特許第5964217号(P5964217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5964217ネジ部材の抜け止め構造、当該抜け止め構造を有する筆記具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964217
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ネジ部材の抜け止め構造、当該抜け止め構造を有する筆記具
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/28 20060101AFI20160721BHJP
   F16B 7/18 20060101ALI20160721BHJP
   B43K 3/00 20060101ALI20160721BHJP
   B43K 7/12 20060101ALI20160721BHJP
   B43K 24/08 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   F16B39/28 A
   F16B7/18 A
   B43K3/00 H
   B43K7/12
   B43K24/08 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-257261(P2012-257261)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-105724(P2014-105724A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】596139786
【氏名又は名称】株式会社パイオニア
(74)【代理人】
【識別番号】100104396
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 信昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英雄
【審査官】 鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−006971(JP,U)
【文献】 特開昭58−162920(JP,A)
【文献】 特開平08−312626(JP,A)
【文献】 特開2010−068896(JP,A)
【文献】 特開2011−117472(JP,A)
【文献】 特開2006−327289(JP,A)
【文献】 特開平10−016468(JP,A)
【文献】 特開2007−239851(JP,A)
【文献】 特開2007−269004(JP,A)
【文献】 実開平01−102592(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
F16B 7/00− 7/22
B43K 3/00
B43K 7/12
B43K 24/08
F16L 37/00−39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能な雄ネジ部材の外壁に形成された外径R1の雄ネジ部を、雌ネジ部材に開口された開口部内周壁に形成された内径r1の雌ネジ部に螺合させた後、互いに抜け止めするためのネジ部材の抜け止め構造であって、
当該雄ネジ部材の、当該雄ネジ部よりも当該雌ネジ部から離れる部位には、当該雄ネジ部と略同心となる外径R2(R2>R1)の環状突起が設けられるとともに、外力により弾性変形して当該環状突起が最大外径R3(R3≦R1)までの縮小を許容するための逃げ孔が少なくとも1個貫通形成され、
当該開口部内周壁の、当該雌ネジ部よりも開口端側には内径r2(r2>r1)の環状嵌合溝が、当該環状嵌合溝よりも開口端側には内径r3(R1<r3<r2)の環状導入溝が、それぞれ形成され、
雄ネジ部を雌ネジ部に螺合する際に当該環状導入溝の内周壁から外力を受けた環状突起が弾性変形して当該環状導入溝を抜け当該環状嵌合溝に入れるように、かつ、当該環状嵌合溝に入った環状突起が弾性復帰することにより当該環状嵌合溝と当該環状導入溝との間の段部と当接して抜け止めする
ことを特徴とするネジ部材の抜け止め構造。
【請求項2】
前記環状導入溝の内周壁が、前記雌ネジ部に向かって半径が漸減する傾斜面を含む
ことを特徴とする請求項1記載のネジ部材の抜け止め構造。
【請求項3】
前記環状嵌合溝と前記雌ネジ部との間に、前記環状嵌合溝の内周壁と連続するとともに前記雌ネジ部に向かって半径が漸減する傾斜面によって囲まれた連結溝が形成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載のネジ部材の抜け止め構造。
【請求項4】
先端部と後端部とを有する軸筒と、
当該軸筒内にリターンスプリングによって当該後端部方向に付勢されかつノック部材のノック操作により摺動可能に設けられた少なくとも1本のレフィールと、
当該ノック部材と当該レフィールとを連結するとともに、当該リターンスプリングとロック機構が収容されたスプリング収容体と、
当該リターンスプリングを圧縮しながら当該スプリング収容体に没入し当該リターンスプリングの付勢力でリターンするレフィール押圧部材と、を含み、
当該レフィール押圧部材が請求項1ないし3いずれか記載の雄ネジ部材によって構成され、かつ、当該ノック部材が請求項1ないし3いずれか記載の雌ネジ部材によって構成されている
ことを特徴とする筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ部材の抜け止め構造および当該抜け止め構造を有する筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
頭部とねじ部とが該ねじ部より細い軸部により連結されたねじ部材を樹脂成形品の取付穴に回転可能に支持して抜け止めするねじ部材抜け止め構造(従来の抜け止め構造)が、特許文献1に開示されている。より具体的には、前記樹脂成形品の前記取付穴には、前記ねじ部および前記頭部の外径よりも細い内径で外周側に弾性変形可能な弾性爪が設けられると共に、前記弾性爪は、前記取付穴に前記ねじ部材を挿入するときは前記ねじ部により押し広げられて前記ねじ部の通過を許容し、前記ねじ部が通過した後に復元して前記ねじ部および前記頭部に係合して前記ねじ部材の抜け止めを行うようになっている。
【0003】
一方、特許文献2には、芯シャープペンシルや異なった色彩を有する複数のレフィールを出没自在に軸筒内に収納し、使用者の要求に応じてシャープペンシルや異なった色彩のレフィールを軸筒より出没させて筆記を可能としてなる筆記具の構造(従来の筆記具構造)が開示されている。より具体的には、レフィール(11)を挿嵌、保持してなるレフィール保持パイプ(12)を側面方向からそのレフィール保持溝(17)内に自在に挿嵌できるように、外壁の一部に前後方向に切り欠き部(18)を穿設すると共に、この切り欠き部(18)略先端において円周方向に左右から突出する弾性係止爪(19)を配設するものである。レフィール(11)を一体に保持してなるレフィール保持パイプ(12)はレフィール保持パイプガイド(10)の保持溝(17)内にスプリング(15)と共に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−39145号公報(段落0007、0008、図1
【特許文献2】特開2001−129189号公報(段落0015、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の抜け止め構造は、挿入時における弾性爪の変形および弾性復帰によって抜け止めがなされるところ、係る弾性爪は、機能的には可能であるが、その構造が複雑になるため可能ではあろうが容易に成形できる形状ではない。したがって、成形金型が複雑なものとなり、その結果、製造コストが高くなってしまう。したがって、従来の抜け止め構造を、次に述べる筆記具に応用しようとしてもコスト的に実現し難いという問題がある。
【0006】
また、上記した筆記具の類は、シャープ芯(鉛芯)を補充したりレフィールを交換する度に、軸筒を分解したり、芯パイプから先端機構部を取り外したりし、これらを再び組み立てたり取り付けたりすることは、たいへん面倒なことであり、軸筒を分解等すると軸筒内に収納されている他の部品を紛失することが少なくない。この点、従来の筆記具構造によれば、レフィール保持パイプとスプリングが一体保持されるので、少なくともスプリングに関し、その紛失の恐れは少ない。しかし、従来の筆記具構造は、スプリングの紛失防止の目的のためには部品数が多く構造が複雑であるため、やはりコスト高になるという問題点がある。
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、上述したような問題をなくすことにあり、製造しやすくコストの安いネジ部材の抜け止め構造および当該抜け止め構造を有する筆記具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、次の構成を採用した。なお、いずれかの請求項記載の発明を説明するに当たり行う定義等は、その性質上可能な範囲において、記載順等に関わりなく、他の請求項の発明にも適用があるものとする。
【0009】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係るネジ部材の抜け止め構造(以下、「請求項1の構造」という)は、弾性変形可能な雄ネジ部材の外壁に形成された外径R1の雄ネジ部を、雌ネジ部材に開口された開口部内周壁に形成された内径r1の雌ネジ部に螺合させた後、互いに抜け止めするためのネジ部材の抜け止め構造である。雄ネジ部材は樹脂で構成するのが一般的であるが、弾性変形可能であれば金属などであってもよい。ここで、当該雄ネジ部材の、当該雄ネジ部よりも当該雌ネジ部から離れる部位には、当該雄ネジ部と略同心となる外径R2(R2>R1)の環状突起が設けられるとともに、外力により弾性変形して当該環状突起が最大外径R3(図示せず。R3≦R1)までの縮小を許容するための逃げ孔が少なくとも1個貫通形成され、当該開口部内周壁の、当該雌ネジ部よりも開口端側には内径r2(r2>r1)の環状嵌合溝が、当該環状嵌合溝よりも開口端側には内径r3(R1<r3<r2)の環状導入溝が、それぞれ形成されている。上記構成による請求項1の構造は、雄ネジ部を雌ネジ部に螺合する際に当該環状導入溝の内周壁から外力を受けた環状突起が弾性変形して当該環状導入溝を抜け当該環状嵌合溝に入れるように、かつ、当該環状嵌合溝に入った環状突起が弾性復帰することにより当該環状嵌合溝と当該環状導入溝との間の段部と当接して抜け止めすることを特徴とする。
【0010】
請求項1の構造によれば、雄ネジ部と雌ネジ部が螺合することにより雄ネジ部材と雌ネジ部が結合され、抜けによる結合解除が抑制される。すなわち、雄ネジ部を開口部に差し込んで雌ネジ部に螺合させると、そのネジ進行により当接した環状導入溝の内周壁から外力を受けて環状突起が雄ネジ部材内に弾性的に変形して環状導入溝を通過可能な寸法まで縮小する。この縮小を可能とするのが、逃げ孔である。逃げ孔がないとすると外力を受けた環状突起は変形するものの縮小させるのは難しいが、逃げ孔の変形に伴い少なくとも環状突起の肉の一部が逃げ孔に逃がされることによって縮小が実現する。さらなるネジ進行によって環状突起は環状嵌合溝内に入り、そこで環状導入溝の内径よりも大径の状態に弾性復帰する。この結果、ネジ進行の方向と逆方向の外力が雄ネジ部材に付加されても、環状突起が段部に当接して抜け止めされる。上述した作用効果は非常にシンプルな構造によって実現されるので、請求項1の構造は、製造しやすくコストの安いネジ部材の抜け止め構造である。
【0011】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2記載の発明に係るネジ部材の抜け止め構造(以下、「請求項2の構造」という)は、請求項1の構造であって、前記環状導入溝の内周壁が、前記雌ネジ部に向かって半径が漸減する傾斜面(テーパ面)を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項2の構造によれば、請求項1の構造の作用効果に加え、環状突起が雄ネジ部に向かって細る傾斜面と当接することになるので、ネジ進行に伴う縮小を徐々にかつ円滑に行わせることができる。
【0013】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3記載の発明に係るネジ部材の抜け止め構造(以下、「請求項3の構造」という)は、請求項1または2の構造であって、前記環状嵌合溝と前記雌ネジ部との間に、前記環状嵌合溝の内周壁と連続するとともに前記雌ネジ部に向かって半径が漸減する傾斜面によって囲まれた連結溝が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3の構造によれば、請求項1または2の構造の作用効果に加え、雌ネジ部内に挿入しようとする雄ネジ部の先端が連結溝を囲む傾斜面に案内されるので、その挿入を円滑に行うことができる。この作用はネジ部材の抜け止めとは直接関係するものではないが、挿入が円滑に行われないと雄ネジ部と雌ネジ部の螺合が正しく行わない恐れがあり、これを払拭することが正しい抜け止めの前提である。すなわち、円滑な挿入が抜け止め作用を間接的に効果あらしめる。
【0015】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4記載の発明に係る筆記部(以下、「請求項4の筆記具」という)は、先端部と後端部とを有する軸筒と、当該軸筒内にリターンスプリングによって当該後端部方向に付勢されかつノック部材のノック操作により摺動可能に設けられた少なくとも1本のレフィールと、当該ノック部材と当該レフィールとを連結するとともに、当該リターンスプリングとロック機構が収容されたスプリング収容体と、当該リターンスプリングを圧縮しながら当該スプリング収容体に没入し当該リターンスプリングの付勢力でリターンするレフィール押圧部材と、を含み、当該レフィール押圧部材が請求項1ないし3いずれか記載の雄ネジ部材によって構成され、かつ、当該ノック部材が請求項1ないし3いずれか記載の雌ネジ部材によって構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4の筆記具によれば、ノック部材をノック操作することによってレフィールがリターンスプリングに抗しながら摺動し、ロック機構のロック作用により、その先端が軸筒の先端部から突出して筆記が可能になる。レフィールのリターンは、リターンスプリングの復帰力によって行われる。ここで、レフィール押圧部材とノック部材との間には、請求項1ないし3いずれかの抜け止め構造が含まれるので、レフィール部材がノック部材から(もしくは、この逆)抜けることが防止される。その結果、レフィール部材の交換等(たとえば、使いきったボールペン芯の交換やシャープペンへの芯補充)の際に筆記具を分解してもスプリング収容体の中にあるリターンスプリングやノック部材等を紛失する恐れが払拭される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製造しやすくコストの安いネジ部材の抜け止め構造および当該抜け止め構造を有する筆記具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】螺合前のネジ部材を示す平面図(雌ネジ部は縦断面)である。
図2】螺合後のネジ部材を示す平面図(雌ネジ部は縦断面)である。
図3】筆記具の平面図である。
図4図3に示す筆記具の断面図である。
図5】スプリング収容体の平面図である。
図6図5に示すスプリング収容体の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
各図を参照しながら、発明を実施するための形態(以下、適宜「本実施形態」という)について説明する。ここでは、まず、本実施形態としてネジ部材の抜け止め構造について説明し、その後、本実施形態の応用例として筆記具について説明する。
【0020】
(ネジ部材の抜け止め構造の概略)
図1及び2に示すように、本実施形態のネジ部材1は、互いにネジ連結される雄ネジ部材3と雌ネジ部材5によって構成されている。ネジ部材1は、図外の部材同士を連結させたり、また、ある部材に他の部材を取り付けたりするための部材であったり、それ自身が特定の機能を有するものであってもよい。本実施形態では、その応用例が示すように、筆記具の一部としての機能を備えている。
【0021】
(雄ネジ部材の構成)
雄ネジ部材3は、全体が合成樹脂製であり、少なくとも径方向に弾性変形可能に構成してある。雄ネジ部材3は、それぞれ円筒状の大径部31aと、大径部31aより段部31c分だけ小径の小径部31bと、を有している。小径部31bの外壁には、外径R1の雄ネジ部33を形成してある。符号31dは、小径部31bの先端部を示す。雄ネジ部材3の、雄ネジ部33よりも雌ネジ部54から離れる部位(小径部31bの雄ネジ部33を挟んだ先端部31dの反対側の部位)には、雄ネジ部33と略同心となる(雄ネジ部材の周方向に形成されている)外径R2(R2>R1)の環状突起35を設けてある。環状突起35の形状は、原則として不問であるが、後述する環状導入溝59の傾斜面59aとの接触抵抗を少なくするために外周面を曲面とする断面略半円が好ましい。
【0022】
小径部31bには、環状突起35を横断する軸芯方向に長い逃げ孔37を貫通形成してある。図1および2では、逃げ孔37を1個のみ示してあるが、隠れて見えないが図の裏側にもう1個あり合計2個となる。必要に応じて1個でもよいし3個以上としてもよい。逃げ孔37は、環状突起35が外力F(図1)により弾性変形して当該環状突起が最大外径R3(図示せず。R3≦R1)までの縮小を許容するための孔である。本実施形態の逃げ孔37は楕円形であるが、上記目的を達成する限り形状に制限はない。逃げ孔37の形状、個数、形成場所等は、環状突起35の外径縮小を効率よく実現するために適宜選択するとよい。
【0023】
(雌ネジ部材の構成)
雌ネジ部材5は、雄ネジ部材3よりも大径の円柱状に構成してあり、構成素材は不問であるが、本実施形態では合成樹脂製である。雌ネジ部材5の雄ネジ部材3に面する側には、その中心部に所定深さの開口部51を形成してある。開口部51は、その一番奥から外に向かって(図1の右から左に向かって)順に、収納部53、雌ネジ部54、連結溝55、環状嵌合溝57、環状導入溝59を備えている。収納部53は、螺合した際の雄ネジ部材3の先端部31dが、周りと接触することなく収容可能に形成してある。雌ネジ部54は、収納部53の内周壁と繋がる内周壁部位に形成してあり、その内径r1は、外径R1の雄ネジ部33と螺合可能な寸法である。連結溝55は、雌ネジ部54内に挿入しようとする雄ネジ部33の先端(すなわち、先端部31d)が連結溝55を囲む傾斜面に案内されるので、その挿入を円滑に行うことができる。
【0024】
環状嵌合溝57は、開口部内51の周壁の、雌ネジ部54よりも開口端側には位置で、内径r2(r2>r1)を備えた溝である。環状導入溝59は、連結溝55を介して環状嵌合溝57よりもさらに開口端側にある。環状導入溝59の内周壁は、雌ネジ部54に向かって半径が漸減(最小内径r3(R1<r3<r2))する傾斜面59aを含めて構成してある。
【0025】
(抜け止め構造の作用)
本実施形態に係るネジ部材1の抜け止め構造7によれば、雄ネジ部33と雌ネジ部54が螺合することにより雄ネジ部材3と雌ネジ部材5が結合され、抜けによる結合解除が抑制される。すなわち、雄ネジ部33を開口部51に差し込んで雌ネジ部54に螺合させると、そのネジ進行により当接した環状導入溝59の内周壁か(傾斜面59a)ら外力を受けて環状突起35が雄ネジ部材3内に弾性的に変形して環状導入溝59を通過可能な最大外径R3(R3≦R1)まで縮小する。この縮小を可能とするのが、逃げ孔37である。逃げ孔37の変形に伴い少なくとも環状突起35の肉の一部が逃げ孔37に逃がされることによって縮小が実現する。さらなるネジ進行によって環状突起35は環状嵌合溝57内に入り、そこで環状導入溝59の最小内径r3よりも大径(すなわち、R2)の状態に弾性復帰する。この結果、ネジ進行の方向と逆方向(図1の右から左方向)の外力が雄ネジ部材3に付加されても、環状突起35が、環状嵌合溝57と環状導入溝59との間の内径差によって形成される段部58に当接して抜け止めされる。
【0026】
(本実施形態の応用例)
図3ないし6を参照しながら、本実施形態の応用例(以下、「本応用例」という)である筆記具の説明を行う。本応用例に係る筆記具101は、図1に示すように、先端部101aと後端部101bとを有する軸筒103と、後端部101bから軸芯に沿って突出するノック部材105によって外観構成され、軸筒103内に次の部材群を備えている。
【0027】
図4に示す符号107は、軸筒103内に収容されたスプリング収容体を、同じく符号115はレフィールを、それぞれ示す。スプリング収容体107は、図5およびに併せて示すように、円筒状の部材であって、その中にロック機構111とリターンスプリング109が収容されている。ロック機構111は、スプリング収容体107に対して出没自在に設けたレフィール押圧部材113と連動して、リターンスプリング109を圧縮しながらレフィール115を摺動させその先端を先端部103aから突出させた状態でロック可能に構成してある。レフィール押圧部材113の開放端にはノック部材105が、後述する方法でネジ固定してあり、ノック部材105のノック操作によりロック機構111の上記したロックが行われ、ノック部材105の再操作によりロック解除が行われるようになっている。ロックが解除されるとリターンスプリング109の復帰力によってレフィールが軸筒103の中に引き込まれる。なお、本応用例では、レフィール115が1本だけだが、複数とするときは各々のレフィールに対し上記機構が必要となる。
【0028】
ここで、レフィール押圧部材113は本実施形態の雄ネジ部材3によって構成され、かつ、ノック部材105は同じく雌ネジ部材5によって構成されている。したがって、レフィール押圧部材113とノック部材105との間には、前記した抜け止め構造7が含まれるので、レフィール部材が113ノック部材105から(もしくは、この逆)抜けることがしっかりと防止される。その結果、レフィール部材の交換等の際に筆記具101を分解してもスプリング収容体107の中にあるリターンスプリング109やノック部材105等を紛失する恐れが払拭される。
【符号の説明】
【0029】
1 ネジ部材
3 雄ネジ部材
5 雌ネジ部材
7 抜け止め構造
31a 大径部
31b 小径部
31c 段部
31d 先端部
33 雄ネジ部
35 環状突起
37 逃げ孔
51 開口部
53 収納部
54 雌ネジ部
55 連結溝
55a 傾斜面
57 環状嵌合溝
58 段部
59 環状導入溝
59a 傾斜面
101 筆記具
103 軸筒
103a 先端部
103b 後端部
105 ノック部材
107 スプリング収容体
109 リターンスプリング
111 ロック機構
113 レフィール押圧部材
115 レフィール
図1
図2
図3
図4
図5
図6