(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
[ポリエポキシド(A)]
本発明におけるポリエポキシド(A)は、ビスフェノールA型ポリエポキシド(A1)、および(A1)以外のビスフェノール型ポリエポキシド(A2)を含有してなる。ここにおいてポリエポキシドは、エポキシ基を2〜10個、好ましくは2〜3個、さらに好ましくは2個有するものを指す。
【0008】
(A1)としては、下記一般式(1)で表される、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合生成物であるビスフェノールA型ジグリシジルエーテルが挙げられる。
【化1】
【0009】
一般式(1)中のnは平均数であり、低温域での作業性の観点から、好ましくは0〜0.5、さらに好ましくは0〜0.2である。ここにおいてnが0の場合はビスフェノールAジグリシジルエーテルを表す。
【0010】
(A2)としては、下記一般式(2)で表される、ビスフェノールA以外の各種ビスフェノールとエピクロロヒドリンとの重縮合物であるビスフェノール型ジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0012】
一般式(2)中のnは平均数であり、低温域での作業性の観点から、好ましくは0〜0.5、さらに好ましくは0〜0.2;Xはヘテロ原子で置換されていてもよい2価の炭化水素基またはSO
2基;ZはHまたは1価の炭化水素基を表す。
式(2)中の該[X、Z]の組合せとしては、[CH
2、H](ビスフェノールF型、以下記号型のみで略記)、[CH(CH
3)、H](E型)、[SO
2、H](S型)、[C(CH
3)CH
2CH
3、H](B型)、[C(CH
3)Ph、H](AP型)、[C(CF
3)
2、H](AF型)、[C(Ph)
2、H](BP型)、[C(CH
3)
2、CH
3][C型(クレゾール型)]、[C=C(Cl)
2、H](C型)、[C(CH
3)
2、CH(CH
3)
2](G型)、[C(CH
3)
2−m−Ph−C(CH
3)
2、H](M型)、[C(CH
3)
2−p−Ph−C(CH
3)
2、H](P型)、[C(CH
3)
2、Ph](PH型)、[3,3,5−(CH
3)
3−1,1−cHx、H](TMC型)および[1,1−cHx、H](Z型)等が挙げられる。なお、上記においてPhはフェニル基またはフェニレン基、cHxはシクロヘキシリデン基を表す。
【0013】
これらの(A2)のうち、低温域での作業性の観点から好ましいのは[X、Z]の組合せが、[CH
2、H](F型)、[CH(CH
3)、H](E型)、[C(CH
3)CH
2CH
3、H](B型)、[SO
2、H](S型)、さらに好ましいのは[CH
2、H](F型)、[CH(CH
3)、H](E型)である。
【0014】
(A)中の(A1)と(A2)の重量比は、硬化物の機械的強度および低温域での作業性、チクソトロピー性増大の観点から好ましくは20/80〜80/20、さらに好ましくは25/75〜75/25、とくに好ましくは30/70〜70/30である。(A)が、(A1)単独または(A2)単独の場合は、低温域での作業性、チクソトロピー性または硬化物の機械的強度が悪くなる。
【0015】
(A)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記(A1)、(A2)以外のポリエポキシド(A3)〜(A6)を含有させることができる。
【0016】
(A3)ポリグリシジルエーテル
(A31)多価(2価〜4価またはそれ以上)フェノールのポリジグリシジルエーテル
多価フェノール[炭素数(以下Cと略記)6以上かつMn(数平均分子量、測定は後述のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。)5,000以下のもの、例えばカテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ピロガロール、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールまたはクレゾールノボラック樹脂]のポリグリシジルエーテル;
【0017】
(A32)脂肪族ポリ(2価〜4価またはそれ以上)オールのポリグリシジルエーテル
脂肪族ポリオール[C2以上かつMn5,000以下のもの、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール(以下PEGと略記。分子量106以上かつMn4,000以下。)、ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記。分子量134以上かつMn5,000以下。)、ポリテトラメチレングリコール(以下PTMGと略記。分子量162以上かつMn5,000以下。)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール]のポリグリシジルエーテル;
【0018】
(A33)脂環含有ポリ(2価〜4価またはそれ以上)オールのポリグリシジルエーテル
脂環含有ポリオール[C3以上かつMn5,000以下のもの、例えば1,4−シクロヘキサンジオール、1,3,5−シクロヘキサントリオールおよびこれらのアルキレンオキサイド(C2〜C6)(1〜20モル)付加物]のポリグリシジルエーテル
【0019】
(A34)芳香環含有多価(2価〜4価またはそれ以上)アルコールのポリグリシジルエーテル
芳香環含有多価アルコール[C8以上かつMn5,000以下のもの、例えばビスフェノールAのアルキレンオキサイド(C2〜C6)(1〜20モル)付加物、m−およびp−キシリレングリコール、ベンゼンジエタノール、1,2−ジフェニルエタン−1,2−ジオールおよびこれらのアルキレンオキサイド(C2〜C6)(1〜20モル)付加物]のポリグリシジルエーテル;
【0020】
(A4)ポリグリシジルエステル
(A41)芳香族多価(2価〜6価またはそれ以上)カルボン酸のグリシジルエステル
芳香族多価カルボン酸(C6〜C20またはそれ以上)のポリグリシジルエステル、例えば芳香族ジカルボン酸(オルト−、イソ−およびテレフタル酸等)ジグリシジルエステル、芳香族トリカルボン酸(トリメリット酸等)トリグリシジルエステル;
(A42)脂肪族もしくは脂環含有多価カルボン酸(C6〜C20またはそれ以上)のポリグリシジルエステル
例えば脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸等)ジグリシジルエステル、脂肪族トリカルボン酸(トリカルバリル酸等)トリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートの(共)重合体(重合度は2〜10)、脂環含有多価カルボン酸(ダイマー酸等)のポリグリシジルエステル;
【0021】
(A5)ポリグリシジルアミン(C6〜C20またはそれ以上で、かつ窒素原子に直結する活性水素を2個〜10個またはそれ以上有するもの)のグリシジルアミン
(A51)芳香族アミンのポリグリシジルアミン
例えばN,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノエチルジフェニルメタン、N,N,o−トリグリシジルアミノフェノール;
(A52)脂肪族アミンのポリグリシジルアミン
例えばN,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン;
(A53)脂環含有もしくは複素環含有アミン(C6〜C20またはそれ以上で、かつ窒素原子に直結する活性水素を2個〜10個またはそれ以上有するもの)のポリグリシジルアミン
脂環含有アミンのポリグリシジルアミン(例えばN,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミンの水添化物)、複素環含有アミンのポリグリシジルアミン(例えばトリスグリシジルメラミン);
【0022】
(A6)その他のポリエポキシド
(A61)脂肪族ポリ(2価〜6価またはそれ以上)エポキシド
C6以上かつMn2,500以下のもの、例えばエポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油;
(A62)脂環式ポリ(2価〜4価またはそれ以上)エポキシド
C6以上かつMn2,500以下のもの、例えばビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエーテル。
【0023】
上記(A)中の、(A1)および(A2)の合計含有量(重量%)は、硬化物の機械的強度の観点から好ましくは80%以上、さらに好ましくは90〜100%;(A3)〜(A6)の合計含有量は、通常30%以下、硬化物の機械的強度の観点から好ましくは20%以下である。
【0024】
(A)のエポキシ当量(エポキシ基1個当たりの分子量)は、硬化物の機械的強度および低温域での作業性の観点から好ましくは125〜750、さらに好ましくは150〜500である。なお、該エポキシ当量はJIS K7236に準じて求められる。
【0025】
[ポリアミン(B)]
本発明におけるポリアミン(B)は、N原子に直結する活性水素を2〜50個、好ましくは2〜20個、さらに好ましくは3〜8個有する。該個数が2個未満では硬化物の機械的強度が劣るものとなり、50個を超えると低温域での作業性が悪くなる。
【0026】
(B)の分子量は、硬化物の機械的強度および低温域での作業性の観点から好ましくは30以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定は後述のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]25,000以下、さらに好ましくは45以上かつMn1,600以下である。
【0027】
(B)の活性水素当量(活性水素1個当たりの分子量)は、硬化物の機械的強度および工業上の観点から好ましくは15〜500、さらに好ましくは20〜200である。
【0028】
(B)としては、下記(B1)〜(B8)、およびこれらの2種またはそれ以上の混合物が挙げられる。
【0029】
(B1)脂肪族ポリ(2〜7価)アミン
C2以上かつMn500以下のもの、例えばC2〜10のアルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)、ポリアルキレン(C2〜10)ポリ(3価〜6価またはそれ以上)アミン[ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等]、並びに、それらのアルキル(C1〜4)またはヒドロキシアルキル(C2〜4)置換体、例えばジアルキル(C1〜3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、N,N’−ジ−n−ブチル−1,6−ヘキサンジアミン;
【0030】
(B2)脂環含有ポリ(2〜3価)アミン
C4〜15のもの、例えば1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4´−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン);
【0031】
(B3)複素環含有ポリ(2〜3価)アミン
C4〜15のもの、例えばピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン;
【0032】
(B4)芳香環含有ポリアミン
C8〜15のもの、例えばキシリレンジアミン、テトラクロル−p−キシリレンジアミン;
【0033】
(B5)ポリアミドポリアミン
分子量200以上かつMn1,000以下のもの、例えばジカルボン酸(ダイマー酸等)と過剰の[カルボキシル基1当量当り2当量以上の前記(B1)等]との縮合により得られるポリアミドポリアミン;
【0034】
(B6)ポリエーテルポリアミン
分子量100以上かつMn1,000以下のもの、例えばポリエーテルポリオール[前記ポリアルキレングリコール等]のシアノエチル化物の水添化物;
【0035】
(B7)エポキシ付加ポリアミン
分子量100以上かつMn1,000以下のもの、例えばエポキシ化合物1モルと前記(B1)1〜30モルの反応物〔エポキシ化合物[前記ポリエポキシド(A)およびモノエポキシド(ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等)等]1モルと前記脂肪族ポリアミン(B1)1〜30モルの反応物(分子量100以上かつMn1,000以下)等〕;
【0036】
(B8)シアノエチル化ポリアミン
分子量100以上かつMn500以下のもの、例えばアクリロニトリルと前記(B1)の反応物(ビスシアノエチルジエチレントリアミン等);
【0037】
(B9)ポリアリルアミン
分子量55以上かつMn680以下のもの、例えば商品名「PAA−01」、「PAA−03」[いずれもニットーボーメディカル(株)製]が挙げられる。
【0038】
(B10)その他のポリアミン
(B101)ヒドラジン化合物(分子量32以上かつMn500以下のもの、例えばヒドラジン、モノアルキルヒドラジン)
(B102)ジヒドラジッド化合物[分子量74以上かつMn1,000以下のもの、例えば酸(コハク酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等)ジヒドラジッド]
(B103)グアニジン化合物(分子量59以上かつMn500以下のもの、例えばブチルグアニジン,1−シアノグアニジン)
(B104)シアナミド化合物(分子量42以上かつMn500以下のもの、例えばジシアンジアミド)。
【0039】
上記(B)のうち、硬化物の機械的強度の観点から好ましいのは(B1)〜(B5)、さらに好ましいのは(B1)、(B4)、(B5)、とくに好ましいのは(B1)および(B4)である。
【0040】
[充填剤(C)]
本発明における充填剤(C)としては、有機充填剤(C1)、無機充填剤(C2)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0041】
(C1)としては、例えばシリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリスチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアルキレン樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、塩化ビニル樹脂が挙げられる。
【0042】
(C2)としては、例えばケイ酸塩(タルク、クレー、マイカ、ガラス等)、酸化物(酸化チタン、アルミナ、シリカ等)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等)、水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、(亜)硫酸塩(硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等)、ホウ酸塩(ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等)、窒化物(窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等)、炭素材料(グラファイト、カーボンブラック等)が挙げられる。
【0043】
これらの(C)のうち、硬化物の機械的強度および工業上の観点から、好ましいのは(C2)であり、さらに好ましいのは酸化物および炭酸塩、とくに好ましいのはシリカおよび炭酸カルシウムである。
【0044】
(C)の形状は、作業性の観点から粒子状であることが好ましい。また、(C)の体積平均粒子径は低温域での粘度、流動性およびカプラーへの注入時のフィラー詰まり防止等の作業性の観点から好ましくは0.1〜800μm、さらに好ましくは0.5〜250μmである。
【0045】
[鉄筋継ぎ手用グラウト材組成物]
本発明の鉄筋継ぎ手用グラウト材組成物は、前記(A)、(B)および(C)を含有してなる。
【0046】
該組成物中の(A)〜(C)の各含有量は、(A)〜(C)の合計重量に基づいて、(A)は、低温域での作業性および硬化物の機械的強度の観点から好ましくは5〜60%、さらに好ましくは8〜55%、とくに好ましくは10〜50%;(B)は、同様の観点から好ましくは5〜60%、さらに好ましくは8〜55%、とくに好ましくは10〜50%;(C)は、硬化物の機械的強度および低温域での作業性の観点から好ましくは30〜70%、さらに好ましくは35〜65%、とくに好ましくは40〜60%である。
【0047】
(A)と(B)の反応当量比[エポキシ基数と活性水素数の比]は、硬化物の機械的強度の観点から好ましくは0.4〜2.5、さらに好ましくは0.5〜2.0、とくに好ましくは0.8〜1.5である。
【0048】
本発明のグラウト材組成物には、さらにポリオールの、エチレンオキサイド(以下、EOと略記)および/またはC3〜6のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)付加物(D)を含有させることができる。
(D)を含有させることで、グラウト材組成物のチクソトロピー性をさらに高めることができ、前記の鉄筋継ぎ手用カプラーに注入後のグラウト材組成物のたれ防止を図ることができる。
該ポリオールとしては、2価〜8価またはそれ以上の多価アルコール(C2〜30)、2価〜8価またはそれ以上の多価フェノール(C6〜40)、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0049】
該多価アルコールとしては、2価アルコール[例えばエチレングリコール(以下、EGと略記)、プロピレングリコール(以下、PGと略記)、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジEG、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、2,2−ビス(4,4’−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン]、3価アルコール[例えばグリセリン(以下、GRと略記)、トリメチロールプロパン(以下、TMPと略記)]、4〜8価アルコール[例えばペンタエリスリトール(以下、PEと略記)、ジGR、α−メチルグルコシド、ソルビトール(以下、SOと略記)、キシリット、マンニット、ジPE、グルコース、フルクトース、ショ糖]等が挙げられる。
該多価フェノールとしては、2価のもの[例えばヒドロキノン、カテコール、ビスフェノールA、FおよびS、ナフタレンジオール、アントラセンジオール]、3価〜8価またはそれ以上のもの〔例えばヒドロキシキノール、ピロガロール、トリスヒドロキシフェニルイソプロピルベンゼン[商品名「トリスフェノールPA」、三井石油化学(株)製]、フェノールノボラック、クレゾールノボラック〕等が挙げられる。
【0050】
これらのポリオールのうち、グラウト材組成物のチクソトロピー性の観点から好ましいのは多価アルコール、さらに好ましいのは2〜4価でC2〜10の多価アルコール、とくに好ましいのは2〜3価でC3〜6の多価アルコールである。
前記AOとしては、プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,2−、2,3−および1,3−ブチレンオキシド、1,2−ヘキシレンオキシド等が挙げられ、グラウト材組成物のチクソトロピー性の観点から好ましいのはPOである。
【0051】
(D)のうち、チクソトロピー性の観点から好ましいのは前記ポリオールへのEOおよびAO(C3〜6)をともに付加させたものである。EOおよびAO(C3〜6)をともに付加させる場合の付加形式はランダム付加でもブロック付加でもよいが、チクソトロピー性の観点からランダム付加が好ましい。
ポリオールに対するEOおよびAO(C3〜6)の合計の平均付加モル数は、グラウト材組成物のチクソトロピー性およびハンドリング性の観点から、好ましくは3〜150、さらに好ましくは15〜130である。
EOとAO(C3〜6)の付加モル数比は、組成物のチクソトロピー性および硬化物の耐水性の観点から好ましくは0.2〜10、さらに好ましくは0.3〜8、とくに好ましくは0.5〜7である。
【0052】
(D)のMnは、グラウト材組成物のチクソトロピー性およびハンドリング性の観点から好ましくは200〜10,000、さらに好ましくは1,000〜8,000である。
【0053】
ポリオールのEOおよび/またはAO(C3〜6)付加物である(D)の製造は、公知の方法で行うことができ、触媒(アルカリ触媒、アミン触媒、酸触媒)の存在下、常圧または加圧下で1段階または多段階で行われる。
【0054】
本発明におけるMnのGPC測定条件は下記のとおりである。
装置 : 東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム : TSK gel GMH
XL 2本と
TSK gel Multipore H
XL−M 1本を直列に接続
測定温度 : 40℃
溶媒 : テトラヒドロフラン(以下、THFと略記)
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量: 100μl
検出装置 : 示差屈折計
標準 : ポリスチレン
【0055】
(D)の使用量は、前記(A)〜(C)の合計重量に基づいて、グラウト材組成物のチクソトロピー性および硬化物の機械的強度の観点から好ましくは0.1〜5%、さらに好ましくは0.2〜3%、とくに好ましくは0.5〜2%である
【0056】
本発明の鉄筋継ぎ手用グラウト材組成物には、さらに必要に応じて(1)硬化促進剤(3級アミノ化合物、アルカリ化合物、ルイス塩基化合物等)、(2)接着性付与剤(シランカップリング剤、チタンカップリング剤等)、(3)酸化防止剤(ヒンダードアミン類、ハイドロキノン類、ヒンダードフェノール類、硫黄含有化合物等)、(4)紫外線吸収剤(ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類等)、(5)安定剤[金属石けん類、重金属(例えば亜鉛、錫、鉛、カドミウム等)の無機または有機塩類、有機錫化合物等]、(6)可塑剤(フタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪酸エステル、エポキシ化大豆油、ひまし油、流動パラフィンアルキル多環芳香族炭化水素等)、(7)ワックス類(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、重合ワックス、蜜ロウ、鯨ロウ、低分子量ポリオレフィン等)、(8)非反応性希釈剤(ベンジルアルコール、タール、ピチューメン等)、(9)反応性希釈剤(低分子脂肪族グリシジルエーテル、芳香族モノグリシジルエーテル等)、(10)脱臭剤[活性炭、ゼオライト、シリカゾル、シリカゲル等]、(11)顔料または染料[赤色酸化鉄、鉛丹、パラレッド、紺青等]、(12)チクソ化剤[ベントナイト、微粉シリカ、水添ヒマシ油ワックス、ステアリン酸カルシウム等]、(13)溶剤(酢酸エチル、トルエン、アルコール、エーテル、ケトン等)、(14)発泡剤、(15)消泡剤、(16)脱水剤、(17)帯電防止剤、(18)抗菌剤、(19)防かび剤、(20)粘度調整剤、(21)香料、(22)難燃剤等の添加剤(E)を含有させることができる。
【0057】
(E)全体の使用量は、グラウト材組成物の全重量に基づいて、通常15%以下、各種添加剤の添加効果および硬化物の機械的強度の観点から好ましくは0.1〜12%、さらに好ましくは0.5〜10%である。
【0058】
本発明のグラウト材組成物は、以下の(1)または(2)の方法で製造される。
(1)(A)〜(C)、必要により(D)、(E)を使用する直前に一括混合して組成物とする。
(2)2液[(A)を含有してなるA液、(B)を含有してなるB液]の形態で別々に構成成分を混合して製造しておき、使用する直前に混合して組成物とする。(C)は、あらかじめA液および/またはB液に混合しても、使用時に混合してもよいが、工業上の観点から、あらかじめA液および/またはB液に混合しておくことが好ましい。必要により含有させる(D)、(E)も同様の観点から、あらかじめA液および/またはB液に混合しておくことが好ましい。
これらの製造方法のうち、工業上の観点から好ましいのは(2)の方法である。
これら(1)、(2)のいずれの方法でも、(A)と(B)を混合後は反応が進行するため、速やかに使用するのが望ましい。
【0059】
本発明における(A)〜(C)、および必要により含有させる(D)、(E)の混合方法としては、例えば万能混合機等の混合機を使用する方法および後述のミキサーを使用する方法が挙げられる。
また、グラウト材組成物の粘度(Pa・s)は、カプラー等への注入後のたれ防止および作業性の観点から、好ましくは20〜300、さらに好ましくは30〜250、とくに好ましくは40〜200である。本発明の組成物は、常温(25℃)および低温域(5℃)のいずれにおいても、上記範囲に含まれる。
【0060】
上記粘度の測定条件は、例えば下記のとおりである。
装置 :BH型粘度計[型番「TVB−22H」、東機産業(株)製]
回転数 :10rpm
スピンドルNo:7号
【0061】
本発明のグラウト材組成物の前記カプラー等への注入方法としては、種々の注入方法、例えば下記のものを採用することができる。
(1)グラウト材組成物をコーキングガンに充填し、組成物が硬化する前にカプラー中央付近の孔から注入する方法。
(2)特開平9−13675等に示される注入装置等を用いて、2液(A液およびB液)を別々の供給タンクに充填し、先端のミキサーで2液を混合しながら注入する方法。
グラウト材組成物を硬化させる温度条件は、グラウト材組成物の硬化性および機械的強度の観点から、好ましくは0〜50℃、さらに好ましくは5〜35℃である。
本発明のグラウト材組成物は、常温(25℃)のみならず、低温域(5℃)においても作業性および硬化物の機械的強度に優れる。
【実施例】
【0062】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部、モル%以外の%は重量%を表す。
【0063】
[ポリオールのEOおよび/またはAO付加物(D)の製造]
製造例1
オートクレーブにPG147部、触媒として水酸化カリウム0.76部を仕込み、EO682部とPO171部を混合したものを吹き込み、110℃で反応させた。130℃で熟成後、酸化マグネシウム系吸着剤[商品名「キョーワード600」、協和化学工業(株)製]による吸着処理で触媒を除去してPGのEOおよびPO付加物(D−1)(Mn700、EOおよびPOの合計の平均付加モル数10、EO/PO付加モル比=5)988部を得た。
【0064】
製造例2
製造例1において、PG147部を30部、水酸化カリウム0.76部を0.15部、EO682部を693部、PO171部を277部に変更した以外は製造例1と同様にして、PGのEOおよびPO付加物(D−2)(Mn3,000、EOおよびPOの平均付加モル数52、EO/PO付加モル比=3.3)992部を得た。
【0065】
製造例3
製造例1において、PG147部を100部、水酸化カリウム0.76部を0.5部、EO682部を800部、PO171部を0部に変更した以外は製造例1と同様にして、PGのEO付加物(D−3)(Mn1,000、EOの平均付加モル数16)995部を得た。
【0066】
製造例4
還流装置を備えたオートクレーブに、ビスフェノールB242部、エピクロロヒドリン833部を仕込み、撹拌下、内容物を120℃で還流させた。40重量%水酸化ナトリウム水溶液203部を4時間かけて滴下した。滴下は、蒸留された水を除去しながら行った。滴下終了後、120℃、減圧条件で未反応のエピクロロヒドリンを留去し、25℃に冷却した。さらにトルエン1,000部を仕込んだ。
次に、水1,000部を仕込み1時間撹拌した後、撹拌を停止して1時間静置分液し、下層を抜き取り、生成塩および残存アルカリを除去する操作を行った。この操作を合計5回行った。
さらに120℃、減圧条件でトルエンを留去することにより、ビスフェノールB型ジグリシジルエーテル(A2−3)を得た。(A2−3)はエポキシ当量201であった。
【0067】
製造例5
製造例4において、ビスフェノールB242部をビスフェノールS250部に変更した以外は、製造例4と同様にして、ビスフェノールS型ジグリシジルエーテル(A2−4)を得た。(A2−4)はエポキシ当量212であった。
【0068】
製造例6
製造例4において、ビスフェノールB242部をビスフェノールAP290部に変更した以外は、製造例4と同様にして、ビスフェノールAP型ジグリシジルエーテル(A2−5)を得た。(A2−5)はエポキシ当量231であった。
【0069】
実施例1〜12および比較例1〜4
万能混合機[商品名「万能混合機 5DMV−01−r」、ダルトン(株)製]を用いて表1に従って配合、混合(温度25℃または5℃、撹拌時間5分間)し、グラウト材組成物を得た。該組成物について下記の試験方法で性能評価(25℃、5℃)を行った。結果を表1に示す。
【0070】
<試験方法>
(1)粘度
温度調整(25℃または5℃)したグラウト材組成物の粘度をBH型粘度計[型番「TVB−22H」、東機産業(株)製、回転数10rpm、7号スピンドル]により、JIS K7117に準じて測定した。
【0071】
(2)SVI値(チクソトロピー性)
温度調整(25℃または5℃)したグラウト材組成物の粘度をBH型粘度計(7号スピンドル、回転数2rpmと、回転数10rpm)により、JIS K7117に準じて測定し、下記式(1)にて組成物のチクソトロピー性を評価した。式[1]で表されるSVI値が大きいほどチクソトロピー性が大、すなわち該組成物がたれ防止性に優れることを示す。
[SVI値]=η1/η2 [1]
η1:回転数2rpmにおける粘度
η2:回転数10rpmにおける粘度
【0072】
(3)引張強さ(単位:N/mm
2)
混練したグラウト材組成物を4kPaで10分間、減圧脱泡を行い、その後厚さ約2mmの板状に成形し、養生(25℃で5日間または5℃で20日間)する。養生後厚さ約2mmのダンベル1B型試験片を切り出し、1mm/minの試験速度でJIS K7161、7162に準じて測定した。
【0073】
(4)圧縮降伏強さ、圧縮弾性係数(単位:いずれもN/mm
2)
混練したグラウト材組成物を4kPaで10分間、減圧脱泡を行い、その後、厚さ約10mmの板状に成形し、養生(25℃で5日間または5℃で20日間)する。養生後約10×10×30mmの直方体の試験片を切り出し、2mm/minの試験速度でJIS K7181に準じて測定した。
【0074】
表中の各略号は以下の通りである。
A1−1:ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル
[商品名「JER828」、三菱化学(株)製、エポキシ当量190]
〔一般式(1)においてn=0.14に該当するもの〕
A2−1:ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル
[商品名「JER807」、三菱化学(株)製、エポキシ当量175]
〔一般式(2)においてn=0.14に該当するもの〕
A2−2:ビスフェノールE型ジグリシジルエーテル
[商品名「R710」、(株)プリンテック製、エポキシ当量170]
〔一般式(2)においてn=0.05に該当するもの〕
A2−3:ビスフェノールB型ジグリシジルエーテル
[エポキシ当量201、一般式(2)においてn=0.16に該当するもの]
A2−4:ビスフェノールS型ジグリシジルエーテル
[エポキシ当量212、一般式(2)においてn=0.20に該当するもの]
A2−5:ビスフェノールAP型ジグリシジルエーテル
[エポキシ当量231、一般式(2)においてn=0.15に該当するもの]
【0075】
B−1:ペンタエチレンヘキサミン
[商品名「PEHA」、東ソー(株)製、活性水素当量30、
N原子に直結する活性水素数8個]
B−2:キシリレンジアミン
[商品名「アンカミン2422」、エアープロダクツジャパン(株)製、
活性水素当量34、N原子に直結する活性水素数4個]
B−3:ポリアミドポリアミン
[商品名「ポリマイド L−55−3」、三洋化成工業(株)製、
活性水素当量148、N原子に直結する活性水素数15個]
B−4:N,N’−ジ−n−ブチル−1,6−ヘキサンジアミン
[和光純薬工業(株)製、活性水素当量114、
N原子に直結する活性水素数2個]
B−5:ポリアリルアミン
[商品名「PAA−03」、ニットーボーメディカル(株)製、
活性水素当量28、N原子に直結する活性水素数48個]
比B−1:N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン
[シグマアルドリッチジャパン(株)製、活性水素当量102、
N原子に直結する活性水素数1個]
比B−2:ポリアリルアミン
[商品名「PAA−05」、ニットーボーメディカル(株)製、
活性水素当量28、N原子に直結する活性水素数80個]
【0076】
C1−1:エポキシ樹脂粒子
[商品名「トレパールEP−B」、東レ(株)製、
体積平均粒子径5.5μm]
C2−1:炭酸カルシウム
[商品名「ソフトン1500」、白石カルシウム(株)製、
体積平均粒子径1.5μm]
C2−2:シリカ
[商品名:HS−106、マイクロン(株)製、体積平均粒子径20μm]
【0077】
【表1】
【0078】
表1の結果から、本発明の鉄筋継ぎ手用グラウト材組成物は、常温での作業性および硬化物の機械的強度に優れるだけでなく、比較のものに比べ低温域での粘度が低く、しかもチクソトロピー性が大きいことから作業性に優れることがわかる。また、低温域で硬化させた場合でも、硬化物の引張強さや圧縮弾性係数等の機械的強度が常温での硬化物と同様に優れることがわかる。