【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による二相系ステンレス鋼製構造物製造方法は、二相系ステンレス鋼から形成される防食対象構造物を準備することと、
防食対象構造物の表面の一部を形成し、防食対象構造物が溶接されることにより生成される溶接部および熱影響部を含み、且つ、防食対象構造物の深さ方向下側に溶体化熱処理されない溶接部および熱影響部があるよう溶体化熱処理対象部分を設定することと、その防食対象構造物のうちの溶体化熱処理対象部分が溶体化熱処理されるように、その防食対象構造物を加熱することとを備えている
。
【0007】
このような二相系ステンレス鋼製構造物製造方法によれば、防食対象構造物は、その溶体化熱処理対象部分が溶体化熱処理されることにより、その溶体化熱処理対象部分に形成されるα相とγ相の比を適切な範囲に形成させるとともに、σ相を低減させることができ、防食対象構造物の表面のうちのその溶体化熱処理対象部分により形成される表面が腐食することを防止することができる。このような二相系ステンレス鋼製構造物製造方法は、さらに、一部分のみを溶体化熱処理することにより、その防食対象構造物の全体を溶体化熱処理する他の二相系ステンレス鋼製構造物製造方法に比較して、より容易に実行されることができる。
【0008】
本発明による二相系ステンレス鋼製構造物製造方法は、その防食対象構造物を溶接することをさらに備えている。このとき、その溶体化熱処理対象部分は、その防食対象構造物が溶接されることにより生成される
溶接部および熱影響部を含み、その防食対象構造物が溶接された後に溶体化熱処理される。
【0009】
このような二相系ステンレス鋼製構造物製造方法は、防食対象構造物が溶接により形成されるときでも、防食対象構造物のうちの溶接による熱影響部が腐食することを防止することができる。
【0010】
その防食対象構造物は、その溶体化熱処理対象部分が溶体化熱処理されるときに、その溶体化熱処理対象部分が1050℃以上に加熱されるように、加熱される。
【0011】
このような二相系ステンレス鋼製構造物製造方法によれば、その溶体化熱処理対象部分は、その溶体化熱処理対象部分にσ相等の析出物が析出する析出量をより確実に低減することができ、その溶体化熱処理対象部分が形成する表面が腐食することをより確実に防止することができる。
【0012】
その防食対象構造物は、その溶体化熱処理対象部分が溶体化熱処理されるときに、その溶体化熱処理対象部分が1100℃以下に加熱されるように、加熱される。
【0013】
このような二相系ステンレス鋼製構造物製造方法によれば、その溶体化熱処理対象部分は、α/γ量比が適切になるように形成され、その溶体化熱処理対象部分が形成する表面が腐食することをより確実に防止することができる。
【0014】
その溶体化熱処理対象部分は、その防食対象構造物が誘導加熱
またはレーザ加熱装置により加熱されることにより、溶体化熱処理される。
【0015】
このような二相系ステンレス鋼製構造物製造方法によれば、その溶体化熱処理対象部分を急熱急冷することができる。
【0016】
本発明による二相系ステンレス鋼製構造物製造方法は、その溶体化熱処理対象部分が溶体化熱処理されることに並行して、その防食対象構造物のうちのその溶体化熱処理対象部分に隣接する部分を冷却することをさらに備えている。
【0017】
このような二相系ステンレス鋼製構造物製造方法は、その加熱により生成される熱影響部を低減し、溶体化熱処理対象部分の周辺が腐食することを防止することができる。
【0018】
本発明による二相系ステンレス鋼製構造物製造方法は、その溶体化熱処理対象部分が溶体化熱処理されている時刻からその溶体化熱処理対象部分の温度が700℃以下になる時刻までの時間が100秒未満になるように、その溶体化熱処理対象部分を冷却することをさらに備えている。
【0019】
α/γ量比の適正範囲の逸脱や析出物・金属間化合物の析出は、防食対象構造物の耐食性を低下させる。このような二相系ステンレス鋼製構造物製造方法によれば、その溶体化熱処理対象部分は、析出物・金属間化合物の析出が少なく、その溶体化熱処理対象部分が形成する表面が腐食することをより確実に防止することができる。
【0020】
本発明による二相系ステンレス鋼製構造物は、二相系ステンレス鋼から形成されている。その二相系ステンレス鋼製構造物は、さらに、溶体化熱処理された溶体化熱処理対象部分と
、前記溶体化熱処理対象部分の
前記二相系ステンレス鋼製構造物の深さ方向下側に、溶体化熱処理されなかった
溶接部及び熱影響部と溶体化熱処理されなかった部分とを備えている。このとき、その溶体化熱処理対象部分は、本二相系ステンレス鋼製構造物の表面の一部を形成している。
【0021】
このような二相系ステンレス鋼製構造物は、本発明による二相系ステンレス鋼製構造物製造方法により作製され、その溶体化熱処理対象部分の、α相とγ相の比を適切な範囲に形成させるとともに、溶体化熱処理対象部分に形成されるσ相が低減されることにより、防食対象構造物の表面のうちのその溶体化熱処理対象部分に形成される表面が腐食することを防止することができる。
【0022】
本発明による熱処理装置は、二相系ステンレス鋼から形成される防食対象構造物のうち
、前記防食対象構造物の表面の一部を形成し、前記防食対象構造物が溶接されることにより生成される溶接部および熱影響部を含む溶体化熱処理対象部分を、
前記溶体化熱処理部分の前記防食対象構造物の厚さ方向下側に、前記溶体化熱処理対象部分が溶体化熱処理されることにより溶体化熱処理されない熱影響部および溶接部を含むよう加熱する加熱装置と、その加熱装置に固定される冷却装置とを備えている。このとき、その溶体化熱処理対象部分は、その防食対象構造物の表面の一部を形成している。その防食対象構造物は、その溶体化熱処理対象部分が溶体化熱処理されることにより溶体化熱処理されない部分をさらに含んでいる。その冷却装置は、その防食対象構造物のうちのその溶体化熱処理対象部分に隣接する他の部分を冷却する。
【0023】
このような熱処理装置は、溶体化熱処理対象部分を溶体化熱処理するときに、防食対象構造物のうちのその溶体化熱処理対象部分に隣接する他の部分を容易に冷却することができる。このため、このような熱処理装置は、その防食対象構造物は、溶体化熱処理対象部分を加熱することに並行してその部分を冷却することにより、その溶体化熱処理対象部分が溶体化熱処理されるときに生成される熱影響部の量を低減することができ、防食対象構造物が腐食することを防止することができる。
【0024】
その加熱装置は、誘導加熱
またはレーザ加熱装置によりその溶体化熱処理対象部分を加熱する。
【0025】
このような熱処理装置は、防食対象構造物の形状に応じた形状に加熱装置が作製されることができ、様々な形状の防食対象構造物の溶体化熱処理対象部分を溶体化熱処理することができる。
【0026】
本発明による熱処理装置は、その溶体化熱処理対象部分を冷却する他の冷却装置をさらに備えている。
【0027】
このような熱処理装置は、溶体化熱処理対象部分が加熱された後に、溶体化熱処理対象部分をすぐに冷却することができる。このため、このような熱処理装置は、その溶体化熱処理対象部分のα相とγ相の比を適切な範囲に形成させるとともに、σ相析出量をより適切に低減することができ、その溶体化熱処理対象部分が形成する表面が腐食することをより確実に防止することができる。