(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の構成では、充電ラインに設けた制御スイッチを切り替えてアーク放電を防止するために、プラグ(充電用コネクタ)本体内にロック機構、ロック作動検出手段及びロック制御手段からなる通電遮断機構を内蔵させている。このため、プラグの大型化を招いてしまう。したがって、そのような大型のプラグが接続されるレセプタクル(車両側コネクタ)自体も大型化が避けられない。
【0007】
電動型二輪車等の鞍乗型の車両は、四輪車と比べて部材の搭載スペースが制限されるため、レセプタクルも狭い空間内に配置されることとなる。したがって上記のような大型のプラグが接続可能な大型のレセプタクルを鞍乗型電動車両に装備するのは困難である。
【0008】
よって本発明の目的は、小型のレセプタクルを装備可能であり、かつレセプタクルに対するプラグの挿抜時におけるアーク放電の発生を確実に防止することが可能な鞍乗型電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明がとりうる一態様は、鞍乗型電動車両であって、
充電プラグが挿抜される充電レセプタクルと、
開口部を有し、前記充電レセプタクルが設けられた収容部と、
前記収容部の前記開口部を開閉する蓋体と、
前記充電レセプタクルと通電可能に接続されたバッテリと、
前記充電レセプタクルと前記バッテリとの通電を制御する通電制御部と、
前記通電制御部に接続された信号線と、
前記信号線を流れる信号の状態を変える信号変更部とを備え、
前記蓋体は、車両の外面の一部を形成し、充電プラグが前記充電レセプタクルに挿入された状態で前記開口部を閉塞可能に形成され、
前記信号変更部は、充電プラグが前記充電レセプタクルに対する挿抜状態に関わらず、前記蓋体の開閉状態に基づいて前記信号線を流れる信号の状態を変更し、
前記通電制御部は、充電プラグが前記充電レセプタクルに挿入されていても前記蓋体が前記開口部を閉塞していないときに、前記信号線の信号状態に応じて前記充電レセプタクルと前記バッテリとの通電を遮断または抑制する。
【0010】
このような構成によれば、充電レセプタクルが設けられた収容部の開口部を開閉する蓋体は、車両の外面の一部を形成し、充電プラグが充電レセプタクルに挿入された状態で前記開口部を閉塞可能に形成されているため、充電する際には、必ず蓋体を開閉動作させることになる。そして、この蓋体の開閉状態に基いて、充電プラグが充電レセプタクルに対する挿抜状態に関わらず、信号線を流れる信号の状態を変更し、充電プラグが充電レセプタクルに挿入されていても蓋体が開口部を閉塞していないときに、信号線の信号状態に応じて充電レセプタクルとバッテリとの通電を遮断または抑制するため、充電プラグや充電レセプタクルにアーク放電防止用の装置を設けなくても、アーク放電の発生を確実に防止することができる。よって、四輪車と比べて部材の搭載スペースが制限される電動型二輪車等の鞍乗型の車両に適した小型の充電レセプタクルを装備可能であり、かつ充電レセプタクルに対する充電プラグの挿抜時におけるアーク放電の発生を確実に防止することができる。
【0011】
前記信号変更部および前記充電レセプタクルは、車体に固定される固定部を各々有している。このため、各部品は機能が分離されているだけでなく、各機能に適した位置、互いに干渉しない位置に配置できる。よって、四輪車と比べて部材の搭載スペースが制限される電動型二輪車等の鞍乗型の車両に適した小型の充電レセプタクルを装備可能であり、かつ充電レセプタクルに対する充電プラグの挿抜時におけるアーク放電の発生を確実に防止することができる。
【0012】
前記信号変更部および前記通電制御部は、車体に固定される固定部を各々有している。このため、各部品は機能が分離されているだけでなく、各機能に適した位置、互いに干渉しない位置に配置できる。よって、四輪車と比べて部材の搭載スペースが制限される電動型二輪車等の鞍乗型の車両に適した小型の充電レセプタクルを装備可能であり、かつ充電レセプタクルに対する充電プラグの挿抜時におけるアーク放電の発生を確実に防止することができる。
【0013】
前記信号変更部は、前記蓋体が前記開口部を閉塞していないときに前記信号線を流れる信号を遮断するスイッチとして構成してもよく、前記蓋体が前記開口部を閉塞しているときに前記信号線を流れる信号を遮断するスイッチとして構成してもよい。また前記信号変更部は、前記蓋体の開閉位置に応じて信号を変更する位置センサとして構成してもよい。
【0014】
前記信号線は、前記バッテリに電力を供給する充電器の制御部と前記通電制御部とを接続する通信線である場合、充電を遮断する制御を行なうための信号線を独立して設ける必要がないため、充電レセプタクルの端子数増加を回避でき、コスト抑制と接続信頼性の向上に寄与する。
【0015】
前記蓋体を搭乗者が着座可能なシートの一部として構成した場合、既存の装備であるシート下の収容空間にレセプタクルを配置することが可能となる。
【0016】
前記充電レセプタクルは、その充電プラグの挿抜方向に垂直な第1の方向の寸法が、当該挿抜方向および当該第1の方向に垂直な第2の方向の寸法よりも大きく形成され、複数の端子が前記第1の方向に一列に配置されている構成としてもよい。この場合、充電レセプタクルの接続口も扁平形状とすることができ、部材の搭載位置に比較的制約の多い鞍乗型電動車両においても、充電レセプタクルの配置自由度を確保することが可能となる。また充電時に高温となる電源端子同士を離間させて配置させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照しつつ本発明について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る電動二輪車を示す左側面図である。本実施形態においては、鞍乗型電動車両として、スクータからなる電動二輪車1を例示して説明する。電動二輪車1は、前部および後部に荷物を載せて走行することが可能であり、荷役車両としての用途に適している。
【0020】
なお、以下の説明における前後、上下および左右の各方向は、電動二輪車1が水平面を直進走行している状態に相当する基準姿勢にあり、かつ運転者が前方を向いているときの当該運転者の視点を基準とする。また、垂直に起立し、前輪3および後輪4が路面A1に接地し、かつ、運転者が乗車していない状態の電動二輪車1を基準として、電動二輪車1の構成を説明する。
【0021】
電動二輪車1は、車体フレーム2、前輪3、後輪4、電動モータ5、バッテリ6および車体カバー7を備えている。電動二輪車1は、バッテリ6から供給される電力によって電動モータ5を駆動し、電動モータ5の出力によって後輪4を駆動する。電動モータ5は、後輪4の右側方に配置されたパワーユニット47に収容されている。以下、電動二輪車1の全体の構造を車体前方から順に説明する。
【0022】
図2は、
図1の電動二輪車において一部の部品を取り外した状態を示す左側面図である。電動二輪車1は、この電動二輪車1の前上部に配置されたヘッドパイプ8を有している。ヘッドパイプ8内には、ステアリング軸9が回動自在に挿入されている。ステアリング軸9の下端部には、左右一対のフロントフォーク10が取り付けられている。前輪3は、フロントフォーク10に取り付けられている。
【0023】
ステアリング軸9の上端部には、ハンドル11が取り付けられている。運転者は、ハンドル11を操作することにより、ステアリング軸9、フロントフォーク10および前輪3をステアリング軸9の軸線回りに回すことが可能である。
【0024】
ハンドル11の左右両端部には、それぞれグリップ12が設けられている(左側のグリップのみを図示)。右側のグリップはスロットルグリップを構成している。運転者は、このスロットルグリップを回すことにより、電動モータ5の出力を調整することが可能である。
【0025】
図1に示すように、ハンドル11の中央付近にはメータ13が設けられている。メータ13の下方には、荷台14が配置されている。荷台14は、ヘッドパイプ8に固定されている。荷台14に積まれた荷物の荷重は、ヘッドパイプ8およびステアリング軸9などを介して主に前輪3に作用する。荷台14の下部にはヘッドランプ15が固定されている。
【0026】
図2に示すように、電動二輪車1は、ヘッドパイプ8から後方に延びる車体フレーム2を含んでいる。車体フレーム2は、鋼鉄製のパイプ部材などを用いて形成されている。車体フレーム2は、ダウンチューブ19と、ダウンチューブ19の後方に配置されたフレーム本体20と、を含んでいる。ダウンチューブ19は、ヘッドパイプ8の下部から後斜め下方に延びている。側面視において、フレーム本体20は、ダウンチューブ19の下端部から後方に延びており、車両の前後方向X1の途中部がS字状に形成されている。
【0027】
フレーム本体20は、左右一対設けられている。フレーム本体20は、第1フレーム部21と、第2フレーム部22と、第3フレーム部23と、第4フレーム部24と、を含んでいる。第1フレーム部21は、ダウンチューブ19の下端部から後方に略真っ直ぐに延びており、わずかに後斜め上方に傾斜している。
【0028】
第2フレーム部22は、側面視においてS字状に形成されている。第2フレーム部22は、下端部22aと、中間部22bと、上端部22cと、を含んでいる。第2フレーム部22の下端部22aは、湾曲形状に形成されており、第1フレーム部21の後端部に連結されている。第2フレーム部22の中間部22bは、下端部22aから斜め後上方に真っ直ぐに延びている。側面視において、第1フレーム部21に対する中間部22bの傾斜角度は、例えば、45度程度である。第2フレーム部22の上端部22cは、湾曲形状に形成されており、中間部22bに接続されている。
【0029】
第3フレーム部23は、上端部22cから直線状に延びており、わずかに後斜め上方に傾斜している。第4フレーム部24は、第2フレーム部22の中間部22bから後方に延び、途中で後斜め上方へ湾曲され、第3フレーム部23の中間部に接続されている。
【0030】
図1に示すように、電動二輪車1は、車体フレーム2に取り付けられた車体カバー7を含んでいる。車体カバー7は、ヘッドパイプ8を覆う前カバー25と、前カバー25の下部から後方に延びる下カバー26と、前カバー25の後方に配置された後カバー27と、を含んでいる。
【0031】
前カバー25は、ステアリング軸9の一部およびヘッドパイプ8を取り囲み、かつ、ダウンチューブ19を取り囲んでいる。下カバー26は、前カバー25の下部25aから後方に延びており、第1フレーム部21と、第2フレーム部22の下端部22aとを、下方および左右両側方から覆っている。下カバー26上端部には、足載せ部28が配置されている。足載せ部28は、運転者が足を載せるために設けられており、略平坦に形成されている。
【0032】
後カバー27は、全体として、下カバー26の後部26aから後斜め上方に延びた形状に形成されている。後カバー27は、第2フレーム部22のうち、下端部22aを除く領域を前方および左右両側方から覆っている。また、後カバー27は、第3フレーム部23および第4フレーム部24を、前方および左右両側方から覆っている。
【0033】
後カバー27の上方には、シート29が配置されている。電動二輪車1の走行中、シート29に座った運転者の足は、足載せ部28に載せられる。前後方向X1において、足載せ部28は、前カバー25の後面25bと、シート29の前端部29aとの間に配置されている。また、シート29は、第2フレーム部22の上方に配置され、かつ、第3フレーム部23の一部の上方に配置され、かつ、第4フレーム部24の一部の上方に配置されている。シート29と、後カバー27とによって囲まれた空間は、収容空間S1を規定している。
【0034】
図2に示すように、本発明の蓋体としてのシート29は、第1ブラケット31および支持ブラケット37によって支持されて車体の外面の一部を形成している。第1ブラケット31は、第2フレーム部22の中間部22bに取り付けられている。第1ブラケット31は、中間部22bから上向きに延びている。第1ブラケット31の上端部には、ヒンジ部38が設けられている。シート29は、このヒンジ部38を介して第1ブラケット31に支持されている。第1ブラケット31は、シート29を下方から支持している。シート29は、ヒンジ部38回りに回動することが可能となっている。シート29をヒンジ部38回りに回動することにより、収容空間S1を上方に開放することが可能である。なお、ヒンジ部38を省略し、シート29を直接第1ブラケット31に固定してもよい。
【0035】
シート29の後部29bは、支持ブラケット37によって支持されている。支持ブラケット37は、車体フレーム2の第3フレーム部23に固定されており、第3フレーム部23から上向きに突出した形状とされている。
【0036】
シート29の下方には、電動モータ5の電源としてのバッテリ6が配置されている。バッテリ6は、左右一対の第2フレーム部22の間に配置されている。バッテリ6は、充電可能な二次電池である。バッテリ6は、側面視において略矩形に形成されており、前後方向X1の長さ(幅)よりも車両の上下方向Z1の長さ(高さ)が長くされている。バッテリ6は、後斜め上方に傾斜した姿勢に配置されており、車体フレーム2に支持されている。バッテリ6の上部6aは、第1ブラケット31と、支持ブラケット37との間に配置されている。
【0037】
図1に示すように、シート29の後方には、荷台45が配置されている。荷台45は、第3フレーム部23の上方に配置され、この第3フレーム部23に支持されている。荷台45の上方に、荷物を載せることが可能となっている。荷台45に載せられた荷物の荷重は、主に後輪4によって受けられる。
【0038】
このように、荷台14と、重量物であるバッテリ6と、荷台45は、前後方向X1に並んで配置されている。したがって、荷台14および荷台45に荷物を載せたときに、前後方向X1における電動二輪車1の荷重のバランスを、均等にすることができる。したがって、荷台14および荷台45に荷物を載せた状態でも、電動二輪車1の高い操縦性を維持することができる。
【0039】
図3は、シート29を開いた状態の収容空間S1を示す斜視図である。ヒンジ部38でシート29を回動させることにより、収容空間S1の上方に開口した開口部30が開放される。また、ヒンジ部38でシート29を開くときと逆方向へ回動させて閉じることにより、開口部30が閉塞される。このように、シート29は、収容空間S1を閉塞可能な蓋体とされている。シート29が開口部30を閉塞することにより、雨水や埃などが収容空間S1内に浸入することが防止される。
【0040】
図4に示すように、シート29の裏面には、第1ブラケット31に対してシート29を回動可能に支持するヒンジ部38との連結箇所の近傍に、リブ41が形成されている。このリブ41は、シート29が閉じられた際に、ヒンジ部38の上部に配置される。
【0041】
ヒンジ部38には、シート開閉スイッチ(スイッチ)42が設けられている。このシート開閉スイッチ42は、ボタン部43を有している。このボタン部43は、内蔵されたバネ等で押し出されてシート29側へ突出されている。このシート開閉スイッチ42は、シート29が閉じられた際に、シート29のリブ41によってボタン部43が押し込まれる。シート開閉スイッチ42は、ボタン部43が押し込まれることでオン状態となり、ボタン部43が突出することでオフ状態となる。
【0042】
収容空間S1には、車両の右側に、接続ボックス51が設けられている。この接続ボックス51における左側の側壁52には、本発明の充電レセプタクルとしてのレセプタクル53が設けられている。レセプタクル53はバッテリ6と通電可能に接続されている。
図4に示すように、後述する充電器58から延びる充電コード57に設けられた充電プラグとしてのプラグ55が接続されてバッテリ6の充電が実行される。
【0043】
充電コード57は、レセプタクル53にプラグ55を接続した状態で車両の左側へ引き出される。収容空間S1の開口部30の縁部には、左側前方に、切欠き部63が形成されている。充電コード57は、開口部30の切欠き部63に通される。これにより、プラグ55と充電器58とをつなぐ充電コード57が外部から収容空間S1の内部に引き込んだ状態で、シート29が収容空間S1の開口部30を閉塞することができる。
【0044】
図5にレセプタクル53の外観を示す。(a)は接続口54を閉じた状態を、(b)は接続口54を開いた状態を示している。レセプタクル53は、合成樹脂等から形成されたハウジング71を備えている。このハウジング71に後述するプラグ55の接続部76が挿抜可能とされた接続口54が形成されている。
【0045】
接続口54は、全体として扁平形状に形成されている。具体的には、プラグ55の挿入方向D0に垂直な水平方向D1の寸法が、挿入方向および水平方向に垂直な垂直方向D2の寸法よりも大きく形成された開口を有している。ハウジング71は、接続口54を形成する外周壁73の内部に複数のオス端子72を有している(
図8参照)。
【0046】
レセプタクル53のハウジング71には、外周壁73の周囲に張り出すフランジ部81が形成されている。このフランジ部81には、両側部に、取付孔82が形成されている。ハウジング71は、取付孔82に挿入したねじ部材(図示略)を板金部材に設けられたねじ孔(図示略)へねじ込むことにより、接続ボックス51内に固定される。
【0047】
ハウジング71は、接続口54を形成する外周壁73の下方側の部分に、一対のガイド溝84を有している。これらのガイド溝84は、レセプタクル53のハウジング71における幅方向の左右両側に形成されている。これらのガイド溝84は、プラグ55の挿入方向に沿って形成されている。またレセプタクル53は、接続口54を閉塞可能なリッド85を有している。
【0048】
リッド85は、合成樹脂等から形成されたもので、平板部86を有している。リッド85は、平板部86における接続口54側に周壁87を有している。周壁87は、レセプタクル53の接続口54をリッド85が閉塞した状態で、レセプタクル53のハウジング71の外周壁73に沿って延びている。
【0049】
リッド85は、その下端部がレセプタクル53のハウジング71における接続口54の下方側において、接続口54の長手方向に沿って設けられた支持軸(図示略)により回動可能に連結されている。そしてリッド85が支持軸により回動されることで、レセプタクル53の接続口54がリッド85によって開閉される。
【0050】
図6にプラグ55の外観を示す。(a)は上方から見た外観を、(b)は下方から見た外観を示している。プラグ55は、合成樹脂等から形成されたハウジング75を備えている。このハウジング75にレセプタクル53の接続口54に挿入可能とされた接続部76が設けられている。接続部76は複数の端子収容部70を有している(
図8参照)。
【0051】
プラグ55の接続部76も、レセプタクル53の接続口54と同様に扁平形状とされている。すなわちプラグ55の挿入方向D0に垂直な第1の方向D1の寸法が、当該挿入方向および当該第1の方向に垂直な第2の方向D2の寸法よりも大きく形成されている。
【0052】
レセプタクル53の接続口54へプラグ55の接続部76を挿し込むことで、各メス端子78に各オス端子72が挿し込まれ、両者が電気的に接続される。
【0053】
図6の(a)に示すように、プラグ55のハウジング75は、把持部101を有している。この把持部101の前端部に接続部76が設けられており、把持部101は、接続部76よりも周長が大きく形成されている。
【0054】
把持部101の後端面101aは、右側から左側へ向かって次第に接続部76から離間する後方へ傾斜され、後端面101aの左端が右端よりも後方に配置されている。これにより、把持部101は平面視で左右方向に非対称形状とされ、作業者が右手で把持し易い形状とされている。
【0055】
なお上記の説明における前後左右の表現はハウジング75における位置関係を示すために便宜上用いたに過ぎず、車体の前後左右方向と一致することを要するものではない。以降の説明についても同様である。
【0056】
図6の(b)に示すように、プラグ55の裏面には、一対のガイド突条104が形成されている。ガイド突条104は、把持部101の一部を含む接続部76の全長にわたって形成されている。ガイド突条104は、プラグ55における幅方向の左右両側に形成されている。ガイド突条104は、レセプタクル53に対する挿入方向に沿って形成されている。ガイド突条104は、把持部101側が僅かに膨出されている。
【0057】
図7に示すように、電動二輪車1は、BMS(Battery Management System)103を備えている。BMS103は、電力線105および通信線111を介してバッテリ6と接続されており、バッテリ6との通電を制御する通電制御部として機能する。
【0058】
BMS103とレセプタクル53は、通信線113により接続されており、通信線113の途中にシート29の開閉により操作されるシート開閉スイッチ42が設けられている。
【0059】
シート開閉スイッチ42は、シート29が収容空間S1の開口部30を開放するとオフ状態とされ、開口部30を閉塞するとオン状態とされるように構成されている。シート開閉スイッチ42がオフ状態とされると、通信線113を流れる信号を遮断するように構成されている。これによりレセプタクル53とBMS103の間の通信は不能となる。一方、シート開閉スイッチ42がオン状態とされると、通信線113による信号の送受信が可能となるように構成されている。これによりレセプタクル53とBMS103の間の通信が可能となる。
【0060】
すなわちシート開閉スイッチ42は本発明の信号変更部として機能し、シート29の開閉状態に基づいて通信線113を流れる信号の状態を変更するように構成されている。
【0061】
プラグ55に接続された充電コード57は、電力線115、通信線116および接続検知線117を有しており、充電器58に接続されている。充電器58には電源ケーブル61が接続されており、電源ケーブル61の端部には、後述する電源62に接続可能なプラグ60が設けられている。
【0062】
レセプタクル53にプラグ55を接続すると、電力線106、115同士が電気的に接続され、充電器58からバッテリ6への充電経路が形成される。また通信線113、116同士が電気的に接続され、充電器58とBMS103間の通信経路が形成される。さらに接続検知線114、117同士が電気的に接続され、プラグ55のレセプタクル53への接続状態を検知可能な回路が形成される。BMS103は、レセプタクル53にプラグ55が接続されたことを接続検知線114の電圧を監視することで検知する。
【0063】
BMS103は、充電器58との通信が可能となると、レセプタクル53とバッテリ6との間を通電する。つまりBMS103は、充電器58との通信ができない限り、バッテリ6とレセプタクル53との通電を遮断状態とする。
【0064】
図8に電動二輪車1と充電器58の間の配線を模式的に示す。レセプタクル53は、配線56を介してバッテリ6に接続されている。また、このレセプタクル53に接続されるプラグ55は、充電コード57に接続されている。充電コード57は、充電器58に接続されている。充電器58には、電線61を介して電源62が接続されている。これにより、レセプタクル53にプラグ55を接続した状態で、電源62からの電力が充電器58を介してバッテリ6に給電され、バッテリ6が充電される。
【0065】
レセプタクル53に設けられた複数のオス端子72は、ハウジング71の基部71aから接続口54へ向かって延びるように、ハウジング71に支持されている。これらのオス端子72は、ハウジング71の扁平形状の長手方向(上記第1の方向)に間隔をあけて一列に配列されている。ハウジング71には隔壁部74が形成されており、各オス端子72を絶縁している。
【0066】
具体的には、ハウジング71の長手方向の一端側から順に、正極端子72a、第1通信端子72b、第2通信端子72c、接続確認端子72d、アース端子72eおよび負極端子72fを含んで配置されている。そして正極端子72aと負極端子72fの間に第1通信端子72b、第2通信端子72c、接続確認端子72d、およびアース端子72eが配置されている。
【0067】
正極端子72aおよび負極端子72fは、電動二輪車1に搭載されたバッテリ6の電源線106に接続されている。第1通信端子72bおよび第2通信端子72cは、電動二輪車1に搭載された制御部としてのBMS103と充電器58の間の信号伝送に使用される通信線106に接続されている。接続検知端子72dは、接続口54へのプラグ55の挿入状態の検知に使用される接続検知線114に接続されている。アース端子72eは、電動二輪車1のアース線121に接続されている。
【0068】
接続部76の複数の端子収容部70は、扁平形状のハウジング75の長手方向(すなわち第1の方向D1)に沿って配列されている。それぞれの端子収容部70の間には、レセプタクル53のハウジング71に形成された隔壁部74が挿入可能なスリット77が形成されている。各端子収容部70には、メス端子78が収容されている。すなわち接続部76の内部において複数のメス端子78が扁平形状の長手方向に一列に配列されている。
【0069】
具体的には、ハウジング75の長手方向の一端側から順に、正極端子78a、第1通信端子78b、第2通信端子78c、接続確認端子78d、アース端子78eおよび負極端子78fを含んで配置されている。そして正極端子78aと負極端子78fの間に第1通信端子78b、第2通信端子78c、接続確認端子78d、およびアース端子78eが配置されている。
【0070】
正極端子78aおよび負極端子78fは、充電器58の電源線115に接続されている。第1通信端子78bおよび第2通信端子78cは、電動二輪車1に搭載された制御部としてのBMS103と充電器58の間の信号伝送に使用される通信線116に接続されている。接続検知端子78dは、接続口54へのプラグ55の挿入状態の検知に使用される接続検知線117に接続されている。アース端子78eは、充電器58のアース線122に接続されている。
【0071】
バッテリ6を充電するには、まず
図4に示すように、電動二輪車1のシート29を回動させて収容空間S1を開放する。これにより
図9の(a)に示すように、シート29のリブ41で押し込まれていたシート開閉スイッチ42のボタン部43が突出し、シート開閉スイッチ42がオフ状態となる。これにより通信線113を介してのレセプタクル53とBMS103の間の通信が不能とされる。
【0072】
プラグ55を把持した作業者は、収容空間S1へプラグ55を導き入れ、リッド85を回動させてレセプタクル53の接続口54を開き、この接続口54へプラグ55の接続部76を挿し込む。するとプラグ55の裏面のガイド突条104が、レセプタクル53のハウジング71のガイド溝84に嵌め込まれる。
【0073】
これにより、BMS103側の電力線106と充電器58側の電力線115とが接続されるとともに、BMS103側の通信線113と充電器58側の通信線116とが接続される。またBMS103側の接続検知線114と充電器58側の接続検知線117が接続されることにより、BMS103は、レセプタクル53にプラグ55が接続されたことを検知する。
【0074】
このときBMS103側の通信線113と充電器58側の通信線116とが接続されていても、シート開閉スイッチ42がオフ状態とされているため、BMS103と充電器58とが通信不能状態のままである。したがってBMS103によってレセプタクル53とバッテリ6との通電が遮断された状態が維持される。結果として、レセプタクル53の電力線106に接続されたオス端子72とプラグ55の電力線115に接続されたメス端子78との間で、アーク放電の発生が確実に防止される。
【0075】
レセプタクル53に対するプラグ55の接続が完了したら、
図4に示すように充電コード57を収容空間S1の開口部30に形成された切欠き部63に配置させ、シート29を回動させて収容空間S1の開口部30を閉塞する。これにより、
図9の(b)に示すように、シート29のリブ41でシート開閉スイッチ42のボタン部43が押し込まれ、シート開閉スイッチ42がオン状態となる。
【0076】
このとき互いに接続された通信線113,116を介してBMS103と充電器58とが通信可能な状態となり、BMS103はレセプタクル53とバッテリ6とを通電させる。作業者が充電器58を作動させることにより、バッテリ6への充電が開始される。
【0077】
充電中は電源線に接続された正極端子78aおよび負極端子78fに大電流が流れ、発熱が大きくなる。本実施形態のプラグ55においては、複数のメス端子78が扁平形状の接続部76の長手方向に沿って一列に配列されている。さらに正極端子78aと負極端子78fがそれらの間に配置されたその他のメス端子78によって十分に離間している。よって正極端子78aと負極端子78fにおいて発生した熱はハウジング75の両端部において良好に放熱されうる。したがって充電中に発生する熱による影響を極力抑制することができる。
【0078】
充電が完了したら、
図4に示すように、シート29を回動させて収容空間S1を開放する。これにより
図9の(a)に示すように、シート29のリブ41で押し込まれていたシート開閉スイッチ42のボタン部43が突出し、シート開閉スイッチ42がオフ状態となる。これによりBMS103と充電器58とが通信不能状態となるため、BMS103は充電器58との通信が不能であると判断し、レセプタクル53とバッテリ6との通電を遮断させる。
【0079】
次にレセプタクル53からプラグ55を引き抜いて、レセプタクル53のオス端子72とプラグ55のメス端子78との導通状態を解除する。これによりBMS103側の電力線106と充電器58側の電力線115とが切り離されるとともに、BMS103側の通信線113と充電器58側の通信線116とが切り離される。またレセプタクル53からプラグ55が引き抜かれると、BMS103は、レセプタクル53からプラグ55が引き抜かれたことを接続検知線114の電圧から検知する。
【0080】
このときレセプタクル53とバッテリ6との通電が遮断されているので、レセプタクル53の電力線106に接続されたオス端子72と、プラグ55の電力線115に接続されたメス端子78とが離間する際のアーク放電発生が確実に防止される。
【0081】
レセプタクル53の接続口54はリッド85により閉塞される。その後、収容空間S1からプラグ55を取り出し、シート29を回動させて収容空間S1の開口部30を閉塞する。収容空間S1がシート29で塞がれることにより、収容空間S1への雨水や埃の浸入が防止されるため、レセプタクル53は、シート29及びリッド85によって二重に保護されることとなる。
【0082】
以上説明したように、本実施形態においては、レセプタクル53に対するプラグ55の挿抜状態に依らず、シート開閉スイッチ42がシート29の開閉状態に基づいて通信線113の信号状態を変化させ、レセプタクル53とBMS103の間の通信経路を遮断または開通させる。そしてBMS103は、シート29が収容空間S1の開口部30を閉塞していないことを通信線113の信号状態を通じて認識した場合、プラグ55がレセプタクル53に挿入されていてもレセプタクル53とバッテリ6の間の通電を遮断する。これにより、シート29を開いた状態でレセプタクル53に対してプラグ55の挿抜が行なわれた場合の、アーク放電の発生を確実に防止することができる。
【0083】
また本実施形態においては、通電遮断の契機となるスイッチング動作を、プラグ55のレセプタクル53に対する挿抜操作が行なわれる領域から離れた場所に配置されたシート開閉スイッチ42により行なわせている。そのため、通電遮断動作とプラグ55の挿抜動作とを分離させることができ、さらに確実にアーク放電を防止することができる。
【0084】
一方、アーク放電を防止するための通電遮断の機能をレセプタクル53やプラグ55に組み込む必要がないので、アーク放電の発生を防止しつつレセプタクル53やプラグ55の小型化を図ることができる。これにより、四輪車と比べて部品の搭載スペースが制限される二輪車等の鞍乗型の車両においても、レセプタクル53の配置の自由度を高めることができる。
【0085】
レセプタクル53が小型化されることより、既存の装備であるシート29下の収容空間S1にレセプタクル53を配置することが可能となる。したがって、レセプタクル53を収容する専用の収容空間を設け、この収容空間を開閉させる蓋体に通電遮断用のスイッチを設ける必要がなくなり、車両自体の小型化およびコストダウンを図ることができる。
【0086】
また小型のプラグ55を用いることができるので、収容空間S1の蓋体であるシート29を充電中に容易に閉じておくことができる。よってレセプタクル53とプラグ55との接続箇所の防水効果を図ることができ、かつ充電中におけるプラグ55の意図的な引き抜きを防止することができる。
【0087】
なお
図9に示すように、シート開閉スイッチ42は、ねじ部材42aによりヒンジ部38に固定された固定部を有している。また
図5を参照して説明したように、レセプタクル53もねじ部材および取付孔82により接続ボックス51の側壁52に固定される固定部を有している。よってシート開閉スイッチ42とレセプタクル53は、機能が分離されているだけでなく、各機能に適した位置、互いに干渉しない位置に配置できる。よって、四輪車と比べて部材の搭載スペースが制限される電動二輪車1に適した小型のレセプタクル53を装備可能であり、かつレセプタクル53に対するプラグ55の挿抜時におけるアーク放電の発生を確実に防止することができる。
【0088】
また
図2に示すように、BMS103は、ねじ部材103aによりフレーム本体20の側方に固定された固定部を有している。よってBMS103とシート開閉スイッチ42は、機能が分離されているだけでなく、各機能に適した位置、互いに干渉しない位置に配置できる。よって、四輪車と比べて部材の搭載スペースが制限される電動二輪車1に適した小型のレセプタクル53を装備可能であり、かつレセプタクル53に対するプラグ55の挿抜時におけるアーク放電の発生を確実に防止することができる。
【0089】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは明らかである。
【0090】
BMS103による通電制御は、必ずしもレセプタクル53とバッテリ6の間の通電を完全に遮断することを要しない。プラグ55の挿抜操作に伴うアーク放電の発生を防止しうる程度にレセプタクル53における電圧または電流を抑制する構成としてもよい。
【0091】
レセプタクル53の配置場所はシート29の下方に設けられた収容空間S1に限られるものではない。例えば
図10に示す電動二輪車1Aのように、後カバー27における車両の左側に設けられた収容空間S2にレセプタクル53が配置される構成としてもよい。この収容空間S2の開口部212は車両の側方に開口する。この収容空間S2の外壁には、開口部212を、開閉可能な蓋体213が設けられている。
【0092】
この電動二輪車1Aでは、まず、蓋体213を開いて収容空間S2の開口部212を開放する。その後、前述したようにプラグ55をレセプタクル53の接続口54へ挿し込み、リッド85の爪部88がプラグ55の抜けを防止した状態、かつ蓋体213で開口部212を閉塞した状態でバッテリ6の充電を行う。
【0093】
レセプタクル53とBMS103を接続する通信線113には、蓋体213の開閉により操作される蓋体開閉スイッチ214が設けられている。上記実施形態と同様に、レセプタクル53に対するプラグ55の挿抜状態に依らず、蓋体開閉スイッチ214が蓋体213の開閉状態に基づいて通信線113の信号状態を変化させ、レセプタクル53とBMS103の間の通信経路を遮断または開通させる。そしてBMS103は、蓋体213が収容空間S2の開口部212を閉塞していないことを通信線113の信号状態を通じて認識した場合、プラグ55がレセプタクル53に挿入されていてもレセプタクル53とバッテリ6の間の通電を遮断する。
【0094】
レセプタクル53とバッテリ6の通電を制御する通電制御部としての機能は、必ずしもBMS103単体により担われることを要しない。電動二輪車1に搭載され、制御機能を有するCCU(Cell Control Unit)やMCU(Machine Control Unit)の少なくとも一方に、当該通電制御部としての機能の少なくとも一部を担わせることができる。
【0095】
蓋体としてのシート29の開閉により操作されるシート開閉スイッチ42の位置は上記実施形態の配置に限られない。レセプタクル53に対するプラグ55の挿抜操作領域から離れた場所であれば適宜の位置を選択可能である。電動二輪車1Aの蓋体開閉スイッチ214についても同様である。
【0096】
シート開閉スイッチ42のオンオフ状態と通信線113の遮断状態の組合せは任意である。すなわちシート開閉スイッチ42がオン状態とされたときに通信線113を流れる信号を遮断する構成としてもよい。蓋体開閉スイッチ214についても同様である。
【0097】
シート29の開閉状態と通信線113の遮断状態の組合せも任意である。すなわちシート29が収容空間S1の開口部30を開放している状態において通信線113を信号が流れるようにし、BMS103が当該信号が流れた事実をもってレセプタクル53とバッテリ6の通電を遮断する構成としてもよい。蓋体開閉スイッチ214についても同様である。
【0098】
通信線113の遮断は、必ずしもシート開閉スイッチ42により直接行なわれることを要しない。シート開閉スイッチ42から出力される信号により動作する適宜の回路要素により通信線113の遮断が行なわれる構成としてもよい。
【0099】
シート29の開閉状態により信号線113の信号状態を変更する信号変更部としての機能は、シート29の開閉状態に応じて信号を変更する位置センサによっても実現可能である。蓋体開閉スイッチ214についても同様である。
【0100】
シート29の開閉状態により信号状態に変化がもたらされる信号線は、通信線113に限られない。アーク放電防止の観点からは電源線以外の信号線であればよく、接続検知線114の途中にシート開閉スイッチ42を設ける構成としてもよい。
【0101】
本発明が適用される鞍乗型電動車両における車輪の数は二つに限られるものではなく、適宜に定められる。
【0102】
本出願は、2011年12月22日に提出された日本国特許出願2011−280887、および2012年11月22日に提出された日本国特許出願2012−256595に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。