0072】
図11および
図12を参照しての説明の通り、オンチップトランスフォーマOCT1で絶縁膜破壊が発生すると、1次側コイルと2次側コイル間や、両コイル周辺部で異常発熱が発生する。従って、温度検出素子であるpn接合ダイオードは、オンチップトランスフォーマOCT1の形成領域直下(pn接合ダイオードDu1〜Du8)、その中心部(Dc)、またはその周辺部(Do)に配置することが好ましい。さらに、オンチップトランスフォーマOCT1の直径は数百μmあるため、絶縁破壊の発生箇所を予測することが困難である。また、絶縁破壊の発生箇所によっては、発熱源から数百μmの絶縁膜(シリコン酸化膜)を伝搬する熱を検出することになるため、異常発熱の検出に時間がかかる場合がある。従って、温度検出素子は複数配置することが好ましい。
【0073】
温度検出素子であるpn接合ダイオードを複数配置する際、各pn接合ダイオードを並列接続することが好ましい。例えば、オンチップトランスフォーマOCT1の直下および中央部に配置されているpn接合ダイオードDu1〜Du8およびDcは、配線sa1と配線sc1で並列接続される。pn接合ダイオードを並列接続することにより、短絡電流により配線sa1または配線sc1が熔断した場合であっても、その熔断箇所と発熱判定部EDET1との間に接続されているpn接合ダイオードで温度モニタ信号saを生成することが可能となる。
【0074】
温度モニタ部TS1は、複数系統の配線に接続した温度検出素子で構成することが好ましい。
図11や
図12に示す温度モニタ部TS1は、第1系統の配線sa1および配線sc1と、第2系統の配線sa2および配線sc2に接続されたpn接合ダイオードを有する。ここで、配線の系統が異なるとは、第1群のpn接合ダイオードのアノードおよびカソードと接続される第1配線層と、第2群のpn接合ダイオードのアノードおよびカソードと接続される第1配線層とが、その第1配線層では分離して形成されていることを意味する。絶縁破壊の発生箇所近傍に配置されるpn接合ダイオードのアノードおよびカソードと接続される第1配線層は、異常発熱による熔断の危険性が大きい。従って、第1配線層の熔断による温度モニタ部TS1の機能低下、さらには機能喪失を防止するため、アノードおよびカソードと接続される配線を複数系統に分散させることが好ましい。
【0075】
図13を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1が備える発熱判定部EDET1の詳細について説明する。
【0076】
図13は、
図11(a)に示す温度モニタ部TS1が出力する温度モニタ信号saに基づいて、発熱検知信号Err1を出力する発熱判定部EDET1の詳細な回路図を示す。発熱判定部EDET1は、リファレンス電圧Vrefを生成する基準電圧生成回路REF、コンパレータCMP、定電流源CC1を有する。コンパレータCMPのマイナス側入力端子には温度モニタ信号saが入力され、そのプラス側入力端子にはリファレンス電圧Vrefが入力される。
【0077】
コンパレータCMPは、温度モニタ信号saとリファレンス電圧Vrefとの比較結果に基づき、発熱検知信号Err1をパッド3に出力する。温度モニタ信号saの電圧がリファレンス電圧Vrefより大きい場合は発熱検知信号Err1はロウレベルに、温度モニタ信号saの電圧がリファレンス電圧Vrefより小さい場合はハイレベルに設定される。定電流源CC1は、温度モニタ部TS1を構成する各pn接合ダイオードへ順方向電流を供給する。
【0078】
電源配線VL1および電源配線GL1は、発熱判定部EDET1へ、電源電圧VDD1および電源電圧GND1を供給する。一方、電源配線VL2および電源配線GL2は、送信回路TX1へ電源電圧VDD1および電源電圧GND1を供給する。これらの電源配線VL1および電源配線VL2は電源パッドVDD1から枝分かれさせて形成するか、電源パッドVDD1に近い部分で枝分かれさせて形成することが望ましい。電源配線GL1および電源配線GL2の形状も同様である。
【0079】
発熱判定部EDET1は、負の温度特性(−2mV/℃程度)を有するpn接合ダイオードの順方向電圧と、リファレンス電圧Vrefとを比較し、オンチップトランスフォーマOCT1直下領域または隣接領域における異常な温度上昇を検出する。リファレンス電圧Vrefの値は、半導体装置の動作保証温度の最大値として一般的な125℃〜150℃における温度モニタ部TS1のpn接合ダイオードの順方向電圧値を検出可能な値に設定することが好ましい。
【0080】
同一チップ内に、発熱判定部EDET1に加えて、他のTSD(Thermal Shut Down)機能を有する過熱保護回路を搭載している場合、発熱判定部EDET1で設定するリファレンス電圧Vrefの値は、他のTSD機能を有する過熱保護回路で設定するリファレンス電圧よりも高い値に設定することが好ましい。例えば、
図3に示す半導体装置LSI2において、温度検知部30で設定する基準電圧よりも、発熱判定部EDET2で設定するリファレンス電圧を高く設定する。各リファレンス電圧を上述のように設定することで、半導体装置LSI2は、温度検知部30の保証温度範囲において正常に動作する。
【0081】
例えば、定電流源CC1が、温度モニタ部TS1を構成する10個のpn接合ダイオード(Du1〜Du8、Dc、Do)に100μA程度の電流を供給している場合、室温(25℃)では、各ダイオードの順方向電圧は0.7V程度となる。オンチップトランスフォーマOCT1の絶縁破壊により絶縁膜の温度が室温から200℃まで上昇すると、温度モニタ部TS1を構成する少なくとも1つのpn接合ダイオードの順方向電圧は、450mVまで減少する。従って、コンパレータCMPのプラス側入力端子に印加するリファレンス電圧Vrefを0.5Vと設定することにより、発熱検知信号Err1はロウレベルからハイレベルに変化し、異常温度上昇の検出が可能となる。
【0082】
図14を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1が備える発熱判定部EDET1、温度モニタ部TS1、および送信回路TX1と接続される電源配線の構成について説明する。
【0083】
図14(a)は、発熱判定部EDET1、温度モニタ部TS1、送信回路TX1、およびオンチップトランスフォーマOCT1の各回路に電源電圧を供給するための、好ましい電源配線の構成を示す。
【0084】
オンチップトランスフォーマOCT1の2次側コイルL12は、パッドP11とパッドP12間に接続される。1次側コイルL11の一端は送信回路TX1のハイサイドp型トランジスタM11のドレインと接続され、その他端は送信回路TX1のロウサイドn型トランジスタM12のドレインと接続される。p型トランジスタM11のソースには、電源配線VL2により、電源電圧VDD1が印加される。n型トランジスタM12のソースには、電源配線GL2により、電源電圧GND1が印加される。
【0085】
1次側コイルL11と2次側コイルL12間には±500V前後の高電圧が印加され、両コイル間で絶縁破壊が発生した場合、両コイル間に短絡電流が発生する。1次側コイルL11の電圧に対して2次側コイルL12の電圧が+500Vの場合、短絡電流Iins1は、2次側コイルL12から、1次側コイルL12およびp型トランジスタM11のドレイン−ソース間の寄生ダイオードDp11を経由して、電源配線VL2(通常5V)に流れ込む。この短絡電流Iins1と電源配線VL2の寄生配線抵抗RVL2により、電源配線VL2の電圧は、電源パッドVDD1から離れる程、大きく変動する。
【0086】
同様に、1次側コイルL11の電圧に対して2次側コイルL12の電圧が−500Vの場合、短絡電流Iins2は、電源配線GL2から、n型トランジスタM12のソース−ドレイン間の寄生ダイオードDp12および1次側コイルを経由して、2次側コイルL12に流れ出す。この短絡電流Iins2と電源配線GL2の寄生配線抵抗RGL2により、電源配線GL2の電圧は、電源パッドGND1から離れる程、大きく変動する。
【0087】
オンチップトランスフォーマOCT1の絶縁破壊に起因するこの電源配線VL2および電源配線GL2の電圧変動は、その絶縁破壊を検出する発熱判定部EDET1の動作に悪影響を及ぼすことが懸念される。そこで、発熱判定部EDET1を、電源パッドVDD1および電源パッドGND1の近くに配置する構成が好ましい。この構成により、発熱判定部EDET1に供給される電源電圧VDD1および電源電圧GND1が、オンチップトランスフォーマOCTで発生した短絡電流による電圧変動の影響を受けにくくなる。
【0088】
さらに、発熱判定部EDET1が有するコンパレータCMPに電源電圧を供給する電源配線の寄生抵抗は、送信回路TX1に電源電圧を供給する電源配線の寄生抵抗よりも小さく設定することが好ましい。各電源配線の構造(幅、厚さ、および材質等)が同一の場合、
図14(a)に示される通り、電源パッドGND1からコンパレータCMPに電源電圧GND1を供給する電源配線の長さlgcmpを、電源パッドGND1から送信回路TX1に電源電圧GND1を供給する電源配線の長さlgtxより、小さく設定することが好ましい。より具体的には、長さlgtxは、電源パッドGND1と送信回路TX1のロウサイドn型トランジスタM12のソースとの距離である。
【0089】
同様に、
図14(a)に示される通り、電源パッドVDD1からコンパレータCMPに電源電圧VDD1を供給する電源配線の長さldcmpを、電源パッドVDD1から送信回路TX1に電源電圧VDD1を供給する電源配線の長さldtxより、小さく設定することが望ましい。より具体的には、長さldtxは、電源パッドVDD1と送信回路TX1のハイサイドp型トランジスタM11のソースとの距離である。各電源配線の構造が異なる場合は、上記長さの大小関係を各電源配線の寄生抵抗値の大小関係と読み替える。
【0090】
さらに、温度モニタ部TS1を構成するpn接合ダイオードのカソードと接続される配線scは、送信回路TX1に電源電圧GND1を供給する電源配線GL2と接続せず、発熱判定部EDET1に電源電圧GND1を供給する電源配線GL1と接続することが好ましい。
図14(b)に示すように、温度モニタ部TS1の配線scを、オンチップトランスフォーマOCT1近傍の電源配線GL2(例えば、送信回路TX2近傍)と接続した場合、配線scの電圧変動は配線sa、即ち、温度モニタ信号saの電圧変動として現れる。発熱判定部EDET1は、温度モニタ信号saの数百mVの電圧変化を検出して発熱検知信号Err1を生成するため、この配線scの電源変動は極力抑制する必要がある。
【0091】
半導体装置LSI1において、オンチップトランスフォーマOCT1の1次側コイルL11と接続される送信回路TX1、温度モニタ部TS1、および発熱判定部EDET1に電源電圧を供給する電源配線の好ましい構成は上記の通りである。この電源配線の構成を、半導体装置LSI2(
図3)に対しても適用することが好ましい。
【0092】
図15を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1および半導体装置LSI2における温度モニタ部TS1および温度モニタ部TS2の配置を説明する。
【0093】
半導体装置LSI1において、オンチップトランスフォーマOCT1および発熱判定部EDET1間の距離Loe1は、オンチップトランスフォーマOCT1および温度モニタ部TS1間の距離Los1よりも、大きく設定される。オンチップトランスフォーマOCT1の絶縁膜破壊に起因する異常発熱を極力早期に検出するため、温度モニタ部TS1は、絶縁破壊時の発熱源となるオンチップトランスフォーマOCT1の直下領域、または隣接領域(中心部、またはその周辺部)に配置される。一方、オンチップトランスフォーマOCT1の短絡電流に起因するチップの異常温度上昇の悪影響を低減させるため、発熱判定部EDET1は、オンチップトランスフォーマOCT1から、できるだけ離して配置される。さらに、短絡電流による電源配線に発生するノイズの影響を抑制するため、発熱判定部EDET1は、電源パッドVDD1および電源パッドGNG1の近くに配置される。
【0094】
半導体装置LSI2において、オンチップトランスフォーマOCT2および発熱判定部EDET2間の距離Loe2は、オンチップトランスフォーマOCT2および温度モニタ部TS2間の距離Los2よりも、大きく設定される。オンチップトランスフォーマOCT2の絶縁膜破壊に起因する異常発熱を極力早期に検出するため、温度モニタ部TS2は、絶縁破壊時の発熱源となるオンチップトランスフォーマOCT2の直下領域、または隣接領域(中心部、またはその周辺部)に配置される。一方、オンチップトランスフォーマOCT2の短絡電流に起因するチップの異常温度上昇の悪影響を低減させるため、発熱判定部EDET2は、オンチップトランスフォーマOCT2から、できるだけ離して配置される。さらに、短絡電流による電源配線に発生するノイズの影響を抑制するため、発熱判定部EDET2は、電源パッドVDD2および電源パッドGNG2の近くに配置される。
【0095】
図16を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1が備える発熱判定部EDET1が有する基準電圧生成回路REFの具体例を説明する。
【0096】
図16(a)は、基準電圧生成回路REFとして、バンドギャップリファレンス回路BGRを適用した例を示す。バンドギャップリファレンス回路BGRが生成するチップの温度に依存しない固定電圧Vrefを、コンパレータCMPのプラス側入力端子に印加する。コンパレータCMPは、絶対温度(例えば、175℃)に対応した固定電圧と、定電流源CC1の順方向電流I1印加時の温度モニタ部TS1が出力する温度モニタ信号saとを比較し、オンチップトランスフォーマOCT1の直下領域または隣接領域に配置されたpn接合ダイオードの接合温度が175℃を超えた場合、ハイレベルの発熱検知信号Err1を出力する。なお、
図16は回路図を示すが、オンチップトランスフォーマOCT1は、斜視図で表現されたコイルとして、模式的に示されている。
【0097】
図16(b)は、基準電圧生成回路REFを、順方向電流I1−αを生成するリファレンス定電流源CCRと、その順方向電流I1−αが供給されるリファレンス温度検出素子TSRで構成した例である。コンパレータCMPのプラス側入力端子には、リファレンス温度検出素子TSRの順方向電圧が印加される。マイナス側入力端子には、定電流源CC1の順方向電流I1印加時の温度モニタ部TS1が出力する温度モニタ信号saが印加される。コンパレータCMPは両者を比較し、発熱検知信号Err1を生成する。
【0098】
リファレンス温度検出素子TSRは、チップ内で、温度モニタ部TS1の配置領域から離して配置される。つまり、異常発熱源となるオンチップトランスフォーマOCT1と温度モニタ部TS1間の距離よりも、オンチップトランスフォーマOCT1とリファレンス温度検出素子TSR間の距離を大きくする。例えば、リファレンス温度検出素子TSRをコンパレータCMPと隣接させて配置しても良い。リファレンス温度検出素子TSRで検出した温度よりも温度モニタ部TS1で検出した温度が、例えば、50℃以上高くなった場合、コンパレータCMPはハイレベルの発熱検知信号Err1を出力する。温度モニタ信号saと、リファレンス温度検出素子TSRの順方向電圧とを比較することで、バンドギャップリファレンス回路等の電圧生成回路が不要となり、回路の簡素化やチップ面積削減に効果がある。
【0099】
温度モニタ部TS1に印加する順方向電流I1の値よりも、リファレンス温度検出素子TSRに印加する順方向電流をαだけ減少させたI1−αとすることで、検出する温度差に対応した、コンパレータCMPの検知閾値が設定される。または、両順方向電流の値を同一とし、コンパレータCMPの入力閾値にオフセットを設定することで、温度モニタ部TS1とリファレンス温度検出素子TSRによる検出温度を調整しても良い。
【0100】
図17を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1が備える発熱判定部EDET1が有する基準電圧発生回路の他の例を説明する。
【0101】
図17(a)は、発熱判定部EDET11の構成を示す。発熱判定部EDET11は、コンパレータCMP1、コンパレータCMP2、定電流源CC1、およびOR回路G1を有する。コンパレータCMP1のマイナス側入力端子およびコンパレータCMP2のプラス側入力端子には、定電流源CC1から順方向電流が印加されている温度モニタ部TS1が出力する温度モニタ信号saが印加される。コンパレータCMP1のプラス側入力端子には、温度モニタ部TS1が150℃の場合に出力する順方向電圧として想定する、リファレンス電圧Vref1(0.5V)が印加される。コンパレータCMP2のマイナス側入力端子には、温度モニタ部TS1が−50℃の場合に出力する順方向電圧として想定する、リファレンス電圧Vref2(1.0V)が印加される。
【0102】
マイナス側入力端子に印加される温度モニタ信号saの値が、プラス側入力端子に印加されるリファレンス電圧Vref1より小さい場合、コンパレータCMP1はハイレベルを出力する。プラス側入力端子に印加される温度モニタ信号saが、マイナス側入力端子に印加されるリファレンス電圧Vref2より大きい場合、コンパレータCMP2はハイレベルを出力する。OR回路G1は、コンパレータCMP1およびコンパレータCMP2のいずれか一方がハイレベルになった場合、ハイレベルの発熱検知信号Err1を出力する。
【0103】
即ち、発熱判定部EDET11は、温度モニタ部TS1で検出した温度が半導体装置の使用環境として想定されている−50℃〜+150℃の温度範囲を逸脱したことを検出する。チップ温度が+150℃を逸脱した場合、発熱検知信号Err1はハイレベルに設定され、オンチップトランスフォーマOCT1の絶縁破壊が検出される。
【0104】
図17(b)は、温度モニタ部TS1と接続される配線saが熔断した場合における、発熱判定部EDET11の動作を説明する図である。温度モニタ部TS1は、オンチップトランスフォーマOCT1の直下またはその近傍に配置される。そのため、温度モニタ部TS1の測定出力を発熱判定部EDET11に伝える配線saは、オンチップトランスフォーマOCT1の絶縁破壊で発生する異常過熱で熔断する場合がある。その場合、発熱判定部EDET11には温度モニタ信号saが入力されないが、定電流源CC1の負荷電流がほとんど零になるため、定電流源CC1の出力は電源電圧VDD1(5V)まで上昇する。この上昇した定電流源CC1の出力電圧は、コンパレータCMP2のリファレンス電圧Vref2(1.0V)と比較され、コンパレータCMP2はハイレベルを出力する。その結果、発熱検知信号Err1はハイレベルとなり、オンチップトランスフォーマOCT1の絶縁破壊が検出される。
【0105】
図18を参照して、各実施の形態に係る温度モニタ部TS1の各種構成例を説明する。
図18(a)は、実施の形態1に係る温度モニタ部TS1の具体例として説明してきたpn接合ダイオードDである。pn接合ダイオードDに所定の定電流を順方向に印加し、電源電圧GND1と接続されたカソードに対するアノードの順方向電圧を、コンパレータCMPで、リファレンス電圧Vrefと比較し、発熱検知信号Err1を出力する。
【0106】
図18(b)は、ダイオード接続したバイポーラトランジスタQのベース・エミッタ間に所定の定電流を順方向に印加し、電源電圧GND1が印加されたエミッタに対するベースの順方向電圧でチップ温度を検出する温度モニタ部である。
図18(c)は、ダイオード接続したMOSトランジスタMのゲート・ドレイン間を短絡し、電源電圧GND1が印加されたソースに対するゲート電圧でチップ温度を検出する温度モニタ部である。
図18(d)は、温度依存性を有する抵抗に所定の定電流を印加し、その両端に発生する電圧でチップ温度を検出する温度モニタ部である。抵抗値が温度係数を有する抵抗として、多結晶シリコン抵抗、拡散抵抗、ウェル抵抗、およびメタル抵抗等が適用可能である。
【0107】
図19を参照して、各実施の形態に係る発熱判定部の他の変形例を説明する。
図19(a)は、ダイオードD11のカソードに電源電圧VDD1を印加した温度モニタ部TS11と、トランジスタM、容量Cap、およびコンパレータCMPで構成される発熱判定部EDET11aを示す。ダイオードD11のアノードはトランジスタMのドレインと接続され、トランジスタMのソースには電源電圧GND1が印加され、そのゲートには信号CLRが印加される。トランジスタMのドレインの電圧は信号INTEGとしてコンパレータCMPのプラス側入力端子に印加される。コンパレータCMPのマイナス側入力端子には、リファレンス電圧Vrefが印加される。コンパレータCMPのプラス側入力端子と電源配線GND1間には、容量Capが接続される。
【0108】
図19(b)は、
図19(a)に示す温度モニタ部TS11と発熱判定部EDET11aによる発熱検知信号Err1の生成方法を示す。温度モニタ部TS11で温度測定を開始する時刻t0以前に、ハイレベル(VDD1)の信号CLRがゲートに印加されたトランジスタMは、容量Capの両端子を電源電圧GND1に設定し、その蓄積電荷を放電する。時刻t0に信号CLRがロウレベルに設定されると、容量Capは逆バイアスされたダイオードD11のリーク電流により充電され、信号INTEGの電圧は上昇を開始する。
【0109】
この信号INTEGの電圧がリファレンス電圧Vrefを超えると、コンパレータCMPはハイレベルの発熱検知信号Err1を出力する。ダイオードD11のリーク電流は、そのpn接合温度が上昇するに従い、増大する。従って、信号CLRの論理レベルを変化させた時刻t0から、発熱検知信号Err1の論理レベルがロウレベルからハイレベルに変化する時刻t1/t2/t3までの時間を測定することで、オンチップトランスフォーマOCT1の絶縁破壊を検出することが可能となる。
【0110】
図19(c)は、ダイオードD11のカソードに電源電圧VDD1を印加した温度モニタ部TS11と、複数のインバータ11cを従属接続した発振回路を有する発熱判定部を示す。従属接続された各インバータ11cには、ダイオードD11のアノードから電源電圧が供給される。ダイオードD11のアノードの電圧は、そのpn接合温度が上昇するに従い、上昇する。従って、インバータ11cで構成される発振回路の発振数を図示しないカウンタで所定時間測定し、発振数のカウント値が所定値を超えた場合、発熱検知信号Err1の論理論理レベルを反転させることで、オンチップトランスフォーマOCT1の絶縁破壊を検出することが可能となる。
【0111】
図20を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1が備える温度モニタ部TS1の変形例である温度モニタ部TS11の構成を説明する。
【0112】
図20(a)は、温度モニタ部TS11の平面配置図である。温度モニタ部TS11は、半導体基板に形成された複数のpn接合ダイオード(温度検出素子)で構成され、各pn接合ダイオードはアノードAとカソードCを有する。オンチップトランスフォーマOCT1の直下にはpn接合ダイオードDu1〜Du8が、その中心部にはpn接合ダイオードDcが、その外周部にはpn接合ダイオードDo1〜Do2が、配置される。
【0113】
pn接合ダイオードDu1〜Du3のアノードおよびカソードは、各々、第1系統の配線sa1および配線sc1と接続される。pn接合ダイオードDu4、Dc、およびDu8のアノードは第2系統の配線sa2と接続されるともに、それらのカソードは第2系統の配線sc2と接続される。pn接合ダイオードDu5〜Du7のアノードおよびカソードは、各々、第3系統の配線sa3および第3系統の配線sc3と接続される。pn接合ダイオードDo1およびDo2のアノードは第4系統の配線sa4と接続されるとともに、それらのカソードは第4系統の配線sc4と接続される。
【0114】
図20(b)は、
図20(a)に示す温度モニタ部TS11の等価回路図である。第1〜第4系統の各配線間に、上記ダイオードが並列接続される。
【0115】
図21を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1が備える温度モニタ部TS11とオンチップトランスフォーマOCT1との配置関係を説明する。
【0116】
図21(a)は、第1配線層と、オンチップトランスフォーマOCT1の1次側コイルL11を形成する第2配線層とを重ねた平面図である。第2配線層で形成されたシールド層S1およびシールド層S3は、ビアホールv12を介して、ともに第1配線層で形成された配線sld12と接続され、第2配線層で形成されたシールド層S2は、ビアホールv12を介して、第1配線層で形成された配線sld21と接続される。配線sld12および配線sld21は、ビアホールv12を介して、第2配線層で形成された配線sld22と接続される。第1配線層で形成された配線sa1、配線sa2、配線sa3、および配線sa4は、ビアホールv12を介して、第2配線層で形成された配線sa22と接続される。第1配線層で形成された配線sc1、配線sc2、配線sc3、および配線sc4は、ビアホールv12を介して、第2配線層で形成された配線sc22と接続される。
【0117】
図21(b)は、温度モニタ部TS11を構成する各pn接合ダイオードとシールド層S1〜S3との関係を示す。シールド層S1は、オンチップトランスフォーマOCT1の中央部に形成されているダイオードDcと、それに接続される配線sa2および配線sc2とを覆うように形成される。シールド層S2は、1次側コイルL11の外周部に配置されるダイオードDo1およびDo2と、それらに接続される配線sa4および配線sc4を覆うように形成される。シールド層S3は、オンチップトランスフォーマOCT1近傍の配線sa2および配線sc2等を覆うように形成される。シールド層S1〜S3には、電源電圧GND1が印加される。
【0118】
温度モニタ部TS11は、オンチップトランスフォーマOCT1の直下領域、中央部、、および外周部に配置される各ダイオードを、4つの配線系統(配線sa1/sc1、配線sa2/sc2、配線sa3/sc3、配線sa4/sc4)に分割して並列接続した構成を有する。ダイオードを並列接続する配線系統を増加させることで、オンチップトランスフォーマOCT1で絶縁破壊が発生し、いずれかの配線系統が熔断された場合であっても、温度モニタ
部TS11は、異常温度上昇を検出する機能を保持することが可能となる。
【0119】
図22を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1および半導体装置LSI2を搭載した信号伝達モジュールMD1によるシステム構成を説明する。
【0120】
図22は、信号伝達モジュールMD1をIGBTドライバに適用したシステム例である。ハイサイドのトランジスタQH1、QH2、およびQH3と、ロウサイドのトランジスタQL1、QL2、およびQL3とは、各々、接続点U、V、およびWを介して、縦積みに接続され、3相インバータを形成する。各トランジスタはIGBTであり、ハイサイドのトランジスタのコレクタには500Vの直流高電圧が印加され、ロウサイドのトランジスタのエミッタには接地電位が印加されている。接続点U、V、およびWからは、モータMに3相の交流電流が供給される。
【0121】
各トランジスタのベースには、各々の信号伝達モジュールMD1が出力する駆動信号IGDrvが印加される。信号伝達モジュールMD1は、マイクロコントローラMCUが出力する信号In1に基づいて、駆動信号IGDrvを生成する。さらに、信号伝達モジュールMD1は、出力信号Rox1および発熱検知信号Err1をマイクロコントローラMCUへ出力する。マイクロコントローラMCUは、出力信号Rox1および発熱検知信号Err1等に基づき、機械式リレーRLYおよびIGBTであるトランジスタQSWの導通を制御する。
【0122】
図23を参照して、実施の形態1に係る信号伝達モジュールMD1による、絶縁破壊発生時のシステム制御方法を説明する。
【0123】
図23は、実施の形態1に係る信号伝達モジュールMD1に搭載されている半導体装置LSI1および半導体装置LSI2の構成を示す。
図23の半導体装置LSI1および半導体装置LSI2の構成・動作は、各々、
図2および
図3に示す構成・動作と同一である。半導体装置LSI1は、直接、マイクロコントローラMCUと信号の送信および受信を行う1次側信号伝達チップである。半導体装置LSI2は、直流高電圧が印加されるIGBTのスイッチング動作を制御する2次側信号伝達チップである。
【0124】
1次側信号伝達チップ(LSI1)でオンチップトランスフォーマOCT1の絶縁破壊が発生した場合のシステム保護動作を説明する。
【0125】
半導体装置LSI1に搭載されるオンチップトランスフォーマOCT1の絶縁破壊によりチップ温度が上昇すると、発熱判定部EDET1は、マイクロコントローラMCUへ発熱検知信号Err1を出力する。この発熱検知信号Err1を受けて、マイクロコントローラMCUは、トランジスタQSWおよび機械式リレーRLYを導通状態から非導通状態に切り替え、インバータに供給される直流高電圧を遮断する。
【0126】
インバータに供給される直流高電圧が遮断されると、2次側信号伝達チップ(LSI2)に印加される電源電圧VDD2は急速に低下し、オンチップトランスフォーマOCT1の2次側コイル(L12)の電圧も急速に低下する。その結果、オンチップトランスフォーマOCT1の2次側コイル(L12)と1次側コイル(L11)間の短絡電流も急速に減少し、信号伝達モジュールMD1、さらには、その信号伝達モジュールMD1と同じプリント基板に搭載されている他の電子部品(マイクロコントローラMCU等)の焼損・発火を抑制することが可能となる。
【0127】
また、マイクロコントローラMCUは、半導体装置LSI1から発熱検知信号Err1を受けた場合、ハイサイドのトランジスタQH1〜QH3を非導通状態とするように、各トランジスタQH1〜QH3を駆動する信号伝達モジュールMD1に対して指令する。ハイサイドのトランジスタQH1〜QH3が非導通状態になると、ハーフブリッジの中点電位(接続点U、V、およびWの電位(電源電圧GND2))はロウサイドの接地電位と等しくなり、1次側信号伝達チップの1次側コイルと2次側コイル間の絶縁部に印加される電位差はゼロになる。この時、ハーフブリッジの中点電位を下げるために、ロウサイドのトランジスタQL1〜QL3を導通状態に設定しても良い。
【0128】
半導体装置LSI1の温度モニタ部TS1がオンチップトランスフォーマOCT1の異常過熱を検出した場合、マイクロコントローラMCUを介さずに、信号伝達モジュールMD1で直接、ハイサイドのトランジスタQH1〜QH3を非導通状態に設定しても良い。
【0129】
図23に示す信号伝達モジュールMD1において、温度モニタ部TS1が異常過熱を検出した場合、発熱判定部EDET1は、上述のマイクロコントローラMCUへの発熱検知信号Err1送信に加えて、制御回路CTL1へ発熱検知信号Err1を出力する。この発熱検知信号Err1に応答して、制御回路CTL1は、送信回路TX1およびオンチップトランスフォーマOCT1を介して、半導体装置LSI2の受信回路RX2へ所定の信号を送信する。
【0130】
半導体装置LSI2の駆動回路DRVは、その所定の信号に基づき、IGBTを非導通とする駆動信号IGDrvを出力する。この温度モニタ部TS1による異常過熱の検出から駆動回路DRVによる駆動信号IGDrvの生成は、信号伝達モジュールMD1が備えるハードウェア(電子回路)で行われる。従って、異常過熱発生からオンチップトランスフォーマOCT1の焼損・機能喪失の前に、IGBTを非導通状態とすることが可能となる。
【0131】
次に、2次側信号伝達チップ(LSI2)でオンチップトランスフォーマOCT2の絶縁破壊が発生した場合のシステム保護動作を説明する。
図23に示す信号伝達モジュールMD1において、温度モニタ部TS2がオンチップトランスフォーマOCT2の異常過熱を検出した場合、発熱判定部EDET2は、制御回路CTL2へ発熱検知信号Err2を出力する。この発熱検知信号Err2に応答して、制御回路CTL2は駆動回路DRVへ出力する制御信号Ct2をロウレベルからハイレベルに変化させ、IGBTを非導通とする駆動信号IGDrvを出力する。この駆動信号IGDrvに基づき、IGBTは非導通状態となり、システムは保護される。
【0132】
この温度モニタ部TS2による異常過熱の検出から駆動回路DRVによる駆動信号IGDrvの生成は、マイクロコントローラMCUからの指令によらず、2次側信号伝達チップが備えるハードウェアのみで行われる。従って、異常過熱発生からオンチップトランスフォーマOCT2の焼損・機能喪失の前に、IGBTを非導通とすることが可能となる。
【0133】
図24を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI1が備える温度モニタ部TS1の他の配置例を説明する。
【0134】
半導体装置LSI1が備える温度モニタ部TS1は、オンチップトランスフォーマOCT1の直下領域または隣接領域が好ましいことを説明してきた。しかしながら、温度モニタ部TS1を構成する温度検出素子(pn接合ダイオード等)の配置場所は、それらの場所に限定されない。
図24に示す温度モニタ部TS11は、半導体装置LSI1が備える送信回路TX1が有する送信ドライバ回路に隣接して配置され、オンチップトランスフォーマOCT1の絶縁破壊に伴う異常過熱を検出する。なお、
図24は回路図を示すが、オンチップトランスフォーマOCT1は、斜視図で表現されたコイルとして、模式的に示されている。
【0135】
図24において、送信ドライバ回路は、ソースに電源電圧VDD1が印加され、ドレインが配線tx11と接続されたp型トランジスタM11と、ドレインが配線tx11と接続され、ソースに電源電圧GND1が印加されたn型トランジスタM12と、ソースに電源電圧VDD1が印加され、ドレインが配線tx12と接続されたp型トランジスタM13と、ドレインが配線tx12と接続され、ソースに電源電圧GND1が印加されたn型トランジスタM14と、で構成される。p型トランジスタM11およびn型トランジスタM14と、p型トランジスタM13およびn型トランジスタM12とは、配線tx11および配線tx12を介して、1次側コイルL11へ各々逆方向の駆動電流を流すように、図示しないプリドライバ回路で、各ゲート電圧が制御される。
【0136】
オンチップトランスフォーマOCT1の1次側コイルL11と2次側コイルL12間で、絶縁破壊による短絡電流が発生した場合、2次側コイルL12から、送信ドライバ回路の上記トランジスタまたは寄生ダイオード(図示せず)を経由して、電源配線VDD1または電源配線GND1へ短絡電流が流入する。この短絡電流による送信ドライバ回路の温度上昇は、送信ドライバ回路を構成する各トランジスタM11〜M14の近傍に各々配置されたpn接合ダイオードD11〜D14で構成される温度モニタ部TS11により検出される。
【0137】
ダイオードD11およびD13のアノードは配線sa1と接続され、ダイオードD12およびダイオードD14のアノードは配線sa2と接続される。配線sa1および配線sa2は、ともに、発熱判定部EDET1と接続される。ダイオードD11およびダイオードD13のカソードは配線sc1と接続され、ダイオードD12およびダイオードD14のカソードは配線sc2と接続される。配線sc1および配線sc2には、電源電圧GND1が印加される。ダイオードD11およびダイオードD13は、第1系統の配線sa1および配線sc1間に並列接続され、ダイオードD12およびダイオードD14は、第2系統の配線sa2および配線sc2間に並列接続される。配線を2系統に分離することにより、温度モニタ部TS11の信頼性が向上する。
【0138】
図25を参照して、実施の形態1に係る半導体装置LSI12が備える温度モニタ部TS1の他の配置例を説明する。
【0139】
温度モニタ部の配置は、オンチップトランスフォーマが形成されるチップ側に限定されず、オンチップトランスフォーマが形成されたチップから信号を受信するチップ側に配置しても良い。
図25に示す温度モニタ部TS21は、温度モニタ部TS1の他の配置例である。温度モニタ部TS21は、半導体装置LSI2が備える受信回路RX2の静電保護素子に隣接して配置され、オンチップトランスフォーマOCT1の絶縁破壊に伴う異常過熱を検出する。なお、
図25は回路図を示すが、オンチップトランスフォーマOCT1は、斜視図で表現されたコイルとして、模式的に示されている。
【0140】
半導体装置LSI1において、オンチップトランスフォーマOCT1の1次側コイルL11には、送信回路TX1が出力する駆動電流が印加される。2次側コイルL12の一端はパッドP11と接続され、その他端はパッドP12と接続される。半導体装置LSI1のパッドP11およびパッドP12は、ボンディングワイヤ1により、半導体装置LSI2に形成されるパッドP21およびパッドP22と、各々接続される。
【0141】
半導体装置LSI2において、パッドP21には、抵抗Rrおよび電源配線25を介して、電源電圧VDD2が印加される。この電源電圧VDD2は、オンチップトランスフォーマOCT1の基準電圧として、2次側コイルL12の一端と接続されるパッドP11に印加される。なお、抵抗Rrは、2次側コイルL12への基準電圧供給には必ずしも必要でないが、パッドP21と電源配線VDD2間の電流を検出するために設けられる。抵抗Rrは、多結晶シリコン抵抗や拡散抵抗で形成される。その抵抗Rrに隣接して、温度モニタ部TS21が有するダイオードD23が配置される。
【0142】
パッドP22には、2次側コイルL12の他端に発生した電圧が印加され、その電圧は受信回路RX2の入力端子に印加される。その入力端子と電源配線GND2および電源配線VDD2間には、各々、静電保護素子D1eおよび静電保護素子D2eが接続される。静電保護素子D1eおよび静電保護素子D2eの近傍には、温度モニタ部TS21を構成するダイオードD21およびD22が配置される。
【0143】
半導体装置LSI1のオンチップトランスフォーマOCT1で発生した短絡電流は、ボンディングワイヤ1を介して、パッドP11およびパッドP21間と、パッドP12およびパッドP22間と、に流れる。パッドP21を介して流入・流出する短絡電流は、抵抗Rrおよび電源配線25を経由して、電源配線VDD2に流れ、抵抗Rrおよびその近傍の半導体基板の温度は急激に上昇を開始する。パッドP22を介して流入・流出する短絡電流は、静電保護素子D1eおよび静電保護素子D2eを経由して、各々、電源配線GND2および電源配線VDD2に流れ、各静電保護素子およびその近傍の半導体基板の温度は急激に上昇を開始する。
【0144】
温度モニタ部TS21を構成するダイオードD21、D22、およびD23は、静電保護素子D1e、静電保護素子D2e、および抵抗Rrの温度上昇に伴い、その順方向電圧を減少させる。並列接続されたダイオードD21、D22、およびD23のアノード電圧は、発熱判定部EDET2へ入力される。ダイオードD21、D22、およびD23の少なくともいずれか1つで、順方向電圧の異常な減少が発生すると、発熱判定部EDET2は、発熱検知信号Err2を出力する。
【0145】
温度モニタ部は、必ずしも、オンチップトランスフォーマの直下領域または隣接領域に配置することに限定されず、オンチップトランスフォーマで発生した短絡電流が流れ得る回路が形成される領域近傍に配置しても良い。その結果、オンチップトランスフォーマを形成するチップと温度モニタ部を形成するチップとを別々に設定することが可能となり、信号伝達モジュールの設計自由度が向上する。
【0146】
<実施の形態2>
図26を参照して、実施の形態2に係る半導体装置LSI12および半導体装置LSI12を搭載した信号伝達モジュールMD2の構成を説明する。
【0147】
実施の形態1に係る半導体装置LSIi(i=1、2)は、送信回路TXiおよびオンチップトランスフォーマOCTiを搭載していたのに対し、実施の形態2に係る半導体装置LSIj2(j=1、2)は、受信回路RXjおよびオンチップトランスフォーマOCTjを搭載する。実施の形態2に係る半導体装置LSI12および半導体装置LSI22が備える回路等は、実施の形態1に係る半導体装置LSI1および半導体装置LSI2と同一の符号が付された回路等と同一の構成・機能を備える。
【0148】
半導体装置LSI12が備える送信回路TX1は、パッド3およびボンディングワイヤ1を介して、半導体装置LSI22が備えるオンチップトランスフォーマOCT2を駆動する。同様に、半導体装置LSI22が備える送信回路TX2は、半導体装置LSI12が備えるオンチップトランスフォーマOCT1を駆動する。
【0149】
半導体装置LSI12において、オンチップトランスフォーマOCT1の近傍には、温度モニタ部TS1が配置され、電源パッドVDD1および電源パッドGND1近傍には、発熱判定部EDET1が配置される。温度モニタ部TS1が備えるダイオードのアノードおよびカソード間の順方向電圧は、配線saおよび配線scを介して、発熱判定部EDET1に入力される。オンチップトランスフォーマOCT1および発熱判定部EDET1間の距離Loe12は、オンチップトランスフォーマOCT1および温度モニタ部TS1間の距離Los12よりも大きく設定される。
【0150】
半導体装置LSI22において、オンチップトランスフォーマOCT2の近傍には、温度モニタ部TS2が配置され、電源パッドVDD2および電源パッドGND2近傍には、発熱判定部EDET2が配置される。温度モニタ部TS2が備えるダイオードのアノードおよびカソード間の順方向電圧は、配線saおよび配線scを介して、発熱判定部EDET2に入力される。オンチップトランスフォーマOCT2および発熱判定部EDET2間の距離Loe22は、オンチップトランスフォーマOCT2および温度モニタ部TS2間の距離Los22よりも大きく設定される。
【0151】
オンチップトランスフォーマは、送信回路を備えるチップに形成することに限定されず、受信器回路を備えるチップに形成しても良い。オンチップトランスフォーマを形成するチップの選択の範囲が広がることにより、チップに搭載する他の回路の設計自由度が大きくなる。また、
図13の発熱判定部EDET1および送信回路TX1と同様に、電源パッドVDD2から枝分かれさせた電源配線で、発熱判定部EDET2および受信回路RX2の各々へ、電源電圧VDD2を供給することが好ましい。この構成により、電源配線のノイズによる発熱判定部EDET2への悪影響が軽減される。発熱判定部EDET2および受信回路RX2へ電源電圧GND2を供給する電源配線についても、同様である。
【0152】
<実施の形態3>
図27を参照して、実施の形態3に係る半導体装置LSI13および半導体装置LSI23を搭載した信号伝達モジュールMD3の構成を説明する。
【0153】
図27(a)は、半導体装置LSI13のチップ表面側に形成された回路パタンをそのチップ表面側から見た場合の回路パタンと、半導体装置LSI23のチップ表面側に形成された回路パタンをそのチップ裏面側から透かして見た場合の回路パタンと、を模式的に示す平面図である。なお、チップ表面側とは、半導体基板の対向する2面のうち、トランジスタ等の回路素子が形成される面側を意味する。半導体装置LSI13と半導体装置LSI23間の信号伝達は、そのチップ表面側を対向して配置することにより形成されるトランスを介して行われる。本実施の形態3では、対向配置された2チップで形成されるトランスも、オンチップトランスフォーマと記載する。
【0154】
半導体装置LSI13には、絶縁膜で覆われたオンチップトランスフォーマOCT3の1次側コイルL13、およびオンチップトランスフォーマOCT4の2次側コイルL24が形成される。1次側コイルL13は送信回路TX1で駆動され、2次側コイルL24で発生した電磁誘導による起電力は受信回路RX1に入力される。1次側コイルL13および2次側コイルL24の近傍、例えば、その中心部には、各々、温度モニタ部TS13および温度モニタ部TS14が配置される。温度モニタ部TS13と温度モニタ部TS14が各々備えるダイオードのアノードおよびカソード間の順方向電圧は、配線sa1および配線sc1を介して、発熱判定部EDET1に入力される。
【0155】
発熱判定部EDET1は、パッドVDD1およびバッドGND1近傍に配置されるとともに、発熱検知信号Err1をパッド3へ出力する。1次側コイルL13および発熱判定部EDET1間の距離は、1次側コイルL13および温度モニタ部TS13間の距離よりも大きく設定される。2次側コイルL24および発熱判定部EDET1間の距離は、2次側コイルL24および温度モニタ部TS14間の距離よりも大きく設定される。
【0156】
半導体装置LSI23には、絶縁膜で覆われたオンチップトランスフォーマOCT3の2次側コイルL23、およびオンチップトランスフォーマOCT4の1次側コイルL14が形成される。2次側コイルL23で発生した電磁誘導による起電力は受信回路RX2に入力され、1次側コイルL14は送信回路TX2で駆動される。2次側コイルL23および1次側コイルL14の近傍、例えば、その中心部には、各々、温度モニタ部TS23および温度モニタ部TS24が配置される。温度モニタ部TS23と温度モニタ部TS24が各々備えるダイオードのアノードおよびカソード間の順方向電圧は、配線sa2および配線sc2を介して、発熱判定部EDET2に入力される。
【0157】
発熱判定部EDET2は、パッドVDD2およびバッドGND2近傍に配置される。2次側コイルL23および発熱判定部EDET2間の距離は、2次側コイルL23および温度モニタ部TS23間の距離よりも大きく設定される。1次側コイルL14および発熱判定部EDET2間の距離は、1次側コイルL14および温度モニタ部TS24間の距離よりも大きく設定される。
【0158】
図27(b)は、
図27(a)に示される半導体装置LSI13に設定したY軸(Y13−Y13)と、半導体装置LSI23に設定したY軸(Y23−Y23)とを一致させて対向配置した2チップの、X軸(X−X’)における断面図である。本実施の形態3では、半導体装置LSI13の1次側コイルL13および2次側コイルL24の中心は、同一のY軸(Y13−Y13)上にあり、半導体装置LSI23の2次側コイルL23および1次側コイルL14の中心は、同一のY軸(Y23−Y23)上にある。
【0159】
さらに、半導体装置LSI13の1次側コイルL13および2次側コイルL24の中心間隔は、半導体装置LSI23の2次側コイルL23および1次側コイルL14の中心間隔と等しく設定される。両チップにおける1次側コイルおよび2次側コイルの配置は、上述の配置に限定されず、両チップを対向配置させた場合に、オンチップトランスフォーマが形成されるように、適宜、変更可能である。
【0160】
半導体装置LSI13の半導体基板Sub1の表面側には、1次側コイルL13の中心部に配置された温度モニタ部TS13が備えるダイオードが形成される。半導体基板Sub1上に形成された絶縁膜には1次側コイルL13が埋設される。半導体装置LSI23の半導体基板Sub2には、2次側コイルL23の中心部に配置された温度モニタ部TS23が備えるダイオードが形成される。半導体基板Sub2上に形成された絶縁膜には2次側コイルL23が埋設される。1次側コイルL13および2次側コイルL23の各中心が一致するように半導体装置LSI13および半導体装置LSI23は対向配置される。1次側コイルL13および2次側コイルL23は、オンチップトランスフォーマOCT3を構成する。
【0161】
<実施の形態4>
図28を参照して、実施の形態4に係る半導体装置LSI401、半導体装置LSI402、半導体装置LSI41、および半導体装置LSI42を搭載した信号伝達モジュールMD4の構成を説明する。
【0162】
半導体装置LSI41は、送信回路TX1、受信回路RX1、および発熱判定部EDET1を備えるが、オンチップトランスフォーマおよび温度モニタ部は備えない。同様に、半導体装置LSI42は、送信回路TX2、受信回路RX2、および発熱判定部EDET2を備えるが、オンチップトランスフォーマおよび温度モニタ部は備えない。半導体装置LSI401は、オンチップトランスフォーマOCT1および温度モニタ部TS1を備える。半導体装置LSI402は、オンチップトランスフォーマOCT2および温度モニタ部TS2を備える。
【0163】
半導体装置LSI41の送信回路TX1は、半導体装置LSI401のオンチップトランスフォーマOCT1を介して、半導体装置LSI42の受信回路RX2へ信号を送信する。半導体装置LSI42の送信回路TX2は、半導体装置LSI402のオンチップトランスフォーマOCT2を介して、半導体装置LSI41の受信回路RX1へ信号を送信する。
【0164】
半導体装置LSI401において、温度モニタ部TS1は、オンチップトランスフォーマOCT1の直下領域または隣接領域に配置される。温度モニタ部TS1が備えるダイオードの順方向電圧は、配線sa41、配線sc41、パッド3、ボンディングワイヤ1、および半導体装置LSI42の配線sa2および配線sc2を介して、半導体装置LSI42の発熱判定部EDET2に入力される。半導体装置LSI402において、温度モニタ部TS2は、オンチップトランスフォーマOCT2の直下領域または隣接領域に配置される。温度モニタ部TS2が備えるダイオードの順方向電圧は、配線sa42、配線sc42、ボンディングワイヤ1、および半導体装置LSI41の配線sa1および配線sc1を介して、半導体装置LSI41の発熱判定部EDET1に入力される。発熱判定部EDET1は、発熱検知信号Err1をパッド3へ出力する。
【0165】
半導体装置LSI401は、半導体基板に形成された温度モニタ部TS1、および半導体基板上に形成されたオンチップトランスフォーマOCT1で構成される。半導体装置LSI402は、半導体基板に形成された温度モニタ部TS2、および半導体基板上に形成されたオンチップトランスフォーマOCT2で構成される。従って、半導体装置LSI401および半導体装置LSI402は比較的安価に提供可能となる。また、オンチップトランスフォーマおよび温度モニタ部は、半導体装置LSI41および半導体装置LSI42とは別チップに搭載されるため、オンチップトランスフォーマおよび温度モニタ部の種々の構成要求に対して、柔軟に対応可能である。
【0166】
<実施の形態5>
図29を参照して、実施の形態5に係る半導体装置LSI5の構成を説明する。
【0167】
半導体装置LSI5は、同一の基板にSOI(Silicon on Insulator)層からなる第1領域51および第2領域52を備える。第1各領域51および第2領域52には、電源電圧VDD1/GND1が印加される回路および電源電圧VDD2/GND2が印加される回路が、各々形成される。第1領域51には、オンチップトランスフォーマOCT1、送信回路TX1、受信回路RX1、温度モニタ部TS1、および発熱判定部EDET1が形成される。第2領域52には、オンチップトランスフォーマOCT2、送信回路TX2、受信回路RX2、温度モニタ部TS2、および発熱判定部EDET2が形成される。
【0168】
SOI技術で絶縁分離した第1領域51および第2領域52を同一の基板に形成することにより、オンチップトランスフォーマOCT1と、送信回路TX1および受信回路RX2とを、基板上に形成した配線で接続することが可能となる。同様に、オンチップトランスフォーマOCT2と、送信回路TX2および受信回路RX1とを、基板上に形成した配線で接続することが可能となる。この結果、別々のチップに形成された回路を接続するボンディングワイヤが不要となり、信号伝達モジュールの小型化が実現可能となる。
【0169】
以上、実施の形態1に係る信号伝達モジュールMD1に搭載されている半導体装置LSI1が備えるオンチップトランスフォーマOCT1、温度モニタ部TS1、および発熱判定部EDET1を中心について説明してきた。一方、実施の形態1に係る信号伝達モジュールMD1に搭載されている半導体装置LSI2が備えるオンチップトランスフォーマOCT2、温度モニタ部TS2、および発熱判定部EDET2の構成も、半導体装置LSI1の対応するものと同一である。
【0170】
各実施の形態に係る半導体装置において、オンチップトランスフォーマは、異なる配線層(第2配線層M2および第5配線層M5)を、絶縁膜を介して、上下に重ねて配置した構造を有していた。オンチップトランスフォーマの構成は、その例に限定されず、同一配線層で、その配線側面部が絶縁膜を介して対向するように形成しても良い。
【0171】
<実施の形態6>
図30を参照して、実施の形態6に係る半導体装置LSI61および半導体装置LSI62を搭載した信号伝達モジュールMD6の構成を説明する。
【0172】
図30は、結合容量C1を交流結合素子とする信号伝達モジュールMD6の構成を、斜視図で模式的に示したものである。信号伝達モジュールMD6は、半導体装置LSI61および半導体装置LSI62を1つのパッケージに収納したSiPである。SiPは複数のリード2を備える。半導体装置LSI61および半導体装置LSI62に形成されたパッド3は、図示しないボンディングワイヤ等で、リード2と電気的に接続される。なお、図面が煩雑になることを回避するため、半導体装置LSI61および半導体装置LSI61は、各チップ表面が露出された状態で描かれている。
【0173】
半導体装置LSI61は、送信回路TX1、交流結合素子である結合容量C1、温度モニタ部TS1、および発熱判定部EDET1を有する。結合容量C1は、第1エレメントおよび第2エレメントのいずれか一方である1次側容量電極Cp1と、第1エレメントおよび第2エレメントのいずれか他方である2次側容量電極Cp2を有する。両容量電極間には、誘電体となる絶縁膜が形成される(図示せず)。
【0174】
送信回路TX1は、パッド3に印加された入力信号に基づき、1次側容量電極Cp1の電位を変動させる。その電位変動は、容量結合により、2次側容量電極Cp2の電位変動として伝達される。半導体装置LSI61には、電源電圧VDD1および電源電圧GND1が印加される。結合容量C1の直下領域または隣接領域の半導体基板には、温度モニタ部TS1が形成される。
【0175】
半導体装置LSI62は、受信回路RX1を有する。受信回路RX1には、ボンディングワイヤ1およびパッド3を介して、2次側容量電極Cp2の電圧が印加される。受信回路RX1で所望の波形に整形された出力信号は、パッド3および図示しないボンディングワイヤ等で電気的に接続されたリード2に出力される。半導体装置LSI62には、電源電圧VDD2および電源電圧GND2が印加される。
【0176】
半導体装置LSI61において、温度モニタ部TS1が備えるダイオードのアノードおよびカソード間の電圧は、配線saおよび配線scを介して、発熱判定部EDET1に入力される。結合容量C1の1次側容量電極Cp1および2次側容量電極Cp2間の絶縁膜が高電圧で破壊されると、両容量電極間の短絡電流に起因する異常発熱が発生する。発熱判定部EDET1は、この異常発熱による半導体基板の温度変化を検出し、発熱検知信号Err1の論理レベルを反転させる。
【0177】
実施の形態1と同様に、温度モニタ部TS1が備えるダイオードは、1次側容量電極Cp1または2次側容量電極Cp2が形成される直下における半導体基板(直下領域)、または、直下領域の外周部(隣接領域)に配置される。
【0178】
この発熱検知信号Err1は、パッド3へ出力されるとともに、
図2に示される半導体装置LSI1と同様に、制御回路CTL1(図示せず)へ出力される。パッド3に出力された発熱検知信号Err1は、半導体装置LSI61の動作を制御するマイクロコントローラMCU(図示せず)に入力される。一方、制御回路CTL1に出力された発熱検知信号Err1は、送信回路TX1の動作を制御する。発熱検知信号Err1によるシステム保護動作は、実施の形態1と同様であり、説明は繰り返さない。
【0179】
図30において、結合容量C1と送信回路TX1とは、ともに半導体装置LSI61に形成されている。しかしながら、結合容量C1の配置はその構成に限定されない。結合容量C1を半導体装置LSI61に形成する代わりに、受信回路RX1とともに、半導体装置LSI62に形成しても良い。その場合、温度モニタ部TS1および発熱判定部EDET1は、半導体装置LSI62に形成される。
【0180】
結合容量C1を構成する1次側容量電極Cp1および2次側容量電極Cp2は、半導体基板面と並行で、かつ、誘電体として作用する絶縁膜を挟んで積層した構造を有する。結合容量C1の構造は、平板電極を半導体基板に並行に配置した構造に限られない。例えば、1次側容量電極Cp1および2次側容量電極Cp2を、半導体基板と垂直方向に、絶縁膜を介して対向して配置した構成としても良い。
【0181】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。