特許第5964312号(P5964312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5964312イオン液体電解質を含んでなるリチウム蓄電池
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  • 特許5964312-イオン液体電解質を含んでなるリチウム蓄電池 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964312
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】イオン液体電解質を含んでなるリチウム蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20160721BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20160721BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20160721BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20160721BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20160721BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20160721BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20160721BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20160721BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20160721BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20160721BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20160721BHJP
【FI】
   H01M10/052
   H01M10/0585
   H01M10/0568
   H01M4/62 Z
   H01M4/58
   H01M2/02 K
   H01M2/16 F
   H01M4/13
   H01M4/136
   H01M10/0567
   H01M10/0525
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-535481(P2013-535481)
(86)(22)【出願日】2011年10月28日
(65)【公表番号】特表2013-541820(P2013-541820A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】FR2011000581
(87)【国際公開番号】WO2012059654
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年10月27日
(31)【優先権主張番号】1004293
(32)【優先日】2010年11月2日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510225292
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】ネリー、ジルー
(72)【発明者】
【氏名】ジャメル、ムルザク
(72)【発明者】
【氏名】エレーヌ、ルオー
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン、ソラン
【審査官】 渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/023185(WO,A1)
【文献】 特開2007−035434(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0092796(US,A1)
【文献】 特開2006−294482(JP,A)
【文献】 特開2009−211822(JP,A)
【文献】 特開2007−026945(JP,A)
【文献】 特開2000−340187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封パッケージ(2)内に配置され且つ第1電極(3)と第2電極(4)との間に配置されたセパレータ(8)を含んでなる積層体(9)から形成される少なくとも1つの電気化学セル(1)を含んでなり、前記セパレータ(8)には、リチウム塩、ビニルエチレンカーボネートおよび式Cのイオン液(式中、Cはカチオンを表し、Aはアニオンを表す)の混合物を含んでなるイオン液体電解質(5)を含浸させてあり、前記第1電極(3)は電気化学的に活性な材料およびポリマー系バインダを含むリチウム蓄電池であって、
前記ポリマーがポリアクリル酸(PAA)であり、前記ポリアクリル酸(PAA)の平均分子量が1250000〜2000000g・mol−1であり、
前記電気化学的に活性な材料がリチウムLi挿入材料であることを特徴とするリチウム蓄電池。
【請求項2】
前記第1電極(3)の総重量に対する前記電気化学的に活性な材料の割合が90重量%以上〜100%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の蓄電池。
【請求項3】
前記ポリアクリル酸(PAA)の平均分子量が1250000g・mol−1であることを特徴とする、請求項1および2の一方に記載の蓄電池。
【請求項4】
前記電気化学的に活性な材料が、LiFePOであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の乾電池。
【請求項5】
前記第1電極(3)が、90重量%を超える前記電気化学的に活性な材料および4重量%の前記ポリアクリル酸(PAA)または4重量%未満の前記ポリアクリル酸(PAA)を含んでなり、前記割合が前記電極(3)の総重量に対して計算したものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄電池。
【請求項6】
前記第1電極(3)が、94重量%を超える前記電気化学的に活性な材料および3重量%未満の前記ポリアクリル酸(PAA)を含んでなり、前記割合が前記電極(3)の総重量に対して計算したものであることを特徴とする、請求項5に記載の蓄電池。
【請求項7】
前記第1電極(3)が3%未満の電子伝導体を含んでなることを特徴とする、請求項5および6の一方に記載の蓄電池。
【請求項8】
前記セパレータ(8)がグラスファイバ系多孔質膜であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の蓄電池。
【請求項9】
前記第2電極(4)がリチウムおよび炭素から選択される材料から形成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の蓄電池。
【請求項10】
前記パッケージ(2)が、ポリエチレンイミン(PEI)およびポリアリールエーテルケトン類(PAEKs)から選択される材料を含んでなることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の蓄電池。
【請求項11】
前記パッケージ(2)が、少なくとも1枚のポリアリールエーテルケトン(PAEK)シートから形成されることを特徴とする、請求項10に記載の蓄電池。
【請求項12】
前記ポリアリールエーテルケトンがポリエーテルエーテルケトン(PEEK)であることを特徴とする、請求項11に記載の蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム蓄電池に関し、このリチウム蓄電池は密封パッケージ内に配置され且つ第1電極と第2電極との間に配置されたセパレータを含んでなる積層体から形成される少なくとも1つの電気化学セルを含んでなり、セパレータには、リチウム塩、ビニルエチレンカーボネートおよび式Cのイオン液(Cはカチオンを表し、Aはアニオンを表す)の混合物を含んでなるイオン液体電解質を含浸させてあり、第1電極は電気化学的に活性な材料およびポリマー系バインダを含む。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、リチウム蓄電池は、通常、パッケージ2内の電気化学セル1または電気化学セル1の積層体から形成される。各電気化学セル1は、電解質5によって隔てられた正電極3および負電極4、正電極3に接続された第1集電体6a並びに負電極4に接続された第2集電体6bから形成される。第1集電体6aおよび第2集電体6bはパッケージ2を貫通し、その端部(図1の右側)でそれぞれ第1極7aおよび第2極7bとなって電子の外部電気回路(図示せず)への輸送を行う。電解質5は固体、液体またはゲルの形態になり得る。
【0003】
リチウム蓄電池が、液体またはゲル状電解質5を含浸させ且つ正電極3と負電極4との間に配置したセパレータ8を含んでなる場合もある。セパレータ8は、正電極3の負電極4への接触を防止することによって短絡を防止する。
【0004】
正電極3は、通常はリチウムカチオン(Li)挿入材料から選択される電気化学的に活性な材料を含んでなる。
【0005】
負電極4は、ほとんどのケースにおいて金属リチウム、グラファイトカーボンおよびリチウムLi挿入材料から選択される電気化学的に活性な材料を含んでなる。
【0006】
正電極3および負電極4のそれぞれがリチウムLi挿入材料から形成される場合、リチウム蓄電池はリチウムイオン蓄電池である。
【0007】
正電極3に接続される第1集電体6aは、通常はアルミニウムからできており、負電極4に接続される第2集電体6bは、概して、銅、ニッケルめっきを施した銅またはアルミニウムからできている。
【0008】
パッケージ2は、ターゲットとする用途に応じて可撓性または剛性を有する。薄型フレキシブルリチウムイオン蓄電池の場合、パッケージ2は有利には可撓性を有する。
【0009】
リチウムLi挿入材料を電気化学的に活性な材料として含んでなる電極は、通常、インクコーティング、圧縮またはカレンダー加工、それに続いて、リチウム蓄電池(典型的にはボタン電池形式の電池)に挿入される前に、電極パッドの形態への切断によって形成される。
【0010】
インクは、通常、有機または水性溶媒に分散させたリチウムLi挿入材料から調製され、次に対応する集電体6aまたは集電体6bにコーティングされる。
【0011】
コーティング工程は、通常は、インク/集電体アセンブリ6aまたはインク/集電体アセンブリ6bを乾燥させることにより、インクが含有する溶媒を除去する。
【0012】
コーティング厚が、電極の坪量(grammage)を決定する。坪量とは、表面単位あたりのリチウムLi挿入材料の重量である。mAh・cm−2で表わす電極の表面容量は、正電極3または負電極4を形成しているリチウムLi挿入材料の比容量および得られた坪量から計算することができる。
【0013】
インクの組成、特に活性なリチウムLi挿入材料の割合は、ターゲットとする用途に応じて変化する。このため、「パワー」電池と称されるリチウム蓄電池用の電極の組成と、「エネルギー」電池と称されるリチウム蓄電池用の電極の組成とでは違いが生じ得る。
【0014】
インクにバインダも添加することによって、正電極3または負電極4の機械的強度を確保し、また正電極3または負電極4とセパレータ8との間の界面を改善することができる。
【0015】
リチウム蓄電池電極用のバインダは数多くある。しかしながら、最も一般的なものは、ポリマーであり、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の有機溶媒に可溶性のポリマーバインダおよびカルボキシメチルセルロース(CMCと省略)、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBRと省略)、ポリアクリル酸(PAAと省略)等の水性溶媒に可溶性のポリマーバインダの2つのカテゴリーに分類することができる。
【0016】
昨今、出願人は、特許文献1において、リチウム蓄電池での使用に適したイオン液体電解質を提案した。このイオン液体電解質は、式C(Cはカチオンを表し、Aはアニオンである)のイオン液、電導度塩およびビニルエチレンカーボネート(VECと省略)を含んでいる。特に、比較サイクル試験を、封止したステンレススチール製のエンクロージャ内に納めたボタン電池形式の電気化学セルを使用して行った。結果は、有機電解質を使用した慣用の蓄電池の性能より本発明の蓄電池の性能のほうが良好であることを示した。更に、イオン液体電解質が、450℃に到達可能な熱安定性を有することが示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2935547号明細書
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、とりわけ、高温での改善された電気化学的性能を有するイオン液体電解質を含有するリチウム蓄電池を提供することである。
【0019】
本発明の更なる目的は、特許文献1において出願人によって開示されたリチウム蓄電池を、特に高温での機械的強度および信頼性に関して改善することである。
【0020】
本発明の最後の目的は、経済的に実行可能で、実施し易く、寸法が小さいリチウム蓄電池を提供することである。
【0021】
本発明によれば、この目的は、密封パッケージ内に配置され且つ第1電極と第2電極との間に配置されたセパレータを含んでなる積層体から形成される少なくとも1つの電気化学セルを含んでなるリチウム蓄電池であって、第1電極は電気化学的に活性な材料およびポリマー系バインダを含んでなり、ポリマーはポリアクリル酸(PAA)およびスルホン化パーフルオロポリマーから選択されるリチウム蓄電池によって達成される。
【0022】
本発明によれば、この目的は、更に、セパレータに、リチウム塩、ビニルエチレンカーボネート(VEC)および式Cのイオン液(Cはカチオンを表し、Aはアニオンを表す)の混合物を含んでなるイオン液体電解質を含浸させるという事実によって達成される。
【0023】
本発明によれば、この目的は、ポリマーをポリアクリル酸(PAA)およびスルホン化パーフルオロポリマーから選択するという事実によって達成される。
【0024】
本発明によれば、この目的は、パッケージが、ポリエチレンイミン(PEIと省略)およびポリエチルアリールケトン(PAEKと省略)から選択される材料を含んでなるという事実によっても達成される。
【0025】
好ましい実施形態としては、バインダはポリアクリル酸(PAA)から形成される。
【0026】
別の好ましい実施形態としては、ポリアクリル酸(PAA)は、1100000g・mol−1以上、好ましくは1250000g・mol−1以上であり、厳密に3000000g・mol−1未満の平均分子量を有し、第1電極の総重量に対する電気化学的に活性な材料の割合は、90重量%以上〜100%未満である。
【0027】
本発明を発展させたものによれば、パッケージは、少なくとも1枚のポリアリールエーテルケトン(PAEKと省略)シートから形成され、好ましくはポリエチルエーテルケトン(PEEKと省略)から成る。
【0028】
他の利点および特徴は、非制限的な例示のみを目的として用意された、本発明の特定の実施形態についての以下の説明からより明瞭となり、添付の図面に図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、従来技術のリチウム蓄電池の概略断面図である。
図2図2は、本発明の特定の実施形態のリチウム蓄電池(金属Li負電極)/(イオン液体電解質を含浸させたグラスファイバ製のセパレータ)/(PAAバインダを使用したLiFePO正電極)に対応する半電池の、150℃で行われたサイクル試験の曲線プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、最新式のリチウム蓄電池に関し、このリチウム蓄電池については既に前文において解説しているため、以下で更に詳細に述べることはしない。明瞭さを期するために、最新式のリチウム蓄電池と本発明のリチウム蓄電池とで共通する要素は同じ参照番号で示す。
【0031】
特定の実施形態によれば、リチウム蓄電池は、密封パッケージ2内に配置された少なくとも1つの電気化学セル1を含んでいる。
【0032】
電気化学セル1は、第1電極3と第2電極4との間に配置されたセパレータ8を含む積層体9によって形成される。第1電極3は正電極になり得て、第2電極4は負電極になり得る。
【0033】
第1集電体6aおよび第2集電体6bは、積層体9の各面上に配置され、それぞれ第1電極3および第2電極4に接続される。
【0034】
セパレータ8は、好ましくはグラスファイバ系である多孔質膜になり得る。セパレータ8は、その極めて低い機械的安定性を改善するためにポリマーに沈めた不織グラスファイバによって形成され得る。セパレータ8には、イオン液体電解質5を含浸させる。
【0035】
イオン液体電解質5は、イオン液、少なくとも1種のリチウム塩およびビニルエチレンカーボネート(VEC)の混合物を含む。
【0036】
イオン液体電解質とは、大部分がイオン液で構成される、すなわちイオン液を少なくとも50%、有利にはイオン液を少なくとも80%、好ましくはイオン液を少なくとも90%含む。イオン液は、カチオンおよびアニオンを含んでなる液体塩と定義し得る。このため、イオン液は、一般にイオン液に正電荷を付与する多量の有機カチオンから構成され、この有機カチオンに、イオン液に負電荷を付与する無機アニオンが結合する。イオン液は溶媒としての役割を果たす。
【0037】
イオン液は、式Cに従い、式中、Cはカチオンを表し、Aはアニオンを表す。
【0038】
イオン液のCカチオンは、有利には、有機カチオン、好ましくはN,N−プロピル−メチル−ピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PP13TFSI)、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(HMITFSI)、(1,2−ジメチル−3−n−ブチルイミダゾリウム)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(DMBIFSI)、(1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウム)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(BMITFSI)およびこれらの混合物から選択される。
【0039】
イオン液のAアニオンは、ハロゲン化物、好ましくはBF、TFSI(N(SOCF2−)およびTFSIから選択される。
【0040】
リチウム塩は、リチウムカチオンの第1電極3から第2電極4への移動およびその逆の移動を可能にする。
【0041】
リチウム塩は、有利には、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF)、ビス(フルオロスルホニル)リチウムイミド(LiFSI)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)リチウムイミド(LiTFSI)およびこれらの混合物である。
【0042】
ビニルエチレンカーボネート(VECと省略)を、特定添加物として使用する。VECは、特に、特許文献1(この文献の内容は参照されることにより本願明細書の開示の一部とされ、当業者のための参考文献としての役割を果たすことができる)に記載されるように、グラファイト製の負電極4上に保護層を得ることを可能にする。
【0043】
イオン液体電解質5は、有利には、0.1〜10mol/Lのリチウム塩、好ましくは1〜2mol/Lのリチウム塩を含んでなる。
【0044】
イオン液体電解質5は、有利には、1〜10体積%、好ましくは2〜5体積%のVECを、イオン液の体積に対して含んでなる。
【0045】
例1として、イオン液体電解質5は、イオン液溶媒PP13TFSI中の1.6mol/LのLiTFSIと、1〜10体積%好ましくは5体積%のVECとを含む。
【0046】
例2として、イオン液体電解質5は、イオン液溶媒HMITFSI中の1.6mol/LのLiTFSIおよび1〜10体積%、好ましくは5体積%のVECを含む。
【0047】
例3として、イオン液体電解質5は、イオン液溶媒DMBITFSI中の1.6mol/LのLiTFSIと、1〜10体積%好ましくは5体積%のVECとを含む。
【0048】
例4として、イオン液体電解質5は、イオン液溶媒BMITFSI/BF中の1.6mol/LのLiTFSIと、1〜10体積%好ましくは5体積%のVECとを含む。
【0049】
第1電極3は、電気化学的に活性な材料およびポリマー系バインダを含んでいる。
【0050】
前記電気化学的に活性な材料は、有利には、リチウムLi挿入材料である。前記リチウムLi挿入材料は、非リチウム化材料、例えば、硫化銅(CuS)、二硫化銅(CuS)、タングステンオキシスルフィド(WO)、二硫化チタン(TiS)、チタンオキシスルフィド(TiO)またはバナジウムオキシド(V)、リチウム化材料、例えばリチウム系混合酸化物、例えば、リチウム/コバルトオキシド(LiCoO)、リチウム/ニッケルオキシド(LiNiO)、リチウム/マンガンオキシド(LiMn)、リチウム/バナジウムペントキシド(LiV)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)またはリチウム/マンガン/ニッケルオキシド(LiNi0.5Mn1.5)から選択される。
【0051】
電気化学的に活性な材料は、好ましくはLiFePOである。
【0052】
バインダは、ポリアクリル酸(PAA)およびスルホン化パーフルオロポリマーから選択されるポリマー系である。このため、バインダは、ポリアクリル酸(PAA)およびスルホン化パーフルオロポリマーから選択されるポリマーを含む。
【0053】
「〜系(-based)」とは、「過半数を含む」の意味で解釈すべきであり、すなわちバインダは50%を超える、有利には90〜100重量%のポリマーを含んでなる。バインダは、好ましくは、ポリマーで構成される。
【0054】
インクの調合を行う場合、一般にはポリマーを、水等の溶媒に溶解させることによって電極の成形に適した粘度にし、その調製条件は当業者の知識の範囲内である。
【0055】
公知のスルホン化パーフルオロポリマーの中でも、NAFION(Dupont De Nemours社の登録商標)タイプのパーフルオロスルホネートアイオノマーが好ましくは選択される。
【0056】
好ましい実施形態によれば、ポリマーはポリアクリル酸(PAA)から形成される。このようなPAAバインダを含んでなる電極は、既に、仏国特許出願番号第1003193号で出願人が2010年7月29日に仏国に出願した仏国特許出願明細書に記載されている。前記出願第1003193号の内容は、参照されることにより本願明細書の開示の一部とされ、当業者のための参考文献としての役割を果たすことができる。
【0057】
特に、前記ポリアクリル酸(PAA)は、好ましくは、1100000g・mol−1以上、好ましくは1250000g・mol−1以上であり、厳密には3000000g・mol−1未満の平均分子量を有する。
【0058】
ポリアクリル酸(PAA)の平均分子量は、有利には、1250000〜2000000g・mol−1である。とりわけ、ポリアクリル酸(PAA)の平均分子量は、好ましくは1250000g・mol−1である。
【0059】
第1電極3の総重量に対する電気化学的に活性な材料の割合は、有利には、90重量%以上100重量%未満である。
【0060】
第1電極3は、好ましくは、90重量%を超える電気化学的に活性な材料と、4重量%のポリアクリル酸(PAA)または4重量%未満のポリアクリル酸(PAA)とを含んでなり、この割合は電極の総重量に対して計算したものである。
【0061】
特に、第1電極3は、94重量%を超える電気化学的に活性な材料および3重量%未満のポリアクリル酸(PAA)を含んでなり、この割合は電極の総重量に対して計算したものである。
【0062】
第1電極3は、更に、3%未満の電子伝導体を含むことができる。通常、この電子伝導体をリチウムLi挿入材料に添加することによって第1電極3の電子伝導率が改善される。
【0063】
電子伝導体は、例えば、カーボンブラック、炭素繊維およびこれらの混合物から選択することができる。
【0064】
電気化学的に活性な材料は、例えば、導電性材料、特にいずれかの公知の方法で得られた炭素をコーティングした電気化学的に活性な材料の粒子から構成され得る。
【0065】
第2電極4は、有利には、リチウムおよび炭素から選択される材料によって形成される。第2電極4は、特に、金属リチウムまたは炭素フェルトにより形成される。
【0066】
パッケージ2は、可撓性または剛性を有することができる。パッケージ2が電気化学セル1の収容を可能にし、またリチウム蓄電池に耐密性をもたらす。電気化学セル1の面方向に延びる、第1極7aおよび第2極7bをそれぞれ形成している集電体6a、6bの一部は、パッケージ2を貫通している。
【0067】
パッケージ2は、チタン、アルミニウムまたはステンレススチールタイプの金属から形成され得る。しかしながら、ポリエチレンイミン(PEI)および/またはポリエチルアリールケトン類(PAEKs)からできているパッケージ2、すなわちPEIおよびPAEKから選択される材料を含んでなるパッケージが好ましい。
【0068】
パッケージ2は、特に、PAEKタイプのポリマーから形成することができる。
【0069】
パッケージ2は、有利には、少なくとも1枚のポリエチルアリールケトン(PAEK)のシートにより形成することができる。リチウム蓄電池パッケージ用のこのようなPAEKのシートは、既に、仏国特許出願番号第1050726号で出願人が2010年2月2日に仏国に出願した仏国特許出願明細書に記載されている。前記出願第1050726号の内容は、参照されることにより本願明細書の開示の一部とされ、当業者のための参考文献としての役割を果たし得る。
【0070】
本発明の範囲内で適切なPAEKポリマー類は、以下のポリマーを含んでいる。
・ポリエーテルケトン(PEK)
・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(商標)
・ポリエーテルケトンケトン(PEKK)
・ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)
・ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)
【0071】
パッケージ2は、2つに折り畳んでその周囲を互いに固定した1枚のPAEKシートにより構成することができる。
【0072】
あるいは、パッケージ2を、周囲で互いに固定した複数枚のPAEKシートにより構成することができる。
【0073】
折り畳んだPAEKシートの2つの部位または2枚の独立したPAEKシートは、いずれの公知の方法によっても互いに固定し得て、特にシートの粘着性化、はんだ付け、超音波、レーザーまたはヒートシールによって固定することができる。
【0074】
図示していないある特定の実施形態によれば、パッケージ2は、その厚みにリチウム蓄電池の極7aまたは極7bの一方を形成する少なくとも1つの金属スタッドを取り込んでいる少なくとも1枚のPAEKシートを含んでいる。上記の特定の実施形態とは異なり、第1集電体6aおよび第2集電体6bは、パッケージ2を貫通しない。金属スタッドは、パッケージ2の内側に収容された集電体6aまたは集電体6bの部分にはんだ付けされる。
【0075】
例えば、アルミニウム製の第1集電体6aの内側部にはんだ付けしたアルミニウム製の金属スタッドが第1極7aを形成し得る。銅製の第2集電体6bの内側部にはんだ付けされた銅製の金属スタッドが、第2極7bを形成し得る。
【0076】
図示していない代替の実施形態によれば、パッケージ2は、リチウム蓄電池の第1極7aおよび第2極7bを形成する2つの金属スタッドをその厚みに取り込んでいる1枚のPAEKシートにより形成される。前記PAEKシートは2つに折り畳み、その周囲を互いに固定し、2つのスタッドのそれぞれは、パッケージ2の内側に収容された集電体6aまたは集電体6bの部分にはんだ付けされる。
【0077】
図示していない別の代替の実施形態によれば、パッケージ2は、その厚みにリチウム蓄電池の第1極7aおよび第2極7bを構成する2つの金属スタッドを取り込んでいる1枚のPAEKシートと、金属スタッドを欠き且つ2つの金属スタッドを取り込んでいるPAEKシートにその周囲で固定されたPAEKシートとから形成される。2つのスタッドのそれぞれは、パッケージ2の内側に収容された集電体6aまたは集電体6bの部分にはんだ付けされる。
【0078】
図示していない別の代替の実施形態によれば、パッケージ2は、それぞれがその厚みにリチウム蓄電池の第1極7aおよび第2極7bの一方を形成する金属スタッドを取り込んでいる2枚のPAEKシートによって形成される。各スタッドは、パッケージ2の内側に収容された集電体6aまたは集電体6bの部分にはんだ付けされる。
【0079】
好ましい実施形態によれば、ポリアリールエーテルケトンは、有利には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(商標)である。
【0080】
PEEK(商標)の一枚の可撓性シートは、リチウム蓄電池のパッケージ2を形成するのに十分となり得る。現在市販されている単位厚さが12μm、30μm、70μmのPEEK(商標)シートが本発明の範囲内で適している。この範囲の厚さの数枚のシートを互いに固定することによって、パッケージ2の強度を上昇させることができる。
【0081】
パッケージ2を2枚のPAEKシートで形成する場合、有利には、この2枚のシートが剛性となるように単位厚さを選択し得て、一方のシートに機械加工を施すことによって電気化学セル1を収容するパッケージ2の底部を形成し、金属スタッドを取り込んでいるもう一方のシートがパッケージ2のカバーを構成する。
【0082】
パッケージ2は、有利には、出願人が出願した仏国特許出願公開第10580726号明細書に記載されているものと同じ方法で製造される。
【0083】
本発明のリチウム蓄電池の電気化学的性能を、金属リチウムからなる半電池を用いて測定した。
【0084】
前記半電池は、LiFePO/PAAによりできている第1電極3、電解質5を含浸させたグラスファイバによりできているセパレータ8および金属リチウムによりできている第2電極4から組み立てる。
【0085】
使用するPAAは、1250000g・mol−1の分子量を有し、重量パーセントの比(%LiFePO/%PAA)は、90/10である。
【0086】
グラスファイバ製のセパレータ8は、参照番号AW1F1755としてBernard Dumas社によって販売されている。
【0087】
電解質5は、上記実施例2に従って製造される。電解質5は、5体積%のVECと、HMITFSI中の濃度が1.6mol/LのLiTFSI塩の溶液から構成される95体積%のイオン液との混合物から構成される。
【0088】
このようにして形成された半電池を、次に、C/20充電率、150℃でのサイクル試験に供した。
【0089】
図2に示すように、5サイクル後、回復した容量は、159.6mAh・g−1になる。
【0090】
第1集電体6aへの第1電極3の接着特性は、改善される。更に、従来技術とは異なり、高温でもリフトオフまたは膨張または爆発現象は起きない。高温でのリチウム蓄電池の電気化学的性能の低下も観察されない。
【0091】
したがって、出願人は、驚くべきことに、ポリアクリル酸(PAA)またはスルホン化パーフルオロポリマーの添加によってリチウム蓄電池の電気化学的性能および耐熱性が大幅に改善されることを観察した。
【0092】
特に、従来技術と比較すると、第1電極の電気化学的に活性な材料のバインダとしてのPAAの使用、とりわけ上記の割合および分子量の範囲での使用により、第1電極には、第1電極の電気化学的性能に影響を与えることなく、改善された機械的性質、第1集電体6aへのより良好な接着性および優れたき耐熱性を与える。
【0093】
更に、電極のPAAの平均分子量の選択は、第1電極3の高温での耐熱性および機械的強度に対する大きな影響を有する。
【0094】
本発明のリチウム蓄電池は、高温で改善された耐性を示し且つ高温での漏れおよび爆発の危険性を防止する点で注目に値する。更に、本発明のリチウム蓄電池は、実施し易く、寸法が小さく、かつ安価である。本発明の範囲内で、幅広い用途に合わせてパワーリチウム蓄電池またはエネルギーリチウム蓄電池を容易に製造することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 電気化学セル
2 密封パッケージ(パッケージ)
3 第1電極(正電極)
4 第2電極(負電極)
5 イオン液体電解質(電解質)
6a 第1集電体
6b 第2集電体
7a 第1極
7b 第2極
8 セパレータ
9 積層体
図1
図2