特許第5964283号(P5964283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964283
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】中空コア体および同軸ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/18 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   H01B11/18 D
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-232745(P2013-232745)
(22)【出願日】2013年11月11日
(65)【公開番号】特開2015-95302(P2015-95302A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年6月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003414
【氏名又は名称】東京特殊電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】笹井 重広
(72)【発明者】
【氏名】宮下 誠
(72)【発明者】
【氏名】林 重雄
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−287410(JP,A)
【文献】 特開2011−23205(JP,A)
【文献】 特開2007−42400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体(1)と、
熱可塑性樹脂からなり、前記内部導体(1)を被覆する第1内環状部(2a)、該第1内環状部(2a)から放射状に延びる複数の第1リブ部(2b)、該第1リブ部(2b)の外端を連結する第1外環状部(2c)で構成され、第1内環状部(2a)、第1リブ部(2b)及び第1外環状部(2c)により囲まれた3以上の第1空隙部(G1)を有した第1絶縁被覆体(2)と、
熱可塑性樹脂からなり、前記第1絶縁被覆体(2)を被覆する第2内環状部(3a)、該第2内環状部(3a)から放射状に延びる複数の第2リブ部(3b)、該第2リブ部(3b)の外端を連結する第2外環状部(3c)で構成され、第2内環状部(3a)、第2リブ部(3b)及び第2外環状部(3c)により囲まれた3以上の第2空隙部(G2)を有した第2絶縁被覆体(3)と、
を少なくとも備え、
前記第1内環状部(2a)、第1リブ部(2b)及び第1外環状部(2c)の厚さの最大値よりも前記第2内環状部(3a)、第2リブ部(3b)及び第2外環状部(3c)の厚さの最小値の方が大きい、
ことを特徴とする中空コア体(101,102)。
【請求項2】
内部導体(1)と、
熱可塑性樹脂からなり、前記内部導体(1)を被覆する内環状部(5a)、該内環状部(5a)から放射状に延びる複数の第1リブ部(5b)、該第1リブ部(5b)の外端を連結する第1中環状部(5c)、該第1中環状部(5c)から放射状に延びる複数の第2リブ部(5d)、該第2リブ部(5d)の外端を連結する外環状部(5e)で構成され、内環状部(5a)、第1リブ部(5b)及び中環状部(5c)により囲まれた3以上の第1空隙部(G1)と、中環状部(5c)、第2リブ部(5d)及び外環状部(5e)により囲まれた3以上の第2空隙部(G2)とを有した絶縁被覆体(5)と、
を備え、
前記内環状部(5a)及び第1リブ部(5b)の厚さの最大値よりも前記中環状部(5c)、第2リブ部(5d)及び外環状部(5e)の厚さの最小値の方が大きい、
ことを特徴とする中空コア体(103)。
【請求項3】
内部導体(1)と、
熱可塑性樹脂からなり、前記内部導体(1)を被覆する内環状部(6a)、該内環状部(6a)から放射状に延びる複数の第1リブ部(6b)、最外側中環状部番号Nを2以上の自然数とし且つリブ部番号iを1〜Nの自然数とするとき、第iリブ部の外端を連結する第i中環状部、該第i中環状部から放射状に延びる複数の第「i+1」リブ部、第「N+1」リブ部の外端を連結する外環状部(6g)で構成され、内環状部(6a)、第1リブ部(6b)及び第1中環状部(6c)により囲まれた3以上の第1空隙部(G1)と、第i中環状部、第「i+1」リブ部及び第「i+1」中環状部により囲まれた3以上の第「i+1」空隙部と、第「N」中環状部、第「N+1」リブ部及び外環状部(6g)により囲まれた3以上の第「N+1」空隙部とを有した絶縁被覆体(6)と、
を備え、
前記内環状部(6a)及び第1リブ部(6b)の厚さの最大値よりも第1中環状部、第2リブ部、第「N」中環状部、第「N+1」リブ部及び外環状部(6g)の厚さの最小値の方が大きい、
ことを特徴とする中空コア体(104)。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の中空コア体と、該中空コア体の外側に設けられた外部導体(11)とを具備したことを特徴とする同軸ケーブル(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空コア体および同軸ケーブルに関し、さらに詳しくは、低キャパシタンス(静電容量)で高速信号を好適に伝送することが出来ると共に機械的強度にも優れた中空コア体および同軸ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
内部導体と、熱可塑性樹脂からなり、前記内部導体を被覆する内環状部、該内環状部から放射状に延びる複数のリブ部、該リブ部の外端を連結する外環状部で構成され、前記内環状部、前記リブ部及び前記外環状部により囲まれた3以上の空隙部を有した絶縁被覆体とを備えた中空コア体が知られている(例えば特許文献1参照。)。
このような中空コア体の外周に外部導体を設け、高速・大容量信号伝送用の同軸ケーブルとして使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−023205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の中空コア体は約80pF/mのキャパシタンスを想定した構造であったが、近年の伝送信号の高速・大容量化に伴って60pF/m以下の低キャパシタンス化が求められるようになってきている。
上記従来の中空コア体の構造で低キャパシタンス化を行うには、内環状部やリブ部や外環状部を薄くして空隙率を大きくしたり、リブ部を長くして内部導体と外部導体の距離を大きくすればよい。
しかし、内環状部やリブ部や外環状部を薄くしたり、リブ部を長くすると、機械的強度が不十分となり、特に側圧強度が低下するので、同軸ケーブル加工時やケーブル布線時に部分的につぶれが生じ、電気的特性の悪化を生じる問題点がある。
そこで、本発明の目的は、60pF/m以下の低キャパシタンスで高速・大容量信号を好適に伝送することが出来ると共に機械的強度にも優れた中空コア体および同軸ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、内部導体(1)と、熱可塑性樹脂からなり、前記内部導体(1)を被覆する第1内環状部(2a)、該第1内環状部(2a)から放射状に延びる複数の第1リブ部(2b)、該第1リブ部(2b)の外端を連結する第1外環状部(2c)で構成され、第1内環状部(2a)、第1リブ部(2b)及び第1外環状部(2c)により囲まれた3以上の第1空隙部(G1)を有した第1絶縁被覆体(2)と、熱可塑性樹脂からなり、前記第1絶縁被覆体(2)を被覆する第2内環状部(3a)、該第2内環状部(3a)から放射状に延びる複数の第2リブ部(3b)、該第2リブ部(3b)の外端を連結する第2外環状部(3c)で構成され、第2内環状部(3a)、第2リブ部(3b)及び第2外環状部(3c)により囲まれた3以上の第2空隙部(G2)を有した第2絶縁被覆体(3)と、を少なくとも備え、前記第1内環状部(2a)、第1リブ部(2b)及び第1外環状部(2c)の厚さの最大値よりも前記第2内環状部(3a)、第2リブ部(3b)及び第2外環状部(3c)の厚さの最小値の方が大きい、ことを特徴とする中空コア体(101,102)を提供する。
上記第1の観点による中空コア体(101,102)では、内部導体(1)の直近に存在する第1内環状部(2a)、第1リブ部(2b)及び第1外環状部(2c)が第2内環状部(3a)や第2リブ部(3b)や第2外環状部(3c)よりも薄くなっていると共に3以上の第1空隙部(G1)および3以上の第2空隙部(G2)が存在するため、空隙率が大きくなる。また、内部導体(1)から第2外環状部(3c)の外周面(すなわち、外部導体の位置)までの距離も長くなる。このため、60pF/m以下の低キャパシタンス化を実現できる。従って、高速・大容量信号の伝送に対応できる。そして、外力が加わる第2内環状部(3a)や第2リブ部(3b)や第2外環状部(3c)を比較的厚くするため、十分に優れた機械的強度を得ることが出来る。従って、多芯撚り合わせした場合や屈曲させた場合でも特性が劣化しにくい。
【0006】
なお、上記第1の観点による中空コア体は、上記第2絶縁被覆体(3)の外側に該第2絶縁被覆体(3)と同様の第3絶縁被覆体をさらに備えた構成や、上記第2絶縁被覆体(3)の外側に該第2絶縁被覆体(3)と同様の複数の絶縁被覆体(第3絶縁被覆体、第4絶縁被覆体など)を多重に備えた構成をも含むものである。
【0007】
第2の観点では、本発明は、内部導体(1)と、熱可塑性樹脂からなり、前記内部導体(1)を被覆する内環状部(5a)、該内環状部(5a)から放射状に延びる複数の第1リブ部(5b)、該第1リブ部(5b)の外端を連結する中環状部(5c)、該中環状部(5c)から放射状に延びる複数の第2リブ部(5d)、該第2リブ部(5d)の外端を連結する外環状部(5e)で構成され、内環状部(5a)、第1リブ部(5b)及び中環状部(5c)により囲まれた3以上の第1空隙部(G1)と、中環状部(5c)、第2リブ部(5d)及び外環状部(5e)により囲まれた3以上の第2空隙部(G2)とを有した絶縁被覆体(5)と、を備え、前記内環状部(5a)及び第1リブ部(5b)の厚さの最大値よりも前記中環状部(5c)、第2リブ部(5d)及び外環状部(5e)の厚さの最小値の方が大きい、ことを特徴とする中空コア体(103)を提供する。
上記第2の観点による中空コア体(103)では、内部導体(1)の直近に存在する内環状部(5a)および第1リブ部(5b)が中環状部(5c)や第2リブ部(5d)や外環状部(5e)よりも薄くなっていると共に3以上の第1空隙部(G1)および3以上の第2空隙部(G2)が存在するため、空隙率が大きくなる。また、内部導体(1)から外環状部(5e)の外周面(すなわち、外部導体の位置)までの距離も長くなる。このため、60pF/m以下の低キャパシタンス化を実現できる。従って、高速・大容量信号の伝送に対応できる。そして、外力が加わる中環状部(5c)や第2リブ部(5d)や外環状部(5e)を比較的厚くするため、十分に優れた機械的強度を得ることが出来る。従って、多芯撚り合わせした場合や屈曲させた場合でも特性が劣化しにくい。
【0008】
第3の観点では、本発明は、内部導体(1)と、熱可塑性樹脂からなり、前記内部導体(1)を被覆する内環状部(6a)、該内環状部(6a)から放射状に延びる複数の第1リブ部(6b)、最外側中環状部番号Nを2以上の自然数とし且つリブ部番号iを1〜Nの自然数とするとき、第iリブ部の外端を連結する第i中環状部、該第i中環状部から放射状に延びる複数の第「i+1」リブ部、第「N+1」リブ部の外端を連結する外環状部(6g)で構成され、内環状部(6a)、第1リブ部(6b)及び第1中環状部(6c)により囲まれた3以上の第1空隙部(G1)と、第i中環状部、第「i+1」リブ部及び第「i+1」中環状部により囲まれた3以上の第「i+1」空隙部と、第「N」中環状部、第「N+1」リブ部及び外環状部(6g)により囲まれた3以上の第「N+1」空隙部とを有した絶縁被覆体(6)と、を備え、前記内環状部(6a)及び第1リブ部(6b)の厚さの最大値よりも第1中環状部、第2リブ部、第「N」中環状部、第「N+1」リブ部及び外環状部(6g)の厚さの最小値の方が大きい、ことを特徴とする中空コア体(104)を提供する。
上記第3の観点による中空コア体(104)では、内部導体(1)の直近に存在する内環状部(6a)および第1リブ部が第1中環状部や第2リブ部や第「N」中環状部や第「N+1」リブ部や外環状部(6g)よりも薄くなっていると共に3以上の第1空隙部(G1)および3以上の第2空隙部(G2)および3以上の第3空隙部(G3)が少なくとも存在するため、空隙率が大きくなる。また、内部導体(1)から外環状部(6g)の外周面(すなわち、外部導体の位置)までの距離も長くなる。このため、60pF/m以下の低キャパシタンス化を実現できる。従って、高速・大容量信号の伝送に対応できる。そして、外力が加わる第「N」中環状部や第「N+1」リブ部や外環状部(6g)を比較的厚くするため、十分に優れた機械的強度を得ることが出来る。従って、多芯撚り合わせした場合や屈曲させた場合でも特性が劣化しにくい。
なお、最外側中環状部番号N=2の場合を実施例4に示すが、最外側中環状部番号Nが3以上であってもよい。
【0009】
第4の観点では、本発明は、前記第1から第3の観点による中空コア体と、該中空コア体の外側に設けられた外部導体(11)と、必要に応じて該外部導体(11)の外側に設けられたジャケット層(12)とを具備したことを特徴とする同軸ケーブル(200)を提供する。
上記第4の観点による同軸ケーブル(200)では、前記第1から第3の観点による中空コア体を用いるため、60pF/m以下の低キャパシタンスが得られる。従って、高速・大容量信号の伝送に対応できる。また、十分に優れた機械的強度が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の中空コア体および同軸ケーブルによれば、60pF/m以下の低キャパシタンス化を実現できると共に十分に優れた機械的強度を得ることが出来る。従って、高速・大容量信号の伝送に対応できると共に多芯撚り合わせした場合や屈曲させた場合でも特性が劣化しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1に係る中空コア体を示す断面図である。
図2】実施例1に係る中空コア体の数値例を示す図表である。
図3】実施例1に係る中間中空コア体の製造工程を示すブロック図である。
図4】実施例1に係る内部導体と中間中空コア体を示す断面図である。
図5】実施例1に係る中空コア体の製造工程を示すブロック図である。
図6】実施例2に係る中空コア体を示す断面図である。
図7】実施例2に係る中空コア体の数値例を示す図表である。
図8】実施例3に係る中空コア体を示す断面図である。
図9】実施例3に係る中空コア体の数値例を示す図表である。
図10】実施例4に係る中空コア体を示す断面図である。
図11】実施例4に係る中空コア体の数値例を示す図表である。
図12】実施例5に係る同軸ケーブルを示す斜視表である。
図13】比較例1に係る中空コア体を示す断面図である。
図14】比較例1に係る中空コア体の数値例を示す図表である。
図15】比較例2に係る中空コア体を示す断面図である。
図16】比較例2に係る中空コア体の数値例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0013】
−実施例1−
図1は、実施例1に係る中空コア体101の断面図である。
この中空コア体101は、内部導体1と、第1絶縁被覆体2と、第2絶縁被覆体3とを備えてなる。
【0014】
内部導体1は、単線あるいは撚線である。
【0015】
第1絶縁被覆体2は、熱可塑性樹脂からなり、内部導体1を被覆する第1内環状部2a、第1内環状部2aから放射状に延びる複数の第1リブ部2b、複数の第1リブ部2bの外端を連結する第1外環状部2cで構成され、第1内環状部2a、第1リブ部2b及び第1外環状部2cにより囲まれた3以上の第1空隙部G1を有している。
【0016】
熱可塑性樹脂としては、例えばPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(フッ化エチレンプロピレンテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)などのフッ素系樹脂、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)などのポリオレフィン系樹脂を使用できる。
【0017】
第2絶縁被覆体3は、熱可塑性樹脂からなり、第1絶縁被覆体2を被覆する第2内環状部3a、第2内環状部3aから放射状に延びる複数の第2リブ部3b、複数の第2リブ部3bの外端を連結する第2外環状部3cで構成され、第2内環状部3a、第2リブ部3b及び第2外環状部3cにより囲まれた3以上の第2空隙部G2を有している。
熱可塑性樹脂としては、例えばフッ素系樹脂やポリオレフィン系樹脂を使用できる。
なお、第1絶縁被覆体2と第2絶縁被覆体3は、同一の材質でもよいし、異なる材質でもよい。
【0018】
第1内環状部2a、第1リブ部2b及び第1外環状部2cの厚さの最大値よりも第2内環状部3a、第2リブ部3b及び第2外環状部3cの厚さの最小値の方が大きくなっている。
【0019】
図2に数値例を示す。
内部導体1は、裸軟銅線の単線である。
第1絶縁被覆体2および第2絶縁被覆体3は、フッ素樹脂である。
キャパシタンスは、タキカワエンジニアリング株式会社のケーブルキャパシタンスモニターを使用して測定した。
圧縮変形強度は、株式会社島津製作所の精密万能試験機を使用して前記特許文献1(特開2011−023205号公報)に記載の方法と同様にして測定した。但し、圧縮治具の寸法は10mm×10mmである。
【0020】
図3図5を参照して、中空コア体101の製造方法を説明する。
図3に示すように、引取機20により内部導体1を送り、押出成形機21のダイス22および冷却機23を経て、内部導体1の外周に第1絶縁被覆体2を形成し、製造された中空コア体10を引取機24により引き取る。
図4の(a)は内部導体1の断面図であり、図4の(b)は中空コア体10の断面図である。
上記中空コア体10の製造方法は、前記特許文献1(特開2011−023205号公報)に記載の製造方法と同様である。
【0021】
次に、図5に示すように、引取機20により中空コア体10を送り、押出成形機21のダイス22および冷却機23を経て、中空コア体10の外周に第2絶縁被覆体3を形成し、製造された中空コア体101を引取機24により引き取る。
かくして、中空コア体101を製造しうる。
【0022】
なお、図3図5の引取機20、押出成形機21、ダイス22、冷却機23および引取機24は同一の装置でよい。但し、引取機20および引取機24による送り速度、押出成形機21における樹脂押出条件および冷却機23による冷却条件は異なる。
【0023】
実施例1の中空コア体101によれば、60pF/m以下の低キャパシタンス化を実現できると共に十分に優れた機械的強度を得ることが出来る。また、2パス(製造装置を2回通して中空コア体101を製造する。)になるが、ダイス22を含めて既存の製造装置を使用して製造することが出来る。
【0024】
−実施例2−
図6は、実施例2に係る中空コア体102の断面図である。
この中空コア体102は、内部導体1と、第1絶縁被覆体2と、第2絶縁被覆体3と、第3絶縁被覆体4とを備えてなる。
【0025】
内部導体1は、単線あるいは撚線である。
【0026】
第1絶縁被覆体2は、熱可塑性樹脂からなり、内部導体1を被覆する第1内環状部2a、第1内環状部2aから放射状に延びる複数の第1リブ部2b、複数の第1リブ部2bの外端を連結する第1外環状部2cで構成され、第1内環状部2a、第1リブ部2b及び第1外環状部2cにより囲まれた3以上の第1空隙部G1を有している。
熱可塑性樹脂としては、例えばフッ素系樹脂やポリオレフィン系樹脂を使用できる。
【0027】
第2絶縁被覆体3は、熱可塑性樹脂からなり、第1絶縁被覆体2を被覆する第2内環状部3a、第2内環状部3aから放射状に延びる複数の第2リブ部3b、複数の第2リブ部3bの外端を連結する第2外環状部3cで構成され、第2内環状部3a、第2リブ部3b及び第2外環状部3cにより囲まれた3以上の第2空隙部G2を有している。
熱可塑性樹脂としては、例えばフッ素系樹脂やポリオレフィン系樹脂を使用できる。
【0028】
第3絶縁被覆体4は、熱可塑性樹脂からなり、第2絶縁被覆体3を被覆する第3内環状部4a、第3内環状部4aから放射状に延びる複数の第3リブ部4b、複数の第3リブ部4bの外端を連結する第3外環状部4cで構成され、第3内環状部4a、第3リブ部4b及び第3外環状部4cにより囲まれた3以上の第2空隙部G3を有している。
熱可塑性樹脂としては、例えばフッ素系樹脂やポリオレフィン系樹脂を使用できる。
【0029】
なお、第1絶縁被覆体2と第2絶縁被覆体3と第3絶縁被覆体4は、同一の材質でもよいし、異なる材質でもよい。
【0030】
第1内環状部2a,第1リブ部2b及び第1外環状部2cの厚さの最大値よりも第2内環状部3a、第2リブ部3b及び第2外環状部3cの厚さの最小値の方が大きくなっている。また、第2内環状部3a,第2リブ部3b及び第2外環状部3cの厚さの最大値よりも第3内環状部4a、第3リブ部4b及び第3外環状部4cの厚さの最小値の方が大きくなっている。
【0031】
図7に数値例を示す。
【0032】
実施例2の中空コア体102によれば、60pF/m以下の低キャパシタンス化を実現できると共に十分に優れた機械的強度を得ることが出来る。また、3パス(製造装置を3回通して中空コア体102を製造する。)になるが、ダイス22を含めて既存の製造装置を使用して製造することが出来る。
【0033】
−実施例2の変形−
3パスで中空コア体102を製造した後、さらに1パスを追加したり、複数パスを追加して、絶縁被覆体を4重以上にしてもよい。
【0034】
−実施例3−
図8は、実施例3に係る中空コア体103の断面図である。
この中空コア体103は、内部導体1と、絶縁被覆体5とを備えてなる。
【0035】
内部導体1は、単線あるいは撚線である。
【0036】
絶縁被覆体5は、熱可塑性樹脂からなり、内部導体1を被覆する内環状部5a、該内環状部5aから放射状に延びる複数の第1リブ部5b、該第1リブ部5bの外端を連結する中環状部5c、該中環状部5cから放射状に延びる複数の第2リブ部5d、該第2リブ部5dの外端を連結する外環状部5eで構成され、内環状部5a、第1リブ部5b及び中環状部5cにより囲まれた3以上の第1空隙部G1と、中環状部5c、第2リブ部5d及び外環状部5eにより囲まれた3以上の第2空隙部G2とを有している。
熱可塑性樹脂としては、例えばフッ素系樹脂やポリオレフィン系樹脂を使用できる。
【0037】
内環状部5a及び第1リブ部5bの厚さの最大値よりも中環状部5c、第2リブ部5d及び外環状部5eの厚さの最小値の方が大きくなっている。
【0038】
図9に数値例を示す。
キャパシタンスおよび圧縮変形強度は、実施例1と同等になる。
【0039】
実施例3の中空コア体103によれば、60pF/m以下の低キャパシタンス化を実現できると共に十分に優れた機械的強度を得ることが出来る。また、ダイス以外は既存の製造装置を使用して製造することが出来る。また、ダイスは新たに製作しなければならないが、1パスで中空コア体103を製造できる(製造装置を1回だけ通して中空コア体103を製造できる。)。
【0040】
−実施例3の変形−
中空コア体103を製造した後、さらに実施例3のダイスや実施例1のダイスを用いたパスを1回以上追加して、絶縁被覆体5の外側に絶縁被覆体5や実施例1の絶縁被覆体3を重ねてもよい。
【0041】
−実施例4−
図10は、実施例4に係る中空コア体104の断面図である。
この中空コア体104は、内部導体1と、絶縁被覆体6とを備えてなる。
【0042】
内部導体1は、単線あるいは撚線である。
【0043】
絶縁被覆体6は、熱可塑性樹脂からなり、内部導体1を被覆する内環状部6a、該内環状部6aから放射状に延びる複数の第1リブ部6b、該第1リブ部6bの外端を連結する第1中環状部6c、該第1中環状部6cから放射状に延びる複数の第2リブ部6d、該第2リブ部6dの外端を連結する第2中環状部6e、該第2中環状部6eから放射状に延びる複数の第3リブ部6f、該第3リブ部6fの外端を連結する外環状部6gで構成され、内環状部6a、第1リブ部6b及び第1中環状部6cにより囲まれた3以上の第1空隙部G1と、第1中環状部6c、第2リブ部6d及び第2中環状部6eにより囲まれた3以上の第2空隙部G2と、第2中環状部6e、第3リブ部6f及び外環状部6gにより囲まれた3以上の第3空隙部G3とを有している。
熱可塑性樹脂としては、例えばフッ素系樹脂やポリオレフィン系樹脂を使用できる。
【0044】
内環状部6a及び第1リブ部6bの厚さの最大値よりも第1中環状部6c及び第2リブ部6dの厚さの最小値の方が大きく、第1中環状部6c及び第2リブ部6dの厚さの最大値よりも第2中環状部6e、第3リブ部6f及び外環状部6gの厚さの最小値の方が大きくなっている。
【0045】
図11に数値例を示す。
【0046】
実施例4の中空コア体104によれば、60pF/m以下の低キャパシタンス化を実現できると共に十分に優れた機械的強度を得ることが出来る。また、ダイス以外は既存の製造装置を使用して製造することが出来る。また、ダイスは新たに製作しなければならないが、1パスで中空コア体104を製造できる(製造装置を1回だけ通して中空コア体104を製造できる。)。
なお、実施例4は、請求項3において最外側中環状部番号N=2とした場合に相当する。
【0047】
−実施例5−
実施例4の中空コア体104の構成を拡張して、第1中環状部6cと第2中環状部6eの間に1以上の中環状部を追加してもよい。すなわち、請求項3において最外側中環状部番号N=3以上とし、内環状部6aと外環状部6gの間に3以上の中環状部を設ける構成としてもよい。
【0048】
−実施例4,5の変形−
実施例4の中空コア体104や実施例5の中空コア体を製造した後、さらに実施例4,5で用いたダイスや実施例3のダイスや実施例1のダイスを用いたパスを1回以上追加して、絶縁被覆体6の外側に絶縁被覆体6や実施例3の絶縁被覆体5や実施例1の絶縁被覆体3を重ねてもよい。
【0049】
−実施例6−
図12は、実施例6に係る同軸ケーブル200の斜視図である。
この同軸ケーブル200は、実施例1の中空コア体101〜実施例5の中空コア体の外側に外部導体11を設け、その外部導体11の外側にジャケット層12を設けたものである。
【0050】
外部導体11は、少なくとも片面に金属層を設けたプラスチックテープ、または金属箔、編組シールド、横巻シールド、メッキ等、若しくはそれらの複合である。
ジャケット層12は、FEP(フッ化エチレンプロピレン)等である。
【0051】
実施例6の同軸ケーブル200によれば、60pF/m以下の低キャパシタンス化を実現できると共に十分に優れた機械的強度を得ることが出来る。
【0052】
−比較例1−
図13は、比較例1に係る中空コア体601の断面図である。
この中空コア体601は、内部導体1と、絶縁被覆体7とを備えてなる。
【0053】
内部導体1は、単線あるいは撚線である。
【0054】
絶縁被覆体7は、熱可塑性樹脂からなり、内部導体1を被覆する内環状部7a、該内環状部7aから放射状に延びる複数のリブ部7b、該リブ部7bの外端を連結する外環状部7cで構成され、内環状部7a、リブ部7b及び外環状部7cにより囲まれた3以上の空隙部Gを有している。
【0055】
図14に数値例を示す。
この中空コア体601は、十分に優れた機械的強度を持っている。しかし、60pF/m以下の低キャパシタンス化を実現できていない。
【0056】
−比較例2−
図15は、比較例2に係る中空コア体602の断面図である。
この中空コア体602は、内部導体1と、絶縁被覆体7とを備えてなる。
【0057】
内部導体1は、単線あるいは撚線である。
【0058】
絶縁被覆体7は、熱可塑性樹脂からなり、内部導体1を被覆する内環状部7a、該内環状部7aから放射状に延びる複数のリブ部7b、該リブ部7bの外端を連結する外環状部7cで構成され、内環状部7a、リブ部7b及び外環状部7cにより囲まれた3以上の空隙部Gを有している。
【0059】
図16に数値例を示す。
この中空コア体602は、60pF/m以下の低キャパシタンス化を実現できている。しかし、リブ部7bが薄く且つ長いために、十分な機械的強度が得られない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の中空コア体および同軸ケーブルは、高速・大容量信号の伝送に利用することが出来る。
【符号の説明】
【0061】
1 内部導体
2 第1絶縁被覆体
2a 第1内環状部
2b 第1リブ部
2c 第1外環状部
3 第2絶縁被覆体
3a 第2内環状部
3b 第2リブ部
3c 第2外環状部
4 第3絶縁被覆体
4a 第3内環状部
4b 第3リブ部
4c 第3外環状部
5 絶縁被覆体
5a 内環状部
5b 第1リブ部
5c 中環状部
5d 第2リブ部
5e 外環状部
6 絶縁被覆体
6a 内環状部
6b 第1リブ部
6c 第1中環状部
6d 第2リブ部
6e 第2中環状部
6f 第3リブ部
6g 外環状部
7 絶縁被覆体
7a 内環状部
7b リブ部
7c 外環状部
10 中空コア体
11 外部導体
101〜104,601,602 中空コア体
200 同軸ケーブル
G 空隙部
G1 第1空隙部
G2 第2空隙部
G3 第3空隙部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16