特許第5964289号(P5964289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964289
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】多焦点レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20160721BHJP
   A61F 2/16 20060101ALI20160721BHJP
   G02B 5/18 20060101ALN20160721BHJP
【FI】
   G02C7/04
   A61F2/16
   !G02B5/18
【請求項の数】14
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-506626(P2013-506626)
(86)(22)【出願日】2011年4月26日
(65)【公表番号】特表2013-528828(P2013-528828A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】EP2011056552
(87)【国際公開番号】WO2011134948
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2014年3月28日
(31)【優先権主張番号】102010018436.5
(32)【優先日】2010年4月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502303382
【氏名又は名称】カール ツアイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー フィアラ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ゲルラッハ
【審査官】 小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06536899(US,B1)
【文献】 特表2009−525840(JP,A)
【文献】 特表2009−526275(JP,A)
【文献】 特開平09−015541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00 − 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n(n>2)個の、相対強度が0.05より大きい主経線パワーを有し、少なくとも1つの第1環状ゾーン(6、27)を有する第1レンズ部(15、25)と、少なくとも1つの第2環状ゾーン(10、28)を有する第2レンズ部(16、26)とを含み、前記第1環状ゾーン(6、27)及び前記第2環状ゾーン(10、28)はそれぞれ、少なくとも1つの主サブゾーン(7、11、29、31)及び少なくとも1つの位相サブゾーン(8、12、30、32)を有する、多焦点レンズであって、
n個の主経線パワーを形成するために、少なくとも1つの光学パラメータが異なる最大n−1個のレンズ部(15、16、25、26)を組み合わせ、前記第1レンズ部(15、25)のゾーン(6、27)の平均屈折パワーが、前記第2レンズ部(16、26)のゾーン(10、28)の平均屈折パワーと等しいことを特徴とする多焦点レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の多焦点レンズにおいて、
ゾーン(6、10、27、28)の前記平均屈折パワーは、前記多焦点レンズの前記主経線パワーのうち最小パワーと等しいことを特徴とする多焦点レンズ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多焦点レンズにおいて、
前記n個の主経線パワーのうち最小パワーは、回折軸方向色収差がなく、前記多焦点レンズを、前記主経線パワーの数n(n>2)とは関係なく前記主経線パワーのうち最小パワーで軸方向色収差がないような前記第1環状ゾーン(6、27)及び前記第2環状ゾーン(10、28)の形状及び/又は相対位置で形成したことを特徴とする多焦点レンズ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の多焦点レンズにおいて、
前記第1レンズ部(15、25)は、少なくとも2つの第1環状ゾーン(6、27)を有し、該2つのゾーン間に、前記多焦点レンズの半径方向に見て、前記第2レンズ部(16、26)の前記少なくとも1つの第2環状ゾーン(10、28)を配置し、半径方向に見て、前記第1環状ゾーン(6、27)及び前記第2環状ゾーン(10、28)を1つおきに配置したことを特徴とする多焦点レンズ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の多焦点レンズにおいて、
2つのレンズ部(15、16、25、26)の、互いに隣接する前記第1環状ゾーンのうちの1つと前記第2環状ゾーンのうちの1つとから形成した全体ゾーン(22)は、次式:
【数1】

に従って求められる、2つの主サブゾーンと1つの位相サブゾーンとの平均屈折パワーG12を有し、
前記pは前記第1環状ゾーンに対する位相サブゾーンの面積割合であり、前記pは前記第2環状ゾーンに対する位相サブゾーンの面積割合であり、DG1は第1環状ゾーンの主サブゾーンの屈折パワーであり、前記DG2は前記第2環状ゾーンの主サブゾーンの屈折パワーであり、前記DS1は前記第1環状ゾーンの位相サブゾーンの屈折パワーであることを特徴とする多焦点レンズ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の多焦点レンズにおいて、
前記第1レンズ部(15)のゾーン(6)を前記第2レンズ部(16)のゾーン(10)に隣接して形成し、該ゾーン(6、10)の光学表面(151、161)は等しいサイズであることを特徴とする多焦点レンズ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の多焦点レンズにおいて、
前記第1レンズ部(15)の前記少なくとも1つのゾーン(6)の相対遠用強度は、前記第2レンズ部(16)の前記少なくとも1つのゾーン(10)の相対遠用強度と10%よりも大きく異なることを特徴とする多焦点レンズ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の多焦点レンズにおいて、
該レンズは、2つの二重焦点レンズ部(15、16)で構成した三重焦点レンズ(13)であることを特徴とする多焦点レンズ。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の多焦点レンズにおいて、
該多焦点レンズは、3つの二重焦点レンズ部(15,16、23)で構成した四重焦点レンズ(18)であることを特徴とする多焦点レンズ。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の多焦点レンズにおいて、
該多焦点レンズは、2つの二重焦点レンズ部(25、26)で構成した四重焦点レンズ(24)であり、前記第1レンズ部(25)のゾーン(27)の前記光学表面(251)は、前記第2レンズ部(26)のゾーン(28)の前記光学表面(261)とは異なるサイズであることを特徴とする多焦点レンズ。
【請求項11】
請求項10に記載の多焦点レンズにおいて、
前記第2レンズ部(26)の前記光学表面(261)は、前記第1レンズ部(25)の前記光学表面(251)よりも少なくとも50%大きいことを特徴とする多焦点レンズ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の多焦点レンズにおいて、
前記2つのレンズ部(25、26)の加入パワーは異なり、且つ/又は前記2つのレンズ部(25、26)は同一の相対遠用強度を有することを特徴とする多焦点レンズ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の多焦点レンズにおいて、
前記第1環状ゾーン(6、27)及び前記第2環状ゾーン(10、28)で構造化した前記多焦点レンズの表面(14、17)を、その結像特性に関して乱視効果を有し、ゾーン(6、10、19、27、28)のパワーが経線角に応じて異なるよう形成したことを特徴とする多焦点レンズ。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の多焦点レンズにおいて、
該多焦点レンズの少なくとも1つの経線で、前記第1レンズ部(15、25)のゾーン(6、27)の平均屈折パワーは、前記第2レンズ部(16、26)のゾーン(10、28)の平均屈折パワーとそれぞれ等しいことを特徴とする多焦点レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、n>2個の主経線パワー(principal power:主経線屈折力)を有する多焦点レンズであって、少なくとも1つの主経線パワーが屈折パワーであり、少なくとも1つのさらに別の主経線パワーが回折パワーである多焦点レンズに関する。多焦点レンズは、少なくとも1つの第1環状ゾーンを有する第1レンズ部を含み、少なくとも1つの第2環状ゾーンを有する第2レンズ部を少なくとも含む。これらのゾーンそれぞれに、少なくとも1つの主サブゾーン及び少なくとも1つの位相サブゾーンが形成される。
【背景技術】
【0002】
屈折パワー及び回折パワーを有する多焦点レンズは、特許文献1から既知である。これらのレンズは、環状又は円環状ゾーンを有し、これら環状ゾーンのそれぞれは、各自の主サブゾーン及び位相サブゾーンに分割される。主サブゾーンのシステムは、2つの主経線パワーを有する回折レンズを表す。位相サブゾーンの屈折パワーは、ゾーン全体又はレンズ全体の平均屈折パワーが2つの主経線回折パワーの一方に対応するよう選択される。従来の回折レンズとは対照的に、特許文献1によるレンズは、レンズ表面に地形的又は光学的な段差が一切ない。
【0003】
特許文献1には、三重焦点レンズも記載されており、このレンズでは、平均屈折パワーが3つの主経線パワーの平均に等しく、最大主経線パワーは+1次の回折パワーにより与えられ、最小主経線パワーは−1次の回折パワーにより与えられる。
【0004】
記載されているタイプの三重焦点レンズは、3つの主経線パワーのうち最小パワー及び最大パワーの両方で軸上色収差を有する。したがって、このようなレンズを眼用レンズ(例えば、コンタクトレンズ、眼内レンズ)として用いる場合、特に最小主経線パワーでの軸上色収差は不利である。つまり、このパワーはこの場合に遠方の対象物の結像に用いられ、−1次の回折次数に関連する軸上色収差は、このような用途で特に妨害となる。
【0005】
3つ以上の主経線パワーを有する多焦点レンズは、遠距離、中距離、及び読書距離で鮮明な視力が得られるので、眼科学の分野で特に望まれる。特許文献1による三重焦点レンズに加えて、他の三重焦点レンズが既知である。特許文献2には、三重焦点回折レンズが記載されており、またさらに特許文献3にも記載されている。さらに別の三重焦点レンズは、特許文献4に記載されている。
【0006】
特許文献2による三重焦点レンズは、軸上色収差を伴う−1次の回折パワーと等しい最小主経線回折パワーを有する。さらに、このレンズは、レンズ表面の少なくとも一方に回折レンズでは普通である地形的又は光学的段差を有する。
【0007】
特許文献3による三重焦点レンズも、軸上色収差を伴う−1次の回折次数に対応する最小主経線回折パワーを有する。
【0008】
特許文献4による三重焦点レンズは、0次の回折次数に対応する最小主経線回折パワーと、回折レンズの1次の回折次数に対応する最大パワーとを有する。この従来技術によれば、光は、隣接する回折段を特定の設計にすることにより、これらのパワーの2つの焦点間の場所に導かれる。従来の回折レンズの全てのように、このレンズは、2つのレンズ表面の一方に地形的段差又は光学的段差を有する。
【0009】
レンズ表面上の地形的段差は、いくつかの理由から不利である。通常、このような段差は、要求される精度で製造し難いか又は要求される精度で製造されない。さらに、このような段差は、コンタクトレンズ等の眼用レンズにおける着け心地を損なわせる。
【0010】
回折レンズは、概して、それぞれ同一面積の複数の円環状レンズゾーンから成り、通常はこのようなゾーンをフレネルゾーンと称する。隣接するゾーン間には、通常、光路長差tを伴う段差が設けられ、これらの光路長差は、通常は設計波長λよりも小さい。これらのゾーンの面積又はサイズは、レンズの回折パワー間の分離を決定し、これらの分離は、ゾーンの面積減少に伴い増加する。光路長差tは、個々の回折パワーの相対最大強度を決定し、例えばt=t=λ/2では、0次及び1次の回折次数に対応する2つの主経線回折パワーがあり、両方が(2/π)=40.5%の最大強度を有する。ここで、100%は、フレネルゾーンが同一だがゾーン間に段差がなく回折が限られるレンズの最大強度である。後者のレンズは「正常」屈折レンズである。半設計波長よりも絶対的に短い光路長差では、0次のパワーが優勢であり、abs(t)>λ/2の場合、1次の回折次数のパワーが最大相対強度を有する。
【0011】
屈折パワーが回折レンズの個々のフレネルゾーンそれぞれに関連付けられることに留意することが極めて重要であり、この屈折パワーは、スネルの屈折の法則を適用して入射光ビームの屈折により計算することができる。個々のフレネルゾーンは、一様なパワーを有することができるが、屈折パワーがゾーン表面に沿って変わるような表面構成を有することもでき、その場合、このようなゾーンの屈折パワーは平均パワーである。
【0012】
隣接するゾーン間に光学的段差のある従来の多焦点回折レンズでは、いずれの回折パワーもそれらゾーンの屈折パワーと同一ではない。特に、これは回折レンズの0次の回折パワーにも当てはまる。
【0013】
回折レンズの基本形態は2つある。第1形態では、第1ゾーンと第2ゾーンとの間の光路長差tが第2ゾーンと第3ゾーンとの間の光路長差に等しく、以下同様である。このような回折レンズの実施形態は、通常は所与の屈折率を有するよう製造したレンズの2つの表面の一方に鋸歯プロファイルを有する。従来技術による回折レンズの第2基本形態では、光路長差が、第1ゾーンと第2ゾーンとの間で+t、第2ゾーンと第3ゾーンとの間で−t、第3ゾーンと第4ゾーンとの間で+tであり、以下交互になる。このような既知の回折レンズの欠点は、特許文献1で説明されている。
【0014】
特許文献1では、レンズ表面に地形的及び光学的段差がないよう形成した、当該文献の発明によるレンズについて述べられている。これに関連して、個々のゾーンが異なる平均パワーを有し、さらに、不利な軸上色収差が3つの主経線パワーのうち最小パワー及び最大パワーの両方で生じる、三重焦点レンズについても述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許第1 194 797号明細書
【特許文献2】米国特許第5,344,447号明細書
【特許文献3】米国特許第5,760,871号明細書
【特許文献4】米国出願公開第2008/0030677号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、近距離及び中距離の両方で、また特に遠距離で高い視力を可能にする、少なくとも三重焦点レンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する多焦点レンズにより解決される。
【0018】
本発明による多焦点レンズは、少なくともn>2個の主経線パワーを有する。したがって、多焦点レンズは少なくとも三重焦点レンズである。特に、主経線パワーの少なくとも1つは屈折パワーであり、少なくともさらに別の主経線パワーは回折パワーである。多焦点レンズは、少なくとも1つの第1環状ゾーンを含む第1レンズ部を有する。多焦点レンズは、少なくとも1つの第2環状ゾーンを有する少なくとも第2レンズ部をさらに含む。レンズ部の各ゾーンは、少なくとも主サブゾーン及び少なくとも位相サブゾーンを有する。主サブゾーン及び位相サブゾーンの両方も、環状に形成される。n個の主経線パワーを形成するために、本発明による多焦点レンズでは、最大n−1個のレンズ部を組み合わせる。あるレンズ部のゾーンの平均屈折パワーは、別のレンズ部のゾーンの平均屈折パワーと等しい。すなわち、多焦点レンズを形成するレンズ部の全てが同じ平均屈折パワーを有する。したがって、レンズが例えば2つのレンズ部で構成される場合、これら2つのレンズ部は同じ平均屈折パワーを有する。したがって、レンズが例えば3つのレンズ部で構成される場合、3つのレンズ部は同じ平均屈折パワーを有する。多焦点レンズのこのような特定の構成により、近距離、中間距離、及び特に遠距離でのレンズによる結像を、したがって視力も、向上させることができる。
【0019】
レンズ部は、少なくとも1つの光学パラメータがそれぞれ異なる。例えば、遠用パワー又は近用パワー又は加入パワー等のパワーが、光学パラメータとして言及される。さらに、光学パラメータは、例えば、遠用強度又は光学表面のサイズでもあり得る。
【0020】
これに関連して、レンズ部とは、特にレンズの円状又は円環状(環状)領域であると理解されたい。レンズ部は、レンズのいくつかの隣接していない円状又は円環状領域からも構成され得る。
【0021】
主経線パワーとは、特に相対強度が0.05(5%)よりも大きい、特に0.07(7%)以上のパワーであると理解される。
【0022】
特に有利には、多焦点レンズがn個の主経線パワーのうち最小パワーで回折軸上色収差を一切有しない構成が達成される。これにより、大幅に改善した結像特性、したがって特に遠距離でかなり良好な視力が確保される。
【0023】
光学材料の分散による屈折色収差は、回折色収差に対して小さく、+1次の回折次数で逆になるものであり、本発明では問題ではない。
【0024】
特にこれは、色表現及び像の認識に関して特に有利である。
【0025】
好ましくは、あるゾーンの平均屈折パワーは、多焦点レンズの主経線パワーのうち最小パワーと等しくなっている。レンズのこの仕様により、主経線パワーのうち最小パワーでの回折軸上色収差の抑制が達成される。好ましくは、レンズ部が少なくとも2つのゾーンを有する場合、これはゾーン全てについて同じく達成される。特に、レンズ部の各ゾーンは、同じ平均屈折パワーを有する。
【0026】
特に、n個の主経線パワーのうち最小パワーで回折軸上色収差がない。
【0027】
好ましくは、多焦点レンズは、主経線パワーの数n>2に関係なく主経線パワーのうち最小パワーで軸上色収差がないようなゾーンの相互に対する形状及び/又は相対位置で形成される。したがって、レンズは、三重焦点レンズだけでなく四重焦点レンズ等でも主経線パワーのうち最小パワーで常に回折軸上色収差がないよう、そのレンズ部及びそれぞれに関連するゾーンが形成される。
【0028】
好ましくは、多焦点レンズのn個の主経線パワーのうち最小パワーは、第1ゾーンの全表面に対するこの第1ゾーンの主サブゾーンの面積割合で重み付けした主サブゾーンの屈折パワーに依存し、さらに、この第1ゾーンの全表面に対する当該ゾーンの位相サブゾーンの面積割合で重み付けした位相サブゾーンの屈折パワーにも依存する。これは特に、多焦点レンズのゾーンそれぞれに当てはまり、特にレンズの主経線パワーのうち最小パワーDについては以下の関係が当てはまる。
【0029】
=DG1(1−p)+DS1=DG2(1−p)+DS2
【0030】
式中、DG1は、第1ゾーン(及び第3ゾーン、第5ゾーン…)の主サブゾーンの屈折パワーであり、DS1は、第1(及び第3、第5…)ゾーンの位相サブゾーンの屈折パワーである。pは、第1(及び第3、第5…)ゾーン全体に対する位相サブゾーンの面積割合である。
【0031】
G2は、第2ゾーン(及び第4ゾーン、第6ゾーン…)の主サブゾーンの屈折パワーであり、DS2は、第2(及び第4、第6…)ゾーンの位相サブゾーンの屈折パワーである。pは、第2(及び第4、第6…)ゾーン全体に対する位相サブゾーンの面積割合である。
【0032】
上記の記載は、2つのレンズ部を有するレンズに関して示したものであり、奇数ゾーンは第1レンズ部に関連し、偶数ゾーンは第2レンズ部に関連する。上述の方程式は、3つ以上のレンズ部を有する多焦点レンズにも当てはまり、そのためさらに別のレンズ部jについては以下が当てはまる。
【0033】
=DGj(1−p)+DSj
【0034】
好ましくは、第1レンズ部は少なくとも2つのゾーンを有し、レンズの半径方向に見てこれらのゾーン間に、第2レンズの少なくとも1つのゾーンが配置されるようになっている。したがって、この実施態様の構成は、交互のリング配置で、第1レンズ部の第1ゾーンが形成されてから第2レンズ部のゾーンが形成され、半径方向に見て、続いて第1レンズ部のさらに別の第1ゾーンが形成されるようなものである。
【0035】
したがって、3つ以上のレンズ部が形成される場合、この交互配置は、半径方向に見て1つのレンズ部の各ゾーンが連続して配置され、続いて、各レンズ部から環状ゾーンが形成されれば第1レンズ部の第1ゾーンが再度形成され、以下同様であるというように適用される。
【0036】
3つ以上のレンズ部の場合、各レンズ部が1つのゾーンのみを有し、これにより多焦点レンズが形成されるようにすることもできる。少なくとも1つのレンズ部が2つ以上のゾーンを有するようにすることもできる。
【0037】
好ましくは、第1レンズ部の第1ゾーンは第2レンズ部のゾーンに隣接して形成され、これら2つのゾーンの光学表面は等しいサイズであるようになっている。これは、2つの異なるレンズ部の対においてそれぞれ隣接するゾーン全部について特に言える。
【0038】
ゾーンの光学表面に関して、レンズの前面及び後面の両方をこの点で考慮する。これに関する多焦点レンズの構成の仕方に応じて、前面及び後面の両方が対応の表面プロファイルを有し得る。したがって、前面が対応の構成であれば、後面を非球面に形成することができる。後面が対応の表面プロファイルを有する場合には、この逆が言える。
【0039】
構造化した表面プロファイル(環状ゾーンを有するプロファイル)を有する表面に対する各合わせ面が、トーリック又は非球面トーリックに形成されるようにすることもできる。これにより、角膜乱視の矯正用のモノトーリック(mono-toric)眼内レンズを形成することができる。
【0040】
好ましくは、2つのレンズ部の隣接ゾーンから形成される全体ゾーンは、平均屈折パワーDG12を有する全体主サブゾーン又は主サブゾーンと、パワーDS2を有する位相サブゾーンとを有するようになっている。パワーDS2はすでに上記で示したものであり、パワーDG12は、次式により与えられる。
【0041】
【数1】
【0042】
特に、これらの関係は、2つのレンズ部を有する三重焦点レンズに当てはまる。
【0043】
好ましくは、2つのレンズ部の2つの隣接ゾーンから形成される全体ゾーンは、レンズ部の位相サブゾーンのパワーに対応する全体位相サブゾーン又は位相サブゾーンの屈折パワーを有する。特に、これは、半径方向のさらに外側のレンズ部、したがって半径方向のさらに外側の位相サブゾーンが、パワーDS2を有するということである。
【0044】
好ましくは、多焦点レンズの実施形態において、第1レンズ部の少なくとも1つのゾーンの相対遠用強度は、第2レンズ部の少なくとも1つのゾーンの相対遠用強度と10%よりも大きく異なり、特に少なくとも30%、好ましくは少なくとも100%異なる。遠用強度のこのような特定の差により、多焦点レンズの結像特性を、特にレンズの主経線パワーのうち最小パワーでの軸上色収差の抑制に関して特に確実に改善することができる。
【0045】
好ましくは、3つ以上のレンズ部を有する多焦点レンズの実施態様において、対でそれぞれ異なる相対遠用強度が、異なるレンズ部のゾーン間に形成されるようになっている。したがって、特に、レンズ部の各最小パワーの相対強度は、10%よりも大きいようなパーセンテージ差を有するようになっている。したがって、4つ以上の主経線パワーを有する特定の多焦点レンズでさえ、遠用強度のこのような仕様が同じく存在する。
【0046】
特に有利には、レンズは、2つの二重焦点レンズ部で構成した三重焦点レンズである。このような指定のレンズは、特に有利に視力を改善することができ、特に主経線パワーのうち最小パワーで軸上色収差を一切有しない。
【0047】
好ましくは、レンズ部は、多焦点レンズの遠用パワーが第1レンズ部のゾーンのみ又は第2レンズ部のゾーンのみから形成したレンズの遠用パワーと実質的に等しいような相互に対する形状及び/又は局所配置で形成される。
【0048】
特に、レンズ部は、多焦点レンズの近用パワーが第1レンズ部のゾーンのみ又は第2レンズ部のゾーンのみから形成したレンズの近用パワーと実質的に等しいような相互に対する形状及び/又は局所配置で形成される。
【0049】
好ましくは、ゾーンの光学表面の総面積割合に対する少なくとも1つの位相サブゾーンの面積割合パーセンテージは、25%未満、好ましくは8%〜17%である。
【0050】
特に、二重焦点レンズ部の加入パワーは、第2レンズ部の加入パワーと等しくすることができる。しかしながら、種々のレンズ部の加入パワーが異なっていてもよい。
【0051】
有利な実施態様では、レンズ部の小さい方のパワーとレンズ部の加入パワーとがそれぞれ同じであり、特にレンズ部のパワーの遠用強度及び/又は近用強度が異なるようにすることができる。
【0052】
さらに別の実施態様では、レンズ部の大きい方のパワーとレンズ部の加入パワーとがそれぞれ異なり、特にレンズ部のパワーの遠用強度及び/又は近用強度が異なるようにすることもできる。特に、レンズ部の小さい方のパワーはこの場合は同じである。
【0053】
2つの二重焦点レンズ部から形成した三重焦点レンズとしての多焦点レンズの構成では、第1二重焦点レンズ部の小さい方のパワーが第2二重焦点レンズ部の小さい方のパワーと異なるようにすることができる。
【0054】
特に、第1二重焦点レンズ部の大きい方のパワーが第2二重焦点レンズ部の大きい方のパワーと異なるようにすることもできる。
【0055】
好ましくは、レンズ部は、同数の主サブゾーン及び同数の位相サブゾーンを有する少なくとも2つのゾーンを有するようになっている。特に、各ゾーンは、主サブゾーン及び位相サブゾーンをそれぞれ1つだけ有し、位相サブゾーンは、主サブゾーンよりも半径方向外側に配置されて半径方向外側ゾーン縁部で終端することが好ましい。特に、両レンズ部は、主サブゾーン及び位相サブゾーンの数に関して及び/又はゾーン内の位相サブゾーンの局所配置に関して同一に形成した複数のゾーンをそれぞれ有するようにもなっている。
【0056】
あるレンズ部のゾーン及び/又は別のレンズ部のゾーンが、主サブゾーンの数に関して及び/又は位相サブゾーンの数に関して異なって形成されるようにすることもできる。同様に、1つのゾーン内の位相サブゾーンの局所位置を異ならせることもできる。
【0057】
好ましい実施形態では、レンズ部のゾーンは、別のレンズ部のゾーンに隣接して形成され、ゾーンの光学表面は等しいサイズである。特に、レンズ部のゾーン全ての光学表面が等しいサイズである。これに対応することが、別のレンズ部のゾーン全ての光学表面にも特に当てはまる。
【0058】
好ましくは、第1レンズ部の少なくとも1つのゾーンの相対遠用強度は、第2レンズ部の少なくとも1つのゾーンの相対遠用強度と10%よりも大きく異なり、特に少なくとも30%、特に少なくとも100%異なる。
【0059】
好ましくは、レンズ部は同一の加入パワーを有する。
【0060】
好ましくは、n>2個の主経線パワーを有するレンズは、n−1個の二重焦点レンズ部で構成される。したがって、これは2つの二重焦点レンズで構成した三重焦点レンズであり得る。3つの二重焦点レンズ部から形成した四重焦点レンズも提供することができる。特にこのレンズでは、レンズ部のゾーンの同一の加入パワー及び/又は10%よりも大きく異なる遠用強度及び/又は等しいサイズの光学表面を有する実施態様が有利である。
【0061】
好ましくは、n−1個の二重焦点レンズ部で構成したn>2個の主経線パワーを有するレンズにおいて、各焦点の焦点深度範囲を重ねて形成することで連続した焦点範囲が形成され、したがって連続したパワー範囲も形成されるような構成が提供される。これには、パワー間の、したがって逆の焦点間の特定のパワー範囲での像の不良が生じないという利点がある。
【0062】
これとは異なる実施態様では、n>2個の主経線パワー、特に4つの主経線パワーを有するレンズが、n−1個未満の、特に2つの二重焦点レンズ部で構成されるようになっている。
【0063】
好ましくは、ここで、第1レンズ部のゾーンの光学表面のサイズは、第2レンズ部のゾーンの光学表面のサイズとは異なるようになっている。
【0064】
特に、第2レンズ部の光学表面は、第1レンズ部の光学表面よりも少なくとも50%、特に少なくとも90%大きい。これにより、四重焦点レンズを2つの二重焦点レンズ部から形成することもできる。
【0065】
これらの実施態様では、特に、2つのレンズ部の加入パワーが異なるようになっている。
【0066】
これらの実施態様では、特に、2つのレンズ部が同一の相対遠用強度、好ましくは50%を有するようになっている。
【0067】
特に、レンズの光学表面には地形的及び光学的段差がない。これは、表面輪郭が連続的であることを意味する。特にこれは、本発明によるレンズの裏の波面が連続的である、すなわち、レンズ裏の波面の部分間に光路長差又は光学的段差が生じないことも意味する。
【0068】
レンズの好ましい実施態様では、ゾーンで構造化したレンズの表面が、その結像特性に関して乱視効果を有するよう形成される。特に、ゾーンのパワーは、経線角に応じて、したがって経線の位置、特に主軸に応じて異なるように形成される。トーリックレンズでは、2つの経線が主軸、楕円の軸である。2つの経線における2つのパワーの差を円柱度数という。ゾーンで構造化したレンズの表面は、トーリック又はトーリック非球面の基体に特に適用される。これから、両面(構造化又は非構造化)をトーリック又は非球面トーリックに形成することができるバイトーリック構成の変形形態が得られる。バイトーリックの利点は、レンズの2つの表面である前面及び後面に対するトーリック光学効果が分割され得ることである。これにより、同じ円柱効果を有するモノトーリック眼内レンズと比べて、両面の主経線それぞれでの半径差が小さくなる。バイトーリック眼内レンズの結像品質は、モノトーリック眼内レンズと比べて高い。これにより、バイトーリック眼内レンズを角膜乱視の矯正用に構成することができる。
【0069】
好ましくは、少なくとも1つの経線、特に各経線で、第1レンズ部のゾーンの平均屈折パワーは第2レンズ部のゾーンの平均屈折パワーとそれぞれ等しい。これは特に、異なる経線でも可能である。
【0070】
有利な実施態様では、n>2個の主経線パワーを有するレンズ全体が、少なくとも1つのゾーンをそれぞれが有する最大n−1個のレンズ部から成り、したがってさらなるレンズ部が存在しないようになっている。したがって、これに関して、三重焦点レンズが2つの二重焦点レンズ部から成るようにすることができる。同様に、四重焦点レンズが3つのレンズ部、特に3つの二重焦点レンズ部から成り、それ以外にさらなるレンズ部が設けられないようにすることができる。同様に、四重焦点レンズが2つの異なるレンズ部のみ、特に2つの異なる二重焦点レンズ部のみから成り、それ以外にさらなるレンズ部が存在しないようにすることができる。上述した特定の実施態様及び代替形態も全て、n−1個のレンズ部、特にn−1個の二重焦点レンズ部から成るこのようなレンズ全体に当てはまる。
【0071】
しかしながら、さらに他の実施態様では、n>2個の主経線パワーを有するレンズ全体が、少なくとも1つの主サブゾーン及び少なくとも1つの位相サブゾーンからさらにそれぞれ形成される少なくとも1つのゾーンをそれぞれが有する最大n−1個のレンズ部から設計され、さらに少なくとも1つのさらに別のレンズ部を有するようにすることもできる。
【0072】
これに関して、特に四重焦点レンズとして設計したレンズを形成することができる。第1実施態様によれば、この四重焦点レンズは、光学パラメータの少なくとも1つの値が異なる2つのレンズ部のみから成るようにすることができる。2つのレンズ部はそれぞれ、少なくとも1つのゾーンを有し、ゾーンはさらに、少なくとも1つの主サブゾーン及び1つの位相サブゾーンをそれぞれが有する。第1レンズ部のゾーンの平均屈折パワーは、第2レンズ部のゾーンの平均屈折パワーと等しい。好ましくは、第1レンズ部の加入パワーは3.75ジオプターであり、第2レンズ部の加入パワーは3.1ジオプターである。好ましくは、このレンズの直径は4.245mmである。特に、第1レンズ部のゾーンの相対遠用強度が90%であり、好ましくは、第2レンズ部のゾーンの相対遠用強度が40%であるようになっている。好ましくは、ゾーンにおける主サブゾーンの面積割合は90%である。好ましくは、主サブゾーンのこの面積割合パーセンテージは、ゾーン全てで同じである。
【0073】
第1レンズ部のゾーン、したがって偶数番号のゾーンの光学的面積は、第2レンズ部のゾーン、したがって奇数番号のゾーンの光学的面積とサイズが異なる。
【0074】
さらに別の好ましい実施形態では、全ての奇数環状ゾーンは同じ表面積を有する。さらに、全ての偶数環状ゾーンは同じ表面積を有し、これは奇数環状ゾーンの表面積とは異なる。したがって、ゾーンの半径方向厚さは、レンズの半径に伴い異なり減少する。
【0075】
さらに別の実施態様では、この四重焦点レンズが光学パラメータの値が異なる2つのレンズ部から成るのではなく、これら2つのレンズ部に加えて第3レンズ部が存在するようにすることができる。四重焦点レンズは、この場合、特に3つの二重焦点レンズ部である3つのレンズ部から成るよう構成される。特にこの場合、最初の2つのレンズ部のゾーンが半径方向に見て交互に配置され、これが特に最大4.245mmの直径まで行われるようになっている。続いて、半径方向外側に隣接して第3レンズ部が環状に形成される。同じく二重焦点であるこの第3レンズ部は、この場合は総直径約6mm、特に5.888mmまで延びることが好ましい。この第3二重焦点レンズ部は、少なくとも1つの、特に複数のゾーンから成るようにも形成され、各ゾーンはさらに主サブゾーン及び位相サブゾーンを有する。好ましくは、第3レンズ部の加入パワーは3.33ジオプターである。これは、最初の2つのレンズ部の2つのジオプター値3.75及び3.1の平均に相当する。
【0076】
好ましくは、第3レンズ部のゾーンの相対遠用強度は65%である。
【0077】
上記特定の値を有する追加の半径方向外側の第3レンズ部を備えた四重焦点レンズのこのような実施形態は、眼内レンズを挿入される眼の瞳孔が大きい場合に特に有利であろう。大きな瞳孔では、遠用強度及び近用強度が重要であり目立つが中間強度はそれほどでもないので、第3レンズ部を有するこのような構成が有利である。
【0078】
四重焦点レンズと称することができるレンズのさらに別の実施態様では、このレンズが2つのレンズ部から成る上述の実施態様とは対照的に、相対遠用強度が90%及び40%ではなく、好ましくは85%及び39.5%となっている。好ましくは、このようなレンズは、遠距離、中間距離、及び近距離の相対強度に関して50:20:30の比に対応する。
【0079】
ここでも、追加の第3レンズ部として前述した実施態様で説明したようなものが設けられるさらに別の実施態様をさらに提供することができ、ここでも特に、3.33ジオプターの加入パワー及び65%の相対遠用強度が同じく提供される。
【0080】
ここでも、第3レンズ部のゾーンの加入パワーを3.33ジオプターとすることができる。
【0081】
さらに別の実施態様では、上記説明による四重焦点レンズが、少なくとも1つの光学パラメータの値が異なる2つのレンズ部のみから成るようにすることができる。上述の詳細な説明とは異なり、ここでは、加入パワーがこの場合も第1レンズ部で3.75ジオプター、第2レンズ部で3.1ジオプターであるが、相対遠用強度が第1レンズ部で82%、第2レンズ部で41.75%であるようにすることができる。
【0082】
ここでも、四重焦点レンズがこれら2つのレンズ部ではなく3つのレンズ部から成るように、さらに別の実施形態を形成することができる。それに加えて、ここでもまた、ゾーンを半径方向に見て内側から外側へ交互に配置した2つのレンズ部に加えて、第3レンズ部がこれら2つのレンズ部の半径方向外側に隣接して形成されるようになっている。これは、パラメータ値に関して同一に形成した複数のゾーンで形成されることが好ましい。特に、ここでは、相対遠用強度がこの場合も65%となっている。ここでも、加入パワーは3.33ジオプターであり得る。
【0083】
さらに別の実施形態では、上述の四重焦点レンズとは対照的に、2つのレンズ部で構成した四重焦点レンズをこの場合も提供することができる。これらは、特に相対遠用強度がこれまで述べた実施形態と異なり、第1レンズ部の相対遠用強度は86.5%であり、第2レンズ部の相対遠用強度は40%である。その他の点で、加入パワーの値は前述の実施形態と類似している。
【0084】
ここでも、第3レンズ部が最初の2つのレンズ部の半径方向外側に隣接して四重焦点レンズの二重焦点レンズ部として配置されるさらに別の実施形態を、さらに提供することができる。しかしながら、この第3レンズ部も、光学パラメータのパラメータ値に関して同一である複数のゾーンを含むことが好ましい。ここでも特に、第3レンズ部のゾーンの相対遠用強度を65%とし、特に加入パワーを同じく3.33ジオプターとすることができる。
【0085】
3つの二重焦点レンズ部で構成した四重焦点レンズを有する前述の実施形態の全てで、第3レンズ部の加入パワーを3.33ジオプターではなく3.75ジオプターとすることもできる。特に、最初の2つのレンズ部の平均加入パワーが3.33ジオプターであり、第3レンズ部の加入パワー値が3.75ジオプターである場合、その結果として、近用パワーのピークの強度は大きな瞳孔では小さくなるが、近視野における強度分布は広くなる。しかしながら、この近用パワーの総エネルギーはこれによる影響を受けない。
【0086】
好ましくは、四重焦点レンズの上記実施態様では、第1レンズ部が7つのゾーンを有し、第2レンズ部も7つのゾーンを有するようになっている。好ましくは、3つの二重焦点レンズ部を有する四重焦点レンズの実施態様では、第3レンズ部のゾーン数が6個以上、特に11個以上となっている。特に、これは瞳孔直径に応じて変わる。
【0087】
特に、多焦点レンズは眼用レンズ、特にコンタクトレンズ、又はより好ましくは眼内レンズである。
【0088】
文献中で指定されているパラメータの特定の値と、レンズの固有特性の特性化のためのパラメータ仕様及びパラメータ間の比との両方が、本発明の範囲により、例えば測定誤差、システム誤差、DIN公差等に起因した偏差範囲内にも含まれると考えられ、したがってこれに関して、パワー、遠用強度、位置指示、及び寸法等に関する指示は、「実質的に」という指示の範囲内でも同一であるものと考えられる。
【0089】
本発明のさらに他の特徴は、特許請求の範囲、図面、及び図面の説明から明らかである。本明細書中で上述した特徴及び特徴の組み合わせと、図面の説明で後述し且つ/又は図面のみに示す特徴及び特徴の組み合わせは、それぞれ指定の組み合わせだけでなく、本発明の範囲から逸脱せずに他の組み合わせで又は単独でも使用可能である。
【0090】
本発明の実施形態を概略図面によってより詳細に以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】同一ゾーンで構成した欧州特許第1 194 797号明細書による既知の三重焦点レンズのレンズ断面の概略部分断面図である。
図2図1に示す三重焦点レンズのレンズパワーの相対強度を示す図である。
図3】2つのパワーのうち小さい方が目的の値を有するようにレンズの同一ゾーンを構成した、欧州特許第1 194 797号明細書による二重焦点レンズの概略断面図である。
図4】2つのパワーのうち小さい方が図3に示す図と比べてさらに別の異なる値を有するようにレンズの同一ゾーンを構成した、欧州特許第1 194 797号明細書によるさらに別の二重焦点レンズの断面の概略部分断面図である。
図5】本発明による多焦点レンズの実施形態によるレンズの概略部分断面図である。
図6図5に示すレンズのパワーの相対強度を示す図である。
図7】ゾーン全体に対する主サブゾーンの何らかの例示的な割合及び4ジオプターの加入パワーについて、図3及び図4に示すレンズの主サブゾーンのパワーを小さい方のパワー(遠用パワー)の相対強度の関数として示す図である。
図8図5に示すレンズの主経線パワーの相対強度を表す図である。
図9】無段差であることを寸法及び幾何学的形状に関して実質的に一定の縮尺で表す、本発明によるレンズの実施形態の前面の断面拡大図である。
図10】可能な四重焦点レンズとして形成した本発明によるレンズのさらに別の実施形態の概略部分断面図である。
図11図10に示すレンズの主経線パワーの相対強度を表す図である。
図12】それぞれ異なる加入パワー及びそれぞれ異なる相対遠用強度を有する2つのレンズ部のゾーンで構成した、図5の実施形態による本発明によるレンズの主経線パワーの相対強度を表す図である。
図13】本発明によるレンズの実施形態の概略平面図である。
図14】長手方向断面での図13に示すレンズの概略部分断面図である。
図15】それぞれ異なる加入パワー及びそれぞれ同一の相対遠用強度並びにそれぞれ異なるサイズの光学表面を有する2つのレンズ部のゾーンで構成した、図16の実施形態による本発明によるレンズの主経線パワーの相対強度を表す図である。
図16】本発明による多焦点レンズの実施形態による図15示すレンズの概略部分断面図である。
図17】本発明によるレンズのさらに別の実施形態の部分断面平面図である。
図18】それぞれ異なる加入パワー及びそれぞれ異なる相対遠用強度を有する3つのレンズ部のゾーンで構成した、図17に示すレンズの主経線パワーの相対強度を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
図中、同様の又は機能的に同様の要素には同じ参照符号を設けてある。
【0093】
図1に断面図で、欧州特許第1 194 797号明細書による従来技術から既知の回折パワー及び屈折パワーを有する三重焦点レンズの一部を示す。図2の破線曲線が示すように、レンズ1は、3つの主経線パワーのうち最小パワー及び最大パワー両方で軸上色収差を有する。図2において、縦軸に相対強度をプロットし、横軸にジオプターでのレンズパワーをプロットする。3つの主経線パワーの比較的大きな強度Iが明らかであり、実線は設計波長550nmでの単色光について表したものであり、破線は450nm〜650nmの波長範囲にガウス分布を有する多色光の基礎として取ったものである。450nm及び650nmそれぞれに関する強度は、550nmに関する最大強度の20%である。
【0094】
欧州特許第1 194 797号明細書においてこれらの構成が詳述されているように、図1に示すレンズ1は、面積が等しいゾーン2及び2’から成り、これらのゾーンは環状に形成され、それぞれが主サブゾーン3及び3’と位相サブゾーン4及び4’とを有する。ゾーン2及び2’は、中心軸Aから半径方向に見て、したがって図1による表示において上方へ、順に事実上番号付けされ、奇数ゾーン2は、例えば回折パワーの小さい方がゾーン2の平均屈折パワーに対応するよう形成される。これとは対照的に、偶数ゾーン2’の平均屈折パワーは、大きい方の回折パワーに対応する。この構成により、図2にでも明らかなように、図1に示すレンズ1は、主経線パワーのうち最大パワー及び最小パワー両方で軸上色収差を有する。レンズ1の後面では、ゾーン2において位相サブゾーン4が主サブゾーン3の輪郭に対して斜め後方に延びるようプロファイル又は輪郭が形成される。隣接するゾーン2’では、これが正反対であり、位相サブゾーン4’の輪郭がこのさらなるゾーン2’の主サブゾーン3’に対して斜め前方に再度延びるようになっており、事実上交互に凹凸が形成される。
【0095】
図3に、欧州特許第1 194 797号明細書による二重焦点レンズ5の地形プロファイルを部分断面で概略的に示す。このレンズ5では、2つの主経線パワー間の所与の相対強度分布が、小さい方のパワー(遠用パワー)について例えば40%である。二重焦点レンズ5では、例示的に、小さい方のパワー(遠用パワー)が20ジオプター、大きい方のパワー(近用パワー)が24ジオプターである。したがって、レンズ5の加入パワーは4ジオプターである。レンズ5は同一ゾーン6で構成され、同一ゾーン6はさらに主サブゾーン7及び位相サブゾーン8に分割される。
【0096】
サブゾーン7及び8のパワーは、面積割合パーセンテージp1及び1−p1それぞれで重み付けしたゾーン6の平均パワーがレンズ5の2つの主経線パワーの小さい方と等しくなるよう選択される。
【0097】
図4に、欧州特許第1 194 797号明細書によるさらに別の二重焦点レンズ9の地形プロファイルを部分断面で概略的に示す。このレンズ9は、対応の主サブゾーン11及び位相サブゾーン12を有する同一ゾーン10から成る。図4に示す二重焦点レンズ9は、例示的に、図3に示すレンズ5と同じ主経線パワーを有するが、2つの主経線パワーの小さい方と大きい方との間の強度分割が異なる。これは、レンズ5の主サブゾーン7の屈折パワーがレンズ9の主サブゾーン11の屈折パワーとは異なり、位相サブゾーン8及び12の屈折パワーもそれぞれ異なることを意味する。
【0098】
図5に概略図で、本発明による多焦点レンズ13の実施形態の長手方向断面を示し、この図ではレンズ13の一部のみを示す。レンズ13は、三重焦点レンズであり、したがってn=3個の主経線パワーを有する。レンズ13は、第1レンズ部15及び第2レンズ部16を有する。第1レンズ部15は、複数の環状ゾーン6で構成される。各環状ゾーン6は、主サブゾーン7及び位相サブゾーン8を有する。ゾーン6の位相サブゾーン8の光学表面、したがって各全環状表面の面積割合パーセンテージp1、したがってサイズは、例えば、ゾーン6の総面積の8%〜17%である。これとは対照的に、主サブゾーン7の光学表面の面積割合、したがってサイズは、1−p1と等しい。面積割合に関して、これはレンズ13の前面14に対して考えたものである。ゾーン6の環状領域である全体光学表面151は、同じくゾーン10の環状領域である全体光学表面161と同様にみなされる。
【0099】
レンズ13は、第2レンズ部16が複数の同一環状ゾーン10を有するよう構成され、ここでもまた、各ゾーン10は主サブゾーン11及び位相サブゾーン12を有する。ここでも、レンズ13の前面14に対して、位相サブゾーン12の面積割合p2及び主サブゾーン11の面積割合1−p2が形成される。例えば、ここでも、面積割合p2は、ゾーン10の総面積の8%〜17%である。図によれば、レンズ13の半径方向に、したがって図5による表示で水平軸A’に対して垂直上方に、ゾーン6及び10が交互に、したがって1つおきに配置されることが分かり得る。したがって、レンズ13は、相互に隣接して1つおきに配置した異なるゾーン6及び10の組み合わせとして構成される。本実施形態では、各ゾーン6がそれぞれ1つの主サブゾーン7のみ及びそれぞれ1つの位相サブゾーン8のみを有するようになっており、特に、ゾーン6の位相サブゾーン8がゾーン6の環状形状の縁部に形成され、特にゾーン6のソーン外縁部の半径方向外側に隣接して形成されるようになっている。類似の構成が、第2レンズ部16のゾーン10にも当てはまる。
【0100】
第1レンズ部のゾーン6及び/又は第2レンズ部のゾーン10は、主サブゾーン7及び/又は11の数及び/又は位相サブゾーン8及び/又は12の数に関して異なって形成されるようにすることもできる。同様に、ゾーン6及び10それぞれの位相サブゾーン8及び12それぞれの局所位置も異なっていてよい。
【0101】
レンズ13の前面14は、地形的及び光学的段差又は途切れなく形成され、これは前面14の輪郭が連続していることを意味する。さらに、このような無段差に形成されたレンズ13は、レンズ13の裏の波面が連続していることも意味する。前面14の輪郭は、本実施形態において、ゾーン6の位相サブゾーン8の輪郭の方向がレンズ13の後面17に向かい、半径方向で後続のゾーン10の主サブゾーン11の輪郭につながるよう構成される。同じことが、全てのゾーン6及び全てのゾーン10に当てはまる。これは例示である。全ての位相サブゾーン8の輪郭がそれぞれ前方に向いて延びるようにすることもできる。これらの全てが1方向に向いていることが重要である。
【0102】
本実施形態では、レンズ13の後面17は非球面状に形成される。後面17が前面14に対応して形成され、前面14が図5の表示による後面17の非球面構成に対応して形成されるようにすることもできる。したがって、半径方向の順で、レンズ13は特に、第1レンズ部15のゾーン6に相当する奇数ゾーンと、第2レンズ部16のゾーン10に相当する偶数ゾーンとから成る。ゾーン6の光学表面151は、ゾーン10の光学表面161と等しいサイズである。さらに、全てのゾーン6の光学表面151は等しいサイズである。これに対応することが、全てのゾーン10の光学表面161に当てはまる。
【0103】
図9に拡大図で、本発明によるレンズのさらに別の実施態様の前面14の輪郭又はプロファイルを他のサイズ比に関して一定の縮尺で示す。無段差構成であることが分かり得る。
【0104】
図6に、相対強度Iをレンズ13のパワーDの関数として表す図を示す。したがって、図6は、図5に示すレンズのTFR又は軸方向PSFを示し、結果はレンズ直径6mmに該当する。図5に示すレンズ13の奇数ゾーン6は、相対強度40%の図3に類似のレンズによる二重焦点レンズ部15に対応する。図5に示すレンズ13の偶数ゾーン10は、相対強度50%の図4に類似のレンズによる二重焦点レンズ部16に対応する。明らかなように、図5に示すレンズ13は、図3及び図4に示す2つのレンズの同一遠焦点(例えば20ジオプター)と同一近焦点(例えば24ジオプター)との間の中心に弱強度焦点を有する。実線曲線K1は、レンズ13の主経線パワーの相対強度を示す。曲線K2は、相対遠用強度50%のゾーン6(レンズ部15)のみを有するレンズの相対強度を示す。曲線K3は、相対遠用強度40%のゾーン10(レンズ部16)のみを有するレンズの相対強度を示す。視認性を高めるために、2つの二重焦点レンズ部15及び16の曲線K2及びK3を、それぞれ0.1ジオプター及び0.2ジオプターだけ変位させる。
【0105】
欧州特許第1 194 797号明細書には、主サブゾーンのパワーD及び位相サブゾーンのパワーDを小さい方のパワー(遠用パワー)の所望の相対強度で決定する方法が記載されている。説明されているように、これらのパワーは、レンズの環状ゾーン全体に対する位相サブゾーンの面積割合p及び主サブゾーンの面積割合(1−p)それぞれに応じても決まる。
【0106】
図7は、ゾーン全体における主サブゾーンの例示的な面積割合及び例示的な加入パワー4ジオプターに関する、遠用パワーの相対強度Iに応じた主サブゾーンの屈折パワーDと所望の遠用パワーとの差Difの関連を示す。この関連は、環状ゾーン全体に対する主サブゾーンの任意の面積割合について欧州特許第1 194 797号明細書に従って決定することができる。例えば、曲線K4は、加入パワー4ジオプター及び主サブゾーンの面積割合95%について、曲線K5は、加入パワー4ジオプター及び主サブゾーンの面積割合90%について、曲線K6は加入パワー4ジオプター及び主サブゾーンの面積割合85%についてである。曲線K7は、加入パワー2ジオプター及び主サブゾーンの面積割合95%に該当する。
【0107】
簡単及び明確化のために、ここで以下のように定義する。
【0108】
個々のゾーン6又はゾーン10が、屈折パワー及び回折パワーを有するレンズ13に相当しないことは明らかである。正しくは、屈折パワー及び回折パワーを有するレンズ13は、少なくとも2つのゾーン6及び10から成る。しかしながら、ここでは簡単のために、大きなパワー及び小さなパワーを有するゾーン6若しくは二重焦点レンズ部15又はゾーン10若しくは二重焦点レンズ部16に言及する。
【0109】
図8は、奇数ゾーン6が相対遠用強度86%を有し、偶数ゾーン10が相対遠用強度40%を有する、図5に示す三重焦点レンズのTFR又は軸方向PSFを示す。明らかなように、このレンズ13では、中間焦点の強度がかなりの大きさである。実線曲線は、波長550nmの単色光に関するパワーの強度分布を示す。図7は、破線曲線による450nm〜650nmの波長範囲におけるガウス分布による多色光についての結果も示す。ここから、3つの主経線パワーのうち最小パワーが軸上色収差を一切有しないことが分かり得る。図8の結果は、レンズ直径6mmに該当する。
【0110】
図9に、すでに上述したように、遠用パワーの20ジオプターの眼内レンズ13の前面14の断面を一定の縮尺で示す。ゾーン6(奇数ゾーン)及び10(偶数ゾーン)の主サブゾーン部は、それぞれ85%である。ゾーン6の相対遠用強度は86%であり、ゾーン10の相対遠用強度は40%である。レンズ13の屈折率は1.46である。図9から明らかなように、このレンズ13は地形的段差を有するのではなく、主サブゾーン間に滑らかでほぼ認識不可能な移行部しか有さず、これらの移行部は各位相サブゾーンにより形成される。従来の回折レンズとは異なり、本発明のレンズは地形的段差を一切有しない。これらの地形的段差は、個々のゾーンの波面間に光路長差を作るために回折レンズで必要とされる。したがって、回折レンズの裏の波面は不連続であるが、本発明によるレンズの裏の波面は連続している。
【0111】
図10は、3つの異なるレンズ部、特に二重焦点レンズ部15、16、及び23で構成した四重焦点レンズ18の実施態様を概略的に示す。レンズ部15及び16はそれぞれ、すでに上述したように複数のゾーン6及び10を有する。第3レンズ部23も複数のゾーン19を有し、ゾーン19はさらに主サブゾーン20及び位相サブゾーン12でそれぞれ構成される。レンズ部15、16、及び23は、3つの異なる相対遠用強度を有する。遠用強度は、10%を超える差で対として形成される。図10に示すレンズ18において、半径方向の順に1、4、7…(1+3m)番目のゾーンはゾーン6であり、さらに、2、5、8…(2+3m)番目のゾーンはゾーン10であり、最後に、3、6、9…(3+3m)番目のゾーンはゾーン19であり、これはサブゾーン20及び21を有する(m=0、1、2、…)。これら3つのそれぞれが二重焦点のレンズ部15、16、及び23はそれぞれ、本実施形態では同じ遠用及び近用パワーを有する。3つのレンズ部15、16、及び23の少なくとも2つはそれぞれ、異なる相対遠用強度及び相対近用強度それぞれを有する。位相サブゾーン21の光学表面の面積割合パーセンテージp3、したがってサイズは、特に8%〜17%である。したがって、主サブゾーン20の割合1−p3は83%〜92%である。ゾーン6、10、及び19の光学表面151、161、及び191は等しいサイズである。ゾーン19は、全てが等しいサイズの光学表面191を有し、それらは環状表面である。
【0112】
図10に示すレンズのTFR又は軸方向PSFを図11に示す。この例では、1、4、7、…番目のゾーン6は、相対遠用強度86%を有し、2、5、8、…番目のゾーン10は、相対遠用強度75%を有し、3、6、9、…番目のゾーン19は9%を有する。図11の結果は、レンズ直径5.75mmに該当する。実線曲線は、この場合も波長550nmの単色光でのパワーの強度を示し、破線は、340nm〜650nmの多色光の強度(ガウス分布)を示す。
【0113】
ゾーン6、10、及び19それぞれを他の相対遠用強度及び相対近用強度にすると、図11の4つの最大値で他の相対強度が得られる。
【0114】
欧州特許第1 194 797号明細書ですでに説明されているように、大きい方のパワーD(近用パワー)と小さい方のパワーD(遠用パワー)との差ΔD、すなわち、少なくとも1つの主サブゾーン及び少なくとも1つの位相サブゾーンをそれぞれ有する環状ゾーンから形成した二重焦点レンズの加入パワーは、次式の通りである。
【0115】
ΔD=8λN/B (1)
【0116】
方程式1中、λは設計波長(例えば550nm)であり、Nは面積又はゾーン全体が等しい環状ゾーンの数であり、Bは環状ゾーンが位置するレンズの直径である。したがって、直径B上の各面積Fが等しいN個のゾーンの場合、加入パワーΔDは、次式により得られる。
【0117】
ΔD=2λπ/F (2)
【0118】
したがって、加入パワーは、ゾーン全体の表面積Fに反比例する。欧州特許第1 194 797号明細書に示すように、ゾーン全体は、主サブゾーンの屈折パワーD及び位相サブゾーンの屈折パワーDにより得られるパワープロファイルを有する。このパワープロファイルは、面積Fの各ゾーンで反復するので、パワープロファイルはFで周期的であると呼ばれる。
【0119】
相対遠用強度I及び所与の加入パワーを有する欧州特許第1 194 797号明細書によるレンズのゾーンを、ここで相対遠用強度I及び同じ加入パワーを有する欧州特許第1 194 797号明細書によるレンズのゾーンと交互に組み合わせた場合、欧州特許第1 194 797号明細書による両方のゾーンは、平均屈折パワーD(遠用パワー)を有する。しかしながら、相対遠用強度が異なることにより、2つのゾーンはそれぞれ、主サブゾーン及び位相サブゾーンで異なるパワーを有する。図7には、相対遠用強度に対する主サブゾーンのパワーの依存を、加入パワー4ジオプターを有する二重焦点レンズについて例示的に示す。位相サブゾーンのパワーは、レンズの遠用パワー(ゾーン全体の平均パワーに対応する)及び主サブゾーンのパワーから計算することができる。
【0120】
欧州特許第1 194 797号明細書に示すように、以下の関係は、平均遠用パワーDav及び屈折パワーD及びDに当てはまる。
【0121】
av=D(1−p)+Dp (3)
【0122】
式中、pはゾーン全体に対する位相サブゾーンの面積割合パーセンテージであり、Dは主サブゾーンの屈折パワーであり、Dは位相サブゾーンの屈折パワーである。例として、遠用パワーの相対強度が70%であり、遠用パワーが20ジオプターとなり、さらに、位相サブゾーンの割合pが0.15又は15%となり、主サブゾーンの割合がこのとき85%であることが望まれる。図7に基づき、主サブゾーンパワーと遠用パワーとの差について1.8ジオプターの値が得られる。これにより、値D=21.8ジオプターが得られ、上記公式3を用いて、値D=9.8ジオプターが得られる。類似の方法で、相対遠用強度70%の代わりに60%について、値D=22.2ジオプター及びD=7.53ジオプターが得られる。
【0123】
相対遠用強度I及びIの差が大きくなければ、主サブゾーン及び位相サブゾーンにおける各差は、図7又はこれらの例から明らかなように小さい。これらの場合、相対遠用強度Iを有するゾーン全体は相対遠用強度Iを有するゾーン全体と僅かに異なる。したがって、パワープロファイルの周期性が実質的に維持される。すなわち、パワー間の差は、サブゾーンのパワーが僅かに異なる個々のゾーンの面積Fによりさらに決定される。したがって、I=40%のゾーンをI=50%のゾーンと組み合わせたレンズに該当する図6は、面積Fに対応する加入パワーを有する二重焦点レンズのTFR又は軸方向PSFを実質的に示す。2つの連続したゾーン6及び10のサブゾーンにおける僅かな差は、このレンズの特性を僅かにしか変化させない。
【0124】
しかしながら、連続したゾーンにおける相対遠用強度I及びIが実質的に異なる場合、Fの周期性の乱れが大きい。正しくは、2つの隣接ゾーンの表面積により、したがって2Fにより与えられるパワープロファイルの周期性が生じる。そのため、相対遠用強度I及びIがそれぞれ実質的に異なるような全ゾーンから成るレンズ13又は18は、次式により与えられる加入パワーを有する。
【0125】
ΔD=2λπ/2F (4)
【0126】
2つのレンズ部15及び16を有する例示的なレンズ13の個々のパワーは、ここで以下のように指定される。
【0127】
は、レンズ13の主経線パワー(遠用パワー)のうち最小パワーである。
【0128】
G1は、第1ゾーン6(及び第3ゾーン、第5ゾーン…)の主サブゾーン7における屈折パワーであり、DS1は、第1(及び第3、第5…)ゾーン6の位相サブゾーン8における屈折パワーである。
【0129】
は、第1(及び第3、第5…)ゾーン6全体に対する位相サブゾーン8の面積割合である。
【0130】
G2は、第2ゾーン10(及び第4ゾーン、第6ゾーン…)の主サブゾーン11における屈折パワーであり、DS2は、第2(及び第4、第6…)ゾーン10の位相サブゾーン10における屈折パワーである。
【0131】
は、第2(及び第4、第6…)ゾーン10全体に対する位相サブゾーン11の面積割合である。
【0132】
この場合、次式が適用される。
【0133】
=DG1(1−p)+DS1=DG2(1−p)+DS2 (5)
【0134】
第1レンズ部15のゾーン6及び第2レンズ部16の隣接ゾーン10から成る全体ゾーン22(図13及び図14)の2つの主サブゾーンDG1及びDG2と位相サブゾーンDS1との平均屈折パワーDG12は、次式により与えられる。
【0135】
【数2】
【0136】
パワーDG12は、表面積2Fを有する全体ゾーン22の主サブゾーンのパワーに相当し、表面積2Fを有する全体ゾーンの位相サブゾーンのパワーはDS2であるが、表面積2Fを有する全体ゾーン22に対するこの位相サブゾーンの面積の割合は、このときp12であり、次式となる。
【0137】
12=p/2 (7)
【0138】
これは、ここで倍面積2Fが基準となるからである。
【0139】
2つの異なるレンズ部15及び16の各同一表面積F(等しいサイズの光学表面)の2つのゾーン6及び10を比較することにより、さらに、表面積2Fを有する全体ゾーン22がここで得られる。これらのゾーン22は、平均主サブゾーンパワーDG12を有し、これらの組み合わせたゾーンの位相サブゾーンパワーはDS2である。これらの位相サブゾーンは、このとき全体ゾーン22に対して割合p12を有する。この全体ゾーン22の面積は、2つの個々のゾーン6及び10の面積の2倍の大きさであるので、方程式2によるこれらの組み合わせたゾーン22の加入は半分になる。
【0140】
したがって、表面積2Fを有する全体ゾーン22は、方程式6による平均パワーである主サブゾーンパワーDG12を有する。このゾーンの位相サブゾーンパワーはDS2である。したがって、パワーDG12が均一で一様なパワーであれば、表面積2Fを有するゾーン22は、方程式4による加入パワーΔDを有する二重焦点レンズのゾーンとなる。
【0141】
表面積2FとパワーDG1及びSS1とを有するゾーン6を表面積2F及びパワーDG2及びDS2を有するゾーン10と組み合わせることにより、3つの主経線パワーを有して主経線パワーのうち最小パワーが軸上色収差のない屈折パワーであるレンズが得られる。
【0142】
欧州特許第1 194 797号明細書によるレンズの同様のゾーン(ゾーン6又はゾーン10)の組み合わせから、二重焦点レンズが得られる。上述のようにそれぞれ異なる相対遠用強度を有し、特に特定の遠用強度差が10%を超えるゾーン6及び10の組み合わせから、三重焦点レンズ13が得られる。
【0143】
特に、ゾーン6及びゾーン10を相互に組み合わせて、得られるレンズ13がゾーン6のみ又はゾーン10のみから成るレンズと同じ遠用パワー及び同じ近用パワーを有するようにする。したがって、ゾーン6及びゾーン10の相対遠用強度の差が十分に大きい場合、得られるレンズは三重焦点であり、すなわち追加の中間パワーを有する。これら3つの主経線パワーのうち最小パワーが軸方向色収差を一切有しないようにするために、ゾーン6及び10の平均屈折パワーは、この最小パワーと同一でなければならない。類似のことが、4つ以上の主経線パワーを有する本発明のレンズ、例えば四重焦点レンズ18(図10)に当てはまる。これとは対照的に、欧州特許第1 194 797号明細書による三重焦点レンズのゾーンは異なる平均屈折パワーを有する。
【0144】
したがって、それぞれ異なる相対遠用強度及びそれぞれ同一の平均屈折パワーを有するゾーンをここで図10に従って組み合わせた場合、四重焦点レンズ18の実施態様が得られる。レンズ18は前面14’を有し、環状ゾーン19で構成した第3レンズ部23において、位相サブゾーン21は、ゾーン19の総面積に対して面積割合パーセンテージp3を有する。図11に、このようなレンズ18のTFR又は軸方向PSFを示す。相対強度I及びパワーDがプロットされている。この例では、3つの異なるゾーン6、10、19又はレンズ部15、16、及び23の相対遠用強度は、それぞれ86%、75%、及び9%である。図11の結果は直径5.75mmに該当する。実線曲線は、この場合も波長550nmの単色光についてであり、破線曲線は、450nm〜650nmの多色光について(ガウス分布)である。
【0145】
第1レンズ部15のゾーン6の半径方向位置に応じて、面積割合p1は、内部ゾーン6における位相サブゾーン7の割合p1がさらに外側のゾーン6における割合p1とは異なり得るよう変わるようにすることができる。同じことが、レンズ部15のゾーン10に、またもしあればレンズ部23のゾーン19に当てはまる。
【0146】
同様に、各ゾーン6、10、又は19のパワー、したがってパワープロファイルは、連続的であっても不連続であってもよい。これは一定であっても半径に応じてもよい。
【0147】
概して、それぞれn個の異なる相対遠用強度I、I、…I及びそれぞれ同一の平均屈折パワーを有する少なくとも1つのゾーンをそれぞれが備える、n>2個の異なるゾーン又は異なるレンズ部の組み合わせから、最小パワーが軸方向色収差を一切有しない、またn個の異なるゾーン全ての平均屈折パワーに対応する、(n+1)個の主経線パワーを有するレンズが得られる。
【0148】
n>2個の主経線パワー及びn−1個のレンズ部を有するこれまで述べたレンズの全てにおいて、個々のレンズ又はレンズゾーンの遠用パワー及び加入パワーは同一であり、ゾーンの相対遠用及び近用強度のみがそれぞれ異なっていた。
【0149】
それぞれ異なる相対遠用強度、それぞれ同一の平均屈折パワー、但し異なる加入パワーを有する、n>2個の主経線パワー及びn−1個のレンズ部を有するレンズも、本発明に包含される。一例は、レンズ5にも従ったレンズであり、これは図3に示す奇数ゾーン6を含み、遠用パワーが20ジオプター、加入パワーが4ジオプター、相対遠用強度が40%である。このレンズの偶数ゾーン10は、図4に示すレンズのゾーンであり、遠用パワー20ジオプター、加入パワー2ジオプター、及び相対遠用強度60%を有する。このレンズのTFR又は軸方向PSFを図12に示す。450nm〜650nmの多色光に関する結果(破線曲線)から、この場合も、主経線パワーのうち最小パワーが軸方向色収差を一切有しないことが分かり得る。実線曲線は、波長550nmの単色光についてのものである。この結果は、レンズ直径3.6mmに該当する。
【0150】
説明したレンズの全てで、種々のパワーのうち最小パワー(遠用パワー)に軸方向色収差がないことを強調する。この事実は、対応の関数を多色光について同じく示す図8図11図12、及び図15から明らかである。
【0151】
レンズの個々のパワーの相対強度は、個々のゾーンの相対遠用強度を対応して選択することにより変えることができる。したがって、個々のパワーにおいて特定の相対強度が望まれる場合、それは、ゾーンの個別相対遠用強度及びゾーンの個別加入パワー等のパラメータを体系的に変えることにより達成することができる(「試行錯誤法」)。
【0152】
図13に、断面線V−Vに従った長手方向断面で図5に部分的に示すように、ゾーン6及び10の面積サイズに関して特に一定の縮尺ではないレンズ13の概略平面図を表す。第1レンズ部15、したがって図13にいくつかを示すゾーン6の和が、二重焦点レンズ部15を構成する。これに対応して、図13に示す実施態様では、第2レンズ部16は複数のゾーン10で形成され、同じく二重焦点レンズ部を構成する。したがって、3つの主経線パワーを有するレンズ13は、2つの二重焦点レンズ部15及び16で構成される。これらはそれぞれ、複数のゾーン6及び10それぞれを有する。これらは相互に交互に配置される。第1レンズ部15のゾーン6は全て、同一の面積Fを有する。同様に、第2レンズ部16のゾーン10は全て、同じ面積Fを有する。これは、レンズ13の前面14における面積構成に関して見ることができる。したがって、本実施形態では、2つの隣接ゾーン6及び10は、同じ面積Fを有する2つの異なる二重焦点レンズ部15及び16から形成される。2つの異なるレンズ部15及び16の2つの隣接ゾーン6及び10は、全体ゾーン22を構成する。このような全体ゾーン22の主サブゾーンパワー及び位相サブゾーンパワーに関するその平均屈折パワーに関しては、上記説明を参照されたい。図14において、さらに別の断面図で、全体ゾーン22を表す部分断面を示す。このような全体ゾーン22は、ゾーン6とゾーン10との間のレンズ13の他の場所に形成することもできる。したがって、図14に示す構成及び前述の方程式の関連は、ゾーン6及びゾーン10を有するさらに他のゾーン対全てにも当てはまる。主サブゾーン7及び11と位相サブゾーン8とにより、全体ゾーン22の全体主サブゾーンが形成される。半径方向外側のサブゾーンを局所的に表す位相サブゾーン12は、全体ゾーン22の全体位相サブゾーンである。
【0153】
図16に、本発明による四重焦点眼内レンズのさらに別の例を示す。このレンズ24は、図13及び図14に対応する構成である。したがって、レンズ24は、2つの二重焦点レンズ部25及び26のみで構成される。レンズ部25は、平均屈折パワーが21ジオプターで2つのパワーのうち大きい方が24.5ジオプターであるよう構成した複数の、特に2つの環状ゾーン27を含む。したがって、加入パワーは3.5ジオプターである。レンズ部26は、平均屈折パワーが同じく21ジオプターであるよう形成した複数の、特に2つの環状ゾーン28を含む。しかしながら、加入パワーは1.75ジオプターである。ゾーン27及び28の全てにおいて、相対遠用強度は50%である。したがって、二重焦点レンズ部25及び26の全てが、2つの主経線パワーで等しく高い強度を有する。ゾーン27及び28は、半径方向に交互に配置される。
【0154】
ここでも、レンズ24の光学表面を表す前面14’’が形成される。しかしながら、本実施形態では、ゾーン27及び28は、それぞれ1つの主サブゾーン29又は31のみ及びそれぞれ1つの位相サブゾーン30又は32のみを有する。位相サブゾーン30及び32は、各ゾーン27及び28それぞれの各ソーン外縁部の半径方向外側に隣接して配置される。ゾーン27は全体光学表面251を有し、ゾーン28は全体光学表面261を有する。光学表面251及び261は異なるサイズであり、表面261は、表面251よりも少なくとも50%、特に100%大きい。したがって、半径方向外側に数えて奇数のゾーン28は、偶数ゾーン27よりも面積が実質的に大きい。位相サブゾーン30及び32の面積割合パーセンテージp4及びp5は、8%〜17%である。
【0155】
ここで、このレンズは、43ジオプターのパワーを有し前房深度4mmである単一面の角膜の後ろに事実上位置決めされる(前房深度は、角膜の中心と眼内レンズの前面との間の距離である)。眼内レンズを包囲する浸漬媒体の指数は1.336(標準値)である。角膜及び眼内レンズから成るシステムの可変パワーを図15に示す。このパワーは「眼」パワー("ocular" power)とも称する。図15から明らかなように、それぞれ同一の遠用パワーを有するがそれぞれ異なる加入パワー及び特に異なる光学表面サイズを有する2つのレンズ部25及び26の組み合わせから、四重焦点眼内レンズが得られる。4つのパワーのうち最小パワーは、レンズ部25及び26の最小パワーに相当し、軸方向色収差がなく、4つのパワーのうち最大パワーは、レンズ部25の2つのパワーのうち大きい方に相当し、4つのパワーのうち2番目に小さいパワーは、レンズ部26の2つのパワーのうち大きい方に相当する。4つのパワーのうち最大パワーと2番目に小さいパワーとの間に位置するさらに別のパワーは、レンズのゾーン全ての間の干渉現象に起因する。したがって、図15及び16に示す例は、2つの二重焦点レンズ部25及び26のみの組み合わせにより四重焦点レンズも実現できることを示す。
【0156】
本明細書において、本発明によるレンズの好ましい実施態様を例示的に説明した。当然ながら、本発明は説明した実施形態に制限されない。当業者には、本発明の基本概念から逸脱しないさらに他の実施形態があることが即座に理解できる。
【0157】
図17におけるレンズ33の図には、最初の2つのレンズ部に半径方向に隣接した外側の第3二重焦点レンズ部が表示されていない。この第3レンズ部は、主サブゾーン及び位相サブゾーンをそれぞれが有する複数のゾーンから成る。好ましくは、この第3レンズ部のゾーンは、3.75ジオプターの加入パワーを有する。この第3レンズ部のゾーンの相対遠用強度は65%であることが好ましい。好ましくは、この第3レンズ部は、レンズ全体の4.245mm〜6mmの直径範囲内に延びる。
【0158】
図17において、それぞれが主サブゾーン及び位相サブゾーンから成る第1レンズ部のゾーン34及び第2レンズ部のゾーン35が形成される。明らかなように、半径方向で、第1レンズ部のゾーン34は、第2レンズ部のゾーン35と交互に配置される。図示の実施態様では、第1レンズ部は7つのゾーン34から成るよう構成され、第2レンズ部も7つのゾーン35から成るよう構成される。第1レンズ部の加入パワーは3.75ジオプターであり、第2レンズ部の加入パワーは3.1ジオプターである。2つのレンズ部は、レンズ33において直径4.245mmまで延びる。
【0159】
第1レンズ部のゾーン34の相対遠用強度は、本実施形態では90%であり、第2レンズ部のゾーンの相対遠用強度は40%である。全てのゾーンの平均屈折パワーは同一である。主サブゾーンの光学表面の面積割合は、全てのゾーンで90%である。これは、最初の2つのレンズ部及び第3レンズ部の両方に当てはまる。
【0160】
図17における図からさらに理解できるように、第1レンズ部の第1ゾーン34の半径方向厚さd1は、第2レンズ部の後続ゾーン35の半径方向厚さd2よりも大きい。さらなるゾーン34及び35に対応するさらなる半径方向厚さd3〜d5が図示されている。半径方向厚さd1〜d5等は、全てのゾーン34が同じ表面サイズを有し、全てのゾーン35がゾーン34の表面サイズとは異なる同じ表面サイズを有するよう構成される。
【0161】
さらに好ましい一般的な実施形態では、全ての環状ゾーン34が同じ表面サイズを有する。さらに、全ての環状ゾーン35が、環状ゾーン34の表面サイズとは異なる同じ表面サイズを有する。したがって、半径方向厚さd1〜d5等は、レンズの半径に伴い異なり減少する。
【0162】
図17における図に基づき、図18に示す図に、図17に示すレンズの4つの主経線パワーについて相対強度Iの強度分布を示す。相対強度分布を有する4つの実質的頂点又はピークが図示されている。
【0163】
図17における図に基づき、外側の第3レンズ部を有さず、したがって最初の2つのレンズ部から成るよう構成しただけである四重焦点レンズも提供することができる。この場合、さらに他のレンズ部は設けられない。
【0164】
図17における図と、それぞれが二重焦点である3つのレンズ部から成る四重焦点レンズの説明とに基づき、最初の3つのレンズ部について加入パワーの値がこの場合も3.75、3.1、及び3.33又は3.75である対応のレンズを提供することができる。上記説明とは対照的に、ここでは、相対遠用強度を第1レンズ部のゾーン34で85%、第2レンズ部のゾーン35で39.5%、第3レンズ部のゾーンで65%とすることができる。ここでも、代替的に、最初の2つのレンズ部のみから成る四重焦点レンズを提供することができる。
【0165】
再びこれとは対照的に、四重焦点レンズに関するさらに2つの実施態様を提供することができ、これらの実施態様では相対遠用強度のみが異なり、第1レンズ部で82%、第2レンズ部で41.75%、第3レンズ部で65%である。ここでも、最初の2つのレンズ部のみから成るよう構成した四重焦点レンズを提供することができる。
【0166】
さらに別の代替的な四重焦点レンズとして、この場合も前述の例に対して遠用強度のみが異なるようなレンズを提供することができる。ここで、第1レンズ部の相対遠用強度を86.5%、第2レンズ部の相対遠用強度を40%とすることができる。第3レンズ部がある場合、その相対遠用強度は、特にこの場合も65%である。
【0167】
実施態様の全てにおいて、第1レンズ部の最も内側の第1ゾーンは環状ともいう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18