特許第5964342号(P5964342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国電力株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5964342-電線防護管 図000002
  • 特許5964342-電線防護管 図000003
  • 特許5964342-電線防護管 図000004
  • 特許5964342-電線防護管 図000005
  • 特許5964342-電線防護管 図000006
  • 特許5964342-電線防護管 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964342
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】電線防護管
(51)【国際特許分類】
   H02G 7/00 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   H02G7/00
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-53576(P2014-53576)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-177683(P2015-177683A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 光弘
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−161196(JP,A)
【文献】 特開2014−079070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を挿通する貫通中空部を備えた絶縁材料から成る電線防護管本体と、該電線防護管本体に固定される絶縁材料から成る開閉部材と、を備えた電線防護管であって、
前記電線防護管本体は、可撓性を有した絶縁板を管状に構成した管体と、該管体の軸方向に沿って該絶縁板に形成した開閉部と、を備え、
前記開閉部材は、前記開閉部を境界とした一方の管体部分に固定される第1の開閉片と、他方の管体部分に固定される第2の開閉片と、開閉操作機構と、を備え、前記開閉操作機構を操作することにより一方の前記開閉片に対して他方の前記開閉片を接近離間自在に構成されており、
前記第1及び第2の開閉片の開放動作に応じて、前記電線防護管本体は前記一方の管体部分を前記他方の管体部分から離間させることによって前記開閉部を開放し、
前記第1の開閉片と前記第2の開閉片との間に、前記各開閉片により前記電線防護管本体を加圧変形させた時に、該電線防護管本体の一部を受け容れる空所を備えていることを特徴とする電線防護管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は架空配電線に対する着脱操作性を高めた電線防護管に関する。
【背景技術】
【0002】
電線防護管は、建設工事現場の近傍に架設されている架空配電線に装着されることにより、建設作業用の重機等の機器類が充電状態にある架空配電線に接触してこれを断線させたり、絶縁被覆を損傷させることを防止する手段として利用されている。防護管は、ポリエチレン等の絶縁材料から成る管体であり、軸方向へ延びる切り込み線を備えることにより開閉自在に構成されている。
また、鳥類による糞害等の鳥害に対する防止策として架空配電線に防護管を設置することも行われている。
架空配電線に対する防護管の取付けは、防護管挿入機(特許文献1:特開2008−131723公報)を用いた間接活線作業により行うのが一般である。
防護管は、全長が3m、内径が25mm、又は35mmであるのが一般的であり、防護管の端部同士を結合した状態で電柱(鉄塔)間の配電線に装着される。配電線を挿通した状態で設置された防護管の位置ズレを防止するために、防護管の端部に位置する配電線には特許文献2(特開2000−217234公報)に開示されたような係止具を取り付けている。
【0003】
電柱間の径間距離が45mある場合には、例えば一条の配電線に対して最大で15本の防護管を取り付けることになる。このように多数の防護管を一度に設置する場合には防護管挿入機が適している。
しかし、防護管挿入機は、油圧により駆動される大型、且つ重量物であり、準備、取扱いに手間と時間を要するのみならず、多数の間接活線器具(ホットスティック)を併用した作業が必要となる。従って、防護管挿入機は、2〜3本程度の少数の防護管を配電線に取り付ける作業には不向きである。
【0004】
例えば、二本の電柱間に障害物が存在するために配電線を直線的に配線できない場合には、スペーサ等を用いて配線経路を屈曲させることが行われる。このような複数のスペーサを用いた配線において、スペーサ間に位置する短い配電線部分に防護管を設置する場合には、準備に手間がかかり、且つ取扱いに不便な防護管挿入機を用いるよりは、間接活線器具のみを用いた手作業を実施した方が効率的である。特に、防護管挿入機は配電線に沿って設置された状態で使用され、防護管の切り込み線を開放させながら配線線に送り込んで配電線に設置する。このため、防護管挿入機の長さにほぼ相当する配電線部分には防護管を設置することができなくなり、当該配電線部分はむき出しの状態となる。長さの短い配電線部分を防護管で覆いたい場合に防護管挿入機を用いると、防護管が装着されていない部分の割合が装着されている部分に比して格段に大きくなるという不具合がある。一方、手作業によれば、配電線部分全長を防護管でカバーすることが可能となる。
なお、長さの短い配電線部分を覆うために、予め短尺な防護管を用意して対応することも可能ではあるが、防護管挿入機を用いる限り、防護管を設置できないむき出しの配電線部分が生じることに変わりはない。
【0005】
ところで、間接活線器具を用いた手作業による防護管の設置作業においては、多数の間接活線器具と、それを操作するに見合う人員が必要となる。具体的には、間接活線器具を用いて防護管を保持しつつ切り込み線を開放させることにより電線に被せる作業を行ってから、間接活線器具を用いて防護管の端部同士を結合させる。更に、防護管の端部から延びる配電線に対して間接活線器具を用いて係止具を係止するという煩雑な作業が必要となる。
また、高所作業車から延びるバケットの各辺が2.5m程度に過ぎないのに対して、防護管が3mあるため、手作業により防護管を配電線に取り付けてから上記係止具を間接活線器具を用いて設置する作業はバケットから身を乗り出して行う効率の悪い作業となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−131723公報
【特許文献2】特開2000−217234公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
少数の防護管しか設置できない短尺な架空配電線部分には、防護管挿入機を使用する代わりに、多数の間接活線器具を用いた手作業による作業が適している。
しかし、この作業はスペースの狭いバケット内に数名の人員が乗った状態で行われることになり、効率が悪く、且つ安全性の上でも問題がある労苦の伴う作業であり、改善が求められていた。
【0008】
また、電線防護管自体は配電線に係止するための挟圧力を発揮する構造は備えておらず、係止具を用いないと位置ズレや電線に対する回転が発生する。つまり、電線防護管を電線に取り付けるための間接活線作業においては、係止具が必須であり、そのために使用する間接活線器具の数と、人数と、取付け作業手数が増えていた。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、少数の防護管しか設置できない短尺な架空配電線部分に間接活線器具を用いた手作業により防護管を設置する場合に、必要最少数の作業員と間接活線器具とにより、少ない労力で効率的に防護管の設置作業と、電線に対する係止作業を効率よく実施することを可能とする電線防護管を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る電線防護管は、電線を挿通する貫通中空部を備えた絶縁材料から成る電線防護管本体と、該電線防護管本体に固定される絶縁材料から成る開閉部材と、を備えた電線防護管であって、前記電線防護管本体は、可撓性を有した絶縁板を管状に構成した管体と、該管体の軸方向に沿って該絶縁板に形成した開閉部と、を備え、前記開閉部材は、前記開閉部を境界とした一方の管体部分に固定される第1の開閉片と、他方の管体部分に固定される第2の開閉片と、開閉操作機構と、を備え、前記開閉操作機構を操作することにより一方の前記開閉片に対して他方の前記開閉片を接近離間自在に構成されており、前記第1及び第2の開閉片の開放動作に応じて、前記電線防護管本体は前記一方の管体部分を前記他方の管体部分から離間させることによって前記開閉部を開放し、前記第1の開閉片と前記第2の開閉片との間に、前記各開閉片により前記電線防護管本体を加圧変形させた時に、該電線防護管本体の一部を受け容れる空所を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、必要最少数の作業員と間接活線器具とにより、少ない労力で効率的に防護管の設置作業と、電線に対する係止作業を効率よく実施することを可能とする電線防護管を提供するものである。
特に、少数の防護管しか設置できない短尺な架空配電線部分に間接活線器具を用いた手作業により防護管を設置する場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る電線防護管の全体外観構成を示す正面図である。
図2図1のA−A断面図であり、(a)は開閉部材を作動させていない状態を示し、(b)は開閉部材により防護管本体を開放させた状態を示し、(c)は防護管本体内に配電線を挿通した状態で開閉部材を挟圧した状態を示している。
図3】本発明の他の実施形態に係る電線防護管の構成を示す縦断面図である。
図4】開閉部材単体の正面図である。
図5】開閉部材単体の平面図である。
図6】(a)(b)及び(c)は開閉部材を操作することにより電線防護管本体を開閉する手順を説明する要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る電線防護管の全体外観構成を示す正面図であり、図2図1のA−A断面図であり、(a)は開閉部材を作動させていない状態を示し、(b)は開閉部材により防護管本体を開放させた状態を示し、(c)は防護管本体内に配電線を挿通した状態で開閉部材を挟圧した状態を示している。
【0013】
電線防護管1は、電線を挿通する貫通中空部を備えた絶縁材料から成る電線防護管本体2と、電線防護管本体2に固定される絶縁材料から成る開閉部材50と、を備えている。
電線防護管本体2は、可撓性を有した絶縁板4を管状に構成した管体5と、管体5の軸方向に沿って絶縁板に形成した切り込み線状の開閉部(開閉線)7と、を備える。管体5は可撓性を有しているために、開閉部7と対向する管体5の部位(非固定部位)8を含む管体全体を弾性変形させることにより開閉部を開閉することができる。外力を加えて開閉部7を開放することにより開放部から配電線を管体内部に収容することが可能となり、外力を解消して開閉部7を閉じることにより配電線の離脱を防止することができる。
本例に係る管体5は、略円筒状の管状部分10と、開閉部7を構成する2つの張出し片11、12と、を備える。張出し片11、12は、管状部分10の軸方向全長に亘って形成されている。開閉部7を境界として2つの半管体部分(管体部分)15、16を備えている。
【0014】
また、管体5の一端部には大径の第1接続部20を備え、他端部には小径の第2接続部25を備える。第1接続部20の開口内は、第2接続部25の外周を挿入可能に構成されている。第2接続部25の端部にはフランジ部25aが形成されている。第1接続部20にはフランジ部25aを第1接続部20の開口内に挿入した時に、弾性的に内径を拡径させてフランジ部25aを受け容れる膨張部20aが設けられている。
このように電線防護管1内に配電線を挿通させた状態で複数の電線防護管を連結して所要長の配電線を覆うことができる。
開閉部材50は、開閉部7を境界とした一方の半管体部分15に固定される第1の開閉片60と、他方の半管体部分16に固定される第2の開閉片70と、開閉操作機構80と、を備え、開閉操作機構80を操作することにより一方の開閉片60(又は70)に対して他方の開閉片70(又は60)を接近離間自在に構成されている。
【0015】
更に、第1及び第2の開閉片60、70の開放動作に応じて、電線防護管本体2は一方の半管体部分15(又は、16)の端縁(張出し片11)を他方の半管体部分16(又は、15)の端縁(張出し片12)から離間させることによって開閉部7を開放させることができる。
第1の開閉片60は、開閉操作機構80を構成する螺子棒81と螺合する雌ネジ部62を有したベース部61と、ベース部61の先端に一体化されて、第2の開閉片70との間で管状部分10を挟圧する挟圧部63と、を備える。挟圧部63の挟持面は管状部分10(半管体部分15)の外面形状に沿うように湾曲し、且つ一体化されている。
【0016】
第2の開閉片70は、螺子棒81の先端に支持されることにより、螺子棒81を正逆回転させた際に対向配置された挟圧部63に向けて進退するように構成されている。また、第2の開閉片70の挟持面70aは管状部分10(半管体部分16)の外面形状に沿うように湾曲し、且つ一体化されている。第2の開閉片70の一部である被ガイド部72はベース部61側に突出し、螺子棒81と並行に延びるベース部のガイド部65と係合することにより、第2の開閉片70をガイド部65に沿って安定して移動させることができる。被ガイド部72は二股に分岐した先端部を有し、この先端部によりガイド部65を挟んだ状態で移動するため、第2の開閉片70の回転を阻止する手段として機能する。
管体5の非固定部位8と対向する第1の開閉片60(挟圧部63)の部位は、凹所(空所)66となっており、この凹所66とその近傍には電線防護管本体2(非固定部位8)が固定されていない。また、管体5の非固定部位8に近い第2の開閉片70の部位も電線防護管本体2と固定されていない。つまり、管体の非固定部位8は変形がフリーとなっており、後述するように両開閉片によって挟圧された時に管体の非固定部位8が変形して凹所66内に入り込むため、両開閉片によって電線を挟圧保持し易くなる。
【0017】
開閉操作機構80は、ベース部61に貫通形成された穴の内面に設けられた雌ネジ部62に螺合して軸線回りに回転することにより、軸方向へ進退する螺子棒81と、螺子棒の後端部に一体化された操作棒連結部83と、有する。
螺子棒81の先端には第2の開閉片が固定的に、或いは回転(揺動)可能に支持されている。操作棒連結部83は、下方が開放した略円筒状の中空体であり、開放部側から操作棒100の先端を内部に嵌合させることができる。操作棒連結部83の側面にはT字状の係止溝85が形成され、この係止溝85に操作棒100の先端部の係合ピン101を係合することによって、開閉部材50を操作棒100から脱落しないように支持することができる。ベース部61の回転を規制した状態で操作棒連結部83に係合させた操作棒100を回転させると、螺子棒81が回転して軸方向へ進退するため、螺子棒の先端に支持された第2の開閉片70は、挟圧部63に対して進退する。
【0018】
第1の開閉片60(挟圧部63)は半管体部分15と一体化し、第2の開閉片70の挟持面70aは半管体部分16と一体化しているため、第2の開閉片70を進退させることにより、半管体部分15に対して半管体部分16が開閉動作する。管状部分10は、可撓性、弾性を有した絶縁樹脂材料から構成されているため、開閉部材50によって開閉動作しても、通常の電線防護管と同様に機能することができる。特に、両開閉片によって電線防護管本体を強く挟圧した時には、非固定部位8が凹所66内に入り込むため、電線防護管本体を破損させることなく各半管体部分15、16による配電線の挟圧保持力を高めることができる。
【0019】
本発明に係る電線防護管1を配電線Cに被着しつつ、係止する取付け作業は、開閉部材50と同数の操作棒100を用いることにより、容易に実施することができる。
本例では、3m程度の軸方向長を有する電線防護管本体2の両端部と、中間部に開閉部材50を合計3個、夫々固定しているが、両端部のみでもよい。
【0020】
電線防護管本体2の両端部における開閉部材の取付け部位は、第1接続部20と第2接続部25を回避した軸方向内側位置とする。
電線防護管1を配電線Cに取り付ける作業を間接活線作業にて実施する場合には、まず各開閉部材50の操作棒連結部83の開口内に各操作棒100を差し込んで、係合ピン101を係止溝85内に係止させる。
この状態で各操作棒100を軸線を中心として正逆回転させると、第2の開閉片70が第1の開閉片60に対して接近、離間するため、半管体部分15と16が開閉する。
各操作棒100を夫々作業員が開放方向に回転させることにより電線防護管本体2の開閉部7を十分に(配電線の直径よりも開口量が大きくなるように)開放させた状態で、操作棒を配電線に向けて差し上げて、開放状態にある開閉部7から電線を防護管本体内部に差し入れる。防護管本体の全長に亘って配電線Cが挿着されたことを確認した時点で各作業員が各操作棒を閉止方向へ逆転させることにより開閉部7が閉じた状態となる。
【0021】
本発明の特徴的な構成、操作は、開閉部材50を用いて電線防護管本体2を開閉部7で開放させて電線を挿着し易くするだけでなく、電線を挿着した後で螺子棒81を閉じる方向へ回転させて開閉部7を閉じてから、更に螺子棒を閉じる方向へ回転させて第1の開閉片60と開閉片70により両半管体部分15、16を強く挟圧させるようにした点にある。このため、2つの半管体部分15、16による配電線に対する挟圧力を高めて電線防護管本体2が配電線C上の定位置から位置ズレすることと、配電線に対して回転することを確実に防止することができる。
【0022】
従来は電線防護管を配電線に取り付けた後に係止具を電線に取り付ける作業が必要であり、作業時間が長くなり、これが作業員の疲労度を高める原因となっていたが、本発明では電線防護管本体に開閉部材50を一体化したので、電線防護管本体を電線に取り付ける作業を行うだけで配電線に対する固定も完了することとなる。
電線防護管1を配電線に取り付けた後は、各操作棒100を開閉部材から離脱させる。
電線防護管1を配電線Cから取外す際には、各操作棒100を各開閉部材50に取り付けた上で閉止方向へ回転させて開放した開閉部7から電線を離脱させればよい。
この電線防護管1は、電線防護管本体2と複数の開閉部材50とを一体化した一つのユニットとして構成されているので、部品点数が一つとなり、取扱い性を高めることができる。
【0023】
図3は本発明の他の実施形態に係る電線防護管の構成を示す縦断面図であり、図4は開閉部材単体の正面図であり、図5は開閉部材単体の平面図である。
この電線防護管130は、本出願人の提案に係る特開2000−217234号に開示された係止具を開閉部材として流用した変形実施形態に係るものである。
電線防護管130は、電線を挿通する貫通中空部を備えた絶縁材料から成る電線防護管本体2と、電線防護管本体2に固定される絶縁材料から成る開閉部材135と、を備えている。
電線防護管本体2の構成は、上記実施形態に係る防護管本体とほぼ同様である。
開閉部材135は、第1及び第2挟持部136、137と、駆動部138と、回り止め手段139とを有している。
【0024】
第1及び第2挟持部136、137、駆動部138は、ガラス繊維を含有したポリブチレンテレフタレート(略称:PBT)によってそれぞれ形成され、優れた電気絶縁性及び優れた耐候性を有する。
第1挟持部136は、電線防護管本体2を構成する半管体部分15を固定した第1挟持部分(第1の開閉片)141と、第1挟持部分141から後方へ延び且つ雄螺子から成る駆動部138に螺着される螺着部分143と、を有し、駆動部の回転によって上下方向へ駆動される。
第1挟持部分141は、下面に略円弧面状の第1挟持面145を備える。第1挟持面145には半管体部分15の外面が固定されることにより、第1挟持部分141が上下方向へ移動したときに半管体部分15が上下方向へ開閉移動する。
螺着部分143は、駆動部138の雄螺子部に螺合する雌ネジ部である。
【0025】
第2挟持部137は、上下方向に延びる基部161と、第1挟持部分141と協働して電線防護管本体2を挟持するための第2挟持部分(第2の開閉片)162と、基部161と第2挟持部分162とを連結するための下部腕部分163と、基部161の上端部に装着される蓋部分205とを有し、大略的にL字状に形成される。基部161は、駆動部138を回転自在に支持するための支持孔169が形成される支持部分168を備える。
第2挟持部分162の上面には、略円弧面状の第2挟持面173が形成される。この第2挟持面173には、電線防護管本体の一部である半管体部分16が固定される。
下部腕部分163は、基部161の支持部分168から一体に連なって前方に向けて突出して形成される。この下部腕部分163の先端部となる前方の端部に上方に連なって、第2挟持部分162が一体的に形成される。
【0026】
蓋体205は、外形が略U字状であり、この蓋体205の下部側に形成されるU字状の嵌合溝207に基部161の上端部が嵌まり込むことによって、基部161の上端部に上方から着脱可能に装着され、蓋体205が装着されることによって、基部161の上端部が塞がれる。この蓋体205には、上部側に凹所208が形成されており、この凹所208が形成される部分において、厚み方向となる上下方向に挿通し、後述するように駆動部138を回転自在に支持するための支持孔209が形成されている。第2挟持部137は、蓋体205だけが別体に形成され、残余の基部161と、第2挟持部分162と、下部腕部分163とはたとえば金型成形によって一体に形成される。
【0027】
駆動部138は、上下方向に延びる雄螺子部材であって、外ねじが刻設されるねじ部分と、ねじ部分の軸線方向下端部に連なる円柱状の挿嵌部分182と、ねじ部分の軸線方向上端部に連なる円柱状の支持軸部210と、挿嵌部分182の軸線方向下端部に連なる係止碗状部分183とを有する。ねじ部には、軸線方向全長にわたって外ねじが刻設されており、この外ねじは、第1挟持部136の螺着部分143に形成される内ねじと螺合可能である。駆動部138はその上下端部を回転自在に軸支されている。
係止碗状部分183は、挿嵌部分182に一体に連なっている。
碗状部分183の周壁には、半径方向に挿通し、周方向に延びる第1溝部188aと、第1溝部188aの周方向中央部から下方に延び、周壁の下端面184で開口する第2溝部分188bとを有する略T字形の係止溝185が、周方向に等間隔をあけて2つ形成される。
【0028】
回り止め手段139は、圧縮コイルばね190と、嵌合部材191とを有する。第2挟持部137の基部161には下方に開口する収納孔189が形成されており、この収納孔189に、ばね190および嵌合部材191が収納されている。ばね190により下向きに付勢された嵌合部材191は嵌合孔187内に嵌合したり、離脱することができる。
回り止め手段139を用いることによって、第1及び第2挟持部136、137が駆動部138に対して軸線まわりに、不所望に回動することが防がれる。
【0029】
第1挟持部136は、螺着部分143が駆動部のねじ部に螺着されているときに、駆動部138が第1挟持部136に対して軸線まわりに回動されることによって、駆動部の軸線方向に変位される。
第1挟持部136と、第2挟持部137とは、駆動部の軸線まわりの回動が阻止される。
第1挟持部136が駆動部138に螺着された状態で、駆動部138をその軸線まわりに回動させると、その回動方向に対応して第1挟持部分141が第2挟持部分162に対して近接/離反する方向へ変位駆動される。これにより、第1及び第2挟持部分141、162に夫々固定された半管体部分15、16が開閉動作を行う。
【0030】
次に、図6(a)(b)及び(c)は開閉部材を操作することにより電線防護管本体を開閉する手順を説明する要部縦断面図である。
開閉部材135を開閉操作する前に、操作棒100を碗状部分183の下方開口部から差込み、係合ピン101を係止溝185内に係止させる。これにより間接活線工法の実施が可能な状態となる。
この状態で操作棒100を正逆回転させることにより第1挟持部分141が第2挟持部分162に対して接近したり、離間する。
【0031】
図6(a)は第1挟持部分と第2の挟持部分の間隔が最も離間した状態を示しており、この状態では電線防護管本体2の開閉部7の開放量が最大となっている。この状態で配電線Cを防護管内部に差し込むことができる。この状態では、電線防護管の非固定部位8は開閉部材のいずれの部位とも接触せずに延びた状態にある。
次いで、操作棒100を閉じる方向へ回転させると、図6(b)(c)の順序で第1挟持部分141画第2の挟持部分162に向かって移動して行く。(c)の状態では両挟持部分からの挟圧力によって電線防護管本体2が加圧によって変形し、半管体部分15、16の内壁によって内部の配電線Cを挟圧保持した状態となる。
【0032】
(c)の状態では、非固定部位8は加圧されて変形することにより、両挟持部分141、162の間に形成される空所(凹所)195内に入り込む。つまり、空所195の存在により、加圧された時に電線防護管本体が変形し易くなる。
開閉部材135によって電線防護管本体を挟圧することによって配電線に固定された状態となった段階で操作棒100を碗状部分183から取り外す。
この挟圧保持状態では、配電線Cに対して電線防護管本体2が固着された状態となっており、位置ズレや回転を起こすことがなくなる。
【0033】
電線防護管本体を配電線から離脱させる場合には、再び操作棒を碗状部分183の開口内に差し込んで開放方向へ回転させることにより開閉部7を開放して配電線から離脱させればよい。電線防護管を配電線に取り付ける場合と同様に、取り外す際に必要とされる操作棒の本数は開閉部材の個数と同数であり、作業員の人数も同じであるため、効率のよい作業を実施することができる。
【0034】
また、第1の開閉片と第2の開閉片との間に、各開閉片により電線防護管本体を加圧変形させた時に、該電線防護管本体の一部を受け容れる空所を備えているため、電線防護管を自在に変形させることが可能となる。
このように本発明によれば、少数の防護管しか設置できない短尺な架空配電線部分に間接活線器具を用いた手作業により防護管を設置する場合に、必要最少数の作業員と間接活線器具とにより、少ない労力で効率的に防護管の設置作業と、電線に対する係止作業を効率よく実施することが可能となる。
【0035】
<本発明の構成、作用、効果のまとめ>
第1の本発明に係る電線防護管は、電線を挿通する貫通中空部を備えた絶縁材料から成る電線防護管本体と、該電線防護管本体に固定される絶縁材料から成る開閉部材と、を備えた電線防護管であって、前記電線防護管本体は、可撓性を有した絶縁板を管状に構成した管体と、該管体の軸方向に沿って該絶縁板に形成した開閉部と、を備え、前記開閉部材は、前記開閉部を境界とした一方の管体部分に固定される第1の開閉片と、他方の管体部分に固定される第2の開閉片と、開閉操作機構と、を備え、前記開閉操作機構を操作することにより一方の前記開閉片に対して他方の前記開閉片を接近離間自在に構成されており、前記第1及び第2の開閉片の開放動作に応じて、前記電線防護管本体は前記一方の管体部分を前記他方の管体部分から離間させることによって前記開閉部を開放することを特徴とする。
【0036】
少数の防護管しか設置できない短尺な架空配電線部分には、重量物であり、かつ設置、運用に手数の掛かる防護管挿入機を使用する代わりに、間接活線器具を用いた手作業による作業が適している。
しかし、この作業はスペースの狭いバケット内に数名の人員が乗った状態で行われることになり、効率が悪く、且つ安全性の上でも問題がある労苦の伴う作業であり、改善が求められていた。
【0037】
また、電線防護管自体は配電線に係止するための挟圧力を発揮する構造は備えておらず、係止具を用いないと位置ズレや電線に対する回転が発生する。つまり、電線防護管を電線に取り付けるための間接活線作業においては、係止具が必須であり、そのために使用する間接活線器具の数と、人数と、取付け作業手数が増えていた。
本発明では、電線防護管に開閉部材を一体化し、間接活線器具(操作棒)を用いて開閉部材を開閉する構成とした。
このため、開閉部材を用いて電線防護管を開放することにより簡易に配電線への取り付けを行うことができ、配電線を電線防護管内に挿通した後に開閉部材を用いて電線防護管を更に加圧変形させることにより、電線防護管を配電線に対して強固に固定することが可能となる。この作業は必要最少数の人員による最少数の間接活線器具を用いた簡易な作業となる。
配電線から電線防護管を離脱させる場合には間接活線器具を用いて個々の開閉部材を開放させればよいので、作業性の良好な作業となる。
【0038】
第2の本発明は、前記第1の開閉片と前記第2の開閉片との間に、前記各開閉片により前記電線防護管本体を加圧変形させた時に、該電線防護管本体の一部を受け容れる空所を備えていることを特徴とする。
この空所の存在により、電線防護管を加圧変形させて配線線に固定することが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1…電線防護管、2…電線防護管本体、5…管体、8…非固定部位、10…管状部分、15、16…半管体部分、20…第1接続部、20a…膨張部、25a…フランジ部、50…開閉部材、60、70…開閉片、61…ベース部、62…雌ネジ部、63…挟圧部、65…ガイド部、66…凹所、70a…挟持面、72…被ガイド部、80…開閉操作機構、81…螺子棒、83…操作棒連結部、85…係止溝、100…操作棒、101…係合ピン、130…電線防護管、135…開閉部材、136、137…挟持部、138…駆動部、141、162…挟持部分、143…螺着部分、145…挟持面、161…基部、162…挟持部分、163…下部腕部分、168…支持部分、169…支持孔、173…挟持面、182…挿嵌部分、183…係止碗状部分、184…下端面、185…係止溝、187…嵌合孔、188a…溝部、188b…溝部分、189…収納孔、190…圧縮コイルバネ、195…空所、191…嵌合部材、205…蓋体、207…嵌合溝、208…凹所、209…支持孔、210…支持軸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6