【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する多焦点レンズにより解決される。
【0018】
本発明による多焦点レンズは、少なくともn>2個の主経線パワーを有する。したがって、多焦点レンズは少なくとも三重焦点レンズである。特に、主経線パワーの少なくとも1つは屈折パワーであり、少なくともさらに別の主経線パワーは回折パワーである。多焦点レンズは、少なくとも1つの第1環状ゾーンを含む第1レンズ部を有する。多焦点レンズは、少なくとも1つの第2環状ゾーンを有する少なくとも第2レンズ部をさらに含む。レンズ部の各ゾーンは、少なくとも主サブゾーン及び少なくとも位相サブゾーンを有する。主サブゾーン及び位相サブゾーンの両方も、環状に形成される。n個の主経線パワーを形成するために、本発明による多焦点レンズでは、最大n−1個のレンズ部を組み合わせる。あるレンズ部のゾーンの平均屈折パワーは、別のレンズ部のゾーンの平均屈折パワーと等しい。すなわち、多焦点レンズを形成するレンズ部の全てが同じ平均屈折パワーを有する。したがって、レンズが例えば2つのレンズ部で構成される場合、これら2つのレンズ部は同じ平均屈折パワーを有する。したがって、レンズが例えば3つのレンズ部で構成される場合、3つのレンズ部は同じ平均屈折パワーを有する。多焦点レンズのこのような特定の構成により、近距離、中間距離、及び特に遠距離でのレンズによる結像を、したがって視力も、向上させることができる。
【0019】
レンズ部は、少なくとも1つの光学パラメータがそれぞれ異なる。例えば、遠用パワー又は近用パワー又は加入パワー等のパワーが、光学パラメータとして言及される。さらに、光学パラメータは、例えば、遠用強度又は光学表面のサイズでもあり得る。
【0020】
これに関連して、レンズ部とは、特にレンズの円状又は円環状(環状)領域であると理解されたい。レンズ部は、レンズのいくつかの隣接していない円状又は円環状領域からも構成され得る。
【0021】
主経線パワーとは、特に相対強度が0.05(5%)よりも大きい、特に0.07(7%)以上のパワーであると理解される。
【0022】
特に有利には、多焦点レンズがn個の主経線パワーのうち最小パワーで回折軸上色収差を一切有しない構成が達成される。これにより、大幅に改善した結像特性、したがって特に遠距離でかなり良好な視力が確保される。
【0023】
光学材料の分散による屈折色収差は、回折色収差に対して小さく、+1次の回折次数で逆になるものであり、本発明では問題ではない。
【0024】
特にこれは、色表現及び像の認識に関して特に有利である。
【0025】
好ましくは、あるゾーンの平均屈折パワーは、多焦点レンズの主経線パワーのうち最小パワーと等しくなっている。レンズのこの仕様により、主経線パワーのうち最小パワーでの回折軸上色収差の抑制が達成される。好ましくは、レンズ部が少なくとも2つのゾーンを有する場合、これはゾーン全てについて同じく達成される。特に、レンズ部の各ゾーンは、同じ平均屈折パワーを有する。
【0026】
特に、n個の主経線パワーのうち最小パワーで回折軸上色収差がない。
【0027】
好ましくは、多焦点レンズは、主経線パワーの数n>2に関係なく主経線パワーのうち最小パワーで軸上色収差がないようなゾーンの相互に対する形状及び/又は相対位置で形成される。したがって、レンズは、三重焦点レンズだけでなく四重焦点レンズ等でも主経線パワーのうち最小パワーで常に回折軸上色収差がないよう、そのレンズ部及びそれぞれに関連するゾーンが形成される。
【0028】
好ましくは、多焦点レンズのn個の主経線パワーのうち最小パワーは、第1ゾーンの全表面に対するこの第1ゾーンの主サブゾーンの面積割合で重み付けした主サブゾーンの屈折パワーに依存し、さらに、この第1ゾーンの全表面に対する当該ゾーンの位相サブゾーンの面積割合で重み付けした位相サブゾーンの屈折パワーにも依存する。これは特に、多焦点レンズのゾーンそれぞれに当てはまり、特にレンズの主経線パワーのうち最小パワーD
1については以下の関係が当てはまる。
【0029】
D
1=D
G1(1−p
1)+D
S1p
1=D
G2(1−p
2)+D
S2p
2
【0030】
式中、D
G1は、第1ゾーン(及び第3ゾーン、第5ゾーン…)の主サブゾーンの屈折パワーであり、D
S1は、第1(及び第3、第5…)ゾーンの位相サブゾーンの屈折パワーである。p
1は、第1(及び第3、第5…)ゾーン全体に対する位相サブゾーンの面積割合である。
【0031】
D
G2は、第2ゾーン(及び第4ゾーン、第6ゾーン…)の主サブゾーンの屈折パワーであり、D
S2は、第2(及び第4、第6…)ゾーンの位相サブゾーンの屈折パワーである。p
2は、第2(及び第4、第6…)ゾーン全体に対する位相サブゾーンの面積割合である。
【0032】
上記の記載は、2つのレンズ部を有するレンズに関して示したものであり、奇数ゾーンは第1レンズ部に関連し、偶数ゾーンは第2レンズ部に関連する。上述の方程式は、3つ以上のレンズ部を有する多焦点レンズにも当てはまり、そのためさらに別のレンズ部jについては以下が当てはまる。
【0033】
D
1=D
Gj(1−p
j)+D
Sjp
j
【0034】
好ましくは、第1レンズ部は少なくとも2つのゾーンを有し、レンズの半径方向に見てこれらのゾーン間に、第2レンズの少なくとも1つのゾーンが配置されるようになっている。したがって、この実施態様の構成は、交互のリング配置で、第1レンズ部の第1ゾーンが形成されてから第2レンズ部のゾーンが形成され、半径方向に見て、続いて第1レンズ部のさらに別の第1ゾーンが形成されるようなものである。
【0035】
したがって、3つ以上のレンズ部が形成される場合、この交互配置は、半径方向に見て1つのレンズ部の各ゾーンが連続して配置され、続いて、各レンズ部から環状ゾーンが形成されれば第1レンズ部の第1ゾーンが再度形成され、以下同様であるというように適用される。
【0036】
3つ以上のレンズ部の場合、各レンズ部が1つのゾーンのみを有し、これにより多焦点レンズが形成されるようにすることもできる。少なくとも1つのレンズ部が2つ以上のゾーンを有するようにすることもできる。
【0037】
好ましくは、第1レンズ部の第1ゾーンは第2レンズ部のゾーンに隣接して形成され、これら2つのゾーンの光学表面は等しいサイズであるようになっている。これは、2つの異なるレンズ部の対においてそれぞれ隣接するゾーン全部について特に言える。
【0038】
ゾーンの光学表面に関して、レンズの前面及び後面の両方をこの点で考慮する。これに関する多焦点レンズの構成の仕方に応じて、前面及び後面の両方が対応の表面プロファイルを有し得る。したがって、前面が対応の構成であれば、後面を非球面に形成することができる。後面が対応の表面プロファイルを有する場合には、この逆が言える。
【0039】
構造化した表面プロファイル(環状ゾーンを有するプロファイル)を有する表面に対する各合わせ面が、トーリック又は非球面トーリックに形成されるようにすることもできる。これにより、角膜乱視の矯正用のモノトーリック(mono-toric)眼内レンズを形成することができる。
【0040】
好ましくは、2つのレンズ部の隣接ゾーンから形成される全体ゾーンは、平均屈折パワーD
G12を有する全体主サブゾーン又は主サブゾーンと、パワーD
S2を有する位相サブゾーンとを有するようになっている。パワーD
S2はすでに上記で示したものであり、パワーD
G12は、次式により与えられる。
【0041】
【数1】
【0042】
特に、これらの関係は、2つのレンズ部を有する三重焦点レンズに当てはまる。
【0043】
好ましくは、2つのレンズ部の2つの隣接ゾーンから形成される全体ゾーンは、レンズ部の位相サブゾーンのパワーに対応する全体位相サブゾーン又は位相サブゾーンの屈折パワーを有する。特に、これは、半径方向のさらに外側のレンズ部、したがって半径方向のさらに外側の位相サブゾーンが、パワーD
S2を有するということである。
【0044】
好ましくは、多焦点レンズの実施形態において、第1レンズ部の少なくとも1つのゾーンの相対遠用強度は、第2レンズ部の少なくとも1つのゾーンの相対遠用強度と10%よりも大きく異なり、特に少なくとも30%、好ましくは少なくとも100%異なる。遠用強度のこのような特定の差により、多焦点レンズの結像特性を、特にレンズの主経線パワーのうち最小パワーでの軸上色収差の抑制に関して特に確実に改善することができる。
【0045】
好ましくは、3つ以上のレンズ部を有する多焦点レンズの実施態様において、対でそれぞれ異なる相対遠用強度が、異なるレンズ部のゾーン間に形成されるようになっている。したがって、特に、レンズ部の各最小パワーの相対強度は、10%よりも大きいようなパーセンテージ差を有するようになっている。したがって、4つ以上の主経線パワーを有する特定の多焦点レンズでさえ、遠用強度のこのような仕様が同じく存在する。
【0046】
特に有利には、レンズは、2つの二重焦点レンズ部で構成した三重焦点レンズである。このような指定のレンズは、特に有利に視力を改善することができ、特に主経線パワーのうち最小パワーで軸上色収差を一切有しない。
【0047】
好ましくは、レンズ部は、多焦点レンズの遠用パワーが第1レンズ部のゾーンのみ又は第2レンズ部のゾーンのみから形成したレンズの遠用パワーと実質的に等しいような相互に対する形状及び/又は局所配置で形成される。
【0048】
特に、レンズ部は、多焦点レンズの近用パワーが第1レンズ部のゾーンのみ又は第2レンズ部のゾーンのみから形成したレンズの近用パワーと実質的に等しいような相互に対する形状及び/又は局所配置で形成される。
【0049】
好ましくは、ゾーンの光学表面の総面積割合に対する少なくとも1つの位相サブゾーンの面積割合パーセンテージは、25%未満、好ましくは8%〜17%である。
【0050】
特に、二重焦点レンズ部の加入パワーは、第2レンズ部の加入パワーと等しくすることができる。しかしながら、種々のレンズ部の加入パワーが異なっていてもよい。
【0051】
有利な実施態様では、レンズ部の小さい方のパワーとレンズ部の加入パワーとがそれぞれ同じであり、特にレンズ部のパワーの遠用強度及び/又は近用強度が異なるようにすることができる。
【0052】
さらに別の実施態様では、レンズ部の大きい方のパワーとレンズ部の加入パワーとがそれぞれ異なり、特にレンズ部のパワーの遠用強度及び/又は近用強度が異なるようにすることもできる。特に、レンズ部の小さい方のパワーはこの場合は同じである。
【0053】
2つの二重焦点レンズ部から形成した三重焦点レンズとしての多焦点レンズの構成では、第1二重焦点レンズ部の小さい方のパワーが第2二重焦点レンズ部の小さい方のパワーと異なるようにすることができる。
【0054】
特に、第1二重焦点レンズ部の大きい方のパワーが第2二重焦点レンズ部の大きい方のパワーと異なるようにすることもできる。
【0055】
好ましくは、レンズ部は、同数の主サブゾーン及び同数の位相サブゾーンを有する少なくとも2つのゾーンを有するようになっている。特に、各ゾーンは、主サブゾーン及び位相サブゾーンをそれぞれ1つだけ有し、位相サブゾーンは、主サブゾーンよりも半径方向外側に配置されて半径方向外側ゾーン縁部で終端することが好ましい。特に、両レンズ部は、主サブゾーン及び位相サブゾーンの数に関して及び/又はゾーン内の位相サブゾーンの局所配置に関して同一に形成した複数のゾーンをそれぞれ有するようにもなっている。
【0056】
あるレンズ部のゾーン及び/又は別のレンズ部のゾーンが、主サブゾーンの数に関して及び/又は位相サブゾーンの数に関して異なって形成されるようにすることもできる。同様に、1つのゾーン内の位相サブゾーンの局所位置を異ならせることもできる。
【0057】
好ましい実施形態では、レンズ部のゾーンは、別のレンズ部のゾーンに隣接して形成され、ゾーンの光学表面は等しいサイズである。特に、レンズ部のゾーン全ての光学表面が等しいサイズである。これに対応することが、別のレンズ部のゾーン全ての光学表面にも特に当てはまる。
【0058】
好ましくは、第1レンズ部の少なくとも1つのゾーンの相対遠用強度は、第2レンズ部の少なくとも1つのゾーンの相対遠用強度と10%よりも大きく異なり、特に少なくとも30%、特に少なくとも100%異なる。
【0059】
好ましくは、レンズ部は同一の加入パワーを有する。
【0060】
好ましくは、n>2個の主経線パワーを有するレンズは、n−1個の二重焦点レンズ部で構成される。したがって、これは2つの二重焦点レンズで構成した三重焦点レンズであり得る。3つの二重焦点レンズ部から形成した四重焦点レンズも提供することができる。特にこのレンズでは、レンズ部のゾーンの同一の加入パワー及び/又は10%よりも大きく異なる遠用強度及び/又は等しいサイズの光学表面を有する実施態様が有利である。
【0061】
好ましくは、n−1個の二重焦点レンズ部で構成したn>2個の主経線パワーを有するレンズにおいて、各焦点の焦点深度範囲を重ねて形成することで連続した焦点範囲が形成され、したがって連続したパワー範囲も形成されるような構成が提供される。これには、パワー間の、したがって逆の焦点間の特定のパワー範囲での像の不良が生じないという利点がある。
【0062】
これとは異なる実施態様では、n>2個の主経線パワー、特に4つの主経線パワーを有するレンズが、n−1個未満の、特に2つの二重焦点レンズ部で構成されるようになっている。
【0063】
好ましくは、ここで、第1レンズ部のゾーンの光学表面のサイズは、第2レンズ部のゾーンの光学表面のサイズとは異なるようになっている。
【0064】
特に、第2レンズ部の光学表面は、第1レンズ部の光学表面よりも少なくとも50%、特に少なくとも90%大きい。これにより、四重焦点レンズを2つの二重焦点レンズ部から形成することもできる。
【0065】
これらの実施態様では、特に、2つのレンズ部の加入パワーが異なるようになっている。
【0066】
これらの実施態様では、特に、2つのレンズ部が同一の相対遠用強度、好ましくは50%を有するようになっている。
【0067】
特に、レンズの光学表面には地形的及び光学的段差がない。これは、表面輪郭が連続的であることを意味する。特にこれは、本発明によるレンズの裏の波面が連続的である、すなわち、レンズ裏の波面の部分間に光路長差又は光学的段差が生じないことも意味する。
【0068】
レンズの好ましい実施態様では、ゾーンで構造化したレンズの表面が、その結像特性に関して乱視効果を有するよう形成される。特に、ゾーンのパワーは、経線角に応じて、したがって経線の位置、特に主軸に応じて異なるように形成される。トーリックレンズでは、2つの経線が主軸、楕円の軸である。2つの経線における2つのパワーの差を円柱度数という。ゾーンで構造化したレンズの表面は、トーリック又はトーリック非球面の基体に特に適用される。これから、両面(構造化又は非構造化)をトーリック又は非球面トーリックに形成することができるバイトーリック構成の変形形態が得られる。バイトーリックの利点は、レンズの2つの表面である前面及び後面に対するトーリック光学効果が分割され得ることである。これにより、同じ円柱効果を有するモノトーリック眼内レンズと比べて、両面の主経線それぞれでの半径差が小さくなる。バイトーリック眼内レンズの結像品質は、モノトーリック眼内レンズと比べて高い。これにより、バイトーリック眼内レンズを角膜乱視の矯正用に構成することができる。
【0069】
好ましくは、少なくとも1つの経線、特に各経線で、第1レンズ部のゾーンの平均屈折パワーは第2レンズ部のゾーンの平均屈折パワーとそれぞれ等しい。これは特に、異なる経線でも可能である。
【0070】
有利な実施態様では、n>2個の主経線パワーを有するレンズ全体が、少なくとも1つのゾーンをそれぞれが有する最大n−1個のレンズ部から成り、したがってさらなるレンズ部が存在しないようになっている。したがって、これに関して、三重焦点レンズが2つの二重焦点レンズ部から成るようにすることができる。同様に、四重焦点レンズが3つのレンズ部、特に3つの二重焦点レンズ部から成り、それ以外にさらなるレンズ部が設けられないようにすることができる。同様に、四重焦点レンズが2つの異なるレンズ部のみ、特に2つの異なる二重焦点レンズ部のみから成り、それ以外にさらなるレンズ部が存在しないようにすることができる。上述した特定の実施態様及び代替形態も全て、n−1個のレンズ部、特にn−1個の二重焦点レンズ部から成るこのようなレンズ全体に当てはまる。
【0071】
しかしながら、さらに他の実施態様では、n>2個の主経線パワーを有するレンズ全体が、少なくとも1つの主サブゾーン及び少なくとも1つの位相サブゾーンからさらにそれぞれ形成される少なくとも1つのゾーンをそれぞれが有する最大n−1個のレンズ部から設計され、さらに少なくとも1つのさらに別のレンズ部を有するようにすることもできる。
【0072】
これに関して、特に四重焦点レンズとして設計したレンズを形成することができる。第1実施態様によれば、この四重焦点レンズは、光学パラメータの少なくとも1つの値が異なる2つのレンズ部のみから成るようにすることができる。2つのレンズ部はそれぞれ、少なくとも1つのゾーンを有し、ゾーンはさらに、少なくとも1つの主サブゾーン及び1つの位相サブゾーンをそれぞれが有する。第1レンズ部のゾーンの平均屈折パワーは、第2レンズ部のゾーンの平均屈折パワーと等しい。好ましくは、第1レンズ部の加入パワーは3.75ジオプターであり、第2レンズ部の加入パワーは3.1ジオプターである。好ましくは、このレンズの直径は4.245mmである。特に、第1レンズ部のゾーンの相対遠用強度が90%であり、好ましくは、第2レンズ部のゾーンの相対遠用強度が40%であるようになっている。好ましくは、ゾーンにおける主サブゾーンの面積割合は90%である。好ましくは、主サブゾーンのこの面積割合パーセンテージは、ゾーン全てで同じである。
【0073】
第1レンズ部のゾーン、したがって偶数番号のゾーンの光学的面積は、第2レンズ部のゾーン、したがって奇数番号のゾーンの光学的面積とサイズが異なる。
【0074】
さらに別の好ましい実施形態では、全ての奇数環状ゾーンは同じ表面積を有する。さらに、全ての偶数環状ゾーンは同じ表面積を有し、これは奇数環状ゾーンの表面積とは異なる。したがって、ゾーンの半径方向厚さは、レンズの半径に伴い異なり減少する。
【0075】
さらに別の実施態様では、この四重焦点レンズが光学パラメータの値が異なる2つのレンズ部から成るのではなく、これら2つのレンズ部に加えて第3レンズ部が存在するようにすることができる。四重焦点レンズは、この場合、特に3つの二重焦点レンズ部である3つのレンズ部から成るよう構成される。特にこの場合、最初の2つのレンズ部のゾーンが半径方向に見て交互に配置され、これが特に最大4.245mmの直径まで行われるようになっている。続いて、半径方向外側に隣接して第3レンズ部が環状に形成される。同じく二重焦点であるこの第3レンズ部は、この場合は総直径約6mm、特に5.888mmまで延びることが好ましい。この第3二重焦点レンズ部は、少なくとも1つの、特に複数のゾーンから成るようにも形成され、各ゾーンはさらに主サブゾーン及び位相サブゾーンを有する。好ましくは、第3レンズ部の加入パワーは3.33ジオプターである。これは、最初の2つのレンズ部の2つのジオプター値3.75及び3.1の平均に相当する。
【0076】
好ましくは、第3レンズ部のゾーンの相対遠用強度は65%である。
【0077】
上記特定の値を有する追加の半径方向外側の第3レンズ部を備えた四重焦点レンズのこのような実施形態は、眼内レンズを挿入される眼の瞳孔が大きい場合に特に有利であろう。大きな瞳孔では、遠用強度及び近用強度が重要であり目立つが中間強度はそれほどでもないので、第3レンズ部を有するこのような構成が有利である。
【0078】
四重焦点レンズと称することができるレンズのさらに別の実施態様では、このレンズが2つのレンズ部から成る上述の実施態様とは対照的に、相対遠用強度が90%及び40%ではなく、好ましくは85%及び39.5%となっている。好ましくは、このようなレンズは、遠距離、中間距離、及び近距離の相対強度に関して50:20:30の比に対応する。
【0079】
ここでも、追加の第3レンズ部として前述した実施態様で説明したようなものが設けられるさらに別の実施態様をさらに提供することができ、ここでも特に、3.33ジオプターの加入パワー及び65%の相対遠用強度が同じく提供される。
【0080】
ここでも、第3レンズ部のゾーンの加入パワーを3.33ジオプターとすることができる。
【0081】
さらに別の実施態様では、上記説明による四重焦点レンズが、少なくとも1つの光学パラメータの値が異なる2つのレンズ部のみから成るようにすることができる。上述の詳細な説明とは異なり、ここでは、加入パワーがこの場合も第1レンズ部で3.75ジオプター、第2レンズ部で3.1ジオプターであるが、相対遠用強度が第1レンズ部で82%、第2レンズ部で41.75%であるようにすることができる。
【0082】
ここでも、四重焦点レンズがこれら2つのレンズ部ではなく3つのレンズ部から成るように、さらに別の実施形態を形成することができる。それに加えて、ここでもまた、ゾーンを半径方向に見て内側から外側へ交互に配置した2つのレンズ部に加えて、第3レンズ部がこれら2つのレンズ部の半径方向外側に隣接して形成されるようになっている。これは、パラメータ値に関して同一に形成した複数のゾーンで形成されることが好ましい。特に、ここでは、相対遠用強度がこの場合も65%となっている。ここでも、加入パワーは3.33ジオプターであり得る。
【0083】
さらに別の実施形態では、上述の四重焦点レンズとは対照的に、2つのレンズ部で構成した四重焦点レンズをこの場合も提供することができる。これらは、特に相対遠用強度がこれまで述べた実施形態と異なり、第1レンズ部の相対遠用強度は86.5%であり、第2レンズ部の相対遠用強度は40%である。その他の点で、加入パワーの値は前述の実施形態と類似している。
【0084】
ここでも、第3レンズ部が最初の2つのレンズ部の半径方向外側に隣接して四重焦点レンズの二重焦点レンズ部として配置されるさらに別の実施形態を、さらに提供することができる。しかしながら、この第3レンズ部も、光学パラメータのパラメータ値に関して同一である複数のゾーンを含むことが好ましい。ここでも特に、第3レンズ部のゾーンの相対遠用強度を65%とし、特に加入パワーを同じく3.33ジオプターとすることができる。
【0085】
3つの二重焦点レンズ部で構成した四重焦点レンズを有する前述の実施形態の全てで、第3レンズ部の加入パワーを3.33ジオプターではなく3.75ジオプターとすることもできる。特に、最初の2つのレンズ部の平均加入パワーが3.33ジオプターであり、第3レンズ部の加入パワー値が3.75ジオプターである場合、その結果として、近用パワーのピークの強度は大きな瞳孔では小さくなるが、近視野における強度分布は広くなる。しかしながら、この近用パワーの総エネルギーはこれによる影響を受けない。
【0086】
好ましくは、四重焦点レンズの上記実施態様では、第1レンズ部が7つのゾーンを有し、第2レンズ部も7つのゾーンを有するようになっている。好ましくは、3つの二重焦点レンズ部を有する四重焦点レンズの実施態様では、第3レンズ部のゾーン数が6個以上、特に11個以上となっている。特に、これは瞳孔直径に応じて変わる。
【0087】
特に、多焦点レンズは眼用レンズ、特にコンタクトレンズ、又はより好ましくは眼内レンズである。
【0088】
文献中で指定されているパラメータの特定の値と、レンズの固有特性の特性化のためのパラメータ仕様及びパラメータ間の比との両方が、本発明の範囲により、例えば測定誤差、システム誤差、DIN公差等に起因した偏差範囲内にも含まれると考えられ、したがってこれに関して、パワー、遠用強度、位置指示、及び寸法等に関する指示は、「実質的に」という指示の範囲内でも同一であるものと考えられる。
【0089】
本発明のさらに他の特徴は、特許請求の範囲、図面、及び図面の説明から明らかである。本明細書中で上述した特徴及び特徴の組み合わせと、図面の説明で後述し且つ/又は図面のみに示す特徴及び特徴の組み合わせは、それぞれ指定の組み合わせだけでなく、本発明の範囲から逸脱せずに他の組み合わせで又は単独でも使用可能である。
【0090】
本発明の実施形態を概略図面によってより詳細に以下で説明する。