(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964324
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】アスファルト舗装材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
E01C 7/18 20060101AFI20160721BHJP
C08L 95/00 20060101ALI20160721BHJP
C08L 23/30 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
E01C7/18
C08L95/00
C08L23/30
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-551307(P2013-551307)
(86)(22)【出願日】2012年1月25日
(65)【公表番号】特表2014-506637(P2014-506637A)
(43)【公表日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】US2012022535
(87)【国際公開番号】WO2012103206
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2015年1月20日
(31)【優先権主張番号】61/437,265
(32)【優先日】2011年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/350,393
(32)【優先日】2012年1月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】ロッツ,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ハッカー,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ルワン,ヨーンホン
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−002928(JP,A)
【文献】
特開平08−311349(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/073261(WO,A2)
【文献】
特開2001−254015(JP,A)
【文献】
特開平02−228363(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0101701(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0101702(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0020537(US,A1)
【文献】
米国特許第06358621(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00〜 17/00
C08L 1/00〜101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基アスファルト、及び基アスファルトの0.25〜10重量%の量で存在する酸化ポリオレフィンを含む、アスファルト舗装材料の3〜8重量%の量で存在するアスファルトバインダー;及び
アスファルト舗装材料の92〜97重量%の量で存在する骨材;
を含み;
通常の剥離防止剤を実質的に含まず;
酸化ポリオレフィンがアスファルトバインダーを骨材に有効に接着して、水分によって引き起こされる骨材からのアスファルトバインダーの剥離を阻止するアスファルト舗装材料。
【請求項2】
酸化ポリオレフィンがアスファルトバインダーを骨材に有効に接着して、アスファルト舗装材料が少なくとも0.65のAASHTO−T−283引張り強さ比を有する、請求項1に記載のアスファルト舗装材料。
【請求項3】
酸化ポリオレフィンが基アスファルトの1〜4重量%の量で存在する、請求項1に記載のアスファルト舗装材料。
【請求項4】
酸化ポリオレフィンが、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のアスファルト舗装材料。
【請求項5】
通常の剥離防止剤が、アミン類、変性アミン類、Ca(OH)2、CaO、リン酸、アクリルポリマー、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載のアスファルト舗装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2011年1月28日出願の米国仮特許出願61/437,265(その全ての内容を参照として本明細書中に包含する)に関連し、その全ての有効な利益を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、概してアスファルト舗装材料及びアスファルト舗装材料の製造方法に関し、より詳しくは、「轍掘れ」に対する抵抗性を示し、アスファルトバインダーと骨材との間の向上した接着力を有するアスファルト舗装材料、及びかかるアスファルト舗装材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]アスファルト混合物は、道路の建設及び維持のための舗装材料として通常的に用いられている。通常は、しばしば「アスファルトバインダー」又は「アスファルトセメント」と呼ばれるアスファルトは、骨材と混合してアスファルト舗装において用いられる材料を形成する。舗装作業員によってこの材料を処理して使用することによってアスファルト舗装が形成される。アスファルト舗装は、骨材へのアスファルトバインダーの接着力によってアスファルトバインダーの連続相内に保持される骨材を含む。
【0004】
[0004]アスファルト舗装の強度及び耐久性は、用いる材料の特性、種々の材料の相互作用、混合設計、建設施工、並びに舗装が曝される環境及び交通条件のような種々のファクターによって定まる。舗装の有効期間中に良好な性能を有する混合物を製造するためには、最適なアスファルトバインダー膜厚、骨材上へのアスファルトの良好な接着力、及びアスファルトの良好な結合強度を有するアスファルトによって骨材の適当な被覆を得ることが重要である。
【0005】
[0005]通常の舗装は、永久歪み、結合強度、酸化、及び水分による損傷のような種々のタイプの形態の損傷を受ける。永久歪みは、アスファルト舗装に関する大きな問題である。道路は、夏期においては冬期におけるよりも約80〜約100°F以上熱くなる。より熱い温度においては、アスファルト舗装は軟化して、その上を通過する大型トラックの重量下、或いは例えば信号機のある交差点などにおける一時停止を有する交通下において、しばしば「轍掘れ」と呼ばれる突起部及び轍を生成させるクリープ及び動きを与える可能性がある。これは、轍掘れは車両の重量及び重量が加えられる時間の両方によって定まるためである。轍掘れを減少又は阻止するために、アスファルトよりも比較的高い弾性を有するか、又はより熱い温度においてアスファルトよりも高い弾性のアスファルトバインダーを生成させることができるポリマー又は他の材料が、従来のアスファルトバインダー中にしばしば導入されている。アスファルトバインダーを変性して轍掘れを減少又は阻止するために用いられる通常のポリマーとしては、例えばスチレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBS)のようなエラストマー、及び例えばポリエチレン、エチル/ビニルアセテートコポリマー(EVA)などのようなプラストマーが挙げられる。
【0006】
[0006]水分による損傷もまた、従来のアスファルト舗装に関する大きな問題である。水はアスファルトバインダーが有するよりも高い骨材表面に対する親和力を有しており、アスファルトバインダーと骨材表面との間には化学結合は事実上ないか又は僅かしかないので、水は時々骨材表面からアスファルトバインダーを追い出して水分による損傷を引き起こす可能性がある。これは「剥離」として知られている。剥離を減少又は阻止するために、従来のアスファルトバインダー中に剥離防止剤がしばしば導入されている。通常の剥離防止剤としては、通常はアスファルトバインダーに対して高い親和力を示す長い非極性脂肪鎖を含むアミンが挙げられる。これらのアミンの分子構造は、バインダーと骨材との間の接着結合の強度を増加させる傾向がある。
【0007】
[0007]残念なことに、剥離を減少又は阻止するために用いる添加剤は、通常は轍掘れを減少又は阻止しない。同様に、轍掘れを減少又は阻止するために用いるポリマーは、通常は剥離を減少又は阻止しない。これは、剥離及び轍掘れを阻止するための剥離防止添加剤及び轍掘れ防止ポリマーの両方を含むより複雑でよりコスト高のアスファルト舗装組成物の原因となる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]したがって、剥離及び轍掘れの両方を減少又は阻止するのに有効なポリマー添加剤を含むアスファルト舗装材料を提供することが望ましい。更に、かかるアスファルト舗装材料を製造する方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]本発明においては、アスファルト舗装材料及びアスファルト舗装材料の製造方法が提供される。代表的な態様によれば、アスファルト舗装材料は、アスファルト舗装材料の約3〜約8重量%の量で存在するアスファルトバインダーを含む。アスファルトバインダーは、基アスファルト、及び基アスファルトの約0.25〜約10重量%の量で存在する酸化ポリオレフィンを含む。骨材は、アスファルト舗装材料の約92〜約97重量%の量で存在する。酸化ポリオレフィンは、アスファルトバインダーを骨材に有効に接着して、水分によって引き起こされる骨材からのアスファルトバインダーの剥離を阻止する。
【0010】
[0010]他の代表的な態様によれば、アスファルト舗装材料の製造方法が提供される。この方法は、アスファルトバインダー及び骨材を、アスファルト舗装材料を形成するのに有効な条件において混合する工程を含む。アスファルトバインダーはアスファルト舗装材料の約3〜約8重量%の量で存在し、骨材はアスファルト舗装材料の約92〜約97重量%の量で存在する。アスファルトバインダーは、基アスファルト、及び基アスファルトの約0.25〜約10重量%の量で存在する酸化ポリオレフィンを含む。酸化ポリオレフィンは、アスファルトバインダーを骨材に有効に接着して、水分によって引き起こされる骨材からのアスファルトバインダーの剥離を阻止する。
【0011】
[0011]本発明の幾つかの態様を以下の図面と併せて下記に記載する。図面において同様の数値は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】[0012]
図1は、代表的な態様による種々のアスファルト舗装材料の引張り強さ比のグラフによる比較である。
【
図2】[0013]
図2は、代表的な態様にしたがって、種々のアスファルトバインダーで被覆した後に沸騰水試験にかけた骨材の試料の写真を含む。
【
図3】[0014]
図3は、代表的な態様による種々のアスファルト舗装材料の高温の真の等級のグラフによる比較である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0015]以下の詳細な説明は事実上単なる例示であり、発明又は発明の適用及び使用を限定することは意図しない。更に、前述の発明の背景又は以下の詳細な説明において示すいかなる理論によっても限定される意図はない。
【0014】
[0016]本発明において意図する種々の態様は、轍掘れに対する抵抗性を示し、剥離を阻止するためにアスファルトバインダーと骨材との間の向上した接着力を有するアスファルト舗装材料に関する。1つの代表的な態様においては、アスファルト舗装材料は、アスファルトバインダー及び骨材を含む。アスファルトバインダーは、基アスファルト(例えばニート又は非変性アスファルト)、及び酸化ポリオレフィンを含む。本発明者らは、酸化ポリオレフィンは、アスファルトバインダーを変性してより熱い温度におけるアスファルト舗装の永久歪みを減少又は阻止するために好適なプラストマーであることを見出した。更に、本発明者らはまた、酸化ポリオレフィンは、剥離によって損傷を受けたアスファルト舗装の水分に対する抵抗性を向上させるようにアスファルトバインダーと骨材との間の接着促進剤として機能することも見出した。而して、アスファルト舗装材料は、剥離及び轍掘れの両方を減少又は阻止するのに有効で、好ましくは製造するのにより低コストの簡単な材料を提供する酸化ポリオレフィンを含む。
【0015】
[0017]1つの代表的な態様においては、アスファルト舗装材料は、アスファルト舗装材料の約3〜約8重量%の量で存在するアスファルトバインダーを含む。アスファルトバインダーは、基アスファルト、及び基アスファルトの約0.25〜約10重量%、好ましくは約0.5〜約4重量%、より好ましくは約1〜約4重量%の量で存在する酸化ポリオレフィンを含む。
【0016】
[0018]アスファルトは、ASTMによって、主成分が天然又は石油処理において得られる瀝青である暗褐色乃至黒色のセメント質材料として定義されている。アスファルトは、特徴として、飽和物質、芳香族物質、樹脂、及びアスファルテンを含む。
【0017】
[0019]天然、合成、及び変性の全てのタイプのアスファルトを、本発明において意図するアスファルト舗装材料にしたがって用いることができる。天然アスファルトは、母岩アスファルト、レーキアスファルトなどを含む。合成アスファルトは、しばしば石油精製又は精製後操作の副生成物であり、エアブローンアスファルト、ブレンドアスファルト、分解又は残留アスファルト、石油アスファルト、プロパンアスファルト、直留アスファルト、熱アスファルトなどが挙げられる。変性アスファルトとしては、エラストマー、リン酸、ポリリン酸、プラストマー、エチレン/ビニルアセテートコポリマーなど、或いはこれらの変性剤の種々の組み合わせによって変性された基アスファルト(例えば、天然又は合成であってよいニート又は非変性アスファルト)が挙げられる。基アスファルトを変性するために好適なエラストマーの非限定的な例としては、グランドタイヤラバー、ブチルラバー、スチレン/ブタジエンラバー(SBR)、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンターポリマー(SEBS)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)ターポリマー、エチレン/n−ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレートターポリマー、及びスチレン/共役ジエンブロック又はランダムコポリマー、例えばスチレン/ブタジエン、例えばスチレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBS)、スチレン/イソプレン、及びスチレン/イソプレン−ブタジエンブロックコポリマーなどの天然又は合成ラバーが挙げられる。ブロックコポリマーは分岐又は線状であってよく、ジブロック、トリブロック、テトラブロック、又はマルチブロックであってよい。
【0018】
[0020]好ましくは、酸化ポリオレフィンは、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン、及びこれらの混合物であり、より好ましくは酸化ポリエチレンである。一例においては、酸化ポリオレフィンは酸化ポリエチレンホモポリマーである。他の例においては、酸化ポリオレフィンは、好ましくは約0.95〜約1g/ccの密度を有する酸化高密度ポリエチレンである。2種類のかかる好適な酸化ポリオレフィンは、Morristown, New Jerseyに本社を置くHoneywell International Inc.によって製造されているHoneywell Titan(登録商標)7817及びHoneywell Titan(登録商標)7686酸化高密度ポリエチレンホモポリマーである。
【0019】
[0021]1つの代表的な態様においては、酸化ポリオレフィンは、約1000〜約30,000ダルトン、より好ましくは約1000〜約10,000ダルトンの分子量を有する。更に、酸化ポリオレフィンの酸化度、例えばカルボキシル基含量は、酸化ポリマーの溶液を、指示薬としてフェノールフタレインを用いて、0.1Nの水酸化カリウム(KOH)アルコール溶液で視認される「桃色」の終点まで滴定して、酸化ポリオレフィンの全酸含量又は酸価を求めることによって求めることができる。好ましくは、酸化ポリオレフィンは、約5〜約50の酸価(例えば約5〜約50mg−KOH/gの酸価)、より好ましくは約15〜約40の酸価(例えば約15〜約40mg−KOH/gの酸価)を有する。
【0020】
[0022]アスファルト舗装材料はまた骨材も含む。「骨材」は、例えば砂、砂利、又は砕石のようなアスファルトバインダーと混合してアスファルト舗装材料を形成する無機材料に関する総称である。骨材は、天然骨材、人工骨材、又はこれらの組み合わせを含んでいてよい。天然骨材は、通常は、屋外の採掘場(例えば採石場)から採取され、機械破砕によって使用可能な寸法に大きさが縮小された岩石である。人工骨材は、通常は、冶金的処理(例えば、鋼材、錫、及び銅の製造)からのスラグのような他の製造プロセスの副生成物である。人工骨材としてはまた、例えば低い密度のような天然の岩石においては見られない特定の物理特性を有するように製造された特別な材料も含まれる。1つの代表的な態様においては、アスファルト舗装材料は、アスファルト舗装材料の約92〜約97重量%の量で存在する骨材を含む。
【0021】
[0023]好ましい態様においては、アスファルト舗装材料はアスファルトバインダー及び骨材から実質的に構成され、アスファルトバインダーは基アスファルト及び酸化ポリオレフィンから実質的に構成され、通常の剥離防止剤は実質的に有しない。本明細書において用いる「剥離防止剤を実質的に有しない」という用語は、剥離防止剤が、存在する場合には水分による損傷に対する産業標準の抵抗性を満足する量で用いられていないことを意味する。水分による損傷に対するアスファルト舗装材料の抵抗性を求めるための2種類のかかる好適な試験は、AASHTO−T−283及びASTM−D4867の標準手順において規定されている。種々のタイプの通常の剥離防止剤としては、ポリアミン及びポリアルキレンポリアミンのようなアミン類、脂肪酸と反応させたポリアミンのような変性アミン類、消石灰(Ca(OH)
2)などの石灰(CaO)、リン酸、スチレン−アクリル酸ポリマーなどのアクリルポリマー、或いはこれらの組み合わせ及び/又は誘導体が挙げられる。別の態様においては、アスファルトバインダーとしては、例えば基アスファルトの約0.5〜約5重量%の量で存在するSBSのような轍掘れ防止ポリマー及び/又はエラストマーを挙げることができる。
【0022】
[0024]1つの代表的な態様においては、上述のパラグラフにおいて議論したようなアスファルト舗装材料の製造方法が提供される。この方法は、骨材を約120〜約190℃の温度において加熱及び乾燥することを含む。一例においては、例えば高温ガスによるドラムミキサーなどの中での通常の手段(連続又はバッチ)によって骨材を加熱及び乾燥する。基アスファルト又は変性アスファルトは、骨材とは別に約120〜約190℃の温度において液相状態になるまで加熱する。
【0023】
[0025]一態様においては、酸化ポリオレフィンを高温の液体アスファルトに加えて、高温の液体アスファルトバインダーを形成する。次に、高温のアスファルトバインダーを、通常の連続又はバッチ操作で加熱した骨材と混合し、ここでアスファルトバインダー及び骨材を約120〜約190℃の温度において混合して高温の混合アスファルト舗装材料を形成する。
【0024】
[0026]他の態様においては、酸化ポリオレフィンをまずドラムミキサー内で加熱した骨材と混合して、加熱した骨材によって酸化ポリオレフィンを溶融させる。この態様においては、通常の連続又はバッチ操作によって高温の骨材を溶融している酸化ポリオレフィンと混合して、酸化ポリオレフィンによって骨材の表面が被覆されるようにする。次に、高温の液体アスファルトを、ドラムミキサー内で酸化ポリオレフィン被覆骨材と混合し、混合した成分を約120〜約190℃の温度において混合して高温の混合アスファルト舗装材料を形成する。混合プロセス中に、酸化ポリオレフィンは骨材から高温の液体アスファルト中に移動及び/又は拡散して、高温の液体アスファルトバインダーの連続相を形成する。
【実施例】
【0025】
[0027]
図1を参照すると、種々のアスファルト舗装材料の水分による損傷の研究結果を示すグラフが与えられている。特に、この研究においては、アスファルト混合物の水分感受性に対する2種類の異なるポリマー:Honeywell Titan(登録商標)7686酸化高密度ポリエチレンホモポリマー及びHoneywell Titan(登録商標)7205中密度ポリエチレンホモポリマー(Morristown, New Jerseyに本社を置くHoneywell International Inc.によって製造)の効果を評価した。この研究のためのベース組成物として、WisconsinDOT規格を満足するようにデザインされた細粒度の重交通アスファルト舗装混合物を用いた。アスファルト舗装混合物を形成するために用いた骨材は、Wisconsin中北部の著名な骨材源からの花崗岩骨材であった。水分による損傷の試験は、AASHTO−T−283標準手順において規定されている手順を用いて行った。
【0026】
[0028]Honeywell Titan(登録商標)7686酸化高密度ポリエチレンホモポリマー及びHoneywell Titan(登録商標)7205中密度ポリエチレンホモポリマーの効果を、アスファルト混合物中で単独で用いた場合、及びSBSポリマーと組み合わせて用いた場合において評価した。この結果を、SBSのみで変性した基アスファルトから構成されるアスファルトバインダーを用いて製造されたアスファルト混合物とも比較した。試験にはまた、Amsterdam,オランダに本社を置くAkzo Noble N.V.によって製造されているKLING BETA 2250のポリアミン剥離防止剤を含むアスファルト混合物も含ませた。ポリアミン剥離防止剤を含む試料中には、剥離防止剤を基アスファルトの約0.5重量%の量で存在させた。
【0027】
[0029]AASHTO−T−283標準手順によれば、水分感受性試験は、調整していないアスファルト舗装試料に対して調整したアスファルト舗装試料の間接引張り強さの比として水分による損傷を定量化する。全ての試験は、約25℃において、約7%±1%の空隙含量に圧縮した試料を用いて行った。調整した試料に関しては、標準手順は、約55〜約85%の範囲の飽和パーセントのレベルへの真空飽和を行い、次に約60℃において約24時間水浴中に完全に浸漬することを定めている。
【0028】
[0030]示されているように、1番目の2つの棒グラフ102及び104は、それぞれ、剥離防止剤を有しない、及び剥離防止剤を有する、基アスファルトの約4.5重量%の量で存在するSBSを含むアスファルト舗装混合物の引張り強さ比を示す。2番目の2つの棒グラフ106及び108は、それぞれ、剥離防止剤を有しない、及び剥離防止剤を有する、基アスファルトの約3.5重量%の量で存在するHoneywell Titan(登録商標)7686酸化高密度ポリエチレンホモポリマーを含むアスファルト舗装混合物の引張り強さ比を示す。3番目の2つの棒グラフ110及び112は、それぞれ、剥離防止剤を有しない、及び剥離防止剤を有する、基アスファルトの約1重量%の量で存在するSBS及び約2.5重量%の量で存在するHoneywell Titan(登録商標)7686酸化高密度ポリエチレンホモポリマーを含むアスファルト舗装混合物の引張り強さ比を示す。4番目の2つの棒グラフ114及び116は、それぞれ、剥離防止剤を有しない、及び剥離防止剤を有する、基アスファルトの約6重量%の量で存在するHoneywell Titan(登録商標)7205中密度ポリエチレンホモポリマーを含むアスファルト舗装混合物の引張り強さ比を示す。5番目の2つの棒グラフ118及び120は、それぞれ、剥離防止剤を有しない、及び剥離防止剤を有する、基アスファルトの約1重量%の量で存在するSBS及び約3.5重量%の量で存在するHoneywell Titan(登録商標)7205中密度ポリエチレンホモポリマーを含むアスファルト舗装混合物の引張り強さ比を示す。
【0029】
[0031]WisconsinDOT規格によれば、少なくとも0.70のAASHTO−T−283引張り強さ比を有する剥離防止剤を有しないアスファルト舗装混合物は、道路の建設及び/又は維持のために許容できると見なされ、少なくとも0.75のAASHTO−T−283引張り強さ比を有する剥離防止剤を有するアスファルト舗装混合物は、道路の建設及び/又は維持のために許容できると見なされる。示されるように、棒グラフ102、114、及び118によって示されるSBS及び/又はHoneywell Titan(登録商標)7205
中密度ポリエチレンホモポリマーを含み、剥離防止剤を有しないアスファルト混合物は、それぞれ約0.5、0.68、及び0.52の引張り強さ比を有しており、したがって道路の建設及び/又は維持のために許容できないことが分かった。しかしながら、棒グラフ106及び110によって示される、Honeywell Titan(登録商標)7686酸化高密度ポリエチレンホモポリマーを含み、SBSを有するか又は有さず、剥離防止剤を有しないアスファルト混合物は、それぞれ約0.99及び1.01の引張り強さ比を有しており、したがって道路の建設及び/又は維持のために許容できることが分かった。
【0030】
[0032]1つの代表的な態様においては、アスファルト舗装材料はアスファルトバインダー及び骨材を含み、アスファルトバインダーは基アスファルト及び酸化ポリオレフィンを含み、通常の剥離防止剤は実質的に有しない。アスファルト舗装材料は、少なくとも約0.65、好ましくは少なくとも約0.75、より好ましくは少なくとも約0.85、最も好ましくは少なくとも約0.95のAASHTO−T−283引張り強さ比を有する。
【0031】
[0033]
図2を参照すると、代表的な態様にしたがって種々のアスファルトバインダーで被覆した後に沸騰水試験にかけた骨材の試料の写真が与えられている。北西ロシア花崗岩骨材を用いて種々のアスファルト舗装材料の試料を形成した。特に、写真130に対応する試料は、基アスファルト、及び基アスファルトの約3重量%の量で存在するHoneywell Titan(登録商標)7205を含むアスファルトバインダーで被覆した骨材によって形成した。写真132に対応する試料は、基アスファルト、及び基アスファルトの約3重量%の量で存在するSBSを含むアスファルトバインダーで被覆した骨材によって形成した。写真134に対応する試料は、基アスファルト、及び基アスファルトの約3重量%の量で存在するHoneywell Titan(登録商標)7686を含むアスファルトバインダーで被覆した骨材によって形成した。写真136に対応する試料は、基アスファルト、及びそれぞれ基アスファルトの約2.25及び0.75重量%の量で存在するSBS及びHoneywell Titan(登録商標)7686を含むアスファルトバインダーで被覆した骨材によって形成した。
【0032】
[0034]試料を、それぞれ別々に沸騰水中に約10分間配置した後に、取り出して冷却した。写真130及び132において示されるように、アスファルトバインダー中にHoneywell Titan(登録商標)7205及びSBSを含み、Honeywell Titan(登録商標)7686(例えば酸化ポリエチレン)を有しないアスファルト舗装材料の試料は、骨材表面の相当面積が曝露されており、これはアスファルトバインダーの大部分が沸騰試験中に骨材表面から剥離したことを示す。これに対して、アスファルトバインダー中にHoneywell Titan(登録商標)7686を含む写真134及び136において示されるアスファルト舗装材料の試料の骨材は実施的に黒色であり、これはアスファルトバインダーが未だ適所にとどまっており、骨材表面に対する優れた接着力を有していたことを示す。而して、Honeywell Titan(登録商標)7686酸化ポリエチレンは、アスファルトバインダーを骨材に有効に接着して、沸騰試験中の骨材からのアスファルトバインダーの剥離を阻止する。
【0033】
[0035]
図3を参照すると、代表的な態様による種々のアスファルト舗装材料の試料の高温の真の等級を比較するグラフが与えられている。アスファルトセメントの舗装等級は、舗装温度を示す2つの数値によって規定される性能等級(PG)の観点で表される。これらの数値は、AASHTO−M320標準手順を用いて求められる。1番目の数値のPG64−XXは高舗装温度(又は高温の真の等級)を℃で表し、2番目の数値のPG−XX−22は低舗装温度を表す。高舗装温度は轍掘れの効果に関係し、低舗装温度は低温亀裂に関係する。性能等級の高舗装温度(1番目の数値によって示される)がより高いと、アスファルトセメントは轍掘れに対してより抵抗性である。例えば、PG76−22(例えば76の高温の真の等級)の性能等級を有するアスファルトセメントは、PG64−22(例えば64の高温の真の等級)の性能等級を有するアスファルトセメントよりも轍掘れに対してより抵抗性である。
【0034】
[0036]
図3に示すアスファルト舗装材料の試料は、更に轍掘れに対する抵抗性を向上させるために、次のもの:1番目の2つの棒グラフ140及び142に対応する試料に関しては、基アスファルトの約4.5重量%の量で存在するSBS;2番目の2つの棒グラフ144及び146に対応する試料に関しては、それぞれ基アスファルトの約1及び2.5重量%の量で存在するSBS及びHoneywell Titan(登録商標)7686;3番目の2つの棒グラフ148及び150に対応する試料に関しては、基アスファルトの約3.5重量%の量で存在するHoneywell Titan(登録商標)7686;並びに、4番目の2つの棒グラフ152及び154に対応する試料に関しては、それぞれ基アスファルトの約1及び3.5重量%の量で存在するSBS及びHoneywell Titan(登録商標)7205:を加えて変性したPG−64の性能等級を有するアスファルト舗装配合物を用いて調製した。また、AASHTO−M320標準手順にしたがって、棒グラフ140、144、148、及び152に対応する試料は、経時変化させていないアスファルト舗装材料の試料であり、棒グラフ142、146、150、及び154に対応する試料は、約163℃において約85分間の間、短時間熱経時変化させた試料であった。
【0035】
[0037]示されるように、全ての場合において試料は76よりも大きい高温の真の等級の値を示した。これは、これらのアスファルト舗装材料は轍掘れに対して比較的良好な抵抗性を有し、少なくともPG−76−22の対応する性能等級を有することを示す。特に、棒グラフ148及び150に対応する基アスファルトの約3.5重量%の量で存在するHoneywell Titan(登録商標)7686を含む試料は、それぞれ約82及び約79の最も高い高温の真の等級の値を有していた。これは、轍掘れに対する優れた抵抗性を示す。而して、Honeywell Titan(登録商標)7686酸化ポリエチレンは轍掘れ防止ポリマーとして有効である。
【0036】
[0038]したがって、轍掘れに対する抵抗性を示し、剥離を阻止するためにアスファルトバインダーと骨材との間の向上した接着力を有するアスファルト舗装材料を記載した。代表的な態様においては、アスファルト舗装材料はアスファルトバインダー及び骨材を含む。アスファルトバインダーは、基アスファルト及び酸化ポリオレフィンを含む。酸化ポリオレフィンは、アスファルトバインダーを変性して、重量、時間、及び車両の数によって引き起こされるより熱い温度におけるアスファルト舗装の永久歪みを減少又は阻止するのに好適なプラストマーである。更に、酸化ポリオレフィンは、アスファルトバインダーと骨材との間の接着促進剤として機能して、アスファルト舗装の剥離によって引き起こされる水分による損傷に対する抵抗性を向上させることが分かった。而して、このアスファルト舗装材料は、剥離及び轍掘れの両方を減少又は阻止するために有効であり、好ましくは製造するのがより低コストである簡単な材料を提供する酸化ポリオレフィンを含む。
【0037】
[0039]上記の詳細な説明において少なくとも1つの代表的な態様を示したが、膨大な数のバリエーションが存在することを認識すべきである。また、代表的な態様又は代表的な複数の態様は例に過ぎず、いかなるようにも発明の範囲、適用性、又は構成を限定することは意図しないことも認識すべきである。むしろ、上記の詳細な説明は、発明の代表的な態様を実施するための簡便な指針を当業者に与えるものであり、特許請求の範囲に示す発明の範囲及びその法律的な均等範囲から逸脱することなく、代表的な態様において記載されている機能及び要素の配置において種々の変更を行うことができることが理解される。
以下に本発明の態様を示す。
(1)基アスファルト、及び基アスファルトの約0.25〜約10重量%の量で存在する酸化ポリオレフィンを含む、アスファルト舗装材料の約3〜約8重量%の量で存在するアスファルトバインダー;及び
アスファルト舗装材料の約92〜約97重量%の量で存在する骨材;
を含み;
酸化ポリオレフィンがアスファルトバインダーを骨材に有効に接着して、水分によって引き起こされる骨材からのアスファルトバインダーの剥離を阻止するアスファルト舗装材料。
(2)酸化ポリオレフィンがアスファルトバインダーを骨材に有効に接着して、アスファルト舗装材料が少なくとも約0.65のAASHTO−T−283引張り強さ比を有する、(1)に記載のアスファルト舗装材料。
(3)酸化ポリオレフィンがアスファルトバインダーを骨材に有効に接着して、アスファルト舗装材料が少なくとも約0.75のAASHTO−T−283引張り強さ比を有する、(1)に記載のアスファルト舗装材料。
(4)酸化ポリオレフィンが基アスファルトの約1〜約4重量%の量で存在する、(19に記載のアスファルト舗装材料。
(5)酸化ポリオレフィンが、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、(19に記載のアスファルト舗装材料。
(6)酸化ポリオレフィンが酸化ポリエチレンホモポリマーを含む、(1)に記載のアスファルト舗装材料。
(7)酸化ポリオレフィンが酸化高密度ポリエチレンを含む、(1)に記載のアスファルト舗装材料。
(8)酸化ポリオレフィンが約1000〜約30,000ダルトンの分子量を有する、(1)に記載のアスファルト舗装材料。
(9)酸化ポリオレフィンが約5〜約50の酸価を有する、(1)に記載のアスファルト舗装材料。
(10)アスファルトバインダーが、基アスファルトの約0.5〜約5重量%の量で存在するエラストマーを更に含む、(1)に記載のアスファルト舗装材料。
(11)アスファルトバインダーが剥離剤を実質的に含まない、(1)に記載のアスファルト舗装材料。
(12)アスファルトバインダーが基アスファルト及び酸化ポリオレフィンから実質的に構成される、(1)に記載のアスファルト舗装材料。
(13)アスファルト舗装材料がアスファルトバインダー及び骨材から実質的に構成される、(12)に記載のアスファルト舗装材料。
(14)アスファルトバインダー及び骨材を、アスファルト舗装材料を形成するのに有効な条件において混合する工程を含み、アスファルトバインダーはアスファルト舗装材料の約3〜約8重量%の量で存在し、骨材はアスファルト舗装材料の約92〜約97重量%の量で存在し、アスファルトバインダーは、基アスファルト、及び基アスファルトの約0.25〜約10重量%の量で存在する酸化ポリオレフィンを含み、酸化ポリオレフィンがアスファルトバインダーを骨材に有効に接着して、水分によって引き起こされる骨材からのアスファルトバインダーの剥離を阻止する、アスファルト舗装材料の製造方法。
(15)アスファルトバインダー及び骨材を混合する工程が、アスファルトバインダー及び骨材を約120〜約190℃の温度で混合することを含む、(14)に記載の方法。