特許第5964212号(P5964212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964212
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】外科手術用鉗子
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20160721BHJP
   A61B 17/32 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   A61B18/14
   A61B17/32
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-245484(P2012-245484)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2013-103129(P2013-103129A)
(43)【公開日】2013年5月30日
【審査請求日】2015年7月23日
(31)【優先権主張番号】13/293,754
(32)【優先日】2011年11月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー エム. ローイ
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ ジェイ. コールソン
(72)【発明者】
【氏名】サラ イー. アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エム. シャープ
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−98139(JP,A)
【文献】 特表2011−526157(JP,A)
【文献】 特開2011−212315(JP,A)
【文献】 特表平10−508781(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0082457(US,A1)
【文献】 特開2002−95676(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0234355(US,A1)
【文献】 特開2003−245285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドエフェクタアセンブリであって:
第一の顎部材および第二の顎部材であって、該顎部材のうちの少なくとも一方は、他方に対して、間隔を空けた位置と、該顎部材間に組織を把持するための近接した位置との間で移動可能であり、該顎部材の各々は、エネルギー源に接続されるように適合された導電性組織封止プレートを備え、該組織封止プレートは、互いに無関係に選択的にエネルギー付与可能であり、そして該組織封止プレート間および組織にエネルギーを伝導して、組織を封止するように構成されている、第一の顎部材および第二の顎部材;ならびに
遠位組織切断表面および上部組織切断表面を備えるナイフであって、該ナイフは、該顎部材に対して、引き込み位置と、該ナイフが該顎部材間に延びる延長位置との間で選択的に並進可能であり、該遠位組織切断表面は、該引き込み位置から該延長位置への該ナイフの並進の際の、動的組織切断のために構成されており、該上部組織切断表面は、該ナイフが該延長位置に配置されているときの、静的組織切断のために構成されており、該ナイフは、該エネルギー源に接続されるように適合されており、該ナイフは、該組織封止プレートとは無関係に選択的にエネルギー付与可能であり、そして該ナイフと該組織封止プレートのうちの少なくとも1つとの間、および組織にエネルギーを伝導して、組織を電気的に切断するように構成されている、ナイフ、
を備える、エンドエフェクタアセンブリ、
を備える、鉗子。
【請求項2】
前記顎部材を前記間隔を空けた位置と前記近接した位置との間で選択的に移動させるためのハンドルアセンブリをさらに備える、請求項1に記載の鉗子。
【請求項3】
前記ナイフを前記引き込み位置と前記延長位置との間で選択的に並進させるためのトリガアセンブリをさらに備える、請求項1に記載の鉗子。
【請求項4】
前記第一の顎部材の前記組織封止プレートに選択的にエネルギー付与するための第一の作動スイッチ、および前記第二の顎部材の前記組織封止プレートに選択的にエネルギー付与するための第二の作動スイッチをさらに備える、請求項1に記載の鉗子。
【請求項5】
前記ナイフに選択的にエネルギー付与するためのナイフ起動スイッチをさらに備える、請求項1に記載の鉗子。
【請求項6】
前記ナイフが前記引き込み位置と前記延長位置との間で並進する際に、該ナイフならびに前記第一の顎部材および前記第二の顎部材の前記組織封止プレートが、これらの間および組織にエネルギーを伝導して、組織を電気的に切断するように、エネルギー付与可能である、請求項1に記載の鉗子。
【請求項7】
前記顎部材が前記間隔を空けた位置に配置され、そして前記ナイフが前記延長位置に配置される際に、該ナイフおよび前記第二の顎部材の前記組織封止プレートが、これらの間および組織にエネルギーを伝導して、テント形成によって組織を電気的に切断するように、エネルギー付与可能である、請求項1に記載の鉗子。
【請求項8】
前記ナイフおよび前記第一の顎部材の前記組織封止プレートが、それらの間および組織にエネルギーを伝導して、鋏式切断によって組織を電気的に切断するように、エネルギー付与可能である、請求項1に記載の鉗子。
【請求項9】
前記ナイフと前記組織封止プレートとの間に配置された少なくとも1つの絶縁体をさらに備え、該絶縁体は、該ナイフと該組織封止プレートとの間の接触を妨げるように構成されている、請求項1に記載の鉗子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(技術分野)
本開示は、外科手術用器具に関し、そしてより特定すると、組織を把持し、封止し、そして/または解剖するための外科手術用鉗子に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の背景)
鉗子とは、ペンチ様の器具であり、脈管または組織を把持し、クランプし、そして締め付けるために、その顎間の機械的作用に依存する。電気外科手術用鉗子は、機械的クランプ作用と電気エネルギーとの両方を利用して、組織および血管を加熱して組織を凝固および/または焼灼することによって、止血を行う。特定の外科手術手順は、組織を単に焼灼する以上のことを要求し、そして組織、脈管および特定の脈管束を「封止」するために、クランプ圧、正確な電気外科エネルギー制御およびギャップ距離(すなわち、組織を挟んで閉じる際の対向する顎部材間の距離)の独特の組み合わせに依存する。
【0003】
代表的に、一旦、脈管が封止されると、外科医は、この新たに形成された組織封止部に沿って、この脈管を正確に切断しなければならない。従って、組織封止部を形成した後にその組織を効果的に切断するナイフまたは刃部材を組み込む、多くの脈管封止器具が設計されている。特定の例において、下にある脈管(単数または複数)に到達する目的で、あるいは他の目的で、組織を解剖または切断することが必要であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
エンドエフェクタアセンブリであって:
第一の顎部材および第二の顎部材であって、該顎部材のうちの少なくとも一方は、他方に対して、間隔を空けた位置と、該顎部材間に組織を把持するための近接した位置との間で移動可能であり、該顎部材の各々は、エネルギー源に接続されるように適合された導電性組織封止プレートを備え、該組織封止プレートは、互いに無関係に選択的にエネルギー付与可能であり、そして該組織封止プレート間および組織にエネルギーを伝導して、組織を封止するように構成されている、第一の顎部材および第二の顎部材;ならびに
遠位組織切断表面および上部組織切断表面を備えるナイフであって、該ナイフは、該顎部材に対して、引き込み位置と、該ナイフが該顎部材間に延びる延長位置との間で選択的に並進可能であり、該遠位組織切断表面は、該引き込み位置から該延長位置への該ナイフの並進の際の、動的組織切断のために構成されており、該上部組織切断表面は、該ナイフが該延長位置に配置されているときの、静的組織切断のために構成されており、該ナイフは、該エネルギー源に接続されるように適合されており、該ナイフは、該組織封止プレートとは無関係に選択的にエネルギー付与可能であり、そして該ナイフと該組織封止プレートのうちの少なくとも1つとの間、および組織にエネルギーを伝導して、組織を電気的に切断するように構成されている、ナイフ、
を備える、エンドエフェクタアセンブリ、
を備える、鉗子。
(項目2)
前記顎部材を前記間隔を空けた位置と前記近接した位置との間で選択的に移動させるためのハンドルアセンブリをさらに備える、上記項目に記載の鉗子。
(項目3)
前記ナイフを前記引き込み位置と前記延長位置との間で選択的に並進させるためのトリガアセンブリをさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載の鉗子。
(項目4)
前記第一の顎部材の前記組織封止プレートに選択的にエネルギー付与するための第一の作動スイッチ、および前記第二の顎部材の前記組織封止プレートに選択的にエネルギー付与するための第二の作動スイッチをさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載の鉗子。
(項目5)
前記ナイフに選択的にエネルギー付与するためのナイフ起動スイッチをさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載の鉗子。
(項目6)
前記ナイフが前記引き込み位置と前記延長位置との間で並進する際に、該ナイフならびに前記第一の顎部材および前記第二の顎部材の前記組織封止プレートが、これらの間および組織にエネルギーを伝導して、組織を電気的に切断するように、エネルギー付与可能である、上記項目のうちのいずれかに記載の鉗子。
(項目7)
前記顎部材が前記間隔を空けた位置に配置され、そして前記ナイフが前記延長位置に配置される際に、該ナイフおよび前記第二の顎部材の前記組織封止プレートが、これらの間および組織にエネルギーを伝導して、テント形成によって組織を電気的に切断するように、エネルギー付与可能である、上記項目のうちのいずれかに記載の鉗子。
(項目8)
前記ナイフおよび前記第一の顎部材の前記組織封止プレートが、それらの間および組織にエネルギーを伝導して、鋏式切断によって組織を電気的に切断するように、エネルギー付与可能である、上記項目のうちのいずれかに記載の鉗子。
(項目9)
前記ナイフと前記組織封止プレートとの間に配置された少なくとも1つの絶縁体をさらに備え、該絶縁体は、該ナイフと該組織封止プレートとの間の接触を妨げるように構成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の鉗子。
【0005】
(摘要)
鉗子のエンドエフェクタは、間隔を空けた位置と、組織を把持するための近接した位置との間で移動可能な、第一の顎部材および第二の顎部材を備える。各顎部材は、選択的にエネルギー付与可能な組織封止プレートを備える。これらの組織封止プレートは、これらの組織封止プレート間および組織にエネルギーを伝導して、組織を封止するように構成される。ナイフは、遠位表面および上部表面を備える。このナイフは、引き込み位置と、このナイフが顎部材間に延びる延長位置との間で選択的に並進可能である。この遠位表面は、引き込み位置から延長位置へのナイフの並進の際の、動的組織切断のために構成される。この上部表面は、ナイフが延長位置にある状態での、静的組織切断のために構成される。このナイフは選択的にエネルギー付与可能であり、そしてこのナイフとこれらの組織封止プレートのうちの一方または両方との間、および組織にエネルギーを伝導して、組織を電気的に切断するように構成される。
【0006】
(要旨)
本明細書中で使用される場合、用語「遠位」とは、使用者から遠い方の、記載される部分をいい、一方で、用語「近位」とは、使用者に近い方の、記載される部分をいう。用語「ナイフ」および「組織切断表面」は、本明細書中で使用される場合、機械的切断のための鋭利な切断縁部を含む構成要素またはその一部分を、必ずしも意味しなくてもよい。むしろ、「ナイフ」および「組織切断表面」は、組織を切断するために使用される構成要素またはその一部分(例えば、電気的組織切断のための平滑な構成要素もしくは表面、電気的組織切断を容易にするための縁部もしくは角、機械的組織切断のための鋭利な構成要素もしくは表面、またはこれらの組み合わせ)をより一般的にいうために、本明細書中で使用される。
【0007】
本明細書中に記載される局面の任意のものが、矛盾しない程度まで、本明細書中に記載される他の局面の任意のものと組み合わせて使用され得る。
【0008】
本開示の1つの局面に従って、鉗子が提供される。この鉗子は、第一の顎部材および第二の顎部材を有するエンドエフェクタアセンブリを備える。これらの顎部材のうちの一方または両方は、他方に対して、間隔を空けた位置と、これらの顎部材間に組織を把持するための近接した位置との間で移動可能である。各顎部材は、エネルギー源に接続されるように適合された導電性組織封止プレートを備える。これらの組織封止プレートは、互いに無関係に選択的にエネルギー付与可能であり、そしてこれらの組織封止プレート間および組織にエネルギーを伝導して、組織を封止するように構成される。ナイフは、遠位組織切断表面および上部組織切断表面を備える。このナイフは、これらの顎部材に対して、引き込み位置と、このナイフがこれらの顎部材間に延びる延長位置との間で選択的に並進可能である。この遠位組織切断表面は、このナイフが引き込み位置から延長位置へと並進する際の、動的組織切断のために構成される。この上部組織切断表面は、このナイフが延長位置に配置されているときの、静的組織切断のために構成される。このナイフは、エネルギー源に接続されるように適合され、そして組織封止プレートとは無関係に、選択的にエネルギー付与可能である。このナイフは、このナイフとこれらの組織封止プレートのうちの一方または両方との間、および組織にエネルギーを伝導して、組織を電気的に切断するように構成される。
【0009】
1つの局面において、ハンドルアセンブリが、顎部材を間隔を空けた位置と近接した位置との間で選択的に移動させるために、提供される。
【0010】
別の局面において、トリガアセンブリが、ナイフを引き込み位置と延長位置との間で選択的に並進させるために、提供される。
【0011】
別の局面において、第一の作動スイッチが、第一の顎部材の組織封止プレートに選択的にエネルギー付与するために提供され、そして第二の作動スイッチが、第二の顎部材の組織封止プレートに選択的にエネルギー付与するために提供される。
【0012】
なお別の局面において、ナイフ起動スイッチが、ナイフに選択的にエネルギー付与するために提供される。
【0013】
さらに別の局面において、ナイフが引き込み位置と延長位置との間で並進する際に、ナイフならびに第一の顎部材および第二の顎部材の組織封止プレートは、これらの間および組織にエネルギーを伝導して、組織を電気的に切断するように、エネルギー付与可能である。
【0014】
なおさらに別の局面において、顎部材が間隔を空けた位置に配置され、そしてナイフが延長位置に配置されているときに、ナイフおよび第二の顎部材の組織封止プレートは、これらの間および組織にエネルギーを伝導して、テント形成(tenting)によって組織を電気的に切断するようにエネルギー付与可能である。
【0015】
別の局面において、ナイフおよび第一の顎部材の組織封止プレートは、これらの間および組織にエネルギーを伝導して、鋏式切断によって組織を電気的に切断するようにエネルギー付与可能である。
【0016】
別の局面において、1つ以上の絶縁体が、ナイフと組織封止プレートとの間に配置される。これらの絶縁体は、このナイフとこれらの組織封止プレートとの間の接触を妨げるように構成される。
【0017】
外科手術の方法が、本開示に従って提供される。この方法は、第一の顎部材および第二の顎部材を備えるエンドエフェクタアセンブリを有する鉗子を提供する工程を包含する。各顎部材は、エネルギー源に接続されるように適合された導電性組織封止プレートを備える。ナイフは、第一の顎部材と第二の顎部材との間で選択的に並進可能である。この方法は、顎部材を互いに対して近接した位置に移動させて、これらの顎部材間に組織を把持する工程、第一の顎部材および第二の顎部材のうちの一方(または両方)の組織封止プレートにエネルギー付与して、これらの顎部材間に把持された組織を封止する工程、これらの顎部材を互いに対して間隔を空けた位置に移動させる工程、ナイフをこれらの顎部材間に展開する工程、組織封止部をこのナイフの上縁部の上に重ねる工程、ならびにエンドエフェクタアセンブリを組織に対して横方向に移動させて、テント形成によって組織を切断する工程をさらに包含する。
【0018】
1つの局面において、このナイフは、このエネルギー源に接続されるように適合される。このような局面において、このナイフは、テント形成によって組織を電気的に切断するように、エネルギー付与され得る。この鉗子は、このナイフに選択的にエネルギー付与するためのナイフ起動スイッチをさらに備え得る。
【0019】
別の局面において、この鉗子は、このナイフをこれらの顎部材間で選択的に展開するため(例えば、このナイフを引き込み位置と延長位置との間で並進させるため)の、トリガアセンブリを備える。
【0020】
なお別の局面において、この鉗子は、これらの顎部材を間隔を空けた位置と近接した位置との間で移動させるための、ハンドルアセンブリを備える。
【0021】
さらに別の局面において、この鉗子は、第一の顎部材の組織封止プレートに選択的にエネルギー付与するための第一の作動スイッチ、および第二の顎部材の組織封止プレートに選択的にエネルギー付与するための第二の作動スイッチを備える。
【0022】
本開示の別の局面に従って提供される外科手術の方法は、上記局面のいずれかによる鉗子を提供する工程を包含する。この方法は、顎部材を互いに対して近接した位置に移動させて、これらの顎部材間に組織を把持する工程、第一の顎部材および第二の顎部材のうちの一方(または両方)の組織封止プレートにエネルギー付与して、これらの顎部材間に把持された組織を封止する工程、これらの顎部材を互いに対して開く工程、ナイフをこれらの顎部材間に展開する工程、組織封止部をこれらの顎部材間に配置する工程、ならびにこれらの顎部材を間隔を空けた位置から近接した位置へと移動させて、この組織封止部に沿って組織を鋏式に切断する工程を、さらに包含する。
【0023】
1つの局面において、このナイフは、このエネルギー源に接続されるように適合される。このような局面において、このナイフは、組織を電気的に鋏式に切断するようにエネルギー付与され得る。この鉗子は、このナイフに選択的にエネルギー付与するためのナイフ起動スイッチをさらに備え得る。
【0024】
本開示の種々の局面が、図面を参照しながら詳細に記載される、図面において、同様の参照番号は、類似または同一の要素を識別する役に立つ。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本開示に従って使用するために構成された内視鏡外科手術用鉗子の正面斜視図である。
図2図2は、本開示に従って使用するために構成された観血外科手術用鉗子の正面斜視図である。
図3図3は、図1または図2の鉗子と一緒に使用するために構成されたエンドエフェクタアセンブリの拡大正面斜視図である。
図4図4は、図1または図2の鉗子と一緒に使用するために構成されたナイフアセンブリの斜視図である。
図5図5Aは、顎部材が間隔を空けた位置で示され、そしてナイフアセンブリが引き込み位置で示されている、図3のエンドエフェクタアセンブリの長手軸方向断面図である。図5Bは、顎部材が近接した位置で示され、そしてナイフアセンブリが引き込み位置で示されている、図3のエンドエフェクタアセンブリの長手軸方向断面図である。図5Cは、顎部材が近接した位置で示され、そしてナイフアセンブリが延長位置で示されている、図3のエンドエフェクタアセンブリの長手軸方向断面図である。
図6図6Aは、顎部材が間隔を空けた位置で示され、そしてナイフアセンブリが延長位置で示されている、図3のエンドエフェクタアセンブリの正面斜視図である。図6Bは、顎部材が間隔を空けた位置にあり、そしてナイフアセンブリが組織を切開するための延長位置にある、図3のエンドエフェクタアセンブリの正面斜視図である。
図7図7Aは、顎部材が間隔を空けた位置で示され、そしてナイフアセンブリが延長位置で示されている、図3のエンドエフェクタアセンブリの側面図である。図7Bは、顎部材が近接した位置に向かって移動するのが示され、そしてナイフアセンブリが延長位置で示されている、図3のエンドエフェクタアセンブリの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(詳細な説明)
ここで図1および図2を参照すると、図1は、内視鏡外科手術手順に関連して使用するための鉗子10を図示し、そして図2は、従来の観血外科手術手順に関連して使用することを想定された観血用鉗子10’を図示する。本明細書中での目的で、内視鏡器具(例えば、鉗子10)または観血器具(例えば、鉗子10’)のいずれも、本開示に従って利用され得る。明らかに、異なる電気的および機械的な接続および考慮事項が、各特定の型の器具に適用される。しかし、エンドエフェクタアセンブリおよびその作動特徴に関する新規局面は、観血構成と内視鏡構成との両方に関して、一般に一致するままである。
【0027】
ここで図1を参照すると、内視鏡用鉗子10が提供され、この内視鏡用鉗子は、長手方向軸「X−X」を規定し、そしてハウジング20、ハンドルアセンブリ30、回転アセンブリ70、トリガアセンブリ80、およびエンドエフェクタアセンブリ100を備える。鉗子10は、シャフト12をさらに備え、このシャフトは、エンドエフェクタアセンブリ100に機械的に係合するように構成された遠位端14、およびハウジング20に機械的に係合する近位端16を有する。鉗子10はまた、電気外科ケーブル610を備え、この電気外科ケーブルは、鉗子10を発電機(図示せず)または他の適切な電源に接続するが、鉗子10は代替的に、バッテリにより電力を与えられる器具として構成されてもよい。ケーブル610は、このケーブルを通って延びるワイヤ(図示せず)を備え、このワイヤは、例えば作動スイッチ90の作動の際に、エンドエフェクタアセンブリ100の顎部材110、120のそれぞれの封止プレート112、122のうちの少なくとも一方に電気エネルギーを提供する目的で、シャフト12を通って延びるために充分な長さを有する。
【0028】
図1を続けて参照すると、ハンドルアセンブリ30は、固定ハンドル50および可動ハンドル40を備える。固定ハンドル50は、ハウジング20と一体的に関連し、そして可動ハンドル40は、固定ハンドル50に対して移動可能である。回転アセンブリ70は、長手方向軸「X−X」の周りでいずれの方向にも回転可能であり、エンドエフェクタ100を長手方向軸「X−X」の周りで回転させる。ハウジング20は、鉗子10の内部作業構成要素を収容する。
【0029】
エンドエフェクタアセンブリ100は、シャフト12の遠位端14に取り付けられて示され、そして対向する1対の顎部材110、120を備える。顎部材110、120の各々は、それぞれ導電性組織封止プレート112、122を備える。エンドエフェクタアセンブリ100は、片側性アセンブリとして設計され、例えばこの場合、顎部材120はシャフト12に対して固定されており、そして顎部材110は、シャフト12および固定された顎部材120に対して移動可能である(逆の構成もまた想定される)。しかし、エンドエフェクタアセンブリ100は代替的に、両側性アセンブリとして構成されてもよく、すなわちこの場合、顎部材110と顎部材120との両方が、互いに対して、およびシャフト12に対して移動可能である。ナイフアセンブリ180(図4図5C)がシャフト12内に配置され、そしてナイフチャネル115、125(図5A図5C)が一方または両方の顎部材110、120に規定されて、例えば、トリガアセンブリ80のトリガ82の起動によって、このナイフチャネルを通るナイフ184(図4図5C)の往復を可能にする。エンドエフェクタアセンブリ100およびナイフアセンブリ180(図4図5C)の具体的な特徴は、本明細書中以下でより詳細に記載される。
【0030】
図1の参照を続けると、ハンドルアセンブリ30の可動ハンドル40は最終的に、駆動アセンブリ(図示せず)に接続され、これらは一緒になって、機械的に協働して、顎部材110、120の、間隔を空けた位置と近接した位置との間での動きを与えて、顎部材110、120のそれぞれの封止プレート112と122との間に配置された組織を把持する。図1に示されるように、可動ハンドル40は最初、固定ハンドル50から間隔を空けており、そしてこれに対応して、顎部材110、120は、間隔を空けた位置にある。可動ハンドル40は、この初期位置から押された位置へと移動可能であり、顎部材110と120との間に組織を把持するために、顎部材110、120を近接した位置に移動させる(図5B図5Cを参照のこと)。
【0031】
ここで図2を参照すると、観血用鉗子10’が示されており、この観血用鉗子は、2つの細長シャフト12a、12bを備え、各細長シャフトは、それぞれ近位端16a、16bおよび遠位端14a、14bを有する。鉗子10(図1)と同様に、鉗子10’は、エンドエフェクタアセンブリ100と一緒に使用するために構成される。より具体的には、エンドエフェクタアセンブリ100は、シャフト12a、12bのそれぞれの遠位端14a、14bに取り付けられる。上記のように、エンドエフェクタアセンブリ100は、対向する1対の顎部材110、120を備え、これらの顎部材は、互いに旋回可能に結合される。各シャフト12a、12bは、その近位端16a、16bに配置されたハンドル17a、17bを備える。各ハンドル17a、17bは、使用者の指を受容するための、これらのハンドルを通る指穴18a、18bを規定する。理解され得るように、指穴18a、18bは、シャフト12a、12bの互いに対する移動を容易にし、これは次に、顎部材110、120を開位置(この位置において、顎部材110、120は、互いに対して間隔を空けた関係に位置する)から閉位置(この位置において、顎部材110、120は協働して、間に組織を把持する)へと旋回させる。
【0032】
ラチェット30’が、旋回中の種々の位置で顎部材110、120を互いに対して選択的にロックするために、備えられ得る。ラチェット30’は、顎部材110と120との間で望まれる閉鎖力の量を使用者が容易かつ迅速に確認および制御することを可能にする、目盛または他の視覚的な印を備え得る。
【0033】
図2を続けて参照すると、シャフトのうちの一方(例えば、シャフト12b)は、近位シャフトコネクタ19を備え、この近位シャフトコネクタは、鉗子10’を電気エネルギーの源(例えば、電気外科発電機(図示せず))に接続するように設計される。近位シャフトコネクタ19は、電気外科ケーブル610’を鉗子10’に固定し、その結果、使用者は、必要に応じて、電気外科エネルギーを顎部材110および120のぞれぞれの導電性組織封止プレート112、122に選択的に印加し得る。
【0034】
鉗子10’は、ナイフアセンブリ180(図4図5C)をさらに備え得る。このナイフアセンブリは、シャフト12a、12bおよび顎部材110、120の一方または両方に規定されたそれぞれのナイフチャネル115、125(図5A図5C)のいずれかの中に配置されて、その中を通るナイフ184(図5図8C)の往復を可能にする。
【0035】
ここで図3を参照すると、エンドエフェクタアセンブリ100(顎部材110、120を備える)は、上で議論された鉗子10または鉗子10’のいずれか、あるいは他の任意の適切な外科手術用器具(顎部材110、120を互いに対して間隔を空けた位置と、顎部材間に組織を把持するための近接した位置との間で旋回させることが可能なもの)と一緒に使用するために構成される。しかし、簡単さおよび一貫性の目的で、エンドエフェクタアセンブリ100は、鉗子10のみを参照しながら本明細書中以下で記載される。
【0036】
顎部材110、120は、図3に示されるように、各々が、外側の絶縁性の顎ハウジング111、121、およびそれぞれの顎ハウジング111、121の頂部に互いに対して対向する関係で配置された導電性組織封止プレート112、122を備える。組織封止プレート112、122は、電気エネルギー(例えば、電気外科エネルギー)の源に互いに無関係に接続されるように適合され、その結果、以下に詳細に記載されるように、組織封止プレート112、122のいずれかまたは両方は、特定の目的に依存して、選択的にエネルギー付与され得る。作動スイッチ90(図1)は、組織封止プレート112、122へのエネルギーの供給を制御するために、選択的に起動可能である。より具体的には、作動スイッチ90(図1)は、第一のスイッチ構成要素90aおよび第二のスイッチ構成要素90b(図1)を備えて、組織封止プレート112、122のいずれかまたは両方の選択的な作動を容易にし得る。
【0037】
顎部材110、120の一方または両方は、長手軸方向に延びるナイフチャネル115、125(図5A図5C)を備え、このナイフチャネルは、上記のように、このナイフチャネルを通るナイフ184(図4図5C)の往復を可能にするように構成される。絶縁体124が、ナイフチャネル115、125の各々を裏打ちして、ナイフ184(図4)を組織封止プレート112、122から電気的に絶縁する。
【0038】
ここで図4を参照すると、ナイフアセンブリ180は一般に、ナイフ184およびナイフ棒186を備える。ナイフ184は、ナイフ184の近位端185においてナイフ棒186に結合され、そしてナイフ棒186から遠位に延びて、その遠位端187に組織切断部分188を規定する。ナイフ184の組織切断部分188は、遠位組織切断表面189a(ナイフ184が組織に対して長手軸方向に並進する際の、組織の切断を容易にするため)と上部組織切断表面189b(組織切断部分188の長さ方向に沿って延び、ナイフ184が組織に対して横方向に並進する際の、組織の切断を容易にするため)との両方を規定する。組織切断表面189a、189bは、鋭利な刃の構成、鈍い刃の構成、平滑な構成、またはこれらの組み合わせを規定し得る(例えば、遠位組織切断表面189aは鋭利な刃を規定し得、一方で、上部組織切断表面189bは鈍い構成を規定するが、逆の構成または他の構成もまた、想定される)。さらに、組織切断表面189a、189bは、電流を集中させて組織の電気的切断を容易にするために、種々の異なる縁部または角の構成を規定し得る。
【0039】
図4を続けて参照すると、ナイフ184は、リード線183を介してエネルギー(例えば、電気外科エネルギー)の源に結合される。リード線183は、ナイフ184からシャフト12(図1)を通って近位に延び、最終的に、エネルギー源(例えば、ハウジング20内に配置された可搬型発電機(図示せず)(バッテリにより電力を与えられる器具について)、または外部発電機(図示せず))に、ケーブル610(図1)を介して結合される。ハウジング20(図1)に配置されたナイフ作動スイッチ92(図1)が、ナイフ184にエネルギー付与するため(例えば、リード線183からナイフ184へのエネルギーの供給を制御するため)に、選択的に作動可能である。
【0040】
ここで図1図3、および図5A図7Bを参照すると、エンドエフェクタアセンブリ100は、種々の異なるモードで作動するように、そして種々の異なる作動モードの間を効率的に移行するように、構成される。従って、エンドエフェクタアセンブリ100は、さらなる器具類の使用を必要とせずに、そしてエンドエフェクタアセンブリ100を異なる作動モードに移行させるためにエンドエフェクタアセンブリ100を引き抜くことを必要とせずに、種々の外科手術作業を実施することが可能である。具体的には、エンドエフェクタアセンブリ100は、少なくとも:顎部材110と120との間に組織を把持するため;顎部材110と120との間に把持された組織を封止するため;顎部材110と120との間に把持された組織を機械的に切断するため;顎部材110と120との間に把持された組織を電気的/電気機械的に切断するため;顎部材110、120が間隔を空けた位置に配置された状態で、組織を機械的に切断するため;顎部材110、120が間隔を空けた位置に配置された状態で、組織を電気的/電気機械的に切断するため;組織を機械的に鋏式切断するため;および組織を電気的/電気機械的に鋏式切断するために構成される。各作動モードは、以下に詳細に記載される。
【0041】
図1図3および図5A図5Cを参照して、顎部材110と120との間に把持された組織を、把持、封止および/または切断(例えば、組織を機械的、電気的、もしくは電気機械的に切断)するための、エンドエフェクタアセンブリ100の使用が記載される。最初に、顎部材110、120が間隔を空けた位置に配置された状態で(図5A)、エンドエフェクタアセンブリ100が、把持、封止および/または切断されるべき組織が顎部材110と120との間に配置されるような位置に、操作される。次に、可動ハンドル40が固定ハンドル50に対して近位に引かれ、その結果、顎部材110が顎部材120に対して、間隔を空けた位置から近接した位置へと旋回して、顎部材110、120のそれぞれの組織封止プレート112と122との間に組織を把持する(図5B)。その後、エネルギーが、例えば、作動スイッチ90の作動によって、組織封止プレート112および/または組織封止プレート122に供給され得、そして組織に伝導されて、組織の封止を行い得る。例えば、顎部材110の組織封止プレート112は、例えば、第一のスイッチ構成要素90aの作動によって、第一の電位にエネルギー付与され得、一方で、顎部材120の組織封止プレート122は、例えば、第二のスイッチ構成要素90bの作動によって、第一の電位とは異なる第二の電位にエネルギー付与され(またはエネルギー付与されず)、これによって、組織封止プレート112と122との間に電位差を生じさせ、その結果、エネルギーがこれらの組織封止プレート間および組織に伝導されて、組織封止を行う。すなわち、この構成において、組織封止プレート112は、「活性」電極として機能し、一方で、組織封止プレート122は、「戻り」電極として機能する。組織を封止するための他の構成もまた想定され、例えば、この構成において、組織封止プレート122は「活性」電極であり、そして組織封止プレート112は「戻り」電極である。
【0042】
一旦、組織封止が完了すると(または把持および切断のみが望まれる場合)、ナイフ184は、例えば、トリガ82の作動によって、引き込み位置(図5B)から延長位置(図5C)へと前進させられ得、その結果、ナイフ184は、顎部材110、120のそれぞれのナイフチャネル115、125を通って並進して、顎部材110と120との間に把持された組織を切断する。ナイフ184が顎部材110、120のそれぞれのナイフチャネル115、125を通って遠位に並進するにつれて、ナイフ184の遠位組織切断部分189aは、顎部材110と120との間に把持された組織を機械的に切断または解剖する。
【0043】
図1図3および図5A図5Cの参照を続けると、ナイフ184は、ナイフ184が顎部材110、120を通って前進する際にエネルギー付与されて、組織の切断を容易にし得る。より具体的には、顎部材110と120との間に把持された組織を電気的/電気機械的に切断するために、ナイフ作動スイッチ92が作動させられて、リード線183(図4)を介してナイフ184(「活性」電極)にエネルギーを供給し得る。このモードにおいて、組織封止プレート112、122はエネルギー付与されず(またはナイフ184とは異なる電位にエネルギー付与され)、従って、「戻り」電極として機能する。使用において、エネルギー付与されたナイフ184が顎部材110、120を通って並進すると、エネルギーが遠位組織切断表面189aと組織封止プレート112、122の間、およびこれらの間の組織に伝導されて、組織を電気的に切断し、これと同時に、組織を通る遠位組織切断表面189aの前進は、組織を機械的に切断する。電気的切断のための組織を通してのエネルギーのこの伝導はまた、切断線に隣接する組織にいくらかの凝固をもたらす。顎部材110、120のそれぞれのナイフチャネル115、125を裏打ちする絶縁体124が、ナイフ184がこのナイフチャネルを通って並進する際のナイフ184と組織封止プレート112、122との間の接触を妨げ、従って、これらの電極の短絡を妨げる。
【0044】
組織を封止および/または分割するために使用される、エンドエフェクタアセンブリ100の特定のモード(例えば、把持、組織封止、機械的組織切断、および/または電気的組織切断)は、組織のサイズおよび/または組成、実施されるべき手順、他の解剖学的考慮事項などに依存し得る。例えば、特定の組織(例えば、より無血管の組織)について、または迅速な解剖が必要とされる場合、組織を顎部材110と120との間に把持し、ナイフ184にエネルギー付与し、そしてナイフ184を顎部材間で前進させて組織を電気的に切断することで充分であり得、この間に、切断線の隣接位置での凝固は、出血を充分に減少させる。他の組織(例えば、より血管性の組織)について、または迅速な解剖がさほど重要ではない場合、組織が把持および封止され得、その後、ナイフ184が前進させられて、この組織封止部に沿って組織を切断する。このモードにおいて、組織のサイズおよび/または組成、あるいは他の要因が、機械的切断が必要とされるのか、電気的/電気機械的切断が必要とされるのかを決定し得る。
【0045】
図1図3および図6A図6Bを参照して、顎が開いた状態での組織切断(例えば、顎部材110、120が間隔を空けた位置に配置されている)のための、エンドエフェクタアセンブリ100の使用が記載される。上記のように、ナイフ184は、ナイフ184の組織切断部分188の長さ方向に沿って延びる上部組織切断表面189bを備える。従って、顎部材110、120が間隔を空けた位置に配置され、そしてナイフ184が延長位置にある状態では、上部組織切断表面189bが露出され、その結果、エンドエフェクタアセンブリ100は、組織を通して横方向に前進させられて、ナイフ184の上部組織切断表面189bを使用して、組織を切断し得る。
【0046】
使用において、顎部材110、120が間隔を空けた位置に配置された状態で、エンドエフェクタアセンブリ100は、切断されるべき組織に隣接する位置に移動させられる。この時点で、またはその前に、ナイフ184は、例えば、トリガアセンブリ80のトリガ82の作動によって、延長位置に前進させられる。ナイフ184は、トリガ82を作動した位置、すなわち押下された位置に維持することによって、延長位置に維持されるが、トリガアセンブリ80はまた、ナイフ184を延長位置に選択的にロックするための、ロック機構(明示的には示さない)を備えてもよい。機械的切断モードにおいて、ナイフ184が延長位置にある状態で、エンドエフェクタアセンブリ100は、組織に対して横方向に前進させられて、図6Bに示されるように、ナイフ184の上部組織切断表面189bを使用して、組織を機械的に切断する。
【0047】
電気的/電気機械的切断モードにおいて、ナイフ184は、顎が開いた状態での組織切断中にエネルギー付与されて、組織の切断を容易にする。より具体的には、顎部材110と120との間に把持された組織を電気的/電気機械的に切断するために、ナイフ作動スイッチ92が作動されて、リード線183(図4)を介して、ナイフ184(「活性」電極)にエネルギーを供給し得る。この構成において、組織封止プレート112はエネルギー付与されない。組織封止プレート122は、例えば、第二のスイッチ構成要素90bの作動によって、ナイフ184の電位とは異なる電位にエネルギー付与され、その結果、組織封止プレート122は、「戻り」電極として機能する。顎部材120のナイフチャネル125を裏打ちする絶縁体124は、ナイフ184と組織封止プレート122との間の接触を妨げ、これによって、これらの電極の短絡を妨げる。
【0048】
図1図3および図6A図6Bを続けて参照すると、ナイフ184が「活性」電極としてエネルギー付与され、そして組織封止プレート122が「戻り」電極としてエネルギー付与された状態で、エンドエフェクタアセンブリ100は、組織を通して横方向に前進させられて、顎部材110と120との間に配置された組織をテント形成によって電気的/電気機械的に切断し得る。テント形成は、図6Bに示されるように、切断されるべき組織がナイフ184の上部組織切断表面189bの上に重なり、そしてナイフ184の両側で顎部材120に向かって延びて、顎部材120の組織封止プレート122に接触し、これによって、テント様の構成を形成するように、エンドエフェクタアセンブリ100を配置することを包含する。この構成において、組織は、このテントの頂部でナイフ184の上部組織切断表面189bに接触し、そしてこのテントの側部で組織封止プレート122に接触し、その結果、エネルギーがナイフ184から組織を通して組織封止プレート122へと伝導されて、組織を電気的に切断し、同時に、上部組織切断表面189bは、組織を通って前進して、組織を機械的に切断する。切断中のエンドエフェクタアセンブリ100の組織に対する横方向の並進(すなわち、組織内へのナイフ184の上部組織切断表面189bの推進)は、組織に対する充分な張力を維持することを補助し、そしてナイフ184の両側で組織が組織封止プレート122に確実に接触することを補助し、従って、エンドエフェクタアセンブリ100が組織を通って横方向に並進する際に、この組織の切断を容易にする。
【0049】
最適なテント形成を達成する目的で、適切なナイフの高さが重要であることが見出された。小さすぎるナイフ高さは、組織に充分に張力を加えないかもしれず、この組織を切断することをより困難にし、そして組織を通るエネルギー路を不充分に規定する。他方で、大きすぎるナイフ高さは、大きすぎるテント形成をもたらし得、例えば、この場合、組織が組織封止プレート122に接触しないか、または充分に接触せず、ナイフ184と組織封止プレート122との間の組織を通る有効な電流路を減少させる。さらに、ナイフ184の両面は、誘電性物質(例えば、シリコーン、カプトン(登録商標)、または他の任意の適切な誘電性物質)でコーティングされて、エネルギーをナイフ184の上部組織切断表面189bに集中させ得、従って、切断中に、組織を通って組織封止プレート122に向かう、より規定された電流路を作製する。この誘電性コーティングはまた、エンドエフェクタアセンブリ100が把持および電気的/電気機械的組織切断モード(図5A図5Cを参照のこと)または電気的/電気機械的鋏式切断モード(図7A図7Bを参照のこと)において使用される場合に、有利である。例えば、この誘電性コーティングは、ナイフ184の組織切断表面(把持および電気的/電気機械的組織切断モードについては遠位組織切断表面189a、または電気的/電気機械的鋏式切断モードについては上部組織切断表面189b)におけるエネルギーの集中を容易にし、従って、組織を通る、より規定された電流路を作製する。
【0050】
エンドエフェクタアセンブリ100の顎が開いた状態での組織切断モード(例えば、顎が開いた状態での機械的切断モードと顎が開いた状態での電気的/電気機械的切断モードとの両方)は、迅速または繰り返しの組織切断(組織封止を伴わない)が必要とされる場合(例えば、下にある組織へのアクセスを提供するため)、特に有利である。例えば、顎が開いた状態での組織切断モードは、下にある組織または下にある外科手術部位に効率的かつ好都合にアクセスする目的で、エンドエフェクタアセンブリ100が、組織(例えば、複数層の組織)を連続的に切断して組織を通って前進することを可能にする。特定の組織(例えば、より小さい直径の組織)は、機械的切断を使用して切断され得、一方で、他の組織(例えば、より強い組織またはより大きい組織)は、テント形成および電気的/電気機械的切断の使用を必要とし得る。
【0051】
図1図3および図7A図7Bを参照して、組織を機械的または電気機械的に鋏式に切断するための、エンドエフェクタアセンブリ100の使用が記載される。上記のように、ナイフ184は、ナイフ184の組織切断部分188の長さ方向に沿って延びる上部組織切断表面189bを備える。従って、顎部材110、120が間隔を空けた位置に配置され、そしてナイフ184が延長位置にある状態では、上部組織切断表面189bが露出される。従って、顎部材110、120は、例えば、可動ハンドル40を繰り返し握ったり放したりすることによって、鋏様の様式で、間隔を空けた位置と近接した位置との間で繰り返し動かされて、顎部材110と120との間に配置された組織を機械的に切断し得る。より具体的には、使用において、組織は、顎部材110と120との間に配置され、その結果、顎部材110、120が間隔を空けた位置から近接した位置へと移動するにつれて、ナイフ184の上部組織切断表面189bがこれらの顎部材間に配置された組織を通して並進させられて顎部材110のナイフチャネル115(図5A図5C)に入り、組織を切断し、この間、組織は、顎部材110と120との間の適切な位置に保持される。
【0052】
図1図3および図7A図7Bを続けて参照すると、エンドエフェクタアセンブリ100はまた、組織を電気機械的に鋏式に切断するために使用され得る。電気機械的な鋏式切断のために、ナイフ184は、例えば、ナイフ作動スイッチ92の作動によってエネルギー付与されて、「活性」電極として機能し、一方で、組織封止プレート112は、例えば、第一のスイッチ構成要素90aの作動によって、異なる電位にエネルギー付与され、その結果、組織封止プレート112は、「戻り」電極として機能する。この構成において、組織封止プレート122はエネルギー付与されない。
【0053】
使用において、電気的/電気機械的鋏式切断モードにおいて、組織は、顎部材110と120との間に配置され、そして顎部材110、120は、間隔を空けた位置から近接した位置へと移動させられる。顎部材110、120が近接した位置に向かって移動する際に、何らかの機械的切断が達成される。なぜなら、ナイフ184の上部組織切断表面189bが、ナイフ184と顎部材110のナイフチャネル115(図5A図5C)との間に配置された組織内に推進されるからである。顎部材110、120が近接した位置に向かってさらに移動すると、ナイフ184および顎部材110は、組織を推進して顎部材120の組織封止プレート122と接触させ、ナイフ184の上部組織切断表面189bから組織を通って組織封止プレート122への電流路を作製し、従って、これらの間でのエネルギーの伝導を可能にして、組織を電気的に切断する。
【0054】
エンドエフェクタアセンブリ100の鋏式切断モード(例えば、機械的鋏式切断モードと電気的/電気機械的鋏式切断モードとの両方)は、ナイフ184が組織を通って前進する際に、顎部材110、120が組織を適切な位置に保持する点で、より強い組織および/またはより大きい組織を切断するために、特に有利である。特定の手順、組織のサイズおよび/または組成、あるいは他の要因が、機械的切断で充分であるのか電気的/電気機械的切断が必要であるのかを決定し得る。
【0055】
図1図7Bを参照すると、上で詳述したように、エンドエフェクタアセンブリ100は、顎部材110、120(可動ハンドル40により制御される場合)および/またはナイフ184(トリガアセンブリ80により制御される場合)の位置、ならびに組織封止プレート112、122(それぞれ第一のスイッチ構成要素90aおよび第二のスイッチ構成要素90bにより制御される場合)および/またはナイフ184(ナイフ作動スイッチ92により制御される場合)のエネルギー付与に依存して、種々の作動モードで使用するために構成される。エンドエフェクタアセンブリ100は、可動ハンドル40、トリガアセンブリ80、第一のスイッチ構成要素90aおよび第二のスイッチ構成要素90b、ならびに/またはナイフ作動スイッチ92を制御することによって、これらの種々の異なるモードの間を効率的に移行可能である。従って、エンドエフェクタアセンブリ100は、種々の異なる外科手術手順を実施するために使用され得るのみでなく、1つの手順の経過中に上記モードのうちの2つ以上の間もまた移行し得る。例えば、エンドエフェクタアセンブリ100は、下にある封止および/または分割されるべき組織に到達する目的で、顎が開いた状態での切断モードまたは鋏様切断モードで、組織を機械的または電気的/電気機械的に切断するために使用され得る。次いで、エンドエフェクタアセンブリ100は、この下にある組織を把持、封止、および(機械的にかまたは電気的/電気機械的に)分割するために使用され得る。あるいは、エンドエフェクタアセンブリ100は、組織を把持および封止し、続いて顎部材110、120を近接した位置に移動させ、ナイフ184顎部材110と120との間で前進させることによって、組織を組織封止部に沿って機械的にかまたは電気的/電気機械的に切断し、そしてテント形成または鋏式切断によって、この組織封止部に沿って組織を(機械的にかまたは電気的/電気機械的に)切断するために、使用され得る。しかし、エンドエフェクタアセンブリ100は、これらの例に(またはモードのいずれの特定の組み合わせにも)限定されず、むしろ、エンドエフェクタアセンブリ100は、上記モードのいずれかの間で任意の適切な順序で移行され得る。すなわち、エンドエフェクタアセンブリ100は、所望の外科手術手順を実施するように、特に調整され得る。
【0056】
上記のことから、種々の図面を参照して、当業者は、特定の改変もまた、本開示の範囲から逸脱することなく本開示に対してなされ得ることを理解する。本開示の数個の実施形態が図面に示されたが、本開示はこれらに限定されることを意図されない。なぜなら、本開示は当該分野が許容すると同程度に範囲が広いこと、および本明細書も同様に読まれることが意図されるからである。従って、上記説明は、限定であると解釈されるべきではなく、単に、特定の実施形態の例示であると解釈されるべきである。当業者は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内で、他の改変を予測する。
【符号の説明】
【0057】
10 鉗子
12 シャフト
14 遠位端
16 近位端
20 ハウジング
30 ハンドルアセンブリ
70 回転アセンブリ
80 トリガアセンブリ
90 作動スイッチ
100 エンドエフェクタアセンブリ
110、120 顎部材
112、122 封止プレート
610 電気外科ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7