特許第5964340号(P5964340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964340
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 1/00 20060101AFI20160721BHJP
   F24C 15/00 20060101ALI20160721BHJP
   A47J 37/06 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   F24C1/00 360G
   F24C15/00 B
   A47J37/06 366
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-51838(P2014-51838)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-175545(P2015-175545A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2015年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】松行 徳彦
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−098873(JP,A)
【文献】 特開昭54−098874(JP,A)
【文献】 実開昭53−051489(JP,U)
【文献】 特開2013−217630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00
A47J 37/06
F24C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収容する加熱室と、熱気を発生させる燃焼室と、前記燃焼室内の熱気を前記加熱室に送り込んで循環させる循環ファンとを具備する加熱調理器であって、
前記加熱室は、上壁、下壁、左右側壁及びこれらの後方に連続する後枠とからなる筒状の本体部と、前記本体部の前方開口端に接続され且つ前方に扉が開閉自在に取り付けられる前枠と、前記後枠の後方開口端に接続され且つ前記加熱室内に熱気を循環させる吹出口及び吸込口が形成された後壁を構成する分布板とを有し、
前記上壁及び下壁と前記左右側壁とはそれぞれコーナR部を介して連続していると共に、前記後枠は、前記分布板に向かって開口断面積が小さくなるテーパ筒状に形成され、
前記分布板の周囲から前記後枠の後方開口端に向かって、周壁がコーナR部を介して設けられている加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記後枠の後方開口端には、前フランジ片が外方に向かって張出すように形成され、
前記分布板の周壁の前方端には、前記前フランジ片と締結するための後フランジ片が外方に向かって張出すように形成され、
前記前後フランジ片の両突出端縁は、正面視で、前記本体部の上壁、下壁、及び左右側壁の外面よりも内方に位置するように設けられる加熱調理器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の加熱調理器において、
前記上壁、下壁、及び左右側壁の内面、並びに前記後枠の内面には、撥水処理が施され、
前記分布板の前面には、前記撥水処理より高耐熱性の触媒塗装処理または琺瑯処理が施される加熱調理器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱調理器において、
前記本体部は、上壁及び左右の側壁の上側壁を構成する上カバー部と、下壁及び左右の側壁の下側壁を構成する下カバー部を有する加熱調理器。
【請求項5】
請求項4に記載の加熱調理器において、
前記下カバー部の左右の下側壁に、両側方に開放し且つ前後方向に伸びる絞り溝が形成され、
前記上カバー部の左右の上側壁は、前記下カバー部の左右の下側壁に、前記絞り溝を閉塞するように重ね合わされ、
前記上カバー部の左右の上側壁のうち、前記絞り溝に対応する箇所にネジ用孔が形成されている加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱室内に熱気を循環させて被調理物を加熱調理する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱気循環式の加熱調理器として、例えば、図8に示すように、システムキッチンのカウンタートップ(10)の下に組み込まれ、ガスバーナ(43)によりガスを燃焼させて燃焼排ガスを発生させる燃焼室(4b)と、燃焼室(4b)の上方に形成され、燃焼室(4b)と連通して被調理物が収容される加熱室(4a)と、加熱室(4a)の後方に配置される循環ファン(40)とを備えた加熱調理器が提案されている。
【0003】
この加熱調理器では、循環ファン(40)の駆動により、燃焼室(4b)のガスバーナ(43)で発生させた燃焼排ガスの熱気を、加熱室(4a)の後壁を構成する分布板(46)を介して加熱室(4a)内に送り込むと共に加熱室(4a)内にて循環させることにより加熱室(4a)内全体に熱気を迅速に行き渡らせて被調理物を間接的に加熱調理するようになっている。そのため、加熱室(4a)内にガスバーナ等の加熱手段を配設して被調理物を直接的に加熱調理するものと異なり、加熱室(4a)内に突出物が配設されないから、加熱室(4a)のお手入れも容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−217630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に、加熱調理器内に組み込まれる加熱室(4a)は、前方に扉(42)が開閉自在に設けられた略矩形の箱状であり、上壁、下壁、及び左右側壁をそれぞれ構成する金属板を溶接等により接合し、後壁となる分布板(46)で後方開口端を閉塞して形成しているため、上下壁と左右側壁との各境界部分や、上下壁及び左右壁と分布板(46)との各境界部分は角張って形成される。加熱室(4a)内に熱気を循環させて被調理物を調理する場合、被調理物から発生する油や水蒸気も熱気によって加熱室(4a)内を循環するため、広範囲に油等が付着し、このような角張った境界部分にも汚れが堆積する。それゆえ、汚れが除去し難いという問題がある。特に、ビルトイン式の加熱調理器ではスペース的な制約が厳しいため、加熱室(4a)は上下方向の寸法に余裕がなく狭い空間となっている。このため、加熱室(4a)内に手を挿入した状態にて、加熱室(4a)内が外から見え難く、角張った境界部分に溜まっている汚れや分布板(46)の周囲に付着している汚れをきれいに拭き取ることが難しい。
【0006】
上下壁と左右側壁との境界部分や、上下壁及び左右側壁と分布板(46)との境界部分を円弧状に形成するために、一枚の金属板を深絞り加工して全ての構成壁を一対に成形することも考えられるが、装置が大掛かりになり、高コストとなる。また、油等の汚れの付着を抑えるために加熱室(4a)の構成壁の内面にはフッ素樹脂加工やシリコン樹脂加工等の撥水処理を施すことが好ましいが、熱気を循環させて被調理物を加熱調理する場合、被調理物にしっかりと焦げ目をつけるためには300℃程度の高温の熱気を加熱室(4a)内に送り込まなければならない。そのため、熱気を吹出させる加熱室(4a)の後壁を構成する分布板(46)は他の構成壁よりも高温(350℃程度)に晒され、上記のような撥水処理では熱劣化が生じる。それゆえ、少なくとも分布板(46)を他の構成壁とは別部材から構成し、触媒塗装処理や琺瑯処理などの高耐熱性の表面処理を施す必要がある。
【0007】
さらに、上記のような高耐熱性の表面処理が施された分布板(46)を用いると、上下壁及び左右側壁と分布板(46)とを溶接により接合することができないため、上下壁及び左右側壁の後端と、分布板(46)の前端とをネジ等の締結手段で締結させる必要があるが、このような締結手段を用いると、締結部分が加熱室(4a)の外方に突出し、下方の燃焼室(4b)や上方に配設されるコンロ部と干渉してしまう。その結果、締結部分の大きさだけ加熱室(4a)を小さくしなければならず、加熱室(4a)の内容積が減少するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、加熱室内に熱気を循環させて被調理物を加熱調理する加熱調理器において、加熱室のサイズを小さくすることなく、加熱室内の清掃性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、被調理物を収容する加熱室と、熱気を発生させる燃焼室と、前記燃焼室内の熱気を前記加熱室に送り込んで循環させる循環ファンとを具備する加熱調理器であって、
前記加熱室は、上壁、下壁、左右側壁及びこれらの後方に連続する後枠とからなる筒状の本体部と、前記本体部の前方開口端に接続され且つ前方に扉が開閉自在に取り付けられる前枠と、前記後枠の後方開口端に接続され且つ前記加熱室内に熱気を循環させる吹出口及び吸込口が形成された後壁を構成する分布板とを有し、
前記上壁及び下壁と前記左右側壁とはそれぞれコーナR部を介して連続していると共に、前記後枠は、前記分布板に向かって開口断面積が小さくなるテーパ筒状に形成され、
前記分布板の周囲から前記後枠の後方開口端に向かって、周壁がコーナR部を介して設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記加熱室を構成する上下壁と左右側壁との境界部分はコーナR部となっており、角張った部分が形成されない。また、後枠は、分布板に向かって開口断面積が小さくなるようにテーパ筒状に形成されていると共に、分布板の周囲にはコーナR部を介して周壁を設ける構成としたから、加熱室の後方の境界部分にも角張った部分が形成されない。これにより、熱気を循環させることにより加熱室内の広範囲に油等の汚れが付着しても容易に除去することができる。
また、後壁を構成する分布板から熱気が加熱室内に吹出されるが、後枠の周壁は、加熱室内に向かって開口断面積が広がるテーパ状に形成されているから、加熱室内の上下左右方向に熱気が拡がり、加熱室内を効果的に加熱することができる。
さらに、本体部と、分布板とは別部材で構成されるから、本体部と分布板とに異なる表面処理を施すことができる。
そして、後枠を、分布板に向かって開口断面積が小さくなるテーパ筒状に形成したから、後枠の周壁は、正面視で、それより前方の上下壁及び左右側壁の外面よりも内方に位置し、後枠の後方開放口の周囲には所定のスペースが形成される。このスペースを分布板接続用のスペースとして利用でき、分布板接続のためのスペースを別途確保する必要がないから、加熱室のサイズを小さくすることなく、本体部と分布板とを接続することができる。
【0011】
上記加熱調理器において、好ましくは、
前記後枠の後方開口端には、前フランジ片が外方に向かって張出すように形成され、
前記分布板の周壁の前方端には、前記前フランジ片と締結するための後フランジ片が外方に向かって張出すように形成され、
前記前後フランジ片の両突出端縁は、正面視で、前記本体部の上壁、下壁、及び左右側壁の外面よりも内方に位置するように設けられる。
【0012】
上記加熱調理器によれば、後枠の後方開口端及び分布板の前方端には外方に向かって張出す前後フランジ片が設けられているが、これら前後フランジ片の両突出端縁は、正面視で、本体部の上壁、下壁、及び左右側壁の外面よりも内方に位置するように設けられているから、後枠と分布板とを前後フランジ片で締結させたときに、締結部分は加熱室の上下左右方向から突出しない。これにより、加熱室の高さ及び幅を最大に確保しながら、本体部と分布板とを接続することができる。
【0013】
上記加熱調理器において、好ましくは、
前記上壁、下壁、及び左右側壁の内面、並びに前記後枠の内面には、撥水処理が施され、
前記分布板の前面には、前記撥水処理より高耐熱性の触媒塗装処理または琺瑯処理が施される。
上記加熱調理器によれば、加熱室の上下壁、左右側壁及び後枠の内面には撥水処理が施され、油等の汚れが付着しても容易に除去することができる。また、熱気の吹出口及び吸込口が形成されている分布板には高耐熱性の触媒塗装処理や琺瑯処理が施されているから、高温の熱気による表面処理の熱劣化を抑えることができる。
【0014】
上記加熱調理器において、好ましくは、
前記本体部は、上壁及び左右の側壁の上側壁を構成する上カバー部と、下壁及び左右の側壁の下側壁を構成する下カバー部を有する。
上記加熱調理器によれば、金属板を下方又は上方に開放する略U字状に曲げ加工することにより、上カバー部と下カバー部を形成し、これらを中空状態に重ね合わせ、左右の上下側壁相互を接続させれば、四隅にコーナR部を有する筒体を形成することができ、その後方に後枠を連続させれば本体部が完成する。
【0015】
上記加熱調理器において、好ましくは、
前記下カバー部の左右の下側壁に、両側方に開放し且つ前後方向に伸びる絞り溝が形成され、
前記上カバー部の左右の上側壁は、前記下カバー部の左右の下側壁に、前記絞り溝を閉塞するように重ね合わされ、
前記上カバー部の左右の上側壁のうち、前記絞り溝に対応する箇所にネジ用孔が形成されている。
上記加熱調理器によれば、本体部の両側方に、遮熱板や、扉の開閉機構のローラ固定板等を取り付ける際に、前記ネジ用孔を利用して上カバー部の左右の上側壁にネジ止めすることができる。上カバー部の上側壁の裏側へ突出するネジは、下カバー部の絞り溝内に収容される態様となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の加熱調理器によれば、加熱室の各構成壁の境界部分には角張った部分が形成されないから、加熱室内を掃除するにあたって、内面の汚れを容易に除去することができる。調理後の加熱室内の手入れが容易となることで、加熱室内を長期に渡って美しく衛生的に保つことが可能となる。
また、後枠をテーパ筒状に形成することにより後枠の後方開口端の周囲に形成されるスペースを分布板接続用のスペースとして利用することができるから、分布板を本体部とは別部材としても、分布板を後枠に接続するためのスペース、例えば、ネジ止め用の前後フランジ片を突出させるためのスペースを加熱室の周囲に確保する必要がない。よって、加熱室のサイズを小さくする必要がない。
このように、加熱室のサイズの減少を抑えることができるから、スペース的な制約が厳しいビルトイン式の加熱調理器でも、可能な限り大きな内容積の加熱室を確保することができる。
【0017】
また、燃焼室で発生させた熱気は分布板に形成された吹出口から後枠のテーパ状の周壁に沿って流れるから、加熱室内の熱気の循環性が向上し、効率的に加熱室を加熱することができると共に、加熱室内の熱分布を均一に保つことができる。これにより、加熱室全体に熱気を迅速に行き渡らせることができ、焼きムラが少なく、焼き上がりの良好な被調理物を得ることが可能となる。
また、上下壁、左右側壁及び後枠からなる本体部の内面には撥水処理を施し、分布板には触媒塗装処理等により高耐熱性の表面処理を施すことができるようにしたものでは、特に高温に加熱される分布板も熱劣化を抑えながら、清掃性を高めることができる。
さらに、本体部の両側壁に遮熱板や扉の開閉機構のローラ固定板等をネジ止めする際に、ネジのネジ先が収容される絞り溝を下カバー部に設けたものでは、ネジ先が加熱室内に突出しないので、ネジが清掃の邪魔になることなく、清掃性が一層向上する上に、清掃作業の際に、加熱室内に飛び出したネジによって手を怪我する不都合もない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る加熱調理器としてのガスコンロの全体を示す概略断面斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る加熱調理器としてのガスコンロの全体を示す概略斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る加熱調理器の加熱室ユニット、燃焼室ユニット、循環ファンユニットの概略分解斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る加熱調理器の加熱室ユニットの概略分解斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る加熱調理器の加熱室ユニットの分布板を取り付ける前の概略後方斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る加熱調理器の加熱室ユニットの後枠に分布板を取り付けた状態を示す概略斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る加熱調理器の加熱室の要部拡大断面図である。
図8】従来の加熱調理器を示す概略断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る加熱調理器の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の加熱調理器の実施形態として、グリル・オーブン装置(2)を備えたガスコンロ(1)の概略断面斜視図を示し、図2は、ガスコンロ(1)の概略全体斜視図を示す。
【0020】
ガスコンロ(1)は、システムキッチンのカウンタートップ(10)の開口に、コンロ本体(11)が落とし込み状態で組み込まれるビルトイン式のものである。
ガスコンロ(1)は、図2に示すように、3つのコンロバーナ(12)とグリル・オーブン装置(2)を備え、グリル・オーブン装置(2)がコンロ本体(11)に組み込まれている。
【0021】
ガスコンロ(1)は、コンロ本体(11)の上方開放部を覆うように矩形状の天板(13)が配設され、天板(13)の上面に、コンロバーナ(12)が露出されると共に、鍋やフライパン等の調理器具を支持する五徳(14)が各コンロバーナ(12)の周囲に載置されている。
【0022】
コンロ本体(11)は、上方開放の矩形箱状に形成されており、コンロ本体(11)の正面には、グリル・オーブン装置(2)の扉(31)が設けられると共に、各コンロバーナ(12)及びグリル・オーブン装置(2)内のガスバーナ(56)の点消火及び火力調節、各モード設定などを行なうための操作パネル(15)が設けられている。
【0023】
このガスコンロ(1)に組み込まれるグリル・オーブン装置(2)は、図1及び図3に示すように、カウンタートップ(10)の下方に位置し、被調理物を収容させる加熱室(3)を有する加熱室ユニット(30)と、加熱室ユニット(30)の下方に設けられ、燃焼室(5)を有する燃焼室ユニット(50)と、加熱室ユニット(30)の後方に設けられ、循環ファン(72)を有する循環ファンユニット(70)とを備えている。
加熱室ユニット(30)、燃焼室ユニット(50)、そして、循環ファンユニット(70)は、後述するように、それぞれユニット単位でコンロ本体(11)から着脱できるようになっている。
【0024】
なお、本明細書では、加熱室(3)に取り付ける扉(31)側と奥側とが対向する方向を前後方向、加熱室(3)の幅方向を左右方向、加熱室(3)の高さ方向を上下方向とする。
【0025】
加熱室(3)は、図2に示すように、コンロ本体(11)の左寄りに横長に設けられており、前面の扉(31)を開閉することにより、加熱室(3)内に被調理物を出し入れできる。加熱室(3)には、図1に示すようにオーブン調理用のオーブン皿(32)や図示しないがグリル調理用のグリル皿が配置できるようになっている。
【0026】
加熱室(3)は、図3から図5の各図に示すように、上壁(33)及び左右の上側壁 (35a)を構成する上カバー部(21)と、下壁(34)及び左右の下側壁(35b)を構成する下カバー部(22)とを、下側壁(35b)の外面に上側壁 (35a)が重なるように組み合わせて、加熱室(3)の上壁(33)、下壁(34)及び左右側壁(35)が形成される。
これら上下カバー部(21)(22)は、それぞれ、一枚の金属板に曲げ加工を施すことにより、上下壁(33)(34)と左右の上下側壁(35a)(35b)との境界部分(20a)に断面円弧状のコーナR部が形成されており、特に、この実施の形態では、R20のコーナR部が形成されている。
また、図4に示すように、下カバー部(22)の左右の下側壁(35b)には、側方に開放し且つ前後方向に長い絞り溝(23)が形成されており、この絞り溝(23)の内方に突出している部分が、図1に示すように、加熱室(3)内にてオーブン皿(23)を係止させる係止棚(25)として機能する。
そして、下カバー部(22)に上カバー部(21)を重ね合わせた状態にて、絞り溝(23)に対応する上カバー部(21)の左右の上側壁(35a)には、複数のネジ用孔(24)が形成されている。
【0027】
図4及び図5に示すように、上カバー部(21)と下カバー部(22)で構成される筒体の前方端には、隙間が形成されないように略矩形状の前枠(37)が溶接により接続され、後方端には、絞り加工によって短筒状に形成された後枠(38)が溶接により接続される。さらに後枠(38)の後方端には、同様に、絞り加工によって浅皿状に形成された分布板(36)が締結されて、分布板(36)が加熱室(3)の後壁を構成する。
【0028】
組み付け順序としては、まず、下カバー部(22)と前枠(37)とを溶接して一体とし、その後、上カバー部(21)を前枠(37)に溶接により一体とする。これにより、上下カバー部(21)(22)からなる略矩形筒体の前方開口端に前枠(37)が固定された形状となり、下カバー部(22)の絞り溝(23)は、上カバー部(21)の左右の上側壁(35a)で閉塞されることにより、図7に示すように、ネジ用孔(24)の形成域の裏側に、絞り溝(23)が位置する態様となる。
その後、上下カバー部(21)(22)の後方に後枠(38)を外嵌させて溶接する。
なお、上下カバー部(21)(22)と後枠(38)とで本体部(20)が構成され、本体部(20)の内面全域にフッ素樹脂加工やシリコン樹脂加工などの耐熱性の撥水コートを吹き付け等によりコーティングして表面処理を施す。
【0029】
後枠(38)は、断面円弧状のコーナR部が形成された四隅を有し且つ本体部(20)の後方開口端に外嵌する前方枠部から分布板(36)が締結される後方端に向かってコーナR部が縮径し、開口断面積が小さくなるようにテーパ状の周壁が形成された短筒状体であり、後方端の各辺には、図4及び図5に示すように、ネジ止め用の後フランジ片(28)が上下及び左右方向において斜め後外方へ向かって張り出している。この後枠(38)の後方端に、分布板(36)が締結される。
【0030】
分布板(36)は、図4及び図6に示すように、中央に加熱室(3)内の熱気を取り込むための多数の吸込口(36b)が形成されていると共に、その左右両側に、熱気を加熱室(3)内に送り込むための多数の吹出口(36a)が形成されている略矩形板(360)と、略矩形板(360)の周縁から断面円弧状のコーナR部を介して後枠(38)の後方端へ向かって外方に広がるテーパ状の周壁(361)とが連続する浅皿状に形成されている。また、周壁(361)の前方端の各辺には、ネジ止め用の前フランジ片(26)が上下及び左右方向において斜め後外方へ向かって張り出している。なお、分布板(36)は、燃焼室(5)で発生する燃焼排ガスの熱気による加熱にも耐え得る高耐熱性の触媒塗装処理や琺瑯処理を施したものが用いられる。
【0031】
そして、図6に示すように、後枠(38)の後フランジ片(28)の後面に、分布板(36)の前フランジ片(26)の前面を重ね合わせた状態にて、両者をネジ止めして締結する。これにより、略矩形箱状で前方に開放する加熱室(3)が組み立てられる。このとき、前後フランジ片(26)(28)の突出端縁は、正面視で、上下カバー部(21)(22)で構成される本体部(20)の上壁(33)、下壁(34)及び左右側壁(35)の外面よりも外方へ突出しない寸法関係に設定されている。従って、加熱室(3)の上下左右方向に、ネジ止めのための余分なスペースを設ける必要がない。よって、締結部分と上方のコンロバーナ(12)や下方の燃焼ユニット(5)との干渉を防ぎながら、上下カバー部(21)(22)を組み合わせて形成される本体部(20)の高さを最大に確保することができる。
【0032】
なお、本体部(20)の外側面には、図3に示すように、遮熱板(45)や、扉(31)を開閉するための開閉機構(44)のローラ固定板(4)が取り付けられるが、これらを取り付けるネジ(27)は、図5及び図7に示すように、上カバー部(21)の上側壁(35a)に設けたネジ用孔(24)に螺合させながら挿入される。これらネジ用孔(24)に螺合接続されたネジ(27)のネジ先は、絞り溝(23)内に突出し、加熱室(3)を構成する本体部(20)内に突出しないから、加熱室(3)内を清掃する際に、ネジ先が邪魔になることがなく、清掃性が向上する上に、清掃時にネジ先に手を引っ掛けて怪我をする不都合もない。
【0033】
また、図1に示すように、加熱室(3)の上壁(33)の後方には、上壁(33)の上方に形成される排気通路(61)を介して排気口(62)に連通する多数の排気孔(33a)が形成されている。排気通路(61)及び加熱室の上壁(33)を覆うように上部遮熱板(63)が設けられている。
【0034】
また、図1及び図3に示すように、加熱室ユニット(30)の後方に配置されている循環ファンユニット(70)は、熱気通路(71)と、循環ファン(72)と、循環ファン(72)が配置される循環通路(73)と、循環ファン(72)を駆動するモータ(74)と、モータ(74)を冷却する冷却ファン(75)と、冷却ファン(75)を収納するファンケース(76)と、モータ(74)を収納するモータケース(77)と、冷却通路(78)と、熱気通路(71)及び循環通路(73)を覆う底ケース(79a)及び後ケース(79b)とにより構成される。
【0035】
熱気通路(71)は、燃焼室(5)と連通し、燃焼室(5)で発生させた燃焼排ガスの熱気を循環通路(73)を介して加熱室(3)に送るための通路である。熱気通路(71)は、前方側の分布板(36)の吸込口(36b)に連通している。
熱気通路(71)の後方に形成される循環通路(73)は、図3に示すように、熱気通路(71)を水平方向に囲むようにU字状に形成されている。循環通路(73)は、熱気通路(71)と連通する中央部に循環ファン(72)が配置される共に、熱気通路(71)の後部開口部(71b)と対向して吸込側開口部(73a)が形成されている。そして、循環通路(73)のU字両端の矩形開口部(73b)を分布板(36)の吹出口(36a)に対向させて加熱室(3)に連通させている。
【0036】
循環ファン(72)は、後方に位置するモータ(74)の回転軸の先端に固定されており、循環ファン(72)を回転駆動させると、分布板(36)に形成された吸込口(36b)を介して吸い込まれる加熱室(3)内の熱気及び下方の燃焼室(5)で発生させた熱気が、熱気通路(71)を通って循環通路(73)内に吸い込まれ、分布板(36)の左右両側に形成された吹出口(36a)から加熱室(3)内に送り出される。
【0037】
また、循環ファン(72)とモータ(74)との間には、モータ(74)の回転軸の軸方向中間部に固定された冷却ファン(75)が配設されている。冷却ファン(75)は、循環通路(73)と排気通路(61)を区画したファンケース(76)内に収納されている。ファンケース(76)は、モータケース(77)の上方に形成した冷却通路(78)に連通させている。冷却通路(78)の下流端部は、排気口(62)に対向させている。
【0038】
モータ(74)が収納されるモータケース(77)は、図1及び図6に示すように、後部に外部空気をモータケース(77)内に取り込むための空気取込口(77a)が形成されている。冷却ファン(75)の回転駆動により、外部空気が空気取込口(77a)からモータケース(77)内に取り込まれてモータ(74)が冷却された後、ファンケース(76)内に吸引されて冷却通路(78)から強制的に外部に排出されるようになっている。
【0039】
本実施形態に係るガスコンロでは、燃焼室(5)で発生させた燃焼排ガスの熱気を循環ファン(72)の駆動により熱気通路(71)に送り込み、さらに循環ファン(72)が配設される循環通路(73)を通過して、分布板(36)の左右両側に形成された吹出口(36a)から加熱室(3)内に熱気が吹き出されるようになっている。
【0040】
また、循環ファン(72)の駆動により、加熱室(3)の分布板(36)に設けられた吸込口(36b)から加熱室(3)内の熱気が熱気通路(71)を介して循環通路(73)内に吸引される。このとき、燃焼室(5)から熱気通路(71)を介して熱気が循環通路(73)内に吸引されるので、加熱室(3)内から吸引された熱気は燃焼室(5)からの熱気で再加熱されて、循環ファン(72)の左右に設けられた分布板(36)の吹出口(36a)から加熱室(3)内に噴出されて、熱気が循環される。
【0041】
このように、加熱調理時には、循環ファン(72)によって燃焼室(5)から循環通路(73)内に吸込まれる熱気と、加熱室(3)内の熱気とが混合されて、再度加熱室(3)内に排出される熱気の循環が行なわれる。熱気の循環を行なうことにより、加熱室(3)内の温度を急速に上昇させると共に、加熱室(3)内の温度を効率よく均一化することができ、加熱室(3)内に収容させた魚や肉等の被調理物を加熱調理することができる。
【0042】
また、被調理物の加熱調理中に、被調理物から油や汁等の汚れが飛散し、循環する熱気によって加熱室(3)を構成する本体部(20)の四隅や分布板(36)の四隅に付着しても、各構成壁の境界部分は断面円弧状のコーナR部で形成されていると共に、後枠(38)は分布板(36)に向かってコーナR部が縮径し、開口断面積が小さくなるようにテーパ状の周壁を有する短筒状体に形成され、さらに、これらの内面には、耐熱性の撥水コートが表面処理されているから、付着した汚れを容易に拭き取ることができる。これにより、加熱室(3)内の清掃性が向上し、内部を長期に渡って衛生的に保つことが可能となる。
【0043】
さらに、分布板(36)を介して熱気が吹出される分布板(36)の周壁(361)及び後枠(38)の周壁は加熱室(3)内に向かっては開口断面積が広がるようにテーパ状に形成されているから、加熱室(3)内の上下左右方向に熱気が拡がり、加熱室(3)内を効果的に加熱することができる。これにより、被調理物を効率的に加熱することができ、焼きムラの少ない被調理物を美味しく焼き上げることができる。
【0044】
また、分布板(36)を後枠(38)と別体に設ける構成としたから、後枠(38)と分布板(36)とに異なる表面処理を施すことが可能となり、例えば、分布板(36)のみに、撥水処理よりもより高耐熱性の触媒塗装処理や琺瑯処理を施すこともできる。これにより、分布板(36)前面の表面処理の熱劣化を抑えながら、清掃性を向上させることができる。
【0045】
そして、分布板(36)と後枠(38)とをネジ止めによって締結するために、分布板(36)と後枠(38)とにはそれぞれ、外方に広がる前後フランジ片(26)(28)が設けられているが、後枠(38)の周壁は、分布板(36)に向かって開口断面積が小さくなるようにテーパ状に形成されているとともに、前後フランジ片(26)(28)の両突出端縁は、正面視で、本体部(20)の上壁(33)、下壁(34)及び左右側壁(35)の外面よりも内方に位置するように設けられているから、後枠(38)と分布板(36)とを前後フランジ片(26)(28)で締結させたときに、締結部分を加熱室(3)の上下左右方向から突出しないように設けることができる。これにより、スペース的な制約が厳しいビルトイン式の加熱調理器でも、可能な限り大きな内容積の加熱室を確保することができる。
【0046】
なお、上記実施形態では、本体部(20)を上カバー部(21)と下カバー部(22)から形成しているが、上壁(33)及び下壁(34)と左右側壁(35)との境界部分(20a)にコーナR部を形成できれば、これらが一体成形された本体部を用いていてもよいし、さらに分割された本体部を用いてもよい。
また、上記実施形態では、ガスバーナ(56)によりガスを燃焼させて発生させた熱気を加熱室内で循環させるコンベクションタイプの加熱調理器について説明したが、熱気を循環させる機能と共に、加熱室の上壁に別途電気ヒータ又はガスバーナを配置して、被調理物を直接加熱するグリル部を備えるコンベクションタイプの加熱調理器にも本発明を適用できる。
なお、上記実施形態では、発熱部としてガスバーナを用いたが電気ヒータを用いることもできる。
【符号の説明】
【0047】
(20)・・・・・本体部
(20a) ・・・・境界部分
(3) ・・・・・加熱室
(31)・・・・・扉
(33)・・・・・上壁
(34)・・・・・下壁
(35)・・・・・側壁
(36)・・・・・分布板
(36a) ・・・・吹出口
(36b) ・・・・吸込口
(37)・・・・・前枠
(38)・・・・・後枠
(5) ・・・・・燃焼室
(72)・・・・・循環ファン
(361) ・・・・周壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8