(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記循環ポンプ、または前記外部の熱源から前記蒸発器に熱媒を送給するポンプの少なくとも一方が前記作動部であることを特徴とする請求項2または3に記載の発電システム。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギの有効利用、環境保全等の観点から、船舶,工場,ガスタービン等からの排熱、地熱、太陽熱、海洋温度差等を熱源として発電を行うシステムとして、ランキンサイクル式の発電システムが検討されている(例えば、特許文献1〜3参照)。この際、上記のような熱源を利用する場合には、媒体として、水よりも沸点の低い媒体、例えばフロン系媒体などの有機流体が用いられる。 このような発電システムにおいては、
図4に示すように、予熱器1、蒸発器2、タービン3、凝縮器4を有したサイクル回路5内を、循環ポンプ6によって媒体を循環させる。そして、上記したような熱源から熱を回収した熱媒を、蒸発器2に送り込み、媒体と熱交換させ、媒体を蒸発させてガス化する。また、蒸発器2を経た熱媒は、蒸発器2の前段に設けられた予熱器1において、媒体を予熱する。
ガス化された媒体は、タービン3において膨張することによって駆動軸3aを回転駆動し、発電機7を駆動する。タービン3で膨張した媒体は、凝縮器4で凝縮され、循環ポンプ6に循環される。
発電機7が駆動されることによって出力される交流電流(AC)は、整流器9で直流電流(DC)に変換され、さらに、系統連系インバータ10で交流電流に再変換され、発電電力として外部に出力される。
【0003】
ところで、有機ランキンサイクル式の発電システムにおいては、熱源から出力される熱エネルギの変動量が大きい。これに対応するには、発電機7の回転数を変動させれば良いが、タービン3を発電機7の駆動源としている構成においては、タービン3の効率を考慮する必要がある。タービン3は、仕事効率の高い回転領域で作動させるのが好ましく、このため、熱源側の出力エネルギ変動に応じてタービン3および発電機7の回転数を変動させようとすると、その変動幅が制限を受ける。
そこで、タービン3および発電機7を備えた発電ユニットを複数台備えて、その稼働台数を変動させることによって、熱源側の大きな出力エネルギ変動に対応する手法が特許文献1〜3にも開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したような発電システムにおいては、例えばタービン3の駆動軸3aの軸受等の消耗部品の点検や交換等、メンテナンスを行う必要がある。
このとき、発電システムの稼働率を高めるため、複数台の発電ユニットのうち、メンテナンスの必要な発電ユニットを停止させてタービン3のメンテナンスを行い、それ以外の発電ユニットのタービン3および発電機7は稼働させるのが好ましい。
【0006】
しかし、その場合、発電システム全体をシャットダウンしないことになるので、停止させた発電ユニットにおいても、タービン3および発電機7の整流器9等に外部から通電していることがあり、作業者はこれに配慮して作業を行う必要がある。そこで、停止させた発電ユニットのタービン3および発電機7においては、スイッチやリレー等によって、電力供給を遮断することが考えられる。しかし、スイッチやリレーの操作が必要であり、作業忘れ、作業ミス等の発生の可能性がある。また、例えば媒体として水よりも沸点の低い媒体を使う場合では、機器の温度が比較的低く保たれることから高温に対する注意不足が生じるため、作業者が不用意に機器に触れてしまう可能性があり、より上記のような作業忘れや作業ミスが発生する可能性が高くなる。 そこでなされた本発明の目的は、複数の発電ユニットを備えた構成において、他の発電ユニットを稼働させた状態で発電ユニットのメンテナンスを行う際に、メンテナンスを行う発電ユニットに対する電力供給を確実に遮断することのできる発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明は、複数の発電ユニットを、外部電力系統に対して並列に備えた発電システムであって、それぞれの前記発電ユニットは、作動媒体により回転する膨張器と、前記膨張器の回転によって電力を生成する発電機と、前記発電機で生成した電力を整流し、前記外部電力系統に出力する整流器と、前記膨張器に前記作動媒体を送り込む媒体流通系統と、前記発電機と前記外部電力系統との間で電力を遮断する継電器と、前記発電ユニットのメンテナンス開始時に作動させる作動部と、前記作動部が作動したときに、前記継電器にて前記発電機と前記外部電力系統との間で電力を遮断させる継電器駆動部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
このような発電システムにおいては、それぞれの発電ユニットにおいて、メンテナンスを行うに際し、メンテナンス開始時に必ず作動させる作動部の作動に応じ、継電器駆動部が継電器を切り替えて、発電機と外部電力系統との間で電力を遮断させる。これにより、メンテナンスの際に、他の発電ユニットは稼働させたまま、メンテナンスを行う発電ユニットへの電力供給を遮断できる。
ここで、継電器は、整流器と外部電力系統との間に設けてもよいし、発電機と整流器との間に設けてもよい。
【0009】
このような発電システムは、膨張器で発電機を駆動して発電を行うのであれば、いかなる構成のものであってもよい。
例えば、前記媒体流通系統は、前記作動媒体を循環させる媒体循環回路であり、前記媒体循環回路に、前記作動媒体を加圧して前記媒体循環回路内で循環させる循環ポンプと、加圧された前記作動媒体を外部の熱源により加熱して蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で蒸発された前記作動媒体により回転する前記膨張器と、前記膨張器から排出された前記作動媒体を凝縮する凝縮器と、を備えている構成の発電システムであってもよい。
【0010】
このような発電システムにおいて、前記循環ポンプ、前記蒸発器、前記膨張器、前記凝縮器の少なくとも一つを含むメンテナンス対象機器に対し、前記媒体循環回路において前記作動媒体の流れ方向上流側に設けられ、前記作動媒体の流通を遮断可能な第一の開閉弁と、前記媒体循環回路において前記作動媒体の流れ方向下流側に設けられ、前記作動媒体の流通を遮断可能な第二の開閉弁と、を備え、前記第一の開閉弁および前記第二の開閉弁の少なくとも一方が前記作動部であるのが好ましい。
【0011】
この発電システムによれば、メンテナンス対象機器をメンテナンスするに際しては、第一の開閉弁と第二の開閉弁を閉じた後、第一の開閉弁と前記第二の開閉弁の間の媒体を回収する。
したがって、メンテナンスに際して作動媒体を回収するために第一の開閉弁または第二の開閉弁を閉じるので、この少なくとも一方を作動部とすることによって、継電器で電力遮断を行える。
【0012】
また、上記発電システムによれば、第一の開閉弁と前記第二の開閉弁の間の媒体を回収した後に、メンテナンス対象機器のメンテナンスを行う。メンテナンスの完了後、第一の開閉弁と第二の開閉弁との間を真空引きし、第一の開閉弁と第二の開閉弁との間に媒体を充填する。
このようにして、メンテナンス対象機器をメンテナンスするに際して、媒体循環回路全体の媒体を抜く必要がなく、第一の開閉弁と第二の開閉弁との間の媒体のみを抜けばよい。また、メンテナンス後に媒体を充填する際に行う真空引きも、第一の開閉弁と第二の開閉弁との間のみ行えばよい。
なおここで、発電ユニットにおけるメンテナンス対象機器は、循環ポンプ、蒸発器、膨張器、凝縮器の少なくとも一つを含んでいればよく、もちろんこれらの中の二つ以上を含んでいてもよい。また、二つ以上のメンテナンス対象機器に対し、第一の開閉弁、第二の開閉弁を備えるようにしてもよい。
【0013】
また、前記循環ポンプ、または前記外部の熱源から前記蒸発器に熱媒を送給するポンプの少なくとも一方を前記作動部としてもよい。
【0014】
発電システムのメンテナンスに際しては、膨張器での作動流体の膨張を停止させるため、作動流体を循環させるための循環ポンプと、作動流体を蒸発させるための熱媒を蒸発器に送給するポンプとを必ず停止させる。そこで、その少なくとも一方を作動部とすることによって、継電器で確実に電力遮断を行える。
【0015】
また、本発明の発電システムは、前記凝縮器を冷却する冷却ファンと、前記冷却ファンを駆動するファン駆動源と、前記ファン駆動源と該ファン駆動源の電源との間で電力を遮断する第二の継電器と、をさらに備え、前記継電器駆動部は、前記作動部が作動したときに、前記第二の継電器にて前記ファン駆動源と該ファン駆動源の電源との間で電力を遮断させるようにしてもよい。
【0016】
これにより、凝縮器を冷却する冷却ファンを備える場合に、発電ユニットのメンテナンスに際し、冷却ファンの作動も確実に停止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、機器のメンテナンスを行う際に、確実に発電ユニットへの電力供給を遮断することができ、メンテナンス作業を安全に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明による発電システムを実施するための形態を説明する。しかし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0020】
(第1の実施形態)
図1に示すように、発電システム20Aは、複数組の発電ユニット50A,50B,50C,…を備える。
発電ユニット50A,50B,50C,…のそれぞれは、船舶,工場,ガスタービン等からの排熱、地熱、太陽熱、海洋温度差等の熱源から熱媒が送り込まれる熱媒回路21と、この熱媒回路21の熱媒と熱交換することによって熱エネルギを得る媒体(作動媒体)を循環させる媒体循環回路(媒体流通系統)22と、を備える。
ここで、媒体循環回路22の媒体としては、例えば、HFC−134a,HFC−245fa,HFO−1234yf,HFO−1234zeといったフロン系媒体等を用いることができる。
【0021】
熱媒回路21は、熱源から熱を回収することによって得た蒸気、水(湯)等の熱媒を供給する。
【0022】
媒体循環回路22には、循環ポンプ23、予熱器24、蒸発器25、タービン(膨張器)26、凝縮器27が備えられている。
【0023】
循環ポンプ23は、媒体を圧縮して送り出すことで、媒体が予熱器24、蒸発器25、タービン26、凝縮器27を順に経るよう、媒体を媒体循環回路22内で循環させる。
予熱器24および蒸発器25は、熱媒回路21の熱媒と媒体循環回路22の媒体とを熱交換するもので、蒸発器25は、加圧された媒体を熱媒(外部の熱源)との熱交換によって加熱して蒸発させ、予熱器24は、蒸発器25を経た熱媒の余熱によって媒体を予熱する。
タービン26は、内部に導入された媒体がタービン室内で膨張することによって、駆動軸26aをその軸線周りに回転駆動させる。この駆動軸26aには、発電機28の回転子(図示無し)が連結されており、この回転子(図示無し)が発電機28の固定子(図示無し)に対向して回転駆動される。これによって、発電機28では交流電流を出力する。
発電機28から出力された交流電流は、整流器29で整流され、直流電流に変換される。
【0024】
上記したような複数組の発電ユニット50A,50B,50C,…のそれぞれの整流器29は、外部電力系統に接続された一つの系統連系インバータ30に対して並列に接続されている。各組の整流器29から出力された直流電流は、系統連系インバータ30で交流電流に再変換されて、発電電力として外部の送電網に出力される。
【0025】
複数組の発電ユニット50A,50B,50C,…のそれぞれにおいて、媒体循環回路22には、メンテナンス対象となる機器、例えばタービン26の上流側と下流側に、開閉弁(第一の開閉弁)40A,開閉弁(第二の開閉弁)40Bが設けられている。
また、媒体循環回路22において、開閉弁40A,40Bの間には、ポート管41が設けられ、このポート管41の先端は、媒体循環回路22に連通可能で、媒体循環回路22内に媒体を出し入れするための機器が接続可能なサービスポート42とされている。また、ポート管41には、開閉弁43が形成されている。
【0026】
また、各組の発電ユニット50A,50B,50C,…のそれぞれにおいて、整流器29と、系統連系インバータ30との間には、整流器29と系統連系インバータ30との間で電力を断続する継電器70が設けられている。
この継電器70は、リレー駆動回路(継電器駆動部)71によって、メンテナンス開始時に作動する開閉弁40A,40Bに連動して電路の断続が切り替えられるようになっている。開閉弁40A,40Bの少なくとも一方には、弁が開状態にあるか、閉状態にあるかを検出するセンサ72が設けられている。
リレー駆動回路71は、センサ72の検出信号を受け、信号が閉状態から開状態に遷移したら、継電器70を開放し、整流器29と系統連系インバータ30との間で電力を遮断する。また、センサ72からの検出信号が、開状態から閉状態に遷移したら、継電器70を閉じ、整流器29と系統連系インバータ30との間で電力を接続させる。
【0027】
上記発電システム20Aにおいては、制御部35が備えられている。この制御部35では、熱媒回路21の熱媒供給、媒体循環回路22の循環ポンプ23、開閉弁40A,40B,43の作動を制御するとともに、発電システム20Aを構成する各機器の作動状態等をモニタリングする。
このような発電システム20Aは、制御部35の制御により、熱媒回路21から送られてくる熱媒の入力熱エネルギ量や、出力側における要求電力量(出力量)に応じて、複数の発電ユニット50A,50B,50C,…を選択的に稼働させることによって、稼働させるユニット数(すなわちタービン26の稼働台数)を変化させ、発電量を段階的に変えることができるようになっている。
【0028】
さて、上記したような発電システム20Aにおいて、複数の発電ユニット50A,50B,50C,…のうち、一つのユニットのタービン26をメンテナンスするには、まず、そのユニット(例えば発電ユニット50A)において、熱媒回路21のポンプ(図示無し)や開閉弁(図示無し)によって熱媒の供給を停止するとともに、媒体循環回路22の循環ポンプ23を停止させる。このとき、複数の発電ユニット50A,50B,50C,…のうち、メンテナンス対象の発電ユニット50A以外の他の発電ユニット50B,50C,…は稼働を継続することができる。
【0029】
次いで、開閉弁40A,40Bを閉じる。これにより、タービン26の上流側と下流側で、媒体循環回路22が遮断される。
このとき、開閉弁40A,40Bが開状態から閉状態に移行するに伴い、センサ72では、その状態変化を検出する。すると、リレー駆動回路71によって継電器70が開放され、整流器29と系統連系インバータ30との間で電力を遮断する。これによって、この後は、この発電ユニット50Aのタービン26、発電機28、整流器29に作業者が触れても、安全に作業を行うことができる。
【0030】
そして、ポート管41のサービスポート42に、媒体を回収するための媒体回収機器100を接続した後、開閉弁43を開く。これにより、媒体循環回路22において、開閉弁40A,40B間の媒体が回収される。
【0031】
この後、タービン26に対して、所要のメンテナンスを施す。メンテナンスとしては、例えばシール部材の交換、ブレードの破損の有無の点検や破損部分の修復、各種センサの点検及び交換等が挙げられる。なお、ここでは、タービン26のメンテナンス内容についてはなんら限定するものではない。
【0032】
タービン26のメンテナンス終了後、サービスポート42に真空ポンプを接続し、この真空ポンプ110を作動させることによって、開閉弁40A,40Bの間の媒体循環回路22内を真空引きする。真空ポンプ110において、予め定めた規定の真空度まで真空引きがなされた後、開閉弁43を閉じる。
【0033】
そして、サービスポート42に媒体供給機器120を接続し、開閉弁43を開いて媒体循環回路22内に媒体を充填する。
【0034】
媒体の充填後、開閉弁43を閉じ、しかる後、開閉弁40A,40Bを開く。これに伴い、センサ72からの検出信号が、開状態から閉状態に遷移するので、リレー駆動回路71によって継電器70を閉じ、整流器29と系統連系インバータ30との間で電力が接続され、この発電ユニット50Aに対して通電がなされる。
これにより、発電ユニット50Aが再起動可能な状態となるので、熱媒回路21のポンプ(図示無し)および媒体循環回路22の循環ポンプ23を作動させ、所定の手順で発電ユニット50Aを再起動させる。
【0035】
上述したような構成によれば、複数の発電ユニット50A,50B,50C,…を備える発電システム20Aにおいて、他の発電ユニットを稼働させながら、一つの発電ユニットをメンテナンスする場合に、メンテナンス時に作動させる作動部として対応する開閉弁40A,40Bを閉じることによって、これをトリガーとしてタービン26、発電機28、整流器29への通電が遮断される。開閉弁40A,40Bの操作は、タービン26のメンテナンスの際に必ず行うものであり、その操作によって自動的に通電が遮断されるので、作業忘れ、作業ミス等が生じる余地はなく、確実に安全な作業環境を確保することができる。
【0036】
また、媒体循環回路22においてメンテナンス対象となるタービン26の上流側と下流側に開閉弁40A,40Bが設けられ、さらに、開閉弁40A,40Bの間にサービスポート42が設けられている。これにより、タービン26のメンテナンス時には、開閉弁40A,40Bを閉じ、媒体循環回路22において、開閉弁40A,40Bの間の、タービン26を含んだ一部区間のみの媒体を出し入れすればよい。したがって、媒体の抜き取り・真空引き・媒体の充填に掛かる時間を短縮することができ、メンテナンス期間を短縮化して、発電システムの稼働率を高めることができる。また、メンテナンスの際に必要な媒体量も少なくて済むので、メンテナンスコストを抑えることができる。
【0037】
(第1の実施形態の変形例)
なお、上記実施形態において、タービン26のメンテナンスの際に整流器29への通電を遮断するトリガーとして、開閉弁40A,40Bの操作を用いたが、これに限るものではない。タービン26のメンテナンスの際に必ず、メンテナンス前に作動する作動部であれば、その作動状況をセンサ72によって検出してこれをトリガーとし、整流器29への通電を遮断してもよい。
このようなトリガーとして用いることのできる作動部としては、例えば、タービン26が収容されているタービン室の扉、制御部35が収容されている制御盤の扉やカバー、整流器29のカバー等が挙げられ、これらの開閉状況を検出するものとしてもよい。または、これらの扉、カバー等の施錠する施錠部を作動部とし、施錠部の施錠、開錠を検出するようにしてもよい。
また、作動部として他には、循環ポンプ23の動作を停止するためのスイッチ、熱媒回路21からの熱媒供給を停止するためのポンプや開閉弁(いずれも図示なし)のスイッチ等があり、これらのON/OFFをセンサ72で検出し、整流器29への通電を遮断するのである。
もちろん、複数のトリガーを組み合わせて用いることもできる。
また、循環ポンプ23や熱媒回路21をトリガーとする場合、これらを停止するためのスイッチを操作しても、ただちに循環ポンプ23からの媒体の送出、熱媒回路21からの熱供給が停止されるわけではなく、タービン26においては媒体が膨張して発電機28で発電が行われる。そこで、タービン26や発電機28の回転を検出し、その回転が停止した時点で整流器29への通電を遮断してもよい。ただしこの場合、メンテナンス時以外の通常運転時においても、熱源側からの熱エネルギ供給が止まった場合等に、タービン26や発電機28の回転が止まることはあり得る。したがって、タービン26や発電機28の回転が止まったときにおける整流器29への通電遮断は、あくまでも上記したようなタービン26のメンテナンスの際に必ず作動されるものの状態変化を検出することと組み合わせる必要がある。
【0038】
また、上記したように、継電器70により整流器29と系統連系インバータ30との間で電力を遮断しても、タービン26が完全に停止せずに発電機28において発電が継続されていると、整流器29に発電機28から通電がなされ、整流器29自体が損傷してしまうことも考えられる。
そこで、継電器70に加え、発電機28と整流器29との間にも継電器75を備え、継電器70と継電器75とが連動して作動するようにしてもよい。また、この継電器75の機能を、整流器29の基板上に実装されたスイッチング素子によって実現してもよい。
【0039】
さらには、タービン26のメンテナンス時、上記したような整流器29への通電が遮断された状態とならない限り、タービン26が収容された建屋や、整流器29が収容された制御盤を開けることができないよう、これらの扉の錠と連動させることもできる。
【0040】
なお、上記実施形態で示した構成においては、開閉弁40A,40Bの開閉に伴うリレー駆動回路71による継電器70の断続は、電気的な判定回路によって実現することを想定しているが、これに代えて、制御部35において、センサ72の開閉信号に応じて継電器70の断続をソフトウェア的に制御することも可能である。
また、制御部35においては、継電器70の断続状態をモニタリングし、リレー駆動回路71によって継電器70の断続状態が変わったときに、実際に継電器70が動作して断続状態が遷移したか否かを監視することもできる。そして、断続状態が正しく遷移しなかった時には、制御部35においてアラーム信号を出力したり、発電システム20Aを停止させる等してもよい。
【0041】
上記第1の実施形態においては、複数の発電ユニット50A,50B,50C,…の整流器29を、一つの系統連系インバータ30に接続する構成としたが、これに限るものではない。例えば、複数の発電ユニット50A,50B,50C,…のそれぞれにおいて、整流器29にそれぞれ系統連系インバータ30を備えるようにしてもよい。
【0042】
ところで、上記実施形態においては、メンテナンス対象となる機器としてタービン26を例示したが、これに限るものではなく、発電システム20Aを構成する機器であれば、タービン26以外のものをメンテナンス対象とすることもできる。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかる発電システムの第2の実施形態について説明する。なお、以下に説明する第2の実施形態においては、上記第1の実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
図2に示すように、本実施形態に係る発電システム20Bは、複数組の発電ユニット60A,60B,60C,…を備える。
【0044】
発電システム20Bにおいては、一つの熱媒回路21に対し、一つの媒体循環回路22、循環ポンプ23、予熱器24、蒸発器25、凝縮器27が設けられ、蒸発器25と凝縮器27との間で、熱媒回路21が複数の分岐管21a,21b,21c,…に分岐している。そして、分岐管21a,21b,21c,…のそれぞれに、タービン26、発電機28、整流器29が設けられることで、発電ユニット60A,60B,60C,…が形成されている。
【0045】
そして、複数組の発電ユニット60A,60B,60C,…のそれぞれの整流器29が、一つの系統連系インバータ30に接続されている。
【0046】
このような構成の発電システム20Bにおいては、循環ポンプ23によって送りだされた媒体は、媒体循環回路22内で、予熱器24、蒸発器25を経た後、発電ユニット60A,60B,60C,…の分岐管21a,21b,21c,…に分岐する。この媒体は、発電ユニット60A,60B,60C,…のそれぞれにおいて、タービン26を駆動させて発電機28で発電した後、凝縮器27を順に経て循環ポンプ23に戻る。
そして、系統連系インバータ30では、複数の発電ユニット60A,60B,60C,…の整流器29から出力された直流電流を、交流電流に再変換し、発電電力として外部の送電網に出力する。
【0047】
このような発電システム20Bにおいても、上記第1の実施形態と同様にして、制御部35の制御により、熱媒回路21から送られてくる熱媒の熱エネルギ量や出力側における要求電力量に応じて、複数の発電ユニット60A,60B,60C,…のうち、稼働させるユニット数を変化させることによって、発電量を段階的に変えることができるようになっている。
【0048】
上記発電システム20Bにおいて、発電ユニット60A,60B,60C,…のそれぞれは、上記第1の実施形態と同様、メンテナンス対象となる機器、例えばタービン26の上流側と下流側には、開閉弁40A,40Bが設けられている。また、媒体循環回路22において、開閉弁40A,40Bの間には、サービスポート42および開閉弁43を備えたポート管41が設けられている。
【0049】
発電ユニット60A,60B,60C,…のそれぞれにおいて、整流器29と、系統連系インバータ30との間には、整流器29と系統連系インバータ30との間で電力を断続する継電器70が設けられている。
この継電器70は、リレー駆動回路71で、開閉弁40A,40Bの少なくとも一方に設けられたセンサ72の検出信号の遷移を検出することによって、開閉弁40A,40Bに連動して電力の断続が切り替えられるようになっている。
【0050】
発電ユニット60A,60B,60C,…のそれぞれにおいては、上記第1実施形態で示したように、タービン26をメンテナンスするには、複数の発電ユニット60A,60B,60C,…のうち、メンテナンス対象のタービン26を備えたユニット(例えば発電ユニット60A)において、開閉弁40A,40Bを閉じる。このとき、開閉弁40A,40Bが開状態から閉状態に移行するに伴い、センサ72では、それを検出する。すると、リレー駆動回路71によって継電器70が開放され、整流器29と系統連系インバータ30との間で電力を遮断する。これによって、この後は、発電ユニット60Aのタービン26、発電機28、整流器29に作業者が触れても、安全に作業を行うことができる。
【0051】
そして、ポート管41のサービスポート42に、媒体を回収するための媒体回収機器100を接続した後、開閉弁43を開く。これにより、開閉弁40A,40B間の媒体が回収される。
【0052】
この後、タービン26に対して、所要のメンテナンスを施す。そして、タービン26のメンテナンス終了後、サービスポート42に真空ポンプ110を接続して開閉弁40A,40Bの間の媒体循環回路22内を真空引きし、規定の真空度まで真空引きがなされた後、開閉弁43を閉じる。そして、サービスポート42に媒体供給機器120を接続し、開閉弁43を開いて媒体循環回路22内に媒体を充填する。
【0053】
媒体の充填後、開閉弁43を閉じ、しかる後、開閉弁40A,40Bを開く。これに伴い、センサ72からの検出信号が、開状態から閉状態に遷移するので、リレー駆動回路71によって継電器70を閉じ、整流器29と系統連系インバータ30との間で電力が接続され、整流器29が通電される。この状態から、発電ユニット60Aを再起動させる。
【0054】
上述したような構成においても、上記第1の実施形態と同様、例えば発電ユニット60B,60C,…を稼働させたまま、発電ユニット60Aのタービン26をメンテナンスする際に、発電ユニット60Aの開閉弁40A,40Bを閉じることによって、これをトリガーとして発電ユニット60Aのへの通電が遮断される。開閉弁40A,40Bの操作は、タービン26のメンテナンスの際に必ず行うものであり、その操作によって自動的に発電ユニット60Aのへの通電が遮断されるので、作業忘れ、作業ミス等が生じる余地はなく、確実に安全な作業環境を確保することができる。
【0055】
また、発電ユニット60A,60B,60C,…のそれぞれにおいて、タービン26のメンテナンス時に、開閉弁40A,40Bを閉じ、媒体循環回路22において、開閉弁40A,40Bの間のタービン26を含んだ一部区間のみの媒体を出し入れすればよい。したがって、媒体の抜き取り・真空引き・媒体の充填に掛かる時間を短縮することができ、メンテナンス期間を短縮化して、発電システムの稼働率を高めることができる。また、メンテナンスの際に必要な媒体量も少なくて済むので、メンテナンスコストを抑えることができる。
【0056】
なお、本実施形態における発電システム20Bにおいても、上記第1の実施形態の変形例と同様の変形例が適用可能である。
【0057】
(第3の実施形態)
次に、本発明にかかる発電システムの第3の実施形態について説明する。なお、以下に説明する第3の実施形態においては、例えば、上記第1の実施形態に示した構成をベースとしたシステム構成を有しており、上記第1の実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。また、以下の説明に用いる
図3においては、一つの発電ユニット50Aのみを示しているが、発電システム20Cには、
図1に示した上記第1の実施形態と同様に、発電ユニット50Aと同様の複数の発電ユニット50B,50C,…を備えている。
図3に示すように、本実施形態に係る発電システム20Cは、凝縮器27における凝縮効率を高めるために、凝縮器27を冷却するファン80を備えている。
このファン80は、整流器29の後流側から得た直流電流を電源とするモータからなるファン駆動機81によって回転駆動される。ファン80の回転によって生じる風を凝縮器27に当てることによって、凝縮器27の効率を高める。
【0058】
各組の発電ユニット50A,50B,50C,…において、ファン駆動機81と、系統連系インバータ30との間には、ファン駆動機81と系統連系インバータ30との間で電力を断続する継電器(第二の継電器)77が設けられている。
この継電器77は、上記第1の実施形態に示したのと同様にして、タービン26のメンテナンスに際しての開閉弁40A,40Bの閉動作に伴い、センサ72およびリレー駆動回路71によって、ファン駆動機81と系統連系インバータ30との間で電力を遮断する。
【0059】
このようにして、タービン26のメンテナンスに際しては、凝縮器27を冷却するファン80を確実に停止させ、作業安全性を確保することもできる。
【0060】
なお、このような構成において、制御部35において、タービン26の前後における媒体温度を監視し、温度が高い場合には、開閉弁40A,40Bを閉じたからといって直ちに継電器77を解放せず、媒体温度が予め定めた規定温度以下となるまで、ファン80を作動させて凝縮器27の冷却を継続してもよい。その場合、媒体温度が規定温度以下に下がり、継電器77を開放するまでの間、作業者に対して、ファン80が作動していることを示すアラーム表示やアラーム音を制御部35で出力するのが好ましい。
【0061】
また、上記したような凝縮器27を冷却するファン80、ファン駆動機81、継電器77および継電器77の動作は、上記第2の実施形態で示した構成にも同様に適用することができる。
【0062】
(その他の実施形態)
なお、本発明の発電システムは、図面を参照して説明した上述の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記各実施形態の発電システム20A,20Bにおいては、船舶,工場,ガスタービン等からの排熱、地熱、太陽熱、海洋温度差等を熱源として発電に用いるようにしたが、その熱源の種類はなんら問うものではない。
また、上記各実施形態では、膨張器としてタービン26を例示したが、タービン26に代えてスクロール式の膨張器等を採用することもできる。
さらに、メンテナンスに際しての手順は、本発明の主旨の範囲内であれば、上記した手順を適宜変更することができる。
また、本発明は、熱媒回路21、媒体循環回路22を備えない構成においても、タービン26(膨張器)に作動媒体を供給することによって発電機28を駆動するのであれば、いかなる構成の発電システムにも適用することが可能である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記各実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。