特許第5964332号(P5964332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5964332画像表示装置、画像表示方法及び画像表示プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964332
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】画像表示装置、画像表示方法及び画像表示プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20160721BHJP
   G08G 1/0962 20060101ALI20160721BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   G01C21/36
   G08G1/0962
   B60K35/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-556168(P2013-556168)
(86)(22)【出願日】2012年2月3日
(86)【国際出願番号】JP2012052510
(87)【国際公開番号】WO2013114617
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2014年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】藤原 稔樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 誠二
(72)【発明者】
【氏名】塚田 卓也
【審査官】 相羽 昌孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−207780(JP,A)
【文献】 特開2007−055365(JP,A)
【文献】 特開2007−147564(JP,A)
【文献】 特開2009−250827(JP,A)
【文献】 特開2007−256124(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/172842(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00−21/36
G01C 23/00−25/00
G08G 1/00−99/00
B60K 35/00−37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の進行方向の実風景、又は前記実風景を撮影することにより得られた実写画像に重ね合わせて、案内情報を表示させる表示制御手段と、
前記移動体が位置している道路の傾斜角度に応じて、前記表示制御手段による前記案内情報のうち、目的地までの経路に関する情報の表示を制限し、他の案内情報を表示する制御を行う制御手段と、を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記実風景又は前記実写画像中の案内対象に対して前記目的地までの経路に関する情報がずれて表示されるような走行状態である場合に、前記目的地までの経路に関する情報の表示を制限することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、所定量以上の前記実風景又は前記実写画像の変化を生じさせるような走行状態である場合に、前記目的地までの経路に関する情報の表示を制限することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記走行状態を検出するセンサの出力に基づいて、前記目的地までの経路に関する情報の表示を制限する制御を行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記制御手段は、自車位置に比較的近い場所についてのランドマークや登録地点のみを非表示とし、自車位置からある程度離れた場所についてのランドマークや登録地点は表示することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記制御手段は、地図データに基づいて前記走行状態を判断して、前記目的地までの経路に関する情報の表示を制限する制御を行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記制御手段は、所定の地点までの距離が所定値未満となった際に、前記目的地までの経路に関する情報の表示を制限すべき走行状態であると判断して、当該目的地までの経路に関する情報の表示を制限することを特徴とする請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記距離が前記所定値未満となった際に、前記目的地までの案内ルートを非表示とすることを特徴とする請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項9】
画像表示装置によって実行される画像表示方法であって、
移動体の進行方向の実風景、又は前記実風景を撮影することにより得られた実写画像に重ね合わせて、案内情報を表示させる表示制御工程と、
前記移動体が位置している道路の傾斜角度に応じて、前記表示制御工程による前記案内情報のうち、目的地までの経路に関する情報の表示を制限し、他の案内情報を表示する制御を行う制御工程と、を備えることを特徴とする画像表示方法。
【請求項10】
コンピュータを有する画像表示装置によって実行される画像表示プログラムであって、
前記コンピュータを、
移動体の進行方向の実風景、又は前記実風景を撮影することにより得られた実写画像に重ね合わせて、案内情報を前記実風景、又は前記実写画像に含まれる案内対象に対して所定の位置又は角度をもって表示させる表示制御手段、
前記移動体が位置している道路の傾斜角度に応じて、前記表示制御手段による前記案内情報のうち、目的地までの経路に関する情報の表示を制限し、他の案内情報を表示する制御を行う制御手段、として機能させることを特徴とする画像表示プログラム。
【請求項11】
移動体の進行方向の実風景、又は前記実風景を撮影することにより得られた実写画像に重ね合わせて、案内情報を表示させる表示制御手段と、
前記移動体が位置している道路の傾斜角度に応じて、前記表示制御手段による前記案内情報のうち、案内地点における進行方向を示す情報の表示を制限し、案内地点を示す情報を表示する制御を行う制御手段と、を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項12】
画像表示装置によって実行される画像表示方法であって、
移動体の進行方向の実風景、又は前記実風景を撮影することにより得られた実写画像に重ね合わせて、案内情報を表示させる表示制御工程と、
前記移動体が位置している道路の傾斜角度に応じて、前記表示制御工程による前記案内情報のうち、案内地点における進行方向を示す情報の表示を制限し、案内地点を示す情報を表示する制御を行う制御工程と、を備えることを特徴とする画像表示方法。
【請求項13】
コンピュータを有する画像表示装置によって実行される画像表示プログラムであって、
前記コンピュータを、
移動体の進行方向の実風景、又は前記実風景を撮影することにより得られた実写画像に重ね合わせて、案内情報を前記実風景、又は前記実写画像に含まれる案内対象に対して所定の位置又は角度をもって表示させる表示制御手段、
前記移動体が位置している道路の傾斜角度に応じて、前記表示制御手段による前記案内情報のうち、案内地点における進行方向を示す情報の表示を制限し、案内地点を示す情報を表示する制御を行う制御手段、として機能させることを特徴とする画像表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の進行方向の実風景や実風景を撮影した実写画像に重ね合わせて案内情報などを表示する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の進行方向の風景をカメラによって撮影し、撮影により得られた実写画像上に、ナビゲーション情報などの案内情報を表示させる技術(以下では、このような表示を適宜「AR(Augmented Reality)表示」と呼ぶ。)が提案されている。例えば、特許文献1には、カメラで取得された実写画像上に、案内ルートを重ね合わせて表示させる技術が記載されている。具体的には、特許文献1には、このような実写画像を用いたルート案内表示が見え難い場合に、地図データなどに基づいて生成したバーチャル画像(CG画像)による案内画面に切り替えることが記載されている。
【0003】
なお、上記した「AR表示」には、ヘッドアップディスプレイなどの装置を用いて、車両の進行方向の実風景に重畳して案内情報などを表示させる技術も含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−241276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したようなAR表示を行った場合、車両の走行状態によっては、実写画像や実風景に対して、案内情報がずれて表示されてしまう可能性があった。具体的には、案内情報が案内対象に対して遅れて表示されてしまう可能性があった。そのため、車両の走行状態によっては、適切に案内を行うことができないという可能性があった。なお、特許文献1には、このような不具合に対処する手法などについては記載されていない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、上記のものが一例として挙げられる。本発明は、移動体の走行状態に応じて、案内情報の表示を適切に制御することが可能な画像表示装置、画像表示方法及び画像表示プログラムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、画像表示装置は、移動体の進行方向の実風景、又は前記実風景を撮影することにより得られた実写画像に重ね合わせて、案内情報を表示させる表示制御手段と、前記移動体が位置している道路の傾斜角度に応じて、前記表示制御手段による前記案内情報のうち、目的地までの経路に関する情報の表示を制限し、他の案内情報を表示する制御を行う制御手段と、を備える。
【0008】
請求項に記載の発明では、画像表示装置によって実行される画像表示方法は、移動体の進行方向の実風景、又は前記実風景を撮影することにより得られた実写画像に重ね合わせて、案内情報を表示させる表示制御工程と、前記移動体が位置している道路の傾斜角度に応じて、前記表示制御工程による前記案内情報のうち、目的地までの経路に関する情報の表示を制限し、他の案内情報を表示する制御を行う制御工程と、を備える。
【0009】
請求項10に記載の発明では、コンピュータを有する画像表示装置によって実行される画像表示プログラムは、前記コンピュータを、移動体の進行方向の実風景、又は前記実風景を撮影することにより得られた実写画像に重ね合わせて、案内情報を前記実風景、又は前記実写画像に含まれる案内対象に対して所定の位置又は角度をもって表示させる表示制御手段、前記移動体が位置している道路の傾斜角度に応じて、前記表示制御手段による前記案内情報のうち、目的地までの経路に関する情報の表示を制限し、他の案内情報を表示する制御を行う制御手段、として機能させる。
請求項11に記載の発明では、画像表示装置は、移動体の進行方向の実風景、又は前記実風景を撮影することにより得られた実写画像に重ね合わせて、案内情報を表示させる表示制御手段と、前記移動体が位置している道路の傾斜角度に応じて、前記表示制御手段による前記案内情報のうち、案内地点における進行方向を示す情報の表示を制限し、案内地点を示す情報を表示する制御を行う制御手段と、を備える。
請求項12に記載の発明では、画像表示装置によって実行される画像表示方法は、移動体の進行方向の実風景、又は前記実風景を撮影することにより得られた実写画像に重ね合わせて、案内情報を表示させる表示制御工程と、前記移動体が位置している道路の傾斜角度に応じて、前記表示制御工程による前記案内情報のうち、案内地点における進行方向を示す情報の表示を制限し、案内地点を示す情報を表示する制御を行う制御工程と、を備える。
請求項13に記載の発明では、コンピュータを有する画像表示装置によって実行される画像表示プログラムは、前記コンピュータを、移動体の進行方向の実風景、又は前記実風景を撮影することにより得られた実写画像に重ね合わせて、案内情報を前記実風景、又は前記実写画像に含まれる案内対象に対して所定の位置又は角度をもって表示させる表示制御手段、前記移動体が位置している道路の傾斜角度に応じて、前記表示制御手段による前記案内情報のうち、案内地点における進行方向を示す情報の表示を制限し、案内地点を示す情報を表示する制御を行う制御手段、として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例に係るシステムの構成例を示す。
図2】ナビゲーション装置の概略構成を示す。
図3】ヘッドアップディスプレイの概略構成を示す。
図4】表示ずれの一例を示す。
図5】第1実施例による表示例を示す。
図6】第1実施例に係る処理フローを示す。
図7】第2実施例に係る処理フローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の1つの観点では、画像表示装置は、移動体の進行方向の実風景、又は前記実風景を撮影することにより得られた実写画像に重ね合わせて、案内情報を前記実風景又は、前記実写画像に含まれる案内対象に対して所定の位置又は角度をもって表示させる表示制御手段と、前記移動体の走行状態に応じて、前記表示制御手段による前記案内情報の表示を制限する制御を行う制限手段と、を備える。
【0012】
上記の画像表示装置は、移動体の進行方向の実風景、又は実風景を撮影することにより得られた実写画像に重ね合わせて、案内情報を表示させる。例えば、案内情報は、目的地までのルート(案内ルート)や、所定の施設や場所を示す情報などであり、実風景又は実写画像に含まれる道路や施設などの案内対象に対して表示される。制限手段は、移動体の走行状態に応じて、案内情報の表示を制限する制御を行う。例えば、制限手段は、案内情報を非表示とする。このように走行状態に応じて案内情報の表示を制限することで、実風景又は実写画像に含まれる案内対象に対して案内情報がずれて表示されてしまうことを抑制することが可能となる。
【0013】
上記の画像表示装置の一態様では、前記制限手段は、前記実風景又は前記実写画像中の案内対象に対して前記案内情報がずれて表示されるような走行状態である場合に、前記案内情報の表示を制限する。例えば、当該走行状態としては、所定量以上の実風景又は実写画像の変化を生じさせるような走行状態が挙げられる。なお、「所定量」は、案内情報がずれて表示されてしまうといった現象が生じるような実風景又は実写画像における変化量に相当し、画像表示装置の通信速度や描画処理能力などにより定められる。
【0014】
上記の画像表示装置の他の一態様では、前記制限手段は、前記走行状態を検出するセンサの出力に基づいて、前記案内情報の表示を制限する制御を行う。この態様によれば、センサの出力に基づいて、案内対象に対して案内情報がずれて表示されてしまうといった現象が生じるような走行状態であるか否かを判断して、案内情報の表示を制限することができる。好適な例では、前記制限手段は、前記移動体の進行方向の単位時間当たりの方位変化量が所定値以上である場合に、前記案内情報の表示を制限することができる。例えば、前記制限手段は、前記進行方向の単位時間当たりの方位変化量が前記所定値以上である場合に、所定の施設及び地点を示す情報、並びに前記案内情報として設定した目的地までの案内ルートを非表示とする。
【0015】
また、他の好適な例では、前記制限手段は、前記移動体の速度が所定値以上である場合に、前記案内情報の表示を制限する。例えば、前記制限手段は、前記速度が前記所定値以上である場合に、所定の施設及び地点を示す情報を非表示とする。
【0016】
上記の画像表示装置の他の一態様では、前記制限手段は、地図データに基づいて前記走行状態を判断して、前記案内情報の表示を制限する制御を行う。この態様によれば、地図データに基づいて、案内情報がずれて表示されてしまうといった現象が生じるような走行状態であるか否かを判断して、案内情報の表示を制限することができる。好適な例では、前記制限手段は、所定の地点までの距離が所定値未満となった際に、前記案内情報の表示を制限すべき走行状態であると判断して、当該案内情報の表示を制限する。例えば、前記制限手段は、前記距離が前記所定値未満となった際に、前記案内情報として設定した目的地までの案内ルートを非表示とする。
【0017】
本発明の他の観点では、画像表示装置によって実行される画像表示方法は、移動体の進行方向の実風景、又は前記実風景を撮影することにより得られた実写画像に重ね合わせて、案内情報を前記実風景、又は前記実写画像に含まれる案内対象に対して所定の位置又は角度をもって表示させる表示制御工程と、前記移動体の走行状態に応じて、前記表示制御工程による前記案内情報の表示を制限する制御を行う制限工程と、を備える。
【0018】
本発明の更に他の観点では、コンピュータを有する画像表示装置によって実行される画像表示プログラムは、前記コンピュータを、移動体の進行方向の実風景、又は前記実風景を撮影することにより得られた実写画像に重ね合わせて、案内情報を前記実風景、又は前記実写画像に含まれる案内対象に対して所定の位置又は角度をもって表示させる表示制御手段、前記移動体の走行状態に応じて、前記表示制御手段による前記案内情報の表示を制限する制御を行う制限手段、として機能させる。
【実施例】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0020】
[システム構成]
図1は、本実施例に係るシステムの構成例を示す。図1に示すように、当該システムは、ナビゲーション装置1と、ヘッドアップディスプレイ2とを備える。また、当該システムは、車両に搭載される。
【0021】
ナビゲーション装置1は、出発地から目的地までの経路案内を行う機能などを有する。ナビゲーション装置1は、例えば、車両に設置される据え置き型のナビゲーション装置、PND(Portable Navigation Device)、又はスマートフォンなどの携帯電話とすることができる。
【0022】
ヘッドアップディスプレイ2は、現在位置を含む地図情報や経路案内情報、走行速度、その他運転を補助する情報を表示する画像を生成し、当該画像を運転者の目の位置(アイポイント)から虚像として視認させる装置である。ヘッドアップディスプレイ2には、車両の現在位置、車両の走行速度、地図情報、及び施設データなどの各種情報がナビゲーション装置1から供給される。ヘッドアップディスプレイ2は、本発明における「画像表示装置」の一例である。
【0023】
なお、ナビゲーション装置1がスマートフォンなどの携帯電話である場合、ナビゲーション装置1は、クレードルなどによって保持されても良い。この場合、ナビゲーション装置1は、クレードルなどを介して、ヘッドアップディスプレイ2と情報の授受を行うこととしても良い。
【0024】
[ナビゲーション装置の構成]
図2は、ナビゲーション装置1の構成を示す。図2に示すように、ナビゲーション装置1は、自立測位装置10、GPS受信機18、システムコントローラ20、ディスクドライブ31、データ記憶ユニット36、通信用インタフェース37、通信装置38、インタフェース39、表示ユニット40、音声出力ユニット50、及び入力装置60を備える。
【0025】
自立測位装置10は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13を備える。加速度センサ11は、例えば圧電素子からなり、車両の加速度を検出し、加速度データを出力する。角速度センサ12は、例えば振動ジャイロからなり、車両の方向変換時における車両の角速度を検出し、角速度データ及び相対方位データを出力する。距離センサ13は、車両の車輪の回転に伴って発生されているパルス信号からなる車速パルスを計測する。
【0026】
GPS受信機18は、複数のGPS衛星から、測位用データを含む下り回線データを搬送する電波19を受信する。測位用データは、緯度及び経度情報等から車両の絶対的な位置(以下では、「現在位置」と呼ぶ。)を検出するために用いられる。
【0027】
システムコントローラ20は、インタフェース21、CPU(Central Processing Unit)22、ROM(Read Only Memory)23及びRAM(Random Access Memory)24を含んでおり、ナビゲーション装置1全体の制御を行う。
【0028】
インタフェース21は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13並びにGPS受信機18とのインタフェース動作を行う。そして、これらから、車速パルス、加速度データ、相対方位データ、角速度データ、GPS測位データ、絶対方位データ等をシステムコントローラ20に入力する。CPU22は、システムコントローラ20全体を制御する。ROM23は、システムコントローラ20を制御する制御プログラム等が格納された図示しない不揮発性メモリ等を有する。RAM24は、入力装置60を介して使用者により予め設定された経路データ等の各種データを読み出し可能に格納したり、CPU22に対してワーキングエリアを提供したりする。
【0029】
システムコントローラ20、CD−ROMドライブ又はDVD−ROMドライブなどのディスクドライブ31、データ記憶ユニット36、通信用インタフェース37、表示ユニット40、音声出力ユニット50及び入力装置60は、バスライン30を介して相互に接続されている。
【0030】
ディスクドライブ31は、システムコントローラ20の制御の下、CD又はDVDといったディスク33から、音楽データ、映像データなどのコンテンツデータを読み出し、出力する。なお、ディスクドライブ31は、CD−ROMドライブ又はDVD−ROMドライブのうち、いずれか一方としてもよいし、CD及びDVDコンパチブルのドライブとしてもよい。データ記憶ユニット36は、例えば、HDDなどにより構成され、地図データなどのナビゲーション処理に用いられる各種データを記憶するユニットである。通信装置38は、例えば、FMチューナやビーコンレシーバ、携帯電話や専用の通信カードなどにより構成され、VICS(Vehicle Information Communication System)センタなどから配信される情報(「VICS」は登録商標である。)を電波39より取得する。そしてインタフェース37は、通信装置38のインタフェース動作を行い、VICS情報をシステムコントローラ20等に入力する。また、通信装置38は、GPS受信機18から取得した現在位置の情報などをヘッドアップディスプレイ2に送信する。
【0031】
表示ユニット40は、システムコントローラ20の制御の下、各種表示データをディスプレイなどの表示装置に表示する。具体的には、システムコントローラ20は、データ記憶ユニット36から地図データを読み出す。表示ユニット40は、システムコントローラ20によってデータ記憶ユニット36から読み出された地図データなどを表示画面上に表示する。表示ユニット40は、バスライン30を介してCPU22から送られる制御データに基づいて表示ユニット40全体の制御を行うグラフィックコントローラ41と、VRAM(Video RAM)等のメモリからなり即時表示可能な画像情報を一時的に記憶するバッファメモリ42と、グラフィックコントローラ41から出力される画像データに基づいて、液晶等のディスプレイ44を表示制御する表示制御部43と、ディスプレイ44とを備える。ディスプレイ44は、画像表示部として機能し、例えば対角5〜10インチ程度の液晶表示装置等からなり、車内のフロントパネル付近に装着される。
【0032】
音声出力ユニット50は、システムコントローラ20の制御の下、CD−ROMドライブ31又はDVD−ROM32、若しくはRAM24等からバスライン30を介して送られる音声デジタルデータのD/A(Digital to Analog)変換を行うD/Aコンバータ51と、D/Aコンバータ51から出力される音声アナログ信号を増幅する増幅器(AMP)52と、増幅された音声アナログ信号を音声に変換して車内に出力するスピーカ53とを備えて構成されている。
【0033】
入力装置60は、各種コマンドやデータを入力するための、キー、スイッチ、ボタン、リモコン、音声入力装置等から構成されている。入力装置60は、車内に搭載された当該車載用電子システムの本体のフロントパネルやディスプレイ44の周囲に配置される。また、ディスプレイ44がタッチパネル方式の場合、ディスプレイ44の表示画面上に設けられたタッチパネルも入力装置60として機能する。
【0034】
本実施例では、ナビゲーション装置1は、車両の現在位置などに基づいて、ユーザを案内するための案内情報を生成し、当該案内情報をヘッドアップディスプレイ2に送信する。案内情報は、目的地までのルート(案内ルート)や、所定の施設や場所を示す情報などであり、道路や施設などの所定の案内対象に対して表示される。ルートは、ナビゲーション装置1によって、データ記憶ユニット36に記憶された地図データなどに基づいて求められる。所定の施設や場所を示す情報は、ランドマークの情報や、ユーザが登録した施設や場所を示す情報などであり、例えば地図データとしてデータ記憶ユニット36に記憶されている。
【0035】
[ヘッドアップディスプレイの構成]
図3は、ヘッドアップディスプレイ2の概略構成図である。図3に示すように、本実施例に係るヘッドアップディスプレイ2は、光源ユニット3と、コンバイナ9とを備え、フロントウィンドウ25、天井部27、ボンネット28、及びダッシュボード29などを備える車両に取り付けられる。
【0036】
光源ユニット3は、支持部材5a、5bを介して車室内の天井部27に設置され、運転を補助する情報を示す画像を構成する光を、コンバイナ9に向けて出射する。具体的には、光源ユニット3は、制御部4の制御に基づき、光源ユニット3内に表示像の元画像(実像)を生成し、その画像を構成する光をコンバイナ9へ出射することで、コンバイナ9を介して運転者に虚像「Iv」を視認させる。例えば、光源ユニット3は、レーザ光源やLCD光源などの光源を有しており、光源から光を出射する。
【0037】
コンバイナ9は、光源ユニット3から出射される表示像が投影されると共に、表示像を運転者のアイポイントPeへ反射することで当該表示像を虚像Ivとして表示させる。そして、コンバイナ9は、天井部27に設置された支持軸部8を有し、支持軸部8を支軸として回動する。支持軸部8は、例えば、フロントウィンドウ25の上端近傍の天井部27、言い換えると運転者用の図示しないサンバイザが設置される位置の近傍に設置される。なお、支持軸部8は、上述のサンバイザに代えて設置されてもよい。
【0038】
制御部4は、図示しないCPUやRAM、ROMなどを有し、ヘッドアップディスプレイ2の全般的な制御を行う。制御部4は、ナビゲーション装置1と通信が可能であり、上記したような案内情報をナビゲーション装置1から受信する。そして、制御部4は、コンバイナ9を透して観察される実風景に重畳させて、案内情報を表示させる制御を行う。つまり、AR表示のための制御を行う。例えば、制御部4は、案内情報としてのルートに対応する虚像が、コンバイナ9を通して観察される実風景中の当該ルートに対応する道路に応じた位置に、重畳して視認されるように制御を行う。また、例えば、制御部4は、案内情報としての施設や場所を示す情報に対応する虚像が、コンバイナ9を通して観察される実風景中の当該施設や当該場所に応じた位置に、重畳して視認されるように制御を行う。なお、制御部4は、本発明における「表示制御手段」及び「制限手段」の一例である。
【0039】
なお、図3に示したように、コンバイナ9を用いて画像を表示させることに限定はされず、コンバイナ9の代わりにフロントガラスを用いて画像を表示させても良い。また、光源ユニット3を天井部27に設置することに限定はされず、天井部27の代わりにダッシュボード29の内部に光源ユニット3を設置しても良い。
【0040】
[制御方法]
次に、本実施例において、ヘッドアップディスプレイ2内の制御部4が行う制御方法について説明する。
【0041】
本実施例では、制御部4は、車両の走行状態に応じて、案内情報の表示を制限する制御を行う。具体的には、制御部4は、実風景(コンバイナ9を通して観察される実風景)に対して案内情報がずれて表示されるような走行状態である場合に、案内情報の表示を制限する。実風景に対して案内情報がずれて表示されてしまうといった現象は、例えば、車両の進行方向の実風景が大きく変わるような走行状態において生じ得る。制御部4は、そのような走行状態において、案内情報の一部を非表示としたり(残りの案内情報は表示させる)、案内情報の全部を非表示としたりする制御を行う。
【0042】
上記のような制御を行う理由を、図4を参照して具体的に説明する。ここでは、本実施例に係る制御を行わなかった場合(つまり案内情報の表示を制限しなかった場合)について説明する。なお、図4では、説明の便宜上、実風景をイラストにて示している(後述する図5も同様とする)。
【0043】
図4(a)及び(b)は、運転者がコンバイナ9を透して視認する像の一例を示している。図4(a)は、車両が前方の案内地点(交差点)に向かって直進している最中の図を示している。この際には、設定されたルート70aと、案内地点で左折すべきことを示す矢印70bと、案内地点を示す旗70cと、が案内情報として表示されている(ルート70a、矢印70b及び旗70cは虚像である)。これより、ルート70a、矢印70b及び旗70cが、実風景に対して適切に表示されていることがわかる。具体的には、ルート70aは、対応する道路に応じた位置に表示されていると共に、当該道路の形状に一致していることがわかる。また、矢印70b及び旗70cは、案内地点としての交差点の位置に適切に表示されていることがわかる。
【0044】
図4(b)は、車両が図4(a)に示した案内地点(交差点)を旋回している最中に、表示ずれが生じた場合を説明するための図を示している。このように、旋回中にルート71a、矢印71b及び旗71cが、案内情報として表示されている)と、これら、ルート71a、矢印71b及び旗71cが、実風景に対してずれて表示されていることがわかる。具体的には、本来ならば前方に延びる道路を直進すべきことを示すルートが表示されるところ、左折すべきことを示すルート71aが表示されており、案内地点を通り過ぎたにも関わらず、矢印71b及び旗71cも表示されている。つまり、旋回する直前に表示されていた案内情報がそのまま表示されていると言える。言い換えると、案内情報が遅れて表示されていると言える。
【0045】
図4(b)に示すような現象(以下では単に「表示ずれ」と呼ぶ。)は、ナビゲーション装置1とヘッドアップディスプレイ2との通信遅れや、ヘッドアップディスプレイ2での描画処理の遅れなどにより生じ得る。特に、交差点での旋回中には表示すべき対象が多いため、表示ずれが生じる可能性があり、このような表示ずれが生じた場合には、案内情報について違和感や誤認識などをユーザに生じさせてしまう可能性がある。例えば、図4(b)に示したような表示ずれが生じた場合には、道路が存在しない方向(左方向)に案内されているとの誤解をユーザに生じさせてしまう可能性がある。
【0046】
したがって、本実施例では、このような表示ずれに対して対処すべく、表示ずれが生じるような走行状態である場合に、案内情報の表示を制限する。具体的には、制御部4は、車両の進行方向の実風景が大きく変わるような走行状態である場合に、表示ずれが生じるような走行状態であると判断して、案内情報の表示を制限する。例えば、制御部4は、ナビゲーション装置1内の自立測位装置10からの出力を取得して、当該出力に基づいて走行状態を判断して、案内情報の表示を制限する制御を行う。
【0047】
以下では、上記した制御方法の具体例(第1実施例及び第2実施例)について説明する。
【0048】
(第1実施例)
第1実施例では、車両が旋回している際に(ここでの「旋回」は車両が右折又は左折している走行状態を意味する。以下同様とする。)、案内情報の表示を制限する。つまり、第1実施例では、車両が旋回している場合には、車両の進行方向の実風景が大きく変わることで案内対象に対する表示ずれが生じ得るものと判断して、案内情報の表示を制限する。具体的には、制御部4は、車両の方位変化量(言い換えると旋回速度)が所定値以上である場合に、案内情報の表示を制限する。例えば、制御部4は、車両の進行方向に対する単位時間当たりの方位変化量が所定値以上である場合に、案内情報としてのルートを非表示とする。
【0049】
図5は、第1実施例による表示例を示している。つまり、上記単位時間当たりの方位変化量が所定値以上であるために案内情報の表示を制限した場合の表示例を示している。図5(a)及び(b)は、車両が図4(a)に示した案内地点(交差点)を旋回している最中において、運転者がコンバイナ9を透して視認する像を示している。なお、図5(a)及び(b)における実風景の部分は、図4(b)と同様である。
【0050】
図5(a)は、第1実施例における第1の表示例を示している。図5(a)に示すように、第1の表示例においては、制御部4は、全ての案内情報を非表示とする。具体的には、制御部4は、図4(b)に示したルート71a、矢印71b及び旗71cの全てを非表示とする。これにより、上記したような表示ずれを適切に抑制することができる。そのため、表示ずれによる違和感や誤認識などを適切に抑制することが可能となる。
【0051】
図5(b)は、第1実施例における第2の表示例を示している。図5(b)に示すように、第2の表示例においては、制御部4は、一部の案内情報のみを非表示とする。具体的には、制御部4は、図4(b)に示したものと同様の旗71cのみを表示させ、図4(b)に示したルート71a及び矢印71bを非表示とする。第2の表示例では、ルート71a及び矢印71bを表示させると、表示ずれにより違和感や誤認識を生じさせてしまう可能性があるため、これらを非表示とし、旗71cについては、表示ずれにより違和感や誤認識を生じさせてしまう可能性は低いものとして、そのまま表示している。このような第2の表示例によっても、表示ずれによる違和感や誤認識などを適切に抑制することが可能となる。
【0052】
図6は、第1実施例に係る処理フローを示している。この処理フローは、ヘッドアップディスプレイ2内の制御部4によって繰り返し実行される。
【0053】
まず、ステップS101では、制御部4は、ナビゲーション装置1内の自立測位装置10(具体的には角速度センサ12)によって検出された方位変化量[deg]を取得し、当該方位変化量[deg]を所定時間積算する。例えば、当該方位変化量は、100[msec]ごとにナビゲーション装置1から取得され、当該方位変化量を0.1〜0.5[sec]の間積算する。そして、処理はステップS102に進む。
【0054】
ステップS102では、制御部4は、ステップS101で積算された方位変化量から、単位時間当たり、具体的には1秒当たりの方位変化量[deg/sec]を計算する。そして、処理はステップS103に進む。
【0055】
ステップS103では、制御部4は、ステップS102で計算された1秒当たりの方位変化量が、所定値以上であるか否かを判定する。当該判定に用いる所定値は、車両の進行方向の実風景が大きく変わることで表示ずれが生じる可能性があるような方位変化量に基づいて定められる。例えば、当該所定値は30[deg/sec]が用いられる。
【0056】
1秒当たりの方位変化量が所定値以上である場合(ステップS103:Yes)、処理はステップS104に進む。この場合には、制御部4は、表示ずれが生じ得る走行状態であるものと判断して、案内情報としてのルートを非表示とする(ステップS104)。そして、処理は終了する。
【0057】
これに対して、1秒当たりの方位変化量が所定値未満である場合(ステップS103:No)、処理はステップS105に進む。この場合には、制御部4は、表示ずれが生じるような走行状態ではないと判断して、案内情報としてのルートを表示させる(ステップS105)。そして、処理は終了する。
【0058】
以上説明した第1実施例によれば、車両の進行方向の単位時間あたりの方位変化量に基づいて、案内対象に対する表示ずれが生じるような走行状態であるか否かを判断して、案内情報の表示を適切に制限することができる。これにより、表示ずれによる違和感や誤認識などを適切に抑制することが可能となる。また、第1実施例によれば、案内情報を非表示とすることにより、旋回中における視界を適切に確保することが可能となる。
【0059】
(第2実施例)
次に、第2実施例について説明する。第2実施例でも、車両が旋回している場合に表示ずれが生じ得るとの考えに基づいて案内情報の表示を制限する点では、第1実施例と同様である。しかしながら、第1実施例では、実際の方位変化量(ナビゲーション装置1内の角速度センサ12の出力に対応する量)に基づいて車両の旋回を判断していたが、第2実施例では、このような方位変化量を用いずに、地図データに基づいて車両の旋回についての判断を行う。つまり、第2実施例では、地図データに基づいて、車両の旋回といった走行状態が発生する可能性を判断して、案内情報の表示を制限する制御を行う。
【0060】
具体的には、第2実施例では、制御部4は、ナビゲーション装置1から地図データを取得して、地図データに基づいて、車両の進行方向に存在する、旋回が生じる可能性があるような地点を特定し、当該地点において案内情報の表示を制限する。より詳しくは、制御部4は、特定した地点までの距離が所定値未満となった際に、案内情報の表示を制限する。例えば、制御部4は、地図データに基づいて、旋回が生じる可能性があるような地点として交差点を特定し、当該交差点までの距離が所定値未満となった際に、案内情報としてのルートを非表示とする。
【0061】
図7は、第2実施例に係る処理フローを示している。この処理フローは、ヘッドアップディスプレイ2内の制御部4によって繰り返し実行される。
【0062】
まず、ステップS201では、制御部4は、ナビゲーション装置1内のデータ記憶ユニット36に記憶された、現在位置付近の地図データを取得し、車両の進行方向に存在する交差点を特定する。そして、制御部4は、現在位置及び交差点の位置座標(地図データに含まれる)に基づいて、交差点までの距離を求める。例えば、制御部4は、100[msec]ごとに当該距離を求める。そして、処理はステップS202に進む。
【0063】
ステップS202では、制御部4は、ステップS201で求められた距離が所定値未満であるか否かを判定する。当該判定で用いる所定値は、表示ずれを確実に抑制する観点から、ある程度の余裕をもって、交差点の手前の位置から交差点までの距離が用いられる。このような所定値を用いることで、表示ずれが生じ得る走行状態へと移行していく状態を判断している。例えば、当該所定値は20[m]が用いられる。
【0064】
交差点までの距離が所定値未満である場合(ステップS202:Yes)、処理はステップS203に進む。この場合には、制御部4は、表示ずれが生じ得る走行状態に移行するものと判断して、案内情報としてのルートを非表示とする(ステップS203)。そして、処理は終了する。
【0065】
これに対して、交差点までの距離が所定値以上である場合(ステップS202:No)、処理はステップS204に進む。この場合には、制御部4は、表示ずれが生じ得る走行状態に移行しないものと判断して、案内情報としてのルートを表示させる(ステップS204)。そして、処理は終了する。
【0066】
以上説明した第2実施例によれば、地図データに基づいて、表示ずれが生じるような走行状態についての判断を行って、案内情報の表示を適切に制限することができる。これによっても、表示ずれによる違和感や誤認識などを適切に抑制することが可能となる。また、第2実施例によれば、案内情報を非表示とすることにより、旋回中における視界を適切に確保することが可能となる。
【0067】
なお、上記した第2実施例に係る制御方法では、基本的には、車両の進行方向に存在する全ての交差点において、案内情報の表示を制限する制御が行われることとなる。つまり、右折又は左折を行わない直進する交差点についても(つまり車両が旋回しない交差点についても)、案内情報の表示が制限されることとなる。第2実施例の他の例では、ルートが設定されている場合に、当該ルートの情報から右折又は左折を行う交差点(つまり車両の旋回が生じる交差点)を特定して、そのように特定された交差点についてのみ、案内情報の表示を制限する制御を行うことができる。この場合にも、制御部4は、特定した交差点までの距離が所定値未満となった際に、案内情報(ルートなど)の表示を制限する。
【0068】
[変形例]
以下では、上記した実施例に好適な変形例について説明する。なお、下記の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用することができる。
【0069】
(変形例1)
上記では、案内情報の表示の制限として、ルートや矢印や旗の表示を制限する例を示したが(図4参照)、案内情報の表示の制限として、所定の施設や場所を示す情報についての表示を制限しても良い。例えば、ランドマークや登録された地点(以下、「登録地点」と呼ぶ。)について、表示を制限することができる。このようなランドマークや登録地点についても、制御部4は、上記した実施例と同様の方法により、表示を制限する。例えば、制御部4は、方位変化量が所定値以上である場合に、ランドマークや登録地点を非表示とする。なお、交差点までの距離が所定値未満である場合に、ランドマークや登録地点を非表示としても良い。
【0070】
ここで、ルートなどの案内情報(図4参照)は、ルートが設定されている場合に表示されるものであるため、これらについてはルートが設定されている場合にのみ表示の制限を行うこととなる。他方で、ランドマークや登録地点などの案内情報は、ルートが設定されていない場合にも表示されるため、これらについてはルートが設定されているか否かによらずに表示の制限を行うこととなる。
【0071】
(変形例2)
上記では、車両が旋回している場合に、車両の進行方向の実風景が大きく変わることで表示ずれが生じ得るものと判断して、案内情報の表示を制限する例を示した(第1実施例参照)。つまり、車両が旋回している状態を、表示ずれが生じ得る走行状態として扱っていた。他の例では、車両が比較的速い速度で走行している状態を、表示ずれが生じ得る走行状態として扱って、案内情報の表示を制限することができる。車両が比較的速い速度で走行している場合にも、車両の進行方向の実風景が大きく変わるため、案内情報が遅れて表示されてしまう場合があるからである。
【0072】
具体的には、この変形例では、制御部4は、車速(ナビゲーション装置1内の自立測位装置10(詳しくは距離センサ13)によって検出された値など)が所定値以上である場合、例えば車速が80[Km/h]以上である場合に、案内情報の表示を制限する。1つの例では、制御部4は、車速が所定値以上である場合に、ランドマークや登録地点を全て非表示とする。別の例では、制御部4は、車速が所定値以上である場合に、自車位置に比較的近い場所についてのランドマークや登録地点のみを非表示とし、自車位置からある程度離れた場所についてのランドマークや登録地点は表示する。なお、車速が所定値以上である場合に、ルートなども非表示としても良い。
【0073】
このような変形例によれば、車速に基づいて、表示ずれが生じるような走行状態についての判断を行って、案内情報の表示を適切に制限することができる。これによっても、表示ずれによる違和感や誤認識などを適切に抑制することが可能となる。また、当該変形例によれば、案内情報を非表示とすることにより、車両が比較的速い速度で走行している際において視界を適切に確保することが可能となる。
【0074】
(変形例3)
上記では、車両が旋回している場合や車両が比較的速い速度で走行している場合に、案内情報の表示を制限する例を示した(第1実施例及び変形例2参照)。この例では、車両が旋回している場合や車両が比較的速い速度で走行している場合には、車両の進行方向の実風景が大きく変わるため、表示ずれが生じ得るものと判断して、案内情報の表示を制限していた。他の例では、車両が傾斜を有する道路(つまり坂道)を走行しているような状態を、表示ずれが生じ得る走行状態として扱って、案内情報の表示を制限することができる。車両が傾斜を有する道路を走行している場合には、車両の進行方向の実風景が大きく変わることはないが、案内情報が適切な位置に表示されない場合があるからである。例えば、上り坂や下り坂を走行中において、上り坂や下り坂の先に位置する施設や場所を示す情報が道路から離れた場所(空中や地面など)に表示されてしまう場合がある。そのような場合には、ユーザに違和感や誤認識などを生じさせてしまう可能性がある。
【0075】
したがって、この変形例では、制御部4は、車両が傾斜を有する道路を走行している場合に、案内情報の表示を制限する。例えば、制御部4は、走行中の道路の傾斜角度(ナビゲーション装置1内の自立測位装置10(詳しくは加速度センサ11)によって検出された値や、ナビゲーション装置1内のデータ記憶ユニット36に記憶された地図データが有する傾斜データなど)が所定角度以上である場合に、ランドマークや登録地点を非表示とする。なお、傾斜角度が所定角度以上である場合に、ルートなども非表示としても良い。
【0076】
このような変形例によれば、道路の傾斜に基づいて、表示ずれが生じるような走行状態についての判断を行って、案内情報の表示を適切に制限することができる。これによっても、表示ずれによる違和感や誤認識などを適切に抑制することが可能となる。
【0077】
(変形例4)
図1等の説明では、ヘッドアップディスプレイ2は、ナビゲーション装置1から案内情報などを受信して、案内情報の表示を制限する制御を行っていた。しかしながら、本発明が適用可能な構成はこれに限定はされない。他の例では、ナビゲーション装置1は、上記したヘッドアップディスプレイ2と同様に、案内情報の表示を制限する制御を行い、当該制御を行った後の案内情報をヘッドアップディスプレイ2に送信し(案内情報の全てを非表示にすることとした場合には、ヘッドアップディスプレイ2には案内情報を送信されない)、ヘッドアップディスプレイ2は、受信した案内情報を表示させることができる。この場合には、ナビゲーション装置1のシステムコントローラ20は、ヘッドアップディスプレイ2の制御部4が行う処理の一部又は全部を行う。この例では、ナビゲーション装置1及びヘッドアップディスプレイ2は、本発明における「画像表示装置」の一例である。
【0078】
更に他の例では、ヘッドアップディスプレイ2は、ナビゲーション装置1と通信を行うことなく、案内情報を生成すると共に、案内情報の表示を制限する制御を行うことができる。この場合、ヘッドアップディスプレイ2に、GPS受信機及び距離センサなどの自立測位装置を具備させると共に、地図データなどをメモリに記憶させておけば、当該ヘッドアップディスプレイ2は、案内情報を生成して、当該案内情報の表示を制限する制御を行うことができる。
【0079】
(変形例5)
本発明は、車両の進行方向の実風景をカメラによって撮影し、撮影により得られた実写画像(撮影画像)に重ね合わせて、案内情報を、実写画像に含まれる案内対象に対して所定の位置又は角度をもって表示させるような装置にも適用することができる。例えば、本発明は、内蔵するカメラの実写画像を用いて、AR表示によってナビゲーションを行うスマートフォンなどに適用することができる。このような装置に本発明を適用する場合にも、上記した実施例や変形例と同様の方法により、車両の走行状態に応じて、案内情報の表示を制限する制御を行うことができる。
【0080】
(変形例6)
本発明は、上記したような装置(ナビゲーション装置1やヘッドアップディスプレイ2など)への適用に限定はされない。本発明は、AR表示を実現可能な種々の装置に適用することができる。例えば、本発明は、ヘッドマウントディスプレイに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、ヘッドアップディスプレイやナビゲーション装置(スマートフォンなどの携帯電話も含む)などに適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 ナビゲーション装置
2 ヘッドアップディスプレイ
3 光源ユニット
4 制御部
9 コンバイナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7