特許第5964260号(P5964260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964260
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】エンジンの排ガスエネルギー回収装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/00 20060101AFI20160721BHJP
   F02B 39/16 20060101ALI20160721BHJP
   F02B 37/12 20060101ALI20160721BHJP
   F02B 41/10 20060101ALI20160721BHJP
   F02M 26/00 20160101ALI20160721BHJP
   F01N 5/04 20060101ALI20160721BHJP
   F01D 17/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   F02B37/00 302B
   F02B37/00 302F
   F02B39/16 H
   F02B37/12 302Z
   F02B37/00 302C
   F02B41/10 A
   F02M26/00 301
   F02M26/00 311
   F01N5/04 B
   F01D17/00 N
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-25846(P2013-25846)
(22)【出願日】2013年2月13日
(65)【公開番号】特開2014-152763(P2014-152763A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】今森 祐介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 亮
(72)【発明者】
【氏名】横山 隆雄
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−240156(JP,A)
【文献】 特開平01−116245(JP,A)
【文献】 特開平01−116233(JP,A)
【文献】 特開2005−337011(JP,A)
【文献】 特開平09−222026(JP,A)
【文献】 特開2010−216305(JP,A)
【文献】 特表2008−525690(JP,A)
【文献】 特開2004−036520(JP,A)
【文献】 実開昭59−130014(JP,U)
【文献】 特開2005−083317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00−39/16
F02B 41/10
F02M 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体から導かれた排ガスによって駆動されるタービン部と、該タービン部により駆動されて前記エンジン本体に吸気管を介して外気を圧送するコンプレッサ部とを有する排気タービン過給機と、
前記エンジン本体から導かれた前記排ガスによって駆動されるパワータービンと、
前記パワータービンの回転数を推定する回転数推定部と、
前記エンジン本体から排出された排ガスの一部を前記吸気管に供給する排ガス再循環装置と、
前記排ガス再循環装置から前記吸気管へのEGR量を検出するEGR量検出部と、
前記エンジン本体の排気マニホールドと前記パワータービンとを前記タービン部を経由しながら連通して外部に前記排気ガスを導く排気管と、
前記パワータービンの前記回転数と前記EGR量に基づいて、前記排気管のうち前記タービン部と前記パワータービンとの間に有する中段排気管の管内圧力を適正値に制御する中段圧力制御部と、を備えることを特徴とするエンジンの排ガスエネルギー回収システム。
【請求項2】
前記コンプレッサ部に導入される空気量を測定する空気流量センサと、
前記空気流量センサで測定された前記空気量に基づいて前記タービン部を流れる排ガス流量を調整する排気タービン制御部と、を更に備え、
前記空気流量センサで測定した前記空気量が所定の範囲内であれば、前記中段圧力制御部が前記中段排気管の管内圧力を制御し、
前記空気流量センサで測定した前記空気量が所定の範囲外であれば、前記排気タービン制御部が前記排ガス流量を制御することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの排ガスエネルギー回収システム。
【請求項3】
前記タービン部と前記パワータービンとの間には、前記パワータービンの上流側の管内圧力と前記パワータービンの下流側の管内圧力との圧力比を調整するウェイストゲートバルブが設けられ、
前記中段圧力制御部は、前記ウェイストゲートバルブを制御することによって、前記中段排気管の前記管内圧力を適正値に制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの排ガスエネルギー回収システム。
【請求項4】
前記パワータービンが可変翼付きタービンであり、
前記中段圧力制御部は、前記可変翼付きタービンの可変翼を調整することによって、前記中段排気管の前記管内圧力を適正値に制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの排ガスエネルギー回収システム。
【請求項5】
前記パワータービンの駆動により前記排気ガスのエネルギーを回収するエネルギー回収装置として、前記エンジン本体の駆動軸に前記パワータービンの回転力を伝達し、前記パワータービンの回転数を調整する変速機を含む動力伝達機構を更に備え、
前記中段圧力制御部は、前記変速機で前記パワータービンの前記回転数を調整することによって、前記中段排気管の前記管内圧力を適正値に制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの排ガスエネルギー回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR機能を備えるエンジンの排ガスエネルギー回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電用・汎用エンジンの排ガスの持つエネルギーをタービンで回収して、排ガスエネルギーとして有効活用する技術が開発されている。当該排ガスエネルギーを回収してエンジンの燃費率を改善する技術として、ターボコンパウンドやハイブリッドターボ、発電用パワータービンがある。ターボコンパウンドに関する従来技術として、例えば、変速機とターボコンパウンドを組み合わせターボコンパウンドエンジンの制御装置が特許文献1に開示されている。また、過給機付きエンジンの排ガスエネルギーをパワータービンで回収する従来技術として、例えば、回収装置エンジンの回転数及び負荷に応じて排気圧を制御可能として、燃費や煙を改善した過給機付エンジンの排気ガス再循環装置が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭63−035168号公報
【特許文献2】特開平08−240156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
過給機付きエンジンの燃焼後の排気ガスの一部を取り出して吸気側へ導き再度吸気させることによって、排ガス中の窒素酸化物 (NOx)の 低減や部分負荷時の燃費向上を図るために、当該エンジンにEGR(Exhaust Gas Recirculation:排気ガス再循環装置)が設けられるようになっている。EGR機能を備えたエンジンでは、エンジン回転数や負荷等のエンジンの幅広い運転条件に対して、適切なEGRガス量とエンジンへの導入空気量の両方を適正値に制御することが困難であった。特に、エンジンの配管や制御を工夫して適切なEGRガス量とエンジンへの導入空気量を適正値に制御させたとしても、パワータービンの回転数や圧力比等のパワータービンの運転条件が要求値から外れることが懸念される。前述の特許文献1及び特許文献2に開示の従来技術では、エンジンの燃費を改善できるものの、適切なEGRガス量とエンジンへの導入空気量の両方を適正値に制御するための対策に課題が残る。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、適切なEGRガス量とエンジンへの導入空気量の両方を適正値に制御することの可能な、新規かつ改良された過給機付きエンジンの排ガスエネルギー回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、エンジンの排ガスエネルギー回収システムであって、エンジン本体から導かれた排ガスによって駆動されるタービン部と、該タービン部により駆動されて前記エンジン本体に吸気管を介して外気を圧送するコンプレッサ部とを有する排気タービン過給機と、前記エンジン本体から導かれた前記排ガスによって駆動されるパワータービンと、前記パワータービンの回転数を推定する回転数推定部と、前記エンジン本体から排出された排ガスの一部を前記吸気管に供給する排ガス再循環装置と、前記排ガス再循環装置から前記吸気管へのEGR量を検出するEGR量検出部と、前記エンジン本体の排気マニホールドと前記パワータービンとを前記タービン部を経由しながら連通して外部に前記排気ガスを導く排気管と、前記パワータービンの前記回転数と前記EGR量に基づいて、前記排気管のうち前記タービン部と前記パワータービンとの間に有する中段排気管の管内圧力を適正値に制御する中段圧力制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様によれば、パワータービンの回転数とEGR量に基づいて、中段排気管の管内圧力を適正値に制御するので、エンジンへの導入空気量と独立してパワータービンの運転の安定化が図れる。
【0008】
このとき、本発明の一態様では、前記コンプレッサ部に導入される空気量を測定する空気流量センサと、前記空気流量センサで測定された前記空気量に基づいて前記タービン部を流れる排ガス流量を調整する排気タービン制御部と、を更に備え、前記空気流量センサで測定した前記空気量が所定の範囲内であれば、前記中段圧力制御部が前記中段排気管の管内圧力を制御し、前記空気流量センサで測定した前記空気量が所定の範囲外であれば、前記排気タービン制御部が前記排ガス流量を制御することとしてもよい。
【0009】
このようにすれば、適切なEGRガス量とエンジンへの導入空気量の両方をそれぞれ独立させて制御できるので、幅広いエンジンの運転条件に対応可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記タービン部と前記パワータービンとの間には、前記パワータービンの上流側の管内圧力と前記パワータービンの下流側の管内圧力との圧力比を調整するウェイストゲートバルブが設けられ、前記中段圧力制御部は、前記ウェイストゲートバルブを制御することによって、前記中段排気管の前記管内圧力を適正値に制御することとしてもよい。
【0011】
このようにすれば、ウェイストゲートバルブを制御することによって、パワータービンの運転の安定化が図れる。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記パワータービンが可変翼付きタービンであり、前記中段圧力制御部は、前記可変翼付きタービンの可変翼を調整することによって、前記中段排気管の前記管内圧力を適正値に制御することとしてもよい。
【0013】
このようにすれば、可変翼付きタービンの可変翼を調整することによって、パワータービンの運転の安定化が図れる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記パワータービンの駆動により前記排気ガスのエネルギーを回収するエネルギー回収装置として、前記エンジン本体の駆動軸に前記パワータービンの回転力を伝達し、前記パワータービンの回転数を調整する変速機を含む動力伝達機構を更に備え、前記中段圧力制御部は、前記変速機で前記パワータービンの前記回転数を調整することによって、前記中段排気管の前記管内圧力を適正値に制御することとしてもよい。
【0015】
このようにすれば、変速機でパワータービンの回転数を調整することによって、パワータービンの運転の安定化が図れる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、適切なEGRガス量とエンジンへの導入空気量の両方を適正値に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るエンジンの排ガスエネルギー回収システムの概略構成図である。
図2】本発明の他の実施形態に係るエンジンの排ガスエネルギー回収システムによる中段圧力の制御方法を示すフローチャートである。
図3】本発明の他の実施形態に係るエンジンの排ガスエネルギー回収システムの概略構成図である。
図4】本発明の他の実施形態に係るエンジンの排ガスエネルギー回収システムの概略構成図である。
図5】本発明の他の実施形態に係るエンジンの排ガスエネルギー回収システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0019】
(第1の実施形態)
まず、本発明の一実施形態に係るエンジンの排ガスエネルギー回収システムの構成について、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るエンジンの排ガスエネルギー回収システムの概略構成図である。
【0020】
本実施形態のエンジンの排ガスエネルギー回収システム100は、EGR機能を備えた過給機付きエンジンの排ガスからのエネルギーを回収するシステムであって、EGRガス量とエンジンへの導入空気量の双方をそれぞれ独立して適正値に制御できることを特徴とする。本実施形態の排ガスエネルギー回収システム100は、図1に示すように、エンジン本体102と、排気タービン過給機104と、パワータービン106と、回転数推定部113と、エネルギー回収装置108と、排ガス再循環装置130と、EGR量検出部138と、排気タービン制御部110と、中段圧力制御部112とを備える。
【0021】
エンジン本体102は、ディーゼルエンジンであり、クランク軸114には、プロペラ軸(図示せず)を介してスクリュープロペラ(図示せず)が直接的又は間接的に取り付けられている。エンジン本体102には、シリンダライナ(図示せず)、シリンダカバー(図示せず)等からなるシリンダ部116が設けられており、各シリンダ部116内には、クランク軸114と連結されたピストン(図示せず)が配置されている。各シリンダ部116の排気ポート118は、排気マニホールド120と接続されている。
【0022】
排気マニホールド120は、エンジン本体102に搭載され、第1の排気管L1を介して排気タービン過給機104のタービン部104aの入口側と接続される。そして、第2の排気管L2を介してパワータービン106の入口側と接続され、パワータービン106の出口側から第3の排気管L3を介して外部に排気ガスが導かれる。すなわち、排気マニホールド120から排出された排気ガスは、第1の排気管L1、タービン部104a、第2の排気管L2、パワータービン106、及び第3の排気管L3を経由して外部に排出される。
【0023】
一方、各シリンダ部116の給気ポート122は、給気マニホールド124と接続されており、給気マニホールド124は、給気管L4を介して排気タービン過給機104のコンプレッサ部104bと接続されている。コンプレッサ部104bの入口側に接続された給気管L5の途中には、消音器(図示せず)がそれぞれ配置されており、この消音器を通過した外気がコンプレッサ部104bに導かれるようになっている。
【0024】
また、コンプレッサ部104bの出口側に接続された給気管L4の途中には、空気冷却器(インタークーラ)126や図示しないサージタンク等が接続されている。コンプレッサ部104bを通過した空気は、これら空気冷却器126やサージタンク等を通過した後、エンジン本体102の給気マニホールド124に供給されるようになっている。また、本実施形態では、コンプレッサ部104bの入口側に接続された給気管L5には、コンプレッサ部104bに導入される空気量を測定する空気流量センサ111が設けられている。
【0025】
排気タービン過給機104は、ターボチャージャーであり、第1の排気管L1を介してエンジン本体102から導かれた排気ガス(燃焼ガス)によって駆動されるタービン部104aと、このタービン部104aにより駆動されてエンジン本体102に外気を圧送するコンプレッサ部104bと、これらタービン部104aとコンプレッサ部104bとの間に設けられて、これらを支持するケーシング(図示せず)とを備えている。
【0026】
ケーシングには、一端部をタービン部104a側に突出させ、他端部をコンプレッサ部104bに突出させた回転軸104cが挿通されている。回転軸104cの一端部は、タービン部104aを構成するタービン・ロータ(図示せず)のタービン・ディスク(図示せず)に取り付けられており、回転軸104cの他端部は、コンプレッサ部104bを構成するコンプレッサ羽根車(図示せず)のハブ(図示せず)に取り付けられている。
【0027】
パワータービン106は、第1の排気管L1及び第2の排気管L2を介して、エンジン本体102から導かれた排気ガスによって駆動される。パワータービン106は、排ガスによって回転駆動することによって、排気ガスのエネルギーがエネルギー回収装置108に回収される。本実施形態では、エネルギー回収装置108は、ロータシャフト107の回転力により電力を生成する発電機である。また、本実施形態では、エネルギー回収装置108には、パワータービン106の回転数を推定する回転数推定部113が設けられている。
【0028】
排ガス再循環装置130は、エンジン本体102の排気マニホールド120から排出された排ガスの一部を吸気管L4に供給して、排ガス中のNOxを低減する装置である。本実施形態では、排ガス再循環装置130は、再循環配管L6と、排ガス冷却器134と、EGR弁132と、EGR量検出部138と、吸入空気流量測定部136とを備える。再循環配管L6は、一方の端部が排気マニホールド120と連結され、他方の端部が吸気管L4と連結されている。また、再循環配管L6の経路中には、排ガス冷却器134、EGR弁132、及びEGR量検出部138が配置されている。
【0029】
排ガス冷却器134は、再循環配管L6の経路中に配置されており、エンジン本体102から排出され、再循環配管L6を流れる排ガスを冷却する。EGR弁132は、開度を調整可能な電磁弁であり、再循環配管L6を流れる排ガスの流量を調整する。EGR弁132は、再循環配管L6の排ガス冷却器134よりも下流側に配置されている。これにより、再循環配管L6を流れる排ガスが排ガス冷却器134を通過した後、EGR弁132を通過する。
【0030】
EGR量検出部138は、再循環配管L6を流れる排ガスの流量を計測するセンサであり、再循環配管L6の吸気管L4との連結部の近傍に配置されている。EGR量検出部138は、再循環配管L6から吸気管L4に流入する前の排ガスの流量を計測する。吸入空気流量測定部136は、再循環配管L6からの排ガスが合流する前の吸気管L4を流れる空気の流量を計測するセンサである。
【0031】
中央制御部109は、エンジンの排ガスエネルギー回収システム100の各種動作を制御し、排気タービン制御部110と中段圧力制御部112とを含む。排気タービン制御部110は、空気流量センサ111で測定された空気量に基づいてタービン部104aを流れる排ガス流量を調整する。中段圧力制御部112は、パワータービン106の回転数とEGR量に基づいて、排気管L1、L2、L3のうちタービン部104aとパワータービン106との間に有する中段排気管L2の管内圧力を適正値に制御する。
【0032】
本実施形態では、これら制御部110、112が互いに独立して制御可能なことを特徴とする。すなわち、空気流量センサ111で測定された空気量の変動によらず、中段圧力制御部112は、パワータービン106の回転数とEGR量に基づいて、中段排気管L2の管内圧力を適正値に制御するので、エンジン本体102への導入空気量と独立してパワータービン106の運転の安定化が図れる。換言すると、エンジン本体102への導入空気量が一定のままでも、EGR量を適正値に制御して、導入空気量とEGR量を常に適正値として、エンジンの燃費率の低減や排ガス低減を図ることができる。
【0033】
次に、本実施形態に係るエンジンの排ガスエネルギー回収システムによる中段圧力の制御方法について、図面を使用しながら説明する。図2は、本発明の他の実施形態に係るエンジンの排ガスエネルギー回収システムによる中段圧力の制御方法を示すフローチャートである。
【0034】
まず、コンプレッサ104bに導入される吸気管L5の空気流量を空気流量センサ111で測定する(空気流量測定工程S10)。次に、この空気流量の測定値が所定範囲内にあるか否かを中央制御部109で判定する(空気流量判定工程S11)。
【0035】
空気流量センサ111で測定した空気量が所定の範囲外であれば、排気タービン制御部110が可変ターボとなるタービン部104aの回転速度を調整することによって、排ガス流量を制御する(可変ターボ調整工程S12)。一方、空気流量センサ111で測定した空気量が所定の範囲内であれば、次に、パワータービン回転数、EGR量を検出する(検出工程S13)。
【0036】
その後、中段排気管L2の管内圧力(中段圧力)が適正値であるか否かの判定を中央制御部109で行い(中段圧力判定工程S14)、中段圧力が適正値でなければ、中段圧力制御部112が中段排気管L2の管内圧力を適正値に制御する。中段圧力制御部112による中段排気管L2の管内圧力の調整方法は、後述するように、ウェイストゲートや、可変翼機構、変速機を調整することにより行われる。
【0037】
このように、本実施形態では、排ガスエネルギー回収システム100の各種制御因子の自由度を1つ増やすことによって、空気量とEGR量の両方を独立して制御可能とした。これにより、パワータービン回転数等のシステムの制限条件内で、常に適正な空気量とEGR量を達成でき、燃費率低減や排ガス低減を図ることができる。なお、本実施形態では、発電用パワータービン付きシステムに適用しているが、ターボコンパウンドシステムにも適用可能である。また、本実施形態では、EGR量やパワータービン回転数をセンサ等での計測データとしているが、回転数や負荷からマップにより推定しても良い。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態に係るエンジンの排ガスエネルギー回収装置の構成について、図面を使用しながら説明する。図3は、本発明の他の実施形態に係るエンジンの排ガスエネルギー回収システムの概略構成図である。
【0039】
本実施形態のエンジンの排ガスエネルギー回収システム200は、エネルギー回収装置208がロータシャフト207の回転力により電力を生成する発電機に適用して、中段側排気管L2の管内圧力の調整をウェイストゲートバルブ240で行うことを特徴とする。すなわち、中段圧力制御部212は、排気タービン過給機204のタービン部204aとパワータービン206との間に設けられるウェイストゲートバルブ240を制御することによって、中段排気管L2の管内圧力(中段圧力)を制御する。
【0040】
本実施形態の排ガスエネルギー回収システム200は、図3に示すように、エンジン本体202と、排気タービン過給機204と、パワータービン206と、エネルギー回収装置208と、排ガス再循環装置230と、EGR量検出部238と、排気タービン制御部210と、中段圧力制御部212とを備える。
【0041】
本実施形態では、中段排気管L2の管内圧力を適正値に設定するために、中段圧力制御部212は、パワータービン206の回転数とEGR量に基づいて、ウェイストゲートバルブ240を制御する。具体的には、中段圧力制御部212は、パワータービン206の回転数とEGR量に基づいて、パワータービン206の上流側の排気管L2の管内圧力とパワータービン206の下流側の排気管L3の管内圧力との圧力比をウェイストゲートバルブ240で調整して、中段圧力を制御する。
【0042】
すなわち、本実施形態では、中段圧力制御部212は、ウェイストゲートバルブ240の開度を制御して、EGR量とパワータービン回転数に関連する入力値が目標値になるように制御する。このように、ウェイストゲートバルブ240を調整することによって、パワータービン206の上流側の管内圧力と下流側の管内圧力との圧力比を調整しながら、中段排気管L2の管内圧力を適正値に設定して、パワータービン206の運転の安定化を図れるようにした。このため、ウェイストゲートバルブ240を設けることによって、既存の固定翼のパワータービンを利用して、中段圧力を制御することができるので、システムの製造コストの低減及びパワータービンによるエネルギー回収システムの信頼性の向上が図れる。
【0043】
(第3の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態に係るエンジンの排ガスエネルギー回収装置の構成について、図面を使用しながら説明する。図4は、本発明の他の実施形態に係るエンジンの排ガスエネルギー回収システムの概略構成図である。
【0044】
本実施形態のエンジンの排ガスエネルギー回収システム300は、パワータービン306が可変翼付きタービンであり、かつエネルギー回収装置308がロータシャフト307の回転力により電力を生成する発電機に適用したものである。本実施形態の排ガスエネルギー回収システム300は、可変翼付きタービン306の可変翼306aを調整することによって、中段側排気管L2の管内圧力を適正値に調整することを特徴とする。すなわち、中段圧力制御部312は、可変翼付きタービン306の可変翼306aを調整することによって、中段排気管L2の管内圧力(中段圧力)を制御する。
【0045】
本実施形態の排ガスエネルギー回収システム300は、図4に示すように、エンジン本体302と、排気タービン過給機304と、パワータービン306と、エネルギー回収装置308と、排ガス再循環装置330と、EGR量検出部338と、排気タービン制御部310と、中段圧力制御部312とを備える。
【0046】
本実施形態では、中段排気管L2の管内圧力を適正値に設定するために、中段圧力制御部312は、パワータービン306の回転数とEGR量に基づいて、可変翼付きタービン306を制御する。具体的には、中段圧力制御部312は、パワータービン206の回転数とEGR量に基づいて、可変翼付きタービン306の可変翼306aを調整することによって、中段排気管L2の管内圧力を適正値になるように制御する。
【0047】
すなわち、本実施形態では、中段圧力制御部312は、パワータービン306の可変翼306aの位置や形状を制御して、EGR量とパワータービン回転数に関連する入力値が目標値になるように制御する。このように、可変翼306aを調整することによって、中段排気管L2の管内圧力を適正値に設定して、パワータービン306の運転の安定化を図れるようにした。また、パワータービン306を可変翼タービンとすることによって、排ガスの全量をパワータービン306に通すようになるので、中段圧力を適正値に制御しながら、第2の実施形態と比べて更に回収対象となる排ガスエネルギーの回収量の増加が図れるようになる。
【0048】
(第4の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態に係るエンジンの排ガスエネルギー回収装置の構成について、図面を使用しながら説明する。図5は、本発明の他の実施形態に係るエンジンの排ガスエネルギー回収システムの概略構成図である。
【0049】
本実施形態のエンジンの排ガスエネルギー回収システム400は、エネルギー回収装置をエンジン駆動軸414にパワータービン406の回転力を伝達する動力伝達機構440とするターボコンパウンドに適用したものである。また、動力伝達機構440には、パワータービン406の回転数を調整する変速機442が含まれる。本実施形態の排ガスエネルギー回収システム400は、変速機442でパワータービン406の回転数を調整することによって、中段排気管L2の管内圧力を適正値に制御することを特徴とする。すなわち、中段圧力制御部412は、変速機442を調整することによって、中段排気管L2の管内圧力(中段圧力)を制御する。
【0050】
本実施形態の排ガスエネルギー回収システム400は、図5に示すように、エンジン本体402と、排気タービン過給機404と、パワータービン406と、エネルギー回収装置(動力伝達機構)440と、排ガス再循環装置430と、EGR量検出部438と、排気タービン制御部410と、中段圧力制御部412とを備える。
【0051】
本実施形態のエネルギー回収装置440は、エンジンの駆動軸414にパワータービン406の回転力を伝達する動力伝達機構である。エネルギー回収装置440は、パワータービン406の回転エネルギーをエンジン駆動軸414に伝達するための複数の歯車440a、440b、440c、440dが設けられ、歯車440bと歯車440cとの間に、パワータービン406の回転数を変更する変速機442が設けられている。
【0052】
本実施形態では、中段排気管L2の管内圧力を適正値に設定するために、中段圧力制御部412は、パワータービン406の回転数とEGR量に基づいて、変速機442を調整することによって、パワータービン406の回転数を制御して、中段排気管L2の管内圧力を適正値に設定する。すなわち、本実施形態では、中段圧力制御部412は、動力伝達機構440の変速機442を調整して、EGR量とパワータービン回転数に関連する入力値が目標値になるように制御する。このように、変速機442を調整することによって、中段排気管L2の管内圧力を適正値に設定して、パワータービン406の運転の安定化を図れるようにした。このため、ターボコンパウンドシステムにおけるエンジン性能を適正値に保つことが可能となる。
【0053】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0054】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、エンジンの排ガスエネルギー回収システムの構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0055】
100、200、300、400 排ガスエネルギー回収システム
102、202、302、402 エンジン本体
104、204、304、404 排気タービン過給機
104a、204a、304a、404a タービン部
104b、204b、304b、404b コンプレッサ部
106、206、306、406 パワータービン
108、208、308 エネルギー回収装置
110、210、310、410 排気タービン制御部
112、212、312、412 中段圧力制御部
120 排気マニホールド
240 ウェイストゲートバルブ
306a 可変翼
414 (エンジンの)駆動軸
440 動力伝達機構(エネルギー回収装置)
442 変速機
L1 排気管(第1の排気管)
L2 中段排気管(第2の排気管)
L3 排気管(第3の排気管)
L4、L5 吸気管
図1
図2
図3
図4
図5