(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964308
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】金属検出システムを操作する方法、および金属検出システム
(51)【国際特許分類】
G01V 3/10 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
G01V3/10 F
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-532107(P2013-532107)
(86)(22)【出願日】2011年9月21日
(65)【公表番号】特表2013-542424(P2013-542424A)
(43)【公表日】2013年11月21日
(86)【国際出願番号】EP2011066395
(87)【国際公開番号】WO2012045578
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2014年7月22日
(31)【優先権主張番号】10186895.8
(32)【優先日】2010年10月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511241516
【氏名又は名称】メトラー−トレド・セーフライン・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】デルングス,マックス
【審査官】
北川 創
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−251712(JP,A)
【文献】
特開2005−345434(JP,A)
【文献】
米国特許第05994897(US,A)
【文献】
中国特許出願公開第1603802(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00 − 99/00
G01N 27/72 − 27/90
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択可能(selectable)送信機周波数(transmitter frequency)(fTX)を有する送信機信号(s1)を供給する送信機ユニット(1)に接続される送信機コイル(21)を有し、受信機ユニット(3)に出力信号(s22、s23)を供給する第1および第2の受信機コイル(22、23)を有する平衡(balanced)コイルシステム(2)を備える金属検出システムを操作する方法であって、前記受信機コイル(22、23)は、前記金属検出(metal detection)システムが平衡状態にある場合に、互いに補償し(compensate one another)、製品が前記平衡コイルシステム(2)内にある場合に、信号処理ユニットに転送される(forwarded to)出力信号を供給し、前記信号処理ユニットは、少なくとも製品信号(product signal)の成分(component)を抑制し、前記製品に含まれる金属汚染物質(MC1、MC2、…)によって引き起こされる信号成分を送達する、方法において、
a)少なくとも2つの送信機周波数(fTX1、fTX2)のそれぞれに関する1つまたは複数の金属汚染物質(MC1;MC2;…)と、前記金属汚染物質(MC1、…)の少なくとも2つの粒子サイズとに関する関連信号の位相および大きさを求めるステップ、
b)前記少なくとも2つの送信機周波数(fTX1、fTX2)について、特定の製品(P)に関する関連信号の位相および大きさを求めるステップ、
c)前記少なくとも2つの送信機周波数(fTX1、fTX2)について、前記1つまたは複数の金属汚染物質(MC1;MC2;…)について確立される情報と、前記製品(P)について確立される情報とを比較するステップ、
d)前記1つまたは複数の汚染物質(MC1;MC2;…)の最小サイズの粒子の信号成分が前記製品信号の位相および振幅とは位相および振幅が最も異なる好ましい送信機周波数(fTX1またはfTX2)を求めるステップ、
e)各金属汚染物質(MC1;MC2;…)について、前記特定の製品(P)を測定するための前記好ましい送信機周波数(fTX1またはfTX2)を選択するステップ、ならびに
f1)選択した送信機周波数を交互に(alternatively)適用し、それに応じて(accordingly)、前記受信機ユニット(3)で、選択した送信機周波数をフィルタ処理するステップ、または
f2)選択した送信機周波数を同時に適用し、それに応じて、前記受信機ユニット(3)で、選択した送信機周波数をフィルタ処理するステップ
を含む方法。
【請求項2】
a)少なくとも第1の金属汚染物質(MC1、…)について第1のアレイの少なくとも第1および第2の曲線を確立するステップであって、各曲線が、前記選択可能送信機周波数(fTX1;fTX2)のうちの1つについて、前記第1の金属汚染物質(MC1、…)の漸進的に(progressively)増大する粒子サイズに関する信号の位相および大きさを表す、ステップ、ならびに
b)最小サイズの汚染物質粒子の信号成分が前記製品信号の位相および振幅とは位相および振幅が最も異なる前記好ましい送信機周波数(fTX1またはfTX2)を求めるために、少なくとも前記第1の金属汚染物質(MC1、…)について確立される情報と、各送信機周波数(fTX1;fTX2)について前記製品(P)について確立される情報とを比較するステップ
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
情報、好ましくは前記第1の曲線アレイが、少なくとも前記第1の金属汚染物質および第2の金属汚染物質(MC1、MC2、…)について確立され、異なる金属汚染物質(MC1、MC2、…)について、同一の送信機周波数(fTX1またはfTX2)について確立された曲線が、第2のアレイに組み合わされる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
各金属汚染物質(MC1;MC2;…)について、前記好ましい送信機周波数(fTX1、fTX2;fTX3;fTX4)が、選択した送信機周波数(fTX)が前記金属汚染物質(MC1;MC2;…)のうちの1つまたは複数について最適となるように求められる請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項5】
前記最小粒子サイズの値が、各金属汚染物質(MC1;MC2;…)について求められ、これらの値が、1つまたは複数の最適な送信機周波数(fTX)を選択するコンピュータプログラムのモジュールに転送され、または好ましくはテーブルにおけるステータス情報を提供するコンピュータプログラムの出力モジュールに転送される請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
異なる金属汚染物質(MC1;MC2;…)を検出するために、選択した送信機周波数(fTX)が、製品(P)の走査中に選択可能シーケンスで交互に適用され、それに応じて受信機ステージでフィルタ処理され、または選択した送信機周波数(fTX)が同時に適用され、それに応じて前記受信機ステージでフィルタ処理される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
a)前記第1のおよび送信機周波数(fTX)について、前記少なくとも第1の金属汚染物質(MC1、…)について、各曲線が、前記金属汚染物質(MC1、…)の異なる粒子サイズについての位相および大きさを測定し、得られる信号ベクトルに基づいて、補間によって必要な曲線を求めることによって確立され、または
b)前記第1のおよび送信機周波数(fTX)について、前記少なくとも第1の金属汚染物質(MC1、…)について、各曲線が、前記金属汚染物質(MC1、…)の1つの粒子サイズのみに関する位相および大きさを測定し、経験データおよび/または関連金属汚染物質(MC1、…)に適合される数学的モデルに基づいて、必要な曲線を求めることによって確立される請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
好ましくは、数学的モデルが、各金属汚染物質(MC1;MC2;…)について提供され、この数学的モデルを用いて、少なくとも1つの信号ベクトルから始めて、前記第1および/または第2のアレイの曲線(the curves of the first and/or second array)が、各金属汚染物質(MC1;MC2;…)について計算される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも第1および第2の送信機周波数(fTX1、fTX2)について、前記製品(P)に関する情報を確立する前記ステップが、前記製品信号のエリア(APS)を定める異なる位相および大きさを有する前記製品信号の様々な成分の検出を含む請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記製品信号の前記エリア(APS)の境界を定める(delimit)前記製品信号の前記エリア(APS)内または弁別器直線(discriminator lines)(D)内で生じる信号が、選択した送信機周波数(fTX)について抑制される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも第1および第2の送信機周波数(fTX1、fTX2)について、一方では前記製品信号の前記エリア(APS)の境界または前記製品信号の前記エリア(APS)の境界を定める前記弁別器直線と、他方では前記第1または第2のアレイの曲線との関連する交点(IPMC1、IPMC2、IPMC3)が求められ、金属汚染物質(MC1;MC2;…)のうちの1つ、そのそれぞれ、またはその組合せについて好ましい送信機周波数(fTX1またはfTX2)を求めるために、前記異なる送信機周波数(fTX1、fTX2)について求められた交点(IPMC1、IPMC2、IPMC3)が比較される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記弁別器直線(D)が、各送信機周波数(fTX)について個々に選択される請求項10、または11に記載の方法。
【請求項13】
前記金属汚染物質(MC1;MC2;…)について確立される情報、および前記製品(P)について確立される情報が、前記金属検出システムのメモリユニットに格納され、前記金属検出システムが新しい測定プロセスのためにセットアップされるときにはいつでもダウンロードされ、または前記金属汚染物質(MC1;MC2;…)および前記製品(P)について必要な情報が、前記金属検出システムが新しい測定プロセスのためにセットアップされるときにはいつでも確立される請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
a)所定の最大偏差を有する製品エリア(APS)を示し、それについて弁別器直線Dが求められ、または
b)所定の弁別器直線D間にある製品エリア(APS)を示す、
製品(P)を有する少なくとも1つのクラスタが形成される請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
製品(P)を有する2つ以上のクラスタが定められ、削減された送信機周波数(fTX1、fTX2)のセットに割り当てられる請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法に従って動作する金属検出システムであって、選択可能送信機周波数(fTX)を有する送信機信号(s1)を供給する送信機ユニット(1)に接続される送信機コイル(21)を有し、受信機ユニット(3)に出力信号(s22、s23)を供給する第1および第2の受信機コイル(22、23)を有する平衡コイルシステム(2)を備え、前記受信機コイル(22、23)は、金属検出システムが平衡状態にある場合に互いに補償し、製品(P)が前記平衡コイルシステム(2)内にある場合に、信号処理ユニットに転送される出力信号を供給し、前記信号処理ユニットは、前記製品信号の少なくとも成分を抑制し、前記製品(P)に含まれる金属汚染物質(MC1;MC2;…)によって引き起こされる信号成分を送達する、金属検出システムにおいて、制御ユニットが、
a)少なくとも2つの送信機周波数(fTX)について、1つまたは複数の金属汚染物質(MC1;MC2;…)について確立される情報と、前記少なくとも2つの送信機周波数(fTX)について、前記製品(P)について確立される情報とを比較し、
b)前記1つまたは複数の汚染物質(MC1;MC2;…)の最小サイズの前記信号成分が前記製品信号の位相および振幅とは位相および振幅が十分に異なる好ましい送信機周波数(fTX)を求め、
c)前記1つまたは複数の汚染物質(MC1;MC2;…)の最小サイズの粒子の前記信号成分が前記製品信号の位相および振幅とは位相および振幅が最も異なる好ましい送信機周波数(fTX)を求め、
d)各金属汚染物質(MC1;MC2;…)について、特定の製品(P)を測定するために前記好ましい送信機周波数(fTX)を選択し、
e)前記選択した送信機周波数を交互に、または同時に適用し、それに応じて前記受信機ユニット(3)で、前記選択した送信機周波数をフィルタ処理するように
設計されたコンピュータプログラムを備えることを特徴とする金属検出システム。
【請求項17】
好ましくは数学的モデルを実装している前記コンピュータプログラムが、
a)少なくとも第1の金属汚染物質(MC1、…)について少なくとも2つの曲線からなる第1のアレイを確立し、1つの送信機周波数(fTX)について確立される各曲線が、前記第1の金属汚染物質(MC1、…)の漸進的に増大する粒子サイズに関する前記信号の位相および大きさを表し、
b)最小サイズの汚染物質粒子の信号成分が前記製品信号の位相および振幅とは位相および振幅が最も異なる前記好ましい送信機周波数(fTX)を求めるために、少なくとも前記第1の金属汚染物質(MC1、…)について確立される情報と、前記製品(P)について確立される情報とを比較するように
設計されている請求項16に記載の金属検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの動作周波数を使用する金属検出システムを操作する方法、およびこの方法を実施する金属検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
望ましくない金属汚染を検出し、拒絶するために産業金属検出システムが使用される。産業金属検出システムは、適切に設置され、運用されるとき、金属汚染を低減し、食品の安全性を向上させる助けとなる。最新の金属検出器は、「平衡コイルシステム」を備える探索ヘッドを使用する。この設計の検出器は、生鮮品や冷凍品などの多種多様な製品中の鉄、非鉄、およびステンレス鋼を含むすべての金属汚染物質タイプを検出することができる。
【0003】
「平衡コイル」原理に従って動作する金属検出システムは通常、非金属フレーム上に巻かれる、それぞれが互いに厳密に平行な3つのコイルを備える。中心に位置する送信機コイルは、磁場を生成する高周波電流で付勢される。送信機コイルのそれぞれの側の2つのコイルは、受信機コイルとして働く。2つの受信機コイルは同一であり、送信機コイルから同じの距離に設置されるので、この受信機のそれぞれに同一の電圧が誘導される。システムが平衡状態にあるときに0となる出力信号を受けるために、第1の受信機コイルが、逆の意味の巻きを有する第2の受信機コイルと直列に接続される。したがって、金属汚染のないときにシステムが平衡状態にある場合、受信機コイルで誘導される、同一の振幅で逆の極性の電圧が互いに打ち消し合う。
【0004】
金属の粒子がコイル構成を通過するとき、まず近くの一方の受信機コイルで、次いで近くの他方の受信機コイルで高周波場が乱される。金属の粒子が受信機コイルを通じて搬送される間、各受信機コイルで誘導される電圧が(ナノボルトだけ)変化する。この平衡の変化の結果、受信機コイルの出力で信号が得られ、その信号を処理し、増幅し、その後で、金属汚染の存在を検出するのに使用することができる。
【0005】
信号処理チャネルは、受信した信号を、互いに90°離れた2つの別々の成分に分割する。得られるベクトルは、コイルを通じて搬送される製品および汚染物質にとって典型的な大きさおよび位相角を有する。金属汚染物質を特定するために、「製品効果」を除去または低減する必要がある。製品の位相が既知である場合、対応する信号ベクトルを低減することができる。したがって、信号スペクトルから望ましくない信号をなくすことにより、汚染物質から生じる信号に関する感度が高まる。
【0006】
したがって、信号スペクトルから望ましくない信号をなくすために適用される方法は、汚染物質、製品、および他の外乱が磁場に対して異なる影響を有し、したがって得られる信号は位相が異なることを利用する。
【0007】
様々な金属または製品が金属検出システムのコイルを通過するときにそれによって引き起こされる信号は、測定する物体の導電率および透磁率に従って、抵抗性成分とリアクタンス性成分の2つの成分に分割することができる。フェライトによって引き起こされる信号は主にリアクタンス性であり、ステンレス鋼からの信号は主に抵抗性である。導電性である製品は通常、強い抵抗性成分を有する信号を引き起こす。
【0008】
異なる起源の信号成分の位相を位相検出器によって区別することにより、製品および汚染物質についての情報を得ることが可能となる。位相検出器、例えば周波数ミキサまたはアナログ乗算器回路は、受信機コイルからの信号などの信号入力と、送信機ユニットによって受信機ユニットに供給される基準信号との間の位相差を表す電圧信号を生成する。したがって、基準信号の位相を製品信号成分の位相と一致するように選択することにより、0である位相差および対応する製品信号が、位相検出器の出力で得られる。汚染物質から生じる信号成分の位相が製品信号成分の位相と異なる場合、汚染物質の信号成分を検出することができる。しかし、汚染物質の信号成分の位相が製品信号成分の位相に近い場合、汚染物質の信号成分が製品信号成分と共に抑制されるので、汚染物質の検出が失敗する。
【0009】
したがって、既知のシステムでは、送信機周波数は、金属汚染物質の信号成分の位相が製品信号成分とは異相となるように選択可能である。
GB2423366Aは、製品中の金属粒子がある場合にそれに異なる周波数で走査を施すように、少なくとも2つの異なる動作周波数間で切り替わるように構成されている装置を開示している。コンベヤベルト上を通過する金属粒子がある場合にそれが2つ以上の異なる周波数で走査されるように、動作周波数が急激に変化する。第1の動作周波数では、金属粒子によって引き起こされる信号成分が製品の信号成分の位相に近く、したがってマスクされる場合、第2の周波数では、金属粒子によって引き起こされる信号成分の位相が製品の信号成分の位相とは異なることになり、したがってこの信号成分を区別することができる。多くの周波数間で切り替えることにより、ある周波数が任意の特定の金属タイプ、サイズ、および向きにとって適切な感度を与えることが予想される。
【0010】
この方法を異なる角度から見ると、1つの最適な周波数設定について、多数の他の周波数設定が適用されていると述べることができ、この方法はかなりの労力を必要とすることが明らかにされる。単一の製品を測定するときに様々な周波数設定を適用する必要がある。このことは、最良の結果を与える周波数設定について、利用可能な測定期間がわずかなものに過ぎないことを意味する。したがって、測定の結果は最適ではないことになる。さらに、すべての選択された周波数設定について測定が実施されるので、かなりの労力を伴って処理される、データの主要な部分が無視されることになる。したがって、信号処理ステージでかなりの労力を必要とするこの方法は、効率が比較的低いことを特徴とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、少なくとも2つの動作周波数を使用する金属検出システムを操作する改良型の方法を提供するという目的と、この方法に従って動作する金属検出システムを提供するという目的とに基づく。
【0012】
具体的には、本発明は、労力を低減し、高い効率で、汚染物質、具体的には金属汚染物質を検出することを可能にする方法を提供するという目的に基づく。
さらに、本発明は、より高い感度で小形金属汚染物質を検出することを可能にする方法を提供するという目的に基づく。
【0013】
さらに、本発明は、有利にはシステムの自動構成のために使用することのできる金属検出システムの能力についての情報を提供する方法を提供するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記および他の目的は、請求項1で定義される金属検出システムの操作のための改良型の方法と、請求項16で定義されるこの方法に従って動作する金属検出システムとによって達成される。
【0015】
本発明の方法は、選択可能送信機周波数を有する送信機信号を供給する送信機ユニットに接続される送信機コイルを有し、受信機ユニットに出力信号を供給する第1および第2の受信機コイルを有する平衡コイルシステムを備える金属検出システムを有利に操作する働きをし、これらの受信機コイルは、金属検出システムが平衡状態にある場合に、互いに補償し、製品が平衡コイルシステム内にある場合に、信号処理ユニットに転送される出力信号を供給し、信号処理ユニットは、製品信号の少なくとも成分を抑制し、製品に含まれる金属汚染物質によって引き起こされる信号成分を送達する。
【0016】
本発明の方法は、少なくとも2つの送信機周波数に関する第1の金属汚染物質と、第1の金属汚染物質の少なくとも2つの粒子サイズとに少なくとも関する関連信号の位相および大きさを求めるステップ、少なくとも2つの送信機周波数について、特定の製品に関する関連信号の位相および大きさを求めるステップ、少なくとも第1の金属汚染物質について確立される情報と、製品について確立される情報とを比較するステップ、少なくとも第1の汚染物質の最小サイズの粒子の信号成分が製品信号の位相および振幅とは位相および振幅が最も異なる少なくとも1つの好ましい送信機周波数を求めるステップ、ならびに特定の製品を測定するための好ましい送信機周波数を選択するステップを含む。
【0017】
したがって、本発明の方法は、1つまたは複数の金属汚染物質タイプの最小の可能な粒子を検出することのできる最適な送信機周波数を得ることを可能にする。したがって、任意の整合性および任意の潜在的な金属汚染物質タイプの製品を伴う任意の測定について、本発明の金属検出システムが最適に構成される。
【0018】
不適切な送信機周波数で製品を測定し、関連データを解析することが回避される。本発明の方法は常に、労力を低減し、高い効率で測定が実施されるように最適な周波数を適用する。測定が不適切な送信機周波数で実施されないので、製品を測定する、すなわち製品中の金属汚染物質を検出するのに利用可能な時間が、ある最適な送信機周波数の適用に投じられる。その結果、個々の金属汚染物質について、より多くの高品質の測定データが利用可能となる。したがって、これにより、測定されるすべての製品および金属汚染物質タイプに関する金属検出システムの感度が著しく改善される。したがって、最適な送信機周波数が、製品内に生じる可能性のあるすべての金属汚染物質タイプについて、かつ選択することのできるすべての送信機周波数についてすべての利用可能な製品について求められる。
【0019】
好ましい実施形態では、少なくとも第1の金属汚染物質に関する第1のアレイの少なくとも2つの曲線が確立される。第1の金属汚染物質の漸進的に増大する粒子サイズについて、信号の位相および大きさを表す別々の送信機周波数について各曲線が確立される。したがって、固定パラメータとして使用され、粒子サイズと共に可変パラメータとして使用される少なくとも2つの別々の送信機周波数について、少なくとも第1の金属汚染物質について曲線または応答軌跡が確立される。特定の送信機周波数について確立される各曲線は、第1の金属汚染物質に関係する第1のアレイの一部である。各金属汚染物質について、少なくとも2つの曲線を有する第1のアレイが確立される。
【0020】
次いで、少なくとも第1の金属汚染物質について確立される情報、ならびに少なくとも第1および第2の送信機周波数について製品について確立される情報は、最小サイズの汚染物質粒子の信号成分が製品信号の位相および振幅とは位相および振幅が最も異なる好ましい送信機周波数を求めるために比較される。
【0021】
情報が複数の金属汚染物質について各送信機周波数について収集された場合、第1および第2の送信機周波数についてすべての金属汚染物質タイプについて確立される完全な情報が、この第1および第2の送信機周波数について確立される製品の情報と比較される。
【0022】
この目的で、各送信機周波数について、第2のアレイが、同一の送信機周波数で記録された異なる金属汚染物質タイプの曲線と共に構築される。次いで、特定の送信機周波数について、第2のアレイと製品情報の重ね合せが構成され、それにより、曲線のどの部分が製品信号のエリアまたは範囲の中または外にあるかを判定することが可能となる。製品信号の範囲外にある曲線の部分は、金属汚染物質の粒子サイズを示し、それは、製品信号と共にマスクまたは抑制されない。
【0023】
したがって、本発明の方法および金属検出システムは、金属汚染物質の最適な送信機周波数を求めることを可能にするだけではなく、検出することのできる金属汚染物質タイプの最小粒子サイズを求めることも可能にする。この有益な情報を使用して、金属検出システムを最も効率的に構成することができる。
【0024】
オペレータは、検出される金属汚染物質タイプを入力することができる。オペレータによって与えられるこの情報に基づいて、金属検出システム内に実装されるコンピュータプログラムがしばしば、2つ以上の金属汚染物質タイプの検出に適する送信機周波数を見つける。したがって、測定プロセスの間、好ましくはオペレータによって設定されたすべての要件を満たす少なくとも2つの送信機周波数のうちの1つで、金属検出システムを構成し、操作することができる。
【0025】
単一の送信機周波数がオペレータの要件を満たさない場合、コンピュータプログラムは、個々の金属汚染物質タイプにとって最適であり、製品の測定中に適用される2つ以上の送信機周波数を選択する。次いで、選択された周波数が、適切な方法に従って適用される。選択された送信機周波数を交互に、または同時に、例えば選択された送信機周波数の混合として適用することができ、それに応じて、選択された送信機周波数が受信機ステージでフィルタ処理される。
【0026】
したがって、利用可能な最大の時間について金属汚染物質の測定を可能にする最適な送信機周波数だけが適用され、その結果、最高の可能な感度で汚染物質を検出することができる。
【0027】
好ましい実施形態では、検出される金属汚染物質タイプに関する最小粒子サイズをオペレータが入力することのできる方式で動作プログラムが設計される。これにより、動作プログラムが、それに関する指定の粒子サイズを検出することができる2つ以上の汚染物質タイプに適した送信機周波数を選択することが可能となる。
【0028】
金属汚染物質タイプおよび製品の必要な情報を様々な方式で収集することができる。情報を事前記憶することができ、情報がダウンロードされる。あるいは、製品および金属汚染物質タイプについて較正プロセスを実施することができ、較正プロセスでは、例えば少なくとも1つの粒子サイズの製品および金属汚染物質が測定される。
【0029】
製品を走査するとき、製品情報を得ることができ、典型的には、製品について、個々の位相および大きさを有する様々な信号成分が生じる。すべての信号成分のベクトルを接続することにより、信号弁別器、典型的には、製品信号の成分を抑制するようにプログラムされる信号プロセッサによって抑制される製品信号または製品シグニチャのエリアの境界である包絡線が得られる。製品および汚染物質の信号が抑制されるエリアは、製品シグニチャに近接に適合されるが、典型的には、わずかに大きく、その結果安全マージンが設けられる。製品シグニチャは、送信機周波数ごとに変化する。一般的な製品では、経験的データに基づくアルゴリズムが、好ましくは単一の送信機周波数で実施されたただ1つの測定に基づいて、製品情報を確立することを可能にする。
【0030】
工場でのセットアップ期間中、または測定プロセスの開始前、金属汚染物質タイプのデータが、少なくとも1つの粒子サイズを有する金属粒子を測定することによって収集される。好ましくは、曲線の1つまたはいくつかの点だけが測定され、曲線の残りの部分は、その金属汚染物質について典型的な経験的データを適用することによって得られる。好ましい実施形態では、数学的モデルまたは公式が使用されて、曲線が確立され、または2つの測定点間の区間が補間される。このようにして、金属検出システムの較正が必要とするのは、曲線あるいは第1および/または第2のアレイの少なくとも開始点を提供するいくつかの測定だけである。
【0031】
好ましくは、収集される情報は、金属検出システムに接続され、または金属検出システムに統合される制御ユニットまたはコンピュータシステムのメモリに格納される。次いで、格納された情報を選択的にダウンロードし、金属検出システムの将来の較正および構成のために使用することができる。
【0032】
本発明のいくつかの目的および利点を述べたが、他は以下の説明を添付の図面と共に考慮するときに明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の金属検出システムのブロック図である。
【
図2】本発明の金属検出システムの送信機ステージを示す図である。
【
図3a】固定パラメータとして使用される送信機周波数f
TX1について、粒子サイズが可変パラメータとして使用される、第1の金属汚染物質MC
1について確立される曲線または応答軌跡を示すグラフである。
【
図3b】3つの異なる送信機周波数f
TX1、f
TX2、f
TX3について、第1の金属汚染物質MC
1について確立される第1の曲線アレイを示すグラフである。
【
図3c】1つの送信機周波数f
TX1について、3つの異なる金属汚染物質タイプMC
1、MC
2、MC
3について確立される第2の曲線アレイを示すグラフである。
【
図3d】製品信号のエリアA
PSの包絡線を定める異なる位相および振幅の信号ベクトルで走査される製品に関する製品信号のエリアA
PSと、抑制される製品信号のエリアA
PSの境界を定める弁別器直線Dとを示すグラフである。
【
図3e】
図3cに示される第2の曲線アレイと、
図3dに示される製品信号のエリアA
PSの重ね合せを示すグラフである。
【
図4】本発明の方法を実施するのに使用されるコンピュータプログラム50の図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に、送信機ユニット1と、送信機コイル21、第1および第2の受信機コイル22、23を備える平衡コイルシステム2と、受信機ユニット3と、信号処理ユニット4と、標準インターフェース、入力デバイス、および出力デバイス、具体的にはモニタを備える制御ユニット5とを備える本発明の金属検出システムのブロック図を示す。
図1はさらに、製品Pが送信機コイル21および受信機コイル22、23を通じて移送されるコンベヤ6を示す。
【0035】
それに関する好ましい実施形態が
図2に詳細に示されている送信機ユニット1は、平衡コイルシステム2の送信機コイル21に送信機信号s1を供給する。さらに、送信機ユニット1は、送信機周波数f
TXを有する基準信号s10を受信機ユニット3に供給する。
【0036】
システムが平衡状態にある限り、すなわち搬送される製品Pが磁場自体に影響を及ぼしておらず、金属で汚染されていない限り、送信機信号s1は、同一の受信機コイル22、23内で同一の大きさであるが逆の極性の信号s22、s23を誘導する。
【0037】
製品PCが導電性物体で汚染される場合、製品PCが平衡コイルシステム2を通過する間、同一の受信機コイル22、23内の信号s22、s23が変化する。その結果、受信機コイル22、23で誘導される送信機周波数f
TXがベースバンド信号で変調され、その振幅および周波数は、導電性物体の特性、寸法、および移動速度に依存する。
【0038】
受信機コイル22、23の出力信号s22およびs23が、受信機コイル22、23を反映する平衡変圧器31の中央タップ付き一次巻線に印加される。さらに、平衡変圧器31は、両側の末端が増幅器32に接続される2つの同一の中央タップ付き二次巻線を備える。増幅器32の出力はフィルタユニット33に接続され、フィルタユニット33は、増幅およびフィルタ処理後の信号を復調ユニット34に供給し、復調ユニット34は、その出力で、復調監視信号s30の同相成分および直交成分と、搬送される製品Pから発信されるベースバンド信号の同相成分および直交成分を供給する。
【0039】
復調ユニット34の出力で供給される同相信号および直交信号が、別のフィルタユニット35に転送され、フィルタユニット35は、所望の信号が利得ユニット36まで通過することを可能にし、利得ユニット36は、処理される信号の振幅を所望の値に設定することを可能にする。その後で、フィルタ処理および較正後の信号が、アナログデジタル変換器37でアナログ形式からデジタル形式に変換される。アナログデジタル変換器37の出力信号が、既知のデジタル信号プロセッサ4などの信号処理ユニットに転送され、信号処理ユニットは、復調および処理後の監視信号を基準値と比較する。次いで、評価プロセスで得られるデータが、金属検出システムの中央演算処理装置などのデータ処理ユニット、コンピュータ端末5などの内部または外部制御ユニットに転送される。
【0040】
測定プロセスを制御するために、信号プロセッサ4または制御ユニット5は、送信機ユニット1および受信機ユニット3内に設けられる様々なモジュールの機能を制御することができる。この目的で、信号プロセッサ4は、増幅器ユニット32に第1の制御信号c32を、第1のフィルタユニット33に第2の制御信号c33を、第2のフィルタユニット35に第3の制御信号c35を、利得ユニット36に第4の制御信号c36を、アナログデジタル変換器37に第5の制御信号c37を転送している。こうした制御信号c32、c33、c35、c36、およびc37で、個々の受信機ユニット32、33、35、36、および37での増幅特性およびフィルタ特性を選択または調節することができる。以下で説明するように、第6の制御信号c12が送信機ユニット1に転送される。
【0041】
上述の受信機ステージ3は、もちろん好ましい実施形態である。しかし、本発明の方法は、異なる構造の受信機3を使用する金属検出システムで実施することができる。
図2に、
図1に示す金属検出システムの送信機ユニット1のブロック図を示す。
【0042】
送信機ユニット1は、信号プロセッサ4または制御ユニット5から受信される第6の制御信号c12によって制御される周波数シンセサイザ12などの信号源12に、基準周波数f
REFを有する基準信号s0を供給する基準ユニット11を備える。したがって、信号プロセッサ4は、適切な送信機周波数f
TXを選択することができ、送信機周波数f
TXは、信号s10と共に電力増幅器13に転送され、電力増幅器13は、増幅後送信機信号s1を平衡コイルシステム2の送信機コイル21に供給している。信号s10はまた、受信機ステージ3内のモジュール38にも転送され、モジュール38は、基準信号s10の同相成分および直交成分を復調ユニット34に供給する。
【0043】
上述の金属検出システムにより、本発明の方法に従って選択される様々な送信機周波数f
TXの適用と共に製品および汚染物質を測定することが可能となる。本発明の方法は、コンピュータプログラム(
図4参照)によって実施され、好ましくは、コンピュータプログラムは、信号プロセッサ4または制御ユニット5に格納される。コンピュータプログラムのモジュールはまた、分散プロセッサで実装することもできる。
【0044】
図3aに、固定パラメータとして使用される送信機周波数f
TX1について、第1の金属汚染物質MC
1の粒子サイズが可変パラメータとして使用される、第1の金属汚染物質MC
1について確立される曲線または応答軌跡を示す。この曲線は様々な方式で得ることができる。一方法では、オペレータが、一定してサイズが増大する金属粒子、例えば1mm、2mm、3mm、…、を平衡コイルシステム20を通じて順次移送し、関連信号ベクトルsv1、sv2、sv3を記録する。信号ベクトルsv1、sv2、sv3の終点を接続することにより、プログラムモジュールは関連曲線を構築する。少数の信号ベクトルsv1、sv2、sv3のみが記録された場合、2つの点間の直線区間が補間によって得られる。金属汚染物質MCについてそのような曲線または特性の典型的な進行が記録された場合、1つまたは2つの信号ベクトルsv1、sv2のみを測定し、経験値に基づいて曲線を構築することで十分である。金属検出システムがその状態を変更しておらず、較正が不要である場合、1つまたは複数の潜在的金属汚染物質タイプMC1、MC2、MC3に関する事前記憶した曲線をメモリからダウンロードすることができる。
【0045】
図3bに、3つの異なる送信機周波数f
TX1、f
TX2、f
TX3について、第1の金属汚染物質MC
1について確立される第1の曲線アレイを示す。この場合も、周波数f
TX1、f
TX2、f
TX3のそれぞれについて、異なるサイズの金属汚染物質MC
1について信号ベクトルを測定することによって曲線を得ることができる。あるいは、例えば送信機周波数f
TX2で粒子サイズ2mmについて、1つの測定のみを行い、経験データを適用することによって曲線を得ることができる。
【0046】
図3cに、1つの送信機周波数f
TX1について、3つの異なる金属汚染物質タイプMC
1、MC
2、MC
3について確立される第2の曲線アレイを示す。曲線は、
図3aおよび3bについて上記で説明したように確立された。
【0047】
図3dに、送信機周波数f
TX1で製品Pを走査している間に得られた製品信号のエリアA
PSを示す。製品信号は、製品信号のエリアA
PSの包絡線を定める異なる位相および振幅の信号ベクトルによって表される。製品信号のエリアA
PSの境界を定める弁別器直線Dがさらに示されており、製品信号は、信号処理ユニット4および/または制御ユニット5内に設けられるコンピュータプログラム50(
図4参照)によって抑制または消去される。典型的には、較正データの取得の制御に関するコンピュータプログラム50のモジュールが制御ユニット5で実装され、信号の処理、具体的には望ましくない信号の抑制に関するコンピュータプログラム50のモジュールが、信号処理ユニット4で実装される。
【0048】
製品信号のエリアA
PSは、例えば、測定される製品信号を弁別器直線Dが囲むまで製品位相を調節することによって抑制される。次いで、製品信号が抑制される間、弁別器直線Dを超えて延びる金属汚染物質MC
1、MC
2、MC
3、…、の信号が検出される。しかし、望ましくない信号を抑制する他のオプションもあることを理解されたい。例えば、受信される信号を2次元または3次元表現にマッピングし、その中で、抑制されるエリアまたはボリュームが定められる。このエリアまたはボリューム内にある信号は無視される。
【0049】
図3eに、
図3cに示す第2の曲線アレイと、
図3dに示す製品信号のエリアA
PSの重ね合せを示す。この図では、第1および第2の金属汚染物質MC1、MC2の曲線の短い区間のみが製品信号のエリアA
PS内部にあることがわかる。したがって、この送信機周波数f
TX1では、金属検出システムは、1mmよりも著しく小さい第1および第2の金属汚染物質MC1、MC2の粒子を検出することができる。しかし、第3の金属汚染物質MC3について、粒子サイズ1mmに関する点を含む曲線の大部分が、製品信号のエリアA
PS内にあることが示されている。
【0050】
図3eでは、弁別器直線と、第2のアレイを形成する金属汚染物質タイプMC
1、MC
2、MC
3の曲線との交点IP
MC1、IP
MC2、IP
MC3が示されている。こうした交点IP
MC1、IP
MC2、IP
MC3は、もはや測定することのできない金属汚染物質タイプMC
1、MC
2、MC
3の粒子サイズを示す。しかし、少なくとも第1および第2の送信機周波数f
TX1、f
TX2で得られる交点IP
MC1、IP
MC2、IP
MC3の比較により、注目の金属汚染物質タイプMC
1、MC
2、MC
3のより小さい粒子サイズを、送信機周波数f
TX1またはf
TX2のどちらで測定することができるかを判定することが可能となる。したがって、収集したデータに基づいて、
図3eに示されるように、コンピュータプログラム50は、どの送信機周波数f
TX1、f
TX2、…が適用されるかを判断することができる。与えられる例では、コンピュータプログラム50は、金属汚染物質タイプMC
1およびMC
2について、第1の送信機周波数f
TX1が適切であり、第3の金属汚染物質MC
3について、別の送信機周波数f
TX−xがより良好な結果を与えることができると判断することができる。
【0051】
製品信号のエリアA
PSが正確にマッピングされた場合、製品信号のエリアA
PSの境界と、第2のアレイを形成する金属汚染物質タイプMC
1、MC
2、MC
3の曲線の交点を求めることができる。
【0052】
製品Pを走査するとき、コンピュータプログラム50は、選択された送信機周波数f
TX1およびf
TX−xを交互に、または同時に適用することができる。送信機周波数f
TX1およびf
TX−xが交互に適用される場合、好ましくは、適用のシーケンスが、プロセスパラメータのうちの1つまたは複数に従って選択され、または選択可能である。交番の数は典型的には、製品Pのサイズおよび金属汚染物質タイプMCに依存し、自由に選択することができる。典型的には、交番の数は、1から50の間の範囲で選択される。
【0053】
2つの金属汚染物質MC
1、MC
2のうちの第1のものが強い信号を与え、第2のものが小さい信号を与える場合、有利には、送信機周波数f
TX1およびf
TX−xが適用されるデューティサイクルを適用することができる。第2の金属汚染物質MC
2に対して最適化された送信機周波数f
TXの適用の時間は典型的には、第1の金属汚染物質MC
1について選択された送信機周波数f
TXの適用の時間よりも2から10倍の範囲となる。
【0054】
したがって、本発明の方法は、測定プロセス、すなわち、好ましい、または最適化された送信機周波数f
TX1およびf
TX−xで、搬送される製品Pを走査するプロセスを開始することを可能にする。したがって、製品Pが平衡コイルシステム2を通過しているとき、測定のために利用可能な時間が、最も好ましい送信機周波数f
TXを適用することによって十分に用いられる。したがって、収集されるすべてのデータが、最終的測定結果に寄与する。したがって、最適化された送信機周波数f
TXをより長期間に適用することにより、得られる金属汚染物質MCの検出に関する感度が著しく向上する。さらに、少なくとも金属検出システムの初期セットアップについて、追加の労力が必要となるが、金属検出システムを操作する全体の労力が著しく低減される。データを解析し、評価し、選択するプロセスはもはや不要である。
【0055】
さらに、本発明の方法は、複数の送信機周波数f
TXの同時適用について重要な改善を構成する。上述の較正プロセスに基づいて、最適化された測定を実施するのに必要なのは、いくつかの送信機周波数f
TXだけである。したがって、例えば信号プロセッサ4で実施されるフィルタ技法により、またはスイッチト・フィルタ・バンク33(
図1参照)により、削減された数の送信機周波数f
TXを分離する労力は、既知のシステムと比べて比較的低い。
【0056】
図4に、本発明の方法を実施するのに使用されるコンピュータプログラム50の好ましい実施形態の図を示す。コンピュータプログラム50は、4つの不可欠なモジュール51、52、53、および54を含む。
【0057】
第1のプログラムモジュール51は、場合によっては製品P内に現れる金属汚染物質MCのデータを確立するデータ働きをする。より具体的には、第1のプログラムモジュール51は、
図3bおよび3cに示される議論した曲線の第1および/または第2のアレイを確立する働きをする。この目的で、第1のプログラムモジュール51は、データファイル553にアクセスし、データファイル553内には、第1のアレイに関する可変パラメータおよび第2のアレイに関する固定パラメータとして働く、利用可能な送信機周波数f
TX1、f
TX2、f
TX3、f
TX4、…、が列挙される。送信機周波数f
TXの数は典型的には、6から20の間の範囲内であるが、自由に選択することができる。第1のプログラムモジュール51は、別のデータファイル5511、5512、…にアクセスすることができる。データファイル5511内には、金属汚染物質MCの経験データが列挙される。好ましくは、データファイル5512は、金属汚染物質MCの事前記録した曲線、ならびに/あるいは第1および/または第2のアレイを含む。金属汚染物質MC
1に関する少なくとも1つの較正プロセスが、1つの粒子サイズおよび1つの送信機周波数f
TX1と共に実施される場合、データバス5513を介して第1のプログラムモジュール51に関連データが転送される。複数の第1および第2のアレイなどの確立されるデータが、データファイル510で第3のプログラムモジュール53に転送される。
【0058】
第2のプログラムモジュール52は、選択可能送信機周波数f
TX1、f
TX2、f
TX3、f
TX4、…について少なくとも1つの製品Pのデータを確立する働きをする。第2のプログラムモジュール52は、データファイル5521、5522、…にアクセスすることができる。データファイル5521は製品の経験データを含む。好ましくは、データファイル5522は、注目の製品Pの事前記録データを含む。製品Pを伴う少なくとも1つの較正プロセスが実施される場合、関連データが、データバス5523を介して第2のプログラムモジュール52に転送される。送信機周波数f
TX1;f
TX2;f
TX3;f
TX4;…、についてそれぞれ確立される、複数のエリアA
PSなどの確立されるデータが、データファイル520で第3のプログラムモジュール53に転送される。
【0059】
データファイル5511、5512、…;5521、5522、…および/または較正プロセスの同時データを選択的に使用することにより、比較プロセスのために必要なデータ、すなわち送信機周波数f
TX1;f
TX2;f
TX3;f
TX4の適用の結果の評価を様々な方式で確立することができる。
【0060】
第3のプログラムモジュール53では、製品Pおよび汚染物質MCについて確立されるデータが、それぞれの送信機周波数f
TX1;f
TX2;f
TX3;f
TX4;…について比較される。
図4に象徴的に示されているように、製品Pおよび2つの汚染物質MC
1、MC
2のデータの重ね合せが、第1および第2の送信機周波数f
TX1;f
TX2について確立される。次いで、汚染物質MC
1、MC
2の最小の粒子サイズを送信機周波数f
TX1;f
TX2のどちらで検出することができるかが判定される。好ましくは、このプロセスは、すべての選択可能送信機周波数f
TX1、f
TX2、f
TX3、f
TX4、…について実施される。
【0061】
最後に、第3のプログラムモジュール53の結果が第4のプログラムモジュール54に転送され、第4のプログラムモジュール54は、好ましくは較正プロセスおよび測定プロセスを含む、個々のプロセスを制御および調整する。具体的には、好ましい送信機周波数f
TX1;f
TX2;f
TX3;f
TX4;…、およびそれで検出することができる金属汚染物質タイプMC
1、MC
2、…の最小粒子サイズが、第4のプログラムモジュール54にレポートされる。例えばデータ端末5上で、オペレータによって選択される構成パラメータに応じて、第4のプログラムモジュール54は、測定プロセスをセットアップしており、関連制御信号を金属検出システムの個々の電子モジュールに転送する。具体的には、第4のプログラムモジュール54は、送信機ユニット1に制御信号c12を送ることを開始する。さらに、第4のプログラムモジュール54に信号を供給する電子センサ、好ましくは光センサにより、測定プロセスのステータスを継続的に観測することができ、時限実施測定シーケンスが可能となる。
【0062】
好ましくは、第4のプログラムモジュール54は、少なくとも較正プロセスの結果が格納されるデータファイル541、542などのデータ記憶ユニットを備える。データファイル541には、較正プロセスの結果、具体的には金属汚染物質タイプMC
1、MC
2、…の最小粒子サイズおよび関連送信機周波数f
TX1、f
TX2、f
TX3、f
TX4、…が格納される。データファイル542には、様々な測定プロセスに関する構成データを反復的な使用のために格納することができる。
【0063】
好ましくは、第4のプログラムモジュール54はまた、信号プロセッサ4、制御ユニット5、および例えばコンピュータ端末に含まれる他のデバイスと通信する。
金属検出システムの動作中、好ましくは、第4のプログラムモジュール54は、測定プロセスと並列に動作する較正プロセスで最適な条件を維持するために、製品Pおよび金属汚染物質MCから導出された別のデータを収集する。
【0064】
金属検出システムの動作について、あらゆる個々の製品について、特定の周波数を選択する必要がないように、送信機周波数f
TX1、f
TX2の数を削減することが望ましい。
【0065】
本発明によれば、最適化された送信機周波数f
TXにそれぞれ割り当てられるクラスタに、異なる製品が割り当てられる。したがって、製品をクラスタ化することにより、高い効率で測定結果の改善を得ることが可能となる。
【0066】
クラスタ化のプロセスは、様々な方式で実施することができる。好ましくは、すべての利用可能な送信機周波数f
TXについて、依然として製品情報が得られる。上述のように、製品を走査するとき、典型的には、個々の位相および大きさをそれぞれ有する様々な信号成分が生じる。すべての信号成分のベクトルを接続することにより、信号弁別器によって抑制される製品信号または製品シグニチャのエリアA
PSの境界である包絡線が得られる。
【0067】
図3dに、送信機周波数f
TX1で製品Pを走査中に得られた製品信号のエリアA
PSを示す。製品信号は、製品信号のエリアA
PSの包絡線を定める、異なる位相および振幅の信号ベクトルによって表される。抑制される製品信号のエリアA
PSの境界を定める弁別器直線Dがさらに示されている。
【0068】
本発明によれば、類似または同等の製品シグニチャA
PSを有する製品がグループ化され、最適な送信機周波数f
TXに割り当てられる。次いで、このグループまたはクラスタについて、弁別器直線Dが設定され、弁別器直線Dは、対応する製品が検出器を通過しているとき、各製品シグニチャA
PSが抑制されることを保証する。
【0069】
あるいは、選択された範囲内にある弁別器直線Dを有する製品が、最適化された送信機周波数f
TXについてグループ化される。
別の代替として、前記弁別器直線D間にある、記憶された製品シグニチャA
PSまたは記憶された弁別器直線Dのどれが取り出されるかに基づいて、弁別器直線Dを定めることができる。したがって、オペレータは、金属汚染物質タイプMC
1、MC
2、MC
3の受け入れられる粒子サイズおよび対応する弁別器直線Dを選択することができる。こうした弁別器直線Dについて、実装されるコンピュータプログラム50は、個々の送信機周波数f
TX1、f
TX2、…についてグループ化することのできるすべての製品をリストする。
【0070】
別の好ましい実施形態では、オペレータは、測定する必要のある第1の製品Pを選択することができる。次いで、コンピュータプログラム50は、好ましくは第1の製品と共にクラスタ化することのできる選択された公差範囲内で、別の製品Pが存在するかどうかを解析することができる。
【0071】
好ましくは、削減された送信機周波数f
TX1、f
TX2、…、のセットは、最大数の製品を含むクラスタサイズが得られるように選択される送信機周波数f
TX1、f
TX2、…、からなる。
【0072】
データベース5に記憶された製品データに基づいてコンピュータプログラム50で実行することのできるこのクラスタ化プロセスで、金属検出システムの効率を著しく向上させることができる。