(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒトDLL4と結合できる抗原結合ドメインを含む結合タンパク質であって、前記抗原結合ドメインが、6個のCDR:CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3、CDR−L1、CDR−L2、CDR−L3を含み、
ここで、
CDR−H1が、NFPMAであり、
CDR−H2が、TISSSDGTTYYRDSVKGであり、
CDR−H3が、GYYNSPFAYであり、
CDR−L1が、RASEDIYSNLAであり、
CDR−L2が、DTNNLADであり、及び
CDR−L3が、QQYNNYPPTである、結合タンパク質。
DVD−Igが、DLL−4に対する機能的標的結合部位を形成する可変ドメインを含み、該可変ドメインが配列番号171で表されるアミノ酸配列及び配列番号175で表されるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の結合タンパク質。
DVD−Igが、DLL−4に対する機能的標的結合部位を形成する可変ドメインを含み、該可変ドメインが配列番号187で表されるアミノ酸配列及び配列番号197で表されるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の結合タンパク質。
Notch−1、Notch−2、Notch−3、Notch−4およびそれらの組合せからなる群から選択されるNotchタンパク質とのDLL4相互作用を遮断できる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の結合タンパク質。
前記追加の薬剤が、治療薬;造影剤;抗悪性腫瘍薬;化学療法薬;血管新生抑制薬;抗VEGF抗体;抗EGFR抗体;抗cMet抗体;抗ErbB3抗体;抗HER2抗体;抗CD20抗体;アフリベルセプト;キナーゼ阻害剤;共刺激分子遮断薬;抗B7.2抗体;CTLA4−Ig;接着分子遮断薬;抗Eセレクチン抗体;抗Lセレクチン抗体;抗サイトカイン抗体またはその機能的断片;抗IL−18抗体;抗TNF抗体;抗IL−6抗体;メトトレキサート;コルチコステロイド;シクロスポリン;ラパマイシン;FK506;DNAアルキル化剤;シスプラチン;カルボプラチン;抗チューブリン剤;パクリタキセル;ドセタキセル;ドキソルビシン;ゲムシタビン;ジェムザール;アントラサイクリン;アドリアマイシン;トポイソメラーゼ(topoisiomersase)I阻害剤;トポイソメラーゼII阻害剤;5−フルオロウラシル(5−FU);ロイコボリン;イリノテカン;受容体チロシンキナーゼ阻害剤、アポトーシス阻害剤;Bcl2/Bclx阻害剤;エルロチニブ、ゲフィチニブ、COX−2阻害剤、セレコキシブ、シクロスポリン;ラパマイシン;検出可能な標識またはリポーター分子;TNFアンタゴニスト;抗リウマチ薬;筋肉弛緩薬;麻薬;鎮痛薬;麻酔薬;鎮静薬;局所麻酔薬;神経筋遮断薬;抗菌薬;抗乾癬薬;コルチコステロイド;アナボリックステロイド;エリスロポエチン;免疫処置;免疫グロブリン;免疫抑制剤;成長ホルモン;ホルモン置換薬;放射性医薬品;抗鬱薬;抗精神病薬;刺激薬;喘息薬物;βアゴニスト;吸入ステロイド;エピネフリン;そのエピネフリン類似体;サイトカイン;およびサイトカインアンタゴニストからなる群から選択される、請求項35に記載の医薬組成物。
前記障害が、乳癌、結腸癌、直腸癌、肺癌、中咽頭癌、下咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、胆嚢癌、胆管癌、小腸癌、尿路癌、女性生殖器癌、男性生殖器癌、内分泌腺癌、皮膚癌、血管腫、黒色腫、肉腫、脳腫瘍、神経癌、眼部腫瘍、髄膜癌、造血悪性腫瘍由来の固形腫瘍、腫瘍転移、眼部新血管新生、浮腫、リウマチ関節炎、アテローム斑、クローン病、炎症性腸疾患、不応性の腹水症、乾癬、サルコイドーシス、動脈性動脈硬化症、敗血症、消化性潰瘍、熱傷、膵炎、多嚢胞性卵巣疾患(POD)、子宮内膜症、子宮筋腫、良性前立腺肥大、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、皮質下梗塞および白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、多発性硬化症(MS)、ファロー四徴症(TOF)、アラジール症候群(AS)、黄斑変性症および加齢性黄斑変性疾患、並びに異常なDLL4活性を特徴とするその他の血管新生非依存性および依存性疾患からなる群から選択される、請求項37に記載の使用。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
DLL4−Notch経路を標的として、それによって腫瘍血管新生および成長を阻害し、さらには予防さえすることができる治療薬が当技術分野において必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、ヒトDLL4と結合するタンパク質を提供する。本発明のDLL4結合タンパク質として、それだけには限らないが、ラットモノクローナル抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、親和性成熟抗体およびヒトDLL4と結合できるそれらの断片が挙げられる。好ましくは、本明細書に記載された結合タンパク質は、ヒトDLL4と高親和性で結合する。より好ましくは、本発明の結合タンパク質は、ヒトDLL4を中和できる。本発明はまた、DLL4結合タンパク質を製造および使用する方法を提供する。
【0010】
本発明の一態様は、ヒトDLL4と結合できる結合タンパク質を提供し、ここで、結合タンパク質は、配列番号157、配列番号158、配列番号159、配列番号160、配列番号161、配列番号162、配列番号163および配列番号164からなるアミノ酸配列の群から選択される少なくとも1種のアミノ酸配列を含む。
【0011】
本発明の一態様は、抗原結合ドメインを含む結合タンパク質に関し、ここで、結合タンパク質は、ヒトDLL4と結合でき、前記抗原結合ドメインは、少なくとも1個以上の(すなわち、2個、3個、4個、5個または6個の)CDRを含み、
CDR−H1は、
X
1−X
2−X
3−X
4−X
5(配列番号151)
[X
1は、N、HまたはYであり;
X
2は、Fであり;
X
3は、Pであり;
X
4は、Mであり;
X
5は、AまたはSである];
配列番号157の残基31−35(CDR−H1 38H12);
配列番号161の残基31−35(CDR−H1 37D10);
配列番号163の残基31−35(CDR−H1 32C7);
配列番号165の残基31−35(CDR−H1 14G1);
配列番号167の残基31−35(CDR−H1 14A11);
配列番号169の残基31−35(CDR−H1 15D6);
配列番号171の残基31−35(CDR−H1 VH.1 1A11);
配列番号172の残基31−35(CDR−H1 VH.1a 1A11);
配列番号173の残基31−35(CDR−H1 VH.1b 1A11);
配列番号174の残基31−35(CDR−H1 VH.2a 1A11);
配列番号179の残基31−35(CDR−H1 VH.1 38H12);
配列番号180の残基31−35(CDR−H1 VH.1A 38H12);
配列番号181の残基31−35(CDR−H1 VH.1b 38H12);
配列番号182の残基31−35(CDR−H1 VH.2a 38H12);
配列番号187の残基31−35(CDR−H1 h1A11VH.1);
配列番号188の残基31−35(CDR−H1 h1A11.A6);
配列番号189の残基31−35(CDR−H1 h1A11.A8);
配列番号190の残基31−35(CDR−H1 h1A11.C6);
配列番号191の残基31−35(CDR−H1 h1A11.A11);
配列番号192の残基31−35(CDR−H1 h1A11.B5);
配列番号193の残基31−35(CDR−H1 h1A11.E12);
配列番号194の残基31−35(CDR−H1 h1A11.G3);
配列番号195の残基31−35(CDR−H1 h1A11.F5);および
配列番号196の残基31−35(CDR−H1 h1A11.H2)
からなる群から選択され、
CDR−H2は、
X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−X
8−X
9−X
10−X
11−X
12−X
13−X
14−X
15−X
16−X
17(配列番号152)
[X
1は、TまたはSであり;
X
2は、Iであり;
X
3は、Sであり;
X
4は、SまたはGであり;
X
5は、Sであり;
X
6は、Dであり;
X
7は、G、A、D、SまたはEであり;
X
8は、TまたはWであり;
X
9は、T、PまたはAであり;
X
10は、Y、S、TまたはNであり;
X
11は、YまたはIであり;
X
12は、RまたはGであり;
X
13は、Dであり;
X
14は、Sであり;
X
15は、Vであり;
X
16は、Kであり;
X
17は、Gである];
配列番号157の残基50−66(CDR−H2 38H12);
配列番号161の残基50−68(CDR−H2 37D10);
配列番号163の残基50−66(CDR−H2 32C7);
配列番号165の残基50−66(CDR−H2 14G1);
配列番号167の残基50−66(CDR−H2 14A11);
配列番号169の残基50−66(CDR−H2 15D6);
配列番号171の残基50−66(CDR−H2 VH.1 1A11);
配列番号172の残基50−66(CDR−H2 VH.1a 1A11);
配列番号173の残基50−66(CDR−H2 VH.1b 1A11);
配列番号174の残基50−66(CDR−H2 VH.2a 1A11);
配列番号179の残基50−66(CDR−H2 VH.1 38H12);
配列番号180の残基50−66(CDR−H2 VH.1A 38H12);
配列番号181の残基50−66(CDR−H2 VH.1b 38H12);
配列番号182の残基31−35(CDR−H1 VH.2a 38H12);
配列番号187の残基50−66(CDR−H2 h1A11VH.1);
配列番号188の残基50−66(CDR−H2 h1A11.A6);
配列番号189の残基50−66(CDR−H2 h1A11.A8);
配列番号190の残基50−66(CDR−H2 h1A11.C6);
配列番号191の残基50−66(CDR−H2 h1A11.A11);
配列番号192の残基50−66(CDR−H2 h1A11.B5);
配列番号193の残基50−66(CDR−H2 h1A11.E12);
配列番号194の残基50−66(CDR−H2 h1A11.G3);
配列番号195の残基50−66(CDR−H2 h1A11.F5);および
配列番号196の残基50−66(CDR−H2 h1A11.H2)
からなる群から選択され、
CDR−H3は、
X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−X
8−X
9(配列番号153)
[X
1は、Gであり;
X
2は、Yであり;
X
3は、Yであり;
X
4は、Nであり;
X
5は、Sであり;
X
6は、Pであり;
X
7は、Fであり;
X
8は、Aであり;
X
9は、Y、FまたはSである];
配列番号157の残基99−107(CDR−H3 38H12);
配列番号161の残基101−111(CDR−H3 37D10);
配列番号163の残基99−105(CDR−H3 32C7);
配列番号165の残基99−105(CDR−H3 14G1);
配列番号167の残基99−110(CDR−H3 14A11);
配列番号169の残基99−110(CDR−H3 15D6);
配列番号171の残基99−107(CDR−H3 VH.1 1A11);
配列番号172の残基99−107(CDR−H3 VH.1a 1A11);
配列番号173の残基99−107(CDR−H3 VH.1b 1A11);
配列番号174の残基99−107(CDR−H3 VH.2a 1A11);
配列番号179の残基99−107(CDR−H3 VH.1 38H12);
配列番号180の残基99−107(CDR−H3 VH.1A 38H12);
配列番号181の残基99−107(CDR−H2 VH.1b 38H12);
配列番号182の残基99−107(CDR−H1 VH.2a 38H12);
配列番号187の残基99−107(CDR−H3 h1A11VH.1);
配列番号188の残基99−107(CDR−H3 h1A11.A6);
配列番号189の残基99−107(CDR−H3 h1A11.A8);
配列番号190の残基99−107(CDR−H3 h1A11.C6);
配列番号191の残基99−107(CDR−H3 h1A11.A11);
配列番号192の残基99−107(CDR−H3 h1A11.B5);
配列番号193の残基99−107(CDR−H3 h1A11.E12);
配列番号194の残基99−107(CDR−H3 h1A11.G3);
配列番号195の残基99−107(CDR−H3 h1A11.F5);および
配列番号196の残基99−107(CDR−H3 h1A11.H2)
からなる群から選択され、
CDR−L1は、
X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−X
8−X
9−X
10−X
11(配列番号154)
[X
1は、Rであり;
X
2は、Aであり;
X
3は、Sであり;
X
4は、EまたはQであり;
X
5は、DまたはEであり;
X
6は、Iであり;
X
7は、YまたはWであり;
X
8は、S、I、Y、NまたはRであり;
X
9は、Nであり;
X
10は、Lであり;
X
11は、Aである];
配列番号158の残基24−34(CDR−L1 38H12);
配列番号162の残基24−34(CDR−L1 37D10);
配列番号164の残基24−34(CDR−L1 32C7);
配列番号166の残基24−34(CDR−L1 14G1);
配列番号168の残基23−37(CDR−L1 14A11);
配列番号170の残基23−37(CDR−L1 15D6);
配列番号175の残基24−34(CDR−L1 VL.1 1A11);
配列番号176の残基24−34(CDR−L1 VL.1a 1A11);
配列番号177の残基24−34(CDR−L1 VL.1b 1A11);
配列番号178の残基24−34(CDR−L1 VL.2a 1A11);
配列番号183の残基24−34(CDR−L1 VL.1 38H12);
配列番号184の残基24−34(CDR−L1 VL.1a 38H12);
配列番号185の残基24−34(CDR−L1 VL.1b 38H12);
配列番号186の残基24−34(CDR−L1 VL.2a 38H12);
配列番号197の残基24−34(CDR−L1 h1A11VL.1);
配列番号198の残基24−34(CDR−L1 h1A11.A2);
配列番号199の残基24−34(CDR−L1 h1A11.A12);
配列番号200の残基24−34(CDR−L1 h1A11.A7);
配列番号201の残基24−34(CDR−L1 h1A11.B4);
配列番号202の残基24−34(CDR−L1 h1A11.B5);および
配列番号203の残基24−34(CDR−L1 h1A11.E12)
からなる群から選択され、
CDR−L2は、
X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7(配列番号155)
[X
1は、Dであり;
X
2は、Tであり;
X
3は、NまたはSであり;
X
4は、N、D、S、I、YまたはVであり;
X
5は、Lであり;
X
6は、Aであり;
X
7は、Dである];
配列番号158の残基50−56(CDR−L2 38H12);
配列番号162の残基50−56(CDR−L2 37D10);
配列番号164の残基50−56(CDR−L2 32C7);
配列番号166の残基50−56(CDR−L2 14G1);
配列番号168の残基53−59(CDR−L2 14A11);
配列番号170の残基53−59(CDR−L2 15D6);
配列番号175の残基50−56(CDR−L2 VL.1 1A11);
配列番号176の残基50−56(CDR−L2 VL.1a 1A11);
配列番号177の残基50−56(CDR−L2 VL.1b 1A11);
配列番号178の残基50−56(CDR−L2 VL.2a 1A11);
配列番号183の残基50−56(CDR−L2 VL.1 38H12);
配列番号184の残基50−56(CDR−L2 VL.1a 38H12);
配列番号185の残基50−56(CDR−L2 VL.1b 38H12);
配列番号186の残基50−56(CDR−L2 VL.2a 38H12);
配列番号197の残基50−56(CDR−L2 h1A11VL.1);
配列番号198の残基50−56(CDR−L2 h1A11.A2);
配列番号199の残基50−56(CDR−L2 h1A11.A12);
配列番号200の残基50−56(CDR−L2 h1A11.A7);
配列番号201の残基50−56(CDR−L2 h1A11.B4);
配列番号202の残基50−56(CDR−L2 h1A11.B5);および
配列番号203の残基50−56(CDR−L2 h1A11.E12)
からなる群から選択され、
CDR−L3は、
X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−X
8−X
9(配列番号156)
[X
1は、Qであり;
X
2は、Qであり;
X
3は、Yであり;
X
4は、N、DまたはTであり;
X
5は、N、YまたはWであり;
X
6は、YまたはVであり;
X
7は、Pであり;
X
8は、Pであり;
X
9は、Tである];
配列番号158の残基89−97(CDR−L3 38H12);
配列番号162の残基89−97(CDR−L3 37D10);
配列番号164の残基89−97(CDR−L3 32C7);
配列番号166の残基89−98(CDR−L3 14G1);
配列番号168の残基92−100(CDR−L3 14A11);
配列番号170の残基92−100(CDR−L3 15D6);
配列番号175の残基89−97(CDR−L3 VL.1 1A11);
配列番号176の残基89−97(CDR−L3 VL.1a 1A11);
配列番号177の残基89−97(CDR−L3 VL.1b 1A11);
配列番号178の残基89−97(CDR−L3 VL.2a 1A11);
配列番号183の残基89−97(CDR−L3 VL.1 38H12);
配列番号184の残基89−97(CDR−L3 VL.1a 38H12);
配列番号185の残基89−97(CDR−L3 VL.1b 38H12);
配列番号186の残基89−97(CDR−L3 VL.2a 38H12);
配列番号197の残基89−97(CDR−L3 h1A11VL.1);
配列番号198の残基89−97(CDR−L3 h1A11.A2);
配列番号199の残基89−97(CDR−L3 h1A11.A12);
配列番号200の残基89−97(CDR−L3 h1A11.A7);
配列番号201の残基89−97(CDR−L3 h1A11.B4);
配列番号202の残基89−97(CDR−L3 h1A11.B5);
配列番号203の残基89−97(CDR−L3 h1A11.E12)
からなる群から選択される。
【0012】
好ましくは、本発明のDLL4結合タンパク質は、
配列番号157の残基31−35(CDR−H1 38H12)、配列番号157の残基50−66(CDR−H2 38H12)、配列番号157の残基99−107(CDR−H3 38H12)、配列番号158の残基24−34(CDR−L1 38H12)、配列番号158の残基50−56(CDR−L2 38H12)、配列番号158の残基89−97(CDR−L3 38H12)、配列番号159の残基31−35(CDR−H1 1A11)、配列番号159の残基50−66(CDR−H2 1A11)、配列番号159の残基99−107(CDR−H3 1A11)、配列番号160の残基24−34(CDR−L1 1A11)、配列番号160の残基50−56(CDR−L2 1A11)、配列番号160の残基89−97(CDR−L3 1A11)、配列番号161の残基31−35(CDR−H1 37D10)、配列番号161の残基50−68(CDR−H2 37D10)、配列番号161の残基101−111(CDR−H3 37D10)、配列番号162の残基24−34(CDR−L1 37D10)、配列番号162の残基50−56(CDR−L2 37D10)、配列番号162の残基89−97(CDR−L3 37D10)、配列番号163の残基31−35(CDR−H1 32C7)、配列番号163の残基50−66(CDR−H2 32C7)、配列番号163の残基99−105(CDR−H3 32C7)、配列番号164の残基24−34(CDR−L1 32C7)、配列番号164の残基50−56(CDR−L2 32C7)、配列番号164の残基89−98(CDR−L3 32C7)、配列番号165の残基31−35(CDR−H1 14G1)、配列番号165の残基50−66(CDR−H2 14G1)、配列番号165の残基99−105(CDR−H3 14G1)、配列番号166の残基24−34(CDR−L1 14G1)、配列番号166の残基50−56(CDR−L2 14G1)、配列番号166の残基89−98(CDR−L3 14G1)、配列番号167の残基31−35(CDR−H1 14A11)、配列番号167の残基50−66(CDR−H2 14A11)、配列番号167の残基99−110(CDR−H3 14A11)、配列番号168の残基23−37(CDR−L1 14A11)、配列番号168の残基53−59(CDR−L2 14A11)、配列番号168の残基92−100(CDR−L3 14A11)、配列番号169の残基31−35(CDR−H1 15D6)、配列番号169の残基50−66(CDR−H2 15D6)、配列番号169の残基99−110(CDR−H3 15D6)、配列番号170の残基23−37(CDR−L1 15D6)、配列番号170の残基53−59(CDR−L2 15D6)、配列番号170の残基92−100(CDR−L3 15D6)、配列番号171の残基31−35(CDR−H1 VH.1 1A11)、配列番号171の残基50−66(CDR−H2 VH.1 1A11)、配列番号171の残基99−107(CDR−H3 VH.1 1A11)、配列番号172の残基31−35(CDR−H1 VH.1a 1A11)、配列番号172の残基50−66(CDR−H2 VH.1a 1A11)、配列番号172の残基;99−107(CDR−H3 VH.1a 1A11)、配列番号173の残基31−35(CDR−H1 VH.1b 1A11)、配列番号173の残基50−66(CDR−H2 VH.1b 1A11)、配列番号173の残基99−107(CDR−H3 VH.1b 1A11)、配列番号174の残基31−35(CDR−H1 VH.2a 1A11)、配列番号174の残基50−66(CDR−H2 VH.2a 1A11)、配列番号174の残基99−107(CDR−H3 VH.2a 1A11)、配列番号175の残基24−34(CDR−L1 VL.1 1A11)、配列番号175の残基50−56(CDR−L2 VL.1 1A11)、配列番号175の残基89−97(CDR−L3 VL.1 1A11)、配列番号176の残基24−34(CDR−L1 VL.1a 1A11)、配列番号176の残基50−56(CDR−L2 VL.1a 1A11)、配列番号176の残基89−97(CDR−L3 VL.1a 1A11)、配列番号177の残基24−34(CDR−L1 VL.1b 1A11)、配列番号177の残基50−56(CDR−L2 VL.1b 1A11)、配列番号177の残基89−97(CDR−L3 VL.1b 1A11)、配列番号178の残基24−34(CDR−L1 VL.2a 1A11)、配列番号178の残基50−56(CDR−L2 VL.2a 1A11)、配列番号178の残基89−97(CDR−L3 VL.2a 1A11)、配列番号179の残基31−35(CDR−H1 VH.1 38H12)、配列番号179の残基50−66(CDR−H2 VH.1 38H12)、配列番号179の残基99−107(CDR−H3 VH.1 38H12)、配列番号180の残基31−35(CDR−H1 VH.1A 38H12)、配列番号180の残基50−66(CDR−H2 VH.1A 38H12)、配列番号180の残基99−107(CDR−H3 VH.1A 38H12)、配列番号181の残基31−35(CDR−H1 VH.1b 38H12)、配列番号181の残基50−66(CDR−H2 VH.1b 38H12)、配列番号181の残基99−107(CDR−H3 VH.1b 38H12)、配列番号182の残基31−35(CDR−H1 VH.2a 38H12)、配列番号182の残基50−66(CDR−H2 VH.2a 38H12)、配列番号182の残基99−107(CDR−H3 VH.2a 38H12)、配列番号183の残基24−34(CDR−L1 VL.1 38H12)、配列番号183の残基50−56(CDR−L2 VL.1 38H12)、配列番号183の残基89−97(CDR−L3 VL.1 38H12)、配列番号184の残基24−34(CDR−L1 VL.1a 38H12)、配列番号184の残基50−56(CDR−L2 VL.1a 38H12)、配列番号184の残基89−97(CDR−L3 VL.1a 38H12)、配列番号185の残基24−34(CDR−L1 VL.1b 38H12)、配列番号185の残基50−56(CDR−L2 VL.1b 38H12)、配列番号185の残基89−97(CDR−L3 VL.1b 38H12)、配列番号186の残基24−34(CDR−L1 VL.2a 38H12)、配列番号186の残基50−56(CDR−L2 VL.2a 38H12)、配列番号186の残基89−97(CDR−L3 VL.2a 38H12)、配列番号187の残基31−35(CDR−H1 h1A11VH.1)、配列番号187の残基50−66(CDR−H2 h1A11VH.1)、配列番号187の残基99−107(CDR−H3 h1A11VH.1)、配列番号188の残基31−35(CDR−H1 h1A11.A6)、配列番号188の残基50−66(CDR−H2 h1A11.A6)、配列番号188の残基99−107(CDR−H3 h1A11.A6)、配列番号189の残基31−35(CDR−H1 h1A11.A8)、配列番号189の残基50−66(CDR−H2 h1A11.A8)、配列番号189の残基99−107(CDR−H3 h1A11.A8)、配列番号190の残基31−35(CDR−H1 h1A11.C6)、配列番号190の残基50−66(CDR−H2 h1A11.C6)、配列番号190の残基99−107(CDR−H3 h1A11.C6)、配列番号191の残基31−35(CDR−H1 h1A11.A11)、配列番号191の残基50−66(CDR−H2 h1A11.A11)、配列番号191の残基99−107(CDR−H3 h1A11.A11)、配列番号192の残基31−35(CDR−H1 h1A11.B5)、配列番号192の残基50−66(CDR−H2 h1A11.B5)、配列番号192の残基99−107(CDR−H3 h1A11.B5)、配列番号193の残基31−35(CDR−H1 h1A11.E12)、配列番号193の残基50−66(CDR−H2 h1A11.E12)、配列番号193の残基99−107(CDR−H3 h1A11.E12)、配列番号194の残基31−35(CDR−H1 h1A11.G3)、配列番号194の残基50−66(CDR−H2 h1A11.G3)、配列番号194の残基99−107(CDR−H3 h1A11.G3)、配列番号195の残基31−35(CDR−H1 h1A11.F5)、配列番号195の残基50−66(CDR−H2 h1A11.F5)、配列番号195の残基99−107(CDR−H3 h1A11.F5)、配列番号196の残基31−35(CDR−H1 h1A11.H2)、配列番号196の残基50−66(CDR−H2 h1A11.H2)、配列番号196の残基99−107(CDR−H3 h1A11.H2)、配列番号197の残基24−34(CDR−L1 h1A11VL.1)、配列番号197の残基50−56(CDR−L2 h1A11VL.1)、配列番号197の残基89−97(CDR−L3 h1A11VL.1)、配列番号198の残基24−34(CDR−L1 h1A11.A2)、配列番号198の残基50−56(CDR−L2 h1A11.A2)、配列番号198の残基89−97(CDR−L3 h1A11.A2)、配列番号199の残基24−34(CDR−L1 h1A11.A12)、配列番号199の残基50−56(CDR−L2 h1A11.A12)、配列番号199の残基89−97(CDR−L3 h1A11.A12)、配列番号200の残基24−34(CDR−L1 h1A11.A7)、配列番号200の残基50−56(CDR−L2 h1A11.A7)、配列番号200の残基89−97(CDR−L3 h1A11.A7)、配列番号201の残基24−34(CDR−L1 h1A11.B4)、配列番号201の残基50−56(CDR−L2 h1A11.B4)、配列番号201の残基89−97(CDR−L3 h1A11.B4)、配列番号202の残基24−34(CDR−L1 h1A11.B5)、配列番号202の残基50−56(CDR−L2 h1A11.B5)、配列番号202の残基89−97(CDR−L3 h1A11.B5)、配列番号203の残基24−34(CDR−L1 h1A11.E12)、配列番号203の残基50−56(CDR−L2 h1A11.E12)および配列番号203の残基89−97(CDR−L3 h1A11.E12)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1個のCDRを含む。
【0013】
一実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、本明細書に記載された(上記または下記)少なくとも3個のCDRを含む。限定されない例では、本発明のDLL4結合タンパク質は、本明細書に記載された3個のCDRを含み、ここで、3個のCDRは、本明細書に記載されたCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3である。別の限定されない例、本明細書に記載された3個のCDRを含む本発明のDLL4結合タンパク質では、3個のCDRは、本明細書に記載されたCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3である。
【0014】
一実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、本明細書に記載された(上記または下記)1個以上のCDR、例えば、本明細書に記載された1個、2個、3個、4個、5個または6個のCDRを含む。好ましい実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、本明細書に記載された6個のCDR、例えば、本明細書に記載されたCDR−H1、CDR−H2、CDR−H3、CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含む。
【0015】
別の実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、可変ドメインCDRのセットから選択される3個のCDRを含み、ここで、可変ドメインCDRのセットは、
VH 38H12 CDRセット
CDR−H1:配列番号157の残基31−35
CDR−H2:配列番号157の残基50−66
CDR−H3:配列番号157の残基99−107
VL 38H12 CDRセット
CDR−L1:配列番号158の残基24−34
CDR−L2:配列番号158の残基50−56
CDR−L3:配列番号158の残基89−97
VH 1A11 CDRセット
CDR−H1:配列番号159の残基31−35
CDR−H2:配列番号159の残基50−66
CDR−H3:配列番号159の残基99−107
VL 1A11 CDRセット
CDR−L1:配列番号160の残基24−34
CDR−L2:配列番号160の残基50−56
CDR−L3:配列番号160の残基89−97
VH 37D10 CDRセット
CDR−H1:配列番号161の残基31−35
CDR−H2:配列番号161の残基50−68
CDR−H3:配列番号161の残基101−111
VL 37D10 CDRセット
CDR−L1:配列番号162の残基24−34
CDR−L2:配列番号162の残基50−56
CDR−L3:配列番号162の残基89−97
VH 32C7 CDRセット
CDR−H1:配列番号163の残基31−35
CDR−H2:配列番号163の残基50−66
CDR−H3:配列番号163の残基99−105
VL 32C7 CDRセット
CDR−L1:配列番号164の残基24−34
CDR−L2:配列番号164の残基50−56
CDR−L3:配列番号164の残基89−98
VH 14G1 CDRセット
CDR−H1:配列番号165の残基31−35
CDR−H2:配列番号165の残基50−66
CDR−H3:配列番号165の残基99−105
VL 14G1 CDRセット
CDR−L1:配列番号166の残基24−34
CDR−L2:配列番号166の残基50−56
CDR−L3:配列番号166の残基89−97
VH 14A11 CDRセット
CDR−H1:配列番号167の残基31−35
CDR−H2:配列番号167の残基50−66
CDR−H3:配列番号167の残基99−110
VL 14A11 CDRセット
CDR−L1:配列番号168の残基23−37
CDR−L2:配列番号168の残基53−59
CDR−L3:配列番号168の残基92−100
VH 15D6 CDRセット
CDR−H1:配列番号169の残基31−35
CDR−H2:配列番号169の残基50−66
CDR−H3:配列番号169の残基99−110
VL 15D6 CDRセット
CDR−L1:配列番号170の残基23−37
CDR−L2:配列番号170の残基53−59
CDR−L3:配列番号170の残基92−100
VH VH.1 1A11 CDRセット
CDR−H1:配列番号171の残基31−35
CDR−H2:配列番号171の残基50−66
CDR−H3:配列番号171の残基99−107
VH VH.1a 1A11 CDRセット
CDR−H1:配列番号172の残基31−35
CDR−H2:配列番号172の残基50−66
CDR−H3:配列番号172の残基99−107
VH VH.1b 1A11 CDRセット
CDR−H1:配列番号173の残基31−35
CDR−H2:配列番号173の残基50−66
CDR−H3:配列番号173の残基99−107
VH VH.2a 1A11 CDRセット
CDR−H1:配列番号174の残基31−35
CDR−H2:配列番号174の残基50−66
CDR−H3:配列番号174の残基99−107
VL VL.1 1A11 CDRセット
CDR−L1:配列番号175の残基24−34
CDR−L2:配列番号175の残基50−56
CDR−L3:配列番号175の残基89−97
VL VL.1a 1A11 CDRセット
CDR−L1:配列番号176の残基24−34
CDR−L2:配列番号176の残基50−56
CDR−L3:配列番号176の残基89−97
VL VL.1b 1A11 CDRセット
CDR−L1:配列番号177の残基24−34
CDR−L2:配列番号177の残基50−56
CDR−L3:配列番号177の残基89−97
VL VL.2a 1A11 CDRセット
CDR−L1:配列番号178の残基24−34
CDR−L2:配列番号178の残基50−56
CDR−L3:配列番号178の残基89−97
VH VH.1 38H12 CDRセット
CDR−H1:配列番号179の残基31−35
CDR−H2:配列番号179の残基50−66
CDR−H3:配列番号179の残基99−107
VH VH.1a 38H12 CDRセット
CDR−H1:配列番号180の残基31−35
CDR−H2:配列番号180の残基50−66
CDR−H3:配列番号180の残基99−107
VH VH.1b 38H12 CDRセット
CDR−H1:配列番号181の残基31−35
CDR−H2:配列番号181の残基50−66
CDR−H3:配列番号181の残基99−107
VH VH.2a 38H12 CDRセット
CDR−H1:配列番号182の残基31−35
CDR−H2:配列番号182の残基50−66
CDR−H3:配列番号182の残基99−107
VL VL.1 38H12 CDRセット
CDR−L1:配列番号183の残基24−34
CDR−L2:配列番号183の残基50−56
CDR−L3:配列番号183の残基89−97
VL VL.1a 38H12 CDRセット
CDR−L1:配列番号184の残基24−34
CDR−L2:配列番号184の残基50−56
CDR−L3:配列番号184の残基89−97
VL VL.1b 38H12 CDRセット
CDR−L1:配列番号185の残基24−34
CDR−L2:配列番号185の残基50−56
CDR−L3:配列番号185の残基89−97
VL VL.2a 38H12 CDRセット
CDR−L1:配列番号186の残基24−34
CDR−L2:配列番号186の残基50−56
CDR−L3:配列番号186の残基89−97
VH hA11VH.1 CDRセット
CDR−H1:配列番号187の残基31−35
CDR−H2:配列番号187の残基50−66
CDR−H3:配列番号187の残基99−107
VH hA11.A6 CDRセット
CDR−H1:配列番号188の残基31−35
CDR−H2:配列番号188の残基50−66
CDR−H3:配列番号188の残基99−107
VH hA11.A8 CDRセット
CDR−H1:配列番号189の残基31−35
CDR−H2:配列番号189の残基50−66
CDR−H3:配列番号189の残基99−107
VH hA11.C6 CDRセット
CDR−H1:配列番号190の残基31−35
CDR−H2:配列番号190の残基50−66
CDR−H3:配列番号190の残基99−107
VH hA11.A11 CDRセット
CDR−H1:配列番号191の残基31−35
CDR−H2:配列番号191の残基50−66
CDR−H3:配列番号191の残基99−107
VH hA11.B5 CDRセット
CDR−H1:配列番号192の残基31−35
CDR−H2:配列番号192の残基50−66
CDR−H3:配列番号192の残基99−107
VH hA11.E12 CDRセット
CDR−H1:配列番号193の残基31−35
CDR−H2:配列番号193の残基50−66
CDR−H3:配列番号193の残基99−107
VH hA11.G3 CDRセット
CDR−H1:配列番号194の残基31−35
CDR−H2:配列番号194の残基50−66
CDR−H3:配列番号194の残基99−107
VH hA11.F5 CDRセット
CDR−H1:配列番号195の残基31−35
CDR−H2:配列番号195の残基50−66
CDR−H3:配列番号195の残基99−107
VH hA11.H2 CDRセット
CDR−H1:配列番号196の残基31−35
CDR−H2:配列番号196の残基50−66
CDR−H3:配列番号196の残基99−107
VL h1A11VL.1 CDRセット
CDR−L1:配列番号197の残基24−34
CDR−L2:配列番号197の残基50−56
CDR−L3:配列番号197の残基89−97
VL h1A11.A2 CDRセット
CDR−L1:配列番号198の残基24−34
CDR−L2:配列番号198の残基50−56
CDR−L3:配列番号198の残基89−97
VL h1A11.A12 CDRセット
CDR−L1:配列番号199の残基24−34
CDR−L2:配列番号199の残基50−56
CDR−L3:配列番号199の残基89−97
VL h1A11.A7 CDRセット
CDR−L1:配列番号200の残基24−34
CDR−L2:配列番号200の残基50−56
CDR−L3:配列番号200の残基89−97
VL h1A11.B4 CDRセット
CDR−L1:配列番号201の残基24−34
CDR−L2:配列番号201の残基50−56
CDR−L3:配列番号201の残基89−97
VL h1A11.B5 CDRセット
CDR−L1:配列番号202の残基24−34
CDR−L2:配列番号202の残基50−56
CDR−L3:配列番号202の残基89−97
および
VL h1A11.E12 CDRセット
CDR−L1:配列番号203の残基24−34
CDR−L2:配列番号203の残基50−56
CDR−L3:配列番号203の残基89−97
からなる可変ドメインCDRのセットの群から選択される。
【0016】
一実施形態では、DLL4結合タンパク質は、上記の群中の少なくとも2セットの可変ドメインCDRからのCDRを含む。
【0017】
別の実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、上記の群中の3個のCDRの任意のVHセットから選択される3個のCDRと、上記の群中の3個のCDRの任意のVLセットから選択される3個のCDRとを含む。
【0018】
さらに別の実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、
VH 38H12 CDRセットおよびVL 38H12 CDRセット、
VH 1A11 CDRセットおよびVL 1A11 CDRセット、
VH 37D10 CDRセットおよびVL 37D10 CDRセット、
VH 32C7 CDRセットおよびVL 32C7 CDRセット、
VH 14G1セットおよびVL 14G1 CDRセット、
VH 14A11 CDRセットおよびVL 14A11 CDRセット、
VH 15D6 CDRセットおよびVL 15D6 CDRセット、
VH VH.1 1A11 CDRセットおよびVL VL.1 1A11 CDRセット、
VH VH.1 1A11 CDRセットおよびVL VL.1a 1A11 CDRセット、
VH VH.1 1A11 CDRセットおよびVL VL.1b 1A11 CDRセット、
VH VH.1 1A11 CDRセットおよびVL VL.2a 1A11 CDRセット、
VH VH.1a 1A11 CDRセットおよびVL VL.1 1A11 CDRセット、
VH VH.1a 1A11 CDRセットおよびVL VL.1a 1A11 CDRセット、
VH VH.1a 1A11 CDRセットおよびVL VL.1b 1A11 CDRセット、
VH VH.1a 1A11 CDRセットおよびVL VL.2a 1A11 CDRセット、
VH VH.1b 1A11 CDRセットおよびVL VL.1 1A11 CDRセット、
VH VH.1b 1A11 CDRセットおよびVL VL.1a 1A11 CDRセット、
VH VH.1b 1A11 CDRセットおよびVL VL.1b 1A11 CDRセット、
VH VH.1b 1A11 CDRセットおよびVL VL.2a 1A11 CDRセット、
VH VH.2a 1A11 CDRセットおよびVL VL.1 1A11 CDRセット、
VH VH.2a 1A11 CDRセットおよびVL VL.1a 1A11 CDRセット、
VH VH.2a 1A11 CDRセットおよびVL VL.1b 1A11 CDRセット、
VH VH.2a 1A11 CDRセットおよびVL VL.2a 1A11 CDRセット、
VH VH.1 38H12 CDRセットおよびVL VL.1 38H12 CDRセット、
VH VH.1 38H12 CDRセットおよびVL VL.1a 38H12 CDRセット、
VH VH.1 38H12 CDRセットおよびVL VL.1b 38H12 CDRセット、
VH VH.1 38H12 CDRセットおよびVL VL.2a 38H12 CDRセット、
VH VH.1a 38H12 CDRセットおよびVL VL.1 38H12 CDRセット、
VH VH.1a 38H12 CDRセットおよびVL VL.1a 38H12 CDRセット、
VH VH.1a 38H12 CDRセットおよびVL VL.1b 38H12 CDRセット、
VH VH.1a 38H12 CDRセットおよびVL VL.2a 38H12 CDRセット、
VH VH.1b 38H12 CDRセットおよびVL VL.1 38H12 CDRセット、
VH VH.1b 38H12 CDRセットおよびVL VL.1a 38H12 CDRセット、
VH VH.1b 38H12 CDRセットおよびVL VL.1b 38H12 CDRセット、
VH VH.1b 38H12 CDRセットおよびVL VL.2a 38H12 CDRセット、
VH VH.2a 38H12 CDRセットおよびVL VL.1 38H12 CDRセット、
VH VH.2a 38H12 CDRセットおよびVL VL.1a 38H12 CDRセット、
VH VH.2a 38H12 CDRセットおよびVL VL.1b 38H12 CDRセット、
VH VH.2a 38H12 CDRセットおよびVL VL.2a 38H12 CDRセット、
VH h1A11.A6 CDRセットおよびVL h1A11VL.1 CDRセット、
VH h1A11.C6 CDRセットおよびVL h1A11VL.1 CDRセット、
VH h1A11.A11 CDRセットおよびVL h1A11VL.1 CDRセット、
VH h1A11.A8 CDRセットおよびVL h1A11VL.1 CDRセット、
VH h1A11VH.1 CDRセットおよびVL h1A11.B4 CDRセット、
VH h1A11VH.1 CDRセットおよびVL h1A11.A7 CDRセット、
VH h1A11VH.1 CDRセットおよびVL h1A11.A12 CDRセット、
VH h1A11VH.1 CDRセットおよびVL h1A11.A2 CDRセット、
VH h1A11.B5 CDRセットおよびVL h1A11.B5 CDRセット、
VH h1A11.E12 CDRセットおよびVL h1A11.E12 CDRセット、
VH h1A11.G3 CDRセットおよびVL h1A11.E12 CDRセット、
VH h1A11.F5 CDRセットおよびVL h1A11.E12 CDRセットならびに
VH h1A11.H2 CDRセットおよびVL h1A11.E12 CDRセット
からなる群から選択されるCDRのVHおよびVLセットの対から、上記の3個のCDRのVHセットと、上記の3個のCDRのVLセットとを含む。
【0019】
好ましい実施形態では、DLL4結合タンパク質は、6個のCDRを含むDLL4抗原結合ドメイン(または結合部位)を有し、ここで、CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3は、重鎖可変領域(VH)中に位置し、CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3は、軽鎖可変領域(VL)中に位置し、ここで、VHおよびVL領域の会合が、DLL4結合タンパク質の機能的DLL4抗原結合ドメインを形成する。この実施形態のさらなる限定されない例では、2つのDLL4抗原結合ドメインを有するDLL4結合タンパク質は、2セットのVHおよびVL領域を含み、したがって、12個のCDRを含む。
【0020】
別の実施形態では、DLL4結合タンパク質は、6個のCDRを含むDLL4抗原結合ドメインを有し、ここで、CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3は、重鎖可変領域(VH)中に位置し、CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3は、軽鎖可変領域(VL)中に位置し、ここで、各可変領域中の残りの配列は、フレームワーク(FR)領域を構成し、その結果、各CDRは、全部で4つのFR配列、すなわち、FR1、FR2、FR3およびFR4の2つのFR領域配列間に位置する。この実施形態では、可変領域中のFRおよびCDR配列の配置は、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4である。この実施形態では、VH領域およびVL領域の会合によって形成される結合ドメインは、8個のFR配列と6個のCDRとを含む。
【0021】
本発明のDLL4結合タンパク質は、CDRグラフト化抗体を含み、ここで、当技術分野で利用可能である組換え技術を使用して、一方の種(ドナー種)の抗体のVHおよび/またはVL領域の1個以上のCDRが、もう一方の(アクセプター)種の抗体のVHおよび/またはVLの対応するCDR中にグラフトされ、置換する。ドナー種の一例として、本明細書に記載されたラット抗ヒトDLL4モノクローナル抗体があり、アクセプター種の一例として、ヒト免疫グロブリンガンマ(IgG)分子があり、ここで、ヒトIgG分子のVHおよびVL領域のヒトFR配列は、ドナーラットモノクローナル抗体由来のCDR中にグラフトされたものを受け取るヒトアクセプターフレームワーク配列である。得られたCDRグラフト化抗体のヒトアクセプターフレームワーク配列は、CDRグラフト化抗体の1つ以上の特性を改善するよう、さらに突然変異されていてもよい。限定されない例によって、CDRグラフト化抗体の1つ以上のFR配列の1個以上の残基は、ヒト被験体におけるCDRグラフト化抗体のDLL4結合親和性を改善するよう、または免疫原性を低下させるために突然変異されていてもよい。
【0022】
本発明の一実施形態では、上記の1個以上のCDRを含むDLL4結合タンパク質は、ヒトアクセプターフレームワーク配列をさらに含む。好ましくは、DLL4結合タンパク質は、1つ以上の(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つの)ヒトアクセプターフレームワーク配列を含む。
【0023】
本発明のDLL4結合タンパク質中に存在するヒトアクセプターフレームワーク配列は、DLL4と結合するラットモノクローナル抗体中に存在する1個以上の対応するアミノ酸残基に復帰突然変異されている、ならびに/または望ましくない反応の部位を低減または排除する、例えば、不要なグリコシル化の部位および/もしくは不要なN末端ピログルタミン酸形成の部位および/もしくは低減した可能性がある免疫原性のリスクの部位を低減または排除する、1個以上のアミノ酸残基に突然変異されている1個以上のアミノ酸残基を含み得る。
【0024】
一実施形態では、上記の1個以上のCDRを含むDLL4結合タンパク質は、以下の表3および4中のヒトアクセプターフレームワーク配列の群から選択される1つ以上の(例えば、いずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つの)ヒトアクセプターフレームワーク配列をさらに含む。本発明のDLL4結合タンパク質中に存在する表3および4からの1つ以上のヒトアクセプターフレームワーク配列は、DLL4と結合するラットモノクローナル抗体中に存在する1個以上の対応するアミノ酸残基に復帰突然変異されている1個以上のアミノ酸残基、ならびに/または望ましくない反応の部位を低減もしくは排除する、例えば、不要なグリコシル化の部位および/もしくは不要なN末端ピログルタミン酸形成の部位および/もしくは低減した可能性がある免疫原性のリスクの部位を低減もしくは廃除する1個以上のアミノ酸に突然変異されている1個以上のアミノ酸残基をさらに含み得る。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、上記の1個以上のCDRを含むDLL4結合タンパク質を提供し、ここで、結合タンパク質はまた、以下:
【0026】
【表1】
からなる群から選択される可変領域配列中に存在する任意のフレームワーク配列から選択されるヒトアクセプターフレームワーク配列のうち1つ以上(例えば、結合ドメインあたりいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つ)も含む。
【0027】
本発明のさらに別の実施形態では、DLL4結合タンパク質は、
重鎖フレームワーク−1(H−FR1):
E−V−Q−L−V−E−S−G−G−G−L−V−Q−P−G−G−S−L−R−L−S−C−A−A−S−G−F−T−F−X
30(配列番号143)[X
30は、S、RまたはGである];
重鎖フレームワーク−2(H−FR2):W−V−R−Q−A−P−G−K−G−L−E−W−V−A(配列番号144);
重鎖フレームワーク−3(H−FR3):
R−F−T−I−S−R−D−N−A−K−X
11−S−L−Y−L−Q−M−N−S−L−R−A−E−D−T−A−V−Y−Y−C−X
31−R(配列番号145)
[X
11は、NまたはSであり、
X
31は、AまたはSである];
重鎖フレームワーク−4(H−FR4):W−G−Q−G−T−L−V−T−V−S−S(配列番号146);
軽鎖フレームワーク−1(L−FR1):
D−I−Q−M−T−Q−S−P−S−S−L−S−A−S−V−G−D−R−V−T−I−T−C(配列番号147);
軽鎖フレームワーク−2(L−FR2):W−Y−Q−Q−K−P−G−K−X
9−P−K−L−L−I−X
15(配列番号148)
[X
9は、AまたはSであり、
X
15は、FまたはYである];
軽鎖フレームワーク−3(L−FR3):
G−V−P−S−R−F−S−G−S−G−S−G−T−D−X
15−T−L−T−I−S−S−L−Q−P−E−D−F−A−T−Y−Y−C(配列番号149)
[X
15は、FまたはSである];
軽鎖フレームワーク−4(L−FR4):F−G−Q−G−T−K−L−E−I−K(配列番号150)
からなる群から選択される1つ以上の(例えば、いずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つの)アクセプターフレームワーク配列をさらに含む。
【0028】
別の実施形態では、上記の1個以上のCDRを含むDLL4結合タンパク質はまた、上記のヒトアクセプターフレームワーク配列を含み、ここで、ヒトアクセプターフレームワーク配列は、重要な残基で少なくとも1つのフレームワーク領域アミノ酸置換を含み、重要な残基は、CDRに隣接する残基、グリコシル化部位残基、希少残基、ヒトDLL4と相互作用できる残基、CDRと相互作用できる残基、標準残基、重鎖可変領域と軽鎖可変領域間の接触残基、バーニアゾーン内の残基、コチア(Chothia)によって定義される可変重鎖CDR1およびカバット(Kabat)によって定義される第1の重鎖フレームワーク間で重複する領域中の残基からなる群から選択される。
【0029】
別の実施形態では、本明細書に記載されたDLL4結合タンパク質のヒトアクセプターフレームワーク配列は、少なくとも1つのフレームワーク領域アミノ酸置換を含み、ここで、フレームワークのアミノ酸配列は、ヒト生殖系列アクセプターフレームワークの配列と少なくとも65%同一であり、ヒト生殖系列アクセプターフレームワークと同一の少なくとも70個のアミノ酸残基を含む。別の実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、コンセンサスヒト可変ドメイン配列を含む。
【0030】
一実施形態では、本発明は、ヒトアクセプターフレームワーク配列を含むDLL4結合タンパク質を提供し、ここで、結合タンパク質は、以下:
【0031】
【表2】
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含む。
【0032】
別の実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、上記の2つ以上の可変ドメインを含む。好ましい実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、2つの可変ドメインを含み、ここで、2つの可変ドメインは、以下:
【0033】
【表3】
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0034】
一実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、以下:
【0035】
【表4】
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの可変ドメインを含む。
【0036】
別の実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、2つの可変ドメインを含み、ここで、2つの可変ドメインは、以下:
【0037】
【表5】
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0038】
一実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、
配列番号188(h1All.A6 VH)および配列番号197(h1A11VL.1)、
配列番号190(h1A11.C6 VH)および配列番号197(h1A11VL.1)、ならびに
配列番号191(h1A11.A11 VH)および配列番号197(h1A11.VL.1)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する2つの可変ドメインを含む。
【0039】
一実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、アミノ酸配列配列番号181(VH.1b 38H12)および配列番号185(VL.1b 38H12)を有する2つの可変ドメインを含む。
【0040】
本発明によれば、本明細書に記載されたVHおよびVLドメインの種々の組合せを含むさらなるDLL4結合タンパク質を作製し、選択するために、任意の本明細書に記載されたDLL4結合タンパク質の重鎖可変(VH)ドメインおよび軽鎖可変(VL)ドメインが、当技術分野で利用可能な組換え技術を使用してシャッフルされ得る。
【0041】
一実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、ヒトDLL4(hu DLL4)および少なくとも1種のその他の種のDLL4と結合する。より好ましくは、本明細書に記載されたDLL4結合タンパク質は、ヒトDLL4ならびにカニクイザルDLL4(cynomolgus DLL4、cyno DLL4)、マウスDLL4(mu DLL4)、ラットDLL4およびそれらの組合せからなる群から選択されるDLL4と結合する。
【0042】
別の実施形態では、本明細書に記載されたDLL4結合タンパク質は、Notchタンパク質とのDLL4相互作用を遮断できる。好ましくは、Notchタンパク質は、Notch−1、Notch−2、Notch−3、Notch−4およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0043】
一実施形態では、本明細書に記載されたDLL4結合タンパク質は、ヒトDLL4の1つ以上の生物学的機能を調節、阻害または中和できる。より好ましくは、本発明のDLL4結合タンパク質は、ヒトDLL4、カニクイザルDLL4、サルDLL4、ラットDLL4およびそれらの組合せからなる群から選択されるDLL4の活性を調節、阻害または中和できる。
【0044】
さらなる実施形態では、本明細書に記載されたDLL4結合タンパク質は、VEGFR2活性、VEGFR1活性またはVEGFR2およびVEGFR1の両活性を阻害できる。
【0045】
一実施形態では、本明細書に記載されたDLL4結合タンパク質は、正常な血管新生を阻害できる。
【0046】
一実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、表面プラズモン共鳴によって測定される、少なくとも約10
2M
−1s
−1;少なくとも約10
3M
−1s
−1;少なくとも約10
4M
−1s
−1;少なくとも約10
5M
−1s
−1;または少なくとも約10
6M
−1s
−1の、DLL4との結合速度定数(K
on)を有する。好ましくは、本発明の結合タンパク質は、表面プラズモン共鳴によって測定される、10
2M
−1s
−1から10
3M
−1s
−1の間;10
3M
−1s
−1から10
4M
−1s
−1の間;10
4M
−1s
−1から10
5M
−1s
−1の間;または10
5M
−1s
−1から10
6M
−1s
−1の間の、DLL4との結合速度定数(K
on)を有する。
【0047】
別の実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、表面プラズモン共鳴によって測定される、最大で約10
−3s
−1;最大で約10
−4s
−1;最大で約10
−5s
−1;または最大で約10
−6s
−1の、DLL4との解離速度定数(K
off)を有する。好ましくは、本発明の結合タンパク質は、表面プラズモン共鳴によって測定される、10
−3s
−1から10
−4s
−1の;10
−4s
−1から10
−5s
−1の;または10
−5s
−1から10
−6s
−1の、DLL4との解離速度定数(K
off)を有する。
【0048】
別の実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、最大で約10
−7M;最大で約10
−8M;最大で約10
−9M;最大で約10
−10M;最大で約10
−11M;最大で約10
−12M;または最大で10
−13Mの、DLL4との解離定数(K
D)を有する。好ましくは、本発明の結合タンパク質は、10
−7Mから10
−8Mの;10
−8Mから10
−9Mの;10
−9Mから10
−10Mの;10
−10から10
−11Mの;10
−11Mから10
−12Mの;または10
−12Mから10
−13Mの、DLL4との解離定数(K
D)を有する。
【0049】
一実施形態では、本発明は、上記のDLL4結合タンパク質およびリンカーポリペプチドまたは免疫グロブリン定常ドメインを含む抗体構築物を提供する。好ましい実施形態では、本発明の抗体構築物は、免疫グロブリン分子、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、ジスルフィド結合されたFv、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディー、多重特異性抗体、二重特異性抗体および二特異性抗体からなる群から選択される。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明の抗体構築物は、ヒトIgM定常ドメイン、ヒトIgG1定常ドメイン、ヒトIgG2定常ドメイン、ヒトIgG3定常ドメイン、ヒトIgG4定常ドメイン、ヒトIgE定常ドメインおよびヒトIgA定常ドメインからなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。
【0051】
別の実施形態では、本発明の抗体構築物は、免疫グロブリンガンマ−1(IgG−1)重鎖定常領域(配列番号3など)、突然変異体IgG−1重鎖定常領域(配列番号4など)、免疫グロブリンカッパ軽鎖定常領域(配列番号5など)、免疫グロブリンラムダ軽鎖定常領域(配列番号6など)およびそれらの組合せからなる群から選択される免疫グロブリン定常領域を含む。
【0052】
別の実施形態では、抗体構築物は、グリコシル化されている。好ましくは、グリコシル化は、ヒトグリコシル化パターンである。
【0053】
一実施形態では、本発明は、薬剤とコンジュゲートしている本明細書に記載された抗体構築物を含む抗体コンジュゲートを提供する。好ましくは、薬剤は、造影剤、治療薬、細胞傷害性薬剤および免疫接着分子からなる群から選択される。好ましい実施形態では、造影剤は、放射標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁性標識およびビオチンからなる群から選択される。より好ましくは、造影剤は、
3H
、14C
、35S、
90Y、
99Tc、
111In、
125I、
131I、
177Lu、
166Hoおよび
153Smからなる群から選択される放射標識である。好ましい実施形態では、治療薬または細胞傷害性薬剤は、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗生物質、増殖因子、サイトカイン、血管新生抑制薬、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、毒素およびアポトーシス薬からなる群から選択される。
【0054】
別の実施形態では、上記のDLL4結合タンパク質、抗体構築物または抗体コンジュゲートは、結晶として存在する。好ましくは、結晶は、担体を含まない医薬放出制御結晶である。別の実施形態では、このような結晶化結合タンパク質、結晶化抗体構築物または結晶化抗体コンジュゲートは、その可溶性対応物よりも長いインビボ半減期を有する。好ましい実施形態では、結晶化結合タンパク質、結晶化抗体構築物または結晶化抗体コンジュゲートは、結晶化後に、結合タンパク質、抗体構築物または抗体コンジュゲートの可溶性または非結晶形態の生物活性を保持する。
【0055】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載されたDLL4結合タンパク質(任意の抗体構築物または抗体コンジュゲートを含む)の1種以上のアミノ酸配列をコードする単離された核酸を提供する。
【0056】
好ましい実施形態では、本発明は、上記のCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3のうち1種以上を含む重鎖可変ドメインを含むポリペプチド;上記のCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3のうち1種以上を含む軽鎖可変ドメインを含むポリペプチド;および両ポリペプチドの組合せからなる群から選択されるポリペプチドをコードする単離された核酸を提供する。
【0057】
本発明の一態様は、DLL4結合タンパク質、抗体構築物、DLL4結合抗体コンジュゲートまたはそれらのDLL4結合部分をコードする単離された核酸に関する。上記のCDR−H1、CDR−H2もしくはCDR−H3を含む重鎖可変ドメインを含むポリペプチド;上記のCDR−L1、CDR−L2もしくはCDR−L3を含む軽鎖可変ドメインを含むポリペプチド;または両ポリペプチドの組合せからなる群から選択されるポリペプチドをコードする単離された核酸が特に好ましい。
【0058】
さらなる実施形態は、本明細書に記載された単離された核酸を含むベクターを提供する。好ましい実施形態では、ベクターは、pcDNA、pTT(Durocherら、Nucl.Acids Res.、30(2e9):1−9頁(2002年))、pTT3(さらなる多重クローニング部位を有するpTT)、pEFBOS(Mizushimaら、Nucl.Acids.Res.、18(17):5322頁(1990年))、pBV、pJVおよびpBJからなる群から選択される。
【0059】
本発明の別の態様では、上記のベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。宿主細胞は、原核細胞であっても、真核細胞であってもよい。好ましい原核生物の宿主細胞として、大腸菌(Escherichia coli)がある。好ましくは、真核細胞は、原生生物細胞、動物細胞、植物細胞および真菌細胞からなる群から選択される。より好ましくは、宿主細胞は、それだけには限らないが、CHOおよびCOS細胞を含めた哺乳動物細胞である。好ましい真菌細胞は、サッカロミセス・セレビシ(Saccharomyces cerevisiae)である。好ましい昆虫細胞は、Sf9細胞である。
【0060】
本発明の別の態様では、ヒトDLL4と結合する結合タンパク質を製造するのに十分な条件下、培養培地中で上記の宿主細胞のうちいずれか1種を培養するステップを含む、ヒトDLL4と結合する結合タンパク質を製造する方法が提供される。
【0061】
一実施形態は、上記の結晶化DLL4結合タンパク質、結晶化抗体構築物または結晶化抗体コンジュゲートおよび成分、さらに、少なくとも1種のポリマー担体を含む製剤を含む、本発明のDLL4結合タンパク質の放出のための組成物を提供する。好ましくは、ポリマー担体は、ポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体またはPLGA、ポリ(b−ヒドロキシ酪酸(hydroxybutryate))、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ((ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、マレイン酸無水物−アルキルビニルエーテル共重合体、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギン酸塩、セルロースおよびセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリコサミノグリカン(glycaminoglycans)、硫酸化多糖、それらのブレンドおよび共重合体からなる群のうち1種以上から選択されるポリマーである。好ましくは、成分は、アルブミン、スクロース、トレハロース、ラクチトール、ゼラチン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メトキシポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールからなる群から選択される。
【0062】
別の実施形態は、哺乳動物に、有効量の上記の結晶化DLL4結合タンパク質、結晶化抗体構築物または結晶化抗体コンジュゲートを含む組成物を投与するステップを含む、哺乳動物を治療する方法を提供する。
【0063】
本発明はまた、上記のDLL4結合タンパク質(上記の抗体構築物または抗体コンジュゲートを含む)および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。さらなる実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1つのさらなる薬剤を含む。さらなる薬剤は、DLL4が有害である障害を治療するための治療薬であり得る。好ましくは、本発明の医薬組成物は、治療薬;造影剤;抗悪性腫瘍薬;化学療法薬;血管新生抑制薬;抗VEGF抗体;抗EGFR抗体;抗cMet抗体;抗ErbB3抗体;抗HER2抗体;抗CD20抗体;VEGFトラップ分子;キナーゼ阻害剤;共刺激分子遮断薬;抗B7.2抗体;CTLA4−Ig;接着分子遮断薬;抗Eセレクチン抗体;抗Lセレクチン抗体;抗サイトカイン抗体またはその機能的断片;抗IL−18抗体;抗TNF抗体;抗IL−6抗体;メトトレキサート;コルチコステロイド;シクロスポリン;ラパマイシン;FK506;DNAアルキル化剤;シスプラチン;カルボプラチン;抗チューブリン剤;パクリタキセル;ドセタキセル;ドキソルビシン;ゲムシタビン;ジェムザール;アントラサイクリン;アドリアマイシン;トポイソメラーゼ(topoisiomersase)I阻害剤;トポイソメラーゼII阻害剤;5−フルオロウラシル(5−FU);ロイコボリン;イリノテカン;受容体チロシンキナーゼ阻害剤、アポトーシス阻害剤;Bcl2/Bclx阻害剤;エルロチニブ、ゲフィチニブ、COX−2阻害剤、セレコキシブ、シクロスポリン;ラパマイシン;検出可能な標識またはリポーター分子;TNFアンタゴニスト;抗リウマチ薬;筋肉弛緩薬;麻薬;鎮痛薬;麻酔薬;鎮静薬;局所麻酔薬;神経筋遮断薬;抗菌薬;抗乾癬薬;コルチコステロイド;アナボリックステロイド;エリスロポエチン;免疫処置;免疫グロブリン;免疫抑制剤;成長ホルモン;ホルモン置換薬;放射性医薬品;抗鬱薬;抗精神病薬;刺激薬;喘息薬物;βアゴニスト;吸入ステロイド;エピネフリン;そのエピネフリン類似体;サイトカイン;およびサイトカインアンタゴニストからなる群から選択されるさらなる薬剤を含む。
【0064】
別の態様では、本発明は、ヒトDLL4を、上記の結合タンパク質と接触させ、その結果、ヒトDLL4が阻害または中和されるステップを含む、ヒトDLL4活性を阻害する方法を提供する。関連態様では、本発明は、ヒト被験体に、上記で開示される結合タンパク質を投与し、その結果、ヒト被験体においてヒトDLL4が阻害され、治療が達成されるステップを含む、DLL4が有害である障害を患うヒト被験体において、DLL4活性を阻害する方法を提供する。好ましくは、障害は、乳房、結腸、直腸、肺、中咽頭、下咽頭、食道、胃、膵臓、肝臓、胆嚢および胆管、小腸、尿路(腎臓、膀胱および尿路上皮を含む)、女性生殖器(子宮頸部、子宮および卵巣ならびに絨毛癌および妊娠性絨毛性疾患を含む)、男性生殖器(前立腺、精嚢、精巣および生殖細胞腫瘍を含む)、内分泌線(甲状腺、副腎および脳下垂体を含む)および皮膚の癌腫ならびに血管腫、黒色腫、肉腫(骨および軟組織に由来するものならびにカポジ肉腫を含む)、脳、神経、眼部および髄膜(星状細胞腫、神経膠腫、膠芽腫、網膜芽細胞腫、神経腫、神経芽腫、シュワン腫および髄膜腫を含む)の腫瘍、白血病およびリンパ腫(ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫の両方)などの造血悪性腫瘍由来の固形腫瘍ならびに腫瘍転移を含めた原発性癌および転移性癌、眼部新血管新生(糖尿病性失明、網膜症、加齢性黄斑変性症およびルベオーシスを含む)、浮腫、リウマチ関節炎、アテローム斑、不応性の腹水症、乾癬、膵炎、多嚢胞性卵巣疾患(POD)、子宮内膜症、子宮筋腫、良性前立腺肥大、T−細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)、皮質下梗塞および白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、多発性硬化症(MS)、ファロー四徴症(TOF)、アラジール症候群(AS)、黄斑変性症ならびに加齢性黄斑変性症疾患ならびに異常なDLL4発現または活性を特徴とするその他の血管新生非依存性および依存性疾患を含む群から選択される。
【0065】
別の態様では、本発明は、第2の薬剤の治療上有効な量の投与の前、投与と同時に、投与後に、上記の結合タンパク質のうちいずれか1種を投与するステップを含む、ヒトDLL4が有害である障害を患っている患者を治療する方法を提供する。好ましい実施形態では、第2の薬剤は、放射治療薬;抗悪性腫瘍薬;化学療法薬;DNAアルキル化剤;シスプラチン;カルボプラチン;抗チューブリン剤;パクリタキセル;ドセタキセル;タキソール;ドキソルビシン;ゲムシタビン;ジェムザール;アントラサイクリン;アドリアマイシン;トポイソメラーゼI阻害剤;トポイソメラーゼII阻害剤;5−フルオロウラシル(5−FU);ロイコボリン;イリノテカン;受容体チロシンキナーゼ阻害剤;アポトーシス阻害剤;Bcl2/Bclx阻害剤;エルロチニブ;ゲフィチニブ;COX−2阻害剤;セレコキシブ;キナーゼ阻害剤;血管新生抑制薬;抗VEGF抗体;抗EGFR抗体;抗cMet抗体;抗ErbB3抗体;抗HER2抗体;抗CD20抗体;VEGF−Trap(アフリベルセプト);共刺激分子遮断薬;抗B7.1抗体;抗B7.2抗体;CTLA4−Ig;接着分子遮断薬;抗LFA−1抗体;抗Eセレクチン抗体;抗Lセレクチン抗体;小分子阻害剤;抗サイトカイン抗体またはその機能的断片;抗IL−18抗体;抗TNF抗体;抗IL−6抗体;抗サイトカイン受容体抗体;メトトレキサート;シクロスポリン;ラパマイシン;FK506;検出可能な標識またはリポーター;TNFアンタゴニスト;抗リウマチ薬;筋弛緩薬;麻薬;非ステロイド抗炎症剤(NSAID);鎮痛薬;麻酔薬;鎮静薬;局所麻酔薬;神経筋遮断薬;抗菌薬;抗乾癬薬;コルチコステロイド;アナボリックステロイド;エリスロポエチン;免疫処置;免疫グロブリン;免疫抑制剤;成長ホルモン;ホルモン置換薬;放射性医薬品;抗鬱薬;抗精神病薬;刺激薬;喘息薬物;βアゴニスト;吸入ステロイド;エピネフリン;エピネフリン類似体;サイトカイン;およびサイトカインアンタゴニストからなる群から選択される。
【0066】
好ましい実施形態では、上記で開示される医薬組成物が、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、関節内(intraarticular)、気管支内、腹腔内、関節内(intracapsular)、軟骨内、腔内(intracavitary)、腔内(intracelial)、小脳内、脳室内、結腸内、頸部内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑膜内、胸腔内、子宮内、膀胱内、ボーラス、経膣、直腸、頬側、舌下、鼻腔内および経皮からなる群から選択される少なくとも1つの様式によって被験体に投与される。
【0067】
本発明の別の態様は、本発明の少なくとも1つのDLL4結合タンパク質に対する少なくとも1つのDLL4抗イディオタイプ抗体を提供する。抗イディオタイプ抗体は、免疫グロブリン分子の少なくとも一部、例えば、それだけには限らないが、本発明の結合タンパク質に組み込まれ得る、重鎖または軽鎖またはそのリガンド結合部分の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、重鎖または軽鎖可変領域、重鎖または軽鎖定常領域、フレームワーク領域およびそれらの任意の部分を含む分子を含有する任意のタンパク質またはペプチドが挙げられる。
【0068】
種々の免疫検出アッセイ形式のいずれも、混合物、溶液または生体試料中のDLL4を検出または測定するために本発明のDLL4結合タンパク質を使用するよう適応し得る。このような免疫検出アッセイ形式として、それだけには限らないが、基質に吸着または固定された本発明のDLL4結合タンパク質を含む、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈降、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、イムノブロット(例えば、ウェスタン)、イムノストリップ(例えば、イムノディップスティック(immunodipsticks))、FACSなどが挙げられる。本発明のDLL4結合タンパク質を使用するDLL4の検出は、混合物、溶液で、または生体試料中でインビトロで実施され得る。試料中のDLL4を検出または測定するために本発明の結合タンパク質と接触され得る生体試料として、それだけには限らないが、尿、唾液、経口スワブ(頬側、舌または咽頭スワブ)、皮膚スワブ、皮膚掻爬物、直腸スワブ、膣スワブ、全血試料、血漿試料、血清試料、組織生検および当技術分野で公知の手順によって個体から得られた任意のその他の試料が挙げられる。別の実施形態では、DLL4結合タンパク質は、それだけには限らないが、X線コンピュータ援用断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)および陽電子放射型断層撮影法(PET)を含めた種々の断層撮影法およびスキャニング法などインビボでDLL4を検出するために使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0069】
この発明は、DLL4結合タンパク質、特に、DLL4と結合する抗DLL4抗体またはその抗原結合部分に関する。ヒトLL4のアミノ酸配列(配列番号1)は、対応するDLL4ヌクレオチドコード配列(配列番号2)とともに表1に示されている。本発明の種々の態様は、抗体および抗体断片およびその医薬組成物ならびにこのような抗体および断片を製造するための核酸、組換え発現ベクターおよび宿主細胞に関する。ヒトDLL4またはマウスDLL4を検出するために本発明の抗体を使用する方法、インビトロまたはインビボのいずれかでヒトもしくはマウスDLL4および/またはヒトもしくはマウスVEGFR2もしくはVEGFR1活性を阻害する方法ならびに遺伝子発現を調節する方法も本発明によって包含される。
【0070】
【表6】
本明細書において別段の定義のない限り、本発明に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有する。用語の意味および範囲は、明確でなければならないが、任意の潜在的に曖昧な事象では、本明細書において提供される定義は、任意の辞書の定義または外因性の定義を超える先例を取る。さらに、文脈によって別段に必要とされない限り、単数の用語は、複数を含むものとし、複数の用語は、単数を含むものとする。本出願では、「または」の使用は、別段の記述のない限り、「および/または」を意味する。さらに、用語「含んでいる(including)」ならびに「含む(includes)」および「含まれる(included)」などのその他の形態の使用は、限定的ではない。また、「要素」または「成分」などの用語は、別段の記述のない限り、1つのユニットを含む要素および成分ならびに2以上のサブユニットを含む要素および成分の両方を包含する。
【0071】
一般に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝子およびタンパク質および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法ならびにその技術は、当技術分野で周知のものであり、当技術分野でよく使用されるものである。本発明の方法および技術は、別段の指示のない限り、当技術分野で周知の従来法に従って、また、本明細書を通じて引用され、論じられる種々の一般的な参考文献およびより特定の参考文献に記載されるように一般に実施される。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様書に従って、当技術分野で一般に遂行されるように、または本明細書に記載されるように実施される。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学および医薬品および製薬化学に関連して使用される命名法ならびにその実験室手順および技術は、当技術分野で周知のものであり、当技術分野でよく使用されるものである。標準技術は、化学合成、化学分析、医薬品、製剤および送達ならびに患者の治療のために使用されている。
【0072】
本発明がより容易に理解され得るように、選択用語が以下に定義される。
【0073】
本明細書において、用語「ポリペプチド」とは、アミノ酸の任意のポリマー鎖を指す。用語「ペプチド」および「タンパク質」は、用語ポリペプチドと同義的に使用され、アミノ酸のポリマー鎖も指す。用語「ポリペプチド」は、天然または人工タンパク質、タンパク質断片およびタンパク質配列のポリペプチド類似体を包含する。ポリペプチドは、単量体であってもポリマーであってもよい。本明細書における「ポリペプチド」の使用は、別段の記述のない限り、ポリペプチドおよびその断片および変異体(変異体の断片を含む)を包含するものとする。抗原性ポリペプチドについては、ポリペプチドの断片は、場合により、ポリペプチドの少なくとも1つの連続するまたは非直線エピトープを含有する。少なくとも1つのエピトープ断片の正確な境界は、当技術分野で通常の技術を使用して確認され得る。断片は、少なくとも約5個の連続するアミノ酸、例えば、少なくとも約10個の連続するアミノ酸、少なくとも約15個の連続するアミノ酸または少なくとも約20個の連続するアミノ酸を含む。ポリペプチドの変異体は、本明細書に記載されるとおりである。
【0074】
用語「単離されたタンパク質」または「単離されたポリペプチド」は、その起源または供給源に基づいて、その天然状態でそれに付随する天然に会合している成分と会合していないタンパク質またはポリペプチドであり、実質的に、同一種に由来するその他のタンパク質を含まず、異なる種に由来する細胞によって発現されるか、または天然には生じない。したがって、化学的に合成されたまたはそれが天然に生じる細胞とは異なる細胞系において合成されたポリペプチドは、その天然に会合している成分から「単離」される。タンパク質はまた、当技術分野で周知のタンパク質精製技術を使用する単離によって天然に会合している成分を実質的に含まないようにされ得る。
【0075】
本明細書において用語「回収すること」とは、例えば、当技術分野で周知のタンパク質精製技術を使用する単離によって、ポリペプチドなどの化学種を、天然に会合している成分を実質的に含まないようにすることを指す。
【0076】
本明細書において、用語「ヒトDLL4」(本明細書において「hDLL4」または「huDLL4」と略される)は、受容体結合に必要であるいくつかのEGF様ドメインおよびDSLドメインを含む。この用語は、約74−75kDaを含むタンパク質を含む。ヒトDLL4の構造ならびに推定されるDNAおよびタンパク質配列は、例えば、Shutterら、Genes & Dev.、4: 1313−1318頁(2000年)にさらに記載されている。用語「ヒトDLL4」は、標準組換え発現法によって調製され得る組換えヒトDLL4(rh DLL4)を含むものとする。
【0077】
本明細書において、DLL4に関して「生物活性」とは、DLL4のすべての固有の生物学的特性を指す。DLL4の生物学的特性として、それだけには限らないが、Notch受容体を結合すること、Notch受容体を活性化すること、VEGFシグナル伝達を負に調節すること、VEGFR2を抑制することおよびVEGR1を誘導することが挙げられる。
【0078】
本明細書において、用語「特異的結合」または「特異的に結合すること」は、抗体、タンパク質またはペプチドの、第2の化学種との相互作用に関連して、相互作用が、化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存していること、例えば、抗体が、広くタンパク質とではなく、特定のタンパク質構造を認識し、結合することを意味する。抗体が、エピトープ「A」に対して特異的である場合には、標識された「A」および抗体を含有する反応物中のエピトープA(または遊離の、標識されていないA)を含有する分子の存在は、抗体と結合している標識されたAの量を低減する。
【0079】
「結合タンパク質」は、ポリペプチド、抗原、化合物またはその他の分子または任意の種類の基質であり得る結合パートナーと結合し、それと複合体を形成する単量体または多量体タンパク質である。結合タンパク質は、結合パートナーと特異的に結合する。結合タンパク質として、抗体および抗原分子または抗原分子上の特定の部位(エピトープ)と結合する1以上の抗原−結合ドメインを含むその他の分子が挙げられる。結合タンパク質として、当技術分野で公知であり、以下に記載された、抗体またはその抗原結合断片のいずれかならびに抗体の種々の変異体形態および誘導体が挙げられる。したがって、結合タンパク質として、それだけには限らないが、抗体、四量体免疫グロブリン、IgG分子、IgG
1分子、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、ヒト化抗体、親和性成熟抗体および抗原と結合する能力を保持する任意のこのような抗体の断片が挙げられる。
【0080】
本明細書において、用語「抗体」とは、4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖、および2つの軽(L)鎖からなる任意の免疫グロブリン(Ig)分子またはIg分子の本質的なエピトープ結合特徴を保持する、その任意の機能的断片、突然変異体、変異体または誘導体を広く指す。このような突然変異体、変異体または誘導体抗体形式は、当技術分野で公知である。その限定されない実施形態は以下に論じられている。
【0081】
全長抗体では、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書において、HCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書において、LCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLからなる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散財している、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細かく分けることができる。各VHおよびVLは、以下の順でアミノ末端からカルボキシ末端に配置される、3つのCDRおよび4つのFRからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4。免疫グロブリン分子は、任意の種類のもの(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスであり得る。
【0082】
用語「Fc領域」は、無傷の抗体のパパイン消化によって生じ得る免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するよう使用される。Fc領域は、天然配列Fc領域または変異体Fc領域であり得る。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、2つの定常ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、場合により、1つのCH4ドメインを含む。抗体エフェクター機能を変更するためのFc部分の中のアミノ酸残基の置換は、当技術分野で公知である(米国特許第5,648,260号および同5,624,821号)。抗体のFc部分は、いくつかの重要なエフェクター機能、例えば、サイトカイン誘導、ADCC、食作用、補体依存性細胞毒性(CDC)ならびに抗体および抗原抗体複合体の半減期/クリアランス速度を媒介する。いくつかの場合には、これらのエフェクター機能は、治療用抗体にとって望ましいものであるが、その他の場合には、治療対象に応じて、不必要であるまたは有害である場合さえある。特定のヒトIgGアイソタイプ、特に、IgG1およびIgG3は、それぞれ、FcγRsおよび補体C1qとの結合によるADCCおよびCDCを媒介する。新生児Fc受容体(FcRn)は、抗体の循環半減期を決定する重要な成分である。さらに別の実施形態では、抗体のエフェクター機能が変更されるよう、抗体の定常領域、例えば、抗体のFc領域において少なくとも1個のアミノ酸残基が置換される。免疫グロブリンの2つの同一の重鎖の二量体化は、CH3ドメインの二量体化によって媒介され、ヒンジ領域内のジスルフィド結合によって安定化される(Huberら、Nature、264:415−420頁(1976年);Thiesら、J.Mol.Biol.、293:67−79頁(1999年))。重鎖−重鎖ジスルフィド結合を妨げるためのヒンジ領域内のシステイン残基の突然変異は、CH3ドメインの二量体化を不安定化する。CH3二量体化に関与する残基は同定されている(Dall’Acqua、Biochem.、37: 9266−9273頁(1998年))。したがって、一価の半Igを作製することが可能である。興味深いことに、これらの一価の半分子型Igは、IgGおよびIgAサブクラス両方について天然に見出されている(Seligman、Ann. Immunol.、129:855−70頁(1978年);Biewengaら、Clin.Exp.Immunol.、51:395−400頁(1983年))。FcRn:Ig Fc領域の化学量論は、2:1であると決定されており(Westら、Biochem.、39:9698−9708頁(2000年))、半Fcは、FcRn結合を媒介するのに十分である(Kimら、Eur.J.Immunol.、24:542−548頁(1994年))。CH3二量体化にとって重要な残基は、CH3 bシート構造の内側界面上に位置するのに対し、FcRn結合に関与する領域はCH2−CH3ドメインの外側の界面上に位置するので、CH3ドメインの二量体化を混乱させる突然変異が、そのFcRn結合に対してより大きな有害効果を有する可能性はない。しかし、半分子型Igは、通常の抗体のものと比較して、その小さい大きさのために組織浸透において特定の利点を有し得る。一実施形態では、重鎖の二量体化が乱され、その結果、半分子型Igが得られるよう、本発明の結合タンパク質の定常領域、例えば、Fc領域中の少なくとも1個のアミノ酸残基が置換されている。IgGの抗炎症活性は、IgG Fc断片のN連結型グリカンのシアリル化に完全に依存している。抗炎症活性のための正確なグリカン必要条件は決定されており、その結果、適当なIgG1 Fc断片が作製され、それによって、大幅に増強された効力を有する完全に組換えられたシアリル化IgG1 Fcが作製され得る(Anthonyら、Science、320:373−376頁(2008年))。
【0083】
本明細書において、用語抗体の「抗原−結合部分」(または簡単に「抗体部分」)とは、抗原と(すなわち、抗原の特定のエピトープ、例えば、DLL4のエピトープと)特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上の断片を指す。抗体の抗原−結合機能は、全長抗体の断片によって実施され得るということがわかっている。このような抗体実施形態はまた、2種以上の異なる抗原(または同一抗原の2種以上の異なるエピトープ)と特異的に結合する、二特異性、二重特異性または多重特異性形式であり得る。用語抗体の「抗原−結合部分」内に包含される結合断片の例として、(i)Fab断片、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片;(ii)F(ab’)
2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFv断片;(v)単一の可変ドメインを含むdAb断片(Wardら、Nature、341:544−546頁(1989年);PCT公開番号WO 90/05144A1);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を使用し、VLおよびVH領域対が一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)としても知られる;例えば、Birdら、Science、242:423−426頁(1988年);Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci. USA、85:5879−5883頁(1988年)参照のこと)として製造されることを可能にする合成リンカーによって結合され得る。このような一本鎖抗体もまた、用語抗体の「抗原−結合部分」内に包含されるものとする。ダイアボディーなどの一本鎖抗体のその他の形態も包含される。ダイアボディーは、VHおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現されるが、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用し、それによって、ドメインが別の鎖の相補的ドメインと対形成するようにし、2つの抗原結合部位を作製する、二価の、二特異性抗体である(例えば、Holligerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444−6448頁(1993年); Poljak、R.J.、Structure、2:1121−1123頁(1994年)参照のこと)。このような抗体結合部分は、当技術分野で公知である(KontermannおよびDubel編、Antibody Engineering (Springer−Verlag. New York、2001年)、790頁(ISBN 3−540−41354−5)参照のこと)。さらに、一本鎖抗体はまた、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒になって、1対の抗原結合領域を形成する1対のタンデムFvセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む「直鎖抗体」も含む(Zapataら Protein Eng.、8(10):1057−1062頁(1995年);および米国特許第5,641,870号)。
【0084】
本明細書において、用語「抗体構築物」(または「DLL4抗体構築物」)とは、リンカーポリペプチドまたは免疫グロブリン定常ドメインと連結された1以上の本発明の抗原結合部分を含むポリペプチドを指す。リンカーポリペプチドは、ペプチド結合によって結合された2個以上のアミノ酸残基を含み、1つ以上の抗原結合部分を連結するために使用される。このようなリンカーポリペプチドは、当技術分野で周知である(例えば、Holligerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444−6448頁(1993年);Poljak、R.J.、Structure、2:1121−1123頁(1994年)参照のこと)。免疫グロブリン定常ドメインとは、重鎖または軽鎖定常ドメインを指す。ヒトIgG重鎖および軽鎖定常ドメインアミノ酸配列は、当技術分野で公知であり、表2に表されている。
【0085】
【表7】
さらに、抗体またはその抗原−結合部分は、抗体または抗体部分の1以上のその他のタンパク質またはペプチドとの共有または非共有結合によって形成された、より大きな免疫接着分子の一部であり得る。このような免疫接着分子の例として、四量体scFv分子を製造するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanovら、Human Antibodies and Hybridomas、6:93−101頁(1995年))ならびに二価の、ビオチン化scFv分子を製造するためのシステイン残基、マーカーペプチドおよびC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanovら、Mol.Immunol.、31:1047−1058頁(1994年))が挙げられる。FabおよびF(ab’)2断片などの抗体部分は、全抗体のそれぞれパパインまたはペプシン消化などの従来技術を使用して全抗体から調製され得る。さらに、抗体、抗体部分および免疫接着分子は、本明細書に記載され、当技術分野で公知の標準の組換えDNA技術を使用して得られる。
【0086】
本明細書において、「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有するその他の抗体を実質的に含まない抗体を指すものとする(例えば、hDLL4と特異的に結合する単離された抗体は、hDLL4以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、hDLL4と特異的に結合する単離された抗体は、その他の種に由来するDLL4分子(例えば、muDLL4)などのその他の抗原に対して交差反応性を有し得る。さらに、単離された抗体は、その他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まない場合がある。
【0087】
用語「モノクローナル抗体」および略語「MAb」および「mAb」は、本明細書において、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る、可能性ある天然に存在する突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原に対して向けられている。さらに、通常、種々の決定基(エピトープ)に対して向けられる種々の抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各mAbは、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。修飾語句「モノクローナル」とは、任意の特定の方法による抗体の製造を必要とすると解釈されるべきではない。
【0088】
本明細書において、用語「ヒト抗体」とは、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むものとする。本発明のヒト抗体は、例えば、CDR、特に、CDR3中に、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダムおよび部位特異的突然変異誘発によって、またはインビボ体細胞突然変異によって誘発される突然変異)を含み得る。しかし、本明細書において、用語「ヒト抗体」とは、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含まないものとする。
【0089】
本明細書において、用語「組換えヒト抗体」とは、組換え手段によって調製、発現、作製もしくは単離されたすべてのヒト抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(Hoogenboom、Trends Biotechnol.、15:62−70頁(1997年);AzzazyおよびHighsmith、Clin. Biochem.、35:425−445頁(2002年);GavilondoおよびLarrick、BioTechniques、29:128−145頁(2000年);HoogenboomおよびChames、Immunol.Today、21:371−378頁(2000年))、ヒト免疫グロブリン遺伝子とってトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(Taylorら、Nucl.Acids Res.、20:6287−6295頁(1992年);KellermannおよびGreen、Curr.Opin.Biotechnol.、13:593−597頁(2002年);Littleら、Immunol.Today、21:364−370頁(2000年)参照のこと)またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列のその他のDNA配列へのスプライシングを含む任意のその他の手段によって調製、発現、作製もしくは単離された抗体を含むものとする。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域および定常領域を有する。しかし、特定の実施形態では、このような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(または、ヒトIg配列にとってトランスジェニックの動物が使用される場合には、インビボ体細胞突然変異誘発)に付され、したがって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に由来し、それと関連している一方で、インビボにおけるヒト抗体生殖系列レパートリー内には天然に存在しない配列である。
【0090】
用語「キメラ抗体」とは、ある種に由来する重鎖および軽鎖可変領域配列ならびに別の種に由来する定常領域配列を含む抗体、例えば、ヒト定常領域と連結しているマウス重鎖および軽鎖可変領域を有する抗体を指す。
【0091】
本明細書において、用語「CDR」とは、抗体可変配列内の相補性決定領域を指す。重鎖および軽鎖の可変領域の各々中に3つのCDRがあり、これらは、可変領域の各々の「CDR1」、「CDR2」および「CDR3」と呼ばれる。本明細書において、用語「CDRセット」とは、抗原と結合する単一の可変領域中に生じる3つのCDRの群を指す。これらのCDRの正確な境界は異なるシステムに従って異なって定義されている。カバットによって記載されたシステム(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health、Bethesda、Md. (1987年)および(1991年))は、抗体の任意の可変領域に適用可能な明白な残基番号付けシステムを提供するだけでなく、3つのCDRを定義する正確な残基境界も提供する。これらのCDRは、「カバットCDR」と呼ばれることもある。Chothiaおよび共同研究者(ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.、196:901−917頁(1987年);Chothiaら、Nature、342:877−883頁(1989年))は、カバットCDR内の特定の下位部分が、アミノ酸配列のレベルで大きな多様性を有するにもかかわらず、ほぼ同一のペプチド骨格立体構造をとることを見出した。これらの下位部分は、「L1」、「L2」および「L3」または「H1」、「H2」および「H3」と示され、ここで、「L」および「H」は、軽鎖および重鎖領域をそれぞれ示す。これらの領域は、「コチア(Chothia)CDR」と呼ばれることもあり、これは、カバットCDRと重複する境界を有する。カバットCDRと重複するCDRを定義するその他の境界は、Padlan、FASEB J.、9:133−139頁(1995年)およびMacCallum、J.Mol.Biol.、262(5):732−745頁(1996年)によって記載されている。さらにその他のCDR境界定義は、本明細書のシステムの1つを厳密にたどらない場合もあるが、それでも、カバットCDRと重複するが、それらは、特定の残基または残基の群または全CDRでさえ、抗原結合に大幅に影響を与えないという予測または実験的知見を踏まえて、短くされる場合も、長くされる場合もある。本明細書において使用される方法は、これらのシステムのいずれかに従って定義されたCDRを使用し得るが、特定の実施形態は、カバットまたはコチアによって定義されるCDRを使用する。
【0092】
用語「カバット番号付け」、「カバット定義」および「カバット標識」は、本明細書において同義的に使用される。当技術分野で認識されるこれらの用語は、抗体の重鎖および軽鎖可変領域中のその他のアミノ酸残基よりも可変(すなわち、超可変)であるアミノ酸残基またはその抗原結合部分を番号付けるシステムを指す(Kabatら、Ann.NY Acad.Sci.、190:382−391頁(1971年)およびKabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication第91−3242(1991年))。重鎖可変領域(VH)について、超可変領域は、CDR1のアミノ酸位置31−35、CDR2のアミノ酸位置50−65およびCDR3のアミノ酸位置95−102の範囲である。軽鎖可変領域(VL)については、超可変領域は、CDR1のアミノ酸位置24−34、CDR2のアミノ酸位置50−56およびCDR3のアミノ酸位置89−97の範囲である。
【0093】
過去20年にわたる重鎖可変および軽鎖領域のアミノ酸配列の大規模な公開データベースの成長および分析が、可変領域配列内のフレームワーク領域(FR)およびCDR配列間の通常の境界の理解につながり、この分野の当業者が、カバット番号付け、コチア番号付けまたはその他のシステムに従ってCDRを正確に決定することが可能となった。例えば、KontermannおよびDubel編、Antibody Engineering (Springer−Verlag、Berlin、2001年)、第31章、432−433頁中、Martin、「Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains」参照のこと。重鎖可変(VH)および軽鎖可変(VL)領域のアミノ酸配列内のカバットCDRのアミノ酸配列、およびそれによって同様にカバットFRsの配列を決定する有用な方法が以下に提供される。
【0094】
CDR−L1アミノ酸配列を同定するために:
VL領域のアミノ末端からおよそ24個のアミノ酸残基を出発し;
CDR−L1配列の前の残基は、常にシステイン(C)であり;
CDR−L1配列の後ろの残基は、常にトリプトファン(W)、通常、Trp−Tyr−Gln(W−Y−Q)、またTrp−Leu−Gln(W−L−Q)、Trp−Phe−Gln(W−F−Q)およびTrp−Tyr−Leu(W−Y−L)であり;
長さは、通常、10−17個のアミノ酸残基である。
【0095】
CDR−L2アミノ酸配列を同定するために:
常に、CDR−L1の末端の後ろの16個の残基を出発し;
CDR−L2配列の前の残基は、一般に、Ile−Tyr(I−Y)、またVal−Tyr(V−Y)、Ile−Lys(I−K)およびIle−Phe(I−F)であり;
長さは、常に7個のアミノ酸残基である。
【0096】
CDR−L3アミノ酸配列を同定するために:
常に、CDR−L2の末端の後ろの33個のアミノ酸を出発し;
CDR−L3アミノ酸配列の前の残基は、常に、システイン(C)であり;
後ろの残基は、常に、Phe−Gly−X−Gly(F−G−X−G)(配列番号7)(式中、Xは、任意のアミノ酸である)であり;
長さは、通常、7−11個のアミノ酸残基である。
【0097】
CDR−H1アミノ酸配列を同定するために:
VH領域のアミノ末端からおよそ31個のアミノ酸残基および常に、システイン(C)の後ろの9個の残基を出発し;
前の残基は、常に、Cys−X−X−X−X−X−X−X−X(配列番号8)(式中、Xは、任意のアミノ酸である)であり;
後ろの残基は、常にTrp(W)、通常、Trp−Val(W−V)、またTrp−Ile(W−I)およびTrp−Ala(W−A)であり;
長さは、通常、5−7個のアミノ酸残基である。
【0098】
CDR−H2アミノ酸配列を同定するために:
常に、CDR−H1の末端の後ろの15個のアミノ酸残基を出発し;
前の残基は、通常、Leu−Glu−Trp−Ile−Gly(L−E−W−I−G)(配列番号9)、またその他の変化でもあり;
後ろの残基は、Lys/Arg−Leu/Ile/Val/Phe/Thr/Ala−Thr/Ser/Ile/Ala(K/R−L/I/V/F/T/A−T/S/I/A)であり;
長さは、通常、16−19個のアミノ酸残基である。
【0099】
CDR−H3アミノ酸配列を同定するために:
常に、CDR−H2の末端の後ろの33個のアミノ酸残基および常に、システイン(C)の後ろの3個を出発し、
前の残基は、常に、Cys−X−X(C−X−X)(式中、Xは、任意のアミノ酸である)、通常、Cys−Ala−Arg(C−A−R)であり;
後ろの残基は、常に、Trp−Gly−X−Gly(W−G−X−G)(配列番号10)(式中、Xは、任意のアミノ酸である)であり;
長さは、通常、3−25個のアミノ酸残基である。
【0100】
用語「CDRグラフト化抗体」とは、1つの種に由来するが、VHおよび/またはVLの1つ以上のCDR領域の配列が、別の種のCDR配列で置換されている重鎖および軽鎖可変領域配列を含む抗体、例えば、1つ以上のマウスCDR(例えば、CDR3)がヒトCDR配列で置換されている、マウス重鎖および軽鎖可変領域を有する抗体を指す。
【0101】
用語「ヒト化抗体」とは、VHおよび/またはVL配列の少なくとも一部が、より「ヒト様」である、すなわち、ヒト生殖系列可変配列とより類似しているよう変更されている、非ヒト種(例えば、マウス)由来の重鎖および軽鎖可変領域配列を含む抗体を指す。「ヒト化抗体」とは、対象とする抗原と免疫特異的に結合し、ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク(FR)領域および非ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有する相補性決定領域(CDR)を含む、抗体またはその変異体、誘導体、類似体もしくは断片である。本明細書において、用語「実質的に」とは、CDRとの関連で、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するCDRを指す。ヒト化抗体は、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のものと対応し、フレームワーク領域のすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つの、通常、2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)2、FabC、Fv)の実質的にすべてを含む。一実施形態では、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、通常、ヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、軽鎖ならびに少なくとも重鎖の可変ドメインの両方を含有する。抗体はまた、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3およびCH4領域も含み得る。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖のみを含有する。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖のみを含有する。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、軽鎖のヒト化可変ドメインおよび/またはヒト化重鎖のみを含有する。
【0102】
ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含めた免疫グロブリンの任意のクラス、ならびに制限するものではないが、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含めた任意のアイソタイプから選択され得る。ヒト化抗体は、2以上のクラスまたはアイソタイプ由来の配列を含んでもよく、特定の定常ドメインは、当技術分野で周知の技術を使用して、所望のエフェクター機能を最適化するよう選択され得る。
【0103】
ヒト化抗体のフレームワーク領域およびCDRは、親配列と正確に対応する必要はなく、例えば、ドナー抗体CDRまたはコンセンサスフレームワークは、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、挿入、および/または欠失によって突然変異され、その結果、その部位でのCDRまたはフレームワーク残基が、ドナー抗体またはコンセンサスフレームワークのいずれかと対応していなくてもよい。しかし、好ましい実施形態では、このような突然変異は、大規模なものではない。普通、ヒト化抗体残基の少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、最も好ましくは、少なくとも95%は、親のFRおよびCDR配列のものと対応する。本明細書において、用語「コンセンサスフレームワーク」とは、コンセンサス免疫グロブリン配列中のフレームワーク領域を指す。本明細書において、用語「コンセンサス免疫グロブリン配列」とは、関連免疫グロブリン配列のファミリーにおいて最も頻繁に生じるアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成される配列を指す(例えば、Winnaker、From Genes to Clones (Verlagsgesellschaft、Weinheim、1987年)参照のこと)。したがって、「コンセンサス免疫グロブリン配列」は、「コンセンサスフレームワーク領域(複数可)」および/または「コンセンサスCDR(複数可)」を含み得る。免疫グロブリンのファミリーでは、コンセンサス配列中の各位置は、ファミリーにおいてその位置で最も頻繁に生じるアミノ酸によって占められている。2個のアミノ酸が等しく頻繁に生じる場合には、コンセンサス配列中にいずれかが含まれ得る。
【0104】
「親和性成熟」抗体とは、変更(複数可)を有さない親抗体と比較して、標的抗原に対する抗体の親和性において改善をもたらす、1つ以上のそのCDR中に1つ以上の変更を有する抗体である。例示的親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルの親和性、またはさらにピコモルの親和性さえ有する。親和性成熟抗体を製造するための種々の手順は、当技術分野で公知である。例えば、Marksら、BioTecnology、10:779−783頁(1992年)には、VHおよびVLドメインシャッフリングによる親和性成熟が記載されている。CDRおよび/またはフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、Barbasら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、91:3809−3813頁(1994年);Schierら、Gene、169:147−155頁(1995年);Yeltonら、J.Immunol.、155:1994−2004頁(1995年);Jacksonら、J.Immunol.、154(7):3310−3319頁(1995年);Hawkinsら、J.Mol.Biol.、226:889−896頁(1992年)によって記載されている。選択的突然変異誘発位置での、およびアミノ酸残基を増強する活性を有する接触位置または高頻度突然変異位置での選択的突然変異は、米国特許第6,914,128 B1号に記載されている。
【0105】
用語「多価結合タンパク質」とは、2以上の抗原結合部位を含む結合タンパク質を示す(本明細書において、「抗原結合ドメイン」とも呼ばれる)。多価結合タンパク質は、好ましくは、3以上の抗原結合部位を有するよう操作され、一般に、天然に存在しない抗体である。用語「多重特異性結合タンパク質」とは、同一標的分子の2種以上の異なるエピトープと結合できる結合タンパク質を始め、2以上の関連または非関連標的と結合できる結合タンパク質を指す。
【0106】
本明細書において、用語「二特異性抗体」とは、クアドローマ技術によって(Milsteinら、Nature、305(5934):537−540頁(1983年))、2種の異なるモノクローナル抗体の化学的コンジュゲーションによって(Staerzら、Nature、314(6012):628−631頁(1985年))、またはFc領域中の突然変異を誘発するノブ・イントゥ・ホール(knob−into−hole)もしくは同様のアプローチ(Holligerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90(14):6444−6448頁(1993年)も参照のこと)によって作製され、その結果、複数の異なる免疫グロブリン種が得られる全長抗体を指し、そのうち1種のみが、機能性二特異性抗体である。分子機能によって、二特異性抗体は、その2つの結合アーム(HC/LCの1対)のうち一方の1種の抗原(またはエピトープ)と結合し、その第2のアーム(HC/LCの異なる対)上の異なる抗原(またはエピトープ)と結合する。この定義によって、二特異性抗体は、2つの別個の抗原結合アーム(特異性およびCDR配列の両方において)を有し、それが結合する各抗原に対して一価である。
【0107】
本明細書において、用語「二重特異性抗体」とは、その2つの結合アーム(HC/LCの対)の各々中の2種の異なる抗原(またはエピトープ)と結合できる全長抗体を指す(PCT公開WO02/02773参照のこと)。したがって、二重特異性結合タンパク質は、同一の特異性および同一のCDR配列を有する2つの同一の抗原結合アームを有し、それが結合する各抗原に対して二価である。
【0108】
本発明の「二重可変ドメイン」(「DVD」)結合タンパク質は、2以上の抗原結合部位を含み、二価(2つの抗原結合部位)、四価(4つの抗原結合部位)または多価結合タンパク質であり得る。DVDは、単一特異性であり得る、すなわち、1種の抗原(または1種の特異的エピトープ)と結合できるか、または多重特異性であり得る、すなわち、2種以上の抗原(すなわち、同一標的抗原分子の2種以上のエピトープまたは異なる標的抗原の2種以上のエピトープ)と結合できる。好ましいDVD結合タンパク質は、2つの重鎖DVDポリペプチドおよび2つの軽鎖DVDポリペプチドを含み、「DVD免疫グロブリン」または「DVD−Ig」と呼ばれる。したがって、このようなDVD−Ig結合タンパク質は、四量体であり、IgG分子を連想させるが、IgG分子よりも多くの抗原結合性の部位を提供する。したがって、四量体DVD−Ig分子の半分は各々、IgG分子の半分の一方を連想させ、重鎖DVDポリペプチドおよび軽鎖DVDポリペプチドを含むが、単一の抗原結合(bindind)ドメインを提供するIgG分子の1対の重鎖および軽鎖とは異なり、DVD−Igの1対の重鎖および軽鎖は、2以上の抗原結合部位を提供する。
【0109】
DVD−Ig結合タンパク質の各抗原結合部位は、ドナー(「親」)モノクローナル抗体に由来し、したがって、抗原結合部位あたりの抗原結合に関与する合計6つのCDRを有する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。したがって、2つの異なるエピトープ(すなわち、2つの異なる抗原分子の2つの異なるエピトープまたは同一の抗原分子の2つの異なるエピトープ)と結合するDVD−Ig結合タンパク質は、第1の親モノクローナル抗体に由来する抗原結合部位および第2の親モノクローナル抗体の抗原結合部位を含む。
【0110】
DVD−Ig結合分子の設計、発現および特性決定についての説明は、PCT公開WO2007/024715、米国特許第7,612,181号およびWuら、Nature Biotech.、25:1290−1297頁(2007年)に提供されている。このようなDVD−Ig分子の好ましい例は、構造式VD1−(X1)n−VD2−C−(X2)n(式中、VD1は、第1の重鎖可変ドメインであり、VD2は、第2の重鎖可変ドメインであり、Cは、重鎖定常ドメインであり、X1は、CH1ではないという条件でリンカーであり、X2は、Fc領域であり、nは、0または1であるが、好ましくは、1である)を含む重鎖;ならびに構造式VD1−(X1)n−VD2−C−(X2)n(式中、VD1は、第1の軽鎖可変ドメインであり、VD2は、第2の軽鎖可変ドメインであり、Cは、軽鎖定常ドメインであり、X1は、CH1ではないという条件でリンカーであり、X2は、Fc領域を含まず、nは、0または1であるが、好ましくは、1である)を含む軽鎖を含む。このようなDVD−Igは、2つのこのような重鎖および2つのこのような軽鎖を含むことがあり、ここで、各鎖は、可変領域の間に介在する定常領域を有さず、タンデムに連結された可変ドメインを含み、重鎖および軽鎖は、会合して、タンデムの機能性抗原結合部位を形成し、1対の重鎖および軽鎖は、別の対の重鎖および軽鎖と会合して、4つの機能性抗原結合部位を有する四量体結合タンパク質を形成し得る。別の例では、DVD−Ig分子は、可変ドメインの間に介在する定常領域を有さず、タンデムに連結された3つの可変ドメイン(VD1、VD2、VD3)を各々含む重鎖および軽鎖を含むことがあり、ここで、1対の重鎖および軽鎖は、会合して、3つの抗原結合部位を形成し得、1対の重鎖および軽鎖は、別の対の重鎖および軽鎖と会合して、6つの抗原結合部位を有する四量体結合タンパク質を形成し得る。
【0111】
好ましい実施形態では、本発明のDVD−Ig結合タンパク質は、その親モノクローナル抗体によって結合される同一標的分子と結合するだけでなく、1種以上のその親モノクローナル抗体の1種以上の望ましい特性も有する。好ましくは、このようなさらなる特性は、1種以上の親モノクローナル抗体の抗体パラメーターである。1種以上のその親モノクローナル抗体に由来するDVD−Ig結合タンパク質の一因であり得る抗体パラメーターとして、それだけには限らないが、抗原特異性、抗原親和性、効力、生物学的機能、エピトープ認識、タンパク質安定性、タンパク質溶解度、製造効率、免疫原性、薬物動態、バイオアベイラビリティ、組織交差反応性およびオルソロガス抗原結合が挙げられる。
【0112】
本発明のDVD−Ig結合タンパク質は、ヒトDLL4タンパク質の少なくとも1つのエピトープと結合する。本発明のDVD−Ig結合タンパク質の限定されない例として、ヒトDLL4の1つ以上のエピトープと結合するDVD−Ig結合タンパク質、ヒトDLL4のエピトープおよび別の種(例えば、マウス)のDLL4のエピトープと結合するDVD−Ig結合タンパク質ならびにヒトDLL4のエピトープおよび別の標的分子のエピトープ(例えば、VEGFR2またはVEGFR1)と結合するDVD−Ig結合タンパク質が挙げられる。
【0113】
結合タンパク質の「機能的抗原結合部位」は、標的抗原と結合できるものである。抗原結合部位の抗原結合親和性は、必ずしも、抗原結合部位が由来する親抗体と同程度には強くないが、抗原と結合する能力は、抗原と結合する抗体を評価するための種々の公知の方法のいずれか1種を使用して測定可能でなければならない。さらに、本明細書における多価抗体の抗原結合部位の各々の抗原結合親和性は、定量的に同一である必要はない。
【0114】
本明細書において、用語「アクセプター」および「アクセプター抗体」とは、1つ以上のフレームワーク領域(FRs)のアミノ酸配列の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または100%を提供するまたはコードする抗体または核酸配列を指す。いくつかの実施形態では、用語「アクセプター」とは、定常領域(複数可)を提供するまたはコードする抗体アミノ酸または核酸配列を指す。さらに別の実施形態では、用語「アクセプター」とは、1つ以上のフレームワーク領域および定常領域(複数可)を提供するまたはコードする抗体アミノ酸または核酸配列を指す。特定の実施形態では、用語「アクセプター」とは、1つ以上のフレームワーク領域のアミノ酸配列の少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または100%を提供するまたはコードするヒト抗体アミノ酸または核酸配列を指す。この実施形態と一致して、アクセプターは、ヒト抗体の1つ以上の特定の位置では生じない少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個または少なくとも10個のアミノ酸残基を含有し得る。アクセプターフレームワーク領域および/またはアクセプター定常領域(複数可)は、例えば、生殖系列抗体遺伝子、成熟した抗体遺伝子、機能性抗体(例えば、当技術分野で周知の抗体、開発中の抗体または市販の抗体)に由来するまたはそれらから得られる。
【0115】
本明細書において、用語「標準」残基とは、Chothiaら(両方とも参照により本明細書に組み込む、J.Mol.Biol.、196:901−917頁(1987年);Chothiaら、J.Mol.Biol.、227:799−817頁(1992年))によって定義される特定の標準CDR構造を規定するCDRまたはフレームワーク中の残基を指す。Chothiaらによれば、多数の抗体のCDRの重要な部分は、アミノ酸配列のレベルでの大きな多様性にもかかわらず、ほぼ同一のペプチド骨格立体構造を有する。各標準構造は、ループを形成するアミノ酸残基の連続セグメントの1セットのペプチド骨格ねじれ角を主に規定する。
【0116】
本明細書において、用語「ドナー」および「ドナー抗体」とは、1つ以上のCDRを提供する抗体を指す。好ましい実施形態では、ドナー抗体は、フレームワーク領域が得られるまたはそれに由来する抗体とは異なる種に由来する抗体である。ヒト化抗体との関連で、用語「ドナー抗体」とは、1つ以上のCDRを提供する非ヒト抗体を指す。
【0117】
本明細書において、用語「フレームワーク」または「フレームワーク配列」とは、CDRを引いた可変領域の残りの配列を指す。CDR配列の正確な定義は、種々のシステムによって決定できるので(例えば、上記参照のこと)、フレームワーク配列の意味は、相応に異なる解釈次第である。6つのCDR(軽鎖のCDR−L1、−L2および−L3ならびに重鎖のCDR−H1、−H2および−H3)はまた、軽鎖および重鎖上のフレームワーク領域を各鎖上の4つの小領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)に分け、これでは、CDR1はFR1およびFR2の間に位置し、CDR2は、FR2およびFR3の間、CDR3は、FR3およびFR4の間に位置する。FR1、FR2、FR3またはFR4として特定の小領域を規定するものではなく、その他のものによって呼ばれるフレームワーク領域は、単一の天然に存在する免疫グロブリン鎖の可変領域内の組み合わせたFRsを表す。本明細書において、FRは、4つの小領域のうち1つを表し、FRsは、フレームワーク領域を構成する4つの小領域のうち2以上を表す。
【0118】
当技術分野で公知の技術を使用して非ヒト抗体をヒト化するために、重鎖および軽鎖「アクセプター」フレームワーク配列(または簡単に、「アクセプター」配列)として使用され得るヒト重鎖および軽鎖フレームワーク(FR)配列は、当技術分野で公知である。本発明の一実施形態では、ヒト重鎖および軽鎖アクセプター配列は、V−base(ハイパーテキスト転送プロトコル://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/)などの公的に入手可能なデータベースに、または国際ImMunoGeneTics(登録商標)(IMGT(登録商標))情報システム(ハイパーテキスト転送プロトコル://imgt.cines.fr/texts/IMGTrepertoire/LocusGenes/)に列挙されたフレームワーク配列から選択される。以下の表3は、当技術分野で公知のヒト重鎖アクセプター配列の例の限定されないリストを提供する。以下の表4は、当技術分野で公知のヒト軽鎖アクセプター配列の例の限定されないリストを提供する。本発明の一実施形態では、ヒト重鎖および軽鎖アクセプター配列は、以下の表3および表4に記載されるアミノ酸配列から選択されるが、表3および4に列挙されないその他のヒト重鎖および軽鎖アクセプター配列も、本発明の抗体をヒト化するために使用され得る。
【0121】
一実施形態では、本発明のDLL4と結合するヒト化抗体の作製において使用するための、表3から得られる重鎖ヒトアクセプターフレームワーク配列として、VH3−7 FR1、VH3−7 FR2、VH3−7 FR3およびJH4 FR4アクセプター配列からなるセット;VH3コンセンサスFR1、VH3コンセンサスFR2、VH3コンセンサスFR3およびJH4 FR4アクセプター配列からなるセット;VH1−46 FR1、VH1−46 FR2、VH1−46 FR3およびJH4 FR4アクセプター配列からなるセット;VH3−30 FR1、VH3−30 FR2、VH3−30 FR3およびJH3 FR4アクセプター配列からなるセット;およびVH3コンセンサスFR1、VH3コンセンサスFR2、VH3コンセンサスFR3およびJH3 FR4アクセプター配列からなるセットが挙げられる。
【0122】
一実施形態では、本発明のDLL4と結合するヒト化抗体の作製において使用するための、表4から得られる軽鎖ヒトアクセプターフレームワーク配列として、O2 FR1、O2 FR2、O2 FR3およびJK2 FR4アクセプター配列からなるセットならびにL2 FR1、L2 FR2、L2 FR3およびJK2 FR4アクセプター配列からなるセットが挙げられる。
【0123】
一実施形態では、本発明のDLL4と結合するヒト化抗体の作製において使用するための、ヒトアクセプターフレームワーク配列のセットは、
重鎖フレームワーク−1(H−FR1):
E−V−Q−L−V−E−S−G−G−G−L−V−Q−P−G−G−S−L−R−L−S−C−A−A−S−G−F−T−F−X
30(配列番号143)[X
30は、S、RまたはGである];
重鎖フレームワーク−2(H−FR2):W−V−R−Q−A−P−G−K−G−L−E−W−V−A(配列番号144);
重鎖フレームワーク−3(H−FR3):
R−F−T−I−S−R−D−N−A−K−X
11−S−L−Y−L−Q−M−N−S−L−R−A−E−D−T−A−V−Y−Y−C−X
31−R(配列番号145)
[X
11は、NまたはSであり、
X
31は、AまたはSである];
重鎖フレームワーク−4(H−FR4):W−G−Q−G−T−L−V−T−V−S−S(配列番号146);
軽鎖フレームワーク−1(L−FR1):
D−I−Q−M−T−Q−S−P−S−S−L−S−A−S−V−G−D−R−V−T−I−T−C(配列番号147);
軽鎖フレームワーク−2(L−FR2):W−Y−Q−Q−K−P−G−K−X
9−P−K−L−L−I−X
15(配列番号148)
[X
9は、AまたはSであり、
X
15は、FまたはYである];
軽鎖フレームワーク−3(L−FR3):
G−V−P−S−R−F−S−G−S−G−S−G−T−D−X
15−T−L−T−I−S−S−L−Q−P−E−D−F−A−T−Y−Y−C(配列番号149)
[X
15は、FまたはSである];
軽鎖フレームワーク−4(L−FR4):F−G−Q−G−T−K−L−E−I−K(配列番号150)
からなる群から選択される1つ以上の(例えば、結合ドメインあたりいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つの)アクセプターフレームワーク配列を含む。
【0124】
好ましい実施形態では、本発明のDLL4と結合する抗体は、上記のH−FR1、H−FR2、H−FR3、H−FR−4、L−FR1、L−FR2、L−FR3およびL−FR4アクセプター配列からなるヒトアクセプター配列のセットを使用してヒト化される。
【0125】
本明細書において、用語「生殖系列抗体遺伝子」または「遺伝子断片」とは、特定の免疫グロブリンの発現のための遺伝子再配列および突然変異につながる成熟プロセスを受けていない、非リンパ系細胞によってコードされる免疫グロブリン配列を指す(例えば、Shapiroら、Crit.Rev.Immunol.、22(3):183−200頁(2002年);Marchalonisら、Adv.Exp.Med.Biol.、484:13−30頁(2001年)参照のこと)。本発明の種々の実施形態によって提供される利点の1つは、生殖系列抗体遺伝子は、成熟抗体遺伝子よりも、種において個体の特徴を示す必須アミノ酸配列構造を保存する可能性が高く、したがって、その種において治療上使用される場合に外来供給源に由来すると認識される可能性が低いという認識から生じる。
【0126】
本明細書において、用語「重要な残基」とは、抗体、特に、ヒト化抗体の結合特異性および/または親和性に対してより影響を与える可変領域内の特定の残基を指す。重要な残基として、それだけには限らないが、以下:CDRに隣接している残基、可能性あるグリコシル化部位(N−またはO−グリコシル化部位のいずれかであり得る)、希少残基、抗原と相互作用できる残基、CDRと相互作用できる残基、標準残基、重鎖可変領域および軽鎖可変領域間の接触残基、バーニアゾーン内の残基および可変重鎖CDR1のコチア定義および第1の重鎖フレームワークのカバット定義間で重複する領域中の残基のうち1種以上が挙げられる。
【0127】
本明細書において、「バーニア」ゾーンとは、FooteおよびWinter(J.Mol.Biol.、224:487−499頁(1992年))によって記載される、CDR構造を調整し、抗原に対する適合度を微調整し得るフレームワーク残基のサブセットを指す。バーニアゾーン残基は、CDRの根底をなす層を形成し、CDRの構造および抗体の親和性に対して影響を及ぼし得る。
【0128】
本明細書において、用語「中和する」とは、結合タンパク質が抗原と特異的に結合すると、抗原の生物活性に対抗することを指す。一実施形態では、中和する結合タンパク質は、抗原と結合し、その生物活性を少なくとも約20%、40%、60%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上低減する。
【0129】
用語「活性」は、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性、例えば、DLL4抗原と結合する抗hDLL4抗体および/または抗体の中和効力、もしくは、hDLL4とのその結合がhDLL4の生物活性を阻害する抗hDLL4抗体、例えば、PHA芽細胞増殖の阻害またはヒトNotch受容体結合アッセイもしくはPHA芽細胞インターフェロン−ガンマ誘導アッセイにおける受容体結合の阻害などの活性を含む。
【0130】
用語「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体と特異的に結合する任意のポリペプチド決定基を含む。特定の実施形態では、エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリルまたはスルホニルなどの分子の化学的に活性な表面配置を含み、特定の実施形態では、特定の3次元構造的特徴および/または特定の荷電特徴を有し得る。エピトープは、抗体によって結合される抗原の領域である。したがって、エピトープは、特異的結合パートナー上の相補的部位と結合することがわかっている抗原(またはその断片)の領域のアミノ酸残基からなる。抗原または抗原断片は、2以上のエピトープを含有し得る。したがって、この技術分野の当業者によって、抗体分子のどの「抗原結合部位」も抗原分子のエピトープと結合することおよびどの抗原分子も1つ、2つ、いくつかの、または多数のエピトープを有し得ることは理解される。さらに、この技術分野の当業者によって、抗原分子に対する2種の独立に単離された抗体が、同一のエピトープで、または抗原分子上の2種の異なるエピトープで結合し得ることは理解される。
【0131】
特定の実施形態では、抗体は、タンパク質および/または高分子の複雑な混合物中のその標的抗原を認識する場合に、抗原と特異的に結合するといわれる。抗体は、抗体が交差競合する(一方がもう一方の結合または調節効果を妨げる)場合に「同一のエピトープと結合する」といわれる。さらに、エピトープの構造定義(重複する、同様の、同一の)は、情報を与えるものであるが、機能的定義は、それらが構造的(結合)および機能的(調節、競合)パラメーターを包含するので、より関連があることが多い。
【0132】
本明細書において、用語「表面プラズモン共鳴」とは、例えば、BIAcore(登録商標)システム(BIAcore International AB、a GE Healthcare company、Uppsala、Sweden and Piscataway、New Jersey、US)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出によってリアルタイム生体特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。さらなる説明のためには、Jonssonら、Ann.Biol.Clin.、51:19−26頁(1993年);Jonssonら、BioTechniques、11:620−627頁(1991年);Johnssonら、J.Mol.Recognit.、8:125−131頁(1995年);およびJohnssonら、Anal.Biochem.、198:268−277頁(1991年)参照のこと。
【0133】
用語「K
on」とは、本明細書において、当技術分野で公知の、結合パートナー/同族のパートナー(例えば、抗体/抗原)複合体を形成するための、結合タンパク質(例えば、抗体)の同族のパートナー(例えば、抗原)との会合の結合速度(on rate)定数を指すものとする。「K
on」はまた、本明細書において同義的に使用される、用語「結合速度定数」または「k
a」によって知られている。抗体のその標的抗原との結合速度または抗体および抗原間の複合体形成の速度を示すこの値はまた、方程式:
抗体 (「Ab」) + 抗原(「Ag」)→Ab−Ag
によって示される。
【0134】
本明細書において、用語「K
off」とは、当技術分野で公知の、結合タンパク質(例えば、抗体)の、例えば、抗体/抗原複合体からの解離の解離速度定数を指すものとする。「K
off」はまた、本明細書において同義的に使用される、用語「解離速度定数」または「k
d」によって知られる。この値は、以下の方程式によって示される、抗体のその標的抗原からの解離速度またはAb−Ag複合体の遊離抗体および抗原への経時的な分離を示す:
Ab+Ag←Ab−Ag
【0135】
本明細書において同義的に使用される、用語「平衡解離定数」または「K
D」は、平衡での力価測定において、または解離速度定数(K
off)を結合速度定数(K
on)によって除することによって得られる値を指す。結合速度定数、解離速度定数および平衡解離定数は、抗体の抗原との結合親和性を表すために使用される。結合および解離速度定数を測定する方法は、当技術分野で周知である。蛍光ベースの技術を使用することで、平衡にある生理学的バッファー中の試料を調べるための高い感受性および能力が提供される。BIAcore(登録商標)表面プラズモン共鳴(生体分子相互作用分析)アッセイなどのその他の実験アプローチおよび機器(例えば、BIAcore International AB、a GE Healthcare company、Uppsala、Swedenから入手可能な機器)が使用され得る。さらに、Sapidyne Instruments(Boise、Idaho)から入手可能である、KinExA(登録商標)(Kinetic Exclusion Assay)アッセイも使用され得る。
【0136】
「標識」および「検出可能な標識」とは、例えば、特異的結合対のメンバー、例えば、抗体および分析物間の反応を検出可能にするために、特異的結合パートナー、例えば、抗体または抗体によって結合された分析物と結合している部分を意味する。そのように標識された、特異的結合パートナー、例えば、抗体または分析物は、「検出可能に標識された」と呼ばれる。したがって、本明細書において、用語「標識された結合タンパク質」とは、結合タンパク質の同定を提供する標識が組み込まれたタンパク質を指す。一実施形態では、標識は、目視によるまたは機器による手段、例えば、放射標識されたアミノ酸の組み込みまたは印をつけたアビジン(例えば、蛍光マーカーまたは光学的方法もしくは比色法によって検出され得る酵素活性を含有するアビジンもしくはストレプトアビジン)によって検出され得るビオチニル部分のポリペプチドとの結合によって、検出可能であるシグナルを生じることができる検出可能なマーカーである。ポリペプチドのための標識の例として、それだけには限らないが、以下:放射性同位体また放射性核種(例えば、
3H
、14C
、35S、
90Y、
99Tc、
111In、
125I、
131I、
177Lu、
166Hoおよび
153Sm);色素原、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミンおよびランタニドホスホール(lanthanide phosphors))、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);化学発光マーカー;ビオチニル基;第2のリポーター(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメインおよびエピトープタグ)によって認識される所定のポリペプチドエピトープ;およびガドリニウムキレートなどの磁性物質が挙げられる。イムノアッセイのために使用されることの多い標識の代表的な例として、光を生じる部分、例えば、アクリジニウム化合物および蛍光を生じる部分、例えば、フルオレセインが挙げられる。その他の標識は、当技術分野で公知であり、本明細書に記載される。この関連で、部分自体が検出可能に標識されない場合もあるが、さらに別の部分との反応の際に検出可能になる場合もある。「検出可能に標識された」の使用は、後者のタイプの検出可能な標識を包含するものとする。
【0137】
用語「抗体コンジュゲート」とは、治療用または細胞傷害性薬剤などの第2の化学部分と化学的に連結された抗体などの結合タンパク質を指す。用語「薬剤」とは、本明細書において、化合物、化合物の混合物、生体高分子または生体物質から作られている抽出物を示すよう使用される。好ましくは、治療用または細胞傷害性薬剤として、それだけには限らないが、百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシンならびにその類似体または相同体が挙げられる。
【0138】
本明細書において、用語「結晶」および「結晶化された」とは、結晶の形態で存在する結合タンパク質(例えば、抗体)またはその抗原結合部分と指す。結晶は、物質の固体状態の1種の形態であり、非晶質固体状態または液晶状態などのその他の形態とは別個である。結晶は、原子、イオン、分子(例えば、抗体などのタンパク質)または分子集合体(例えば、Fab/抗原複合体を含めた抗原/抗体複合体)の、規則正しい、反復する3次元の配置からなる。これらの3次元配置は、この分野で十分に理解されている特定の数学的関係に従って配列される。結晶中で反復される基本単位またはビルディングブロックは、非対称単位と呼ばれる。所与の、十分に定義された結晶学的対称と一致する配列中の非対称単位の反復は、結晶の「単位格子」を提供する。3次元すべてにおける規則正しい並進による単位格子の反復は結晶を提供する。Giegeら、In Crystallization of Nucleic Acids and Proteins、a Practical Approach、第2版、(DucruixおよびGiege編)(Oxford University Press、New York、1999年)、第1章、1−16頁参照のこと。
【0139】
用語「ポリヌクレオチド」とは、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドいずれかまたはいずれかの種類のヌクレオチドの修飾された形態の2つ以上のヌクレオチドのポリマー形態を意味する。この用語は、DNAの一本鎖および二本鎖形態を含む。
【0140】
用語「単離されたポリヌクレオチド」とは、その起源によって、ポリヌクレオチド(例えば、ゲノム、cDNAの、または合成起源の、またはそれらのいくつかの組合せ)を意味するものとし、「単離されたポリヌクレオチド」は、天然に「単離されたポリヌクレオチド」が、それとともに見られるポリヌクレオチドのすべてまたは一部と会合しておらず;天然には連結していないポリヌクレオチドと作動可能に連結され;またはより長い配列の一部として天然には生じない。
【0141】
用語「ベクター」は、連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すものとする。ベクターの1つの種類は、「プラスミド」であり、その中にさらなるDNAセグメントがライゲーションされ得る環状の二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターは、ウイルスベクターであり、これでは、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノム中にライゲーションされ得る。特定のベクターは、それらが導入されている宿主細胞において自己複製できる(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。その他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノム中に組み込まれることができ、それによって、宿主ゲノムとともに複製される。さらに、特定のベクターは、それらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を指示できる。このようなベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」(または簡単、「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドが、ベクターの最もよく使用される形態であるので同義的に使用され得る。しかし、本発明は、同等の機能を果たす、ウイルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)などの発現ベクターのこのようなその他の形態を含むものとする。ベクターのRNA版(RNAウイルスベクターを含める)も本発明において用途があり得る。
【0142】
用語「作動可能に連結された」とは、記載された成分が、それらがその意図される方法で機能するのを可能にする関係にある近位を指す。コード配列に「作動可能に連結された」制御配列は、コード配列の発現が、制御配列に適合する条件下で達成されるような方法でライゲーションされる。「作動可能に連結された」配列は、対象とする遺伝子と連続している発現制御配列、トランスで作用する、すなわち、対象とする遺伝子とは異なる核酸分子上に位置する発現制御配列ならびに同一核酸分子上に位置するが、対象とする遺伝子からある距離をおく発現制御配列を含む。本明細書において、用語「発現制御配列」とは、それらがライゲーションされているコード配列の発現およびプロセシングを達成するために必須であるポリヌクレオチド配列を指す。発現制御配列として、適当な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;および望ましい場合には、タンパク質分泌を増強する配列が挙げられる。このような制御配列の性質は、宿主生物に応じて異なり;原核生物では、このような制御配列は、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位および転写終結配列を含み;真核生物では、一般に、このような制御配列は、プロモーターおよび転写終結配列を含む。用語「制御配列」は、その存在が、発現およびプロセシングにとって不可欠である成分を含むものとし、また、その存在が有利であるさらなる成分、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列も含み得る。
【0143】
「形質転換」とは、それによって外因性核酸(例えば、DNA分子)が宿主細胞に入る任意のプロセスを指す。形質転換は、当技術分野で周知の種々の方法を使用して自然条件または人口条件下で起こり得る。形質転換は、原核細胞または真核細胞の宿主細胞中に外来核酸配列を挿入するための任意の公知の方法に依存し得る。方法は、形質転換されている宿主細胞に基づいて選択され、それだけには限らないが、細胞膜を超えるプラスミドの取り込み、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポフェクションおよび微粒子銃を挙げることができる。このような「形質転換された」細胞は、挿入されたDNAが、自己複製プラスミドとして、または宿主染色体の一部としてのいずれかで複製できる安定に形質転換された細胞を含む。それらはまた、挿入されたDNAまたはRNAを限定された期間、一時的に発現する細胞を含む。
【0144】
用語「組換え宿主細胞」(または簡単に「宿主細胞」)とは、外因性DNAが導入されている細胞を指すものとする。一実施形態では、限定されない例として、米国特許第7,262,028号に記載される宿主細胞などの宿主細胞は、抗体をコードする2以上(例えば、複数)の核酸を含む。このような用語は、特定の対象細胞だけでなくこのような細胞の後代をも指すものとする。突然変異または環境の影響のいずれかによって後継の世代では特定の修飾が起こり得るので、このような後代は、実際は、親細胞と同一でない場合もあるが、本明細書において、依然として用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。一実施形態では、宿主細胞は、生物界のいずれかから選択される原核細胞および真核細胞を含む。別の実施形態では、真核細胞は、原生生物、真菌、植物および動物細胞を含む。別の実施形態では、宿主細胞として、それだけには限らないが、大腸菌のような原核生物種;哺乳動物細胞株、例えば、CHO、HEK 293、COS、NS0、SP2およびPER.C6;昆虫細胞株Sf9;および真菌細胞種、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が挙げられる。
【0145】
標準技術が、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成および組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のために使用され得る。酵素反応および精製技術は、製造業者の使用説明書に従って、または当技術分野でよく達成されるように、または本明細書に記載されるように実施され得る。前述の技術および手順は、当技術分野で周知の従来の方法に従って、本明細書を通じて引用され論じられる種々の一般的参考文献およびより特定の参考文献に記載されるように概して実施され得る。例えば、Sambrookら、Molecular Clonig:A Laboratory Manual、第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、1989年)参照のこと。
【0146】
当技術分野で公知の「トランスジェニック生物」は、導入遺伝子を含有する細胞を有する生物を指し、ここで、生物(または生物の先祖)に導入された導入遺伝子は、生物では天然に発現されないポリペプチドを発現する。「導入遺伝子」は、トランスジェニック生物が発達する細胞のゲノム中に安定に、作動可能に組み込まれ、トランスジェニック生物の1種以上の細胞種または組織においてコードされた遺伝子産物の発現を指示するDNA構築物である。
【0147】
用語「調節する(regulate)」および「調節する(modulate)」は、本明細書において、同義的に使用され、対象とする分子の活性(例えば、hDLL4の生物活性)における変化または変更を指す。調節(modulation)は、対象とする分子の特定の活性または機能の規模の増大または減少であり得る。分子の例示的活性および機能として、それだけには限らないが、結合特徴、酵素活性、細胞受容体活性化およびシグナル変換が挙げられる。
【0148】
相応して、本明細書において、用語「モジュレーター」とは、対象とする分子の活性または機能(例えば、hDLL4の生物活性)を変化または変更できる化合物である。例えば、モジュレーターは、モジュレーターの不在下で観察された活性または機能の規模と比較して、分子の特定の活性または機能の規模の増大または減少を引き起こし得る。特定の実施形態では、モジュレーターは、分子の少なくとも1種の活性または機能の規模を減少させる阻害剤である。例示的阻害剤として、それだけには限らないが、タンパク質、ペプチド、抗体、ペプチボディー(peptibodies)、炭水化物または小さい有機分子が挙げられる。ペプチボディー(peptibodies)は記載されている。例えば、PCT公開番号WO01/83525参照のこと。
【0149】
本明細書において、用語「アゴニスト」とは、対象とする分子と接触させると、アゴニストの不在下で観察された活性または機能の規模と比較して、分子の特定の活性または機能の規模の増大を引き起こすモジュレーターを指す。対象とする特定のアゴニストとして、それだけには限らないが、Notch−シグナル伝達経路のメンバー、DLL4ポリペプチドおよび核酸、炭水化物またはDLL4と結合する任意のその他の分子を挙げることができる。
【0150】
本明細書において、用語「アンタゴニスト」または「阻害剤」とは、対象とする分子と接触させると、アンタゴニストの不在下で観察された活性または機能の規模と比較して、分子の特定の活性または機能の規模の減少を引き起こすモジュレーターを指す。対象とする特定のアンタゴニストとして、DLL4、特に、ヒトDLL4(hDLL4)の生物学的活性または免疫学的活性を遮断または調節するものが挙げられる。hDLL4のアンタゴニストおよび阻害剤として、それだけには限らないが、タンパク質、核酸、炭水化物またはhDLL4および/またはげっ歯類DLL4と結合する任意のその他の分子を挙げることができる。
【0151】
本明細書において、用語「有効量」とは、障害もしくは1種もしくは複数のその症状の重篤度および/もしくは期間を低減もしくは寛解させる;障害の前進を阻害もしくは防止する;障害の退縮を引き起こす;障害と関連している1種もしくは複数の症状の再発、発生、発症もしくは進行を阻害もしくは防止する;障害を検出する;または別の治療(例えば、予防薬または治療薬)の予防的効果または治療的効果(複数可)を増強もしくは改善するのに十分である治療の量を指す。
【0152】
「患者」および「被験体」は、本明細書において同義的に使用され得、霊長類(例えば、ヒト、サルおよびチンパンジー)、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウスおよびクジラ)を含めた哺乳動物、トリ(例えば、アヒルまたはガチョウ)およびサメなどの動物を指す。好ましくは、患者または被験体は、疾患、障害または状態について治療または評価されているヒト;疾患、障害または状態のリスクのあるヒト;疾患、障害または状態を有するヒト;および/または疾患、障害または状態について治療されているヒトなどのヒトである。より好ましくは、患者または被験体は、癌またはその他の疾患について治療または評価されており、これでは、既存の異常なDLL4発現が、癌またはその他の疾患を支持し、癌またはその他の疾患を治療するためにDLL4活性の阻害または混乱が望まれる。
【0153】
本明細書において、用語「試料」とは、その広い意味で使用される。本明細書において、「生体試料」とは、それだけには限らないが、生物または以前は生きていた物に由来する物質の任意の量を含む。このような生物として、それだけには限らないが、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ウサギおよびその他の動物が挙げられる。このような物質として、それだけには限らないが、血液、(例えば、全血)、血漿、血清、尿、羊水、滑液、内皮細胞、白血球、単球、その他の細胞、臓器、組織、骨髄、リンパ節および脾臓が挙げられる。
【0154】
「成分」、「複数の成分」および「少なくとも1種の成分」とは、一般に、本明細書に記載される方法および当技術分野で公知のその他の方法に従って、試験試料、例えば、患者尿、血清または血漿試料をアッセイするためにキット中に含まれ得る、捕獲抗体、検出またはコンジュゲート抗体、対照、校正器、一連の校正器、感度パネル、容器、バッファー、希釈液、塩、酵素、酵素の補助因子、検出試薬、前処理試薬/溶液、基質(例えば、溶液として)、停止溶液などを指す。したがって、本開示内容との関連で、「少なくとも1種の成分」、「成分」および「複数の成分」は、ポリペプチドまたは上記のその他の分析物、例えば、固相支持体上に抗分析物(例えば、抗ポリペプチド)抗体との結合などによって場合によって固定化されている、ポリペプチドなどの分析物を含む組成物を含み得る。いくつかの成分は、溶液中にあり、またはアッセイにおいて使用するために再構成するために凍結乾燥され得る。
【0155】
「リスク」とは、現在生じているまたは将来のある時点で生じている特定の事象可能性または見込みを指す。「リスクの層化」とは、医師が、患者を、特定の疾患、障害または状態を発症する低、中、高または最高のリスクに分類するのを可能にする既知の臨床リスク因子のアレイを指す。
【0156】
特異的結合対(例えば、抗原またはその断片および抗体またはその抗原結合断片)のメンバー間の相互作用との関連で「特異的」および「特異性」とは、相互作用の選択的反応性を指す。語句「特異的に結合する」および類似の語句は、抗体(またはその抗原結合断片)などの結合タンパク質の、対象とする分子(またはその断片)と特異的に結合し、その他の実体とは特異的に結合しない能力を指す。
【0157】
「特異的結合パートナー」とは、特異的結合対のメンバーである。特異的結合対は、化学的または物理的手段によって互いに特異的に結合する2種の異なる分子を含む。したがって、抗原および抗体特異的結合対に加えて、その他の特異的結合対として、ビオチンおよびアビジン(またはストレプトアビジン)、炭水化物およびレクチン、相補的ヌクレオチ配列、エフェクターおよび受容体分子、補助因子および酵素、酵素阻害剤および酵素などが挙げられる。さらに、特異的結合対として、元の特異的結合メンバーの類似体であるメンバー、例えば、分析物類似体を挙げることができる。免疫反応特異的結合メンバーとして、単離されているものであろうと、組換えによって製造されたものであろうと、抗原、抗原断片およびモノクローナルおよびポリクローナル抗体を含めた抗体、ならびにその複合体、断片および変異体(変異体の断片を含む)が挙げられる。
【0158】
本明細書において、「変異体」とは、アミノ酸の付加(例えば、挿入)、欠失または保存的置換によって、アミノ酸配列において所与のポリペプチド(例えば、DLL4ポリペプチドまたは抗DLL4抗体)とは異なるが、所与のポリペプチドの生物活性を保持するポリペプチドを意味する(例えば、変異体DLL4は、変異体DLL4が、野生型DLL4の元の抗体結合部位(エピトープ)を保持する場合には抗DLL4抗体との結合について野生型DLL4と競合し得る)。アミノ酸の保存的置換、すなわち、アミノ酸を、同様の特性(例えば、親水性および荷電領域の程度および分布)の異なるアミノ酸と置換することは、当技術分野で、通常、微小変化を含むと認識されている。これらの微小変化は、幾分かは、当技術分野で理解されるように、アミノ酸の疎水性親水性指数を考慮することによって同定され得る(例えば、Kyteら、J.Mol.Biol.、157:105−132頁(1982年))。アミノ酸の疎水性親水性指数は、その疎水性および電荷を考慮することに基づいている。同様の疎水性親水性指数のアミノ酸は置換され、タンパク質機能を依然として保持し得るということは当技術分野で公知である。一態様では、±2の疎水性親水性指数を有するアミノ酸は置換される。アミノ酸の親水性はまた、生物学的機能を保持するタンパク質をもたらす置換を明らかにするために使用され得る。ペプチドとの関連でアミノ酸の親水性を考慮することによって、そのペプチドの最大の局所平均親水性、抗原性および免疫原性と十分に相関すると報告されている有用な尺度を算出することが可能となる(例えば、米国特許第4,554,101号参照のこと)。当技術分野で理解されるように、同様の親水性値を有するアミノ酸の置換は、生物活性、例えば、免疫原性を保持するペプチドをもたらし得る。一態様では、置換は、互いに±2内の親水性値を有するアミノ酸を用いて実施される。アミノ酸の疎水性指数および親水性値の両方とも、アミノ酸の特定の側鎖によって影響を受ける。その知見と一致して、疎水性、親水性、電荷、大きさおよびその他の特性によって明らかにされるように、生物学的機能と適合するアミノ酸置換は、アミノ酸、特に、それらのアミノ酸の側鎖の相対類似性に左右されると理解される。「変異体」はまた、タンパク質分解、リン酸化またはその他の翻訳後修飾などによって異なって処理されているが、その生物活性または抗原反応性、例えば、DLL4と結合する能力を保持するポリペプチドまたはその断片を説明するために使用され得る。本明細書において、「変異体」の使用は、文脈によって別段に異なることが指示されない限り、変異体の断片を包含するものとする。
【0159】
本明細書において、用語「試料」とは、その最大の意味で使用される。本明細書において、「生体試料」とは、それだけには限らないが、生物または以前は生きていた物に由来する物質の任意の量を含む。このような生物として、それだけには限らないが、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ウサギおよびその他の動物が挙げられる。このような物質として、それだけには限らないが、血液、血清、尿、滑液、細胞、臓器、組織、骨髄、リンパ節および脾臓が挙げられる。
【0160】
I.ヒトDLL4と結合する抗体
本発明の一態様は、高親和性、遅い解離速度および/または高い中和能を有するDLL4と結合する、単離されたラットモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。本発明の別の態様は、DLL4と結合するキメラ抗体を提供する。別の態様では、本発明は、DLL4と結合する、CDRグラフト化抗体またはその抗原結合部分を提供する。本発明の別の態様は、DLL4と結合する、ヒト化抗体またはその抗原結合部分を提供する。一実施形態では、抗体またはその部分は、単離された抗体または単離されたその部分である。別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、抗DLL抗体を中和している。有利なことに、DLL4と結合するこのような抗体またはその抗原結合部分は、個体(ヒトまたはその他の哺乳動物)に投与され得る治療薬として用途がある。好ましくは、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、抗DLL4および/または抗VEGFR2抗体を中和している。
【0161】
A.抗DLL4抗体を作製する方法。
本発明の抗体は、当技術分野で公知のいくつかの技術のうちいずれかによって作製され得る。本発明のDLL4モノクローナル抗体を得るために使用され得る種々の技術の態様が以下に記載される。
【0162】
1.ハイブリドーマ技術を使用する抗DLL4モノクローナル抗体。
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマの使用、組換えおよびファージディスプレイ技術またはそれらの組合せを含めた、当技術分野で公知のさまざまな技術を使用して調製され得る。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野で公知であり、例えば、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、第2版、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、1988年);Hammerlingら、In Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas、(Elsevier、New York、1981年)に教示されるものを含めたハイブリドーマ法を使用して製造され得る。本明細書において、用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術によって製造される抗体に制限されないということも留意されたい。用語「モノクローナル抗体」とは、任意の真核生物クローン、原核生物クローンまたはファージクローンを含めた単一クローンに由来する抗体を指すのであって、それによって製造される方法を指すのではない。
【0163】
一実施形態では、本発明は、モノクローナル抗体を作製する方法ならびに本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養することを含む方法によって製造される抗体を提供し、ここで、好ましくは、ハイブリドーマは、DLL4で免疫処置された動物、例えば、ラットまたはマウスから単離された脾細胞を、骨髄腫細胞と融合すること、次いで、本発明のポリペプチドと結合できる抗体を分泌するハイブリドーマクローンの融合から得られたハイブリドーマをスクリーニングすることによって作製される。手短には、ラットは、DLL4抗原を用いて免疫処置され得る(以下の実施例を参照のこと)。好ましい実施形態では、DLL4抗原は、免疫応答を刺激するようアジュバントとともに投与される。このようなアジュバントとして、完全または不完全フロイントアジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)またはISCOM(免疫刺激複合体)が挙げられる。このようなアジュバントは、ポリペプチドを局所沈着に隔離することによって、それが迅速分散することから保護し得る、またはそれらは、宿主を、マクロファージおよび免疫系のその他の成分にとって走化性である因子を分泌するよう刺激する物質を含有し得る。好ましくは、ポリペプチドが投与される場合には、免疫処置スケジュールは、数週間にわたって広がっているポリペプチドの2回以上の投与を含むが、ポリペプチドの単回投与も使用され得る。
【0164】
DLL4抗原を用いて動物を免疫処置した後、抗体および/または抗体を製造する細胞が動物から得られ得る。抗DLL4抗体を含有する血清が、動物を出血させるまたは屠殺することによって動物から得られる。動物から得られると血清が使用され得、免疫グロブリン画分が血清から得られ得るまたは抗DLL4抗体が血清から精製され得る。この方法で得られた血清または免疫グロブリンは、ポリクローナルであり、したがって、不均一な特性のアレイを有する。
【0165】
免疫応答が検出されると、例えば、抗原DLL4に対して特異的な抗体を、ラット血清において検出し、ラット脾臓を回収し、脾細胞を単離する。次いで、周知の技術によって脾細胞を任意の適した骨髄腫細胞、例えば、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、Virginia、US)から入手可能である細胞株SP20から得た細胞に融合する。ハイブリドーマを選択し、限界希釈によってクローニングする。次いで、ハイブリドーマクローンを、DLL4と結合できる抗体を分泌する細胞について当技術分野で公知の方法によってアッセイする。一般に、高レベルの抗体を含有する腹水を、陽性ハイブリドーマクローンを用いてラットを免疫処置することによって作製できる。
【0166】
別の実施形態では、抗体を産生する不死化されたハイブリドーマは、免疫処置された動物から調製され得る。免疫処置後、当技術分野で周知であるように、動物を屠殺し、脾臓B細胞を不死化された骨髄腫細胞と融合する。例えば、HarlowおよびLane、前掲参照のこと。好ましい実施形態では、骨髄腫細胞は、免疫グロブリンポリペプチドを分泌しない(非分泌細胞株)。融合し、抗生物質選択した後ハイブリドーマを、DLL4またはその部分またはDLL4を発現する細胞を使用してスクリーニングする。好ましい実施形態では、初期スクリーニングは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA)、好ましくは、ELISAを使用して実施される。ELISAスクリーニングの例は、PCT公開番号WO00/37504に提供されている。
【0167】
抗DLL4抗体を産生するハイブリドーマを選択し、クローニングし、以下にさらに論じられる、頑強なハイブリドーマ増殖、高い抗体産生および望ましい抗体特徴と含めた望ましい特徴についてさらにスクリーニングする。ハイブリドーマは、培養され、同系動物において、免疫系を欠く動物、例えば、ヌードマウスにおいてインビボで、またはインビトロで細胞培養において拡大され得る。ハイブリドーマを選択、クローニングおよび拡大する方法は、当業者に周知である。
【0168】
好ましい実施形態では、ハイブリドーマは、本明細書に記載されるラットハイブリドーマである。別の実施形態では、ハイブリドーマは、マウス、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシまたはウマなどの非ヒト、非ラット種において産生される。さらに別の好ましい実施形態では、ハイブリドーマは、ヒトハイブリドーマであり、これでは、ヒト非分泌性骨髄腫が、抗DLL4抗体を発現するヒト細胞と融合される。
【0169】
特定のエピトープを認識する抗体断片は、公知の技術によって作製され得る。例えば、本発明のFabおよびF(ab’)
2断片は、パパイン(2つの同一のFab断片を製造するよう)またはペプシン(F(ab’)
2断片を製造するよう)などの酵素を使用する免疫グロブリン分子のタンパク質分解切断によって製造され得る。IgG分子のF(ab’)
2断片は、軽鎖(可変軽鎖および定常軽鎖領域を含有する)、重鎖のCH1ドメインおよび親IgG分子のジスルフィド形成ヒンジ領域の両方を含む、より大きな(「親」)IgG分子の2つの抗原結合部位を保持する。したがって、F(ab’)
2断片は、依然として、親IgG分子のような抗原分子を架橋できる。
【0170】
2.SLAMを使用する抗DLL4モノクローナル抗体。
本発明の別の態様では、組換え抗体は、米国特許第5,627,052号;PCT公開番号WO92/02551;およびBabcookら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:7843−7848頁1996年)に記載される、選択されたリンパ球抗体法(selected lymphocyte antibody method)(SLAM)と当技術分野で呼ばれる手順を使用して、単一の、単離されたリンパ球から作製される。この方法では、I.A.1の節(上記)に記載される、対象とする抗体を分泌する単細胞、例えば、免疫処置された動物のいずれか1種から得られたリンパ球は、抗原特異的溶血プラークアッセイを使用してスクリーニングされ、これでは、抗原DLL4、DLL4のサブユニットまたはその断片が、ビオチンなどのリンカーを使用してヒツジ赤血球にカップリングされ、DLL4に対して特異性を有する抗体を分泌する単細胞を同定するために使用される。対象とする抗体を分泌する細胞を同定した後、重鎖および軽鎖可変領域cDNAが逆転写酵素−PCR(RT−PCR)によって細胞からレスキューされ、次いで、これらの可変領域が、COSまたはCHO細胞などの哺乳動物宿主細胞において、適当な免疫グロブリン定常領域(例えば、ヒト定常領域)との関連で発現され得る。インビボで選択されたリンパ球から得られた増幅された免疫グロブリン配列を用いてトランスフェクトされた宿主細胞は、インビトロでさらなる分析および選択を、例えば、トランスフェクトされた細胞をパニングし、DLL4に対する抗体を発現する細胞を単離することによって受け得る。増幅された免疫グロブリン配列は、インビトロ親和性成熟法などによってインビトロでさらに操作され得る。例えば、PCT公開番号WO97/29131およびPCT公開番号WO00/56772参照のこと。
【0171】
3.トランスジェニック動物を使用する抗DLL4モノクローナル抗体。
本発明の別の実施形態では、DLL4抗原を用いて非ヒト動物を免疫処置することによって、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の一部またはすべてを含む抗体が産生される。一実施形態では、非ヒト動物は、XENOMOUSE(登録商標)トランスジェニックマウス、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の大きな断片を含み、マウス抗体産生に欠陥のある操作されたマウス株である。例えば、Greenら、Nature Genetics、7:13−21頁(1994年)および米国特許第5,916,771号;同5,939,598号;同5,985,615号;同5,998,209号;同6,075,181号;同6,091,001号;同6,114,598号;および同6,130,364号参照のこと。PCT公開番号WO91/10741;WO94/02602;WO96/34096;WO96/33735;WO98/16654;WO98/24893;WO98/50433;WO99/45031;WO99/53049;WO00/09560;およびWO00/37504も参照のこと。XENOMOUSE(登録商標)トランスジェニックマウスは、十分なヒト抗体の成人様ヒトレパートリーを産生し、抗原特異的ヒトモノクローナル抗体を作製する。XENOMOUSE(登録商標)トランスジェニックマウスは、ヒト重鎖遺伝子座およびx軽鎖遺伝子座のメガベースサイズの、生殖系列立体配置YAC断片の導入によってヒト抗体レパートリーのおよそ80%を含有する。その開示内容を参照により本明細書に組み込む、Mendezら、Nature Genetics、15:146−156頁(1997年)、GreenおよびJakobovits、J.Exp.Med.、188:483−495頁(1998年)参照のこと。
【0172】
4.組換え抗体ライブラリーを使用する抗DLL4モノクローナル抗体。
本発明の抗体を作製するためにインビトロ法も使用され得、ここで、所望のDLL4結合特異性を有する抗体を同定するために、抗体ライブラリーがスクリーニングされる。このような組換え抗体ライブラリーをスクリーニングする方法は、当技術分野で周知であり、例えば、米国特許第5,223,409号(Ladnerら);PCT公開番号WO92/18619(Kangら);PCT公開番号WO91/17271(Dowerら);PCT公開番号WO92/20791(Winterら);PCT公開番号WO92/15679(Marklandら);PCT公開番号WO93/01288(Breitlingら);PCT公開番号WO92/01047(McCaffertyら);PCT公開番号WO92/09690(Garrardら);Fuchsら、Bio/Tecnology、9:1369−1372頁(1991年);Hayら、Hum.Antibod.Hybridomas、3:81−85頁(1992年);Huseら、Science、246:1275−1281頁(1989年);McCaffertyら、Nature、348:552−554頁(1990年);Griffithsら、EMBO J.、12:725−734頁(1993年);Hawkinsら、J.Mol.Biol.、226:889−896頁(1992年);Clacksonら、Nature、352:624−628頁(1991年);Gramら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:3576−3580頁(1992年);Garrardら、Bio/Technology、9:1373−1377頁(1991年);Hoogenboomら、Nucl.Acids Res.、19:4133−4137頁(1991年);Barbasら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:7978−7982頁(1991年);米国特許出願公開第2003/0186374号;およびPCT公開番号WO97/29131に記載される方法が挙げられ、各々の開示内容を参照により本明細書に組み込む。
【0173】
組換え抗体ライブラリーは、DLL4またはDLL4の部分を用いて免疫処置された被験体に由来するものであり得る。または、組換え抗体ライブラリーは、ヒトDLL4を用いて免疫処置されていないヒト被験体から得たヒト抗体ライブラリーなど、天然被験体すなわち、DLL4を用いて免疫処置されていないものに由来し得る。本発明の抗体は、ヒトDLL4を含むペプチドを用いて組換え抗体ライブラリーをスクリーニングし、それによってDLL4を認識する抗体を選択することによって選択される。このようなスクリーニングおよび選択を実施する方法は、前述の段落における参考文献に記載されるなど、当技術分野で周知である。特定のK
off速度定数でヒトDLL4から解離するものなど、DLL4に対して特定の結合親和性を有する本発明の抗体を選択するために、表面プラズモン共鳴の当技術分野で公知の方法が使用されて、所望のK
off速度定数を有する抗体が選択され得る。特定のIC
50を有するものなど、hDLL4に対して特定の中和活性を有する本発明の抗体を選択するために、DLL4活性の阻害を評価するための当技術分野で公知の標準法が使用され得る。
【0174】
一態様では、本発明は、ヒトDLL4と結合する単離された抗体またはその抗原結合部分に関する。好ましくは、抗体は、中和抗体である。種々の実施形態では、抗体は、組換え抗体またはモノクローナル抗体である。
【0175】
例えば、本発明の抗体はまた、当技術分野で公知の種々のファージディスプレイ法を使用して作製され得る。ファージディスプレイ法では、機能的抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を保持するファージ粒子の表面にディスプレイされる。このようなファージは、レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはマウス)から発現される抗原結合ドメインをディスプレイするために利用され得る。対象とする抗原と結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原を用いて、例えば、標識された抗原または固体表面もしくはビーズに結合もしくは捕獲された抗原を使用して選択または同定され得る。これらの方法において使用されるファージは、通常、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換えによって融合された、Fab、Fvまたはジスルフィドによって安定化されたFv抗体ドメインを有するファージから発現されるfdおよびM13結合ドメインを含む糸状ファージである。本発明の抗体を作製するために使用され得るファージディスプレイ法の例として、Brinkmannら、J.Immunol.Methods、182:41−50頁(1995年);Amesら、J.Immunol.Methods、184:177−186頁(1995年);Kettleboroughら、Eur.J.Immunol.、24:952−958頁(1994年);Persicら、Gene、187:9−18頁(1997年);Burtonら、Advances in Immunology、57:191−280頁(1994年);PCT公開番号WO92/01047;PCT公開番号WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;および米国特許第5,698,426号;同5,223,409号;同5,403,484号;同5,580,717号;同5,427,908号;同5,750,753号;同5,821,047号;同5,571,698号;同5,427,908号;同5,516,637号;同5,780,225号;同5,658,727号;同5,733,743号;および同5,969,108号に開示されるものが挙げられる。
【0176】
上記の参考文献に記載されるように、ファージ選択後、ファージから抗体コーディング領域が単離され、ヒト抗体または任意のその他の所望の抗原結合断片を含む全抗体を作製するために使用され、例えば、以下に詳細に記載される哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母および細菌を含めた任意の所望の宿主において発現され得る。例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)
2断片を組換え製造するための技術も、PCT公開番号WO92/22324;Mullinaxら、BioTechniques、12(6):864−869頁(1992年);Sawaiら、Am.J.Reprod.Immunol.、34:26−34頁(1995年);およびBetterら、Science、240:1041−1043頁(1988年)に開示されるものなど、当技術分野で公知の方法を使用して使用され得る。一本鎖Fvおよび抗体を製造するために使用され得る技術の例として、米国特許第4,946,778号および同5,258,498号;Hustonら、Methods in Enzymology、203:46−88頁(1991年);Shuら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:7995−7999頁(1993年);およびSkerraら、Science、240:1038−1041頁(1988年)に記載されるものが挙げられる。
【0177】
ファージディスプレイによる組換え抗体ライブラリーのスクリーニングの代替として、大きなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングするための当技術分野で公知のその他の方法論が、本発明の抗体の同定に適用され得る。代替発現系の1つの種類として、PCT公開番号WO98/31700(SzostakおよびRoberts)に、ならびにRobertsおよびSzostak、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:12297−12302頁(1997年)に記載される、組換え抗体ライブラリーが、RNA−タンパク質融合物として発現されるものがある。この系では、ピューロマイシン、ペプチジルアクセプター抗生物質を3’末端に保持する合成mRNAのインビトロ翻訳によって、mRNAおよびそれがコードするペプチドまたはタンパク質間の共有結合融合物が作製される。したがって、特異的mRNAは、コードされたペプチドまたはタンパク質、例えば、抗体またはその部分の特性、例えば、抗体またはその部分の二重特異性抗原との結合に基づいて、mRNAの複雑な混合物(例えば、コンビナトリアルライブラリー)から濃縮され得る。このようなライブラリーのスクリーニングから回収される抗体またはその部分をコードする核酸配列は、上記の組換え手段によって(例えば、哺乳動物宿主細胞において)発現され得、さらに、突然変異が、最初に選択された配列(複数可)中に導入されているmRNA−ペプチド融合物のスクリーニングのさらなるラウンドによって、または上記の組換え抗体のインビトロでの親和性成熟のためのその他の方法によってのいずれかで、さらなる親和性成熟に付され得る。この方法論の好ましい例は、実施例(下記)において使用されるPRO融合物ディスプレイ技術である。
【0178】
別のアプローチでは、本発明の抗体はまた、当技術分野で公知の酵母ディスプレイ法を使用して作製され得る。酵母ディスプレイ法では、抗体ドメインを酵母細胞壁に繋ぎ止め、それらを酵母の表面上にディスプレイするために遺伝学的方法が使用される。特に、このような酵母は、レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはマウス)から発現される抗原結合ドメインをディスプレイするために利用され得る。本発明の抗体を作製するために使用され得る酵母ディスプレイ法の例として、参照により本明細書に組み込む米国特許第6,699,658号(Wittrupら)に開示されるものが挙げられる。
【0179】
B.組換えDLL4抗体の製造
本発明の抗体は、当技術分野で公知のいくつかの技術のいずれかによって製造され得る。例えば、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクター(複数可)が、標準技術によって宿主細胞中にトランスフェクトされている宿主細胞からの発現。用語「トランスフェクション」の種々の形態は、外因性DNAを原核生物または真核生物の宿主細胞に導入するためによく使用されるさまざまな技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなどを包含するものとする。原核生物または真核生物の宿主細胞のいずれかにおいて、本発明の抗体を発現することが可能であるが、真核細胞における抗体の発現が好ましく、哺乳動物宿主細胞においてが最も好ましいが、これは、このような真核細胞(特に、哺乳動物細胞)は、原核細胞よりも、適切に折り畳まれた免疫学的に活性な抗体を組み立て、分泌する可能性が高いためである。
【0180】
本発明の組換え抗体を発現するための例示的哺乳動物宿主細胞として、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、KaufmanおよびSharp、J.Mol.Biol.、159:601−621頁(1982年)に記載されたDHFR選択マーカーとともに使用される、UrlaubおよびChasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:4216−4220頁(1980年)に記載されたdhfr−CHO細胞を含む)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入される場合、抗体は、宿主細胞における抗体の発現、より好ましくは、宿主細胞が増殖される培養培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間、宿主細胞を培養することによって製造される。抗体は、標準タンパク質精製法を使用して培養培地から回収され得る。
【0181】
宿主細胞はまた、機能的抗体断片、例えば、Fab断片またはscFv分子を製造するために使用され得る。上記の手順に対する変法は、本発明の範囲内にあるということは理解されよう。例えば、本発明の抗体の軽鎖および/または重鎖のいずれかの機能的断片をコードするDNAを用いて、宿主細胞をトランスフェクトすることが望ましいものであり得る。組換えDNA技術はまた、対象とする抗原との結合にとって必須ではない、軽鎖および重鎖のいずれかまたは両方をコードするDNAの一部またはすべてを除去するためにも使用され得る。このような末端切断型DNA分子から発現された分子もまた、本発明の抗体によって包含される。さらに、標準化学的架橋法によって本発明の抗体を第2の抗体に架橋することによって、一方の重鎖および一方の軽鎖が本発明の抗体であり(すなわち、ヒトDLL4と結合する)もう一方の重鎖および軽鎖がヒトDLL4以外の抗原に対して特異的である二機能性抗体も製造され得る。
【0182】
抗体またはその抗原結合部分を組換え発現するための好ましい系では、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターが、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションによってdhfr−CHO細胞に導入される。組換え発現ベクター内では、抗体重鎖および軽鎖遺伝子は、各々、この遺伝子の高レベルの転写を駆動するためにCMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントに作動可能に連結されている。組換え発現ベクターはまた、メトトレキサート選択/増幅を使用してベクターでトランスフェクトされているCHO細胞の選択を可能にするDHFR遺伝子を保持する。選択された形質転換体宿主細胞は、抗体重鎖および軽鎖の発現を可能にするよう培養され、無傷の抗体が培養培地から回収される。組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培養培地から抗体を回収するために、標準分子生物学技術が使用される。さらに、本発明は、本発明の宿主細胞を、本発明の組換え抗体が合成されるまで適した培養培地中で培養することによって、本発明の組換え抗体を合成する方法を提供する。この方法は、培養培地から組換え抗体を単離することをさらに含み得る。
【0183】
1.抗DLL4抗体。
ヒトDLL4と結合する単離されたラットモノクローナル抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、表9において、クローン38H12、1A11、37D10、32C7、14G1、14A11および15D6について示されている(以下の実施例4参照のこと)。本明細書に記載された単離された抗DLL4抗体CDR配列は、本発明に従って単離され、由来するCDR配列を含むポリペプチドを含むDLL4結合タンパク質のファミリーおよびその親和性成熟クローンを確立する。モノクローナル抗体およびその親和性成熟誘導体の可変領域およびCDRの配列は、表9、11、16、20および21に列挙されている。ヒトDLL4に対して好ましいDLL4結合活性および/または中和活性を有する本発明の結合タンパク質のCDRを作製および選択するために、本発明の結合タンパク質を作製し、それらの結合タンパク質のDLL4結合および/または中和特徴を評価するための当技術分野で公知の標準法が使用され得、これとして、それだけには限らないが、本明細書に具体的に記載されるものが挙げられる。
【0184】
本明細書に記載される抗DLL4抗体クローンの重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)のCDRのアミノ酸配列のアラインメントに基づいて、本発明は、ヒトDLL4と結合できる抗原結合ドメインを含むDLL4結合タンパク質を提供し、前記抗原結合ドメインは、下記に定義される6つのCDR、すなわち、CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3、CDR−L1、CDR−L2およびCDRL−3のうち少なくとも1つ以上を含む:
CDR−H1は、
X
1−X
2−X
3−X
4−X
5(配列番号151)
[X
1は、N、HまたはYであり;
X
2は、Fであり;
X
3は、Pであり;
X
4は、Mであり;
X
5は、AまたはSである];
配列番号157の残基31−35(CDR−H1 38H12);
配列番号161の残基31−35(CDR−H1 37D10);
配列番号163の残基31−35(CDR−H1 32C7);
配列番号165の残基31−35(CDR−H1 14G1);
配列番号167の残基31−35(CDR−H1 14A11);
配列番号169の残基31−35(CDR−H1 15D6);
配列番号171の残基31−35(CDR−H1 VH.1 1A11);
配列番号172の残基31−35(CDR−H1 VH.1a 1A11);
配列番号173の残基31−35(CDR−H1 VH.1b 1A11);
配列番号174の残基31−35(CDR−H1 VH.2a 1A11);
配列番号179の残基31−35(CDR−H1 VH.1 38H12);
配列番号180の残基31−35(CDR−H1 VH.1A 38H12);
配列番号181の残基31−35(CDR−H1 VH.1b 38H12);
配列番号182の残基31−35(CDR−H1 VH.2a 38H12);
配列番号187の残基31−35(CDR−H1 h1A11VH.1);
配列番号188の残基31−35(CDR−H1 h1A11.A6);
配列番号189の残基31−35(CDR−H1 h1A11.A8);
配列番号190の残基31−35(CDR−H1 h1A11.C6);
配列番号191の残基31−35(CDR−H1 h1A11.A11);
配列番号192の残基31−35(CDR−H1 h1A11.B5);
配列番号193の残基31−35(CDR−H1 h1A11.E12);
配列番号194の残基31−35(CDR−H1 h1A11.G3);
配列番号195の残基31−35(CDR−H1 h1A11.F5);および
配列番号196の残基31−35(CDR−H1 h1A11.H2)
からなる群から選択され、
CDR−H2は、
X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−X
8−X
9−X
10−X
11−X
12−X
13−X
14−X
15−X
16−X
17(配列番号152)
[X
1は、TまたはSであり;
X
2は、Iであり;
X
3は、Sであり;
X
4は、SまたはGであり;
X
5は、Sであり;
X
6は、Dであり;
X
7は、G、A、D、SまたはEであり;
X
8は、TまたはWであり;
X
9は、T、PまたはAであり;
X
10は、Y、S、TまたはNであり;
X
11は、YまたはIであり;
X
12は、RまたはGであり;
X
13は、Dであり;
X
14は、Sであり;
X
15は、Vであり;
X
16は、Kであり;
X
17は、Gである];
配列番号157の残基50−66(CDR−H2 38H12);
配列番号161の残基50−68(CDR−H2 37D10);
配列番号163の残基50−66(CDR−H2 32C7);
配列番号165の残基50−66(CDR−H2 14G1);
配列番号167の残基50−66(CDR−H2 14A11);
配列番号169の残基50−66(CDR−H2 15D6);
配列番号171の残基50−66(CDR−H2 VH.1 1A11);
配列番号172の残基50−66(CDR−H2 VH.1a 1A11);
配列番号173の残基50−66(CDR−H2 VH.1b 1A11);
配列番号174の残基50−66(CDR−H2 VH.2a 1A11);
配列番号179の残基50−66(CDR−H2 VH.1 38H12);
配列番号180の残基50−66(CDR−H2 VH.1A 38H12);
配列番号181の残基50−66(CDR−H2 VH.1b 38H12);
配列番号182の残基31−35(CDR−H1 VH.2a 38H12);
配列番号187の残基50−66(CDR−H2 h1A11VH.1);
配列番号188の残基50−66(CDR−H2 h1A11.A6);
配列番号189の残基50−66(CDR−H2 h1A11.A8);
配列番号190の残基50−66(CDR−H2 h1A11.C6);
配列番号191の残基50−66(CDR−H2 h1A11.A11);
配列番号192の残基50−66(CDR−H2 h1A11.B5);
配列番号193の残基50−66(CDR−H2 h1A11.E12);
配列番号194の残基50−66(CDR−H2 h1A11.G3);
配列番号195の残基50−66(CDR−H2 h1A11.F5);および
配列番号196の残基50−66(CDR−H2 h1A11.H2)
からなる群から選択され、
CDR−H3は、
X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−X
8−X
9(配列番号153)
[X
1は、Gであり;
X
2は、Yであり;
X
3は、Yであり;
X
4は、Nであり;
X
5は、Sであり;
X
6は、Pであり;
X
7は、Fであり;
X
8は、Aであり;
X
9は、Y、FまたはSである];
配列番号157の残基99−107(CDR−H3 38H12);
配列番号161の残基101−111(CDR−H3 37D10);
配列番号163の残基99−105(CDR−H3 32C7);
配列番号165の残基99−105(CDR−H3 14G1);
配列番号167の残基99−110(CDR−H3 14A11);
配列番号169の残基99−110(CDR−H3 15D6);
配列番号171の残基99−107(CDR−H3 VH.1 1A11);
配列番号172の残基99−107(CDR−H3 VH.1a 1A11);
配列番号173の残基99−107(CDR−H3 VH.1b 1A11);
配列番号174の残基99−107(CDR−H3 VH.2a 1A11);
配列番号179の残基99−107(CDR−H3 VH.1 38H12);
配列番号180の残基99−107(CDR−H3 VH.1A 38H12);
配列番号181の残基99−107(CDR−H2 VH.1b 38H12);
配列番号182の残基99−107(CDR−H1 VH.2a 38H12);
配列番号187の残基99−107(CDR−H3 h1A11VH.1);
配列番号188の残基99−107(CDR−H3 h1A11.A6);
配列番号189の残基99−107(CDR−H3 h1A11.A8);
配列番号190の残基99−107(CDR−H3 h1A11.C6);
配列番号191の残基99−107(CDR−H3 h1A11.A11);
配列番号192の残基99−107(CDR−H3 h1A11.B5);
配列番号193の残基99−107(CDR−H3 h1A11.E12);
配列番号194の残基99−107(CDR−H3 h1A11.G3);
配列番号195の残基99−107(CDR−H3 h1A11.F5);および
配列番号196の残基99−107(CDR−H3 h1A11.H2)
からなる群から選択され、
CDR−L1は、
X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−X
8−X
9−X
10−X
11(配列番号154)
[X
1は、Rであり;
X
2は、Aであり;
X
3は、Sであり;
X
4は、EまたはQであり;
X
5は、DまたはEであり;
X
6は、Iであり;
X
7は、YまたはWであり;
X
8は、S、I、Y、NまたはRであり;
X
9は、Nであり;
X
10は、Lであり;
X
11は、Aである];
配列番号158の残基24−34(CDR−L1 38H12);
配列番号162の残基24−34(CDR−L1 37D10);
配列番号164の残基24−34(CDR−L1 32C7);
配列番号166の残基24−34(CDR−L1 14G1);
配列番号168の残基23−37(CDR−L1 14A11);
配列番号170の残基23−37(CDR−L1 15D6);
配列番号175の残基24−34(CDR−L1 VL.1 1A11);
配列番号176の残基24−34(CDR−L1 VL.1a 1A11);
配列番号177の残基24−34(CDR−L1 VL.1b 1A11);
配列番号178の残基24−34(CDR−L1 VL.2a 1A11);
配列番号183の残基24−34(CDR−L1 VL.1 38H12);
配列番号184の残基24−34(CDR−L1 VL.1a 38H12);
配列番号185の残基24−34(CDR−L1 VL.1b 38H12);
配列番号186の残基24−34(CDR−L1 VL.2a 38H12);
配列番号197の残基24−34(CDR−L1 h1A11VL.1);
配列番号198の残基24−34(CDR−L1 h1A11.A2);
配列番号199の残基24−34(CDR−L1 h1A11.A12);
配列番号200の残基24−34(CDR−L1 h1A11.A7);
配列番号201の残基24−34(CDR−L1 h1A11.B4);
配列番号202の残基24−34(CDR−L1 h1A11.B5);および
配列番号203の残基24−34(CDR−L1 h1A11.E12)
からなる群から選択され、
CDR−L2は、
X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7(配列番号155)
[X
1は、Dであり;
X
2は、Tであり;
X
3は、NまたはSであり;
X
4は、N、D、S、I、YまたはVであり;
X
5は、Lであり;
X
6は、Aであり;
X
7は、Dである];
配列番号158の残基50−56(CDR−L2 38H12);
配列番号162の残基50−56(CDR−L2 37D10);
配列番号164の残基50−56(CDR−L2 32C7);
配列番号166の残基50−56(CDR−L2 14G1);
配列番号168の残基53−59(CDR−L2 14A11);
配列番号170の残基53−59(CDR−L2 15D6);
配列番号175の残基50−56(CDR−L2 VL.1 1A11);
配列番号176の残基50−56(CDR−L2 VL.1a 1A11);
配列番号177の残基50−56(CDR−L2 VL.1b 1A11);
配列番号178の残基50−56(CDR−L2 VL.2a 1A11);
配列番号183の残基50−56(CDR−L2 VL.1 38H12);
配列番号184の残基50−56(CDR−L2 VL.1a 38H12);
配列番号185の残基50−56(CDR−L2 VL.1b 38H12);
配列番号186の残基50−56(CDR−L2 VL.2a 38H12);
配列番号197の残基50−56(CDR−L2 h1A11VL.1);
配列番号198の残基50−56(CDR−L2 h1A11.A2);
配列番号199の残基50−56(CDR−L2 h1A11.A12);
配列番号200の残基50−56(CDR−L2 h1A11.A7);
配列番号201の残基50−56(CDR−L2 h1A11.B4);
配列番号202の残基50−56(CDR−L2 h1A11.B5);および
配列番号203の残基50−56(CDR−L2 h1A11.E12)
からなる群から選択され、
CDR−L3は、
X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−X
8−X
9(配列番号156)
[X
1は、Qであり;
X
2は、Qであり;
X
3は、Yであり;
X
4は、N、DまたはTであり;
X
5は、N、YまたはWであり;
X
6は、YまたはVであり;
X
7は、Pであり;
X
8は、Pであり;
X
9は、Tである]
配列番号158の残基89−97(CDR−L3 38H12);
配列番号162の残基89−97(CDR−L3 37D10);
配列番号164の残基89−97(CDR−L3 32C7);
配列番号166の残基89−98(CDR−L3 14G1);
配列番号168の残基92−100(CDR−L3 14A11);
配列番号170の残基92−100(CDR−L3 15D6);
配列番号175の残基89−97(CDR−L3 VL.1 1A11);
配列番号176の残基89−97(CDR−L3 VL.1a 1A11);
配列番号177の残基89−97(CDR−L3 VL.1b 1A11);
配列番号178の残基89−97(CDR−L3 VL.2a 1A11);
配列番号183の残基89−97(CDR−L3 VL.1 38H12);
配列番号184の残基89−97(CDR−L3 VL.1a 38H12);
配列番号185の残基89−97(CDR−L3 VL.1b 38H12);
配列番号186の残基89−97(CDR−L3 VL.2a 38H12);
配列番号197の残基89−97(CDR−L3 h1A11VL.1);
配列番号198の残基89−97(CDR−L3 h1A11.A2);
配列番号199の残基89−97(CDR−L3 h1A11.A12);
配列番号200の残基89−97(CDR−L3 h1A11.A7);
配列番号201の残基89−97(CDR−L3 h1A11.B4);
配列番号202の残基89−97(CDR−L3 h1A11.B5);
配列番号203の残基89−97(CDR−L3 h1A11.E12)
からなる群から選択される。
【0185】
好ましくは、DLL4結合タンパク質は、上記の少なくとも1つのCDR、より好ましくは、上記の任意の2つのCDR、より好ましくは、上記の任意の3つのCDR、さらにより好ましくは、上記の任意の4つのCDR、いっそうより好ましくは、上記の任意の5つのCDR、最も好ましくは、上記の任意の6つのCDR(すなわち、上記のCDR−H1、CDR−H2、CDR−H3、CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3)を含む。3つのCDRを含む特に好ましいDLL4結合タンパク質は、上記のCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含む。
【0186】
好ましくは、上記の1個以上のCDRを含むDLL4結合タンパク質は、ヒト(「hu」、「h」)DLL4およびまたマウス(「murine」、「mu」)DLL4、カニクイザル(「cynomolgus」、「cyno」)DLL4およびラットDLL4からなる群から選択される1つ以上のDLL4タンパク質と結合する。
【0187】
好ましくは、上記の1つ以上のCDRを含むDLL4結合タンパク質は、ヒト(「hu」)DLL4およびまたカニクイザル(「cynomolgus」、「cyno」)DLL4と結合する。
【0188】
2.抗DLL4キメラ抗体。
キメラ抗体は、マウスモノクローナル抗体およびヒト免疫グロブリン定常領域に由来する可変領域を有する抗体などの抗体の異なる部分が異なる動物種に由来する分子である。例えば、Morrison、Science、229:1202−1207頁(1985年);Oiら、BioTechniques、4:214頁(1986年);Gilliesら、J.Immunol.Methods、125:191−202頁(1989年);米国特許第5,807,715号;同4,816,567号;および同4,816,397号参照のこと。さらに、適当な生物活性のヒト抗体分子に由来する遺伝子と一緒に、適当な抗原特異性のマウス抗体分子から遺伝子をスプライシングすることによって「キメラ抗体」を製造するために開発された技術が使用され得る。例えば、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる、Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851−6855頁(1984年);Neubergerら、Nature、312:604−608頁(1984年);Takedaら、Nature、314:452−454頁(1985年)参照のこと。
【0189】
3.抗DLL4CDRグラフト化抗体。
元の抗体の特性を調節するためにCDRグラフト化抗体を作製するために、本発明の単離された抗DLL4抗体CDR配列が使用され得る。このような特性として、それだけには限らないが、結合速度論、親和性、生物活性、種交差反応性、分子交差反応性、エピトープ、物理化学的特性、薬物動態特性、薬力学的特性または薬理学的特性が挙げられる。CDRグラフト化抗体は、ヒト抗体または非ヒト霊長類抗体に由来する重鎖および軽鎖可変領域配列を含み、ここで、VHおよび/またはVLのCDR領域のうち1つ以上が元の抗DLL4抗体のCDR配列で置換されている。任意のヒトまたは非ヒト霊長類抗体に由来するフレームワーク配列は、CDRグラフト化のための鋳型として働き得る。しかし、このようなフレームワーク上の直鎖置換は、抗原に対する結合親和性の幾分かの喪失につながる。元のヒト抗体に対して、より相同なヒトまたはその他の種の抗体であるほど、CDRを新規ヒトフレームワークまたは非ヒト霊長類フレームワークと組み合わせることが、親和性またはその他の特性を低減し得るCDR中の歪みを導入する可能性が低い。したがって、CDRは別として、ヒト可変領域フレームワークを置換するよう選択されている可変フレームワークが、ヒト抗体可変領域フレームワークと少なくとも30%の配列同一性を有することが好ましい。ヒト可変領域フレームワークを置換するよう選択されている可変領域フレームワークが、CDRは別として、ヒト抗体可変領域フレームワークと少なくとも40%の配列同一性を有することがより好ましい。ヒト可変フレームワークを置換するよう選択されている可変領域フレームワークが、CDRは別として、ヒト抗体可変領域フレームワークと少なくとも50%の配列同一性を有することがより好ましい。ヒト可変フレームワークを置換するよう選択されている可変領域フレームワークが、CDRは別として、ヒト抗体可変領域フレームワークと少なくとも60%の配列同一性を有することがより好ましい。新規ヒトまたは非ヒト霊長類および元のヒト可変領域フレームワークが、CDRは別として、少なくとも70%の配列同一性を有することがより好ましい。新規ヒトまたは非ヒト霊長類および元のヒト可変領域フレームワークが、CDRは別として、少なくとも75%の配列同一性を有することがさらにより好ましい。新規ヒトまたは非ヒト霊長類および元のヒト可変領域フレームワークが、CDRは別として、少なくとも80%の配列同一性を有することが最も好ましい。元のヒト抗DLL4抗体のCDRをグラフトするために高度に相同なヒトまたは非ヒト霊長類フレームワークを使用してでさえ、得られたグラフト化抗体は、やはり、抗原に対する結合親和性をある程度失い得る。この場合には、親和性を取り戻すために、新規にグラフト化された抗体の対応する部分への、元の抗体の少なくとも1つ以上の重要なフレームワーク残基置換を含むことが必要である。このような重要な残基は、
CDRに隣接する残基;
グリコシル化部位残基;
希少残基;
ヒトDLL4と相互作用できる残基;
標準残基;
重鎖可変領域と軽鎖可変領域間の接触残基;
バーニアゾーン内の残基;および
コチア(Chothia)によって定義される可変重鎖CDR1およびカバット(Kabat)によって定義される第1の重鎖フレームワーク間で重複する領域中の残基
からなる群から選択され得る。
【0190】
4.抗DLL4ヒト化抗体。
本発明の組成物が、ヒト化抗体を作製するための必要条件を排除しながら、ヒト化DLL4抗体が、本発明の組成物を使用して調製され得る。ヒト化抗体は、非ヒト種に由来する1つ以上の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワーク領域を有する所望の抗原と結合する非ヒト種抗体に由来する抗体分子である。既知ヒトIg配列は、ワールドワイドウェブ(www.)によって利用可能なウェブサイト、例えば、ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi;atcc.org/phage/hdb.html;sciquest.com/;abcam.com/;antibodyresource.com/onlinecomp.html;public.iastate.edu/.about.pedro−/research_tools.html;mgen.uniheidelberg.de/SD/IT/IT.html;whfreeman.com/immunology−/CH05/kuby05.htm;library.thinkquest.org/12429/Immune/Antibody.html;hhmi.org/grants/lectures/1996/vlab/;path.−cam.ac.uk/.about.mrc7/mikeimages.html;antibodyresource.com/;mcb.harvard.edu/BioLinks−/Immunology.html;immunologylink.com/;pathbox.wustl.edu/.about.hcenter/index.html;bio−tech.ufl.edu/.about.hcl/;pebio.com/pa/340913−/340913.html;nal.usda.gov/awic/pubs/antibody/;m.ehimeu.acjp/.about.yasuhito−/Elisa.html;biodesign.com/table.asp;icnet.uk/axp/facs/davies/lin−ks.html;biotech.ufl.edu−/.about.fccl/protocol.html;isac−net.org/sites_geo.html;aximtl.imt.uni−marburg.de/.about.rek/AEP−Start.html;baserv.uci.kun.nl/.about.jraats/linksl.html;recab.uni−hd.de/immuno.bme.nwu.edu/;mrc−cpe.cam.ac.uk/imt−doc/public/INTRO.html;ibt.unam.mx/−vir/V_mice.html;imgt.cnusc.fr:8104/;biochem.ucl.ac.uk/.about.martin/abs/index.html;anti−body.bath.ac.uk/;abgen.cvm.tamu.edu/lab/wwwabgen.html;unizh.ch/.about.honegger/AHO−seminar/Slide01.html;cryst.bbk.ac.uk/.about.ubcg07s/;nimr.mrc.ac.uk/CC/ccaewg/ccaewg.htm;path.cam.ac.uk/.about.mrc7/humanisation/TAHHP.html;ibt.unam.mx/vir/structure/stat_aim.−html;biosci.missouri.edu/smithgp/index.html;cryst.bioc.cam.ac.uk/.about.fmolina/Webpages−/Pept/spottech.html;jerini.de/frroducts.htm;patents.ibm.com/ibm.htmlに開示されている。参照により本明細書に各々、全文が組み込まれる、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、U.S. Dept. Health (1983年)。免疫原性を低減するまたは結合、親和性、結合速度、解離速度、アビディティー、特異性、半減期もしくは当技術分野で公知の任意のその他の適した特徴を低減、増強もしくは改変するために、このような移入された配列が使用され得る。
【0191】
ヒトフレームワーク領域中のフレームワーク残基は、抗原結合を変更、好ましくは、改善するためにCDRドナー抗体に由来する対応する残基で置換され得る。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法によって、例えば、抗原結合にとって重要であるフレームワーク残基を同定するためのCDRおよびフレームワーク残基の相互作用のモデリングおよび特定の位置の通常のフレームワーク残基を同定するための配列比較によって同定される(例えば、参照によってその全文が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,585,089号(Queenら);Riechmannら、Nature、332:323−327頁(1988年)参照のこと)。3次元免疫グロブリンモデルはよく利用され、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列のあり得る3次元立体構造を例示し、示すコンピュータプログラムが利用可能である。これらのディスプレイの観察によって、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のあり得る役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンのその抗原と結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、FR残基は、標的抗原(複数可)に対する親和性の増大などの所望の抗体特徴が達成されるようにコンセンサス配列および移入配列から選択され、組み合わされ得る。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を及ぼすことに直接に、最も実質的に関与する。抗体は、それだけには限らないが、それに列挙される参考文献を含め、参照によって各々全文が組み込まれる、Jonesら、Nature、321:522−525頁(1986年);Verhoeyenら、Science、239:1534−1536頁(1988年)、Simsら、J.Immunol.、151:2296−2308頁(1993年);ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.、196:901−917頁(1987年)、Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4285−4289頁(1992年);Prestaら、J.Immunol.、151:2623−2632頁(1993年)、Padlan、E.A.、Molecular Immunology、28(4/5):489−498頁(1991年);Studnickaら、Protein Engineering、7(6):805−814頁(1994年);Roguskaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91:969−973頁(1994年);PCT公開番号WO91/09967、WO99/06834(PCT/US98/16280)、WO97/20032(PCT/US96/18978)、WO92/11272(PCT/US91/09630)、WO92/03461(PCT/US91/05939)、WO94/18219(PCT/US94/01234)、WO92/01047(PCT/GB91/01134)、WO93/06213(PCT/GB92/01755)、WO90/14443、WO90/14424およびWO90/14430;欧州公開番号EP0592106、EP0519596およびEP0239400;米国特許第5,565,332号;同5,723,323号;同5,976,862号;同5,824,514号;同5,817,483号;同5,814,476号;同5,763,192号;同5,723,323号;同5,766,886号;同5,714,352号;同6,204,023号;同6,180,370号;同5,693,762号;同5,530,101号;同5,585,089号;同5,225,539号;および同4,816,567号に記載されるものなど当技術分野で公知の種々の技術を使用してヒト化され得る。
【0192】
C.抗体および抗体を産生する細胞株の製造。
好ましくは、本発明の抗DLL4抗体は、例えば、当技術分野で公知のいくつかのインビトロおよびインビボアッセイのいずれか1種によって評価される、腫瘍血管新生活性を低減または中和する高い能力を示す。例えば、これらの抗体は、少なくとも約10
−7Mまたは約10
−8Mの範囲のDLL4におけるIC
50値で、Notch−シグナル伝達経路においてDLL4相互作用を中和する。好ましくは、本発明の抗DLL4抗体はまた、DLL4活性を低減または中和する高い能力を示す。
【0193】
好ましい実施形態では、単離された抗体またその抗原結合部分は、ヒトDLL4と結合し、これでは、抗体もしくはその抗原結合部分が、表面プラズモン共鳴によって決定される約0.1s
−1以下のK
off速度定数でヒトDLL4から解離するまたは約1×10
−6M以下のIC
50でDLL4および/もしくはヒトDLL4活性を阻害する。または、抗体またはその抗原結合部分は、表面プラズモン共鳴によって決定される約1×10
−2s
−1以下のK
off速度定数でヒトDLL4から解離し得るまたは約1×10
−7M以下のIC
50でヒトDLL4および/もしくはヒトDLL4活性を阻害し得る。または、抗体もしくはその抗原結合部分は、表面プラズモン共鳴によって決定される、約1×10
−3s
−1以下のK
off速度定数でヒトDLL4から解離し得るまたは約1×10
−8M以下のIC
50でヒトDLL4を阻害し得る。または、抗体もしくはその抗原結合部分は、表面プラズモン共鳴によって決定される約1×10
−4s
−1以下のK
off速度定数でヒトDLL4から解離し得るまたは約1×10
−9M以下のIC
50でDLL4活性を阻害し得る。または、抗体もしくはその抗原結合部分は、表面プラズモン共鳴によって決定される約1×10
−5s
−1以下のK
off速度定数でヒトDLL4から解離し得るまたは約1×10
−10M以下のIC
50でDLL4および/またはヒトDLL4活性を阻害し得る。または、抗体もしくはその抗原結合部分は、表面プラズモン共鳴によって決定される約1×10
−5s
−1以下のK
off速度定数でヒトDLL4から解離し得るまたは約1×10
−11M以下のIC
50でDLL4および/またはヒトDLL4活性を阻害し得る。
【0194】
特定の実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域などの重鎖定常領域を含む。好ましくは、重鎖定常領域は、IgG1重鎖定常領域またはIgG4重鎖定常領域である。さらに、抗体は、軽鎖定常領域、κ軽鎖定常領域またはλ軽鎖定常領域のいずれかを含み得る。好ましくは、抗体は、κ軽鎖定常領域を含む。または、抗体部分は、例えば、Fab断片または一本鎖Fv断片であり得る。
【0195】
抗体エフェクター機能を変更するためのFc部分中のアミノ酸残基の置換は、当技術分野で公知である(米国特許第5,648,260号および同5,624,821号(Winterら)参照のこと)。抗体のFc部分は、いくつかの重要なエフェクター機能、例えば、サイトカイン誘導、ADCC、食作用、補体依存性細胞毒性(CDC)ならびに抗体および抗原抗体複合体の半減期/クリアランス速度を媒介する。いくつかの場合には、これらのエフェクター機能は、治療用抗体にとって望ましいものであるが、別の場合には、治療目的によって、不必要またはさらに有害であることもある。特定のヒトIgGアイソタイプ、特に、IgG1およびIgG3は、それぞれ、FcγRsおよび補体C1qとの結合によって、ADCCおよびCDCを媒介する。新生児Fc受容体(FcRn)は、抗体の循環半減期を決定する重要な成分である。さらに別の実施形態では、抗体のエフェクター機能が変更されるよう抗体の定常領域、例えば、抗体のFc領域において少なくとも1個のアミノ酸残基が置換される。
【0196】
一実施形態は、本発明の抗体または抗体部分が、誘導体化されるまたは別の機能的分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質)に連結されている、標識された結合タンパク質を提供する。例えば、本発明の標識された結合タンパク質は、本発明の抗体または抗体部分を(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合による会合またはその他によって)抗体または抗体部分の、別の分子(例えば、ストレプトアビジンコア領域またはポリヒスチジンタグ)との会合を媒介し得る、1つ以上のその他の分子実体、例えば、別の抗体(例えば、二特異性抗体またはダイアボディー)、検出可能な薬剤、細胞傷害性薬剤、医薬品および/またはタンパク質またはペプチドと機能的に連結することによって誘導体化され得る。
【0197】
それを用いて本発明の抗体または抗体部分が誘導体化され得る有用な検出可能な薬剤として、蛍光化合物が挙げられる。例示的蛍光検出可能薬剤として、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリトリンなどが挙げられる。抗体はまた、検出可能な酵素、例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどを用いて誘導体化され得る。抗体は検出可能な酵素で誘導体化される場合には、酵素が使用して、検出可能な反応生成物を生じるさらなる試薬を加えることによって検出される。例えば、検出可能な薬剤西洋ワサビペルオキシダーゼが存在する場合には、過酸化水素およびジアミノベンジジンの添加が、着色された反応生成物につながり、これは、検出可能である。抗体はまた、ビオチンで誘導体化され、アビジンまたはストレプトアビジン結合の間接的測定によって検出され得る。
【0198】
本発明の別の実施形態は、結晶化DLL4結合タンパク質を提供する。好ましくは、本発明は、本明細書に開示される、全抗DLL4抗体、その断片ならびに抗体構築物および結合タンパク質コンジュゲート(抗体コンジュゲートを含む)を含めた、本明細書に記載されるDLL4結合タンパク質の結晶、このような結晶を含む製剤および組成物に関する。一実施形態では、結晶化結合タンパク質は、結合タンパク質の可溶性対応物よりも、インビボで長い半減期を有する。別の実施形態では、結合タンパク質は、結晶化後に生物活性を保持する。本発明の結晶化結合タンパク質は、当技術分野で公知の、参照により本明細書に組み込むPCT公開番号WO02/72636に開示される方法に従って製造され得る。
【0199】
本発明の別の実施形態は、グリコシル化結合タンパク質を提供し、これでは、抗体またはその抗原結合部分は、1個以上の炭水化物残基を含む。新生インビボタンパク質製造は、翻訳後修飾として知られるさらなるプロセシングを受け得る。特に、糖(グリコシル)残基が、酵素的に添加され得る、グリコシル化として知られるプロセス。共有結合によって連結しているオリゴ糖側鎖を有する得られたタンパク質は、グリコシル化タンパク質または糖タンパク質として知られる。タンパク質グリコシル化は、対象とするタンパク質のアミノ酸配列ならびにタンパク質が発現される宿主細胞に応じて変わる。種々の生物が、種々のグリコシル化酵素(例えば、グリコシルトランスフェラーゼおよびグリコシダーゼ)を産生し、入手可能な種々の基質(ヌクレオチド糖)を有し得る。このような因子のために、タンパク質グリコシル化パターンおよびグリコシル残基の組成物は、特定のタンパク質が発現される宿主系に応じて異なり得る。本発明において有用なグリコシル残基として、それだけには限らないが、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、n−アセチルグルコサミンおよびシアル酸が挙げられる。好ましくは、グリコシル化結合タンパク質は、グリコシル化パターンがヒトであるようなグリコシル残基を含む。
【0200】
異なるタンパク質グリコシル化が、異なるタンパク質特徴をもたらし得ることは、当業者にとって公知である。例えば、酵母などの微生物宿主において製造され、酵母内因性経路を利用してグリコシル化された治療用タンパク質の有効性は、CHO細胞株などの哺乳動物細胞において発現された同一タンパク質のものと比較して、低減され得る。このような糖タンパク質はまた、ヒトにおいて免疫原性であり得、投与後のインビボ半減期の減少を示す。ヒトおよびその他の動物における特定の受容体は、特定のグリコシル残基を認識し、血流からのタンパク質の迅速なクリアランスを促進し得る。その他の有害作用として、タンパク質フォールディングにおける変化、溶解度、プロテアーゼに対する感受性、輸送、運搬、区画化、分泌、その他のタンパク質または因子による認識、抗原性またはアレルゲン性が挙げられる。したがって、開業医は、特定の組成およびグリコシル化のパターン、例えば、ヒト細胞においてまたは意図される対象動物の種特異的細胞において産生されるものと同一のまたは少なくとも同様のグリコシル化組成およびパターンを有する治療用タンパク質を好み得る。
【0201】
宿主細胞のものとは異なるグリコシル化タンパク質を発現することは、異種グリコシル化酵素を発現するよう宿主細胞を遺伝的に修飾することによって達成され得る。開業医は、当技術分野で公知の技術を使用して、ヒトタンパク質グリコシル化を示す抗体またはその抗原結合部分を作製し得る。例えば、酵母株は、天然に存在しないグリコシル化酵素を発現するよう遺伝的に修飾されており、その結果、これらの酵母株において産生されたグリコシル化されたタンパク質(糖タンパク質)は、動物細胞、特に、ヒト細胞のものと同一であるタンパク質グリコシル化を示す(米国特許出願公開第2004/0018590号および同2002/0137134号)。
【0202】
さらに、対象とするタンパク質は、種々のグリコシル化酵素を発現し、その結果、ライブラリーのメンバー宿主細胞が、変異体グリコシル化パターンを有する対象とするタンパク質を産生するよう遺伝子操作された宿主細胞のライブラリーを使用して発現され得るということは当業者によって理解されよう。次いで、開業医は、特定の新規グリコシル化パターンを有する対象とするタンパク質を選択および単離し得る。好ましくは、特に選択された新規グリコシル化パターンを有するタンパク質は、生物学的特性の改善または変更を示す。
【0203】
D.DLL4結合タンパク質の使用。
ヒトDLL4およびマウスDLL4と結合するその能力を考えると、試料中の(例えば、混合物、溶液または生体試料、例えば、血液、血清もしくは血漿中の)DLL4を検出または測定するために、当技術分野で公知の任意の従来のイムノアッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)または組織免疫組織化学を使用して、抗体およびその部分を含む本明細書に記載されたDLL4結合タンパク質が使用され得る。本発明は、試料をDLL4結合タンパク質と接触させ、ならびにヒトDLL4および/またはマウスDLL4と結合しているDLL4結合タンパク質または結合していない結合タンパク質のいずれかを検出し、その結果、試料中のヒトDLL4および/またはマウスDLL4を検出することを含む、試料中のヒトDLL4および/またはマウスDLL4を検出するための方法を提供する。本明細書に記載されたDLL4結合タンパク質は、結合しているまたは結合していないDLL4結合タンパク質の検出を促進するために、検出可能な物質で直接または間接的に標識され得る。適した検出可能な物質として、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質および放射性物質が挙げられる。適した酵素の例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;適した補欠分子族複合体の例として、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;適した蛍光物質の例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の例として、ルミノールが挙げられ;適した放射性物質の例として、
3H、
14C、
35S、
90Y、
99Tc、
111In、
125I、
131I、
177Lu、
166Hoまたは
153Smが挙げられる。
【0204】
DLL4についてアッセイされ得る生体試料として、尿、糞便、血液、血清、血漿、発汗、唾液、経口スワブ(頬側、舌または咽頭)、膣スワブ、直腸スワブ、皮膚スワブ、皮膚掻爬物、組織生検ならびに当技術分野で入手可能な方法によって得ることができる任意のその他の組織試料が挙げられる。
【0205】
結合タンパク質を標識することの代替として、ヒトDLL4を、検出可能な物質で標識された組換えヒト(rh)DLL4標準および本明細書に記載された標識されていないDLL4結合タンパク質を利用する競合イムノアッセイによって生体液においてアッセイし得る。このアッセイでは、生体試料、標識されたrhDLL4標準およびDLL4結合タンパク質が組み合わされ、標識されていない結合タンパク質と結合している標識されたrhDLL4標準の量が決定される。生体試料中のヒトDLL4の量は、DLL4結合タンパク質と結合している標識されたrhDLL4標準の量と反比例する。同様に、ヒトDLL4はまた、検出可能な物質で標識されたrhDLL4標準および本明細書に記載された標識されていないDLL4結合タンパク質を利用する競合イムノアッセイによって、生体液においてアッセイされ得る。
【0206】
本発明のDLL4結合タンパク質は、インビトロおよびインビボの両方で、DLL4活性、特に、hDLL4活性を中和できることが好ましい。したがって、本発明のこのような結合タンパク質は、例えば、DLL4を含有する細胞培養物において、本発明の結合タンパク質が交差反応するDLL4を発現する、ヒト被験体において、またはその他の哺乳動物被験体においてDLL4活性を阻害するために使用され得る。一実施形態では、本発明は、DLL4を、DLL4抗体または本発明の抗体部分と接触させ、その結果、DLL4活性が阻害されることを含む、DLL4活性を阻害する方法を提供する。例えば、DLL4を含有するか、含有する疑いのある細胞培養物では、培養物においてDLL4活性を阻害するために、本発明の抗体または抗体部分が培養培地に加えられ得る。
【0207】
別の実施形態では、本発明は、被験体において、有利なことに、DLL4またはDLL4活性が有害である疾患または障害を患っている被験体からDLL4活性を低下させる方法を提供する。本発明は、このような疾患または障害を患っている被験体においてDLL4またはDLL4活性を低下させる方法を提供し、この方法は、被験体に、本発明のDLL4結合タンパク質を投与し、その結果、被験体におけるDLL4またはDLL4活性が低下されることを含む。好ましくは、DLL4は、ヒトDLL4であり、被験体は、ヒト被験体である。または、被験体は、本発明のDLL4結合タンパク質が結合できるDLL4を発現する哺乳動物であり得る。さらに、被験体は、DLL4が導入されている(例えば、DLL4の投与によってまたはDLL4導入遺伝子の発現によって)哺乳動物であり得る。抗体またはその他の本発明のDLL4結合タンパク質は、治療目的でヒト被験体に投与され得る。さらに、本発明のDLL4結合タンパク質は、獣医学的目的で、またはヒト疾患の動物モデルとして、結合タンパク質が結合できるDLL4を発現する非ヒト哺乳動物に投与され得る。後者に関して、このような動物モデルは、抗体および本発明のその他のDLL4結合タンパク質の治療効力を評価するのに有用であり得る(例えば、投与量のおよび投与の経時的推移の試験)。
【0208】
本明細書において、用語「DLL4および/またはNotchシグナル伝達活性は有害である障害」とは、癌などの疾患および障害を患っている被験体におけるDLL4および/またはNotchシグナル伝達活性の存在が、障害の病態生理に関与するまたは障害の悪化の一因である因子であるとわかっているまたはその疑いがあるその他の障害を含むものとする。したがって、DLL4および/またはNotchシグナル伝達活性が有害である障害とは、DLL4および/またはNotchシグナル伝達活性の低下が、症状および/または障害の進行(例えば、腫瘍成長)を軽減すると期待される障害である。このような障害は、例えば、上記の抗DLL4抗体を使用して検出され得る、障害を患っている被験体における血管新生の増大(例えば、腫瘍成長および形成の際の被験体の血清、血漿、滑液などにおける、当技術分野で公知の種々のタンパク質の濃度の増大)によって証明され得る。本発明の抗体を用いて治療され得る障害の限定されない例として、本発明の抗体の医薬組成物に関する以下の節において論じられた障害が挙げられる。
【0209】
II.医薬組成物および治療的使用。
本発明はまた、本発明のDLL4結合タンパク質および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。本発明のDLL4結合タンパク質を含む医薬組成物は、それだけには限らないが、障害の診断、検出またはモニタリングにおいて;障害またはその1つもしくは複数の症状の予防、治療、管理または寛解において;および/または研究において使用される。特定の実施形態では、組成物は、本発明の1種以上のDLL4結合タンパク質を含む。別の実施形態では、DLL4および/またはDLL4活性が有害である障害を治療するための医薬組成物は、本発明の1種以上の結合タンパク質および本発明の結合タンパク質以外の1種以上の予防薬または治療薬を含む。好ましくは、癌または腫瘍などの障害またはその1種もしくは複数の症状の予防、治療、管理または寛解のために有用であるとわかっている、またはそれにおいて使用されていた、または現在使用されている予防薬または治療薬。これらの実施形態に一致して、組成物は、担体、希釈液または賦形剤をさらに含み得る。
【0210】
本発明の結合タンパク質は、被験体に投与するのに適した医薬組成物中に組み込まれ得る。通常、医薬組成物は、本発明のDLL4結合タンパク質(またはそのDLL4結合部分)および薬学的に許容される担体を含む。本明細書において、「薬学的に許容される担体」としては、生理学的に適合される、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。薬学的に許容される担体の例として、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどならびにそれらの組合せのうち1種以上が挙げられる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコールまたは塩化ナトリウムを含むことが好ましい。薬学的に許容される担体は、抗体または抗体部分の有効期間または有効性を増強する、湿潤剤または乳化剤、保存料またはバッファーなどの微量の補助物質をさらに含み得る。
【0211】
種々の送達系が公知であり、本発明の1種もしくは複数のDLL4結合タンパク質または本発明の1種もしくは複数の結合タンパク質の組合せおよび障害または1種もしくは複数のその症状を予防、管理、治療または寛解するのに、例えば、腫瘍血管新生を低減するのに有用な予防薬または治療薬、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルにおけるカプセル封入、DLL4結合タンパク質を発現できる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu、J.Biol.Chem.、262:4429−4432頁(1987年))、レトロウイルスまたはその他のベクターの一部としての核酸の構築物などを投与するために使用され得る。本発明の予防薬または治療薬を投与する方法として、それだけには限らないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内の、腹腔内、静脈内および皮下)、硬膜外投与、腫瘍内投与および粘膜投与(例えば、鼻腔内および経口経路)が挙げられる。さらに、肺の投与は、例えば、吸入器または噴霧器およびエアロゾル化剤を有する製剤の使用によって使用され得る。例えば、参照によりその全文が本明細書に各々、組み込まれる、米国特許第6,019,968号;同5,985,320号;同5,985,309号;同5,934,272号;同5,874,064号;同5,855,913号;同5,290,540号;および同4,880,078号;およびPCT公開番号WO92/19244、WO97/32572、WO97/44013、WO98/31346およびWO99/66903参照のこと。一実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質、併用療法または本発明の組成物は、Alkermes AIR(登録商標)肺薬物送達技術(Alkermes、Inc.、Cambridge、Massachusetts、US)を使用して投与される。特定の実施形態では、本発明の予防薬または治療薬は、筋肉内に、静脈内に、腫瘍内に、経口によって、鼻腔内に、肺にまたは皮下に投与される。予防薬または治療薬は、任意の従来経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜内層を通る吸収によって(例えば、経口粘膜、直腸および腸管粘膜など)投与され得、またその他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。投与は、全身であっても局所であってもよい。
【0212】
特定の実施形態では、本発明の予防薬または治療薬を、治療を必要とする領域に局所的に投与することが望ましいものであり得;これは、例えば、制限するものではないが、局所注入として、注射によって、またはインプラントによって達成され得、前記インプラントは、サイラスティックメンブラン、ポリマー、繊維性マトリックス(例えば、Tissuel(登録商標))またはコラーゲンマトリックスなどのメンブランおよびマトリックスを含めた多孔性または非多孔性材料である。一実施形態では、有効量の本発明の1種以上のDLL4結合タンパク質アンタゴニストが、障害またはその症状を予防、治療、管理および/または寛解させるために被験体に罹患領域に局所的に投与される。別の実施形態では、有効量の本発明の1種以上のDLL4結合タンパク質が、有効量の本発明の結合タンパク質以外の1種以上の治療(例えば、1種以上の予防薬または治療薬)と組み合わせて、障害またはその1種もしくは複数の症状を予防、治療、管理および/または寛解させるために被験体の罹患領域に局所的に投与される。
【0213】
別の実施形態では、予防薬または治療薬は、制御放出または持続放出系で送達され得る。一実施形態では、制御放出または持続放出を達成するためにポンプが使用され得る(Langer(Science、249:1527−1533頁(1990年));Sefton、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.、14:201−240頁(1987年);Buchwaldら、Surgery、88:507−516頁(1980年);Saudekら、N.Engl.J.Med.、321:574−579頁(1989年)を参照のこと)。別の実施形態では、本発明の治療の制御放出または持続放出を達成するためにポリマー材料が使用され得る。例えば、Goodson、J.M、In Medical Applications of Controlled Release、第II巻、Applications and Evaluations、(LangerおよびWise編)、(CRC Press Inc.、Boca Raton、1984年)、第6章、115−138頁;Controlled Drug Bioavailability、Drug Product Design and Performance、SmolenおよびBall(編)(Wiley、New York、1984年);LangerおよびPeppas、J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.Phys.、C23:61−126頁(1983年)を参照のこと;Levyら、Science、228:190−192頁(1985年);Duringら、Ann.Neurol.、25:351−356頁(1989年);Howardら、J.Neurosurg.、71:105−112頁(1989年);米国特許第5,679,377号;同5,916,597号;同5,912,015号;同5,989,463号;および同5,128,326号;およびPCT公開番号WO99/15154およびWO99/20253も参照のこと。持続放出製剤において使用されるポリマーの例として、それだけには限らないが、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)およびポリオルトエステルが挙げられる。好ましい実施形態では、持続放出製剤において使用されるポリマーは、不活性であり、漏出性の不純物を含まず、保存に対して安定であり、無菌であり、生分解性である。さらに別の実施形態は、制御放出または持続放出系は、予防標的または治療標的に近接して配置され得、したがって、全身用量の画分のみを必要とする(例えば、Goodson、In Medical Applications of Controlled Release、(1984年)、115−138頁参照のこと)。
【0214】
制御放出系は、Langerによる概説(Science、249:1527−1533頁(1990年))において論じられている。本発明の1種以上の治療薬を含む持続放出製剤を製造するために当業者に公知の任意の技術が使用され得る。例えば、各々参照によりその全文が本明細書に組み込まれる、米国特許第4,526,938号;PCT公開番号WO91/05548およびWO96/20698;Ningら、「Intratumoral Radioimmunotherapy of a Human Colon Cancer Xenograft Using Sustained−Release Gel」、Radiother. Oncol.、39:179−189頁(1996年);Songら、「Antibody Mediated Lung Targeting of Long−Circulating Emulsions」PDA J.Pharm.Sci.Tech.、50:372−377頁(1996年);Cleekら、「Biodegradable Polymeric Carriers for a bFGF Antibody for Cardiovascular Application」、Proceed.Intl.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.、24:853−854頁(1997年)およびLamら、「Microencapsulation of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody for Local Delivery」、Proceed.Intl.Symp.Control Rel.Bioact.Mater.:24:759−760頁(1997年)参照のこと。
【0215】
特定の実施形態では、本発明の組成物が、予防薬または治療薬をコードする核酸である場合には、そのコードされる予防薬または治療薬の発現を促進するために、適当な核酸発現ベクターの一部として構築することおよび細胞内になるようにそれを投与することによって、例えば、レトロウイルスベクターを使用することによって(米国特許第4,980,286号参照のこと)、または直接注射によって、または微粒子銃を使用することによって(例えば、遺伝子銃;Biolistic、DuPont)、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクト剤を用いてコーティングすることによって、または核に入ると知られているホメオボックス様ペプチドと関連して投与することによって(例えば、Joliotら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:1864−1868頁(1991年)参照のこと)、核酸はインビボで投与され得る。または、核酸は、相同組換えによる発現のために細胞内に導入され、宿主細胞DNA内に組み込まれ得る。
【0216】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路と適合するよう製剤される。投与経路の例として、それだけには限らないが、非経口(例えば、静脈内の)、皮内、皮下、経口、鼻腔内(例えば、吸入)、経皮(例えば、局所)、経粘膜および直腸投与が挙げられる。特定の実施形態では、組成物は、ヒトへの静脈内、皮下、筋肉内、経口、鼻腔内または局所投与に適している医薬組成物として、常法に従って製剤される。通常、静脈内投与用の組成物は、滅菌等張性水性バッファー中の溶液である。必要に応じて、組成物はまた、可溶化剤および注射の部位での疼痛を和らげるためリグノカムン(lignocamne)などの局所麻酔薬も含み得る。
【0217】
本発明の組成物が、局所的に投与される場合には、組成物は、軟膏、クリーム、経皮パッチ、ローション、ゲル、シャンプー、スプレー、エアゾール、溶液、エマルジョンの形態または当業者に周知のその他の形態で製剤され得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms、第19版、(Mack Publishing Co.、Easton、Pennsylvania、1995年)参照のこと。噴霧できない局所投与形には、局所適用に適合する担体または1種もしくは複数の賦形剤を含み、好ましくは、水より大きい動粘性係数を有する粘性から半固体または固体形態が、通常使用される。適した製剤として、制限するものではなく、溶液、懸濁液、エマルジョン、クリーム、軟膏(ointment)、散剤、リニメント剤、軟膏(salves)などが挙げられ、これらは、必要に応じて、例えば、浸透圧などの種々の特性に影響を及ぼすために、滅菌され、または補助剤(例えば、保存料、安定化剤、湿潤剤、バッファーまたは塩)と混合される。その他の適した局所投与形として、好ましくは、固体または液体不活性担体と組み合わせた有効成分が、加圧された揮発性物質(例えば、ガス状噴射剤、例えば、FREON(登録商標))との混合物中にまたはスクイーズボトル中にパッケージされている噴霧性エアゾール製剤が挙げられる。必要に応じて、保湿剤または保水剤も、医薬組成物および投与形に添加され得る。このようなさらなる成分の例は、当技術分野で周知である。
【0218】
本発明の方法が、組成物の鼻腔内投与を含む場合には、組成物は、エアゾール形態、スプレー、ミストまたは液滴の形態で製剤され得る。特に、本発明に従って使用するための予防薬または治療薬は、適した噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素またはその他の適したガス)を使用して、加圧パックまたは噴霧器からエアゾールスプレーの体裁という形態で送達され得ることが好都合である。加圧エアゾールの場合には、投与単位は、定量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。化合物およびラクトースまたはデンプンなどの適した散剤基剤の散剤ミックスを含有する、吸入器(inhaler)または吸入器(insufflator)において使用するためのカプセル剤およびカートリッジ(例えば、ゼラチンからなる)が製剤され得る。
【0219】
本発明の方法が、経口投与を含む場合には、組成物は、錠剤、カプセル剤、カシェ剤、ジェルキャップ、溶液、懸濁液などの形態で経口的に製剤され得る。錠剤またはカプセル剤は、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、ラクトース、微晶質セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはグリコール酸ナトリウムデンプン);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容される賦形剤を用い、従来の手段によって調製され得る。錠剤は、当技術分野で周知の方法によってコーティングされてもよい。経口投与のための液体製剤は、それだけには限らないが、溶液、シロップ剤または懸濁液の形態をとり得る、またはそれらは使用前に水もしくはその他の適した媒体で構成するための乾燥製剤として調製され得る。このような液体製剤は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または硬化食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアガム);非水性媒体(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコールまたは精留植物油);および保存料(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)などの薬学的に許容される添加剤を用い、従来の手段によって調製され得る。製剤はまた、必要に応じて、バッファー塩、矯味剤、着色剤および甘味剤も含有し得る。経口投与用製剤は、予防薬または治療薬(複数可)の徐放、制御放出または持続放出のために適宜製剤され得る。
【0220】
本発明の方法は、例えば、エアロゾル化剤を用いて製剤された組成物の吸入器または噴霧器の使用による肺の投与を含み得る。例えば、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,019,968号;同5,985,320号;同5,985,309号;同5,934,272号;同5,874,064号;同5,855,913号;同5,290,540号;および同4,880,078号;およびPCT公開番号WO92/19244、WO97/32572、WO97/44013、WO98/31346およびWO99/66903参照のこと。特定の実施形態では、本発明の抗体、併用療法および/または本発明の組成物は、Alkermes AIR(登録商標)肺薬剤送達技術(Alkermes、Inc.、Cambridge、Massachusetts、US)を使用して投与される。
【0221】
本発明の方法は、注射による(例えば、ボーラス注射または連続注入による)非経口投与用に製剤された組成物の投与を含み得る。注射用製剤は、防腐剤を加えた単位投与形で(例えば、アンプル中で、以上用量容器中で)提示され得る。組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとり得、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの処方剤(formulatory agents)を含有し得る。または、有効成分は、使用前に適した媒体(例えば、滅菌発熱物質不含水)を用いて構成するための散剤形態であり得る。
【0222】
本発明の方法は、デポー製剤として製剤された組成物の投与をさらに含み得る。このような長時間作用型製剤は、移植(例えば、皮下に、または筋肉内に)によって、または筋肉注射によって投与され得る。したがって、例えば、組成物は、適したポリマー物質または疎水性物質を用いて(例えば、許容されるオイル中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂を用いて、または難溶性誘導体として(例えば、難溶性塩として)製剤され得る。
【0223】
本発明の方法は、中性のまたは塩の形態として製剤された組成物の投与を包含する。薬学的に許容される塩として、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されるものなどの陰イオンを用いて形成されるもの、ならびにナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどの陽イオンを用いて形成されるものが挙げられる。
【0224】
一般に、組成物の成分は、別個に、または単位投与形中に一緒に混合されて、例えば、活性薬剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの密閉された容器中の無水凍結乾燥散剤または無水濃縮物として供給される。投与様式が注入である場合には、組成物は、滅菌医薬等級水または生理食塩水を含有する注入ビンを用いて分配され得る。投与様式が注射によってである場合には、滅菌注射水または生理食塩水のアンプルは、成分が投与に先立って混合され得るように提供され得る。
【0225】
特に、本発明はまた、本発明の予防薬または治療薬または医薬組成物のうち1種以上が、薬剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの密閉された容器中にパッケージングされることを提供する。一実施形態では、本発明の予防薬または治療薬または医薬組成物のうち1種以上が、密閉された容器中の無水滅菌凍結乾燥散剤または無水濃縮物として供給され、(例えば、水または生理食塩水を用いて)被験体に投与するための適当な濃度に再構成され得る。好ましくは、本発明の予防薬または治療薬または医薬組成物のうち1種以上は、少なくとも5mg、より好ましくは、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも75mgまたは少なくとも100mgの単位投与量で密閉された容器中の無水滅菌凍結乾燥散剤として供給される。本発明の凍結乾燥予防薬または治療薬または医薬組成物は、その元の容器中で、2℃から8℃の間で保存されなくてはならず、本発明の予防薬または治療薬または医薬組成物は、再構成された後、1週間以内に、好ましくは、5日以内に、72時間以内に、48時間以内に、24時間以内に、12時間以内に、6時間以内に、5時間以内に、3時間以内にまたは1時間以内に投与されなくてはならない。代替の実施形態では、本発明の予防薬または治療薬または医薬組成物のうち1種以上が、薬剤の量および濃度を示す密閉された容器中の液体形態で供給される。投与される組成物の液体形態は、密閉された容器中で、少なくとも0.25mg/ml供給されることが好ましく、より好ましくは、少なくとも0.5mg/ml、少なくとも1mg/ml、少なくとも2.5g/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/mlまたは少なくとも100mg/mlである。液体形態は、その元の容器中で、2℃から8℃の間で保存されなくてはならない。
【0226】
本発明の結合タンパク質は、非経口投与に適した医薬組成物中に組み込まれ得る。好ましくは、結合タンパク質は、0.1−250mg/mlの抗体を含有する注射用溶液として調製される。注射用溶液は、フリントまたはアンバーバイアル、アンプルまたは薬剤充填済みシリンジ中の液体または凍結乾燥投与形のいずれかからなり得る。バッファーは、pH5.0から7.0(最適には、pH6.0)のL−ヒスチジン(1−50mM)、最適には、5−10mMであり得る。その他の適したバッファーとして、それだけには限らないが、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムが挙げられる。溶液の毒性を改変するために、塩化ナトリウムが、0−300mM(最適には、液体投与形には150mM)の濃度で使用され得る。凍結乾燥投与形には、凍結保護物質、主に0−10%スクロース(最適には、0.5−1.0%)が含まれ得る。その他の適した凍結保護物質として、トレハロースおよびラクトースが挙げられる。凍結乾燥投与形には、充填剤、主に、1−10%マンニトール(最適には、2−4%)も含まれ得る。液体および凍結乾燥投与形の両方において、安定化剤、主に、1−50mM L−メチオニン(最適には、5−10mM)も使用され得る。その他の適した充填剤として、グリシン、アルギニンが挙げられ、0−0.05%ポリソルベート−80(最適には、0.005−0.01%)として含まれ得る。さらなる界面活性剤として、それだけには限らないが、ポリソルベート20およびBRIJ界面活性剤が挙げられる。
【0227】
本発明の組成物は、種々の形態であり得る。これらとして、例えば、液体溶液(例えば、注射用溶液および注入用溶液)、分散物または懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、リポソームおよび坐剤などの液体、半固体および固体投与形が挙げられる。好ましい形態は、意図される投与様式および治療適用に応じて変わる。通常好ましい組成物は、その他の抗体を用いるヒトの受動免疫処置に使用されるものと類似の組成物などの注射用溶液または注入用溶液の形態である。好ましい投与様式は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。好ましい実施形態では、本明細書に記載されたDLL4結合タンパク質は、静脈内注入または注射によって投与される。別の好ましい実施形態では、DLL4結合タンパク質は、筋肉内注射または皮下注射によって投与される。
【0228】
治療用組成物は、通常、無菌で、製造および保存の条件下で安定でなくてはならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散物、リポソームまたは高い薬物濃度に適したその他の秩序構造として製剤され得る。滅菌注射用溶液は、適当な溶媒中の必要な量で活性化合物(すなわち、抗体または抗体部分)を、必要に応じて上記で列挙された成分のうち1種またはそれらの組合せとともに組み込むこと、続いて、濾過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散物は、活性化合物を、基本分散媒および上記で列挙されたもののうち必要なその他の成分を含有する滅菌媒体に組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌凍結乾燥散剤の場合には、好ましい調製方法は、真空乾燥ならびに有効成分および先に滅菌濾過したその溶液に由来する任意のさらなる所望の成分の散剤が得られる噴霧乾燥である。溶液の適切な流動度は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散物の場合には必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持され得る。注射用組成物の長期吸収は、組成物中に、吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0229】
多くの治療適用にとって、好ましい投与経路/様式は、皮下注射、静脈内注射または注入であるが、本発明のDLL4結合タンパク質は、当技術分野で公知の種々の方法によって投与され得る。投与の経路および/または様式は、所望の結果に応じて変わるということは、当業者ならば理解されよう。特定の実施形態では、活性化合物は、化合物を迅速放出から保護する担体を用い、例えば、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含めた制御放出製剤として調製され得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーは使用され得る。このような製剤を調製するための多数の方法が、特許権が取られているか、当業者には一般的に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R. Robinson編、(Marcel Dekker、Inc.、New York、1978年)参照のこと。
【0230】
特定の実施形態では、本発明の結合タンパク質は、例えば、不活性希釈液または同化食用担体とともに経口投与され得る。化合物(および必要に応じて、その他の成分)はまた、ハードまたはソフトシェルゼラチンカプセル剤中に封入される、錠剤に打錠される、または被験体の食事に直接組み込まれ得る。経口治療的投与には、化合物は、賦形剤とともに組み込まれ、摂取可能な錠剤、頬側錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェーハなどの形態で使用され得る。本発明の化合物を、非経口投与以外によって投与するには、化合物をその不活化を防ぐ物質とコーティングするまたは化合物をその不活化を防ぐ物質と同時投与する必要があり得る。
【0231】
補足の活性化合物もまた、組成物中に組み込まれ得る。特定の実施形態では、本発明の結合タンパク質は、DLL4活性が有害である障害を治療するために有用である1種以上のさらなる治療薬と同時製剤および/または同時投与される。例えば、本発明の抗huDLL4抗体または抗体部分は、その他の標的と結合する1種以上のさらなる抗体(例えば、その他のサイトカインと結合する抗体または細胞表面分子と結合する抗体)と同時製剤および/または同時投与され得る。さらに、本発明の1種以上の結合タンパク質は、前述の治療薬のうち2種以上と組み合わせて使用され得る。このような併用療法は、投与される治療薬の低い投与量を、したがって、種々の単剤療法と関連している潜在的な毒性または複雑性を避けながら利用することが有利であり得る。
【0232】
特定の実施形態では、本発明のDLL4結合タンパク質は、当技術分野で公知の半減期延長媒体と連結される。このような媒体として、それだけには限らないが、Fcドメイン、ポリエチレングリコールおよびデキストランが挙げられる。このような媒体は、例えば、参照により本明細書に組み込む米国特許第6,660,843 B1号および公開されたPCT公開番号WO99/25044に記載されている。
【0233】
特定の実施形態では、本発明の結合タンパク質または本発明の別の予防薬または治療薬をコードするヌクレオチド配列を含む核酸配列が、遺伝子療法によって、障害またはその1種もしくは複数の症状を治療、予防、管理または寛解させるために投与される。遺伝子療法とは、発現されたまたは発現可能な核酸を被験体に投与することによって実施される治療を指す。本発明のこの実施形態では、核酸はそのコードされた結合タンパク質または予防効果もしくは治療効果を媒介する本発明の予防薬もしくは治療薬を生成する。
【0234】
当技術分野で入手可能な遺伝子療法のための方法のいずれかも、本発明に従って使用され得る。遺伝子療法の方法の一般的な概説については、Goldspielら、Clin. Pharmacy、12:488−505頁(1993年);WuおよびWu、Biotherapy、3:87−95頁(1991年);Tolstoshev、Ann. Rev.Pharmacol.Toxicol.、32:573−596頁(1993年);Mulligan、Science、260:926−932頁(1993年);およびMorgan and Anderson、Ann.Rev.Biochem.、62:191−217頁(1993年);Robinson、C.、Trends Biotechnol.、11(5):155頁(1993年)を参照のこと。使用され得る組換えDNA技術の当技術分野でよく知られている方法は、Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons、New York、1993年);およびKriegler、Gene Transfer and Expression、A Laboratory Manual、(Stockton Press、New York、1990年)に記載されている。遺伝子療法の種々の方法の詳細な説明は、参照により本明細書に組み込む、米国特許出願公開第20050042664 A1号に開示されている。
【0235】
別の態様では、本発明は、被験体においてDLL4関連腫瘍を治療(例えば、治癒、抑制、寛解、遅延またはその発症を予防またはその再発もしくは再燃を予防)または予防する方法を提供する。本発明の方法は、被験体に、本明細書に記載されるDLL4結合タンパク質、例えば、抗DLL4抗体またはその断片を、DLL関連腫瘍または癌を治療または予防するのに十分な量で投与することを含む。DLL4アンタゴニスト、すなわち、抗DLL4抗体またはその断片が、被験体に、単独または本明細書に記載されるその他の治療様式と組み合わせて投与され得る。DLL4は、免疫および炎症要素が関与する種々の疾患、特に、癌および腫瘍血管新生と関連している病理において重要な役割を果たしている。DLL4関連障害の例として、それだけには限らないが、以下の生物学的プロセスに悪影響を及ぼす障害が挙げられる:神経機能および発達;動脈内皮の運命および血管新生の安定化;原始性の弁の形成および心室発生および分化の両方の間の心内膜と心筋間の重大な細胞コミュニケーション事象の調節;心臓弁ホメオスタシスならびに心血管系が関与するその他のヒト障害における意味;適時の脾内分泌部および外分泌部両方の細胞系統特異化;腸において分泌および吸収系統間を選択しなくてはならない細胞の2つの運命の決定に影響を及ぼすこと;骨粗しょう症などの骨の発達および造骨系統への深い関与における参加の間の造血幹細胞コンパートメントの拡大;いくつかの別個の発達段階での乳腺における細胞の運命決定の調節;およびチロシンキナーゼAblによるアクチン細胞骨格の制御などの特定の非核機序。より詳しくは、DLL4関連障害として、それだけには限らないが、癌、T−ALL(T細胞急性リンパ芽球性白血病)、CADASIL(皮質下梗塞および白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症)、MS(多発性硬化症)、ファロー四徴症(TOF)およびアラジール症候群(AS)、黄斑変性症ならびに加齢性黄斑変性症疾患ならびに異常なDLL4発現または活性を特徴とするその他の血管新生非依存性および依存性疾患が挙げられる。
【0236】
好ましくは、本明細書に記載されるDLL4結合タンパク質、例えば、抗体およびその抗原結合部分は、癌および腫瘍を治療するために使用される。
【0237】
DLL4との結合、DLL4の阻害および/またはDLL4の中和が、個体の健康にとって望ましいまたはそうでなければ有益であると考えられる癌、腫瘍またはその他の障害を治療するために、本発明の結合タンパク質が、単独でまたは組み合わせて、すなわち、2種以上の本明細書に記載されるDLL4結合タンパク質が使用され得る。
【0238】
本発明のDLL4結合タンパク質はまた、単独でまたはさらなる薬剤、例えば、治療薬と組み合わせて使用される場合があり、例えば、前記のさらなる薬剤は、その意図される目的のために熟練した開業医によって選択されるということは理解されなくてはならない。例えば、さらなる薬剤は、DLL4との結合またはDLL4の阻害が、癌、腫瘍またはその他の疾患もしくは状態を治療するために望ましいまたは有利であると考えられる、癌、腫瘍またはその他の疾患もしくは状態を治療するために当技術分野で有用であると認識されている治療薬であり得る。さらなる薬剤はまた、治療用組成物に有益な性質を付与する薬剤、例えば、組成物の粘性に影響を及ぼす薬剤であり得る。
【0239】
本発明内に含まれる組合せは、その意図される目的にとって有用な組合せであるということは理解されなければならない。以下に示された薬剤は例示目的であって、制限であるとは意図されない。本発明の一部である組合せは、本発明の抗体および以下の一覧から選択される少なくとも1種のさらなる薬剤であり得る。組合せはまた、形成された組成物がその意図される機能を遂行し得るようなものであれば、2種以上のさらなる薬剤、例えば、2種または3種のさらなる薬剤を含み得る。
【0240】
治療薬の好ましい組合せは、腫瘍形成促進性(protumorigenic)または血管新生促進性シグナル伝達経路における異なる点で干渉し得る。本発明の方法および組成物において有用な治療薬の好ましい例として、抗悪性腫瘍薬、放射線療法および化学療法、例えば、DNAアルキル化剤、シスプラチン、カルボプラチン、抗チューブリン剤、パクリタキセル、ドセタキセル、タキソール、ドキソルビシン、ゲムシタビン、ジェムザール、アントラサイクリン、アドリアマイシン、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、5−フルオロウラシル(5−FU)、ロイコボリン、イリノテカン、受容体チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、エルロチニブ、ゲフィチニブ)、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ)およびキナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0241】
本発明のDLL4結合タンパク質はまた、メトトレキサート、6−MP、アザチオプリンスルファサラジン、メサラジン、オルサラジンクロロキニン/ヒドロキシクロロキン、ペニシラミン(pencillamine)、金チオリンゴ酸(筋肉内および経口)、アザチオプリン、コルヒチン、コルチコステロイド(経口、吸入および局所注射)、β−2アドレナリン受容体アゴニスト(サルブタモール、テルブタリン、サルメテラール(salmeteral))、キサンチン(テオフィリン、アミノフィリン)、クロモグリク酸、ネドクロミル、ケトチフェン、イプラトロピウムおよびオキシトロピウム、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、NSAID、例えば、イブプロフェン、プレドニゾロンなどのコルチコステロイド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデノシンアゴニスト、抗血栓薬、補体阻害剤、アドレナリン作動薬、TNFαまたはIL−1(例えば、IRAK、NIK、IKK、p38またはMAPキナーゼ阻害剤)などの炎症性サイトカインによるシグナル伝達を干渉する薬剤、IL−1β変換酵素阻害剤、TNFα変換酵素(TACE)阻害剤、T−細胞シグナル伝達阻害剤、例えば、キナーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、可溶性サイトカイン受容体およびその誘導体(例えば、可溶性p55またはp75TNF受容体および誘導体p75TNFRIgG(Enbrel(商標))およびp55TNFRIgG(レネルセプト)、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R)、抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−11、IL−13およびTGFβ)、セレコキシブ、葉酸、硫酸ヒドロキシクロロキン、ロフェコキシブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、ナプロキセン、バルデコキシブ、スルファサラジン、メチルプレドニゾロン、メロキシカム、酢酸メチルプレドニゾロン、金チオリンゴ酸ナトリウム、アスピリン、トリアムシノロンアセトニド、ナプシル酸プロポキシフェン/アパップ、葉酸、ナブメトン、ジクロフェナク、ピロキシカム、エトドラック、ジクロフェナクナトリウム、オキサプロジン、オキシコドンhcl、酒石酸水素ヒドロコドン/アパップ、ジクロフェナクナトリウム/ミソプロストール、フェンタニル、アナキンラ、ヒト組換え型、トラマドールhcl、サルサレート、スリンダック、シアノコバラミン/fa/ピリドキシン、アセトアミノフェン、アレンドロネートナトリウム、プレドニゾロン、硫酸モルヒネ、塩酸リドカイン、インドメタシン、グルコサミンsulf/コンドロイチン、アミトリプチリンHCl、スルファジアジン、オキシコドンHCl/アセトアミノフェン、オロパタジンhcl、ミソプロストール、ナプロキセンナトリウム、オメプラゾール、シクロホスファミド、リツキシマブ、IL−1 TRAP、MRA、CTLA4−IG、IL−18 BP、抗IL−18、抗IL15、BIRB−796、SCIO−469、VX−702、AMG−548、VX−740、ロフルミラスト、IC−485、CDC−801およびメソプラムなどの薬剤と組み合わせて投与され得る。
【0242】
本発明のDLL4結合タンパク質と同時投与され得る、または組み合わせて使用され得る、癌のための治療薬の限定されない例として、以下が挙げられる:ブデノシド;上皮成長因子;スルファサラジン;アミノサリチラート;6−メルカプトプリン;アザチオプリン;メトロニダゾール;リポキシゲナーゼ阻害剤;メサラミン;オルサラジン;バルサラジド;抗酸化剤;トロンボキサン阻害剤;IL−1受容体アンタゴニスト;抗IL−1βモノクローナル抗体;抗IL−6モノクローナル抗体;増殖因子;エラスターゼ阻害剤;ピリジニル−イミダゾール化合物;およびその他のヒトサイトカインまたは増殖因子に対する抗体またはアンタゴニスト、例えば、TNF、LT、IL−1、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、EMAP−II、GM−CSF、FGFおよびPDGF。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD90などの細胞表面分子またはそのリガンドに対する抗体と組み合わされ得る。
【0243】
本発明のDLL4結合タンパク質と組み合わされ得る治療薬のその他の例として、以下が挙げられる:TNFアンタゴニスト、例えば、抗TNF抗体、D2E7(PCT公開番号WO97/29131;HUMIRA(登録商標))、CA2(REMICADE(登録商標))、CDP571、TNFR−Ig構築物(p75TNFRIgG(エンブレル(登録商標))およびp55TNFRIgG(レネルセプト))およびPDE4阻害剤。本発明の結合タンパク質は、メサラミン、プレドニゾン、アザチオプリン、メルカプトプリン、インフリキシマブ、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、ジフェノキシラート/硫酸アトロピン、塩酸ロペラミド、メトトレキサート、オメプラゾール、葉酸、シプロフロキサシン/デキストロース−水、酒石酸水素ヒドロコドン/アパップ、塩酸テトラサイクリン、フルオシノニド、メトロニダゾール、チメロサール/ホウ酸、コレスチラミン/スクロース、塩酸シプロフロキサシン、硫酸ヒヨスチアミン、塩酸メペリジン、塩酸ミダゾラム、オキシコドンhcl/アセトアミノフェン、塩酸プロメタジン、リン酸ナトリウム、スルファメトキサゾール/トリメトプリム、セレコキシブ、ポリカルボフィル、ナプシル酸プロポキシフェン、ヒドロコルチゾン、マルチビタミン、バルサラジド二ナトリウム、リン酸コデイン/アパップ、コレスベラムhcl、シアノコバラミン、葉酸、レボフロキサシン、メチルプレドニゾロン、ナタリズマブおよびインターフェロン−ガンマと組み合わされ得る。
【0244】
本発明の結合タンパク質が組み合わされ得る治療薬の限定されない例として、以下が挙げられる:アスピリン、ニトログリセリン、一硝酸イソソルビド、コハク酸メトプロロール、アテノロール、酒石酸メトプロロール、ベシル酸アムロジピン、塩酸ジルチアゼム、二硝酸イソソルビド、重硫酸クロピドグレル、ニフェジピン、アトルバスタチンカルシウム、塩化カリウム、フロセミド、シンバスタチン、ベラパミルhcl、ジゴキシン、塩酸プロプラノロール、カルベジロール、リシノプリル、スピロノラクトン、ヒドロクロロチアジド、マレイン酸エナラプリル、ナドロール、ラミプリル、エノキサパリンナトリウム、ヘパリンナトリウム、バルサルタン、塩酸ソタロール、フェノフィブラート、エゼチミブ、ブメタニド、ロサルタンカリウム、リシノプリル/ヒドロクロロチアジド、フェロジピン、カプトプリルおよびフマル酸ビソプロロール。
【0245】
本発明の医薬組成物は、本発明の結合タンパク質の「治療上有効な量」または「予防上有効な量」を含み得る。「治療上有効な量」とは、所望の治療結果を達成するのに必要な投与量で、期間で、有効な量を指す。結合タンパク質の治療上有効な量は、当業者によって決定され得、個体の病状、年齢、性別および体重ならびに個体における結合タンパク質の所望の反応を誘発する能力などの因子に従って変わり得る。治療上有効な量はまた、結合タンパク質の任意の毒性または有害な作用が、治療上有益な作用によって凌がれるものである。「予防上有効な量」とは、所望の予防結果を達成するのに必要な投与量で、期間で、有効な量を指す。通常、予防上の用量は、被験体において疾患に先立って、または疾患の初期段階で使用されるので、予防上有効な量は、治療上有効な量よりも少ないものとなる。
【0246】
投与計画は、最適な所望の反応(例えば、治療反応または予防反応)を提供するよう調整され得る。例えば、単回ボーラスが投与される場合も、いくつかの分割用量が経時的に投与される場合も、または治療状況の危急によって、用量が比例的に減少または増加される場合もある。投与の容易さおよび投与量の均一性のために、非経口組成物を単位投与形で製剤することは特に有利である。本明細書において、単位投与形とは、治療される哺乳動物被験体のための単位投与量として適合している、物理的に別個の単位を指し;各単位は、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果を生じるよう算出された所定の量の活性化合物を含有する。本発明の単位投与形の仕様は、(a)活性化合物の独特の特徴および達成される特定の治療効果または予防効果および(b)個体における感受性の治療のための、このような活性化合物の配合の技術分野に固有の制限によって決定され、それらによって直接的に依存する。
【0247】
本発明のDLL4結合タンパク質の治療上または予防上有効な量の例示的な、限定されない範囲は、0.1−20mg/kg、より好ましくは、1−10mg/kgである。投与量の値は、軽減される状態の種類および重篤度に応じて変わり得るということは留意されたい。任意の特定の被験体にとって、特定の投与計画は、個体の必要性および組成物を投与し、組成物の投与を監督している人の専門科の判断に従って、経時的に調整されなければならないということおよび本明細書に示される投与量範囲は、単に例示的なものであって、特許請求される組成物の範囲または実施を制限しようとするものではないということはさらに理解されなくてはならない。
【0248】
III.免疫技術の使用。
種々の免疫検出アッセイ形式のいずれも、混合物、溶液または生体試料中に存在するDLL4の検出において使用するために、本発明のDLL4結合タンパク質を使用するために適応され得る。このような免疫検出アッセイ形式として、それだけには限らないが、基質に吸着または固定された本発明のDLL4結合タンパク質を含む、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈降、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、イムノブロット(例えば、ウエスタンブロット)、イムノストリップ(例えば、イムノディップスティック(immunodipsticks))、蛍光活性化セルソーター(FACS)などが挙げられる。本明細書に記載されたDLL4結合タンパク質は、親和性カラムまたは当技術分野で入手可能な任意のその他の親和性形式において使用し、試料からDLL4を精製するために、基質、例えば、樹脂粒子またはその他の物質に吸着または固定され得る。本発明のDLL4結合タンパク質を使用するDLL4の検出は、インビトロで、混合物、溶液で、または生体試料において実施され得る。試料中のDLL4を検出または測定するために、本発明のDLL4結合タンパク質と接触され得る生体試料として、それだけには限らないが、尿、唾液、経口スワブ(頬側、舌または咽頭スワブ)、皮膚スワブ、皮膚掻爬物、直腸スワブ、膣スワブ、全血試料、血漿試料、血清試料、組織生検および当技術分野で公知の手順によって個体から得られた任意のその他の試料が挙げられる。別の実施形態では、DLL4結合タンパク質は、それだけには限らないが、X線コンピュータ援用断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)および陽電子放射型断層撮影法(PET)を含めた種々の断層撮影法および走査法などインビボでDLL4を検出するために使用され得る。
【0249】
本明細書に記載された本発明の方法のその他の適した改変および適合は、明らかであり、本発明の範囲または本明細書に記載された実施形態から逸脱することなく、適した等価物を使用して行われ得るということは、当業者には容易に明らかとなるであろう。ここで、本発明を詳細に記載したが、これは、単に例示目的で含まれるのであって、本発明を制限するものではない以下の実施例を参照することによってより明確に理解されるであろう。
【実施例】
【0250】
実施例1:DLL4抗体の機能活性を決定するために使用したインビトロアッセイ。
【0251】
実施例1.1:BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴技術を使用する親和性の決定。
【0252】
BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイ(Biacore,Inc.、Piscataway、New Jersey、US)は、結合速度定数および解離速度定数の反応速度測定を用いて、抗体の親和性を決定する。精製された組換えDLL4細胞外ドメイン(ECD)に対するDLL4抗体の結合を、BIACORE(登録商標)機器(Biacore2000、Biacore3000またはBiacoreT100のいずれか;GE Healthcare、Piscataway、New Jersey、US)を用いて、25℃において、ランニングバッファーHBS−EPB(10mMのHEPES[pH7.4]、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.1mg/mlのBSAおよび0.005%の界面活性剤P20)を使用する、表面プラズモン共鳴に基づく測定によって決定した。例えば、10mMの酢酸ナトリウム(pH4.5)中に希釈されたおよそ9000RUのヤギ抗ヒトFc特異的ポリクローナル抗体(Thermo Fisher Scientific Inc.、Rockford、Illinois、US)をCM5リサーチグレードバイオセンサーチップにわたって、標準アミンカップリングキットを、製造業者の指示書および手順に従って25μg/mlで使用して、直接固定した。バイオセンサー表面の未反応部分は、エタノールアミンを用いてブロックした。反応速度解析のために、1:1 Langmuir結合モデルに由来する速度方程式を、多重抗原注入(大規模適合分析を使用する)に、Scrubber2(BioLogic Software)、Biacore Biaevaluation4.0.1ソフトウェアまたはBiacore T100 Evaluationソフトウェアを同時に使用して、適合させた。精製された抗体を、ヤギ抗ヒトFc反応表面にわたる捕捉のために、ランニングバッファーで希釈した。リガンドとして捕捉される抗体(1μg/ml)を、反応マトリクスにわたって、流速10μl/分で注入した。アッセイの間、すべての測定は、捕捉表面単独に対して言及した(すなわち、捕捉された抗DLL4抗体を含まない)。結合速度定数および解離速度定数、K
on(M
−1s
−1)およびK
off(s
−1)を、80μl/分の連続的な流速の下で決定した。速度定数は、3倍段階希釈として1.23−900nMの範囲で、(二重参照に使用するため)バッファーのみの注入を含むさまざまな抗原濃度において結合反応速度測定を行うことによって導いた。その後、抗体と標的抗原との間の反応の平衡解離定数K
D(M)を、以下の式:K
D=K
off/K
onによる反応速度定数から計算した。結合を時間の関数として記録し、反応速度定数を計算した。このアッセイにおいて、10
6M
−1s
−1の速さの結合速度および10
−6s
−1の遅さの解離速度を測定できた。
【0253】
実施例1.2:ELISAにより決定した、可溶性DLL4細胞外ドメインに対するDLL4抗体の結合。
【0254】
方法1(捕捉ELISA)。
【0255】
96−ウェルNunc−Immunoプレート(#439454)を、D−PBS(Gibco #14190)中5μg/mlのヒトIgGに対する抗体(Fcg断片特異的、Jackson ImmunoResearch、#109−005−098、100μl/ウェル)を用いてコーティングし、4℃において一晩インキュベートした。ELISAプレートを、洗浄バッファー(PBS、0.05% Tween−20)を用いて3回洗浄し、その後、200ml/ウェルでブロッキングバッファー(D−PBS、1%BSA、1mM CaCl
2、0.05%Tween−20)を用いて25℃において1時間ブロックした。プレートを3回洗浄し、100μl/ウェルのDLL4抗体(0.0001−100nM、ブロッキングバッファー中10倍段階希釈)と一緒に25℃において1時間インキュベートし、その後、再度3回洗浄した。捕捉されたDLL4抗体を含有するプレートを、ビオチン標識ヒトDLL4細胞外ドメイン(ブロッキングバッファー中10nM、100μl/ウェル)と一緒に、25℃において1時間インキュベートし、3回洗浄し、HRP(KPL #474−3000、ブロッキングバッファー中1:10,000希釈、100μl/ウェル)をコンジュゲートされたストレプトアビジンと一緒に、25℃において1時間インキュベートした。最終洗浄後、プレートを、100μl/ウェルのELISA基質(1−Step Ultra TMB−ELISA、Pierce #340280)と一緒にインキュベートした。2分後、反応を100μl/ウェルの2NのH
2SO
4を用いて25℃において停止させ、吸光度を450nmにおいて読み取った。データをGraphpad Prismソフトウェアを使用して分析し、EC
50値を報告した。
【0256】
方法2(銅をコーティングしたプレート)。
【0257】
96−ウェルの銅をコーティングしたプレート(Thermo Scientific #15143)を、使用前に洗浄バッファー(PBS、0.05%Tween−20)を用いて3回洗浄し、その後、PBS中1μg/mlの100μl/ウェルの6×His−タグを付けた組換えDLL4細胞外ドメイン(ECD)(配列番号206として開示の「6×His」)と一緒に、25℃において1時間、振とうしながらインキュベートした。その後プレートを3回洗浄した。その後、100μl/ウェルの組換えラット/ヒトのキメラまたは組換えヒト抗DLL4抗体を、プレートに、25℃において1時間、振とうしながら加え(0.00164−27nM、ELISAバッファー=PBST、10%のSuperblock(Pierce #37515)中4倍段階希釈)、その後、再度3回洗浄した。プレートを、ヤギ抗ヒトHRP(Pierce #31412)(ELISAバッファー中1:40,000希釈、100μl/ウェル)と一緒に、25℃において1時間、振とうしながらインキュベートし、その後3回洗浄した。最終洗浄後、プレートを、100μl/ウェルのELISA基質(Sigma #T8665)と一緒にインキュベートした。8分後、反応を100μl/ウェルの1N HClを用いて25℃において停止させ、吸光度を450nmにおいて読み取った。データをGraphpad Prismソフトウェアを使用し分析し、EC
50値を報告した。
【0258】
実施例1.3:フローサイトメトリ(FACS)により評価した、ヒト腫瘍細胞系の表面に対するDLL4モノクローナル抗体の結合。
【0259】
細胞−表面DLL4を過剰発現する安定な細胞系を組織培養フラスコから収穫し、4回洗浄し、1%ウシ血清アルブミンおよび1mMのCaCl
2(FACSバッファー)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁した。1.5×10
5の細胞を、FACSバッファー中さまざまな濃度の抗体と一緒に、氷上において60分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、50μLのR−フィコエリトリンをコンジュゲートされた抗ラットIgG、F(ab’)
2断片(FACSバッファー中1:200希釈)(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA、カタログ番号112−116−072)を加えた。氷上におけるインキュベーション(4℃、60分)後、細胞を3回洗浄し、FACSバッファーに再懸濁した。蛍光を、Becton Dickinson FACSCalibur−HTS(Becton Dickinson、San Jose、California、US)を使用して測定した。データを、Graphpad Prismソフトウェアを使用して分析し、EC
50値を、DLL4発現細胞に対する最大DLL4抗体の結合の50%を達成する抗体の濃度として報告した。
【0260】
実施例1.4:DLL4抗体による、可溶性DLL4細胞外ドメインとのNotch−1相互作用の阻害(競合ELISA)。
【0261】
96−ウェルNunc−Immunoプレート(huDLL4 ELISAのために#439454)および96−ウェルCostarプレート(muDLL4 ELISAのために#9018)を、16nMのヒトNotch−1(R&D Systems #3647−TK、D−PBS中100μl/ウェル)を用いてコーティングし、4℃において一晩インキュベートした。その後、プレートを、洗浄バッファー(PBS、0.05% Tween−20)を用いて3回洗浄し、200μl/ウェルのブロッキングバッファー(D−PBS、1%BSA、1mMのCaCl
2、0.05%Tween−20)を用いて25℃において1時間ブロックした。ブロッキング中、ビオチン標識DLL4細胞外ドメイン(14nM)を、抗体(30pM−66nM、ブロッキングバッファー中3倍段階希釈)と、25℃において1時間、振とうしながら混合した。ブロッキング後アッセイプレートを洗浄し、DLL4/抗体混合物(100μl/ウェル、25℃において1時間、振とうしながら)と一緒にインキュベートした。プレートを再度洗浄し、HRP(Fitzgerald #65R−S104PHRPx、ブロッキングバッファー中1:5,000に希釈)をコンジュゲートされた100μl/ウェルのストレプトアビジンを、25℃において1時間、振とうしながら加えた。最終洗浄後、プレートを、100μl/ウェルの基質(TMB Sigma #T8665)を使用して発色させ、反応を100μl/ウェルで1NのHClを使用して停止させ、吸光度を450nmにおいて読み取った。データをGraphpad Prismソフトウェアを使用し分析し、IC
50値を、Notch1に対して結合したDLL4の50%の減少を達成する抗体の濃度として報告した。
【0262】
実施例1.5:フローサイトメトリにより評価した、抗DLL4モノクローナル抗体によるDLL4過剰発現293G細胞に対する可溶性Notchの結合のブロッキング(競合FACS)。
【0263】
Notchブロッキングアッセイ:簡潔に言うと、細胞−表面DLL4を過剰発現する安定な細胞系を組織培養フラスコから収穫し、1%ウシ血清アルブミンおよび1mMのCaCl
2を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(FACSバッファー)に再懸濁した。HEK293G−DLL4細胞を、96−ウェルプレート(v底)にFACSバッファー中1.5×10
5細胞/ウェルで分注した。細胞を遠沈させた後、上清を廃棄し、適切に希釈した50μLの精製IgGを各ウェルに加え、氷上で4℃において60分インキュベートし、次いで50μL/ウェルのNotch1−ビオチンを、ヒトDLL4−293Gに対しては0.2μg/mLまたはマウスDLL4−293Gに対しては2.0μg/mL(最終的に1.0または0.1μg/mL)で加え、さらに1時間、氷上で4℃においてインキュベートした。FACSバッファーを用いて細胞を2回洗浄後、50μLのR−フィコエリトリンをコンジュゲートされたストレプトアビジン(FACSバッファー中1:150希釈)(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA、カタログ番号016−110−084)を加えた。氷上においてインキュベーション(4°C、60分)後、細胞を3回洗浄し、FACSバッファー中に再懸濁した。蛍光を、Becton Dickinson FACSCalibur−HTS (Becton Dickinson、San Jose、CA)を使用して測定した。データをGraphpad Prismソフトウェアを使用して分析し、IC
50値を、DLL4発現細胞に対して結合したNotch1の50%の減少を達成する抗体の濃度として報告した。
【0264】
実施例1.6:Notchリポーターアッセイを使用する、DLL4抗体によるEA.hy926細胞におけるDLL4−依存性Notch活性化の阻害。
【0265】
96−ウェル黒、クリアボトムの組織培養プレートに、7,000細胞/ウェルの、Notch−応答性プロモーターにより駆動される、ルシフェラーゼを発現する操作されたEA.hy926細胞を一晩播種した。200nMから段階的に希釈された抗体を、完全長DLL4を発現する等量の5,000HEK293G細胞/ウェルと15分間混合した。293G/DLL4細胞を、EA.hy926 Notchリポーター細胞と、試験抗体の存在下で24時間共培養した。ルシフェラーゼ活性を、Promegaの基質(Promega #E2940)により分析した。データをGraphpad Prismソフトウェアを使用して分析し、IC
50値を、DLL4−誘導性Notch活性化の50%の減少を達成する抗体の濃度として報告した。
【0266】
実施例1.7:物理化学的特性の特徴付けのための分析方法および技術。
【0267】
PEG沈殿法。
【0268】
体積排除の原理に従って固体タンパク質の相分離の誘導のためにPEGを使用することは、タンパク質の溶解度を評価する実行可能な取り組みを表す。PEGは、他の沈殿剤を上回るいくつかの有利性を有し、タンパク質の変性が、(タンパク質の三次構造に影響を与えない)周囲温度において最小であり、4℃から30℃の範囲内の温度調節が必要ない、すなわち、沈殿研究が研究室ベンチにおいて周囲温度で実施できることを含む。
【0269】
概して、PEGによるタンパク質の沈殿は、体積排除効果に基づいて説明される。この理論に従って、タンパク質は、PEGの直鎖で占められている溶媒の領域から立体的に排除される。結果として、タンパク質は濃縮され、それらの溶解度を超えた場合に、最終的には沈殿する。熱力学的用語において、立体排除は、純粋な固体状態の化学ポテンシャルを超えるまではタンパク質の化学ポテンシャルの増加につながり、タンパク質沈殿をもたらす。このことは、主として、PEGとタンパク質との間の相互作用の好ましくない自由エネルギーが大きいために起こり、立体排除効果によるタンパク質の選択的水和が減少する。水溶液において、選択的水和はタンパク質の天然構造の維持に役立つ。概して、体積排除は、PEGの分子量が増加するほどより効果的になる、すなわち、PEGの分子量が増加するほどタンパク質を沈殿させるために必要なPEGが少なくなることが示されている。
【0270】
分子量3000のPEGを、本特許で取り扱う抗体の溶解度を予測するために選択した。50%のPEG溶液は、1グラムのPEG対1mLの水の比で脱イオン水中にPEGを溶解することによって作製する。その後、PEG溶液を、最初は0.5mg/ml未満または同等の濃度および0.5mLの体積である抗体の溶液に加えた。PEG溶液を連続して加え、最初の混濁の事例が持続するまで混合した。この沈殿を引き起こすために必要なPEG3000の百分率は、(50)×(加えたPEG3000溶液の体積)/(PEG添加前の抗体溶液の初期体積)として計算する。
【0271】
沈殿に必要なPEG3000の百分率を、既知の水溶解度を有するタンパク質の沈殿に必要な百分率と比較した。例えば、アダリムバブの水溶解度は200mg/mLを超える。結果として、対象となるタンパク質を沈殿させるために必要なPEGの3000百分率が沈殿させるアダリムバブを沈殿させるために必要な百分率と同様である場合、その場合は、そのタンパク質の予測溶解度はアダリムバブの溶解度と同様である。
【0272】
真正溶解度法。
【0273】
真正溶解度は、Amicon遠心濾過器を使用して、タンパク質が溶液から沈殿することが観察されるまで、またはタンパク質がフィルターユニット内で濃縮され得る最小の体積に達するまで溶液中のタンパク質を濃縮することによって決定される。後者に関して、15mLのAmicon遠心濾過器は約50μlの最小体積を有し、一方4mLのAmicon遠心濾過器は約15μlの最小体積を有する。
【0274】
第1に、タンパク質を特定の製剤(複数可)に透析した。これらの研究のための抗体量は、10mgまたははるかに少ない。その後、タンパク質溶液を、Amicon遠心濾過器の透過残渣チャンバーに挿入した。チャンバーは、遠心力に供された時に、10から30キロダルトンより小さい分子が通過できる細孔を有するニトロセルロース膜に沿って並べられている。通常140キロダルトンを上回る抗体は保持されるが、一方、水、バッファー分子、低分子の賦形剤および塩は通過した。その後、遠心濾過器を製造業者の仕様書に従って、タンパク質が溶液から沈殿することが観察されるまで、またはタンパク質がフィルターユニット内で濃縮され得る最小の体積に達するまで遠心分離にかけた。
【0275】
遠心分離後、タンパク質溶液を透過残渣チャンバーから取り出し、濃度を紫外線吸光度によって測定した。その後、溶液を25℃および5℃に1から2日保ち、沈殿の兆候をモニターした。
【0276】
近UV−CD技術
近UV−CD分光法は、タンパク質の三次構造についての重要な情報を提供し、この関連において最も使用されている技術の1つであった。CDは、平面偏光照射の右および左の円偏光成分の差分吸収を指す。タンパク質に関して、近UVCD領域(250−320nm)中の発色団は芳香族アミノ酸(すなわち、トリプトファン、チロシンおよびフェニルアラニン)およびジスルフィド結合であり、CD効果は、発色団が非対称(埋没した)環境中に存在する場合に起こる。250−270nmの領域のシグナルはフェニルアラニン残基に起因し、270−290nmのシグナルはチロシンに起因し、280−300nmのシグナルはトリプトファンに起因する。ジスルフィド結合は、近UVスペクトルにわたって広範囲に弱いシグナルを生じる。近UVCDスペクトルは、タンパク質−タンパク質相互作用による三次構造のわずかな変化および/または製剤状態の変化に感受性であり得る。
【0277】
芳香族アミノ酸のCDスペクトルに影響を与え得る他の因子は多数存在する。これらの中には、(1)タンパク質の剛性、(2)水素結合の性質および(3)さまざまな芳香族アミノ酸間の相互作用がある。さらに、幾多のこのようなアミノ酸を含むタンパク質は、正および負のバンドの打消しにより、より小さくなったCDバンドを有する可能性がある。
【0278】
簡潔に言うと、タンパク質を1mg/mlで所望の製剤(複数可)に透析し、250−320nmまたは240−320nmでJasco800CD分光計を用いて走査した。タンパク質を含まない対応する製剤もまた走査し、測定値をタンパク質溶液の走査の測定値から差し引いた。近UV−CDスペクトルは、モル楕円率対250または240から320nmまでの波長のプロットであった。
【0279】
一般の抗体に関して、半S字状プロファイルを有する近UV−CDスペクトルは良い三次構造フォールディングを示すが、一方、プロファイルが平坦で特徴が少ないほど、アンフォールディングが大きくなる傾向がある。密なフォールディングは優れた安定性を伴うが、一方フォールディングが十分でないと、タンパク質分子間の疎水性相互作用につながることのある疎水性内部が露出し、望ましくない凝集の形成をもたらす。
【0280】
DSC技術。
【0281】
抗体の熱安定性を、示差走査熱量測定(DSC)器を使用して評価した。使用したDSC器はCapillary Cell(Microcal、GE Healthcare Ltd./Microcal、Buckinghamshire、UK)を有する自動VP−DSC装置であった。分子のアンフォールディングを、1℃/分の走査速度を、25℃−95℃の温度範囲にわたって試料1mg/mLにおいて適用して研究した。適用した追加の測定パラメーターは、16秒のフィッティング期間、10分予備走査待機時間であり、測定は、none−フィードバックモードで実施した。個別の測定当たり、以下に提供されたプレートフィルスキームを用いて、420μLの試料/ブランクをDSC測定試料ホルダーに満たした。得られたサーモグラムを非二状態モデルにフィットさせ、さまざまな遷移の中点温度およびエンタルピーを得た。
【0282】
生物学的発達候補が成功するための追加の要求は、タンパク質が依然としてその天然状態および構造のままであることである。水溶液中のタンパク質は、天然(フォールディングした)構造およびその変性した(アンフォールディングな)構造との間で平衡している。天然状態の安定性は、系のGibbs自由エネルギー(DG)の大きさならびにエンタルピー(DH)およびエントロピー(DS)の変化の間の熱力学的関係に基づく。正のDGは、天然状態が変性状態より安定している、DGが正に大きいほど安定性は高いことを示す。タンパク質がアンフォールディングするためには、安定化力が破壊される必要がある。構造エントロピーが安定化力に打ち勝つことにより、エントロピーが優勢になる温度においてタンパク質がアンフォールディングになる。DSCは、熱変性のためにアンフォールディングするタンパク質のDHを測定する。一般則として、遷移中点(Tm)が高いほど、タンパク質は低い温度において安定するということが言える。同じ実験の間、DSCは、タンパク質変性に関する熱容量(DCp)の変化もまた測定する。タンパク質のアンフォールディングに伴う熱容量変化は、主に、天然状態において埋没していたが、変性状態において溶媒に露出された側鎖の水和における変化による。DSCは、タンパク質および他の生物学的巨大分子に関する液体製剤の安定性の貴重な予測要素であることが示されている。(Remmele,R.L.Jr.、Gombotz,W.R.、BioPharm13、36−46頁、2000年およびRemmele,R.L.Jr.、Nightlinger,N.S.、Srinivasen,S.、Gombotz,W.R.、Pharm.Res.15、200−208頁、1998年)。
【0283】
SEC技術。
【0284】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して、サイズに基づいてタンパク質を分離した。タンパク質は水性移動相およびカラムにパックされた多孔質固定相樹脂の中に担持される。カラムにおける保持時間は、タンパク質の流体力学的サイズおよびパックされた樹脂床中の細孔のサイズの関数である。より小型の分子は、樹脂中のより小さい細孔を貫通でき、大型の分子より長く保持される。カラムからの溶出において、タンパク質はUV吸光度によって検出される。SEC法は、TSKゲルガード(TOSOH Biosciences、Montgomeryville、PA、カタログ番号08543)およびTSKゲルG3000SWxL(TOSOH Biosciences、Montgomeryville、PA、カタログ番号08541)を使用した。移動相は、100mMのNa
2HPO
4、200mMのNa
2SO
4、pH6.8であった。流速は0.25mL/分であった。注入体積は20μLの1mg/mL試料であった。カラム温度は室温であった。オートサンプラーの温度は、2−8℃であった。合計実行時間は55分であった。検出は、波長214nm、8nmに設定したバンド幅におけるUV吸光度に基づき、参照波長360nm、バンド幅100nmを使用した。
【0285】
凍結−解凍方法。
【0286】
所望の製剤(複数可)中の1mg/mlの抗体溶液を、−80℃において少なくとも4時間凍結し、その後、30℃においてウォーターバス中で解凍した。その後溶液を−80℃において再凍結した。これを5サイクル繰り返した。特定の凍結−解凍サイクル、例えば、2回目および4回目の後で、再凍結の前に溶液の一部を、SECによる分析のために採取した。凍結−解凍安定性試験は、変性する氷−水の界面に対するタンパク質分子のより多くの暴露による「最悪の場合」を得るために、低タンパク質濃度において実施した。より高い濃度において、タンパク質が氷−水の界面に直面することは比例的に少なく、代わりに他のタンパク質分子と相互作用する。
【0287】
加速安定性法。
【0288】
所望の製剤(複数可)中の1mg/mlの抗体溶液を、滅菌状態下で0.22μmPVDFフィルターを通過させ、40℃および/または50℃において少なくとも21日間インキュベートした。7日および21日目に、アリコートを滅菌状態下で採取し、SECによる分析に供した。その後、溶液をインキュベーションに戻した。
【0289】
実施例2:ラットハイブリドーマ技術による、ラット抗DLL4モノクローナル抗体の作製。
【0290】
ラットを、当技術分野において既知の方法に従って免疫化した(例えば、E Harlow、D.Lane、Antibody:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1998年)。完全長ヒトDLL4を発現するヒト細胞系および組換えマウスDLL4−ECD(DLL4細胞外ドメイン)タンパク質を免疫原として使用した。ヒトDLL4またはマウスDLL4のいずれかを発現するマウス細胞系を、抗血清力価の決定および抗原−特異的抗体を分泌するハイブリドーマのスクリーニングのために使用した。免疫化投薬量は、初回およびブースト免疫化の両方に関して1×10
6細胞/ラット/注射を含有した。マウスDLL4に対する免疫応答を増加するために、ラットを、不完全フロインドアジュバント(Sigma、St.Louis、MO、US)と一緒のエマルジョン形態で組換えマウスDLL4−ECDをさらにブーストした。簡潔に言うと、アジュバント−抗原混合物を、まずアジュバントをバイアル中でボルテックスを使用して穏やかに混合することによって調製した。所望の量のアジュバントをバイアルから取り出し、オートクレーブにかけた1.5mL微小遠心管に入れた。抗原は、PBSまたは生理食塩水中で0.5−1.0mg/mlに及ぶ濃度で調製した。その後、計算された量の抗原を、アジュバントを含む微小遠心管に加え、溶液を穏やかに2分間ボルテックスすることにより混合し、油中水エマルジョンを作製した。その後アジュバント−抗原溶液を、動物注射用の適切な注射器に引き込んだ。合計50μgの抗原が、50−100μlの体積中に注入された。各動物を免疫化し、その後力価に依存して2から3回ブーストした。優れた力価を有する動物には、融合前にヒトDLL4を発現する細胞系を最終皮下ブーストした。
【0291】
ハイブリドーマの融合およびスクリーニング。
【0292】
マウス骨髄腫細胞系(SP2/0−Ag14、ATCC CRL−1581)の細胞を、融合直前に対数期に達するまで培養した。免疫化されたラット脾臓細胞を、滅菌的に調製し、当技術分野において既知の方法に従って、骨髄腫細胞と融合した(例えば、E Harlow、D.Lane、Antibody:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1998年);Kohler GおよびMilstein C.、「Continuous cultures of fused cell secreting antibody of predefined specificity」Nature、256:495−497頁(1975年)。続いて、融合された「ハイブリッド細胞」を、96−ウェルプレート内のDMEM/20%FCS/HAT培地中に分注した。生存ハイブリドーマコロニーを、融合後7から10日に顕微鏡下で観察した。2週間後、各ウェルからの上清を、組換えヒトDLL4またはマウスDLL4のいずれかを発現するマウス細胞系を使用して、細胞に基づく結合スクリーニングに供した。簡潔に言うと、ヒトまたはマウスDLL4のいずれかを発現するマウス細胞系の混合物(1:1比)を、96−ウェル(丸底)プレートに1×10
6細胞/ウェルで分注し、ハイブリドーマ上清(50μl)と一緒に4℃において1時間インキュベートした。その後、細胞を、FACSバッファー(PBS+2%BSA)を用いて3回洗浄し、HRP−ヤギ抗ラットIg−PE(フィコエリトリン)を、FACS機における検出のために使用した。ハイブリドーマを、以下の手順に従ったELISAフォーマットを使用してスクリーニングした。ELISAプレートを、50μlのヒトDLL4またはマウスDLL4(PBS中2.0μg/ml)のいずれかを用いて、4℃において一晩コーティングした。プレートを、250μlのPBS/0.5%Tween
20を用いて3回洗浄し、200μlのブロッキングバッファー(0.5%Tween
20を含むPBS中2%BSA)を用いてブロックした。希釈された血清またはハイブリドーマ上清(100μl)を各ウェルに加え、室温において1時間インキュベートした。その後プレートを、PBS/0.5%Tween
20を用いて3回洗浄し、HRP−ヤギ抗ラット−IgGを検出に使用し、結合ODを450nmにおいて観察した。その後、ヒトDLL4もしくはマウスDLL4のいずれか、または両方と結合する抗体を分泌する陽性ハイブリドーマを選択し、24−ウェルプレートに移し、限外希釈によりサブクローニングし、細胞系のクローン性を確保した。各モノクローナル抗体のアイソタイプを、Zymed’s Mouse MonoAb−ID キットを使用して決定した。高い特異的結合活性を示した抗体を産生するハイブリドーマクローンをサブクローニングし、精製し(表5)、抗体の親和性(Biacore)および効力(NotchブロッキングFACSおよびリポーターアッセイ)を以下のように特徴付けた。
【0293】
【表10】
【0294】
実施例3:抗DLL4ラットモノクローナル抗体のインビトロの特徴付け
これらのラットモノクローナル抗体(mAb)の抗原結合親和性を、実施例1.1に記載のBIACORE技術により決定し、以下の表6および7に示した。それらのインビトロ活性を、実施例1に記載の他の方法を使用してさらに検査し、表8に要約した。さらなる特徴付けを決定した37D10および40B10は同一のラットmAbであった。
【0295】
【表11】
【0296】
【表12】
【0297】
【表13】
【0298】
実施例4:DNAのクローニングおよび配列決定による、抗DLL4ラットモノクローナル抗体の可変領域タンパク質配列の演繹(Deduction)。
【0299】
全RNAを、RNeasyミニキット(Qiagen、カタログ番号74104)を使用し、以下のプロトコルを使用してハイブリドーマの細胞ペレットから抽出した。600μlのバッファーRLTを加え、上下に数回ピペッティングすることにより細胞を破壊した。細胞溶解液を、20ゲージの針を取り付けたRNaseを含まない注射器を10回通過させることによって均一化した。1体積の70%エタノールを均一化溶解液に加え、ピペッティングによりよく混合した。最大700μlの試料をRNeasyスピンカラムに一度に加え、15秒間、10,000rpmにおいて回転させ、素通り画分を廃棄した。700μlのバッファーRW1をカラムに加え、15秒間、10,000rpmにおいて回転させ、素通り画分を廃棄した。500μlのRPEバッファーを加え、カラムメンブレンを洗浄し、15秒間、10,000rpmにおいて回転させ、素通り画分を廃棄した。同じステップを、もう1回繰り返すが、カラムは2分間遠心分離にかけた。その後、試料を、1分間、10,000rpmにおいて遠心分離にかけ、バッファーRPEのすべてのキャリーオーバーを取り除いた。RNAを、30μlのRNaseを含まない水を用いて、1分、10,000rpmにおいて遠心分離にかけることによって溶出した。続いて、2μgの全RNAを、RT−PCR(Invitrogen、カタログ番号11904−018)のためのSuperScript First−Strand Synthesis Systemを使用して、以下のプロトコルに従って第1鎖cDNAを合成するために使用した:2μgのRNA+2μlのdNTP+2μlのOligo(dT)+DEPC−H
2O(20μlまで)を65℃において5分間インキュベートし、その後、少なくとも1分氷に移した。その後、試料を以下の混合物:4μlの10×RTバッファー+8μlの25mMのMgCl
2+4μlの0.1MのDTT+2μlのRNase OUTに加え、42℃において2分間インキュベートした。その後、2μlのSuperScript II RTを試料に加え、42℃において50分間インキュベートした。その後、試料を70℃において15分間インキュベートし、氷上において冷やした。その後、2μlのRNase Hを加え、試料を37℃において20分間インキュベートした。その後、cDNAを抗体の可変領域のPCR増幅の鋳型として使用した。PCRを、第1鎖cDNA、マウスIg−Primer Set (Novagen、カタログ番号69831−3)由来のプライマーおよびPlatinum Super Mix High Fidelity(Invitrogen、カタログ番号12532−016)を使用して実施した。重鎖可変領域を増幅するために、PCR試料を以下のように組み立てた:22.5μlのPCR Super Mix+0.25μlのリバースプライマーMuIgG V
H3’−2+1μlのcDNA+1.25μlの1種のフォワードプライマー(VH−A、VH−B)または0.5μlの1種のフォワードプライマー(VH−C、VH−D、VH−E、VH−F)。軽鎖可変領域を増幅するために、PCR試料を以下のように組み立てた:22.5μlのPCR Super Mix+0.25μlのリバースプライマーMuIgKV
L−3’−1+1μlのcDNA+1.25μlの1種のフォワードプライマー(VL−A、VL−B)または0.5μlの1種のフォワードプライマー(VL−C、VL−D、VL−E、VL−F、VL−G)。
【0300】
プライマーVH−A、VH−B、VL−AおよびVL−Bを含む試料に関して、以下のPCRサイクルを使用した(ステップ2から4を40−45サイクル):
1−変性94℃2分
2−変性94℃30秒
3−アニーリング50℃30秒
4−伸長68℃1分
5−最終伸長68℃5分
6−冷却4℃常時
プライマーVH−CからVH−FおよびVL−CからVL−Gを含む試料に関して、以下のPCRサイクルを使用した(ステップ2から4を40−45サイクル):
1−変性94℃2分
2−変性94℃30秒
3−アニーリング60℃30秒
4−伸長68℃1分
5−最終伸長68℃5分
6−冷却4℃常時
【0301】
PCR産物を1.2%アガロースゲル上で電気泳動させ、期待されたサイズ(400−500bp)に移動したバンドをDNAの抽出のために切り取った。DNAを、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen、カタログ番号28704)を使用して、以下のプロトコルに従って精製した:ゲル切片を秤量した。1体積のゲルに対して3体積のバッファーQGを、各ゲル切片に加えた。試料を、ゲル切片が完全に溶解するまで、50℃において10分間インキュベートし、2−3分ごとに混合した。その後、1ゲル体積のイソプロパノールを各試料に加え、混合した。その後、試料をQIAquickカラムに適用し、1分間、13000rpmにおいて遠心分離にかけた。洗浄のために、750μlのバッファーPEを試料に加え、1分間、13000rpmにおいて回転させた。その後、カラムをさらに1分間、13000rpmにおいて遠心分離にかけ、残存するエタノールを完全に除去した。DNAを、30μlのH
2Oを各カラムに加え、1分間、13000rpmにおいて回転させることによって抽出した。その後、精製されたPCR産物を配列決定し、可変領域配列を特定した(表9、下記)。
【0302】
【表14】
【0303】
実施例5:キメラ抗体の作製
抗DLL4ラットmAbの重鎖および軽鎖の可変ドメイン(表9、上記)を、突然変異ヒトIgG1(L234、235A)の重鎖およびカッパ軽鎖定常領域に、それぞれインフレームでクローニングした。得られたキメラ抗体の活性を、FACSに基づく結合アッセイおよび競合アッセイ(表10、下記)において確認し、それらの親ラットmAbと同様であった。
【0304】
【表15】
【0305】
実施例6:抗DLL4ラットモノクローナル抗体1A11のヒト化。
【0306】
1A11ラット抗DLL4抗体(表9、上記)をヒト化した。ヒト化変異体アミノ酸配列のVH.1、VH.1a、VH.1b、VH.2a、VL.1、VL.1a、VL.1b,およびVL.2a(表11、下記)を、最も相同のヒト生殖系列に基づくDNA配列に変換し、合成した。重鎖変異体に関して、ヒト生殖系列重鎖アクセプター配列のVH3−7FR1、VH3−7FR2、VH3−7FR3およびJH4FR4を使用した(表3、上記を参照されたい)。軽鎖変異体のVL.1、VL.1aおよびVL.1bに関して、ヒト生殖系列軽鎖アクセプター配列のO2 FR1、O2 FR2、O2 FR3およびJK2 FR4を使用した(表3、上記を参照されたい)。軽鎖変異体のVL.2aに関して、ヒト生殖系列軽鎖アクセプター配列のL2 FR1、L2 FR2、L2 FR3およびJK2 FR4を使用した(表4、上記を参照されたい)。個別の構築体を配列検証し、正確さを照合した。その後、陽性変異体を250mlのLuriaブロス+アンピシリンに接種し、37℃において一晩培養した。DNAを、変異体培養液からQiagen Hi speed maxi prep kit(12662)を使用して抽出した。
【0307】
【表16】
【0308】
ヒト化抗体を、各重鎖変異体と各軽鎖変異体とを、合計16種の変異体に組み合わせることによって作製した(表12、下記)。変異体1−4はそれぞれ、VH.1と各VL変異体とをペアで含有した:VL.1:0の復帰突然変異、VL.1a:4つの復帰突然変異、VL.1b:1つの復帰突然変異およびVL.2a:5つの復帰突然変異。変異体5−8はそれぞれ、VH.1aと各VL変異体とをペアで含有した:VL.1:2つの復帰突然変異、VL.1a:6つの復帰突然変異、VL.1b:3つの復帰突然変異およびVL.2a:7つの復帰突然変異。変異体9−12はそれぞれ、VH.1bと各VL変異体とをペアで含有した:VL.1:1つの復帰突然変異、VL.1a:5つの復帰突然変異、VL.1b:2つの復帰突然変異およびVL.2a:6つの復帰突然変異。変異体13−16はそれぞれ、VH.2aと各VL変異体とをペアで含有した:VL.1:3つの復帰突然変異、VL.1a:7つの復帰突然変異、VL.1b:4つの復帰突然変異、VL.2a:8つの復帰突然変異。
【0309】
【表17】
【0310】
16種の変異体すべてを、50mlのHEK293 6e懸濁細胞培養液に、60%対40%の軽鎖対重鎖構築体の比率で一時的にトランスフェクトした。1mg/mlのPEIを使用して、細胞をトランスフェクトした。振とうするフラスコにおいて6日後、細胞上清を収穫し、遠沈させて細胞をペレットにし、0.22μmのフィルターを介して濾過し、培養液汚染物からIgGを分離した。ヒトDLL4に結合する変異体を、まず捕捉結合ELISA(実施例1.2)を介して評価し、これは、濾過された293 6e細胞上清内でIgGを捕捉するためにヤギ抗ヒト−Fc捕捉抗体(Jackson ImmunoResearch、109−005−008)を利用した(表13、下記)。16種すべての変異体は、きわめて同等の親和性を有し、さらなる特徴付けのために精製した。
【0311】
16種すべての変異体(h1A11.1−h1A11.16)を、1上清体積のプロテインA IgG結合バッファー(Thermo Scientific 21001)および1mlのrProteinAセファロース・ファーストフロービーズ(GE Healthcare、17−1279−04)を加えることによってバッチ精製した。ビーズおよびバッファーを加えた上清を、一晩、4℃において揺り動かし、翌日、ビーズを、poly prepクロマトグラフィーカラム(Bio Rad、731−1550)に重力によって回収した。ひとたび上清がカラムを通過したら、ビーズを、10カラム体積の結合バッファーを用いて洗浄し、IgGを、Immunopure IgG溶出バッファー(Pierce、185 1520)を用いて抽出し、1mlのアリコートを回収した。IgGを含有する分画をプールし、PBSにおいて一晩、4℃において透析した。
【0312】
精製された変異体を、ヒト、マウスおよびカニクイザルのDLL4に対するそれらの親和性に関して、結合ELISA(実施例1.2、方法2)、Biacore(実施例1.1)およびフローサイトメトリ(FACS)によってさらに特徴付けた。16種すべての変異体が親組換え抗体1A11と同等の親和性を、3種すべてのアッセイにおいて示した(表13)。その後、ヒト化変異体をヒトおよびマウスのDLL4に対するそれらの機能性を、競合ELISA(実施例1.3)およびNotchリポーターアッセイ(実施例1.6)によって試験した。16種すべての変異体は、親組換え抗体1A11と同等の効力を両方のアッセイにおいて示した(表14、下記)。
【0313】
【表18】
【0314】
【表19】
【0315】
抗DLL41A11抗体をヒト化するための追加の設計
抗DLL4ラットモノクローナル抗体1A11をヒト化するための追加のVHおよびVLの設計を以下の表に示す。
【0316】
【表20】
【0317】
実施例7:抗DLL4ラットmAb38H12のヒト化
38H12ラット抗DLL4抗体(表9、上記)をヒト化した。ヒト化変異体アミノ酸配列VH.1、VH.1a、VH.1b、VH.2a、VL.1、VL.1a、VL.1bおよびVL.2a(表16、下記)を、最も相同のヒト生殖系列に基づくDNA配列に変換し、合成した。ヒト生殖系列重鎖アクセプター配列VH3−30 FR1、VH3−30 FR2、VH3−30 FR3およびJH3 FR4(表3を参照されたい)を、表16に示したヒト化重鎖変異体を作製するために使用した。ヒト生殖系列軽鎖アクセプター配列O2 FR1、O2 FR2、O2 FR3およびJK2 FR4(表4を参照されたい)を、表16に示したヒト化軽鎖変異体を作製するために使用した。個別の構築体を配列検証し、正確さを照合した。その後、陽性変異体を150mlのLuriaブロス+アンピシリンに接種し、37℃において一晩培養した。DNAを、変異体培養液からQiagen Hi speed maxi prep kit(12662)を使用して抽出した。
【0318】
【表21】
【0319】
ヒト化抗体を、各重鎖変異体と各軽鎖変異体とを、合計16種の変異体に組み合わせることによって作製した(表17、下記)。変異体1−4はそれぞれ、VH.1と各VL変異体とをペアで含有した:VL.1:0の復帰突然変異、VL.1a:4つの復帰突然変異、VL.1b:1つの復帰突然変異およびVL.2a:5つの復帰突然変異。変異体5−8はそれぞれ、VH.1aと各VL変異体とをペアで含有した:VL.1:4つの復帰突然変異、VL.1a:8つの復帰突然変異、VL.1b:5つの復帰突然変異およびVL.2a:9つの復帰突然変異。変異体9−12はそれぞれ、VH.1bと各VL変異体とをペアで含有した:VL.1:1つの復帰突然変異、VL.1a:5つの復帰突然変異、VL.1b:2つの復帰突然変異およびVL.2a:5つの復帰突然変異。変異体13−16はそれぞれ、VH.2aと各VL変異体とをペアで含有した:VL.1:5つの復帰突然変異、VL.1a:9つの復帰突然変異、VL.1b:6つの復帰突然変異、VL.2a:10の復帰突然変異。
【0320】
【表22】
【0321】
16種の変異体すべてを、50mlのHEK293 6e懸濁細胞培養液に、60%対40%の軽鎖対重鎖構築体の比で一時的にトランスフェクトした。1mg/mlのPEIを使用して、細胞をトランスフェクトした。振とうするフラスコにおいて7日後、細胞上清を収穫し、遠沈させて細胞をペレットにし、0.22μmのフィルターを介して濾過し、培養液汚染物からIgGを分離した。ヒトDLL4に結合する変異体を、まず捕捉結合ELISA(実施例1.2)を介して評価し、これは、濾過された293 6e細胞上清内でIgGを捕捉するためにヤギ抗ヒト−Fc捕捉抗体(Jackson Immunoresearch、109−005−008)を利用した(ELISA結合EC
50、表18、下記を参照されたい)。VH.1を含有する変異体は、他の変異体と比較して最も低い結合親和性を示し、スクリーニングの範囲外であると考えられる。VH.1はCDRをグラフトされており、フレームワークの復帰突然変異はない。
【0322】
その後、優れた結合体(h38H12.5−h38H12.16)を、1上清体積のプロテインA IgG結合バッファー(Thermo Scientific 21001)および800μlのrProteinAセファロース・ファーストフロービーズ(GE Healthcare、17−1279−04)を加えることによってバッチ精製した。ビーズおよびバッファーを加えた上清を、室温において4時間撹拌し、ビーズを、poly prepクロマトグラフィーカラム(Bio Rad、731−1550)に重力によって回収した。ひとたび上清がカラムを通過したら、ビーズを、10mlの結合バッファーを用いて洗浄し、IgGを、Immunopure IgG溶出バッファー(Pierce、185 1520)を用いて抽出し、100μlの1M Tris、pH8を用いて中和した1mlのアリコートを回収した。
【0323】
精製した変異体を、ヒトNotch−1競合ELISA(実施例1.4)でさらに特徴付け、これは、ELISAプレート上へのNotch−1 Fcのプレーティングおよびビオチン化ヒトDLL4+滴定された抗体の予備インキュベートのフォーマットを使用した。シグナルを、Notch−1 Fcに結合する遊離のビオチン化DLL4によって評価した。強い結合体は、低抗体濃度においてシグナルを阻害した。h38H12.5からh38H12.7は、他の変異体と比較して低い競合効力を示した(Notch競合ELISA EC
50、表18、下記を参照されたい)。
【0324】
結合ELISAによって決定した優れた結合変異体を、細胞に基づいたアッセイスクリーニングと同時にBiacore(実施例1.1)によって評価した。ヒトDLL4に関するK
Dは、すべての変異体に関して同様であった(下記、表18中のBiacore,K
Dを参照されたい)。変異体を、ヒトDLL4に対する直接結合(実施例1.3;下記、表18中のFACS結合EC
50)およびNotch−1シグナル伝達の阻害(実施例1.6;下記、表18中のNotchリポーターアッセイEC
50)を検査した、細胞に基づいたアッセイにおいてスクリーニングした。
【0325】
【表23】
【0326】
抗DLL4 38H12抗体をヒト化するための追加の設計
抗DLL4ラットモノクローナル抗体38H12をヒト化するための追加のVHおよびVLの設計を以下の表に示す。
【0327】
【表24】
【0328】
実施例8:h1A11.1.の親和性成熟
ヒト化抗体h1A11.1を、親和性成熟に関する鋳型として使用した。ライブラリーの設計の説明を以下に提供する。モノクローナル抗体の可変領域の配列番号付けは、カバット(Kabat)の番号付け(上記、またはworldwide website bioinf.org.uk/abs/#kabatnumを参照されたい)により注釈を付け、以下に記載のライブラリーの作製に使用した。
【0329】
3種のライブラリーを以下のように作った。
【0330】
H1+H2ライブラリー(ドーピング:76080808):
30、31、32、35、50、52、52a、55、56、57および58において11残基をドープした。
76位(V/I)において生殖系列およびh1A11の配列の間を切り替える。
10
9のライブラリーは、4個以下の突然変異残基を有する突然変異体を少なくとも3.7回サンプリングした。
4から6残基を担持する突然変異体を含むライブラリーの大部分を、ドーピングにより突然変異させた。
【0331】
H3ライブラリー(ドーピング:70101010)
95、96、97、98、99、100、100aおよび102において8残基をドープした。
93位(A/S)および101位(D/A)において生殖系列およびh1A11配列の間を切り替える。
10
9のライブラリーは、4個以下の突然変異残基を有する突然変異体を少なくとも4.7回サンプリングした。
4から5残基を担持する突然変異体を含むライブラリーの大部分を、ドーピングにより突然変異させた。
【0332】
LCライブラリー(ドーピング:70101010):
28、30、31、50、53、92、93、94および96位において9残基をドープした。
27(Q/E)、43(A/S)、49(Y/F)、52(S/N)、71(F/S)、87(Y/F)および91(S/Y)の7つの位置において、生殖系列およびh1A11配列の間で切り替える。
10
9のライブラリーは、4個以下の突然変異残基を有する突然変異体を少なくとも1回サンプリングした。
4から6残基を担持する突然変異体を含むライブラリーの大部分を、ドーピングにより突然変異させた。
rHCライブラリー:H1+H2およびH3ライブラリーのアウトプットを組み換える。
rHCLCライブラリー:H1+H2、H3およびLCライブラリーのアウトプットを組み換える。
【0333】
VHおよびVLのフレームワーク両方の生殖系列化は、予測された免疫原性を減少させた。h1A11VL.1aにおける最も望ましい生殖系列化突然変異は、S43AおよびS71Fであった。
【0334】
ドープされた残基に関して使用したコドンをここに明記した:
プロリンがドープされる場合、抗体配列中のもともとのコドンとは関係なくドーピングオリゴはC
(5−85−5−5)C
(5−85−5−5)Sコドンを有する。これらのコドンは、以下の基準に基づいて選択された。
1.非同義変異を増加する
2.突然変異した場合、より多くのアミノ酸の範囲を増加する
3.頻度の高いコドンを使用する
4.SSSおよびWWWコドンは避ける
ドーピング順序はA−C−G−Tであった。
【0335】
【化1】
【0336】
h1A11.1ライブラリーを酵母細胞に形質転換し、磁気、その後蛍光標識細胞分取により、低濃度のビオチン化DLL4細胞外ドメインに対して選択される細胞表面にディスプレイした。結合速度もしくは解離速度または両方の改善のための選択を実施し、親和性を調節されたhu1A11クローンの抗体タンパク質配列(表20および21、下記)を、さらなる特徴付けのためのIgGフォーマットに変換し戻すために酵母細胞から回収した。(表22中のクローンの要約を参照されたい)。表23は、フレームワーク領域(FR)およびCDRの両方において親和性成熟の選択の間に観察されたアミノ酸を挙げる。
【0337】
【表25】
【0338】
【表26】
【0339】
【表27】
【0340】
【表28】
【0341】
hu1A11.1親和性成熟クローン(表22)を発現させ、精製し、さらにインビトロで特徴付けた。それらの抗原結合親和性を、実施例1.1に記載のBiacore技術により決定し、表24および25(下記)に示す。細胞に結合したDLL4に対する結合のそれらの活性および細胞に結合したDLL4誘導性Notch活性化の阻害を、実施例1.3および1.6に記載の方法を使用してさらに検査し、表26(下記)に要約する。
【0342】
【表29】
【0343】
【表30】
【0344】
【表31】
【0345】
実施例9:ラットハイブリドーマ抗体の分子的同一性および物理化学的特性
DLL4に特異的なモノクローナル抗体の同一性を、下記のように質量分析によって決定した。
【0346】
h1A11.1の質量分析
軽鎖分子量の23,501ダルトンは、理論値とよく一致した。重鎖分子量は理論値とよく一致した。観察された分子量は50,190ダルトン;50,352ダルトン;および50,514ダルトンであり、差は、異なるグリコシル化の結果として162ダルトンに対応する。
【0347】
h38H12.11の質量分析
軽鎖分子量の23,408ダルトンは理論値とよく一致した。重鎖分子量は理論値とよく一致した。観察された分子量は50,368ダルトン;50,530ダルトンおよび50,692ダルトンであり、差は、異なるグリコシル化の結果として162ダルトンに対応する。
【0348】
抗体の溶解度を、ポリエチレングリコール(PEG)3000沈殿によって推定した。抗体の溶解度はまた直接、すなわち真正溶解度は、特定の溶液および/またはバッファー中の抗体をAmicon遠心濾過器を用いて濃縮し、その後、25℃および5℃において任意の沈殿を観察することによって決定した。安定性を、近紫外−円偏光二色性分光法(UV−CD)および示差走査熱量測定(DSC)により推測した。凍結および解凍に対する安定性ならびに上昇温度(加速安定性)における安定性を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により評価した。技術の詳細を実施例1.7に記載し、結果を以下に記載する。
【0349】
1A11に関する真正溶解度のスクリーニング結果
hu1A11.1、hu1A11.3、hu1A11.9、hu1A11.11および1A11組換え体を含む一連の1A11クローンに関して、それぞれ2mgを、Amicon遠心濾過器を用いて60mg/mlより高く濃縮した。25℃において、または5℃において1日保存後に、沈殿または混濁は観察されなかった。それぞれの濃度は、1A11.1に関して63mg/ml、1A11.3に関して76mg/ml、1A11.9に関して63mg/ml、1A11.11に関して69mg/mlおよびキメラの1A11に関して76mg/mlであった。
【0350】
実施例10:Biacore技術による抗DLL4抗体エピトープのグループ化
エピトープのグループ化を、Biacore2000、3000およびT100器を使用して実施した。対象となる抗体を、アミノカップリングを介してCM5チップ表面に直接固定した。同様に固定された無関係なIgGを有するフローセル1は、参照表面として機能する。まず、固定されたモノクローナル抗体(mAb)を、組換え抗原(少なくとも200nMの濃度で)に、120秒間、50μl/分で結合させた。その後、別の抗体を、50μl/mlで120−240秒間注入し、固定されたmAbにすでに結合した抗原に対して結合するその能力をモニターした。センサーグラムにおける追加の結合応答の不在は、2種のmAb(1種はチップ上に固定され、1種は液体相に導入された)のエピトープ中において重複を構成した。その後、アッセイの方向を液体相中に存在する抗体を固定するような方法に転換し、逆もまた同様であった。アッセイの両方の方向において追加の抗体結合ができなかったmAbのペアを、これらの実験において真に重複するとしてグループ化した。得られた重複するエピトープを有するmAbのグループ化を、以下の表27に示す。
【0351】
【表32】
【0352】
実施例11:インビトロの内皮細胞出芽アッセイにおけるDLL4抗体の活性
フィブリンゲルビーズ出芽アッセイを実施し、記載のようにHUVEC(2−3継代、Lonza)のインビトロ血管新生活性を検査した(Nakatsu,M.N.ら、2003年Microvasc.Res.66、102−112頁)。簡潔に言うと、フィブリノーゲン溶液を、アプロチニン(4ユニット/ml)およびトロンビン(50ユニット/ml)を用いて再構成した。Cytodex3ビーズ(Amersham Pharmacia Biotech)を、350−400HUVEC/ビーズを用いて一晩コーティングした。約20のHUVEC−コーティングしたビーズを、フィブリンクロット/96−ウェル組織培養プレートのウェル中に埋め込んだ。80%集密の正常なヒト線維芽細胞(NHLF、Lonza)由来の馴化培地を、ゲル上部にプレーティングした。DLL4抗体および対照抗体KLHを、15μg/mlでウェル上に加えた。10および12日において、画像を、倒立顕微鏡およびNikon CCDカメラを用いて撮影した。表28は、インビトロの内皮細胞出芽を強化するいくつかのDLL4抗体の活性を要約する(Nakatsuら、「Angiogenic sprouting and capillary lumen formation modeled by human umbilical vein endothelial cells(HUVEC)in fibrin gels:the role of fibroblasts and Angiopoietin−1」Microvasc.Res.66、102−112頁(2003年))。
【0353】
【表33】
【0354】
実施例12:ハイブリドーマ由来抗体のげっ歯類PK評価
抗DLL4抗体の薬物動態特性を評価するために、SCID−Beigeマウス(n=3/抗体)に、抗体の単回腹腔内(IP)用量を、1、5、10または30mg/kgのいずれかの濃度で、マウスDLL4に対する抗体の交差反応性に依存して投与した。長期的血清試料(HBS−EP+バッファー/時点中1:50に希釈された5μlの全血)を、各動物から21日にわたって採取した。血清濃度をDLL4−特異的Biacoreプラットフォームを使用して決定した。簡潔に言うと、ヒトDLL4をセンサーチップに固定し、試料を、フローセルに5μl/分で5分間注入し、得られた結合レベルを測定し、標準と比較した。血清濃度の時間プロファイルを使用して、C
max(ピーク血清濃度)、CL(クリアランス)およびt
1/2(抗体半減期)の薬物動態パラメーターを推定し、以下の表29に要約した。
【0355】
【表34】
【0356】
実施例13:DLL4抗体処置により、腫瘍成長がインビボで阻害された。
【0357】
腫瘍成長についての抗DLL4抗体の効果を、SCID−Beigeマウスに移植された皮下Calu−6異種移植片腫瘍について評価した。簡潔に言うと、2×10
6細胞を、雌SCID−Beigeマウスの右後ろ脇腹に皮下接種した。腫瘍を14−18日間確立させ、この時点で、腫瘍体積を電子キャリパー測定を使用して決定した。腫瘍サイズを、式:L×W
2/2を使用して計算した。マウスを、動物の各コホートが療法の開始前に同等の平均腫瘍体積(通常180から250mm
3の間)を有するように、処置群に割り当てた(n=10/群)。その後、動物に、週に2回を2週間(合計4用量)または週に1回を4週間(合計4用量)のいずれかで抗DLL4抗体を腹腔内に投薬した。腫瘍体積を、各群の平均腫瘍体積がエンドポイントの≧2,000mm
3に達するまでの実験期間、平均で週2回測定した。結果を以下の表30に示す。
【0358】
【表35】
【0359】
参照による組み込み
本出願を通して引用されていると思われるすべての引用文献(参考文献、特許、特許出願およびウェブサイトを含む)の内容は、文献がその場所に引用されているように、その全体がいかなる目的に対しても本明細書において参照により明確に組み込まれている。
【0360】
等価物
本発明は、その精神または本質的特徴から逸脱することなく他の特定の形態に具体化できる。したがって、前述の実施形態は、あらゆる点で、本明細書に記載の発明の限定ではなくむしろ例示と考えられる。故に、本発明の範囲は、前述の記載によってではなくむしろ添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と同等の意味および範囲内に入るすべての変形は、したがって本明細書に包含されることが意図される。