特許第5964221号(P5964221)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964221
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】電機子製造方法および順送り金型装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   H02K15/02 D
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-265416(P2012-265416)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-110732(P2014-110732A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170853
【氏名又は名称】黒田精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻久保 智博
(72)【発明者】
【氏名】原 俊生
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−354718(JP,A)
【文献】 特開2002−136003(JP,A)
【文献】 特開2005−318764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機のシャフトあるいはケーシングに固着される環状部と、当該環状部の外周側あるいは内周側から放射状に突出するとともにそれぞれに磁極部および巻線部が形成された複数のティースとを有し、前記巻線部の軸方向寸法が前記磁極部の軸方向寸法よりも小さい電機子を順送り金型装置を用いて製造する方法であって、
帯状の金属板から前記ティースを構成する部分と前記環状部を構成する部分とを含む全形鉄心薄板を順次打ち抜く工程と、
前記金属板から前記磁極部のみを構成する部分を含む複数の部分薄板と、これら部分薄板どうしを連結する連結部とを有する連結薄板を順次打ち抜く工程と、
前記連結薄板に対して前記部分薄板または前記連結部を半抜きする工程と、
半抜きされた前記部分薄板または前記連結部を前記連結薄板に対してプッシュバックして当該部分薄板と前記連結部との間に分断線を形成する工程と、
前記全形鉄心薄板を所定枚数積層しながら結合させる工程と、
積層された全形鉄心薄板の少なくとも一方の端面に前記連結薄板を所定枚数積層しながら結合させる工程と
を含み、
前記連結部は、前記電機子の完成品を得る際に除去される部分を構成することを特徴とする電機子製造方法。
【請求項2】
前記連結薄板は、環状部薄板を更に有し、当該環状部薄板は、前記連結部によって前記複数の部分薄板に連結され、かつ前記結合させる工程において前記環状部の端面に積層され、
前記連結薄板に対して前記環状部薄板または前記連結部を半抜きする工程と、半抜きされた前記環状部薄板または前記連結部を前記連結薄板に対してプッシュバックして当該環状部薄板と前記連結部との間に分断線を形成する工程とを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載された電機子製造方法。
【請求項3】
回転電機のシャフトあるいはケーシングに固着される環状部と、当該環状部の外周側あるいは内周側から放射状に突出するとともにそれぞれに磁極部および巻線部が形成された複数のティースとを有し、前記巻線部の軸方向寸法が前記磁極部の軸方向寸法よりも小さい電機子を製造するための順送り金型装置であって、
帯状の金属板から前記ティースと前記環状部とを含む全形鉄心薄板を順次打ち抜く打抜手段と、
前記金属板から前記磁極部のみを含む複数の部分薄板と、これら部分薄板どうしを連結する連結部とを有する連結薄板を順次打ち抜く打抜手段と、
前記連結薄板に対して前記部分薄板または前記連結部を半抜きする半抜手段と、
半抜きされた前記部分薄板または前記連結部を前記連結薄板に対してプッシュバックして当該部分薄板と前記連結部との間に分断線を形成するプッシュバック手段と、
前記全形鉄心薄板と前記連結薄板とを所定枚数ずつ積層しながら結合させる積層結合手段と
を備え
前記連結部は、前記電機子の完成品を得る際に除去される部分を構成することを特徴とする順送り金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機を構成する電機子の製造方法と、この製造方法を実現するための順送り金型装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の電機子(ステータやロータ)は、巻線が施されるティース等の切削加工が煩雑かつ困難であることから、電磁鋼板のフープ材(帯状薄鋼板)を素材とする積層鉄心として製造されることが多い。電機子用の積層鉄心は、通常、順送り金型内で間欠移送されるフープ材に対してパイロット穴や中心孔、スロット、ティース、外形、かしめ用突起等の打抜き加工や半抜き加工を順次行うことによって多数枚の鉄心薄板を連続的に得た後、これら鉄心薄板をダイおよびスクイズリング内で積層しながら固着(かしめ結合)させることによって製造されることが一般的である(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3202851号
【特許文献2】特公昭34−2760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転電機において、軸方向寸法を抑えながらティースに施す巻線の巻き量を多くする(すなわち、性能を向上させる)ためには、ティースにおける巻線が施される部位(以下、巻線部と記す)の軸方向寸法を小さくすることが望ましい。このような電機子を積層鉄心として製造するにあたっては、完全な形状(全形)の鉄心薄板(以下、全形鉄心薄板と記す)を所定枚数積層したうえで、その両端面に巻線部以外の部位(磁極部や筒状部)を形成する複数枚の鉄心薄板(以下、部分薄板と記す)を更に積層する方法が考えられる。
【0005】
しかし、このような全形鉄心薄板に対する部分薄板の積層は、次のような理由から順送り金型装置内で行うことが困難であった。例えばロータにおいてティースにおける磁極部と軸孔周辺の環状部とを部分薄板とした場合、各磁極部と環状部とが互いに分離しているため、これらをスクイズリング内で全形鉄心薄板に対してかしめ結合することができない。そのため、順送り金型装置によって全形鉄心薄板の積層体を製造した後、この積層体に磁極部および環状部を個別に圧着することになり製造工数の大幅な増大を余儀なくされていた。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、回転電機を構成する電機子の製造方法と、この製造方法を実現するための順送り金型装置とに係り、ティースにおける巻線部の軸方向寸法が小さい電機子を順送り金型装置を用いて製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面は、回転電機のシャフトあるいはケーシングに固着される環状部(3)と、当該環状部の外周側あるいは内周側から放射状に突出するとともにそれぞれに磁極部(5)および巻線部(6)が形成された複数のティース(4)とを有し、前記巻線部の軸方向寸法(L2)が前記磁極部の軸方向寸法(L1)よりも小さい電機子(1)を順送り金型装置を用いて製造する方法であって、帯状の金属板から前記ティースを構成する部分と前記環状部を構成する部分とを含む全形鉄心薄板(11)を順次打ち抜く工程と、前記金属板から前記磁極部のみを構成する部分を含む複数の部分薄板(12,13)と、これら部分薄板どうしを連結する連結部(21)とを有する連結薄板(20)を順次打ち抜く工程と、前記連結薄板に対して前記部分薄板または前記連結部を半抜きする工程と、半抜きされた前記部分薄板または前記連結部を前記連結薄板に対してプッシュバックして当該部分薄板と前記連結部との間に分断線(22,23)を形成する工程と、前記全形鉄心薄板を所定枚数積層しながら結合させる工程と、積層された全形鉄心薄板の少なくとも一方の端面に前記連結薄板を所定枚数積層しながら結合させる工程とを含む。
【0008】
本発明の第2の側面は、前記全形鉄心薄板にかしめ部(24’,25’)を形成する工程と、前記連結薄板にかしめ部(24’,25’,26’)を形成する工程とを更に含む。
【0009】
本発明の第3の側面は、回転電機のシャフトあるいはケーシングに固着される環状部(3)と、当該環状部の外周側あるいは内周側から放射状に突出するとともにそれぞれに磁極部(5)および巻線部(6)が形成された複数のティース(4)とを有し、前記巻線部の軸方向寸法(L2)が前記磁極部の軸方向寸法(L1)よりも小さい電機子(1)を製造するための順送り金型装置(19)であって、帯状の金属板(W)から前記ティースと前記環状部とを含む全形鉄心薄板(11)を順次打ち抜く打抜手段と、前記金属板から前記磁極部のみを構成する部分を含む複数の部分薄板(12,13)と、これら部分薄板どうしを連結する連結部(21)とを有する連結薄板(20)を順次打ち抜く打抜手段と、前記連結薄板に対して前記部分薄板または前記連結部を半抜きする半抜手段と、半抜きされた前記部分薄板または前記連結部を前記連結薄板に対してプッシュバックして当該部分薄板と前記連結部との間に分断線(22,23)を形成するプッシュバック手段と、前記全形鉄心薄板と前記連結薄板とを所定枚数ずつ積層しながら結合させる積層結合手段(43)とを備えた。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1,第3の側面によれば、ティースにおける巻線部の軸方向寸法が小さい電機子を順送り金型装置を用いて製造することができる。また、第2の側面によれば、順送り金型装置のスクイズリング内で全形鉄心薄板と連結薄板とが結合されるため、製造工程の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るロータの斜視図である。
図2】実施形態に係るロータの半裁縦断面図である。
図3】実施形態に係るストリップレイアウト図である。
図4】実施形態に係る連結薄板の平面図である。
図5】実施形態に係るストリップレイアウト図である。
図6】実施形態に係る全形鉄心薄板の平面図である。
図7】実施形態に係る半完成品のロータの平面図である。
図8】半完成品のロータから連結部を取り外す状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を電気モータ用ロータの製造方法に適用した一実施形態を詳細に説明する。
【0013】
≪ロータ≫
図1に示すように、本実施形態のロータ1(電機子)は、フープ材を素材とする鉄心薄板を積層してなる積層鉄心であり、軸心に図示しないモータシャフトが嵌入する軸孔2が形成された円筒状の環状部3と、環状部3の外周から等角度間隔をもって突設された8つのティース4とから構成されている。各ティース4は、図示しないステータに対峙する周方向両側に拡がった磁極部5と、巻線が施される矩形断面の巻線部6とからなっている。
【0014】
図2に示すように、ロータ1は、環状部3と各ティース4とが一体に形成された10枚の全形鉄心薄板11と、環状部3の両端面に積層されるそれぞれ5枚の環状部薄板12(部分薄板)と、各磁極部5の両端面に積層されるそれぞれ5枚の磁極部薄板13(部分薄板)とをかしめ結合によって一体化してなる。
【0015】
図2に示すように、磁極部薄板13が積層された磁極部5の軸方向寸法L1は、巻線部6の軸方向寸法L2よりも大きく(図示例では、2倍に)設定されている。また、環状部3の中心側(すなわち、環状部薄板12が積層された部位)も、磁極部5と同一の軸方向寸法L1を有している。このように巻線部6の軸方向寸法L2が磁極部5や環状部3よりも小さく設定されていることにより、性能を向上させるべく巻線部6に施される巻線の量を多くしても、巻線がロータ1の端面から突出しにくくなって電気モータの軸方向寸法が抑えられる。
【0016】
≪順送り金型装置による打抜工程≫
次に、順送り金型装置による連結薄板および全形鉄心薄板の打抜工程を図3図6を参照して説明する。
【0017】
<連結薄板の形成工程>
図3に示すように、順送り金型装置19では、間欠送りされたフープ材Wに対して打抜加工や半抜加工を順次施すことによって連結薄板20を得る。図4に示すように、連結薄板20は、環状部薄板12と各磁極部薄板13とを連結部21によって連結したものであり、環状部薄板12および各磁極部薄板13と連結部21との間にはプッシュバック加工(後述)による分断線22,23がそれぞれ設けられている。
【0018】
環状部薄板12には、打抜きによる計量孔24(貫通孔)、あるいは、半抜きによるかしめ部24’(かしめ用の凹凸)が等角度間隔(すなわち、45°間隔)で8個形成されている。また、各磁極部薄板13には、計量孔25(あるいは、かしめ部25’)がそれぞれ一対形成されている。
【0019】
連結部21には、中心側に計量孔26(あるいは、かしめ部26’)が等角度間隔で8個形成される他、磁極部5の内周側に位置する扇状抜穴27および隣接する磁極部5の間に位置する長円形抜穴28が等角度間隔で8個穿設されている。連結部21は、環状部薄板12の外周に隣接する内側リング部29と、磁極部薄板13の内周に隣接する外側リング部30と、内側リング部29の外周から放射状に延設されたスポーク部31とからなっており、スポーク部31の外端が隣接する磁極部薄板13の間に位置している。なお、後述するように、扇状抜穴27および長円形抜穴28は、スポーク部31を脆弱にすることにより、積層後のロータ1から連結部21を除去させやすくするために設けられる。
【0020】
順送り金型装置19が起動すると、図3に示す各工程がフープ材Wに順次施されることで連結薄板20が製造される。
(1)第1工程・・・パイロット穴35を穿孔する。
(2)第2工程・・・連結部21となる部位に対する長円形抜穴28を穿孔する。なお、長円形抜穴28を穿孔するパンチは、カム機構等によって図示しない上型から出没し、フープ材Wに対して長円形抜穴28の穿孔を行わないようにすることもできる。
(3)第3工程・・・連結部21となる部位に対する扇状抜穴27を穿孔する。なお、扇状抜穴27を穿孔するパンチも、カム機構等によって図示しない上型から出没し、フープ材Wに対して扇状抜穴27の穿孔を行わないようにすることもできる。
(4)第4工程は、後述する全形鉄心薄板11のスロット32を穿孔するためのものであり、連結薄板20の製造時においては上型にパンチが没するために実施されない。
【0021】
(5)第5工程・・・プッシュバック加工によって環状部薄板12と連結部21との間の分断線22を形成する。なお、本実施形態におけるプッシュバック加工は、環状部薄板12に対して連結部21を半抜きした後に押し戻すものであり、環状部薄板12と連結部21とを比較的弱い結合力をもって結合させる。なお、分断線22を形成するパンチも、カム機構等によって図示しない上型から出没し、フープ材Wに対して分断線22を形成しないようにすることもできる。
(6)第6工程・・・プッシュバック加工によって磁極部薄板13と連結部21との間の分断線23を形成する。なお、分断線23を形成するパンチも、カム機構等によって図示しない上型から出没し、フープ材Wに対して分断線23を形成しないようにすることもできる。
(7)第7工程・・・環状部3の軸心に軸孔2を穿孔する。
【0022】
(8)第8工程・・・環状部薄板12,磁極部薄板13,連結部21にそれぞれ計量孔24,25,26を穿孔する。計量孔24,25,26は、ロータ1の積層枚数(本実施形態では、20枚)を決定するものであり、下端の一枚のみに穿孔される。なお、計量孔24,25,26を穿孔するパンチは、カム機構等によって図示しない上型から出没し、フープ材Wに対してこれら計量孔24,25,26の穿孔を行わないようにすることもできる。更に、連結部21の計量孔26を穿孔するパンチは、他の計量孔24,25を穿孔するパンチとは独立して上型から出没するようになっている。
【0023】
(9)第9工程・・・環状部薄板12,磁極部薄板13,連結部21にそれぞれかしめ部24’,25’,26’を形成する。なお、かしめ部24’,25’,26’を形成(半抜き)するパンチは、カム機構等によって図示しない上型から出没し、フープ材Wに対してこれらかしめ部24’,25’,26’の形成を行わないようにすることもできる。更に、連結部21のかしめ部26’を形成するパンチは、他のかしめ部24’,25’を形成するパンチとは独立して上型から出没するようになっている。
(10)第10工程・・・外形打抜パンチ41によって連結薄板20を外形打抜ダイ42およびスクイズリング43内に打ち抜く。(図5参照)
【0024】
<全形鉄心薄板の形成工程>
図5に示すように、順送り金型装置19では、間欠送りされたフープ材Wに対して打抜加工や半抜加工を順次施すことによって全形鉄心薄板11を得る。
図6に示すように、全形鉄心薄板11は、軸心に軸孔2が形成された環状部3と、環状部3の外周から等角度間隔をもって突設された8つのティース4とから構成されている。各ティース4は、周方向両側に拡がった磁極部5と、平板状の巻線部6とからなっている。
【0025】
全形鉄心薄板11の製造にあたっては、図5に示す工程がフープ材Wに順次施される。
(1)第1工程・・・パイロット穴35を穿孔する。
(4)第4工程・・・環状部3およびティース4の輪郭を形成するスロット32を穿孔する。なお、スロット32を穿孔するパンチは、カム機構等によって図示しない上型から出没し、フープ材Wに対してスロット32の穿孔を行わないようにすることもできる。
(9)第9工程・・・環状部3およびティース4の磁極部5にそれぞれかしめ部24',25'を形成する。なお、第9工程のストリップレイアウトは、連結薄板20と同様であるため、図5には示さない。
(10)第10工程・・・外形打抜パンチ41によって全形鉄心薄板11を外形打抜ダイ42およびスクイズリング43内に打ち抜く。
【0026】
≪積層かしめ≫
ロータ1の製造にあたり、順送り金型装置19の製造制御装置は、先ず5枚の連結薄板20を連続的に製造して、これらを外形打抜ダイ42およびスクイズリング43内に打ち抜く。この際、最下端のものを除いた連結薄板20にはかしめ部24’,25’,26’を穿孔するが、最下端の連結薄板20には計量孔24,25,26を穿孔し、先に打ち抜かれた連結薄板20との間でかしめ結合が起こらないようにする。打ち抜かれた各連結薄板20は、スクイズリング43から抵抗を与えられることで、かしめ部24’,25’,26’を介して相互にかしめ結合する。
【0027】
次に、製造制御装置は、10枚の全形鉄心薄板11を連続的に製造して、これらを外形打抜ダイ42およびスクイズリング43内に打ち抜く。打ち抜かれた全形鉄心薄板11は、最下端のものが先に打ち抜かれている連結薄板20にかしめ結合するとともに、かしめ部24’,25’を介して相互にかしめ結合する。
【0028】
次に、製造制御装置は、再び5枚の連結薄板20を連続的に製造して、これらを外形打抜ダイ42およびスクイズリング43内に打ち抜く。この際、最下端のものを除いた連結薄板20にはかしめ部24’,25’,26’を穿孔するが、最下端の連結薄板20にはかしめ部24’,25’と計量孔26とを穿孔し、先に打ち抜かれた全形鉄心薄板11との干渉が起こらないようにする。打ち抜かれた各連結薄板20は、最下端のものが先に打ち抜かれている全形鉄心薄板11にかしめ結合するとともに、かしめ部24’,25’,26’を介して相互にかしめ結合する。
【0029】
≪連結部の除去≫
順送り金型装置19が稼働を続けると、10枚の全形鉄心薄板11の両端に各5枚の連結薄板20がかしめ結合された図7に示す半完成品のロータ1が連続的に製造され、スクイズリング43の下端(排出口)から排出される。製造作業者は、次に、半完成品のロータ1の環状部3(環状部薄板12)や磁極部5(磁極部薄板13)を図示しない治具によって固定(挟持)した後、図示しない引き剥がし用の油圧工具等を用いて連結部21に対してロータ1から引き剥がす力を加える。すると、連結部21は、扇状抜穴27および長円形抜穴28の周辺でスポーク部31が弾性変形あるいは塑性変形することもあいまって、分断線22,23で環状部薄板12および磁極部薄板13に対して比較的容易に分離し、図8に示すように完成品のロータ1が得られる。この際、図7に示すように、連結部21のスポーク部31とティース4の巻線部6との回転位相が所定角度(図示例では、45°)ずれているため、油圧工具の爪等がスポーク部31(連結部21)に係合しやすくなる。
【0030】
以上で実施形態や参考例の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態は電気モータのロータの製造に本発明を適用したものであるが、電気モータのステータを始め、発電機等のロータやステータの製造にも当然に適用可能である。また、上記実施形態では全形鉄心薄板および連結薄板をかしめ結合によって一体化させるようにしたが、これらを接着やレーザ溶着等によって一体化させるようにしてもよい。また、上記実施形態では最終的に除去される連結部についてもかしめ結合によって一体化させるようにしたが、連結部の環状部薄板および磁極部薄板からの分離容易化等を図るためにこのかしめ結合を廃してもよい。また、環状部やティースを始め、環状部薄板や磁極部薄板、連結部の具体的形状等についても、本発明の主旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 ロータ(電機子)
3 環状部
4 ティース
5 磁極部
6 巻線部
11 全形鉄心薄板
12 環状部薄板
13 磁極部薄板
19 順送り金型装置
20 連結薄板
21 連結部
22,23 分断線
43 スクイズリング
L1 磁極部の軸方向寸法
L2 巻線部の軸方向寸法
W フープ材(金属板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8