特許第5964242号(P5964242)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964242
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】光開始反応
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/48 20060101AFI20160721BHJP
   C08G 65/04 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C08F2/48
   C08G65/04
【請求項の数】17
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2012-548480(P2012-548480)
(86)(22)【出願日】2011年1月17日
(65)【公表番号】特表2013-517345(P2013-517345A)
(43)【公表日】2013年5月16日
(86)【国際出願番号】GB2011050064
(87)【国際公開番号】WO2011086389
(87)【国際公開日】20110721
【審査請求日】2014年1月14日
(31)【優先権主張番号】1000752.4
(32)【優先日】2010年1月18日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512186173
【氏名又は名称】リントフィールド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストーン,ロバート,エー.,ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ローレイロ,ルイ
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−113881(JP,A)
【文献】 特開昭52−107084(JP,A)
【文献】 特表2004−506070(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0014833(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1105675(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0275962(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00− 2/60
C08G 65/00−65/48
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変換可能な反応性基質の光開始変換のための方法であり、前記方法は、基質中に存在する保護されたケトン光開始剤種を脱保護し、前記方法において後続の光開始反応で使用するための対応するケトン光開始剤種を生成する工程を含み、前記光開始剤のケトン基は非置換の1,3ジオキソラン基によって保護されている、方法。
【請求項2】
前記反応性基質は支持体表面上の被覆である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基質がさらに外部刺激への応答として酸を発生し得る種を含み、外部刺激への基質の露出に対する応答において前記酸発生種によりその場で生成した酸との反応により保護されたケトン光開始剤の脱保護が開始される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
適当な酸が直接基質に塗布され、保護されたケトン光開始剤を脱保護する請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記後続の光開始反応が、脱保護されたケトン光開始剤から反応性種を生成するのに適した波長またはエネルギーの電磁波放射への基質の露出を含み、前記反応性種は、直接または間接に反応性基質の変換を開始する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
変換可能な反応性基質の光開始変換のための方法であって、前記方法は以下を含む:
(a)支持体表面に反応性基質の被覆を塗布する工程、前記基質は保護されたケトン光開始剤および外部刺激に対する応答として酸を発生し得る一以上の種をさらに含み、光開始剤のケトン基は非置換の1,3ジオキソラン基で保護され、前記ケトン光開始剤は、前記酸により脱保護されたときは、適当な波長またはエネルギーの電磁波放射への露出によって反応性種を形成し得る;
(b)前記被覆に外部刺激を適用し、前記外部刺激が適用された個所に酸を生成する工程、これにより前記酸が反応し保護されたケトン光開始剤の脱保護を引き起こし、前記外部刺激は脱保護されたケトン光開始剤から反応性種を生成するのに有効ではない;および
(c)前記被覆を適当な波長またはエネルギーの電磁波放射に露出し、直接または間接に前記領域で変換可能な反応性基質の変換を開始し得るケトン光開始剤から反応性種を生成する工程。
【請求項7】
変換可能な反応性基質の光開始変換のための方法であって、前記方法は以下を含む:
(a)支持体の表面に反応性基質および保護されたケトン光開始剤を含む被覆を塗布する工程、前記光開始剤のケトン基は非置換の1,3ジオキソラン基によって保護され、ケトン光開始剤は、酸により脱保護されたときは、適当な波長またはエネルギーの電磁波放射への露出により反応性種を生成し得る;
(b)前記被覆に酸を塗布し、保護されたケトン光開始剤を脱保護する工程;および
(c)前記被覆を適当な波長またはエネルギーの電磁波放射に露出し、直接または間接に前記領域の変換可能な反応性基質の変換を開始し得る、ケトン光開始剤から反応性種を生成する工程。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法であって、前記反応性基質は以下から選択される:重合可能な構成成分を含む基質、および/または架橋可能な構成成分を含む基質;および/または色変化可能な構成成分を含む基質。
【請求項9】
保護されたケトン光開始剤の脱保護が表面の選択された領域で有効となる請求項2または6に記載の方法。
【請求項10】
脱保護が表面全体で有効となり、後続の光開始反応が、反応性基質の部分のみを光反応条件に露出することにより実施される、請求項2または6に記載の方法。
【請求項11】
ケトン光開始剤を少なくとも一の段階で使用する反応性基質の光開始変換のための方法における、光開始剤のケトン基が非置換の1,3ジオキソラン基によって保護され、保護された状態のケトン光開始剤の脱保護によりその場でケトン光開始剤を生成する工程を含む、改良。
【請求項12】
ケトン部分が非置換の1,3ジオキソラン基によって保護され、
式(1):
【化1】
式中、Rはフェニルまたは置換されたフェニルであり;Rはフェニル、置換されたフェニル、または置換されたアルキルであり;RおよびRのそれぞれがフェニルまたは置換されたフェニルであるとき、各フェニル基は選択的に架橋部分によって連結され、以下の骨格を有する構造を形成してもよい:
【化2】
式中、XはSであり、A環およびB環のそれぞれは置換されていてもよく;または、RおよびRは連結し、選択的に置換されている共役環系を形成していてもよい、
で示される構造を有する、ケトン光開始剤。
【請求項13】
ケトン部分が非置換の1,3ジオキソラン基によって保護され、
式(2):
【化3】
式中、dは1〜5であり、Rはそれぞれ独立して水素、または、アルキル、アリール、アルキルチオ、アリールチオまたはヘテロ環から選択される置換基であり;かつRはフェニルまたは置換フェニルまたは置換アルキルである、
で示される構造を有する、ケトン光開始剤。
【請求項14】
前記式(1)において、およびRが連結し、基礎となる光開始剤のケトンが少なくとも1の芳香環と共役している共役環系を形成している、請求項12に記載の保護されたケトン光開始剤。
【請求項15】
前記式(2)において、およびRは互いに連結し共役複素環系を形成している請求項13に記載の保護されたケトン光開始剤。
【請求項16】
変換可能な反応性基質、請求項12〜15のいずれか1項に記載のケトン光開始剤、および選択的に酸を発生し得る種を含む組成物。
【請求項17】
光開始反応における、請求項12〜15のいずれか1項に記載のケトン光開始剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光開始反応、例えば電磁波放射の下で進行する硬化および重合反応に関する。より詳細には、本発明は、光開始色形成反応と同様に、感光性ポリマー技術に使用されるUV硬化に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
紫外線硬化技術分野の成長における、最も重要な応用はフォトイメージングである。写真の誕生以来、光露出により画像を得る新規で革新的な方法が探求されてきた。非デジタル写真の核をいまだに構成するハロゲン化銀プロセスそのものでさえ、例えばT粒子乳剤が導入されたときなどの本質的な変化が起こってきた。
【0003】
20年以上にわたり感光性ポリマー技術の実質的な改良がなされてきたにもかかわらず、そのプロセスの感受性は、ハロゲン化銀プロセスの光感受性に比較して非常に制限されている。感光性ポリマー科学の主要なゴールの一つは、ハロゲン化銀ベースのプロセスの感受性に近づくことである。
【0004】
感光性ポリマーの量子収率を結合(unity)を超えて増加させる方法は2つある。そのうち一つは、大部分の工業用フリーラジカルUV硬化システムで用いられる、アクリレート化学として最もよく知られている。ここでのアプローチは、適当な波長/エネルギーの電磁波放射を受ける一以上の光開始剤が入射する光子を吸収する、連鎖反応のものである。光子のエネルギーは、光開始剤により、照射された物質中にフリーラジカルを発生するために化学的に使用され、その各々は多数の重合可能な分子を素早く重合させることができ、重合の高量子収率をもたらす。したがってこのプロセスの量子収率は高いが、ハロゲン化銀写真全体におけるほどはまだ高くない。
【0005】
二番目の感光性ポリマー量子収率増加法の基本的な形態は、カチオン性UV硬化システムに例示される。この例では、吸収された光子は、触媒重合、架橋または分子開裂も生じさせる、触媒単量体種(species)を生成する。この技術は、基材の単量体分子が入手できる限り継続する「リビングポリマー」を生成することが可能なものとして記載されている。この反応は、しかしながら、フリーラジカルプロセスの連鎖反応に対比すると比較的遅いものである。さらに、反応した分子の量子収率は理論的には無限大であるが、イメージングされた領域の外の活性種の拡散により、反応の遅さが空間分解能を制限する。
【0006】
感光性ポリマーイメージングにおける制限は、常に、イメージングされる領域に適当なエネルギー量を運搬するために必要とされる時間の長さであった。大量のエネルギーの運搬は容易である。高強度の放射源、簡単な反射体およびコンベヤーベルトの組み合わせがこの目的の達成を可能にする。イメージングのためには、放射はコリメートし制御された方法で運搬しなければならない。どのような照明からの放射も、コリメートするには実質的に強度の低下を伴う。続いて使用する光学部品およびフォトツールも、非常に強い照射源からであってもエネルギーを顕著なほど低いレベルに減少させる。
【0007】
このような環境において、イメージングのためのレーザーの使用が開発されてきた。そのようなレーザーが運ぶ放射束は比較的小さいが、それ自体のコリメーションおよび与えられた波長で運搬される光子の強さは、レーザーを光源として有用なものにしている。ミラーと共にコンピュータにガイドされたビーム操作は、光学ツール使用を排除することを可能にし、この光化学に使用し得る光子数をさらに増加させる。それでもなお、これらの改善は緩やかなものに過ぎず、レーザーによりイメージングされた感光性ポリマープロセスは、いまだに遅いものである。
【0008】
ハロゲン化銀プロセスでは、この光化学の実際の効率は連鎖反応プロセスに比較して比較的遅い。各光子は単一の銀原子を発生するのみであり、したがってその量子効率は1に過ぎない(または、実際には1より小さい)。光に対する銀プロセスの感受性全体は、より多数の銀原子が発生したときに、工程の進行によってのみ明らかとなる。光照射により発生した銀原子がどこであっても、その使用可能な銀は、自己触媒反応を介して、現像反応(development reaction)を促進させ、より多くの銀を発生させる。したがって、「イメージ形成」の量子効率は、この第二の段階で生じる伝搬のために、1から無限大まで変化し得る。しかしながら、伝搬は粒界でのみ起こる、すなわち一個の粒子内で生成した銀原子は完全に現像するが、隣接する粒子は全く現像しない。したがって、ハロゲン化銀プロセスでは、像の詳細の分解能は粒子サイズによって制限される。
【0009】
Bradleyらは、Journal of Photochemistry and Photobiology A: chemistry 100(1996)109−118において、従来カチオン性UV硬化のための単量体として使用されてきたビニルエーテルのより使いやすい代替物として、ビニルジオキソラン系単量体の現像について記載している。そのような物質は、2,2’−ジフェニル−4−メチレン−l,3−ジオキソランである。
【0010】
【化1】
【0011】
欧州特許出願公開第1307783号明細書は、保護された(「ブロックされた」「潜在的な」とも称する)光開始剤が反応性基質(reactive substrate)に含まれるプロセスを記載している。保護された光開始剤はその場で(in situ)脱保護され、続く光開始反応に使用可能となる。保護された光開始剤は、ケトン基がメチレン1,3ジオキソラン(dioxolane)基で保護された、保護されたケトン光開始剤である。
【0012】
メチレン−1,3−ジオキソラン部分を有する従来技術のケトン光開始剤は、完全には安定ではなく、室温で、光の存在下で、または非常に弱い微量の酸で、分解することが分かっている。したがって、そのような物質に基づく光開始剤を大量生産される量で製造、取扱いおよび貯蔵することは困難である。適正な環境下でブロックされた開始剤としてなお機能し得るより安定な物質が必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
発明の概要
欧州特許出願公開第1307783号明細書の保護された光開始剤の安定性の問題は、予想外に、ケトン光開始剤に非置換の1,3ジオキソラン保護基を使用することにより解決されることが分かった。非置換の1,3ジオキソラン基で保護されたケトン光開始剤は弱酸および光の存在下で安定であるが、強酸の存在下では急速に脱保護されることが分かった。このような有利な性質は、試験した他のジオキソラン保護基、特に保護基が4−クロロメチルジオキソランまたは4−メチルジオキソランの場合には見い出されなかった。このような保護基は、脱ケタール化による脱ブロッキングは進行が遅すぎて有効ではない。
【0014】
したがって、本発明の一態様に従えば、変換可能な反応性基質(transformable reactive substrate)、例えば、重合可能な構成成分(constituent)、および/または架橋し得る構成成分および/または色変化し得る構成成分を含む基質、の光開始された変換(photointiated transformation)のための方法を提供する。この方法では、保護されたケトン光開始剤種は基質に含まれ、この方法は、保護されたケトン光開始剤が、この方法において後続の光反応または光開始反応に使用するために、その場で対応するケトン光開始剤種を生成するように脱保護される段階を含む。上記したように、本発明では、光開始剤のケトン基は非置換の1,3ジオキソラン基で保護される。
【0015】
本発明の他の態様によれば、変換可能な反応性基質の光開始変換(例えば重合可能な基質の重合および/または架橋可能な基質の架橋および/または色変化可能な基質の色変化)のための方法が提供され、前記方法は、以下を含む:
(a)支持体表面に、反応性基質、保護されたケトン光開始剤および一以上の外部刺激に応答して酸を発生しうる種を含む被覆を塗布する工程、ここで、光開始剤のケトン基は非置換の1,3ジオキソラン基で保護され、ケトン光開始剤は、前記酸で脱保護されたときは、適当な波長またはエネルギーの電磁波放射への露出により反応性種を生じる;
(b)外部刺激が適用された場所で酸を生成するために前記被覆に外部刺激を適用する工程、これにより、前記酸が反応し、保護されたケトン光開始剤の脱保護を引き起こし、ここで、外部刺激は脱保護されたケトン光開始剤から反応性種を生成することには有効でない;および
(c)適当な波長またはエネルギーの電磁波放射に被覆を露出し、ケトン光開始剤から、直接または間接に前記領域で変換可能な反応性基質の変換を開始し得る、反応性種を生成する工程。
【0016】
本発明の実施形態において、保護されたケトン光開始剤および/または酸発生種が、表面に塗布するための反応性基質と共に被覆組成物に含まれていてもよい。そうでなければ、被覆は始めに選択的に一または他の、他方の成分と共に反応性基質を表面に塗布し、次に他方の成分または別の成分が表面上に被覆を形成するために供給される次の工程を有する、一以上の工程により塗布されてもよい。
【0017】
本発明のさらに他の態様によれば、変換可能な反応性基質の光開始される変換(例えば、重合可能な基質の重合および/または架橋可能な基質の架橋および/または色変化可能な基質の色変化)のための方法が提供され、前記方法は以下を含む:
(a)支持体の表面に反応性基質および保護されたケトン光開始剤を含む被覆を塗布する工程、ここで、前記光開始剤のケトン基は非置換の1,3ジオキソラン基で保護され、前記ケトン光開始剤は、酸により脱保護されたときは、適当な波長またはエネルギーの電磁波放射への露出により反応性種を形成し得る;
(b)前記被覆に酸を塗布し、保護されたケトン光開始剤の脱保護を起こす工程;および
(c)適当な波長またはエネルギーの電磁波放射に被覆を露出し、直接または間接に、前記領域の変換可能な反応性基質の変換を開始し得るケトン光開始剤から反応性種を生成する工程。
【0018】
本発明の他の態様によれば、光開始反応における保護されたケトン光開始剤の使用が提供され、ここで、前記光開始剤のケトン基は非置換の1,3ジオキソラン基で保護されている。
【0019】
本発明のさらに別の態様によれば、変換可能な反応性基質、保護されたケトン光開始剤、ここで、光開始剤のケトン基は非置換の1,3ジオキソラン基で保護されている、および選択的に酸を発生し得る種を含む組成物が提供される。組成物は、選択的に、多様な有機および/または無機顔料および充填剤、フローおよびレベリング剤、溶媒、希釈剤、乾燥/硬化剤、硬化促進剤、抑制剤、pH緩衝剤、可塑剤、連鎖移動剤を含んでもよい。
【0020】
本発明はさらに、ケトン部分が1,3ジオキソラン基で保護されたケトン光開始剤を提供する。保護されたケトン光開始剤は、以下の式(I)を有していてもよい:
【0021】
【化2】
【0022】
式中、Rはフェニルまたは置換されたフェニルであり;Rはフェニル、置換されたフェニルまたは置換されたアルキルであり;ここで、RおよびRのそれぞれがフェニルまたは置換されたフェニルであるとき、各フェニル基は選択的に架橋部分で連結されていてもよく、以下の骨格を有する構造を形成していてもよい:
【0023】
【化3】
【0024】
式中、XはSまたは>C=0であり、A環およびB環のそれぞれは置換されていてもよく;または、RおよびRは連結し、選択的に置換されている、共役環系を形成していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図面の簡単な説明
図1図1は保護された光開始剤が脱保護され、光開始剤が続いて光開始反応に関与する実施形態を示す。
図2a図2a〜2cは、光開始剤が増感剤として機能する実施形態を示す。
図2b図2a〜2cは、光開始剤が増感剤として機能する実施形態を示す。
図2c図2a〜2cは、光開始剤が増感剤として機能する実施形態を示す。
図3a図3aおよび3bは、光酸発生剤または熱酸発生剤により酸が発生し、保護された光開始剤を脱保護するために酸が機能する実施形態を示す。
図3b図3aおよび3bは、光酸発生剤または熱酸発生剤により酸が発生し、保護された光開始剤を脱保護するために酸が機能する実施形態を示す。
図4図4は、酸発生剤および保護された光開始剤が自己促進型で機能する実施形態を示す。
図5図5は、保護された光開始剤および二のさらなる開始剤種の使用をする方法を示す。
図6図6〜9は本発明の光重合方法を示す。
図7図6〜9は本発明の光重合方法を示す。
図8図6〜9は本発明の光重合方法を示す。
図9図6〜9は本発明の光重合方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
上記したように、本発明は、欧州特許出願公開第1307783号明細書に記載されたような光開始反応において、ケトン部分が非置換の1,3ジオキソラン基で保護された、保護されたケトン光開始剤の使用を提供する。従来技術の参照文献で使用されている保護された光開始剤(ケトン基がメチレン1,3ジオキソラン基で保護されている)と比較した、本発明の保護されたケトン光開始剤の使用の優位点は、本発明で使用される保護された光開始剤が、室温でかつ光または微量の弱酸の存在下で安定であり、製造および大量生産による使用を促進することである。保護基は、しかしながら、強酸条件下で容易に取り除き得る。
【0027】
欧州特許出願公開第1307783号で報告されているように、カチオン性種および2,2−ジフェニル−4−メチレン−l,3−ジオキソラン種を用いた酸で触媒された光重合は、単純なカチオン性重合を経て進行せず、むしろ、第二の光反応において光開始剤として作用するケトンが生成される、ROMP類似の(開環メタセシス重合)プロセスを経て急速に生じる。
【0028】
【化4】
【0029】
本発明では、メチレン基が存在せず、この反応は不可能である。したがって、保護された光開始剤を脱ブロックする脱ケタール化反応は遅く進行すると考えられた。実際、保護基が4−クロロメチルジオキソランまたは4−メチルジオキソラン基である場合の脱ブロッキングは遅いことが分かった。代わりに、また予想外に、保護基が非置換のジオキソラン基であれば、強酸存在下ではこの反応は速く、しかし、弱酸または光の存在下では生じないことが分かった。
【0030】
理論には制限されないが、以下のメカニズムが推測される。
【0031】
【化5】
【0032】
水の不存在下の条件では、ジオキソランで保護された光開始剤は、ジオールの形成および親の開始剤の再発生により分解することはなく、異なったメカニズムで分解される。この新しいメカニズムは、上記のように、Bradleyらおよび欧州特許出願公開第1307783号明細書に記載されている、2,2’−ジフェニル−4−メチレン−l,3−ジオキソランが酸条件下で分解するメカニズムとは非常に異なっている。
【0033】
非置換のジオキソランにはメチレン基が存在しないため、分解を引き起こす、ジオキソラン環上のメチレン基のプロトン化は不可能である。
【0034】
どのようなカチオン消去(cation−quenching)物質も存在しないことにより、単純なジオキソランはケタール保護されたカルボニル化合物として振る舞い、このプロセスはジオキソラン環が開環するためポリエーテルを生成し、ジオキソラン環の理論的な親ケトンを生じる。ジオキソランの最も明らかな分解モードは、ジオキソラン環の酸素の一つがプロトン化した後、エポキシエタンを生成するものである。ジオキソラン環の開環反応は、さらなる開環を引き起こして反応する第二の歪んだ環構造(エポキシド)形成を伴って進行し、ポリエーテルおよび第二の光反応において光開始剤として作用するより多くのケトンを生成し、プロトンを与え戻し、上記のように反応を自己触媒化する。
【0035】
この理論を指示する証拠は、保護された(または潜在的な)光開始剤(DITX)を生成するために非置換のジオキソランを用いてブロックした、光化学誘起アクリレート重合の周知の開始剤である、2−イソプロピルチオキサントン(ITX)を用いる分析方法によって示される。以下の知見が得られた。
【0036】
(1)DITXを化学イオン化質量分析(無水の気相、通常非常に安定したプロトン化分子イオンを提供する)した際、予想される分子イオンはほとんど存在せず、しかし、プロトン化したITXを与えるためエポキシエタン分子が失われることにより大部分が分解している。
【0037】
(2)DITXを用いた実験によるNMRスペクトルは、エポキシエタンが高分子(ポリオキシエチレン)を形成し、かつ、DITXの酸に対する反応性が予想されるよりも高い理由が上記のエポキシド形成のメカニズム中に含まれることを示す、ITX以外の他のものを形成しないことを示している。
【0038】
従来技術の2,2’−ジフェニル−4−メチレン−l,3−ジオキソランとは異なり、フリーラジカル重合が起こらないことが分かった。
【0039】
本発明によれば、保護されたケトン光開始剤は光反応または光開始反応中で変換し得る構成成分を含む変換可能な反応性基質を含む。例えば反応性基質は、重合可能な構成成分を含む基質、および/または架橋可能な構成成分を含む基質および/または色変化可能な構成成分を含む基質、を含み得る。適当な基質の例は、アクリレート樹脂および/または単量体の混合物である。
【0040】
反応性基質は支持体表面に被覆として塗布し得る。
【0041】
反応性基質の構成成分は、保護されたケトン光開始剤がその場で脱保護され、この方法の後続の光反応または光開始反応中で使用される対応するケトン光開始剤種を生成する工程を含む方法中で、変換される。
【0042】
一実施形態では、後続の光開始反応は反応性基質をその中の脱保護されたケトン光開始剤と共に適当な波長/エネルギーの電磁波放射が基質中の変換可能な構成成分(例えば重合可能なおよび/または架橋可能な構成成分および/または色変化可能な構成成分)を変換させる(例えば重合および/または架橋および/または色変化)、光反応条件に露出することを含み得る。この工程では、放射例えば化学線(例えばUV放射)を大量放射(flood irradiation)して適用してもよい。
【0043】
反応性基質をその中の脱保護されたケトン光開始剤と共に適当な光反応条件に曝すことにより、典型的には、その光開始剤は例えばフリーラジカル等の反応性種を形成し、そうでなければ、分子励起状態となり得る。この反応性種はそこで、直接または間接に基質中の変換可能な構成成分(例えば重合可能なおよび/または架橋可能な構成成分および/または色変化可能な構成成分)を変換させる(例えば重合および/または架橋および/または色変化)。
【0044】
例えば、いくつかの実施形態では、光反応条件は、直接フリーラジカル種(単分子結合開裂)の生成を誘起することもでき、または間接に共開始剤種または反応性基質中に存在する相乗剤との相互作用により、フリーラジカル種の生成を誘起することもできる(図1参照)。
【0045】
典型的には、光反応条件がケトン光開始剤からフリーラジカル種の発生または生成を引き起こす実施形態では、このフリーラジカル種は直接反応性基質中の変換可能な構成成分の変換を開始する。したがって、例えば、その変換はフリーラジカルに促進される重合であり得る。
【0046】
脱保護されたケトン光開始剤が増感剤として機能しうる他の実施形態では、それは反応性組成物に含まれる適当な第二の光開始剤または相乗剤種と組み合わせて使用される。これらの実施形態では、光反応条件は、ケトン光開始剤を励起状態に引き上げる。この反応性種は、例えばそのエネルギーを他の種に移すことにより、第二の光開始剤または相乗剤と相互作用し、反応性基質中の変換可能な構成成分の(直接または間接の)変換を開始する。このような実施形態では、ケトン光開始剤が増感剤として機能し、相互作用の後でその基底状態に戻し、好適な光反応条件下でさらなる励起を可能にする。
【0047】
ケトン光開始剤が増感剤として機能するこれらの実施形態では、第二の光開始剤はラジカル光開始剤またはカチオン性光開始剤であり得る(図2a、2bおよび2c参照)。
【0048】
上記したように、保護されたケトン光開始剤は、本発明の方法の第一段階と認識される位置で、その場で脱保護され、脱保護されたケトン光開始剤はその後に続く光開始反応に用いられる。
【0049】
脱保護は、外部刺激への応答として、保護された光開始剤の脱保護に有効である酸を発生し得る種を反応性基質中に含有させることにより、達成され得る。この外部刺激は、酸発生種から酸を発生させるのに効果的な適当な波長またはエネルギーの電磁波放射への露出であってもよい(図3a参照、ここで、「PAG」は光酸発生剤を表す)。しかしながら、原理的には、保護された光開始剤の脱保護のための酸触媒が熱分解により得られる種からの酸発生を引き起こす、熱エネルギーの適用等の他の外部刺激も使用し得る。そのような種の例は、ブロックされたp−トルエンスルホン酸(図3b参照、ここで、「TAG」は熱酸発生剤を表す)である。
【0050】
例えば、保護された光開始剤上の非置換の1,3−ジオキソラン基は、例えば化学線(図3a)等の低エネルギーの放射の関与し得る初期光反応条件下で起こる光反応中で除去される。保護されたケトン光開始剤は、反応性基質の全体にわたり、または反応性基質の部分のみが脱保護され得る。基質の部分のみにわたる脱保護を実施するには、この放射は、例えばレーザーによりまたは適当なフォトツールを通して、像様に(imagewise)照射され得る(図3b、λは像様に照射されている)。
【0051】
基質が支持体上の被覆として塗布される場合には、保護されたケトン光開始剤は支持体にわたり、または、支持体の部分のみにわたり脱保護されてもよい。
【0052】
その他には、脱保護は、直接脱保護を引き起こすことのできる酸を塗布することにより、または、外部刺激の応答として酸を発生し得る酸発生種をスプレーやインクジェット印刷等の別途の工程により反応性基質の表面上に塗布することにより、実施されてもよい。
【0053】
基質に直接塗布される酸または、基質に含まれるか続いて基質に塗布される酸発生種により発生する酸は、保護されたケトン光開始剤の脱保護を実施するのに好適である。これに関連し、酸発生種は、脱保護されたケトン光開始剤の脱保護に好適な強さの酸を発生する能力があるか、それ自身がそのような酸である必要がある。必要であれば、酸発生種と具体的に選択したケトン光開始剤とを適合させるために、適当な試験を行うことができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、酸発生種は脱保護されたケトン光開始剤の関与する後続の光開始反応において、共開始剤としての役割を果たしてもよい。ここで、後続の段階では、適当な波長の電磁波放射への露出は、この共開始剤と相互作用する反応性種の生成を引き起こし、フリーラジカルを発生し、これは、適当な条件下で反応性基質中の変換可能な構成成分の変換を開始することができ、かつ/または、カチオン性条件下で反応性基質中の変換可能な構成成分の変換を開始することができる酸を形成し、および/または、自動的に促進される方法で保護されたケトンのさらなる脱保護を引き起こすことができる(図4参照)。この実施形態はさらに以下で議論する。
【0055】
上記したように、ケトン光開始剤の脱保護は像様の方法で実施され得る、例えばフォトマスクまたはレーザーを用いて、すなわちケトン光開始剤は支持体の表面の選択された領域で脱保護され得る。このことは、上記したように、反応性基質の選択された領域を、脱保護を有効にするために適当な波長の電磁波放射に露出することにより実行し得る。結果として、ケトン光開始剤は選択された領域でのみ脱保護される。この工程は、相対的に低エネルギーで実施され得る。そうでなければ、選択的な脱保護は、インクジェット印刷等の別途の像様の工程において、酸および/または酸発生種を基質の表面に塗布することにより実施でき、酸および/または適当な外部刺激に露出することへの応答として酸発生種により生成する酸が、酸および/または酸発生種が塗布された領域に対応する領域で生じる脱保護を引き起こす。後続の段階では、脱保護が光化学的に行われる初期の工程で用いられる電磁波放射の波長とは異なり、かつ、ケトン光開始剤に適合した、適当な波長の電磁波放射の照射が、反応性基質中の変換可能な構成成分の選択された領域のみでの変換を引き起こす。この工程での電磁波放射への露出は、急速な効果を発現させるために高エネルギーであり得る。
【0056】
他の選択的なアプローチとしては、保護されたケトン光開始剤は、支持体表面全体に亘る最初の段階で脱保護され得る。後続のケトン光開始剤に適合した適当な波長の電磁波放射への露出が、次いで支持体表面の選択された領域で、例えばフォトマスクまたはレーザーを用いて、像様に実施される。この選択的なアプローチは、例えば、もし脱保護されれば、光開始剤を活性化するのに効果的な(例えば乾燥で用いられうる等の放射)条件下で反応性基質を準備するための予備的な段階を実施するのを可能にする。しかしながら、ケトン光開始剤はこの段階では保護されているため、活性化はされず、反応性基質中の変換可能な構成成分のあらゆる実質的に望ましくない変換を避けられる。
【0057】
本発明は、ケトン部分が1,3ジオキソラン基で保護されたケトン光開始剤にも関する。保護されたケトン光開始剤は、式(I)を有し得る:
【0058】
【化6】
【0059】
ここで、Rはフェニルまたは置換されたフェニルであり;Rはフェニル、置換されたフェニルまたは置換されたアルキルであり;RおよびRそれぞれがフェニルまたは置換されたフェニルであるときは、各フェニル基は選択的に架橋部分により連結していてもよく、以下の骨格を有する構造を形成してもよい:
【0060】
【化7】
【0061】
ここで、XはSまたは>C=0であり、A環およびB環それぞれは置換されていてもよく;または、RおよびRは接合され、選択的に置換されていてもよい共役環系を形成していてもよい。
【0062】
一実施形態では、保護されたケトン光開始剤は下記式を有し:
【0063】
【化8】
【0064】
ここで、dは1〜5であり、Rはそれぞれ独立して水素または、アルキル(例えばC1〜4アルキル)、アリール(例えばフェニルまたは置換されたフェニル)、アルキルチオ(例えばC1〜4アルキルチオ)、アリールチオ(例えばアリールがフェニルまたは置換されたフェニルであり、例えばC1〜4アルキル等の置換されたアルキル)もしくはヘテロ環(例えばモルフォリノ)から選択される置換基であり;かつ、Rはフェニル、置換されたフェニルまたは置換されたアルキルである。
【0065】
が置換されたフェニルであるとき、フェニル上の置換基はアルキル、置換されたアルキル、フェニルまたは置換されたフェニルから選択され得る。
【0066】
が置換されたアルキルであるとき、置換基はヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリール、アルキルアリール、アミノ、モルフォリノ等のヘテロ環の一以上から選択され得る。例えば、Rは以下であり得る。
【0067】
【化9】
【0068】
ここで、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルキル、アリール、アミノまたはヘテロアリールから選択され得る。
【0069】
選択的に、RおよびRは接合され共役環系を形成してもよく、基礎の光開始剤のケトンは少なくとも一の芳香環と共役し得る。例えば、RおよびRは共に接合され、以下の構造を有するフルオロン環等の共役ヘテロ環系を形成してもよい:
【0070】
【化10】
【0071】
上記は選択的に置換されていてもよい。
【0072】
上記したように、本発明の方法は反応性基質に適用でき、基質は、発色団それ自体を含む、色変化可能な構成成分を含む。しかしながら、現状の応用では、色変化は、反応が起こり特定される領域を可能にする、架橋および/または重合プロセス中に起こると予想される。ロイコ(Leuco)クリスタルバイオレットはこの点で重要な発色団である(潜在的な色前駆体(colour former)は、通常「ロイコ染料」と称される)。本発明の方法を適用し得る他のロイコ染料はロイコキサンテン(leucoxanthene)およびロイコフルオラン(leuco fluoran)である。
【0073】
図5を参照すると、上記で一般的に論じたように、保護されたまたは潜在的な光開始剤は、もっとも一般的には、予備的な条件下で起こる反応中でその保護基が除去される、保護された光開始剤(開始剤A)である。このような予備的条件は、適当な波長/エネルギーの電磁波放射に露出した際、潜在的な光開始剤と相互作用でき、潜在的な光開始剤を開始剤Aへと変換し得る、別の光開始剤(開始剤B)の使用を含み得る。本発明は、特に指摘しない限り、潜在的な光開始剤を活性化する状態(mode)を参照しつつ記載する。そこで、全体として、二の異なる波長の電磁波放射の適用を含むことが必要な2つの光反応を用いることになる。特に、放射の低エネルギー源は、基質の像様の露出を実現するために使用し得る、第一のまたは予備的な光反応中で用いることができ、かつ、高エネルギーの放射が、反応性基質が変換される第二の反応に関連して、続いて大量に適用される。好ましくは、レーザーが像様の化学線の低エネルギー源を適用するために使用される。上記した、初期の露出段階での銀原子生成のための量子効率は1以下であるハロゲン化銀プロセスとは対照的に、本発明では、開始剤A生成のための量子効率は、予備的な光反応で1よりもずっと高くなり得る、すなわち、1の光子が多数の保護された開始剤分子の脱保護を引き起こし、それにより、多数の開始剤A分子が生成される。続く第二の段階で基質を化学線に露出すると、開始剤Aは基質を重合および/または架橋させ、および/または、基質中に色変化を生じさせる。さらに、開始剤Aおよび第二の段階での放射の波長の組み合わせを注意深く選択して使用することにより、開始剤Aは第三の開始剤(開始剤C)と相互作用し得るようにでき、基質にも適用でき、それ自身は第一のまたは第二の段階で使用される放射波長を吸収せず、増感メカニズムを通じて、開始剤Cも重合および/または架橋および/または基質基質中で生じる色変化を、さらなる保護された開始剤Aの脱保護と同様に、引き起こし得る。
【0074】
本発明の実施によるこのような方法は、したがって、自動的に促進される(auto−accelerative)増感段階をも使用するが、そこでは、第二の光化学反応が予備的な、好ましくは光化学反応に続いて実施される。
【0075】
非置換の1,3ジオキソラン構造は、従来の化学を用いる当業者によってケトン光開始剤原料から製造し得る。これに関し、J .Chem. Soc, Perkin Trans. 1,2001,1807−1815およびTetrahedron Letters 42(2001)1789−1791が参照される。
【0076】
ジオキソラン環の開環反応は、ベンジルジメチルケタール等の周知の材料からジ−ヨードブトキシフルオロン(ステレオリソグラフィで使用される有望な活性光開始剤)等の新種の材料に亘る、ケトン官能の(ketonic functional)開始剤および共開始剤種全体の生成に応用し得る。要求される非置換の1,3ジオキソラン形成で作られるときは、得られる化合物は、「潜在的な光開始剤」として作用し、熱酸発生剤またはカチオン性開始剤からの触媒量の酸の形成における低量の光によって活性化され得る。このようなケトン光開始剤は以下の通りである:
【0077】
【化11】
【0078】
保護された光開始剤の準備のための基礎として用いうる他のケトン光開始剤は、ジフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、様々なベンゾインエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンおよびそれらのエーテルである。
【0079】
例示として、本発明に従って保護されたケトン光開始剤は、それらの開示において重複し得る、以下の文献から選択され得る。これらのリスト中のケトン光開始剤ではない他の種への参照は意図されておらず、無視すべきである。
【0080】
US−7585611Bに開示されている光開始剤
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインおよびベンゾインアルキルエーテル;
アセトフェノン,2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン,2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノンおよび1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン;
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノアミノプロパノン−12−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンおよびN,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン;
2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチル−アントラキノンおよび1−クロロアントラキノン等のアントラキノン;
2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンおよび2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン;
アセトフェノンジメチルケタールおよびベンジルジメチルケタール等のケタール;
ベンゾフェノンおよび4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノンまたはキサントン;
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド。
【0081】
EP−1487888Aに開示されている光開始剤
ベンゾイン;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテルおよびベンゾインアセテート;
アセトフェノン、2,2−ジメチルアセトフェノンおよび1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン;
ベンジル、ベンジルジメチルケタールおよびベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール;
Irgacure(登録商標)の名称で市場から入手可能な2−メチル−1−(4メチルチオフェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノン;
2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンおよび2−アミルアントラキノン等のアントラキノン,
トリフェニルホスフィン、ベンゾイルホスフィンオキサイド(Luzirin TPO、BASF);
ベンゾフェノンおよび4,4’−ビス(N,N,−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン
チオキサントンおよびキサントン、
1−フェニル−l,2−プロパンジオン2−O−ベンゾイルオキシム、
1−アミノフェニルケトン;
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル1−ヒドロキシイソプロピルケトンおよび4−イソプロピルフェニル1−ヒドロキシイソプロピルケトン等の1−ヒドロキシフェニルケトン、並びに2ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−1−(4−Ν−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン。
【0082】
米国特許第7425585号明細書に開示されている光開始剤
下記式で表される光開始剤:
【0083】
【化12】
【0084】
は直鎖または分岐鎖のC〜C12アルキル;Rは直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル;RおよびRはそれぞれ独立して直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキルである。
【0085】
〜C12アルキルは直鎖または分岐鎖であり、例えばC〜C10、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C10、C〜C10、C〜C、C〜CまたはC〜C10アルキルである。例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、2,4,4−トリメチルペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、デシルおよびドデシルである。
【0086】
は、例えば直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル、特にメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、イソブチルおよびn−ブチルである。Rは例えばメチル、エチルまたはプロピル、特にエチルであり、RおよびRは特にそれぞれ独立して直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキルであり、特にメチルである。
【0087】
例示としては、以下のものがある。
【0088】
【化13】
【0089】
米国特許第7425585号明細書に開示されているさらなる光開始剤の例は以下の通りである。
【0090】
1 チオキサントン
チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)−チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、l−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ−[2−(2−メトキシエトキシ)−エトキシカルボニル]−チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルフォリノエチル)−チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチル−チオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)−チオキサントン、2−モルフォリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルフォリノメチルチオキサントン、N−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールカルボン酸エステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライド。
【0091】
2 ベンゾフェノン
ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−(4−メチルチオフェニル)−ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル4−メトキシベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイルべンゾエート、4−(2−ヒドロキシエチルチオ)−ベンゾフェノン,4−(4−トルイルチオ)−ベンゾフェノン,4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライドモノハイドレート、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)−ベンゾフェノン,4−ベンゾイル−N,N−ジメチルN−[2−(l−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エチル−ベンゼンメタンアミニウムクロライド。
【0092】
3 クマリン
クマリン1、クマリン2、クマリン6、クマリン7、クマリン30、クマリン102、クマリン106、クマリン138、クマリン152、クマリン153、クマリン307、クマリン314、クマリン314T、クマリン334、クマリン337、クマリン500、3−ベンゾイルクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロペニルクマリン、3−ベンゾイル−6,8−ジクロロクマリン、3−ベンゾイル−6−クロロ−クマリン、3,3’−カルボニル−ビス[5,7−ジ(プロポキシ)クマリン]、3,3’−カルボニル−ビス(7−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノ−クマリン)、3−イソブチロイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシ−クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジエトキシ−クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジブトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(メトキシエトキシ)−クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(アリルオキシ)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−イソブチロイル−7−ジメチルアミノクマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)−クマリン、5,7−メトキシ3−(1−ナフトイル)−クマリン、3−ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、7−ジエチルアミノ−3−チエノイルクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジメトキシクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジプロポキシクマリン、7−ジメチルアミノ−3−フェニルクマリン、7−ジエチルアミノ−3−フェニルクマリン、特開平09−179299号公報および特開平09−325209号公報に開示の、例えば7−[{4−クロロ−6−(ジエチルアミノ)−S−トリアジン−2−イル}アミノ]−3−フェニルクマリン等のクマリン誘導体。
【0093】
4 3−(アロイルメチレン)−チアゾリン
3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−β−ナフトチアゾリン、3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−ベンゾチアゾリン、3−エチル−2−プロピオニルメチレン−β−ナフトチアゾリン。
【0094】
5 ローダミン
4−ジメチルアミノベンザルローダミン、4−ジエチルアミノベンザルローダミン、3−エチル−5−(3 −オクチル−2−ベンゾチアゾリニリデン(benzothiazolinylidene))−ローダミン、ローダミン誘導体、特開平08−305019号公報に記載の式[1]、[2]、[7]。
【0095】
6 他の化合物
アセトフェノン、3−メトキシアセトフェノン、4−フェニルアセトフェノン、ベンジル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンジル、2−アセチルナフタレン、2−ナフタルデハイド(naphthaldehyde)、ダンシル酸誘導体、9,10−アントラキノン、アントラセン、ピレン、アミノピレン、ペリレン、フェナントレン,フェナントレンキノン、9−フルオレノン、ジベンゾスベロン、クルクミン、キサントン、チオミヒラーズケトン(thiomichler’s ketone)、α−(4−ジメチルアミノベンジリデン)ケトン、例えば2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、2−(4−ジメチルアミノ−ベンジリデン)−インダン−1−オン、3−(4−ジメチルアミノ−フェニル)−1−インダン−5−イル−プロぺノン、3−フェニルチオフタルイミド、N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)−フタルイミド,N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド、フェノチアジン、メチルフェノチアジン、アミン、例えばN−フェニルグリシン、エチル4−ジメチルアミノベンゾエート、ブトキシエチル4−ジメチルアミノベンゾエート、4−ジメチルアミノアセトフェノン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p−ジメチルアミノベンゾエート。
【0096】
本発明で実施する光重合方法の例としては、典型的には、カチオン性(酸発生)光開始剤、アクリレートおよび非置換の1,3ジオキソラン系の潜在的な光開始剤を含むフィルムの初期照射を含む。この照射は早くかつ効果的で、この段階で形成されるポリマーは最小であり、反応速度の第一の制限となるガラス化を生ずる可能性は少ない。カチオン性開始剤によって発生する酸はジオキソラン基を除去し、内在する光開始剤を生成する。低エネルギーの像様の露出に続いて、さらなる光分解および酸生成を防止するため、その系はカチオン性開始剤の吸収範囲外の波長の光を大量に照射されるが、ジオキソラン環の開裂により形成される開始剤の吸収範囲では、形成された開始剤が、開始剤が形成された個所の基質中で重合および/または架橋および/または色変化を生じる条件で行われる。この照射は像様ではなく、したがって、相対的に短時間に非常により大量の光が関与し得る。この適用例としては、光イメージング可能な(photoimageable)被覆のレーザーによる直接のイメージングがある。この技術により、重合エネルギーのすべてを、ボトルネックである、像様の方法でレーザーで照射する必要性を除くことになる。この技術の例は、添付図面の図6のフローチャートにまとめられている。
【0097】
好ましくは、一般的には、スルホニウムおよびヨードニウム塩、ならびに塩を形成する有機金属化合物等のカチオン性酸発生種が、保護された光開始剤を変換するために用いられる。しかし、α−スルホニルキシケトンもカチオン性酸発生種として使用できる。これらの化合物は以下に例示される:
モノ−またはポリ−[4−(フェニルチオジフェニル)]スルホニウムヘキサフルオロホスフェートまたはヘキサフルオロアンチモネートと選択的に組み合わせ得る、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル]スルフィドビス−ヘキサフルオロホスフェートまたはビス−ヘキサフルオロアンチモネート;ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ−フェニル]スルフィドビス−ヘキサフルオロホスフェート;ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチリル)フェニル)スルホニオ)−フェニル]スルフィドビス−ヘキサフルオロアンチモネート;(η−2,4−(シクロペンタジエニル)[(l,2,3,4,5,6−η)−(メチルエチル)ベンゼン]−鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート;4−イソプロピル−4−メチルジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;4−イソプロピル−4−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス−(ペンタ−フルオロフェニル)ボレート;ジフェニルヨードニウムテトラキス−(ペンタ−フルオロフェニル)ボレートおよび;2’−ヒドロキシ−2−フェニル−3−トルエンスルホニルオキシプロピオフェノン。
【0098】
広い範囲の調製物(formulation)が可能である。好ましくは、酸発生光開始剤の使用量は5重量%までであり、例えば、作用させる物質の0.25〜5重量%の範囲である。保護された光開始剤は、実使用上の範囲は10%までであり、例えば、作用させる基質の0.25〜10重量%である。一実施形態では、保護された光開始剤の量は、基質の3〜10重量%である。
【0099】
このプロセスは、光感受性については、ハロゲン化銀プロセス全体と完全に一致し得るとは考えにくいが、それでもなお、得られる生成物は、電磁波放射による硬化に依存するイメージングプロセスの製造効率を劇的に増加させることを可能にする。実際的な経験は、UV領域で作用させるときに特に便利であることを示してきた。非置換の1,3ジオキソランの潜在的な光開始剤および上記の酸発生光開始剤によれば、第一の光化学反応に相対的に短い波長のUV照射を用い、反対に、第二の光化学反応により長波長のUV照射を用いることができる。
【0100】
この手順を実施する第二の手順は、光イメージング可能なインクの分野のものであり、カチオン性システムがその優位な物性のために好まれる、連続ビルドアップ(SBU)のためのものである。この手順は、本発明の方法の多用途性を示すものである。ケトンが非置換のジオキソラン環によって保護された、保護状態で形成された材料の一つは、イソプロピルチオキサントン(IΤΧ)である。チオキサントンは、ヨードニウム塩の増感剤として特に好適である。ヨードニウム塩自体はカチオン性重合のための酸触媒の発生剤であり、自己増感系(self−sensitizing system)にそれらが使用される可能性は明らかであり量子収率を増加させる手段を提供する。ヨードニウム塩の像様の直接の初期照射は、少量の酸重合触媒を生成する結果となる。得られるフィルムは、可視に近い放射で大量に照射されたときは、自動的に促進される反応に敏感である。この増感作用は光イメージング可能なSBU誘電体を用いたレーザーによる直接イメージング使用の道を開くものである。この技術の一例は、添付図面の図7のフローチャートにまとめられている。
【0101】
プリント配線板産業により多数の基板が製造されるにつれ、特に、含有させまたは収集および再加工するのが困難な蒸気の放出に関し、基板製造工程の環境への影響が心配されている。有機物の蒸気放出の発生の原因となる工程は、様々な被覆方法による、液体の光イメージング可能なはんだマスク(LPISM)の塗布である。この工程では、溶媒を含む液体の調製物でPCBが完全に被覆される。被覆の後、基板はオーブン中で乾燥し、溶媒を蒸発させ、べたつきのない感光性の被覆を製造する。被覆の像様の露出および後続の現像では、水性カーボネートまたは有機溶媒が、素子やコネクタ設置のためのマスク中に開口の形成を可能にする。この技術は、添付図面の図8のフローチャートにまとめられている。より厳しくなる規制上の条件に直面し、特に乾燥工程で、蒸気の放出を低減するかまたは排除するための制御技術が必要となる。製造者のいくつかは水系のLPISMを市場に導入する挑戦をしてきたが、これらは従来の溶媒系の製品よりも技術的に劣ったものとなることが分かっている。
【0102】
光酸発生開始剤(カチオン性開始剤)をジオキソランでブロックされたフリーラジカル開始剤と組み合わせて使用することは、100%固体のLPISMの調製物を可能にする。この系は、まったく溶媒を含まないという利点を有し、したがって放出がない。このような100%固体の調製物は、酸触媒に露出することによりべたつきなく作製されうるが、一方で適当な媒体中で現像可能なままであり、本発明の以下の教示により作製される。製造されるLPISMはしたがってUVにより乾燥し、脱ブロッキングを確実にし、硬化プロセスを完成させるために加熱される。続いて、それは調製物をイメージングするために再度露出され現像され最終的に工業的に周知なやり方で硬化される。ジオキソランでブロックされた潜在的な光開始剤の使用は、被覆をUVで乾燥させつつ、イメージング段階の間はラジカル開始剤を保持する。この工程の順番は図9のフローチャートに示されている。
【0103】
UV乾燥を有効にするためには、様々なアプローチを用いうる。ビニルエーテル、シクロアリファティックエポキシドおよびオキセタン化合物は重合可能な溶媒として使用し得る。そうでなければ、そのような物質の機能的な樹脂のための架橋剤としての使用が実行可能である。反応性の樹脂の使用およびカチオン性反応による樹脂分子量の構築も使用し得る。最終的に、ビニルエーテル官能性樹脂の使用およびカチオン性 条件下でそれをヒドロキシ官能性溶媒と反応させることが可能であり、逆も可能である。このような技術は以下で表され得る。
【0104】
【化14】
【0105】
【化15】
【0106】
同様の応用は、フレキソ印刷版製造および他のイメージングされた印刷システム中に見ることができる。
【0107】
潜在的な光開始剤の使用のさらなる例は、可視光活性(visible light active)光開始剤の分野にある。これらの開始剤を使用する際には、作業が非常に難しい環境を提供する、「赤色光」ゾーンとして構成される作業領域が必要とされる。本発明をブロックされた可視光光開始剤を製造するために使用することにより、活性化後にのみ可視光に感光する調製物が製造され得る。続く製造および取扱いでの利点がそこから結果として得られる。
【0108】
更に別の応用は、高強度エキシマランプ技術と組み合わせた、厚く透明なフィルムの硬化にある。低濃度の開始剤、一方で厚い被覆中で光学密度を最小化する必要性は、通常重合を始めるのに適切ではない。厚いフィルムの硬化に用いる光開始剤の選択は、例えばアクリルホスフィンオキサイド等の光退色を受けるものに制限されてしまう。ジオキソランでブロックされたフリーラジカル開始剤との組み合わせた、低濃度のカチオン性開始剤を使用する注意深い調製物は、UV光照射の間、その場でフリーラジカル開始剤の生成が進行する結果となる。したがって、ジオキソランで保護された開始剤の光吸収は、親の開始剤よりも短波長であるため、光学密度は常に、存在する少量のフリーラジカル開始剤によってのみ制御し得る。高強度エキシマランプは特にこの応用に好適であるが、なぜならば、エキシマランプ単色に近い出力は、相当に厚い透明フィルム中の、低濃度の短波長に感光性のカチオン性開始剤を光分解させることができるためである。
【0109】
本明細書で記載する潜在的な開始剤は酸部分を生じる光化学プロセスによって脱ブロックされるものに限定はされない。十分な強さのいかなるブロックされた酸も、例えばブロックされたトルエンスルホン酸、特にp−トルエンスルホン酸も、脱ブロックされることにより、潜在的な光開始剤上のジオキソラン環の分解を触媒する。使用し得るこのような化合物の例は、King Industriesにより製造されているブロックされた超酸(super acid)である。これらは熱的に脱ブロックすることができ、本明細書で提示した多数の例、特に100%固体のLPISMにとって有用であり、実現可能な開始プロセスにおける取扱い性の向上をもたらす。
【0110】
まとめると、本明細書で概略を説明した化学は、所定の合成方法、例えばカルボニル基の反応によるブロックされた光開始剤の合成において、潜在的な光開始剤としてジオキソラン環の形成を提供する。
【0111】
この技術は以下の応用において有用である:
1 第一および第二のイメージング(PCB産業)
2 可視光開始剤のUVで開始される増感作用
3 可視光活性な調製物の取扱い性を容易にする
4 厚いフィルムの硬化を制御する
5 紫外線硬化調製物の保存可能期間を向上する
【実施例】
【0112】
実施例
実施例1
1,3ジオキソランで保護された2−イソプロピルチオキサントン(DITX)の調製
オーバーヘッドメカニカルスターラー、水酸化ナトリウムスクラバー、および窒素導入口を連結した還流冷却器を備えた5000mlの3口丸底フラスコで、チオニルクロライド(3262g、2000ml、27.42M、10Mol当量)中に2−ITX(700g,2.752M)溶液を溶解させた。窒素流下に、このワインレッドの溶液を加熱し、撹拌しながら4.5時間還流した(内部温度=80℃)。反応混合物は、正圧の窒素下で一晩自然放熱し冷却した。ワインレッドの反応混合物はロータリーエバポレーター(rotorvapor)に移し、過剰のチオニルクロライドを減圧下で除去した(水浴温度は40℃に維持した)。流動する油分はトルエン(1050ml)中に取り出し、その後前もって準備し激しく撹拌したナトリウムメトキシド(595g、11.014M、4.0Mol当量)のメタノール(2100ml)溶液に、窒素雰囲気下で1.5時間以上かけて、容器温度を0〜10℃に維持できる速度で、滴下した。いったん滴下が完了すると、冷却浴を取り除き、容器内容物を1時間以上自然放置して温めた。
【0113】
冷却浴に水道水を加え、さらなる時間撹拌を続けた。反応混合物はロータリーエバポレーターに移し、減圧下でメタノールを除去した。得られた残留物は激しく撹拌したトルエン(1.0L)および水(3.5L)の混合物中で急冷した。撹拌は自然環境下(at ambient)で20分継続し、反応混合物はその後分液漏斗に移し、15分間静置した。トルエン層は水(1.75L)で逆流洗浄し、分離した。上部のトルエン層は分離器から取り除き、硫酸ナトリウムで乾燥し、一晩冷凍庫に保管した。トルエン溶液はその後セライト(登録商標)で濾過し、得られた橙色/褐色濾液はロータリーエバポレーターに移し、減圧下トルエンを除去し、粗9,9−ジメトキシ−2イソプロピルチオキサントンを淡褐色油として得た。
【0114】
粗9,9−ジメトキシ−2−ITX油(2848g、9.48M)に、THF(2.4L)、カンファースルホン酸(39.0g、0.1678M、1.7Mol%)およびエチレングリコール(1536g、1380ml、24.74M、2.6Mol当量)を添加し、自然環境で撹拌を開始した。撹拌は週末の間継続し、完了チェックにより全ての9,9−ジメトキシ−2−ITXが消費されたことが分かった。反応混合物はその後ロータリーエバポレーターに移し、有機物は減圧下に除去した(浴温40℃)。冷却した蒸留残渣はDCM(4.0L)中に溶解し、5%重炭酸ナトリウム溶液(2×4.0L)および水(2×5.0L)で逆流洗浄した。有機層はその後硫酸ナトリウム上で乾燥し、セライト(登録商標)で濾過し、ケーキはDCM(1×1.0L)で洗浄し、濾液をロータリーエバポレーターで褐色油になるまで揮散させた(水浴=40℃、10mbar)。
【0115】
粗油(crude oil)は、作業の間に未反応の原量を除去するために精製し、トルエン(10L)中に溶解し、その後塩基性アルミナ(3Kg)(トルエン(10L)で予備洗浄済み)を通して濾過した。全体で三回の濾過は、塩基性アルミナをDCM(2L)、メタノール(2×2L)および最終的にトルエン(1×5L)で洗浄することにより濾過の間に再生し、実施した。得られた濾液はロータリーエバポレーターで約半分量になるまで濃縮し、GFIF濾紙(アルミナ微粒子を除くため)を通して仕上げ濾過し、その後ロータリーエバポレーターに戻し、さらに淡琥珀色の油になるまで濃縮した(水浴=55℃、15mbar)。粗DITX油の量=2250g。GCでの純度は、65.5%の生成物(DITX)および28%の還元されたアルコールを示した。粗油は前処理したエタノール(2.5L)中で40℃まで加温し、得られた溶液は撹拌しながら、DITXの結晶化が観察される環境温度まで冷却した。淡黄色固体を冷エタノール(2×1.0L)で洗浄し、フィルタ上に引き上げ乾燥した。精製DITXの湿重量(damp weight)は1225kgであった。黄色がかった白色の物質はドラフト中で48時間以上空気乾燥し、全体の収量が1078g、2−ITXの37.5%の精製DITXを得た。
【0116】
DITXの分析
外観: 黄色がかった白色固体
純度(GC): 99.2%
TLC(ガソリン9:酢酸エチル1): 生成物スポット Rf=0.40 + 2つのぼやけた不純物スポット Rf=0.07+0.01
溶液(5%DCM): 無色透明溶液
融点: 70〜72℃(シャープ)
IHnmr:(CDCl3): 構造と一致
CHN: 実測値: C:72.45%、H:6.09%
理論値: C:72.45%、H:6.08%。
【0117】
実施例で調製したDITXの使用を、保護基がメチレン1,3ジオキソラン基である保護されたITΧおよび保護基がクロロメチレン1,3ジオキソラン基である保護されたITXと比較して、保護された光開始剤として試験した。
【0118】
ジオキソランの試験試料は、3%のアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、80%のアクリレート化かつカルボキシル化されたエポキシノボラック樹脂(65%固形分)および12%の二官能性アクリル単量体をも含む、調製物中5%のレベルのものを使用した。
【0119】
試験用調製物は、ギャップ約200ミクロンのギャップバー(gap−bar)コーターを用いて、標準の顕微鏡スライド上を二回被覆した。コーターは、ウェット厚み約100ミクロンで積層した。
【0120】
各試験試料のUVスペクトルを乾燥前に記録したが、385nmの吸収が記録された。すべての試料は80℃で20分乾燥し、UVスペクトルを再度記録した。385nmの吸収におけるどのような増加も記録した。この測定は、調製物中の試験用ジオキソランの乾燥までの安定性を反映している。
【0121】
次いで、各試験用調製物のスライドの一つをUV Process Supply 415nm LED ランプアレイを用いて、約1cmの距離から6分間照射した。
【0122】
照射した試料のUVスペクトルを再度記録し、385nmの吸収のいかなる増加も記録した。この測定は、ジオキソランの安定性も反映するが、生成したどのようなITXの増感作用をもより敏感に反映する。また、415nmの光に対する調製物の安定性も示す。
【0123】
415nm照射における安定性を示した各試験調製物の第二のスライドは、被覆表面から20mmに配置した、基本的に254nmを放射する低圧水銀グリッドランプに15秒間露出した。
【0124】
385nmの吸収の増加速度を測定し、試料は2分間415nmを照射し、続いて385nmの吸収の増加速度を再測定した。増加速度の優位な変化は増感効果を反映している。
【0125】
得られた結果は下記表1に掲載する。
【0126】
【表1】
【0127】
メチレン1,3ジオキソラン官能性ブロックがされた開始剤は、カルボン酸を含む調製物中で不安定であり、いくつかの応用では有用性が制限される可能性がある。クロロメチレンジオキソランは、選択的な置換ジオキソランがより安定であるが性能に劣ることを示している。単純なジオキソランは、安定性および脱ケタール化について、予想外により優れている。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4
図5
図8
図6
図7
図9