【実施例1】
【0014】
実施例1に係る組み立て棺につき、
図1から
図7を参照して説明する。
図1の符号1は、遺体を収容するための棺である。この棺1は、箱体2とその箱体2の開口2bを閉塞する蓋体3とを有しており、棺1を構成する箱体2及び蓋体3は、主に紙製の段ボール素材により形成されている。
図2に示されるように、各部材を折り畳んでまとめることで、棺1を収容するスペースをコンパクトにして倉庫などに大量に備蓄できるとともに、搬送する場合も一度に大量に運搬できるようになっている。また、構造及び素材が簡素化され棺1の大量生産が可能となっている。
【0015】
図1に示されるように、蓋体3は、平面視において箱体2の外面形状と略同一形状の天板部材31と、平面視において箱体2の内面形状と略同一形状の内張部材32と、を有し、この天板部材31と内張部材32とが貼り合わされて形成されている。また、この蓋体3は、切溝33が形成されており、この切溝33を基点として蓋体3の一方側3aが折り曲がるようになっており、開閉窓として機能する。
【0016】
蓋体3は、内張部材32を箱体2の開口2bに挿入し、天板部材31を箱体2の開口2bの周縁に載置することにより当該開口2bを閉塞する。尚、蓋体3は、木材等で構成し、開閉窓や装飾等を施しても構わない。
【0017】
図1に示されるように、箱体2は、一枚の段ボール素材からなるシート状の基板部材4と、一対の側板部材5,5と、アーチ形状の支持板部としての支持部材6と、から主に構成されている。
【0018】
図3に示されるように、基板部材4は、底板部41、外側板部42,42、内側板部43,43、内底板部44,44及び係合部45,45を有しており、これら各部位は、複数の折部46,46,…により区分されており、
図4(a)に示されるように、折部46,46,…により区分された基板部材4の中央部分が底板部41となり、その底板部41の両側が外側板部42,42となる。更に、外側板部42の外側には、内側板部43、内底板部44及び係合部45がそれぞれ順に配されている。また、底板部41、外側板部42,42、内側板部43,43及び内底板部44,44は、それぞれ平面視矩形形状を成している。
【0019】
また、
図3に示されるように、底板部41の両端部には、凸片47,47が形成されており、この凸片47,47は、折り曲げることにより底板部41の表面側に立設可能となっている。また、各外側板部42,42の両端部には、鉤状の先端部48aを備えた突片48,48が形成されている。
【0020】
基板部材4は、上記のような外周形状と成るように一枚の段ボール素材を切断した後、折部46,46,…を形成することにより製造されている。そのため、製造にかかる部品点数を減らしてコストを抑えることができ、複数の部材同士を組み合わせて接着する作業等が排除されて生産性に優れている。
【0021】
図4(a)に示されるように、基板部材4は、折部46,46,…が折り曲げられることにより、底板部41から各外側板部42,42が立設されるとともに、各内側板部43,43が立設した外側板部42,42の内側に折り曲げられて並立した状態となる。この立設された外側板部42,42が箱体2の側板部として機能している。
【0022】
また、
図4(b)に示されるように、内側板部43,43から内底板部44,44及び係合部45,45を更に折り曲げるとともに、対向し合う係合部45,45の係合片45a,45a同士を係合させる。こうして、底板部41及び外側板部42によって角部4a,4aが形成される。更に角部4a,4aは、補強部である内底板部44と内側板部43とにより補強されて強度が高くなっている。また、係合部45,45の係合片45a,45a同士を係合させることにより内底板部44,44同士が離間することが防止され、箱体2の形状が安定するようになっている。
【0023】
側板部材5は、
図3に示されるように、被覆部材53とスペーサ部材56とから構成されている。この被覆部材53は、後述するように基板部材4に組み付けられた際に外側に位置する外面部53aと、外面部53aの幅よりも小幅に形成される内面部53bとを有しており、これら外面部53a及び内面部53bは、折部51,51により区分されている。また、内面部53bには、溝52,52が設けられている。
【0024】
側板部材5は、折り曲げられた外面部53aと内面部53bとによりスペーサ部材56が挟まれて接着されており、スペーサ部材56が有する凹み部の形状により、凸片47を挿入可能な凹部54と、突片48を挿入可能な凹部55,55、とが形成される。更に、この側板部材5は、外面部53aの幅と内面部53bの幅との差異により、段部5a,5aが形成されるようになる。
【0025】
側板部材5,5は、それぞれの凹部54,54に底板部41の凸片47,47に差し込まれるようになっており、基板部材4と側板部材5,5との組み立てにより、箱体2の本体2aが形成される。また、凹部55に突片48が差し込まれた際には、突片48の先端部48a,48aが被覆部材53の溝52,52に係合され、突片48の凹部55からの抜け出しが防止される。
【0026】
更に、側板部材5の各段部5a,5aにより、立設された各外側板部42及び内側板部43の端部が隠されるため美観に優れる。
【0027】
図5及び
図6に示されるように、支持部材6は、アーチ形状の縦横に延びる木材繊維が樹脂などの接着剤で固められ形成されたベニヤ板材により構成されており、側端である片縁6b,6bは互いに平行に形成され、組み立てられた箱体2における角部4a,4aに沿ってそれぞれ当接する幅に形成されている。尚、支持部材6は、ベニヤ板材に限られず、例えば、アーチ形状であれば、その他木材、紙材を積層しアーチ形状に押し固めた硬質の紙ボードなどでもよい。支持部材6は、加熱及びプレス処理によりアーチ形状に形成される。特に前記ベニヤ板材を利用すると、少量の接着剤で強度が高められているため、燃焼させた場合でも、有害物質(ダイオキシンなど)の排出が少なく、かつ強度が確保できることとなる。
【0028】
この支持部材6の頂部6aには、一方の端部側に平面視略円形を成し上下に貫通する貫通孔7が形成されており、他方の端部側に支持部材6の長手方向に沿って所定長さ延びる貫通孔としてのスリット8,8が並列して形成されている。尚、この貫通孔7及びスリット8,8には、例えば菊割状等に形成された別途の固定部材を形成してもよい。
【0029】
続いて、
図6及び
図7を参照して実際に遺体9を組み立てられた箱体2内に収容する態様について説明する。先ず、前述したように、組み立てた基板部材4と一対の側板部材5,5とを組み付け、箱体2の本体2aを形成するとともに、
図6に示されるように、支持部材6を箱体2の本体2a内に配置して箱体2を形成する。尚、図示しないが、このように組み立てられた箱体2は、支持部材6のアーチ形状と平坦である底板部41との間に中空の空間が形成されるため、当該中空の空間を利用してドライアイス等を収容することができるようになっている。
【0030】
図6に示されるように、遺体9は支持部材6の頂部6aに乗せられて箱体2内に収容される。このとき、
図6(a)に示されるように、遺体9の頭部9aの一部が、貫通孔7の周縁により安定されるとともに、
図6(b)に示されるように、遺体9の踵9b,9bが、スリット8,8の周縁により安定されるようになっている。このように、遺体9が貫通孔7及びスリット8,8により安定するため、遺体9が支持部材6に乗せられた位置から位置ズレすることを防止できる。更に、スリット8,8は、支持部材6の長手方向に沿って所定長さ延びているため、それぞれの遺体9の身長の大きさに差異に対応することができ、汎用性が高い。
【0031】
前述したように、支持部材6は、その片縁6b,6bが基板部材4の角部4a,4aに沿って配置されており、頂部6aが上方に位置するアーチ形状を成すため、
図7に示されるように、支持部材6に対して遺体9が乗せられると、遺体9の荷重により支持部材6が弾性変形し、その片縁6b,6bが互いに離間する方向に移動するようになる。つまり、
図7に矢印として示すように、遺体9の荷重が支持部材6を介して強度の高い一対の角部4a,4aに沿って分散して伝わるようになり、遺体9の荷重が直接底板部41に働くことを防ぎ、底板部41の座屈を生じさせることなく遺体9を納めた箱体2を運搬することができる。
【0032】
また、遺体9の荷重が支持部材6を介して強度の高い一対の角部4a,4aに沿って分散して伝わるため、支持部材6の座屈は効果的に阻止されることになる。座屈が阻止された断面アーチ形状の支持部材6は、そのアーチ形状の曲率により、上方からの座屈に対して極めて強い性質を持っているため、支持部材6は、曲率が緩やかな曲率半径が長いものであっても、上方からかかる荷重に対して十分耐えうる強度となり、支持部材6自体の厚みや底板部41との離間幅を大きくとらず、段ボール材と組み合わせた薄い組み立てキットを用意できることになる。
【0033】
一対の角部が角部4a,4aが組み立てられた箱体2における長辺
の部分に沿って形成されるため、支持部材6の片縁6b,6bが角部4a,4aに当接する範囲を長く稼ぐことができ、より広い範囲の角部4a,4aに遺体9の荷重を分散させ、支持部材6の座屈を阻止することができる。
【0034】
また、遺体9が支持部材6に乗せられた際には、貫通孔7及びスリット8,8により遺体9が安定するため、支持部材6に乗せられた位置から位置ズレすることが防がれ、遺体9が常に支持部材6の適正位置に収容される。したがって、支持部材6の片縁6b,6bに対して均等に離間させる力が働くようになり、その力を角部4a,4aに沿って均等に分散することができる。更に、遺体9を納めた箱体2を運搬する時に箱体2に対して振動や傾き等が加わっても、遺体9が支持部材6の曲面に沿って屈折することが防止される。
【0035】
また、遺体9が支持部材6に乗せられた際には、支持部材6を介して一対の角部4a,4aを互いに離間させる方向に力が働くが、係合片45a,45a同士の係合により、内底板部44,44同士が離間することが防止されているため、角部4a,4a同士が互いに離間されることに伴って生じる底板部41への過剰な引っ張り力が抑制され、底板部41が破断することが防止される。
【0036】
また、支持部材6の中央部には、貫通孔7及びスリット8,8等の孔部が設けられていないため、載置された遺体9の胴体が位置し、遺体9の荷重が最もかかる支持部材6の中央部の強度が保たれている。
【0037】
尚、本実施例では、基板部材4を組み立てる際に、対向し合う係合部45,45の係合片45a,45a同士が係合されることにより、内底板部44,44同士が離間することが防止される態様について説明したが、例えば、内底板部同士をテープ等で直接貼り付けて連結することにより、互いに離間されることを防止してもよい。
【0038】
次に、実施例2に係る組み立て棺につき、
図8及び
図9を参照して説明する。尚、前記実施例と重複する説明を省略する。
【0039】
図8に示されるように、基板部材400は、底板部410、外側板部420,420、及び内側板部430,430と、を備え、これら各部位は、複数の折部46,46,…により区分されている。
【0040】
図8及び
図9に示されるように、組み立てられた基板部材400において立設された外側板部420,420、及び内側板部430,430は、組み立てられる箱体の側板部として機能しており、底板部410と各外側板部420及び各内側板部430により形成された角部400a,400aの内側には、ベニヤ板材により構成される補強部としての補強部材10が敷設される。尚、補強部材10は、ベニヤ板材に限られず、例えば、その他の木材、硬質の紙材や合成樹脂などであってもよい。
【0041】
この補強部材10は、底板部410に敷設される板状部101の両端に対し、長手方向に沿って延びる突条部102,102がステープラーから打ち出される金属片103,103,…等により打ち付けられて固定される。
【0042】
図9に示されるように、支持部材6に対して遺体9が乗せられた際には、その遺体9の荷重により支持部材6の片縁6b,6bが互いに離間する方向に移動しようとする力に対して、基板部材400に比べて硬質の補強部材10の突条部102,102が対抗するため、角部400a,400aの破損を防止できるとともに、当該角部400a,400aの形状を維持できる。
【0043】
尚、この補強部材は、例えば、各補強部材が角部に沿って所定間隔離間して配置されるように長手方向の長さが短く形成されてもよい。
【0044】
また、補強部材の変形例として次のようなものもある。例えば、
図10(a)に示されるように、補強部材200は、シート部材201と、シート部材201の裏面に設けられる粘着層202と、からなり、粘着層202の半分は、基板部材400の角部400a近傍の底板部410に沿って貼付されており、粘着層202の残りの半分に剥離シート203が貼付されている。
【0045】
図10(b)に示されるように、基板部材400を組み立てた後、立設した内側板部430,430に剥離シート203,203を剥がした粘着層202,202を貼り付けることにより、補強部材200,200が、底板部410と内側板部430,430とに亘って貼着され、内側板部430,430が外側に開きにくくなる。つまり、内側板部430,430が内側から外側に向けてかかる力に対して対抗する強度を向上させることができる。
【0046】
続いて、支持部材の変形例について説明する。
図11(a)に示されるように、支持部材61は、端部61a,61aの近傍に上下に貫通する貫通溝61b,61bを備えるとともに、端部61a,61aに沿って折り曲げ可能な立片62,62が延設されている。この立片62には、端部61a,61aに沿って折り曲げられて立設した状態から更に内側に折り曲げ可能な延設片63,63が延設されており、
図11(b)に示されるように、延設片63,63は、貫通溝61b,61bに挿通されるようになっている。
【0047】
上記のように、立片62,62及び延設片63,63を折り曲げ、折り曲げられた延設片63,63を貫通溝61b,61bに挿入することにより、支持部材61における端部61a,61aの近傍に支持部材61、立片62,62及び延設片63,63により正面視略三角形状のフレームが形成される。そのため、支持部材61における端部61a,61a近傍の強度が向上し、体重の重い遺体9が支持部材61に乗せられても、遺体9の荷重により支持部材61の端部61a,61aが座屈することを防止できる。
【0048】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0049】
例えば、前記実施例では、支持部材6は、片縁6b,6bが角部4a,4aに沿って当接するアーチ形状を成していたが、これに限られず、例えば、底板部41と一対の側板部材5,5とにより形成された角部に沿って両端部が当接するアーチ形状を成してもよい。
【0050】
また、支持部材は、例えば複数の分割部材から構成されてもよい。その場合、支持部材の両端部が角部に当接した状態で分割部材同士の合わせ目に下方から略三角形状の楔部材を圧入し、強固なアーチ形状が形成されるようにすることが好ましい。
【0051】
また、支持部材の略中央部の厚みを厚くし、遺体9の荷重が最もかかる支持部材の中央部の強度を向上させてもよい。