(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芳香族ジアミンが、m−フェニレンジアミン(MPD)、p−フェニレンジアミン(PPD)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−ODA)およびm−キシリレンジアミン(MXDA)から選択される請求項1に記載のポリマー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
二酸(もしくはその誘導体)またはジアミンは本発明に目的のためには、それが1つもしくは2つ以上の芳香族基を含むときに「芳香族」と考えられる。二酸(もしくはその誘導体)またはジアミンまたはアミノ−カルボン酸(もしくはその誘導体)は本発明に目的のためには、それが芳香族基を含まないときに「非芳香族」と考えられる。
【0016】
具体的には、半芳香族ポリアミド(PA1)(本発明に従った組成物の成分A)の繰り返し単位の50モル%超は、少なくとも1つの非芳香族二酸(もしくはその誘導体)と芳香族ジアミンとの間の重縮合反応によって得ることができる(および好ましくはかかる重縮合反応によって得られる)。
【0017】
前記繰り返し単位の好ましくは75モル%超、より好ましくは85モル%超は、少なくとも1つの脂肪族二酸もしくはその誘導体と少なくとも1つの芳香族ジアミンとの間の重縮合反応によって得ることができる(および好ましくはかかる重縮合反応によって得られる)。さらにより好ましくは、半芳香族ポリアミド(PA1)の繰り返し単位の本質的にすべてかまたはすべてが、少なくとも1つの脂肪族二酸もしくはその誘導体と少なくとも1つの芳香族ジアミンとの間の重縮合反応によって得ることができる(および好ましくはかかる重縮合反応によって得られる)。
【0018】
用語二酸誘導体は、重縮合反応に有利に使用することができる、酸ハロゲン化物、とりわけ塩化物、酸無水物、酸塩、酸アミドなどを包含することを意図される。
【0019】
表現「少なくとも1つの脂肪族二酸もしくはその誘導体」および「少なくとも1つの芳香族ジアミン」は、1つもしくは2つ以上の脂肪族二酸もしくはその誘導体と1つもしくは2つ以上の芳香族ジアミンとが上に明記されたように反応するようにされ得ることを意味すると理解される。
【0020】
芳香族ジアミンは、好ましくはC
6〜C
24芳香族ジアミン、より好ましくはC
6〜C
18芳香族ジアミン、さらにより好ましくはm−キシリレンジアミン(MXDA)などのC
6〜C
10ジアミンである。芳香族ジアミンの芳香族性は好ましくは、一般に1〜2の範囲の総量で、m−フェニレンおよび/またはo−フェニレン基がその中に存在することから生じる。
【0021】
芳香族ジアミンの非限定的な例は、下に示されるような、m−フェニレンジアミン(MPD)、p−フェニレンジアミン(PPD)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4−ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−ODA)およびm−キシリレンジアミン(MXDA):
【化1】
ならびにp−キシリレンジアミン(PXDA、示されていない)である。
【0022】
脂肪族二酸は、好ましくはC
2〜C
16脂肪族二酸、より好ましくはC
4〜C
12脂肪族二酸、さらにより好ましくはアジピン酸などのC
6〜C
10脂肪族二酸である。脂肪族二酸は好ましくは線状である。
【0023】
上述のように、そのような脂肪族二酸は、とりわけ遊離酸および/または酸クロリドの形態で重縮合反応に使用することができる。
【0024】
脂肪族二酸の非限定的な例はとりわけ、シュウ酸(HOOC−COOH)、マロン酸(HOOC−CH
2−COOH)、コハク酸[HOOC−(CH
2)
2−COOH]、グルタル酸[HOOC−(CH
2)
3−COOH]、2,2−ジメチル−グルタル酸[HOOC−C(CH
3)
2−(CH
2)
2−COOH]、アジピン酸[HOOC−(CH
2)
4−COOH]、2,4,4−トリメチル−アジピン酸[HOOC−CH(CH
3)−CH
2−C(CH
3)
2−CH
2−COOH]、ピメリン酸[HOOC−(CH
2)
5−COOH]、スベリン酸[HOOC−(CH
2)
6−COOH]、アゼライン酸[HOOC−(CH
2)
7−COOH]、セバシン酸[HOOC−(CH
2)
8−COOH]、ウンデカン二酸[HOOC−(CH
2)
9−COOH]、ドデカン二酸[HOOC−(CH
2)
10−COOH]およびテトラデカン二酸[HOOC−(CH
2)
12−COOH]である。たとえばシクロヘキサンジカルボン酸のような、環中に4〜8個の炭素原子を有する少なくとも1つの炭素環を含む脂環式二酸もまた使用されてもよい。
【0025】
好ましい実施形態によれば、PMXD6ポリマーがポリアミド(PA1)として使用される。
【0026】
本発明の目的のためには、PMXD6ポリマーは、その繰り返し単位が、全部ではないが、本質的にすべて、アジピン酸とメタ−キシリレンジアミンとの重縮合反応によって得ることができる(および好ましくはかかる重縮合反応によって得られる)半芳香族ポリアミドを意味することを意図される。
【0027】
PMXD6ポリマーおよびポリアミド(PA1)として好適なその他のポリマーは、とりわけ三菱ガス化学株式会社から商業的に入手可能である。PMXD6および第2ポリアミド(たとえば、本明細書で以下ポリアミド(PA3)と言われるようなタイプの)を含むポリマー材料はとりわけ、Solvay Advanced Polymers,L.L.CからIXEF(登録商標)ポリアミドとして商業的に入手可能である。
【0028】
別の実施形態によれば、PMXD10ポリマーがポリアミド(PA1)として使用される。
【0029】
本発明の目的のためには、PMXD10ポリマーは、その繰り返し単位が、全部ではないが、本質的にすべて、セバシン酸とメタ−キシリレンジアミンとの重縮合反応によって得ることができる(および好ましくはかかる重縮合反応によって得られる)半芳香族ポリアミドを意味することを意図される。
【0030】
ポリアミド(PA1)、好ましくはPMXD6ポリマーの分子量は、特に限定されない。ポリアミド(PA1)は有利には、少なくとも2,500の、より好ましくは少なくとも5,000の、より好ましくは少なくとも10,000の、さらにより好ましくは少なくとも13,000の数平均分子量(M
n)を有する。さらに、ポリアミド(PA1)は有利には、多くとも60,000の、より好ましくは多くとも50,000の、さらにより好ましくは多くとも30,000の数平均分子量(M
n)を有する。前に示された好ましい範囲はすべて、本発明に従って好ましくは使用されるPMXD6ポリマーにも適用される。
【0031】
M
nは、次式:
M
n=2×10
6/Σ(−COOH末端基)+(−NH
2末端基)
(−COOH末端基)=μ当量単位での酸性末端基の数/1グラムの生成物樹脂(塩基で滴定される)
(−NH
2末端基)=μ当量単位での塩基性末端基の数/1グラムの生成物樹脂(酸で滴定される)
に従って計算することができる。
【0032】
本発明の目的のためには、定義「半芳香族ポリアミド(PA1)」はまた、上に指定されたような、少なくとも1つの脂肪族二酸もしくはその誘導体と、少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって得ることができる(および好ましくはかかる重縮合反応によって得られる)50モル%未満、好ましくは25モル%未満、より好ましくは15モル%未満の繰り返し単位をさらに含むポリアミドを包含することが理解されるべきである。この特定の実施形態においては、前記少なくとも1つの脂肪族ジアミンは、上に明記されたような芳香族ジアミンの1つと併せて使用されるコモノマーであってもよい。前記脂肪族ジアミンは、たとえば、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、プロピレン−1,3−ジアミン、1,3-ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ヘキサンジアミンまたはヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、および1−アミノ−3−N−メチル−N−(3−アミノプロピル)−アミノプロパンの中から選択されてもよい。好ましい脂肪族ジアミンはヘキサメチレンジアミン(HMDA)である。たとえば1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンまたはビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンのような、環中に4〜8個の炭素原子を有する少なくとも1つの炭素環を含む脂環式ジアミンもまた好適である。
【0033】
本発明のポリマー組成物中のポリアミド(PA1)(成分A)の含有率は、成分A)およびB)の総合重量を基準として、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、なお一層より好ましくは少なくとも50重量%、さらにより好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも85重量%である。
【0034】
ポリアミド(PA1)(成分A)の含有率は、成分A)およびB)の総合重量を基準として、98重量%以下、好ましくは多くとも95重量%、より好ましくは多くとも92重量%であることができる。
【0035】
本発明のポリマー組成物は、成分Bとして少なくとも1つの半芳香族ポリアミド(PA2)もしくは少なくとも1つのポリアミド(PA3)またはそれらの混合物を含む。
【0036】
半芳香族ポリアミド(PA2)の繰り返し単位の50モル%超は、少なくとも1つの芳香族二酸もしくはその誘導体と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって得ることができる(および好ましくはかかる重縮合反応によって得られる)。
【0037】
表現「少なくとも1つの芳香族二酸もしくはその誘導体」および「少なくとも1つの脂肪族ジアミン」は、1つもしくは2つ以上の芳香族二酸もしくはその誘導体と1つもしくは2つ以上の脂肪族ジアミンとが上に明記されたように反応するようにされ得ることを意味すると理解される。
【0038】
脂肪族ジアミンの非限定的な例はとりわけ、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、プロピレン−1,3−ジアミン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ヘキサンジアミンまたはヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、1−アミノ−3−N−メチル−N−(3−アミノプロピル)−アミノプロパン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンまたはビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンである。
【0039】
好ましい脂肪族ジアミンはヘキサメチレンジアミン(HMDA)である。
【0040】
半芳香族ポリアミド(PA2)を生成するための重縮合反応に用いられる芳香族二酸およびそれらの誘導体は、特に限定されない。芳香族二酸の非限定的な例はとりわけ、イソフタル酸(IPA)、テレフタル酸(TPA)およびオルトフタル酸(OPA)を含む、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ケトン、4,4’−ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3−カルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)ケトンおよびビス(3−カルボキシフェノキシ)ベンゼンである。
【0041】
好ましくは、半芳香族ポリアミド(PA2)は、ポリフタルアミド、すなわち、その繰り返し単位の50モル%超が、IPA、TPAおよびPAの中から選択される、少なくとも1つのフタル酸、もしくはそれらの誘導体と、少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって得ることができる(および好ましくは、得られる)芳香族ポリアミドである。
【0042】
誤解を避けるために、TPA、IPA、PAの化学構造が本明細書で下に図示される:
【化2】
【0043】
この好ましい実施形態に従った好適なポリフタルアミドはとりわけ、Solvay Advanced Polymers L.L.C.からAMODEL(登録商標)ポリフタルアミドとして入手可能である。
【0044】
半芳香族ポリアミド(PA2)は特に好ましくは、ポリ(テレ/イソ)フタルアミドから選択されてもよい。
【0045】
本発明の目的のためには、ポリ(テレ/イソ)フタルアミドは、
(i)その繰り返し単位の50モル%超がテレフタル酸、イソフタル酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって形成される;
(ii)その繰り返し単位の25モル%超および50モル%以下が、テレフタル酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって形成される;および
(iii)その繰り返し単位の1〜25モル%が、イソフタル酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって形成される
芳香族ポリアミドと定義される。
【0046】
ポリ(テレ/イソ)フタルアミドは、少なくとも1つの脂肪族二酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって形成される繰り返し単位をさらに含んでもよい。さらに、ポリ(テレ/シソ)フタルアミドは好ましくは、(オルト)フタル酸(PA)と少なくとも1つのジアミン(脂肪族または芳香族)との間の重縮合反応によって形成される繰り返し単位を含まない。
【0047】
半芳香族ポリアミド(PA2)はまた、ポリテレフタルアミドまたはポリイソフタルアミドから選択されてもよい。
【0048】
本発明の目的のためには、それぞれポリテレフタルアミド、ポリイソフタルアミドは、それらの繰り返し単位の50モル%超がそれぞれテレフタル酸、イソフタル酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって形成される芳香族ポリアミドと定義される。
【0049】
第1クラスの、それぞれポリテレフタルアミド、ポリイソフタルアミドは、それらの繰り返し単位が、全部ではないが、本質的にすべて、それぞれテレフタル酸、イソフタル酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって形成されるそれぞれのポリアミドからなる[クラス(I)]。
【0050】
第2クラスの、それぞれポリテレフタルアミド、ポリイソフタルアミドは、それらの繰り返し単位が、全部ではないが、本質的にすべて、テレフタル酸およびイソフタル酸の混合物と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって形成されるそれぞれのポリアミドからなる[クラス(II)]。テレフタル酸対イソフタル酸のモル比は、特定の制約を受けず、一般に85:15〜15:85の範囲に、好ましくは70:30〜30:70の範囲にあってもよい。
【0051】
第3クラスの、それぞれポリテレフタルアミド、ポリイソフタルアミドは、それらの繰り返し単位が、全部ではないが、本質的にすべて、それぞれテレフタル酸、イソフタル酸および少なくとも1つの脂肪族二酸の混合物と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって形成されるそれぞれのポリアミドからなる[クラス(III)]。そのような繰り返し単位は、それぞれテレフタルアミド、イソフタルアミドおよび脂肪族酸−アミド繰り返し単位とそれぞれ言われる。
【0052】
クラス(III)内で、サブクラスは、繰り返し単位の総モル数(すなわち、それぞれテレフタルアミド、イソフタルアミドプラス脂肪族酸−アミド繰り返し単位)を基準とする、それぞれテレフタルアミド、イソフタルアミド繰り返し単位のモル比が60モル%以上であり;さらにそれは有利には80モル%以下、好ましくは70モル%以下である、それぞれポリテレフタルアミド、ポリイソフタルアミドからなる[サブクラス(III−1)]。
【0053】
クラス(III)内で、第2サブクラスは、繰り返し単位の総モル数(すなわち、それぞれテレフタルアミド、イソフタルアミドプラス脂肪族酸−アミド繰り返し単位)を基準とする、それぞれテレフタルアミド、イソフタルアミド繰り返し単位のモル比が60モル%未満である、それぞれポリテレフタルアミド、ポリイソフタルアミドからなる[サブクラス(III−2)]。
【0054】
第4クラスの、それぞれポリテレフタルアミド、ポリイソフタルアミドは、それらの繰り返し単位が、全部ではないが、本質的にすべて、テレフタル酸、イソフタル酸、少なくとも1つの脂肪族二酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって形成されるそれぞれのポリアミドからなる[クラス(IV)]。
【0055】
クラス(I)〜(IV)のために有用な脂肪族酸および脂肪族アミンは、ポリマー(PA1)および(PA2)に好適として上に記載されたものである。
【0056】
別の実施形態によれば、本発明に従ったポリマー組成物は、少なくとも1つの脂肪族ポリアミド(PA3)を成分Bとして含んでもよい。
【0057】
脂肪族ポリアミド(PA3)の繰り返し単位の50モル%超は、脂肪族二酸(および/またはその誘導体)と脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって、および/またはアミノカルボン酸もしくはラクタムの少なくとも1つまたはそれらの混合物の自己重縮合反応によって得ることができる(および好ましくはかかる重縮合反応によって得られる)。脂肪族二酸および脂肪族ジアミンは、ポリマー(PA1)および(PA2)に好適であると上に記載されたものである。
【0058】
脂肪族ポリアミド(PA3)の繰り返し単位の好ましくは75モル%超、より好ましくは85モル%超は、脂肪族二酸(および/またはその誘導体)と脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって、および/またはアミノカルボン酸および/またはラクタムの自己重縮合反応によって得ることができる(および好ましくはかかる重縮合反応によって得られる)。さらにより好ましくは、脂肪族ポリアミド(PA3)の繰り返し単位は本質的にすべてまたはすべてが、少なくとも1つの脂肪族二酸もしくはその誘導体と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって得ることができる(および好ましくはかかる重縮合反応によって得られる)。
【0059】
脂肪族ポリアミド(PA3)は好ましくは、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66)、ポリ(ヘキサメチレンアゼロアミド)(ナイロン69)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン610)、ポリ(ヘキサメチレンドデカノアミド)(ナイロン612)、ポリ(ドデカメチレンドデカノアミド)(ナイロン1212)、ポリ(11−アミノ−ウンデカノ−アミド)(ナイロン11)、ならびにコポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0060】
アミノカルボン酸および/またはラクタムの自己重縮合反応によって得ることができる(および好ましくはかかる重縮合反応によって得られる)ポリアミドの例は、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、およびポリ(11−アミノ−ウンデカノ−アミド)(ナイロン11)である。
【0061】
より好ましくは、脂肪族ポリアミド(PA3)は、ナイロン6およびナイロン66から選択される。
【0062】
さらにより好ましくは、脂肪族ポリアミド(PA3)はナイロン66、すなわち、1,6−ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との間の重縮合反応によって得ることができる(および好ましくはかかる重縮合反応によって得られる)ポリアミドである。
【0063】
上述のように、本ポリマー組成物はまた、2つ以上のポリアミド(PA2)もしくは(PA3)または1つもしくは2つ以上のポリアミド(PA2)と1つもしくは2つ以上のポリアミド(PA3)との混合物を成分Bとして含むことができる。混合物の場合に、ポリマー(PA2)および(PA3)の重量比は、制約を受けず、ポリマー組成物の所望の特性に従って当業者によって自由に選択され得る。
【0064】
本発明のポリマー組成物中のポリアミド(PA2)および/または(PA3)(成分B)の含有率は、成分A)およびB)の総合重量を基準として、好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、なお一層より好ましくは少なくとも8重量%である。
【0065】
ポリアミド成分Bの含有率は、成分A)およびB)の総合重量を基準として、90重量%以下、好ましくは多くとも80重量%、より好ましくは多くとも50重量%、さらにより好ましくは多くとも25重量%、最も好ましくは多くとも15重量%であることができる。
【0066】
第1実施形態に従った本発明に従ったポリマー組成物は、一般式
−A−O−
(式中、AはC
2〜C
10アルキレン基を意味する)
の少なくとも2つのアルキレンオキシド部分を含有する、ポリ(アルキレンオキシド)−ポリアミドブロックコポリマー以外の有機物質(S)を成分(C)として含む。
【0067】
第1の好ましい実施形態によれば物質(S)は、ジアミンと二酸との重縮合反応によっておよび/またはアミノ酸の自己重縮合反応によって得ることができる繰り返し単位を含むポリマーとは(特にランダムもしくはブロックコポリマーとは)異なる。そのような繰り返し単位は通常、ペプチド結合と一般的に言われる、−CO−NH−(二級)アミド官能基を含有する。そのような二級アミド官能基はまた一般に、ポリアミド繰り返し単位中に存在する。
【0068】
ポリマー物質(S)はまた、第2の好ましい実施形態に従って、一級アミド官能基−CO−NH
2を含まなくてもよくおよび/または三級アミド官能基−CO−NR−を含まなくてもよくまたは前述のアミド官能基のいずれも含まなくてさえもよい。
【0069】
ポリマー物質(S)はまた、二級ウレタン官能基−O−CO−NH−を含まなくてもよくおよび/または一級ウレタン官能基−O−CO−NH
2もしくは三級ウレタン官能基−O−CO−NR−を含まなくてもよくまたは前述のウレタン官能基のいずれも含まなくてさえもよい。
【0070】
さらに、ポリマー物質(S)は、二級アミジン官能基−C(=NH)−を含まなくてもよくおよび/または一級アミジン官能基−C(=NH)−NH
2もしくは三級アミジン官能基−C(=NH)−NR−を含まなくてもよくまたは前述のアミジン官能基のいずれも含まなくてさえもよい。
【0071】
ポリエステルの繰り返し単位中に一般に存在するようなエステル官能基(−CO−O−)を含まないおよび/またはカルボン酸官能基(−COOH)を含まないポリマー物質(S)もまた好適である。
【0072】
本発明に従ったポリマー物質(S)は、前述の実施形態を考慮に入れるときに、一般式−(X
1)
x−C(=Y)−X
2(ここで、互いに独立してX
1およびX
2は、NH−、NH
2、NR−、O−およびOHから選択されてもよく、特にX
1から独立してX
2は、NH−、NH
2およびNR−から選択することができ、X
1およびX
2から独立して、Yは、O、NH、NRから選択されてもよく、特にOであってもよく、X
1、X
2またはYから独立して、xは、0または1であってもよく、特に0であってもよい)に相当する官能基を含まなくてもよい。
【0073】
官能基への前述の言及は、ポリマー鎖におけるまたはポリマー鎖への置換基としての前記基の存在に関連しているが、ポリマー鎖の末端基として前記官能基、特に述べられた一級官能基を有する生成物を排除することを意図されない。したがって、たとえば、一級アミノ末端基および/またはその他の一級末端基を有するポリ(アルキレンオキシド)は排除されることを意図されない。
【0074】
鎖中の炭素原子がそれら自体炭素原子を含む置換基を持たない二価基Aが好ましい。二価基Aは好ましくは、n−ヘキシレン、n−ペンチレン、n−ブチレン、プロピレンまたはエチレンなどのC
2〜C
6基である。それはより好ましくは、n−プロピレン(−CH
2−CH
2−CH
2−)、エチレン(−CH
2−CH
2−)およびそれらの混合物からなる群から選択される。さらにより好ましくは、それはエチレンであり、相当するアルキレンオキシド部分はエチレンオキシド(−CH
2−CH
2−O−)である。
【0075】
オリゴマーを含む、ポリマーは、物質(S)の可能な第一候補を表す。それらは典型的には、繰り返し単位−O−A−のそれらの独特な、単一の数で互いに異なる複数の物質(S)からなる、ある程度の多分散性(多分散性指数は一般に、ポリマーの重量平均分子量対数平均分子量の比と定義される)を有するポリマー材料の形態で入手可能である。S’が、たとえば多くとも1,500の分子量を有する好ましい物質(S)を意味するとき、たとえば1,750の数平均分子量を有するポリ(エチレンオキシド)材料は、その多分散性のために、たとえば、多くとも1,500の分子量を個々に有するある量のポリ(エチレンオキシド)物質(S’)を含有する可能性があろう。
【0076】
ある程度の多分散性を示す材料の、特にポリ(アルキレンオキシド)材料などのポリマー材料の分子量分布は、50cmの長さ(L)および10mmの内径(I.D.)のJordi DVB Glucose BR Mixed Bed Linear充填カラム、屈折率検出器、溶媒としてのDMSO、1.0mL/分の流量、80℃の温度およびポリスチレンまたはポリ(エチレンオキシド)校正基準を用いるゲル浸透クロマトグラフィーによって容易に測定することができる。物質(S)が、ある程度の多分散性を示す材料を構成する複数の物質、特にポリ(アルキレンオキシド)材料など複数のポリマー材料であるとき、それは有利には、その数および/またはその重量平均分子量(重量および数平均分子量の測定方法は当業者に公知である)によって特徴付けられる。
【0077】
本発明に従ったポリマー組成物における使用に好適な物質(S)の数平均または重量平均分子量は有利には少なくとも100であり;それは好ましくは少なくとも200のもの、より好ましくは少なくとも300のもの、さらにより好ましくは少なくとも400のものである。加えて、そのような物質(S)の数平均または重量平均分子量は一般に、多くとも20,000,000、多くとも10,000,000、多くとも8,000,000、多くとも5,000,000、多くとも500,000、多くとも200,000、多くとも100,000、多くとも50,000、多くとも20,000、多くとも10,000、多くとも5,000または多くとも2,000のものであってもよい。好ましい分子量は、物質(S)の性質にある程度依存する。幾つかの場合に、とりわけ物質(S)がカチオン性、アニオン性または非イオン性乳化剤であるときに、良好な結果は、その数平均または重量平均分子量が多くとも1,500、多くとも1,000または多くとも750のものである物質Sで得られた。その他の場合に、とりわけ物質(S)がポリ(アルキレンオキシド)であるときに、良好な結果は、その数平均または重量平均分子量が少なくとも2,000、少なくとも10,000または少なくとも100,000のものである物質Sで得られた。
【0078】
物質(S)は、二価基A中に含有される炭素原子以外の炭素原子を含まなくてもよい。あるいは、物質(S)は、二価基A中に含有される炭素原子以外の少なくとも4、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも18または少なくとも20個の炭素原子をさらに含有してもよく;加えて、物質(S)は、低分子量化合物Sの場合には、40、30、25、20、18または16個の炭素原子を超えない量で二価基A中に含有される炭素原子以外の炭素原子を含有してもよい。
【0079】
本発明の第2実施形態によれば、物質(S)は、非イオン性、アニオン性もしくはカチオン性乳化剤として当業者に知られている、ポリ(アルキレンオキシド)、アルコキシル化非環式カルボン酸、アルコキシル化非環式カルボン酸エステル、アルコキシル化非環式カルボン酸金属塩、アルコキシル化非環式部分フッ素化カルボン酸、アルコキシル化過フッ素化カルボン酸、アルコキシル化非環式アルコール、アルコキシル化部分フッ素化非環式アルコール、アルコキシル化非環式パーフルオロアルコール、アルコキシル化アルキルフェノール、アルコキシル化非環式アミン、アルコキシル化部分フッ素化非環式アミン、アルコキシル化非環式パーフルオロアミン、アルコキシル化非環式アミド、アルコキシル化アルキルスルフェート、アルコキシル化部分フッ素化アルキルスルフェート、アルコキシル化過フッ素化アルキルスルフェート、アルコキシル化アルキルスルホネート、アルコキシル化部分フッ素化アルキルスルホネート、アルコキシル化過フッ素化アルキルスルホネート、アルコキシル化アルキルアリールスルホネート、アルコキシル化モノ−またはジアルキルスルホスクシネートおよびスルホスクシナメート、アルコキシル化アルキルもしくはアルキルアリールホスフェートからなる群から、または少なくとも1つの親水性の第1ブロックおよび少なくとも1つの親油性の第2ブロックから本質的になる物質から選択される。
【0080】
乳化剤は界面活性剤のグループであり、その後者の化合物は、液体の表面張力、2つの液体間の界面張力、または液体と固体間のそれを低下させる化合物を包含すると一般に考えられる。界面活性剤は、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤、および分散剤として働く可能性がある。
【0081】
乳化剤は一般に、非混和性流体の混合物をうまく分散された状態に保つために使用される化合物である。乳化剤は、非混和性流体の界面で分子のその2つの異なる部分を使って自らを位置付け、こうして流体の分子の凝集を防ぐ。
【0082】
物質(S)は好ましくはエチレン系不飽和を含まず、好ましくは有機物質(S)は、完全飽和のC−C結合のみを含有し、C−C二重または三重結合をまったく含有しない。
【0083】
物質(S)は一般に、非イオン性、アニオン性またはカチオン性であってもよい。
【0084】
物質(S)は、親水性−A−O−部分から本質的になってもよい。
【0085】
多くの好適な物質Sが、本発明の多くの異なる実施形態に関連して以下に記載される。しかし、本明細書で以下記載されるこれらの物質の改質は可能であり、当業者が幅広い様々な代替案から選択できることは明らかである。
【0086】
第1の好ましいグループの物質Sは、時々ポリアルキレングリコールとも言われる、いわゆるポリ(アルキレンオキシド)である。
【0087】
本発明における使用に好適なポリアルキレンオキシドは、式−R
1−O−(式中、R
1は、2〜8個の炭素原子を有する二価アルキレン基を表す)で表される繰り返し単位から本質的になり、そしてその末端にヒドロキシル基を有するポリマーである。特に好適なポリアルキレンオキシドは、R
1が2〜4個の炭素原子を有するものである。
【0088】
アルキレン基R
1の水素原子の一部は、その他の原子または原子団で置換されていてもよい。ポリ(アルキレンオキシド)は、上記の繰り返し単位(−R
1−O−)のみからなってもよいし、またはその他の繰り返し単位をさらに含有してもよい。後者の場合には、式−R
1−O−の繰り返し単位の割合は、少なくとも50重量%、好ましくは80重量%である。ポリ(アルキレンオキシド)は、線状か分岐かのどちらかであってもよい。線状ポリ(アルキレンオキシド)が一般に好ましい。
【0089】
好適なポリ(アルキレンオキシド)の具体的な例としては、ポリオキシアルキレンポリオール、たとえば、ポリオキシエチレングリコール(ポリ(エチレングリコール)、またはポリ(エチレンオキシド)としても知られる)、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシエチレンテトラオール、ポリオキシプロピレングリコール(一般的にポリ(プロピレングリコール)またはポリ(プロピレンオキシド)とも言われる)、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンテトラオール、ポリオキシブチレングリコール、ポリオキシペンタングリコール、ポリオキシヘキサングリコール、ポリオキシヘプタングリコール、およびポリオキシオクタングリコールが挙げられる。これらのポリマーは、個々にか2つ以上の組合せでかのどちらかで使用されてもよい。
【0090】
ポリ(アルキレンオキシド)のヒドロキシル末端基は、好ましい実施形態によれば、アルコキシド基、好ましくはメトキシまたはアルコキシで部分的にまたは完全に置換されていてもよい。ポリ(アルキレンオキシド)のヒドロキシル基をアルコキシ基へ転化する方法は、当業者に公知であり、文献に記載されている。
【0091】
この実施形態に従ったポリ(アルキレンオキシド)の分子量は、物質Sについて概して上に議論されたように広範囲にわたってもよい。ある場合には少なくとも20,000、好ましくは少なくとも200,000、さらにより好ましくは少なくとも1,000,000の数平均または重量平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)が有利であることが判明した。特に増加するポリ(アルキレンオキシド)の分子量とともに破断点歪みの増加は、Young率または破断点応力へ有害な影響なしにある場合には観察することができた。その他の場合には多くとも20,000、好ましくは多くとも10,000、さらにより好ましくは多くとも1000の平均分子量が有用であることが分かった。好適なポリ(アルキレンオキシド)の分子量はまた、処理パラメータまたは条件を考慮して最適化されてもよい。こうして、たとえばより低分子量のポリ(アルキレンオキシド)は多くの場合液体であり、したがって押出機に供給するのがより困難である可能性があり、脱ガス工程中に部分的に除去される可能性がある。それらの用途向けには、より高い分子量の生成物が好ましいであろう。当業者は、分子量の関数としての物理的特性を承知しており、したがって最良の生成物を選択するであろう。
【0092】
好ましい実施形態によれば、多くとも2,000、より好ましくは多くとも1,000の数平均または重量平均分子量を有する、最も好ましくは約500の数平均または重量平均分子量を有するメトキシ末端ポリ(エチレンオキシド)が使用されてもよい。
【0093】
エチレンオキシドおよびたとえばプロピレンオキシド単位をランダムまたはブロック分布で含むコポリマーがまた好適であり、それぞれの製品は、BASFから商品名Pluronics(登録商標)で商業的に入手可能である。
【0094】
親油性および親水性ブロックを持った物質Sの例としては、「非イオン性乳化剤」、「アニオン性乳化剤」および「カチオン性乳化剤」として当業者によく知られているそれらの物質が挙げられる。
【0095】
これらの乳化剤は、すべて非イオン性乳化剤の系統に属する、アルコキシル化酸、アルコール、アミンおよびアミド、好ましくは7個以上の炭素原子を有するアルコキシル化脂肪カルボン酸、アルコール、アミンおよびアミドであってもよい。
【0096】
7個以上の炭素原子を有するアルコキシル化脂肪カルボン酸の例は、2〜50モル(特に、4〜16モル)のアルキレンオキシド(エチレンオキシドなどの)とステアリン酸、パルミチン酸、ラウリル酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、カプリル酸、エナント酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸から選択される1モルの飽和脂肪酸との縮合生成物である。アルコキシル化カルボン酸のその他の例は、エチレンオキシドなどの2〜50モルのアルキレンオキシドとオレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸から選択される1モルの不飽和脂肪酸との縮合生成物である。
【0097】
別の好ましい実施形態において物質(S)は、一般式R−C(=O)−(OCH
2CH
2)
n−OH(ここで、Rは、7〜24個、好ましくは10〜24個の炭素原子を有する脂肪族アルキル基であり、nは1〜20の整数である)の1つ以上のエトキシル化脂肪酸を含有する。その本質的に好ましい例は、約4〜5モルのエチレンオキシド単位とラウリル酸および/またはミリスチン酸との縮合物であるDeplastol(登録商標)市販製品である。Deplastol(登録商標)物質は、Cognisから入手可能である。相当するプロポキシル化および/またはブチル化脂肪酸もまた、有機物質(S)に含められてもよい。
【0098】
アルコキシル化アルコールの例は、2〜50モルのエチレンオキシドなどのアルキレンオキシドとステアリルアルコール(1−オクタデカノール)、イソステアリルアルコール(16−メチルヘプタデカン−1−オール)、エライジルアルコール(9E−オクタデセン−1−オール)、オレイルアルコール(シス−9−オクタデセン−1−オール)、リノレイルアルコール(9Z,12Z−オクタデカジエン−1−オール)、エライドリノレイルアルコール(9E,12E−オクタデカジエン−1−オール)、リノレニルアルコール(9Z,12Z,15Z−オクタデカトリエン−1−オール)、エライドリノレニルアルコール(9E,12E,15−E−オクタデカトリエン−1−オール)、リシノレイルアルコール(12−ヒドロキシ−9−オクタデセン−1−オール)、アラキジルアルコール(1−エイコサノール)、ベヘニルアルコール(1−ドコサノール)、エルシルアルコール(シス−13−ドコセン−1−オール)、リグノセリルアルコール(1−テトラコサノール)、セリルアルコール(1−ヘキサコサノール)、モンタニルアルコール、クルイチルアルコール(1−オクタコサノール)、ミリシルアルコール、メリシルアルコール(1−トリアコンタノール)、ゲッディル(geddyl)アルコール(1−テトラトリアコンタノール)およびセテアリルアルコールから選択される1モルの飽和または不飽和脂肪アルコールとの縮合生成物である。
【0099】
脂肪酸アルコールをベースとする親油性部分およびポリ(アルキレンオキシド)基をベースとする親水性部分のそれぞれの製品は、それぞれAtlas Chemical Co.,ClariantおよびBASFから商品名Brij(登録商標)、Genapol(登録商標)およびLutensol(登録商標)で商業的に入手可能である。
【0100】
本発明の組成物における使用に好適なアルコキシル化有機物質Sとしては、Cognis(現BASF)から同様に商業的に入手可能であるDisponil(登録商標)物質が挙げられる。それぞれ2、4または10モルのエチレンオキシドを含むエチレンオキシド単位とラウリン酸および/またはミリスチン酸との縮合物である、Disponil(登録商標)製品LS 2、4および/または10が好ましい。異なる長さのポリオキシエチレン置換基を有するC
16/C
18エトキシル化アルコールであるDisponil(登録商標)TA製品もまた好ましい。エトキシル化オクチルフェノールおよびノニルフェノールであるDisponil(登録商標)OPおよびDisponil(登録商標)NP製品もまた、本発明に従った成分C)として組成物中に含められてもよい。
【0101】
物質(S)は、2〜50モル(特に、4〜16モル)のアルキレンオキシド(エチレンオキシドなどの)と1モルのアルカリ金属(たとえばNa)またはたとえばNH
4、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、スルホスクシネートもしくはホスフェートのような擬アルカリ金属との縮合生成物などのアニオン性乳化剤であってもよい。
【0102】
アニオン性乳化剤の例として、エトキシル化ナトリウムモノアルキルスルホスクシネート、またはエトキシル化ナトリウムもしくはアンモニウムノニルフェニルホスホネートが挙げられてもよい。
【0103】
アニオン性乳化剤の例として、エトキシル化、アンモニウムもしくはナトリウム、線状もしくは分岐C
6、C
8、C
10、C
12、C
14、C
16およびC
18アルキルスルフェートがまた挙げられてもよい。エトキシル化アニオン性乳化剤はたとえば、アルキルスルフェートの1モル当たり2、4、8、12または24モルのエチレンオキシドを含有してもよい。
【0104】
Clariantから商業的に入手可能なHostapal(登録商標)BV、エトキシル化ナトリウムアルコキシル化トリ(t−ブチル)フェニルスルホネート、およびノニルフェニルスルホネートの1モル当たり2、4、8、12または24モルのエチレンオキシドを含有するエトキシル化ノニルフェニルスルホネートがまた挙げられてもよい。
【0105】
本発明に従った組成物中の成分C)として好適な、さらなるグループの好適なアルキレンオキシド基含有化合物は、アミン末端ポリ(アルキレンオキシド)、特にアミン末端ポリ(エチレンオキシド)またはアミン末端ポリ(プロピレンオキシド)であり、言及された両タイプのアルキレンオキシド単位を含むコポリマーを含み、それらは、Huntsman Chemical Corporationから商品名Jeffamine(登録商標)で商業的に入手可能である。
【0106】
多くの場合に、いわゆるフルオロ界面活性剤の群から選択される化合物Sが有利であることが判明した。
【0107】
一般に、そのようなフルオロ界面活性剤は、部分もしくは完全フッ素化アルキレンオキシドと非フッ素化アルキレンオキシドとの共重合からか、こうして末端基にフッ素含量を提供するフッ素含有反応剤とポリ(アルキレンオキシド)との反応によってかのどちらかで生じる分子中のフッ素の含有率で特徴付けられてもよい。
【0108】
第1の場合にはオリゴマーまたはポリマーは、アルキレンオキシド基に加えて、1個以上のフッ素原子を有するある量のそれぞれの基を含む、すなわちアルキレンオキシドとしてエチレンオキシドの場合にはこれらの化合物は、単位−(CH
2−CH
2−O)−および単位−(CH
2−aX
a−CH
2−bX
b−O)−(ここで、Xはフッ素を表し、aまたはbの少なくとも1つは、少なくとも1である)を含む。
【0109】
ある場合には一般構造
F(CF
2−CF
2)
x−CH
2−CH
2−O−(CH
2−CH
2−O)
y−R
(式中、Rは、Hまたはアルコキシ基であり、xおよびyは、1〜50の範囲の、好ましくは1〜30の範囲の値を有し、特に好ましいxおよびyは多くとも20である)
のフルオロ界面活性剤が有利であることが判明した。多くとも2000、好ましくは多くとも1500、さらにより好ましくは多くとも1000の数または重量平均分子量を有するこのタイプの製品がとりわけ良好な結果を示した。
【0110】
x対yの比は特に制約を受けず、広範囲内で選択されてもよい。
【0111】
このタイプの多くのフルオロ界面活性剤が商品名Zonyl(登録商標)でDuPontから入手可能である。
【0112】
成分C)として好適な別のグループの化合物[物質(S)]としては、6個以下の基CF
2を有し、フッ素で一端を停止された、ポリマーなどのデリバリシステムに結合した短鎖分子をベースとするフルオロ界面活性剤または商品名Capstone(登録商標)でDuPontから商業的に入手可能であるような界面活性剤が挙げられる。
【0113】
多くの特に好ましい成分C)は本明細書で以下実施例において示される。
【0114】
本発明に従ったポリマー組成物中の成分C)の含有率は、成分A)B)およびC)の総合重量を基準として、少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%、最も好ましくは少なくとも0.3重量%である。
【0115】
成分C)の含有率は、成分A)〜C)の総合重量を基準として、多くとも15、好ましくは多くとも10、より好ましくは多くとも8、最も好ましくは多くとも5重量%である。
【0116】
良好な結果は、成分A)〜C)の総合重量を基準として、1重量%未満の量の成分C)でさえ達成された。
【0117】
本明細書で以下により詳細に記載されるような充填剤含有ポリマー組成物の場合、成分C)の最適量は一般に、充填剤を添加していない組成物より幾分高い。
【0118】
本発明に従ったポリマー組成物は、成分A)〜C)から本質的にまたは完全になることができるか、またはそれらは、かなりの百分率で追加の成分、特に充填剤を含有することができる。
【0119】
充填剤なしの組成物においては、成分A)〜C)は一般に、全体組成物の重量を基準として、少なくとも80重量%、ほとんどの場合少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%を構成する。述べられたように本発明に従ったポリマー組成物は、成分A)〜C)から専らなってもよいしまたは、別の方法では、このタイプの組成物中に当業者に公知のある種のさらなる添加剤を含有することができる。
【0120】
ある場合には、本発明に従った組成物中に充填剤を含むことが有利であることが判明した。
【0121】
あらゆる充填剤が原則として本発明における使用に好適であり;ポリアミドマトリックス中へ有益に組み込まれることが知られている充填剤が有利に使用されてもよい。当業者は、本発明に従ったポリマー組成物にとって最良に適している充填剤を容易に認めるであろう。一般に、充填剤は、その化学的性質、その数平均長さ、その数平均直径、その数平均アスペクト比、(とりわけ、充填剤とポリアミドとの間の良好な界面付着がブレンドの剛性および強靱性を向上させるので)架橋および表面処理なしに配合装置においてうまく供給されるその能力に応じて選択される。
【0122】
ある種の実施形態によれば充填剤は補強材である。補強材は当業者によく知られている。補強材は、使用されるとき、充填剤なしのポリマー組成物のそれより高い引張強度を有するブレンドを一般に形成する。引張強度は、ASTM D−638に従って3.2mm(0.125インチ)厚さのASTM試験検体について測定することができる。板状充填剤、針状充填剤および繊維状充填剤は一般に補強材であり、ポリマー組成物の引張強度の高い増加を多くの場合提供することができる。
【0123】
板状充填剤は、当業者によってよく知られている。典型的には、板状充填剤は、板の形状を有する、または板に似ている粒子から本質的になるか、または粒子からなり、すなわち粒子は平らであるかまたはほぼ平らであり、それらの厚さはその他の2つの寸法と比べると小さい。ある種の板状充填剤は、その内容が参照により本明細書に援用される、Plastics Additives Handbook,5
th edition,Hanserのchapter 17.4.2,p.926−930にとりわけ記載されている。本明細書で以下に言及されるように、パラメータnは標準条件下の屈折率を意味し、HはMohs硬度を意味する。Mohs硬度尺度は、タルク(Mohs硬度1)から出発してダイアモンド(Mohs硬度10)に終わる10の標準鉱物からなる。硬度は、標準鉱物、試験材料のどちらに掻き傷がつくか掻き傷がつかないかを見いだすことによって測定され;硬度は、尺度上の2つの点−第1点は掻き傷がつく鉱物であり、次の点は掻き傷がつかない鉱物である−の間にある。ステップは等しい値のものではなく;たとえば9と10との間の硬度の差は、1と2との間よりはるかに大きい。板状充填剤の非限定的な例としては、タルク(n=1.57−1.69、H=1)、白雲母(n=1.55−1.61;Hは2.5〜4の範囲である)および金雲母(n=1.54−1.69、H=2.5−3)などの雲母、カオリナイト(n=1.56−1.61、H=2)、カ焼カオリンまたはムライト(n=1.62、Hは、カ焼温度に依存して、6〜8の範囲である)などのカオリン、ならびにBali粘土(n=1.6、H=2−2.5)などの粘土が挙げられる。
【0124】
針状充填剤もまた当業者によってよく知られている。典型的には、針状充填剤は、針の形状を有する、または針に似ている粒子から本質的になるか、または粒子からなる。本発明に従ったポリマー組成物に含有されるような、針状充填剤の粒子は、2〜20の数平均アスペクト比を典型的には有する。とりわけ増加した強化効果を達成する目的のために、本発明に従ったポリマー組成物中に含有されるような粒子の数平均アスペクト比は、好ましくは少なくとも3.0、より好ましくは少なくとも4.5、さらにより好ましくは少なくとも6.0であり;高い寸法安定性および低い反りが必要とされるときには、数平均アスペクト比は好ましくは多くとも15である。充填剤の粒子の数平均アスペクト比は、画像解析ソフトウェアと一体となった光学顕微鏡法によって測定することができる。この目的のために、粒子は有利には、エタノールなどの溶剤中に細かく分散される。倍率は一般に約200〜約400の範囲である。画像解析ソフトウェアは、その全内容が参照により本明細書に援用される、「A Threshold Selection Method from Gray−Level Histograms(階調レベルヒストグラムからの閾値選択法)」,IEEE Trans.Syst.Ma,Cybern.,9,62−66(1979)に記載されているようなOtsuの方法に基づくことができる。数平均アスペクト比は個々に取られる各粒子のアスペクト比の数平均と定義することができ、粒子のアスペクト比はその長さ/直径比と定義することができる。粒子の長さは粒子と同じ正規化二次モーメントを有する楕円の主軸の長さと定義することができ、一方粒子の直径は、粒子と同じ正規化二次モーメントを有する楕円の短軸の長さと定義することができる。
【0125】
針状充填剤の中で、ウォラストナイト(n=1.65、H=4.5−5)およびゾノトライト(n=1.59、H=6.5)が好ましい。ウォラストナイトは、アルカリに良好な耐性を持った白色メタケイ酸カルシウムであり;ウォラストナイトは、その全内容が参照により本明細書に援用される、Plastics Additives Handbook,5
th edition,Hanserのchapter 17.4.3.1,p.930−931にとりわけ記載されている。ゾノトライトはイノシリケートであり;典型的には、その式はCa
6Si
6O
17(OH)
2である。本発明の目的に好適なその他の針状充填剤としては、セピオライト、アタパルジャイトおよびパリゴルスカイトが挙げられる。
【0126】
最後に、繊維状充填剤もまた当業者によく知られている。典型的には、繊維状充填剤は、繊維の形状を有する、または繊維に似ている粒子から本質的になるか、または粒子からなる、すなわち粒子は細くそして非常に細長く、それらの長さは、その他の2つの寸法と比べると非常に大きい。とりわけ増加した強化の目的のために、本発明に従ったポリマー組成物中に含有されるような、繊維状充填剤の粒子は、
− 典型的には5より上の、好ましくは10より上の、より好ましくは15より上の数平均アスペクト比;
− 典型的には少なくとも50μm、好ましくは少なくとも100μm、より好ましくは少なくとも150μmの数平均長さ;および
− 典型的には25μmより下、好ましくは20μmより下、より好ましくは15μmより下の数平均直径
を有する。
【0127】
本発明に従った組成物中に含有されるとき、繊維状充填剤の粒子は一般に30mmより下の数平均長さを有し、数平均直径は一般に3μmより上である。ある種の繊維状充填剤はとりわけ、その全内容が参照により本明細書に援用される、Plastics Additives Handbook,5
th edition,Hanserのchapters 17.4.3.2および17.4.3.3,p.930−931に記載されている。本発明に従って使用できる繊維状充填剤の中に、ガラス繊維、アスベスト、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、ケイ酸アルミニウム繊維、炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維、炭素繊維などを挙げることができる。理解できるように、特定クラスの繊維状充填剤は、ウィスカー、すなわち、Al
2O
3、SiC、BC、FeおよびNiなどの、様々な原材料から製造される単結晶繊維からなる。繊維状充填剤の中で、ガラス繊維が好ましく;それらとしては、その全内容が参照により本明細書に援用される、Additives for Plastics Handbook,2
nd edition,John Murphyのchapter 5.2.3,p.43−48に記載されているような、刻んだストランドA−、E−、C−、D−、S−およびR−ガラス繊維が挙げられる。それらのタイプに依存して、ガラス繊維は、約1.51〜約1.58の屈折率n、および平均約6.5のMohs硬度Hを有する。
【0128】
好ましくは、充填剤は、増加した引張特性の組成物が目指される場合には針状充填剤および繊維状充填剤から選択される。
【0129】
非常に好ましくは、充填剤は、繊維状充填剤から選択される。優れた結果は、ガラス繊維で得られた。
【0130】
充填剤としてのガラス繊維と組み合わせて化合物C)としてのポリ(アルキレンオキシド)、好ましくはポリ(エチレンオキシド)は、意外にも良好な弾性率および応力挙動を示す組成物を生成する。
【0131】
当業者は、ポリマー組成物の所望の特性に従って充填剤のタイプを決定するであろう。
【0132】
充填剤が引張強度を増加させるために主として使用されるわけではない場合には、球状充填剤または球状粒子に近づく形状の充填剤が有利に使用されてもよい。
【0133】
ある種の実施形態においては、充填剤は、カーボンナノチューブなどの、ナノ微粒子充填剤から選択される。ナノ微粒子充填剤は、300nmより下の粒径を、または100nmより下の粒径さえも有してもよい。
【0134】
充填剤すべての中で、いわゆるグラフェン材料が幾つかの有利な独特の結果を示したことは注目に値する。したがって、本発明のポリマー組成物はいかなるグラフェン材料も一般に含まないが、本発明の特定の実施形態に従ったある種のポリマー組成物は、グラフェン材料を含む。
【0135】
グラフェンそれ自体は、ハニカム構造に密充填されているsp2結合炭素原子の1原子厚さの平面シートと通常考えられている。名称グラフェンは、黒鉛(graphite)および接尾辞エン(−ene)に由来する。黒鉛それ自体は、一緒に積み重ねられた多数のグラフェンシートからなる。
【0136】
黒鉛、カーボンナノチューブ、フラーレンおよび上に言及された意味でのグラフェンは、それらの構成原子の同じ基本的な構造配置を共有している。各構造は、規則的な六角形の形状−ベンゼンと一般に言われるものに類似の芳香族構造で化学的に一緒にしっかりと結合した、6個の炭素原子から始まる。
【0137】
完全なグラフェンは、六角形セルから専らなり;五角形および七角形セルは構造中の欠陥を構成する。隔離された五角形セルが存在する場合、平面は円錐形へゆがみ、12の五角形の挿入はフラーレンを生み出すであろう。
【0138】
組織化の次のレベルで、グラフェンそれ自体は、鶏舎用金網に似ている六角形の基本的に平面のシートでのベンゼン環の大アセンブリである。その他の黒鉛形態がグラフェンから構築される。バッキーボールおよび多くのその他の非チューブ状フラーレンは、原子スケール球体、細長い回転楕円体などへ仕上げられたグラフェンシートと考えることができる。カーボンナノチューブは本質的に、微小なシリンダーへ丸められたグラフェンシートである。そして最後に、黒鉛は、グラフェンシートの厚い三次元積み重ねであり;シートは、弱い分子間引力(ファンデルワールス力)によって一緒に保持されている。黒鉛シート間の弱い結合は、黒鉛が極小のウェハーへ壊れることを可能にする。
【0139】
化学文献においてグラフェンは、IUPAC(Boehm et al.,Pure an Appl.Chemistry 66,1893−1901(1994))によって1994年に公式に次の通り定義された:
黒鉛構造のカーボン単層は、シリーズ・ナフタレン、アントラセン、コロネンなどの最終メンバーと考えられ、用語グラフェンはそれ故、黒鉛層間化合物中の個々のカーボン層を示すために用いられるべきである。
【0140】
IUPAC技術解説(IUPAC compendium on technology)によれば、用語グラフェンは、個々の層の反応、構造関係またはその他の特性が議論されるときにのみ使用されるべきであるが、三次元構造については使用されるべきでない。
【0141】
文献においてグラフェンはまた単層黒鉛と一般的に言われてきた。
【0142】
グレフェンを得るための一方法は、それを剥離すること、すなわち繰り返し粘着テープで黒鉛からそれを剥がすことである。しかし、この方法で製造されるグラフェンは極めて高価である。
【0143】
別の方法は、炭化ケイ素を1100℃より上の温度に加熱してそれをグラフェンに還元することである。この方法は、使用されるSiC基質のサイズに依存する試料サイズを生成する。しかし、再び、この方法によって得られる製品は依然として非常に高価である。
【0144】
開放端カーボンナノチューブの切断からなるグラフェンリボンの製造について実験方法が報告されている(Nature 2009,367)。使用される基質(単壁または多壁ナノチューブ)に依存してグラフェンシートのグラフェン単シートまたは層を得ることができる。しかし、カーボンナノチューブが非常に高価な材料であるという事実のために、この方法で得られるグラフェン製品は、ポリマー組成物の成分として商業的に実現可能ではない。
【0145】
M.Choucair et al.,Nature Nanotechnology 4,30−33(2009)は、ナトリウム金属によるエタノール還元、引き続くエトキシド生成物の熱分解とナトリウム塩を除去するための水洗とによるグラム量のグラフェンの製造方法を開示している。
【0146】
最近、新しいタイプのグラフェン材料、いわゆるナノ−グラフェン・プレートレットすなわちNGPが開発され、それぞれの製品が、たとえばAngstron Materials LLCから商業的に入手可能である。NGPは、隔離された単層グラフェンシート(単層NGP)をまたはグラフェンシートの積み重ね(多層NGP)を意味する。NGPは容易に大量生産することができ、カーボンナノチューブと比較してはるかにより低い費用でそしてより大量に入手可能である。適合したサイズおよび特性の広範囲のNGPを熱的、化学的および機械的処理の組み合わせによって製造することができる。
【0147】
典型的には、それに限定されることなく、NGPの積み重ね厚さは、0.34nmほどに低いものである(単層NGP)および100nm以下またはそれ以上である(多層NGP)ことができる。NGP中の単層の数は、積み重ね厚さを単グラフェン層の厚さ(0.34nmである)で割ることによって積み重ね厚さから容易に導き出すことができる。したがって、たとえば2nmの積み重ね厚さのNGPは、6つの単グラフェン層を含む。
【0148】
NGPのアスペクト比は一般に、1〜60,000の、好ましくは1〜25,000の、最も好ましくは1.5〜5000の非常に広い範囲にわたることができる。特に好ましいプレートレットは、少なくとも2の、特に少なくとも3以上の2つの方向または次元でのアスペクト比を有する。このアスペクト比は、2つの次元でナノグラフェン・プレートレットに適用され、これに関連してナノグラフェン・プレートレットはカーボンブラックまたはカーボンナノチューブとは異なる。カーボンブラック粒子は回転楕円体状であり、それらの次元に関していかなる有意のアスペクト比をも欠く。カーボンナノチューブは、カーボンチューブの長さまたは主軸に沿った、一方向に高いアスペクト比を有する。これは、繊維状または針様粒子のような細長い構造に特有の特徴である。これに対してプレートレットは、3つの方向または次元の2つについて第3方向または次元と比べて高いアスペクト比を有する。この差は、実施例から明らかであるように本発明に従った生成物の特性に著しい影響を及ぼす。典型的には、グラフェン平面に平行なNGPの長さおよび幅は、0.5〜20マイクロメートルの範囲にある。
【0149】
NGPの比表面積は、広範囲にわたって変動することができるが、同一条件下で測定されるときに標準黒鉛の比表面積より一般に高い。これは、NGPの本質的にはるかにより細かいスケールおよび剥離の指標である。BET法(下に記載されるような)によって測定されるような、比表面積は好ましくは6m
2/g、より好ましくは9m
2/g、さらにより好ましくは12m
2/gを超え、30m
2/gを超える、好ましく60m
2/gを超える、さらに90m
2/gを超えるほどに高くてもよい。良好な結果はまた、40m
2/g未満の、ある場合には30m
2/g未満ほどに低い比表面積で、特に20m
2/g以下の表面積で得られた。ナノグラフェン・プレートレット(NGP)の幾つかについての測定された比表面積が、標準黒鉛のそれと一緒に表Aに示される。
【0150】
BET測定は、次の通り実施された:
材料前処理
すべての試料を先ず、あらゆるさらなる分析の前に330℃で6時間、非換気オーブン中で処理した。あり得る界面活性剤またはその他の有機表面処理剤の残存痕跡を排除することを本質的に狙った、この前処理工程の後に、すべての試料が、それら間の適切な比表面積比較を可能にするように、完全に乾燥しそして界面活性剤を含まないことを確実にするために真空乾燥を150℃で行った。
【0151】
用いられる装置
用いられるBET装置は、MICROMETRICS製のGEMINI 2360であった。補助設備(真空ポンプ、FLOWPREP試料コンディショナー、ヘリウムおよび窒素圧縮ガスボトル、液体窒素、試料ホルダーなど)を標準手順に従って使用した。
【0152】
実験手順
空チューブを先ずヘリウムで約15分間パージし、次にヘリウム雰囲気下で密封した。密封チューブを秤量した(0.0001g精度;P
1=空チューブ重量)。約200mgの試料材料を、漏斗を用いてチューブへ導入した(実際には、範囲30〜170mgの試料重量を使用した;重量測定0.1mg精度)。チューブを、密封する前に約15分間再びヘリウム雰囲気下に置いた。充填チューブを次に秤量した(0.0001g精度;P
2=空チューブ重量プラス試料重量)。チューブを275℃でFLOWPREPオーブンへ入れ;真空を徐々に適用し、約2時間保持し、その後チューブをゆっくり冷却し、ヘリウムで満たして密封した。密封チューブを再び秤量した(0.0001g精度;P
3=空チューブ重量プラス試料重量)。有効な試料重量はP(g)=P3−P1であった。この時点で、チューブを開封し、GEMINI 2360装置に連結した。デュワーを液体窒素で満たし、BET実験的比表面積(SSA)測定を、GEMINI software interfaceからの取扱説明書に従うことによって開始した。
【0154】
さらに、NGPは、グラフェン表面の酸素含有率で一般に特徴付けられる、異なる程度の極性で入手可能である。0.5重量%以上の酸素含有率を有するNGPは極性グレードと一般に言われるのに対して、0.5重量%未満、好ましくは0.2重量%以下の酸素含有率を有するNGPは非極性グレードと言われる。ナノグラフェン・プレートレットの酸素含有率は、広範囲にわたることができ、製造方法または処理条件に依存して、0.1重量%未満ほどに低いから40重量%ほどに高いまでに及ぶ可能性がある。幾つかの場合には2〜40重量%の範囲のより高い酸素含有率の製品が良好な結果を示したのに対して、その他の場合には1%より下、好ましくは0.5%以下の低い酸素含有率の製品が有利であった。すべてのこれらのタイプの製品は、たとえばAngstron Materials LLCから商業的に入手可能であり、その他の供給業者は、その範囲の一部を提供している。
【0155】
本明細書で前におよび下に議論されるすべての構造パラメータは、グラフェン材料自体に言及する、すなわちこれらの特性は、ポリマーマトリックスへのグラフェン材料の組み込み前に測定される。当業者によく知られているように、通常の方法による配合中に、アスペクト比または厚さのような特性は変化する可能性があり、その結果成形組成物におけるまたは成形品における前述のパラメータのそれぞれの値は上に記載されたものとは異なるかもしれない。
【0156】
本発明に従ったある種の組成物において有利であることが判明した一連のナノグラフェン・プレートレットは、名称N−008−100−Pもしくは−NまたはN−006−010−Nもしくは−PおよびN−002−001−Nもしくは−PでAngstron LLCから入手可能である。
【0157】
充填剤は、存在するとき、組成物の重量を基準として、0.1〜60重量%の、好ましくは0.3〜60重量%の、より好ましくは0.5〜50重量%の、なおより好ましくは1〜60重量%の、さらにより好ましくは2〜30重量%の量でポリマー組成物に一般に含有される。
【0158】
本発明に従った組成物は、当業者に公知のそして文献に記載されているその他の成分および添加剤をさらに含むことができる。したがって、これらの追加成分の詳細な記載はここでは必要ではない。当業者は、製品の最終用途に応じてそのような追加成分を選択するであろう。
【0159】
本発明に従ったポリマー組成物は、有利な特性プロフィールを示した。ほとんどの場合に延性、破断点伸びおよび耐衝撃性は、成分C)を含有しないそれぞれの組成物と比較して改善され、一方高い強度および剛性は維持された。
【0160】
いかなる理論にも制約されることなく、物質(S)の組み込みによって達成される有益な特性プロフィールは、異なるタイプのポリアミド間の、特に、一方で少なくとも1つの半芳香族ポリアミド(PA1)と、他方で(i)半芳香族ポリアミド(PA2)および(ii)脂肪族ポリアミド(PA3)からなる群から選択される少なくとも1つのその他のポリアミドとの間のある種の相溶化剤として働く前記物質(S)の意外な能力によって生じ得るであろう。それ故に、本発明の別の様相は、第1ポリアミドのおよび第2ポリアミドの繰り返し単位の少なくとも一部が互いに異なる第1ポリアミドと第2ポリアミドとの間の相溶性を増加させるための、本明細書に記載されるような少なくとも1つの物質(S)の有効量の使用に関し、本発明のさらに別の態様は、
A’)A’)およびB’)の総合重量を基準として、少なくとも10重量%の第1ポリアミド(PA1’)、たとえば上記のような半芳香族ポリアミド(PA1);
B’)第2ポリアミド(PA2’)、たとえば上記のような半芳香族ポリアミド(PA2)または脂肪族ポリアミド(PA3);ならびに
C’)A’)〜C’)の総合重量を基準として、少なくとも0.01重量%の、ポリ(アルキレンオキシド)−ポリアミドブロックコポリマー以外の少なくとも1つのアルキレンオキシド含有有機物質(S)であって、一般式
−O−A−
(式中、AはC
2〜C
10アルキレン基を意味する)
の少なくとも2つのアルキレンオキシド部分を含有する前記物質(S)
含むポリマー組成物であって、
第1ポリアミド(PA1’)のおよび第2ポリアミド(PA2’)の繰り返し単位の少なくとも一部が互いに異なる
ポリマー組成物に関する。
【0161】
全く意外にも、良好な結果は、第1ポリアミド(PA1’)のおよび第2ポリアミド(PA2’)の繰り返し単位の10モル%超、30モル%超、50モル%超、70モル%超、90モル%超、本質的にすべて、ならびにすべてが互いに異なるときを含むこれらのポリマー組成物で達成された。
【0162】
これらのポリマー組成物中の第1ポリアミド(PA1’)(成分A’)の含有率は、前記のポリマー組成物の少なくとも1つのポリアミド(PA1)(成分A)についてのあらゆる上に詳述された下限および/または上限含有率に従うことができ;同様に、これらのポリマー組成物中の第2ポリアミド(PA2’)(成分B’)の含有率は、前記のポリマー組成物の少なくとも1つのポリアミド(PA2)および/または(PA3)(成分B)についてのあらゆる上に詳述された下限および/または上限含有率に従うことができる。より一般的には、これらのポリマー組成物は、あらゆる好ましさを満たすことができるかまたは前記のポリマー組成物について上に詳述されたようなあらゆる特定の実施形態に従うことができ;これは、その他の特徴の中でも特に、物質(S)の性質および含有率に適用される。
【0163】
これらのポリマー組成物の非限定的な例は、
− 第1ポリアミド(PA1’)が上記のようなポリフタルアミド(特にポリテレフタルアミド、ポリ(テレ/イソ)フタルアミドまたは上記のようなポリイソフタルアミド)であり、第2ポリアミド(PA2’)が上記のような脂肪族ポリアミドであるポリマー組成物;
− 第1ポリアミド(PA1’)が上記のようなポリテレフタルアミドであり、第2ポリアミド(PA2’)が上記のようなポリイソフタルアミドであるポリマー組成物;
− 第1ポリアミド(PA1’)が上記のようなポリテレフタルアミドであり、第2ポリアミド(PA2’)が上記のようなポリ(テレ/イソ)フタルアミドであるポリマー組成物;
− 第1ポリアミド(PA1’)が、その繰り返し単位の50モル%超が多くとも6個の炭素原子を含む脂肪族二酸もしくはその誘導体と少なくとも1つの芳香族ジアミンとの重縮合反応によって得ることができる半芳香族ポリアミド(PMXD6など)であり、第2ポリアミド(PA2’)が、その繰り返し単位の50モル%超が少なくとも8個の炭素原子を含む脂肪族二酸もしくはその誘導体と少なくとも1つの芳香族ジアミンとの重縮合反応によって得ることができる半芳香族ポリアミド(PMXD10など)であるポリマー組成物
である。
【実施例】
【0164】
以下の実施例における試料は、リサイクルモードで運転される実験室規模15cm
3二軸スクリュー押出機を用いて溶融押出によって製造した。材料を、1ラン当たり約18グラムの回分で粉末またはペレット形態で押出機に供給した。その後、引張試験片を、連動12cm
3射出成形装置を用いて射出成形した。
【0165】
押出および射出成形条件は次の通りであった:
・ 押出
設定点バレル温度:260℃
報告される溶融温度:約245℃
スクリュー回転速度:250分
−1
滞留時間:5分(ガラス繊維を含有するそれぞれの実施例においてマスターバッチ調製のために3分)
パージガス:窒素
・ 射出成形
移送ノズル温度:260℃
金型温度:120℃
射出圧力:2秒間500kPa
保持圧力:5秒間700kPa
【0166】
引張機械的特性は、ZWICK装置を用いて23℃で評価した。すべての試料(ISO 527−2−IBA形状の射出成形試料)を成形したままの乾燥で測定した。引張試験は、約1%/分の変形に相当する、0.5mm/分の速度で行った。あらゆる組成物について少なくとも3つの実験の平均をデータ解析のために取った。平均5つのISO 527−2−IBA形状の引張試験片を1ラン当たりに得た。
【0167】
実施例1〜7(表1)
アジピン酸とメタ−キシリレンジアミンとの重縮合によって得られる、そして(25℃の温度でフェノール/テトラクロロエタン60/40(重量/重量)混合物中で測定される)0,8681dl/gの固有粘度を有する半芳香族ポリアミド(本明細書で以下PMXD6と言われる)とPMXD6およびポリアミド−66の総合重量を基準として、10重量%の標準粘度ポリアミド−66と(PMXD6およびポリアミド−66の総合重量を基準として)約1重量%のタルクとを含む組成物を、様々な量(ポリアミドマトリックスおよび添加剤の総重量を基準とする重量%)の表1に示されるような添加剤(成分C))と混合した。
【0168】
【表2】
【0169】
実施例2に使用されたZonyl(登録商標)は、Zonyl(登録商標)FSO 100、化学式F(CF
2−CF
2)
x−CH
2−CH
2−O−(CH
2−CH
2−O)
yHの、そして725の平均分子量を有するDuPontから入手可能なフルオロ界面活性剤であり;
実施例3に使用されたPEO1は、Sigma−Aldrich Co.から入手可能な約500g/モルの数平均分子量を有するメトキシ末端ポリエチレンオキシドであった。
【0170】
実施例4に使用されたPEO2は、Sigma−Aldrich Co.から入手可能な、約2000g/モルの数平均分子量の中間分子量メトキシ末端ポリ(エチレングリコール)であり;
実施例5に使用されたPEO3は、Sigma−Aldrich Co.から入手可能な、約930g/モルの数平均分子量のポリ(エチレングリコール)ジステアレートであり;
実施例7に使用されたTFEOは、Sigma−Aldrich Co.から入手可能な約2000g/モルの数平均分子量の構造
CH
3OOCCF
2O(CF
2CF
2O(CF
2CF
2O)
x(CF
2O)
yCF
2COOCH
3
を有するポリ(テトラフルオロエチレンオキシド−コ−ジフルオロメチレンオキシド)−α,ω−ビス(メチルカルボキシレート)であり;
実施例6に使用されたTriton X−100は、DOW Chemical Companyから入手可能な、9.5の平均エチレングリコール鎖長、および約625g/モルの平均数分子量を有するオクチルフェノールエトキシレートであった。
【0171】
これらの結果は、アルキレンオキシド単位を持った0.5重量%の化合物の添加が、組成物のその他の特性に悪影響を及ぼすことなく破断点歪みの著しい改善をもたらしたことを示す。
【0172】
実施例8〜14
アジピン酸とメタ−キシリレンジアミンとの重縮合によって得られる、そして(25℃の温度でフェノール/テトラクロロエタン60/40(重量/重量)混合物中で測定される)0,8681dl/gの固有粘度を有する半芳香族ポリアミド(本明細書で以下PMXD6と言われる)とPMXD6およびポリアミド−66の総合重量を基準として、10重量%の標準粘度ポリアミド−66と(PMXD6およびポリアミド−66の総合重量を基準として)約1重量%のタルクとを含む組成物を、様々な量(化合物A)〜C)の総重量を基準とする重量%の表2に示されるような化合物Sとまたは比較目的のための示されるその他の添加剤と混合した。実施例12〜14においてポリアミドマトリックスは、30重量%のガラス繊維(Owens Corningから入手可能な、Vetrotex(登録商標)OCV 983刻みガラス繊維)を含有した。これらの実施例においては添加剤Zonyl(登録商標)を先ず、高剪断条件下に実施例8〜11に使用されるポリアミド混合物のマトリックス中に分散させ、その後30重量%の最終ガラス繊維ローディングをターゲットとするために50重量%ガラス繊維を含有するそれぞれのポリアミド混合物と混合した。
【0173】
機械的特性は、実施例1〜8に示されたように測定した。表2は、それぞれの結果を示す。
【0174】
【表3】
【0175】
Monarch(登録商標)がCabot Corporationから商品名Monarch(登録商標)800で入手可能なナノ微粒子カーボンブラックを意味するのに対して、N−008−100−Pは、約100nmの平均積み重ね厚さおよび約0.5重量%の酸素含有率を有するAngstron LLCから入手可能なグラフェン材料を意味し、
PEO1およびZonyl(登録商標)は、実施例1〜7において使用された通りであった。
【0176】
実施例8〜14の結果は、アルキレンオキシド単位を含有する少量の物質の添加が、ポリマー組成物の破断点歪みを著しく改善することを示す。それは予期されなかった結果である。
【0177】
さらに、成分C)の添加は、10%以下程度(データは詳細に示されていない)のノッチ付きアイゾット衝撃強度のわずかな増加をもたらした。
【0178】
実施例15〜21
アジピン酸とメタ−キシリレンジアミンとの重縮合によって得られる、そして(25℃の温度でフェノール/テトラクロロエタン60/40(重量/重量)混合物中で測定される)0,8681dl/gの固有粘度を有する半芳香族ポリアミド(本明細書で以下PMXD6と言われる)とPMXD6およびポリアミド−66の総合重量を基準として、10重量%の標準粘度ポリアミド−66と(PMXD6およびポリアミド−66の総合重量を基準として)約1重量%のタルクとを含む組成物を、物質(S)の含有率の影響を解析するために様々な量(化合物A)〜C)の総重量を基準とする重量%の約200,000の数平均分子量を有するポリ(エチレンオキシド)(本明細書で以下PEO4と言われる)と混合した。試験検体を実施例1〜7におけるように調製した。結果を表3に示す。
【0179】
【表4】
【0180】
実施例15〜21の結果は、弾性率のわずかの低下およびまた破断点応力の低下を示し、後者がPEOローディングとほとんど無関係であるのに対して、弾性率の低下は、より高いPEOロードでより多く発現した。0.5から3重量%へのPEOローディングの増加は、破断点歪みに大きな有益な影響を及ぼし、最大は、3重量%のPEOローディングで達成された。PEOロードのさらなる増加は、PEOの10%ローディングの値でさえもPEOなしの組成物についてよりも依然としてはるかに良好であるにもかかわらず有害である。全体として、約3重量%のPEOローディングが特性の最良のスペクトル、すなわち弾性率がわずかに低下するだけで最高の破断点歪みを提供するように見える。
【0181】
実施例22〜27
アジピン酸とメタ−キシリレンジアミンとの重縮合によって得られ、そして(25℃の温度でフェノール/テトラクロロエタン60/40(重量/重量)混合物中で測定される)0,8681dl/gの固有粘度を有する半芳香族ポリアミド(本明細書で以下PMXD6と言われる)と、PMXD6および脂肪族ポリアミドの総合重量を基準として10重量%の、標準粘度ポリアミド−66、ポリアミド−11(ポリ(11−アミノ−ウンデカノアミド)またはポリアミド−12(ポリ(オメガ−ラウリルラクタム)(後者2つはArkemaからRilsan(登録商標)として入手可能)と、(PMXD6およびポリアミド−66の総合重量を基準として)約1重量%のタルクとを含む組成物を、化合物A)〜C)の総重量を基準として、3重量%の、約200,000の数平均分子量を有するポリ(エチレンオキシド)(本明細書で以下PEO4と言われる)と混合した。試験検体を実施例1〜7におけるように調製した。結果を表4に示す。
【0182】
【表5】
【0183】
実施例22〜27の結果は、仮にそうなった場合は弾性率をほんのわずか低下させるPEOの破断点歪みへの有益な影響が、組成物に使用された脂肪族ポリアミドとは無関係であることを示す。
【0184】
比較例28〜29
アジピン酸とメタ−キシリレンジアミンとの重縮合によって得られ、そして(25℃の温度でフェノール/テトラクロロエタン60/40(重量/重量)混合物中で測定される)0,8681dl/gの固有粘度を有する半芳香族ポリアミド(本明細書で以下PMXD6と言われる)と約1重量%のタルクとを、化合物A)およびC)の総重量を基準として、約3重量%の、約200,000の数平均分子量を有するポリ(エチレンオキシド)(本明細書で以下PEO4と言われる)と混合した。試験検体を実施例1〜7におけるように調製した。結果を表5に示す。
【0185】
【表6】
【0186】
比較例28および29は、破断点歪みへのPEOの有益な影響は、半芳香族ポリアミド単独では、すなわち脂肪族ポリアミドの添加なしでは達成されないことを示す。
【0187】
実施例30〜33
アジピン酸とメタ−キシリレンジアミンとの重縮合によって得られ、そして(25℃の温度でフェノール/テトラクロロエタン60/40(重量/重量)混合物中で測定される)0,8681dl/gの固有粘度を有する半芳香族ポリアミド(本明細書で以下PMXD6と言われる)とPMXD6およびポリアミド−66の総合重量を基準として、10重量%の標準粘度ポリアミド−66と(PMXD6およびポリアミド−66の総合重量を基準として)約1重量%のタルクとを含有する組成物を、様々な量(化合物A)〜C)の総重量を基準とする重量%の約200,000の数平均分子量を有するポリ(エチレンオキシド)(PEO4)と混合した。ポリアミドマトリックスは30重量%のガラス繊維(Owens Corningから入手可能な、Vetrotex(登録商標)OCV 983刻みガラス繊維)を含有した。これらの実施例においてはPEOを先ず、高剪断条件下にポリアミド混合物のマトリックス中に分散させ、その後30重量%の最終ガラス繊維ローディングをターゲットとするために50重量%ガラス繊維を含有するそれぞれのポリアミド混合物と混合した。試験検体を実施例1〜7におけるように調製した。結果を表6に示す。
【0188】
【表7】
【0189】
括弧内の百分率は、組成物(ガラス繊維を含む)の総重量を基準とするPEOローディングを示す。
【0190】
実施例30〜33の結果は、破断点応力および弾性率を実質的に維持しながら30〜50%の破断点歪みの改善を示す。総重量(ガラス繊維を含む)を基準として、3.5%または5重量%(ガラス繊維なしのポリアミド組成物の重量を基準として)を著しく超えるPEOローディングは、破断点歪みのさらなる改善をもたらさず、一方弾性率および破断点応力は低下する。したがって、組成物の総重量を基準として、3.5%以下の成分C)のローディングがガラス繊維強化組成物についての特性の最良のスペクトルを提供すると思われる。
【0191】
実施例34〜39
アジピン酸とメタ−キシリレンジアミンとの重縮合によって得られ、そして(25℃の温度でフェノール/テトラクロロエタン60/40(重量/重量)混合物中で測定される)0,8681dl/gの固有粘度を有する半芳香族ポリアミド(本明細書で以下PMXD6と言われる)とPMXD6およびポリアミド−66の総合重量を基準として、10重量%の標準粘度ポリアミド−66と(PMXD6およびポリアミド−66の総合重量を基準として)約1重量%のタルクとを含有する組成物を、表7に従って組成物の重量を基準として、3重量%の様々なカーボンベースの充填剤および約200,000の平均数分子量を有するポリ(エチレングリコール)(PEO4)と混合した。試験検体を実施例1〜7におけるように調製し、引張特性を、速度5mm/分にした以外は前に記載されたように測定した。結果を表7に示す。
【0192】
【表8】
【0193】
HC−Carbonは、超剪断技術によって製造され、商品名Mechano−Lube2(登録商標)でHC Carbon GmbHから入手可能な炭素黒鉛を表し、
N−006−10−01は、Angstron LLCから入手可能な、約10nmの平均積み重ね厚さおよび約0.1%の酸素含有率を有するナノグラフェン・プレートレットを表し
XG5は、XG Sciencesから入手可能な、約10nmの積み重ね厚さおよび約5マイクロメートルの横方向サイズのグラフェン・ナノプレートレットを表す。
【0194】
実施例36〜39の生成物は、その他の実施例で用いられた押出機とは異なる正規の26mm二軸スクリュー押出機(Coperion Werner & Pfleiderer製のZSK−26))で製造されたことがここで指摘されなければならない。しかし、実施例36〜39のそれぞれにおける処理条件は同一であったので、結果は組成物中のPEO添加物の影響を示すのに好適であるが、その他の実施例と直接比較されるべきではない。
【0195】
実施例34〜39の結果は、少量のポリ(エチレンオキシド)が破断点応力および弾性率をほんのわずかに低下させながら破断点歪みを著しく改善することを示す。従来の黒鉛充填剤は、ナノグラフェン・プレートレットに匹敵する挙動を示すように見える。
【0196】
実施例40〜44
これらの実施例は、成分C)としてのポリアルキレンオキシドの分子量への本発明に従った生成物のある種の特性の依存性を示す。
【0197】
アジピン酸とメタ−キシリレンジアミンとの重縮合によって得られ、そして(25℃の温度でフェノール/テトラクロロエタン60/40(重量/重量)混合物中で測定される)0,8681dl/gの固有粘度を有する半芳香族ポリアミド(本明細書で以下PMXD6と言われる)とPMXD6およびポリアミド−66の総合重量を基準として、10重量%の標準粘度ポリアミド−66と(PMXD6およびポリアミド−66の総合重量を基準として)約1重量%のタルクとを含有する組成物を、組成物の重量を基準として、0.5重量%の、表8に従った異なる平均数分子量を有するポリ(エチレンオキシド)と混合した。試験検体を実施例1〜7におけるように調製し、引張特性を記載されたように測定した。結果を表8に示す。
【0198】
【表9】
【0199】
これらの結果は、使用されたポリエチレンオキシドの数平均分子量を増加させるとともに破断点歪みの改善を示し、最上の結果は、約1,000,000のMWで得られる。
【0200】
前述の実施例1〜44のデータは、半芳香族ポリアミド、第2ポリアミドおよび、任意選択的に、充填剤を含む組成物における本発明に従った物質Sの利益を例示する。弾性率のかなりの保持に破断点歪みの著しい改善が同伴し、同時に機械的強化および延性の両方を付与する。公知のむしろ脆い半芳香族ポリアミドの新規用途機会は、本発明に従った組成物で予見することができる。