(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964195
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】微生物担体
(51)【国際特許分類】
C02F 3/10 20060101AFI20160721BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20160721BHJP
C08K 3/00 20060101ALI20160721BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20160721BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
C02F3/10 A
C08L23/00
C08K3/00
C08L101/00
C08J5/00CES
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-223365(P2012-223365)
(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公開番号】特開2014-73476(P2014-73476A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000127307
【氏名又は名称】株式会社イノアック技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】高森 義久
(72)【発明者】
【氏名】葛谷 拓嗣
(72)【発明者】
【氏名】桐山 卓也
【審査官】
富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−174491(JP,A)
【文献】
特開2007−283222(JP,A)
【文献】
特開2001−191388(JP,A)
【文献】
特開2009−066592(JP,A)
【文献】
特開2012−110843(JP,A)
【文献】
実開昭59−039695(JP,U)
【文献】
特開平03−032797(JP,A)
【文献】
特開2001−340075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00 − 3/34
C08J 5/00
C08K 3/00
C08L 23/00
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を表面に保持する微生物担体において、
前記微生物担体は非多孔質体からなり、
前記非多孔質体は、該非多孔質体の100質量%中にメルトマスフローレイト(JIS K7210:1999)が0.01(g/10min)以上5(g/10min)未満であるポリオレフィン系樹脂30〜90質量%と無機粉末10〜70質量%を含み、比重が1より大で、外周面に相対的に外径の大きい大径部と相対的に外径の小さい小径部とが前記非多孔質体の長さ方向に交互に存在する波形状の凹凸を有し、
前記非多孔質体の長さが、1〜10mmであり、
前記大径部の平均外径が、2.5〜5.0mmであり、
前記小径部の平均外径が、2.0〜4.5mmであり、
前記大径部の平均外径と前記小径部の平均外径の比(大径部の平均外径/小径部の平均外径)が、1.02〜1.50であり、
隣り合う前記大径部の間隔が0.8〜2.5mmであることを特徴とする微生物担体。
【請求項2】
前記非多孔質体の100質量%中には、前記ポリオレフィン系樹脂に非相溶性樹脂を1〜20質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の微生物担体。
【請求項3】
前記無機粉末が炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の微生物担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中沈降性及び嫌気性微生物の付着性に優れると共に、長時間使用しても水中汚染を生じない微生物担体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水等に対する水処理には、嫌気性微生物による働きで溶存有機物を分解させる嫌気性処理がある。嫌気性処理においては、汚水浄化槽における反応槽(嫌気濾床層)に流動性の微生物担体を投入または充填して汚水(有機性排水)を通水させることで、微生物担体に付着した嫌気性微生物による働きで汚水中の溶存有機物を分解している(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
嫌気性処理では、嫌気性雰囲気で微生物が働くため、反応槽等内に投入された流動性の微生物担体は速やかに水中に沈降して水面に長く浮き上がっていない事が、水処理能力向上に必要となる。特に有機性排水を上向流通水して高速処理を行う場合、水沈降性が高いことが求められる。
水沈降性の向上を図った嫌気性処理用の微生物担体として、オレフィン系樹脂とセルロース系粉末を含むオレフィン系樹脂発泡体からなり、あるいはさらに無機粉末を含むオレフィン系樹脂発泡体からなり、発泡体の表面にメルトフラクチャー状態を有するものがある(特許文献2、特許文献3)。
【0004】
しかしながら、オレフィン系樹脂とセルロース系粉末を含むオレフィン系樹脂発泡体、あるいはさらに無機粉末を含むオレフィン系樹脂発泡体からなり、発泡体の表面にメルトフラクチャー状態を有する微生物担体は、発泡剤を使用することで表面の凹凸状態を発現させているものの、発泡体で中空状態からなるため、依然として水沈降性が良好ではなく、水処理能力も充分ではなく、さらに含有されている木粉等のセルロース系粉末が微生物担体自体を脆くさせるため、水中で長時間使用されると微生物担体の破片が水中に流れ出し、水中汚染を生じる問題がある。また、微生物担体の発泡体のセル内部に、微生物から発生するガスが溜まることによって浮力が増加して水沈降性が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−211881号公報
【特許文献2】特開2012−110843号公報
【特許文献3】特開2009−66592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、水沈降性及び水処理能力に優れ、かつ水中で長時間使用しても水中汚染を生じない、嫌気性処理に好適な流動性の微生物担体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、微生物を表面に保持する微生物担体において、前記微生物担体は非多孔質体からなり、前記非多孔質体は、該非多孔質体の100質量%中にメルトマスフローレイト(JIS K7210:1999)が0.01(g/10min)以上5(g/10min)未満であるポリオレフィン系樹脂30〜90質量%と無機粉末10〜70質量%を含み、比重が1より大で、外周面に相対的に外径の大きい大径部と相対的に外径の小さい小径部とが
前記非多孔質体の長さ方向に交互に存在する波形状の凹凸を有
し、前記非多孔質体の長さが、1〜10mmであり、前記大径部の平均外径が、2.5〜5.0mmであり、前記小径部の平均外径が、2.0〜4.5mmであり、前記大径部の平均外径と前記小径部の平均外径の比(大径部の平均外径/小径部の平均外径)が、1.02〜1.50であり、隣り合う前記大径部の間隔が0.8〜2.5mmであることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記非多孔質体の100質量%中には、前記ポリオレフィン系樹脂に非相溶性樹脂を1〜20質量%含むことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記無機粉末が炭酸カルシウムであることを特徴とする。
【0009】
本発明の微生物担体は、メルトマスフローレイト(MFR:JIS K7210:1999)が0.01(g/10min)以上5未満(g/10min)であるポリオレフィン系樹脂を用いることで、外周面に相対的に外径の大きい大径部と相対的に外径の小さい小径部とが交互に存在する波形状の凹凸を有するため、小径部が凹部となって該凹部に微生物が効率よく付着保持される。また、本発明の微生物担体は、非多孔質体からなるため、多孔質体の場合のように気孔に気泡が溜まって浮き上がり易くなることが無いため、水処理能力に優れ、かつ比重が1より大であるために水沈降性が高く、水に投入直後から微生物付着開始までの時間を短縮することができる。さらに、本発明の微生物担体は、微生物担体を脆くする木粉等からなるセルロース系粉末を含まなくてもよいため、水中で長時間使用しても、微生物担体の形状が崩れてセルロース系粉末が水中に流出する虞がなく、水を汚染することがない。
【0010】
さらに本発明の微生物担体は、非多孔質体の100質量%中における前記ポリオレフィン系樹脂に非相溶性樹脂を1〜20質量%含ませることによって、無機粉末の含有量を増加させても波形状の凹凸を形成させることができ、無機粉末の含有量増加によって微生物担体の比重を一層大にして水沈降性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る微生物担体の斜視図である。
【
図3】本発明の微生物担体を製造する装置の概略図である。
【
図4】比較例1と実施例2の外周面を撮影した電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る微生物担体について説明する。
図1及び
図2に示す微生物担体10は、嫌気性処理に使用されるものであり、比重(JIS K 7112:1999 B法準拠)が1より大の非多孔質体からなり、外周面に相対的に外径の大きい大径部13と相対的に外径の小さい小径部15を、非多孔質体の長さ方向に交互に有する波形状の凹凸を有するペレットからなる。前記微生物担体10の長さL(軸方向寸法)は1〜10mm、大径部13の平均外径Dは2.5〜5.0mm、小径部15の平均外径dは2.0〜4.5mm、大径部の平均外径と小径部の平均外径の比(D/d)は1.02〜1.50、隣り合う大径部13の間隔Pは0.8〜2.5mmが好ましい。
【0013】
前記D/dが1.50より大の場合には表面の凹凸差が大きくなり、前記微生物担体10を水中に投入した際に、前記小径部15に気泡が溜まりやすくなって水沈降性が低下するようになる。一方、D/dが1.02より小の場合には表面の凹凸差が小さくなって、微生物の付着面積が低下すると同時に、前記小径部15に微生物が保持されにくくなる。
前記大径部13の間隔Pが2.5mmよりも大の場合には、微生物の付着面積が低下すると同時に、前記小径部15で構成される表面の凹部における開口程度が大になり、微生物が保持されにくくなる。一方、大径部間の間隔Pが0.8mmより小の場合には、前記小径部15で構成される表面の凹部が深くなりすぎて、前記微生物担体10を水中に投入した際に小径部15に空気が閉じ込められやすくなり、水沈降性が低下するようになる。また、汚水浄化槽における水圧および微生物担体の充填量によって、大径部13の間隔Pを適正にすることで、処理量や負荷量を調整することが好ましい。
なお、前記微生物担体10の形状は、全て一定でもよいが、長さ、外径、D/d、大径部13の間隔および波形状そのものが所定範囲でランダムに変化していてもよい。
【0014】
前記微生物担体10を構成する非多孔質体は、ポリオレフィン系樹脂と無機粉末、さらには適宜含まれる非相溶性樹脂とからなる樹脂原料を、押出機から気相中に押し出してストランドを形成させることによって外周面に前記大径部13と小径部15を形成し、水相中で冷却後に所定長でカットしたものからなる。
【0015】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂等を挙げることができ、それらが単独で又は二種類以上組み合わせて使用される。特にポリエチレン樹脂は、本発明において好適なポリオレフィン系樹脂の一つである。ポリオレフィン系樹脂の量は、非多孔質体100質量%中、30〜90質量%が好ましく、特に30〜70質量%が好ましい。30質量%未満の場合には波形状の凹凸が形成されにくくなり、また非多孔質体の結合力が弱くなるため、成形時にはストランドが切断しやすく、かつ水中では微生物担体の形状が保持しにくい。一方90質量%を超える場合には非多孔質体の比重が1未満になって微生物担体10の水沈降性が低下(悪化)する。
【0016】
前記無機粉末としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ゼオライト、タルク、酸化チタン、チタン酸カリウム、水酸化アルミニウム等を挙げることができ、それらの一種あるいは複数種類を組み合わせて使用することができる。特に炭酸カルシウムは好適である。無機粉末は、前記微生物担体10を構成する非多孔質体の比重を増大させる作用を有する。無機粉末の量は、非多孔質体100質量%中、10〜70質量%が好ましく、特に30〜50質量%が好ましい。10質量%未満の場合、非多孔質体の比重が1未満になって微生物担体10の水沈降性が低下(悪化)し、一方、70質量%を超える場合には、波形状の凹凸が形成されにくくなり、また結合力が弱くなって水中で微生物担体10が分離し易くなる。
【0017】
前記非相溶性樹脂は、前記ポリオレフィン系樹脂とは異なる樹脂であって、前記ポリオレフィン系樹脂よりも溶解度パラメータδ(SP値)が1〜5(MJ/m
3)
1/2大きいものが好ましい。SP値の差が1(MJ/m
3)
1/2未満では、ポリエチレン(PE)樹脂およびポリプロピレン(PP)樹脂中において相溶化しやすく、波形状の凹凸を発生させる作用を生じにくく、逆に、SP値の差が5(MJ/m
3)
1/2より大きい場合、押し出し成形時にストランドが切断されやすく、微生物担体として長期使用時に分離しやすくなる。
【0018】
前記非相溶性樹脂としては、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル:PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができ、それらの一種類あるいは複数種類を組み合わせて使用することができる。特にアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびABS樹脂は、ポリエチレン(PE)樹脂およびポリプロピレン(PP)樹脂よりもSP値が大きく、その差は1〜5(MJ/m
3)
1/2であるため、ポリエチレン(PE)樹脂やポリプロピレン(PP)樹脂と混合されると、押し出し成形時にダイ内壁面で臨界せん断応力を超え、表面に波形状の凹凸を発生させやすく、好ましいものである。前記非相溶性樹脂は、前記非多孔質体に適宜含まれる添加剤であり、非多孔質体に含まれることによって、大径部の平均外径と小径部の平均外径の比(D/d)を大きくする作用があるため、前記無機粉末の含有量を増加させ、波形状の凹凸が形成されにくい場合でも波形状の凹凸を形成させることができ、それにより微生物担体10の水沈降性を向上させることができる。前記アクリル樹脂は、前記非多孔質体に含有させる場合、前記非多孔質体100質量%中1〜20質量%が好ましい。1質量%未満の場合、アクリル樹脂による効果が得られず、一方、20質量%を超える場合には、ポリオレフィン系樹脂の含有量が少なくなって成形しにくくなり、D/dが小さくなる傾向にある。
【0019】
なお、溶解度パラメータδ(SP値)は、フェダーズ(Fedors)の方法により決定される25℃におけるポリマーの繰り返し単位の値を指す。当該方法は、R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14(2),147(1974)に記載されている。即ち、求める化合物の構造式において、原子および原子団の蒸発エネルギーとモル体積のデータより次式により決定される。
δ=(ΣΔei/ΣΔvi)
1/2
ただし、式中、ΔeiおよびΔviは、それぞれ原子または原子団の蒸発エネルギーおよびモル体積を表す。求める化合物の構造式はIR、NMR、マススペクトルなどの通常の構造分析手法を用いて決定する。
【0020】
図3は前記微生物担体10の製造装置の概略図である。前記製造装置30は、押出機(単軸又は多軸押出機)31、水中冷却槽33、ストランドカッター(引き取り装置及び切断装置)35からなる。前記製造装置30を用いる微生物担体10の製造は、次のようにして行われる。まず、前記ポリオレフィン系樹脂、無機粉末、及び適宜添加する非相溶性樹脂を前記の量で押出機31に投入し、前記押出機31内で溶融混練して押出機31から気相中に非多孔質状態で表面に波形状の凹凸を有するストランド状に押し出し、水中冷却槽33中を通して冷却硬化させ、前記ストランドをストランドカッター35の引き取り装置で引き取って、切断装置で切断し、ペレット化する。なお、前記非多孔質体を形成する混合材料を、バレル温度、ダイの形状、吐出量を調整して、ダイ内において前記混合材料のもつ臨界せん断応力以上とすることで、ストランド表面に波形状の凹凸を発生させる。その際、前記引き取り装置35によるストランドの引き取り速度は、押し出し速度に対して相対的に変化させることで波形状の凸部である大径部間の距離を調整することができる。これにより、汚水浄化槽における水圧および微生物担体の充填量によって、大径部13の間隔Pを適正にすることができ、処理量や負荷量を調整することができる。前記押し出し速度の好ましい例として4.0〜8.0m/分を挙げる。この範囲よりも遅いと、臨界せん断応力を得られず、逆に早すぎると、ダイのせん断発熱が高くなって樹脂粘度が低下するため、表面に波形状の凹凸が得られない。前記引き取り速度の例として5.5〜16.0m/分を挙げる。前記大径部13と小径部15を交互に形成したストランドを、前記ストランドカッター35の切断装置で所定長のペレットに切断して前記微生物担体10を得る。
【実施例】
【0021】
以下の原料から、表1、表2に示す配合とし、
図3に示した製造装置30を用いて実施例1〜15、比較例1〜3の微生物担体を製造した。
・ポリオレフィン系樹脂1:ポリエチレン樹脂、品名;ニポロンハード5700、MFR1.0(g/10min)、東ソー社製
・ポリオレフィン系樹脂2:ポリエチレン樹脂、品名;ニポロンハード2500、MFR8.0(g/10min)、東ソー社製
・無機粉末:炭酸カルシウム、品名;BF300、備北粉化工業社製
・アクリル樹脂:品名;アクリペットVH−001、三菱レイヨン社製
・ポリカーボネート:品名;パンライトL1225、帝人化成社製
・ABS樹脂:品名;PA767R、チーメイ社製
・親水化剤:木粉
・発泡剤:重曹(炭酸水素ナトリウム)、東ソー社製
押出機は、品名;二軸押出機KTX30、神戸製鋼社製であり、押出機の条件は、ダイ3mmφ×4つ、バレルおよびダイ温度180℃、吐出量40kg/時、押し出し速度5.5m/分、スクリュー回転数400rpmである。また、微生物担体の長さ(ストランドの切断長さ)は3mmであり、引き取り速度は各々表1及び表2に示すとおりである。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
実施例1〜15、比較例1〜3の微生物担体に対して、見掛け密度(g/ml)、比重、大径部の平均外径D(mm)、小径部の平均外径d(mm)、径比D/d、大径部間距離(mm)、水沈降性(%)について測定した。見掛け密度の測定はJIS K 7365:1999、比重の測定はJIS K 7112:1999 B法に従って行った。大径部の平均外径の測定および小径部の平均外径の測定はノギスにより1/100mmの単位でn=5測定した平均値である。水沈降性は50個のペレット(微生物担体)を表面が水に濡れるように水槽表面で水に付着した後、20cmの水深の水槽に2分間放置した場合における該水槽底部へ沈殿したペレット数の百分率である。沈降速度は、ペレットを表面が水に濡れるように水槽表面で水に付着した後、水深20cm水槽において、水槽上部から底部への落下時間をストップウォッチにて測定し、5個の平均を算出した。実施例及び比較例の測定結果を表1、表2の下部に示す。
【0025】
なお、比較例1は
図4の(4−1)に示す比較例1の外周面に対する電子顕微鏡写真のように、外周面に微細な凹凸面が形成されるものの、小径部と大径部が測定可能な波形状ではなく測定できなかった。比較例2は外周面に波形状の凹凸が存在した。比較例3については表面に波形状ができなかった。
【0026】
実施例1〜15については、表1の測定結果に示すとおり、比重が1より大きく、水沈降性が100%と良好であった。また、非多孔質物質からなって、大径部の平均外径と小径部の平均外径の比(D/d)を1.03〜1.28、大径部間距離を0.86〜2.14と調整することができた。なお、
図4の(4−2)は、実施例2の外周面に対する電子顕微鏡写真であり、実施例2の外周面に大径部と小径部が交互に明確に形成されている。これにより、実施例1〜15では、担体表面にのみ微生物を適正量付着させることができるため水処理能力に優れ、かつ水中で長時間使用しても水中汚染を生じることもなく、その上、微生物の発生するガスによる浮力も発生することがない嫌気性処理に好適な微生物担体を得ることができた。
【0027】
一方、発泡剤および親水化剤を含んだ比較例1は、表2の測定結果に示すとおり、水沈降性が0%であり、さらに外周面に微細な凹凸面が形成されるものの、表面の凹凸を擦ると削れてしまい、嫌気性処理に不適であった。また、無機粉末の添加量が本発明構成より少ない比較例2は、表2の測定結果に示すとおり、水沈降性が0%であり、嫌気性処理に不適であった。また、MFRが5(g/10min)以上のポリオレフィン系樹脂を用いた比較例3は、水沈降性は良好であったものの、表面に波形状ができず微生物を適正量付着させることができなかった。
【符号の説明】
【0028】
10 微生物担体
13 大径部
15 小径部