(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、DAB方式のデジタル放送では1つの周波数に複数の番組が含まれており、同じ周波数の複数の番組間で出力レベルに差がある場合や、異なる周波数に含まれる番組間で出力レベルに差がある場合が考えられる。しかし、特許文献1に開示された従来手法では、放送メディアを切り替えた際に出力レベル差を減少させることができるが、これらの異なる番組間で出力レベル差を調整することはできず、番組切り替えの際に出力レベル差がある場合に違和感が生じるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、番組切り替え前後の出力レベル差をなくして違和感が生じることを防止することができる放送受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の放送受信機は、放送信号を受信する受信手段と、放送信号に含まれる番組の音声データに対応する音声を出力する際の音量を検出する音量検出手段と、音量検出手段によって検出された音量を所定の期間にわたって平均化する平均化処理手段と、平均化処理手段によって平均化された音量と所定の基準値とを比較し、平均化された音量を基準値と一致させるために必要な利得を設定する利得設定手段と、音声データに対して、利得設定手段によって設定された利得分、信号レベルを変換する信号レベル変換手段とを備えている。
【0007】
番組の出力音声の音量を基準値に合わせることができるため、番組を切り替えた際にその前後での音量差(出力レベル差)をなくすことができ、番組音声を聴取している利用者が違和感を感じることを防止することができる。
また、上述した放送信号には、音声データに対して信号レベルの変換を行う際の利得を示すダイナミック・レンジ・コントロールデータが放送局側で付加可能であり、利得設定手段は、
平均化された音量を基準値と一致させるために必要な利得を設定するために、ダイナミック・レンジ・コントロールデータと同じ内容を有する擬似的なデータを
作成し、この擬似的なデータに基づく利得の設定、および、前記ダイナミック・レンジ・コントロールデータに基づく利得の設定のいずれかの動作を選択的に行う。これにより、ダイナミック・レンジ・コントロールの機能を利用した音量調整が可能となり、構成の追加あるいは変更の規模を小さくすることができる。
【0008】
また、上述した音声データには音量を示す情報が含まれており、音量検出手段は、この音量を示す情報に基づいて音量の検出を行うことが望ましい。また、上述した音声データは、MP2形式を有しており、音量検出手段は、音声データに含まれるスケールファクタに基づいて音声データの音量を検出することが望ましい。これにより、音声波形を示すデータの内容を調べることなく容易に出力音声の音量を検出することができ、処理の簡略化が可能となる。
【0009】
また、上述した平均化処理手段は、平均化する期間を番組内容に基づいて設定することが望ましい。これにより、番組内容を反映させた適切な音量の判定を行うことができる。例えば、ニュース、スポーツ、歌番組、クラシック演奏、ジャズ演奏、ポップス演奏、ロック演奏などの番組内容毎に平均化の期間を設定することができる。具体的には、クラシック演奏やジャズ演奏の番組では期間を長く、ポップス演奏やロック演奏の番組では期間を短く設定する場合が考えられる。
【0010】
また、上述した平均化処理手段は、放送信号の受信状態が悪い場合に、音量の平均化処理を行わないことが望ましい。これにより、誤った情報に基づいた音量検出を防止することができ、音量調整を行うことにより違和感が拡大することを未然に回避することができる。
【0011】
また、上述した平均化処理手段は、番組の切り替わり時に、音量の平均化処理を行わないことが望ましい。これにより、音量の変化が比較的大きい期間での音量検出を防止することができ、音量調整を行うことにより違和感が拡大することを未然に回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した一実施形態のデジタル放送受信機について、図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態のデジタル放送受信機の構成を示す図である。このデジタル放送受信機は、主に欧州で用いられているDAB/T−DMB放送規格にしたがったデジタル放送信号を受信するためのものである。また、例えば、このデジタル放送受信機は車両に搭載されている。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のデジタル放送受信機は、RF部10、FE(フロントエンド)部20、BE(バックエンド)部30、出力処理部32、アンプ34、スピーカ36、主制御部40、表示装置50、操作部52、設定利得情報格納部60を備えている。
【0016】
本実施形態のデジタル放送受信機は、変調方式としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を用いたマルチキャリア方式で放送されたデジタル放送信号を受信して復調処理および復号化処理を行って音声データを再生する。RF部10は、高周波回路であって、アンテナ12を介して受信した放送信号を中間周波信号に変換する。FE部20は、RF部10から出力される中間周波信号に対して復調処理と復号化処理を行ってサービス毎の圧縮音声データや、サービスとは別に挿入された各種アナウンスメントの圧縮音声データなどを出力する。例えば、圧縮音声データとして、MP2(MPEG1 Audio Layer2とMPEG2 Audio Layer2)形式の圧縮音声データが出力される。
【0017】
図2は、DAB/T−DMB放送規格にしたがった放送信号のフレーム構成を示す図である。
図2に示すように、フレームは、同期チャネル、ファースト・インフォメーション・チャネルFIC、メイン・サービス・チャネルMSCによって構成されている。
【0018】
同期チャネルは、NULLシンボルと位相基準シンボルPRS(Phase Reference Symbol)からなり、フレームの先頭部分を検出してフレーム同期をとるために用いられる。ファースト・インフォメーション・チャネルFICは、メイン・サービス・チャネルMSCの内容を説明する領域であり、時間/日付データ、サービス(番組)の配列データ、サービスのラベル(名称)、サービス識別コードSID(Service Identification Code)などが含まれる。複数個のFIG(ファースト・インフォメーション・グループ)がエネルギ拡散されて、所定の情報単位である1個のFIB(ファースト・インフォメーション・ブロック)を構成している。また、各FIBは、畳み込み符号化され、この畳み込み符号化された3個のFIBが1個のFICを構成している。メイン・サービス・チャネルMSCは、複数のサービスのそれぞれに対応する主に音楽データが含まれる。このメイン・サービス・チャネルMSCは、エネルギ拡散され、畳み込み符号化され、タイムインターリーブされた複数個のサブ・チャネル(SubCh)を含んでいる。
【0019】
図3は、MP2データのフレーム構造を示す図である。
図3に示すように、MP2データには、ビットアロケーションデータ(Bit Alloc.)とスケールファクタ(ScF)と音声データとエラー検出用ワード(ScF−CRC(Cyclic Redundancy Check、巡回冗長検査))と固定長プログラム関連データ(F−PAD)とが含まれている。ビットアロケーションデータは、音声データに含まれる音声波形データが示す音声の帯域(20Hz〜20KHz)を32のサブバンドに分割してそれぞれのサブバンドに音声成分が存在するか否かを示す周波数情報である。例えば、左右の音声に関して、各サブバンドに1ビット、合計で64ビットがビットアロケーションデータに割り当てられている。スケールファクタは、各サブバンド毎の音声レベルを示す各周波数の振幅情報である。例えば、−96dBから0dBのDレンジ96dBで、ステップ0.25dBとすると各サブバンドについて4×96=384(512として9ビット)が必要になり、左右32のサブバンドでは32×2×9=576ビット(72バイト)が必要になる。エラー検出用ワードは、スケールファクタに含まれるエラーの有無を検出するためのものであり、スケールファクタのデータに基づいて計算されたCRC値とエラー検出用ワードに格納されたCRC値とが一致しない場合に、スケールファクタのデータが破損しているものと判定される。例えば、エラー検出用ワードとして2バイトが割り当てられている。固定長プログラム関連データは、このデータが含まれるフレームにおける音声データの内容に関する各種の情報であり、DRC(Dynamic Range Control)データが付加される場合にはこの固定長プログラム関連データに含まれる。
【0020】
このDRCデータは、放送局から配信された放送信号に付加されており、DRCデータに基づいてデジタル放送受信機側で音声データに対応する音声の利得(音量)を補正して出力するためのものである。このDRCデータに基づいた利得制御を行うことにより、出力音声の信号レベルが小さいときに出力レベルを大きくする補正が行われるため、例えば車両に搭載された場合に、走行時のエンジン音やロードノイズにかき消されないように小さいオーディオ信号を増幅して出力することが可能になる。
【0021】
BE部30は、FE部20から出力される圧縮音声データ(MP2データ)が入力されており、出力対象となるサービスやアナウンスメントの切り替えや、切り替えられたサービス等に対応する圧縮音声データに対する展開処理などを行う。展開処理によって、例えばI
2S(The Inter-IC Sound Bus)フォーマットの音声データが出力される。出力処理部32は、BE部30から出力される音声データが入力されており、アナログの音声信号に変換するとともに、音量の可変制御や他の音(例えば操作音)の重ね合わせ処理などを行う。アンプ34は、出力処理部32から出力される音声信号を増幅してスピーカ36から増幅後の音声を出力する。
【0022】
主制御部40は、デジタル放送受信機全体の受信動作を制御するとともに、DRCデータに基づく制御あるいは番組間の音量差を調整するための類似の制御(詳細については後述する)を行う。このために、主制御部40は、SF(スケールファクタ)抽出部41、DRCデータ抽出部42、平均化処理部43、疑似DRCデータ作成部44、DRC切替部45、利得設定部46を備えている。なお、本実施形態では、DRCデータに基づく制御あるいは番組間の音量差を調整するための類似の制御以外の通常の受信動作の制御に関する構成(受信対象となるサービスを選択する動作や受信中のサービスについて音声出力や受信内容表示を行う動作などに必要な構成)については図示が省略されている。
【0023】
DRCデータ抽出部42は、FE部20から出力される圧縮音声データ(MP2データ)内の固定長プログラム関連データ(F−PAD)にDRCデータが含まれる場合にこれを抽出する。具体的には、このDRCデータは6ビットを有しており、DRCデータの内容と、DRCデータで示される利得との間には
図4に示す関係がある。DRCデータで示される利得は、音声データに対応する音声信号を増幅する利得を示している。音量が小さい番組(サービス)の音声データには、利得が大きいDRCデータを対応させることにより、エンジン音等にかき消されてしまうような音量の小さい音声を大きい利得で増幅して、エンジン音等にかき消されないようにすることができる。なお、
図4に示すDRCデータと利得との関係を示す設定利得情報は設定利得情報格納部60に格納されている。
【0024】
このような音声の増幅は、MP2データ内の固定長プログラム関連データにDRCデータが含まれている場合に行うことが可能となるが、本実施形態では、SF抽出部41と平均化処理部43と疑似DRCデータ作成部44とを備えることにより、DRCデータの有無に関係なく番組間の音量差を調整するために類似の制御を行うことができる。
【0025】
SF抽出部41は、FE部20から出力される圧縮音声データ(MP2データ)の中からスケールファクタを抽出する。平均化処理部43は、SF抽出部41によって抽出されたスケールファクタに基づいて音声データの音量(瞬時値)を判定し、この判定した音量を所定期間にわたって平均化する。この平均化処理は、所定期間のデータを単純に平均化する場合と、平均化する期間を少しずつずらしながら移動平均をとる場合とが考えられる。また、DRCデータに基づく制御が有効な場合(DRCデータ抽出部42によってDRCデータが抽出され、かつ、本実施形態のデジタル放送受信機においてこのDRCデータに基づく利得制御を行う旨の設定(例えば、利用者が操作部52を用いて設定することができる)がなされている場合)には、平均化処理部43は、抽出したスケールファクタに基づいて音声データの音量(瞬時値)を判定し、さらにこの音量に対してDRCデータで指定された利得調整を行った後の音量を算出し、この算出した音量を所定期間にわたって平均化する。
【0026】
疑似DRCデータ作成部44は、平均化処理部43によって平均化された音量と、あらかじめ設定されている音量の基準値とを比較し、受信した音声データに対応する音声信号を増幅して基準値と一致させるために必要な利得を決定し、この利得を示す疑似DRCデータを作成する。具体的には、平均化処理部43による平均化処理の段階でのDRCデータに基づく利得調整の有無に応じて疑似DRCデータの作成方法が異なる。DRCデータに基づく利得調整がなされなかった場合には、平均化された音量を増幅して基準値に一致させるために必要な利得を決定し、この利得に対応するDRCデータ(
図4)を疑似DRCデータとする。また、DRCデータに基づく利得調整がすでになされている場合には、平均化された音量を増幅して基準値に一致させるために必要な利得と、DRCデータに基づいて行われた利得調整に用いられた利得とを合計した合計利得を決定し、この合計利得に対するDRCデータ(
図4)を疑似DRCデータとする。
【0027】
図5は、疑似DRCデータと利得との関係を示す図である。
図5において、Aは平均化処理部43による平均化処理の段階でのDRCデータに基づく利得調整がなされなかった場合を示している。この場合には、平均化された音量(出力レベル)を基準値に達するまで増幅するために必要な利得aが算出され、この利得aに対応するDRCデータが疑似DRCデータとして決定される。また、
図5において、Bは平均化処理部43による平均化処理の段階でのDRCデータに基づく利得調整がすでになされている場合を示している。この場合には、平均化された音量(出力レベル)には、すでにDRCデータに基づく利得調整分bが含まれている。したがって、利得調整前の音声データに着目すると、この音声データの音量を調整値に達するまでに増幅するために必要な利得は、aとbを合計した値となる。
【0028】
DRC切替部45は、疑似DRCデータ作成部44によって作成された疑似DRCデータと、DRCデータ抽出部42によって抽出されたDRCデータとが入力されており、いずれかのデータを選択して出力する。いずれのデータを選択するかは、操作部52を用いて利用者が予め指定することができる。出力音量が基準値と一致するように自動的に利得調整を行う本実施形態の動作を有効にした場合には、疑似DRCデータ作成部44から出力される疑似DRCデータが選択される。反対に、この本実施形態の動作を無効にした場合には、DRCデータ抽出部42から出力されるDRCデータが選択される。なお、本実施形態の動作が無効であり、かつ、DRCデータに基づく制御が有効でない場合(DRCデータの有無に関係なくDRCデータを用いた制御を行わない設定がなされている場合)には、DRCデータ抽出部42から利得「0」に対応するDRCデータを出力すればよい。
【0029】
利得設定部46は、設定利得情報格納部60に格納された設定利得情報に基づいて、DRC切替部45から出力される疑似DRCデータあるいはDRCデータに対応する利得(
図4)を決定する。この利得は、放送局から送られてきたMP2データに含まれる音声データの信号レベル(入力レベル)に対してレベル変換を行うために用いられる。このレベル変換は、BE部30によって、展開処理した後の音声データに対して行われるが、出力処理部32によって変換された後の音声信号に対して行うようにしてもよい。なお、このレベル変換については、出力処理部32においてアナログの音声信号に対して行う場合や、MP2データに含まれるビットアロケーションデータ(
図3)を参照して信号成分が存在する帯域のみについて行う場合などの変形例が考えられる。
【0030】
表示装置50は、デジタル放送受信機の動作状態を示す動作画面や各種操作を行うための操作画面などを表示する。操作部52は、利用者が操作指示を行うためのものであり、各種の操作キーや操作つまみなどが含まれる。利用者による音量の変更指示や受信対象となるサービスやアナウンスメントタイプの切替指示などが操作部52を用いて行われる。
【0031】
上述したRF部10、FE部20、BE部30が受信手段に、SF抽出部41が音量検出手段に、平均化処理部43が平均化処理手段に、疑似DRCデータ作成部44、利得設定部46が利得設定手段に、BE部30が信号レベル変換手段にそれぞれ対応する。
【0032】
本実施形態のデジタル放送受信機はこのような構成を有しており、次に、その動作を説明する。
図6は、基準値と一致するように音量を調整する動作手順を示す流れ図である。
【0033】
デジタル放送受信機が起動されていずれかのサービス(番組)の受信を開始すると(ステップ100)、DRCデータ抽出部42は、FE部20から出力されるMP2データ内の固定長プログラム関連データ(F−PAD)に放送局側で付加されたDRCデータが含まれる場合にこれを抽出する(ステップ102)。また、SF抽出部41は、受信対象のサービスに対応してFE部20から出力されるMP2データの中からスケールファクタを抽出する(ステップ104)。
【0034】
次に、平均化処理部43は、番組の切り替わり時か否かを判定する(ステップ106)。番組の切り替わり時か否かは、例えば、電子番組案内EPGを取得し、現在の時刻が番組の切り替わり時刻を含む所定の範囲内に含まれているか否かを調べることにより判定することができる。電子番組案内EPGを取得する方法についてはいくつかの場合が考えられる。例えば、
図3に示すフレーム構造に含まれる不定長プログラム関連データ(X−PAD)を用いて取得するようにしてもよい。
【0035】
番組切り替わり時でない場合にはステップ106の判定において否定判断が行われる。次に、平均化処理部43は、受信中の放送信号の受信状態が良好か否かを判定する(ステップ108)。受信状態の良否判定は、
図3に示すフレーム構造に含まれるCRCに基づくエラー検出の有無に基づいて行う場合や、放送信号に対応する中間周波信号の信号レベルの強弱に基づいて行う場合などが考えられる。
【0036】
放送信号の受信状態が良好な場合にはステップ108の判定において肯定判断が行われる。次に、平均化処理部43は、番組内容に基づいて平均化処理を行う期間を設定する(ステップ110)。例えば、
図2に示すファースト・インフォメーション・チャネルFICには、ニュース、スポーツ、歌番組、クラシック演奏、ジャズ演奏、ポップス演奏、ロック演奏などの番組のジャンルを示すプログラムタイプや、演奏している曲名や演奏者名などを含むラベル情報などが含まれている。これらは、番組の選択や内容表示に用いられるものであり、従来から広く用いられている。平均化処理部43は、これらの情報に基づいて平均化処理の期間を設定する。例えば、クラシック演奏やジャズ演奏の番組では平均化する期間が長く、ポップス演奏やロック演奏の番組では平均化する期間が短く設定される。
【0037】
次に、平均化処理部43は、DRCデータに基づく制御が有効か否かを判定する(ステップ112)。有効でない(無効)場合には否定判断が行われる。この場合には、平均化処理部43は、SF抽出部41によって抽出されたスケールファクタに基づいて音量(瞬時値)を判定し、この判定した音量を所定期間にわたって平均化する(ステップ114)。次に、疑似DRCデータ作成部44は、平均化処理部43によって平均化した音量と、あらかじめ設定されている音量の基準値とを比較して差分を算出し(ステップ116)、出力音声の音量を基準値と一致させるために必要な利得(
図5に示したAの場合の利得a)を決定し、この利得を示す疑似DRCデータを作成する(ステップ118)。
【0038】
一方、DRCデータに基づく制御が有効な場合にはステップ112の判定において肯定判断が行われる。この場合には、平均化処理部43は、SF抽出部41によって抽出されたスケールファクタとDRCデータ抽出部42によって抽出されたDRCデータに基づいて音量調整後の音量(瞬時値)を判定し、この判定した音量を所定期間にわたって平均化する(ステップ120)。次に、疑似DRCデータ作成部44は、平均化処理部43によって平均化した音量と、あらかじめ設定されている音量の基準値とを比較して差分を算出し(ステップ122)、出力音声の音量を基準値と一致させるために必要な利得(
図5に示したBの場合の利得a+b)を決定し、この利得を示す疑似DRCデータを作成する(ステップ124)。
【0039】
ステップ118あるいは124において疑似DRCデータが作成されると、次に、利得設定部46は、疑似DRCデータに対応する利得を設定する(ステップ126)。なお、
図6を用いた動作説明では疑似DRCデータを用いた利得調整が行われる場合を考えているため、DRC切替部45では、疑似DRCデータ作成部44から出力される疑似DRCデータを選択するものとする。
【0040】
このようにして設定された利得はBE部30に入力され、BE部30では、PM2形式の音楽データを展開した後にこの利得を用いてレベル変換を行い、出力処理部32では、レベル変換後の音声信号をスピーカ36から出力する(ステップ128)。なお、ステップ106の判定において肯定判断が行われた場合(番組切り替わり時の場合)や、ステップ108の判定において否定判断が行われ他場合(受信状態が悪い場合)には、上述したステップ112〜126による利得調整は行われずに、直ちにステップ128に移行して利得調整なしの音声出力が行われる。
【0041】
このように、本実施形態のデジタル放送受信機では、番組の出力音声の音量を基準値に合わせることができるため、番組を切り替えた際にその前後での音量差(出力レベル差)をなくすことができ、番組音声を聴取している利用者が違和感を感じること防止することができる。
【0042】
また、音声データには音量を示す情報(スケールファクタ)が含まれており、この情報を用いて音量検出を行っているため、音声波形を示すデータの内容を調べることなく容易に出力音声の音量を検出することができ、処理の簡略化が可能となる。
【0043】
また、音量を平均化する期間を番組内容に基づいて設定することにより、番組内容を反映させた適切な音量の判定を行うことができる。放送信号の受信状態が悪い場合には音量の平均化処理が行われないため、誤った情報に基づいた音量検出を防止することができ、音量調整を行うことにより違和感が拡大することを未然に回避することができる。また、番組の切り替わり時には音量の平均化処理が行われないため、音量の変化が比較的大きい期間での音量検出を防止することができ、音量調整を行うことにより違和感が拡大することを未然に回避することができる。
【0044】
また、放送局側で付加されるDRCデータと同じ内容を有する擬似DRCデータを用いて利得の設定を行っているため、DRCデータを用いて制御を行う機能(ハードウエア)を利用した音量調整が可能となり、構成の追加あるいは変更の規模を小さくすることができる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、DAB/T−DMB放送規格にしたがった放送信号を受信するデジタル放送受信機について説明したが、放送信号の形式が異なる他の放送受信機についても本発明を適用することができる。
【0046】
また、上述した実施形態では、放送局側でDRCデータが付加される可能性のある放送信号を受信するデジタル放送受信機について説明したが、DRCデータを付加することを想定していない放送信号を受信するデジタル放送受信機についても本発明を適用することができる。
【0047】
また、上述した実施形態では、番組切り替わり時や放送信号の受信状態が悪い場合には、平均化した音量を基準値に一致させる利得調整を行わないようにしたが、
図6のステップ106や108の動作については適宜省略するようにしてもよい。また、番組内容に応じて平均化の期間を可変設定する
図6のステップ110についても適宜省略するようにしてもよい。
【0048】
また、過去に受信したことがある番組については、毎回本実施形態の平均化処理を含む利得調整を実施するのではなく、その番組に対応して作成した疑似DRCデータを保存しておいて、次に同じ番組を受信した際にその疑似DRCデータを読み出して
図6に示すステップ126の動作を直ちに実行するようにしてもよい。例えば、過去に番組を受信してステップ118あるいはステップ124において疑似DRCデータを作成した際に、この作成した疑似DRCデータをアンサンブル識別コードEIDおよびサービス識別コードSIDとともに不揮発性メモリ(図示せず)に保存し、次に番組を受信した際にアンサンブル識別コードEIDとサービス識別コードSIDが同じである疑似DRCデータが存在する場合にはこれを読み出せばよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、DRCデータと同じ内容を有する疑似DRCデータを作成して利得設定を行ったが、疑似DRCデータを作成するために算出した利得(
図5に示す利得aあるいはa+b)をBE部30あるいは出力処理部32に入力して、出力音声を増幅するようにしてもよい。