(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガラスが、フルオロリン酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ケイ酸塩ガラス、アルミノケイ酸塩ガラスおよびホウケイ酸ガラスから選択される請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法。
抵抗ヒーター、バーナー配列、輻射ヒーター、レーザーおよびこれらの組み合わせから選択される加熱設備(2)を少なくとも含むリドロー装置内で前記ガラスを加熱する請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法。
請求項1乃至7の何れか一項に記載の方法を行うためのリドロー装置であって、変形領域(4)、および変形ゾーン(5)を加熱するための加熱設備(2)を含み、前記変形領域(4)内に少なくとも部分的に配置されるガラスのブランク(1)の前記変形ゾーン(5)を、前記ガラスが高くとも<107.6dPasの粘度η2を有する温度T2に加熱できるように、加熱設備(2)および/または前記変形領域(4)が設計されており、ここで、装置は、さらに、少なくとも106dPas/秒の粘度変化をもたらすように、変形領域(4)を出た後ブランク(1)を冷却するための冷却設備(9)を具備する、リドロー装置。
【発明の概要】
【0001】
本発明は、ガラス部品の製造方法、そのような方法を行うためのリドロー装置、およびガラス部品に関する。
【0002】
原則としては、ガラスのリドロー加工は公知であり、特に、ブランクおよび/またはガラス繊維の延伸のための円形断面を有するブランクについての総合的な最先端リドロー加工が存在している。
【0003】
リドロー法の間、ガラス片は部分的に加熱され、適切な機械装置を用いて長手方向に延伸される。ガラス片−ブランク−を一定速度で加熱ゾーンに供給し、加熱ガラスを一定速度で延伸する場合、これはブランクの断面形状の縮小をもたらし、これは速度比に依存する。したがって、たとえば管状ブランクを使用する場合、管状製品が再び製造されるが、その直径はより小さい。製品の断面形状はブランクのものと類似しており、その大部分については、適切な手段によって1:1の縮尺でブランクの複製を実現することが実に望ましい(EP 0819655 B1を参照のこと)。
【0004】
ガラスをリドロー加工する工程では、通常楕円形のブランクをホルダ内の一方の端部に固定し、他端部をたとえばマッフル炉内で加熱する。ガラスが変形可能になったら、ブランクのうちホルダ内に固定されている端部における引抜力の行使によってそれを延伸する。その間にブランクをマッフル内に向けて移動させる場合、適切な選択温度によって、これは、結果として、類似形状であるが、より小さい断面を有する製品になる。たとえば、円形断面を有するブランクはガラス繊維に延伸される。たとえば部品などの製品を延伸する速度、およびブランクを前方へ任意に移動させる速度の選択が、断面の縮小率を決定する。通常、ブランクの断面の厚さ対幅の比は、一定のままである。ガラス繊維を延伸する場合にこれが望ましいのは、円形断面を有するブランクから始めると、同様に円形断面を有するガラス繊維を延伸できるからである。
【0005】
板状部品、すなわち、断面の幅対厚さの比がたとえば80:1である部品をリドロー加工するのは困難であることは分かっている。非常に大きい幅を有するブランクを用いることによってのみ、同様に大きい幅の部品を延伸することが可能である。したがって、たとえば、幅70mmおよび厚さ10mm(B/D=7)の断面を有するブランクから、幅7mmおよび厚さ1mm(b/d=7)の断面を有する部品が製造できる。
【0006】
より大きい幅またはより小さな厚さの断面を有するブランクを使用する場合、より大きい幅および同様の厚さの断面を有する部品のみが可能である。より大きい幅を有するブランクの使用は、しばしば、無理な製造効率のため失敗し、より厚みの少ないブランクの使用は、リドロー加工中のブランクを非常に頻繁に交換する必要があるのでますます非効率的である。
【0007】
US 7,231,786 B2には、リドロー加工によって平面ガラス板を製造できる方法が記載されている。より大きい幅の製品を得るには、この場合、エッジローラを用いてガラスを長手方向に延伸する前に、軟質ガラスを幅方向に延伸する把持部が使用される。
【0008】
US 3,635,687Aには、リドロー法が記載されており、ここでは、板状ブランクのエッジ領域を冷却することによって、幅対厚さの比(B/D)の変化を得ている。この方法では、10.7倍の幅対厚さの比の最大の増加を達成することができる。
【0009】
EP 0 819 655 B1には、ガラスを形成するための方法が記載されている。この場合は、形成工程においてもリドロー加工を使用することができる。しかし、幅対厚さの比(B/D)を調整する方法については記載されていない。ここでは、加熱後、形状を操作するためにガラスが局所的に加熱または冷却される。
【0010】
しかしながら、これらの参考文献に記載されている操作は、最終形状および/または延伸された部品の形状と比べて小さな変化をブランクの形状にもたらすのみである。さらに、これらの方法は、比較的多くの労力を伴う。特に把持部またはロールを使用すべき場合には、精巧なリドロー装置が必要とされ、これは欠陥の影響を受けやすい。
【0011】
したがって、本発明の目的は、ガラス部品を製造するための効率的な方法を提供することである。さらに、ガラス部品の幅対厚さの比(b/d)と比較して、ブランクの幅対厚さの比(B/D)を増大させることを可能にする方法が提供されることが望ましい。特には、板状ガラス部品を製造するための方法であって、幅Bおよび厚さDを有するブランクから幅bおよび厚さdを有する板状ガラス部品を作製でき、b/d比がB/D比よりはるかに大きい方法が提供されることが望ましい。
【0012】
本発明による目的は、特許請求の範囲に記載されている態様によって達成される。
【0013】
本発明に係る、ガラスをリドロー加工するための方法は、たとえば板状ガラス部品の製造に役立つ。それは以下の工程:
−平均厚さDおよび平均幅Bを有するガラスブランクを準備する工程と、
−ブランクの変形ゾーン(deformation zone)を加熱する工程と、
−平均厚さdおよび平均幅bに達するまでブランクを延伸する工程と
を含み、変形ゾーンは、ブランクのうち、このブランクが0.95
*D〜1.05
*dの厚さを有する一部分であり、変形ゾーンは6
*D以下の高さを有する。
【0014】
本方法は、変形ゾーンが最先端のものと比べて非常に小さいことを特徴とする。変形ゾーン(=メニスカス)は、6
*D以下(具体的には100mm以下)、好ましくは5
*D以下(具体的には40mm以下)、特に好ましくは4
*D以下(具体的には30mm以下)の高さを有する。
【0015】
好ましくは、変形ゾーンはブランクの幅全体に及ぶ。変形ゾーンの「高さ」とは、ブランクが延伸される方向におけるその広がりを意味する。変形ゾーン(=メニスカス)は、ブランクが0.95
*D〜1.05
*dの厚さを有する領域である。したがって、それはガラスが変形可能な領域である。この厚さは元の厚さDよりも小さいが、最終厚さdは依然として得られていないものである。変形ゾーンは、たとえば温度T
2であってもよく、この温度ではブランクのガラスは10
4dPas〜10
8dPasの粘度η
2を有する。
【0016】
変形ゾーン内の粘度の増大に伴って、延伸されるガラス部品の幅bはますます減少する。軟化する場合、たとえばガラス部品の厚さdについての目標値100μmを得るために延伸速度を上げる場合、ガラス部品の幅bは、ブランクの幅Bと比較して、かなり減少することになる。それゆえに、それは高いb/d比を有する平板ガラス部品を得るために有利であり、そのとき変形ゾーン内のブランクのガラスは軟化点(EW)での各ガラスの粘度より低い粘度η
2を有する。したがって、変形ゾーン内のブランクのガラスは、好ましくは高くとも<10
7.6dPas、さらに好ましくは10
7.5dPas以下、より一層好ましくは10
7.0dPas以下、非常に好ましくは10
6.5dPas以下の粘度η
2を有する。さらに、軟化点での各ガラスの粘度より低い粘度η
2もまた有利である。なぜなら、ガラスを延伸するのに必要とされる引抜力は、粘度の増大に伴ってますます増大するからである。このように、より低い粘度は、必要とされる引抜力がより低いこととも関係している。
【0017】
しかしながら、変形ゾーン内のブランクのガラスの粘度η
2は低すぎるべきでもない。なぜなら、低すぎると均一にガラスを延伸することがより困難になるからである。変形ゾーン内のブランクのガラスは、好ましくは少なくとも10
4.0dPas、さらに好ましくは少なくとも10
4.5dPas、より一層好ましくは少なくとも10
5.0dPas、非常に好ましくは少なくとも10
5.8dPasの粘度η
2を有する。
【0018】
ここで説明する本発明は、より大きい幅および/またはより良好な厚さ分布を得るために、US 3,635,687 Aと同様のブランクのエッジ領域の冷却と組み合わせてもよい。また、より良好な厚さ分布を得るために、より高いエッジ温度が可能である。
【0019】
変形ゾーンは、ブランクのうち、0.95
*D〜1.05
*dの厚さを有する一部分である。好ましくは、これは、ブランクのうち、該方法中に特定の時点で温度T
2を有する一部分である。この温度でのブランクのガラスの粘度はグラスの変形を可能にする範囲内にある。
【0020】
ブランクは上端および下端を有する。変形ゾーンは上端と下端との間に位置する。変形ゾーン以外、ブランクの温度は、好ましくは、T
2よりも低い。ブランクの変形が実質的に変形ゾーンの領域においてのみ起こるためである。この領域の上方および下方において、好ましくは、厚さおよび幅は一定のままである。便宜上、本明細書を通じて「ブランク」という用語が使用され、ガラスが本方法で加工される場合、本発明による最終工程段階終了後においてのみ、製品は「ガラス部品」と呼ばれる。
【0021】
好ましくは、ブランクの幅対厚さの比の増加は、製造されるガラス部品の厚さdが実質的にブランクの厚さDより小さいという方策によって、実質的に達成される。好ましくは、厚さdはD/10以下、さらに好ましくはD/30以下、特に好ましくはD/75以下である。その場合、ガラス部品は、好ましくは10mm未満、さらに好ましくは1mm未満、より好ましくは100μm未満、さらに好ましくは50μm未満、特に好ましくは30μm未満の厚さdを有する。本発明では、高品質で比較的大きい表面積を有する、そのように薄いガラス部品を製造することが可能である。
【0022】
好ましくは、製造されるガラス部品の幅bは、ブランクの幅Bに対してほとんど減少しない。これは、B/b比が好ましくは2以下、さらに好ましくは1.6以下、特に好ましくは1.25以下であることを意味する。
【0023】
本方法は、本発明に係るリドロー装置内で行うことができる。加熱するために、ブランクをリドロー装置内に挿入することができる。好ましくは、リドロー設備はブランクの一方の端部を固定できるホルダを含む。ホルダは、好ましくは、リドロー装置の上部に設置される。その場合、ブランクはその上端がホルダ内に固定される。
【0024】
リドロー装置は少なくとも1つの加熱設備を含む。加熱設備は、好ましくは、リドロー装置の中央部に配置される。加熱設備は、好ましくは、電気抵抗ヒーター、バーナー配列、輻射ヒーター、レーザスキャナを伴うもしくは伴わないレーザーまたはこれらの組み合わせであってもよい。加熱設備は、好ましくは、変形領域(deformation region)内に配置されるブランクを加熱でき、本発明によって設計される変形ゾーンが、温度T
2に加熱されるように設計される。変形領域は、好ましくは、リドロー装置の内側に位置する領域である。加熱設備は、変形領域および/またはブランクの一部の温度を、変形領域内に配置されているブランクがその変形ゾーン内で温度T
2に加熱されるほど高い温度へと上昇させる。ブランクの一部のみの目的とされる加熱に適している加熱設備、たとえばレーザーが使用される場合、変形領域内の温度はほとんど上昇しない。
【0025】
変形領域は、好ましくは6
*D以下(具体的には100mm以下)、好ましくは5
*D以下(具体的には40mm以下)、特に好ましくは4
*D以下(具体的には30mm以下)の高さを有する変形ゾーンを生じさせる高さを有する。したがって、加熱方法およびブランク寸法に応じて変形領域は異なる長さに設計できる。
【0026】
加熱設備は、好ましくは、ブランクにおいて本発明によって設計される変形ゾーンが温度T
2に加熱される程度にだけ、変形領域および/またはブランクの一部の温度を上昇させる。ブランクのうち変形ゾーンの上下に位置する部分は、好ましくは、T
2よりも低い温度を有する。本発明によれば、これは、好ましくは、ブランクのうち変形領域以外にある部分を保護する1つ以上のバッフルを含む加熱設備によって実現される。代替的にまたは付加的に、変形領域内のブランクの集中的加熱を可能にする加熱設備、たとえばレーザーまたはレーザスキャナを使用できる。さらなる代替の態様は、変形ゾーンの近傍に配置され実質的に熱が変形領域以外の領域へと広がらない、低い高さのみを有する加熱設備に関する。
【0027】
加熱設備は輻射ヒーターであってもよく、これによると、放射線を誘導および/または制限する適切な手段によって、その熱効果は変形領域に集中されるおよび/または限定される。たとえば、KIR(短波IR)ヒーターが使用されていてもよく、保護することによって本発明による非常に小さな変形領域を作り出す。また、(ガス、水または空気で)冷却されたバッフルが使用されていてもよい。使用されていてもよいさらなる加熱設備はレーザーである。この場合、レーザーの放射線誘導のためにレーザスキャナが使用されていてもよい。
【0028】
装置は、好ましくは、リドロー設備の下部領域、具体的には加熱設備の真下に配置された冷却設備を含んでいてもよい。この設備を用いて、変形工程の直後に、ガラスの粘度が、好ましくは、>10
9dPasの値に変化し、その結果明らかな変形はもはや生じない。この冷却は、好ましくは、少なくとも10
6dPas/秒の粘度変化をもたらすように行われる。ブランクのガラスに応じて、これはたとえば400〜1000℃の範囲の温度T
3に対応する。
【0029】
本発明に係る方法は、好ましくは、:
−変形領域を出た後ブランクを冷却するさらなる工程
を含む。
【0030】
>10
9dPasの粘度へのブランクのさらなる冷却は、周囲温度(たとえば10〜25℃)で冷却することによって実現していてもよい。ただし、ブランクは、流体中、たとえばガス流中で積極的に冷却されてもよい。製品が変形ゾーンに続く冷却ゾーンで非常にゆっくり冷却される場合、残留張力が、内向性の割れなしに、その後のクロスカットおよびシート端部の除去を少なくとも可能にすることが特に好ましい。
【0031】
好ましくは、変形ゾーンがブランク内に生じるように変形領域は配置される、および/または加熱設備は設計される。変形ゾーンは、ブランクのうち、加工中に0.95
*D〜1.05
*dの厚さを有する一部分である。ブランクの変形ゾーンを加熱することによって、各部位でのガラスの粘度は大きく低下するので、ブランクを延伸することができる。これはブランクがより長くなることを意味する。延伸工程によって、ブランクの厚さDはより小さくなる。ブランクは、好ましくは、リドロー設備の上部領域に設置するのが好ましいホルダに上端が固定されるため、ブランクの延伸は重力を受けることによって行われてもよい。しかしながら、好ましい態様では、リドロー設備は、好ましくは変形領域の下方にあるブランクの一部分、具体的にはブランクの下端で引抜力を働かせる延伸設備を含む。
【0032】
延伸設備は、好ましくは、リドロー装置の下部領域に配置される。この場合、延伸設備はブランクの反対側に作用するロールを含むように設計されていてもよい。ブランクは、下端が第2のホルダに着脱可能に取り付けられていてもよい。具体的には、第2のホルダは延伸設備の構成要素である。第2のホルダにおいて、ブランクを長手方向に延伸するおもりがたとえば取り付けられていてもよい。使用される引抜力は、好ましくは350N/400mmブランク幅(B)未満、さらに好ましくは300N/400mmブランク幅未満、より一層好ましくは100N/400mmブランク幅未満、非常に好ましくは50N/400mmブランク幅未満である。引抜力は、好ましくは1N/400mmブランク幅より大きく、さらに好ましくは5N/400mmブランク幅より大きく、より一層好ましくは10N/400mmブランク幅より大きく、非常に好ましくは20N/400mmブランク幅より大きい。
【0033】
好ましい態様では、ブランクは変形ゾーンの方向に提供され、それにより、本方法は連続的に行うことができる。この目的のために、このリドロー装置は、好ましくは、ブランクを変形領域へと移動させることに適している送り設備を含む。したがって、このリドロー装置は連続的な作業において使用できる。送り設備は、好ましくは、ブランクを延伸する速度v
zより遅い速度v
Nでブランクを変形領域へと移動させる。そのようにして、ブランクは長手方向に延伸される。v
N対v
zの比は、具体的には、<1、好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.1以下である。これら2つの速度の違いは、ブランクの幅および厚さの縮小の程度を決定する。
【0034】
加熱する前に、ブランクを好ましくは予熱する。この目的のために、リドロー装置は、好ましくは、ブランクが温度T
1に加熱されてもよい予熱ゾーンを含む。予熱ゾーンは、好ましくは、リドロー装置の上部の領域に配置される。温度T
1は、たとえば10
10〜10
14dPasの粘度η
1に対応する。したがって、ブランクは変形領域に入る前に、好ましくは予熱される。したがって、温度T
2に達するために必要な時間がより短くなるため、変形領域を通過するより速い移動が可能になる。予熱ゾーンにより、高い温度膨張率を有するガラスが、高すぎる温度勾配のために破損するのを回避することもできる。
【0035】
好ましい態様において、変形ゾーンは10
5.8〜10
7.6dPas、特に10
5.8〜10
7.6dPas未満のブランクのガラスの粘度に対応する温度T
2に加熱される。ガラスの粘度は温度に依存する。各温度で、ガラスは一定の粘度を有する。変形ゾーン内で所望の粘度η
2を得るのに必要な温度T
2はガラスに依存する。ガラスの粘度はDIN ISO 7884-2, -3, -4, -5に従って決定される。
【0036】
ブランクは、好ましくは、フルオロリン酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ケイ酸塩ガラス、アルミノケイ酸塩ガラスおよびホウケイ酸ガラスから選択されるガラスから成る。使用されるガラスは、工業用ガラス、特に工業用板ガラス、または光学ガラスであってもよい。
【0037】
好ましい工業用ガラスはソーダ石灰ガラスおよびホウケイ酸ガラスである。好ましい態様において、ガラスはディスプレイガラスまたはプラスチック積層板中のバリア層のための薄いガラスである。
【0038】
好ましい光学ガラスはリン酸塩ガラスおよびフルオロリン酸塩ガラスである。リン酸塩ガラスは、ガラス形成剤としてP
2O
5を含む光学ガラスである。その場合、P
2O
5はガラスの主要な構成要素である。リン酸塩ガラス中のリン酸塩の一部がフッ素で置き換えられる場合、フルオロリン酸塩ガラスが得られる。フルオロリン酸塩ガラスの合成の場合、酸化物化合物、たとえばNa
2Oの代わりに、各フッ化物、たとえばNaFがガラス混合物に添加される。
【0039】
本発明によれば、好ましくは板状ブランクが使用され、本発明によれば、「板状ブランク」とは、ブランクの幅Bがその厚さDよりも大きいことを意味する。好ましくは、ブランクの幅対厚さの比(B/D)は少なくとも5、より好ましくは少なくとも7である。
【0040】
好ましくは、ブランクは、少なくとも0.05mm、より好ましくは少なくとも1mmの厚さDを有する。厚さは、好ましくは40mm以下、より好ましくは30mm以下である。ブランクの幅Bは、好ましくは少なくとも50mm、より好ましくは少なくとも100mm、最も好ましくは少なくとも300mmである。
【0041】
ブランクの長さLは、好ましくは少なくとも500mm、より好ましくは少なくとも1000mmである。一般に、ブランクがより長い場合、本方法をより効率的に行うことができるのは確かである。したがって、さらに長いブランクも、考慮されてもよく、有利であり得る。同様に、ブランクが連続的に提供される、またはブランクがロールから巻き出される方法の実施が考慮されてもよい。さらに、好ましくは、L>Bであることが確かである。
【0042】
本発明に係る方法は、第1のロール上に巻きつけられたブランクを用いて行ってもよい。この場合、ブランクをまた、リドロー装置の上部領域に固定するのだが、ブランクをロールから巻き出すことができるようにする。次に、ブランクの自由端を延伸設備によって延伸する。続いて、延伸設備は、好ましくは連続的で一定の方法で変形領域を通してブランクを延伸し、その結果ブランク内に本発明に係る変形ゾーンが形成される。リドロー装置を通過した後にかくして製造されたガラス部品を、好ましくは、第2のロール上に巻きつける。
【0043】
ブランクは、シート端部(厚くなった境界領域)を含んでいてもよいしまたは含んでいなくてもよい。ロール上にブランクを供給することおよび/またはロール上に板ガラス部品を巻きつけることによって、ブランクを手のかかる方法で単純に装置内に挿入する必要がないために、方法全体をより効率的に行うことができる。
【0044】
最後に、たとえば切断することにより、得られたガラス部品を単一片に分離してもよい。さらに、また任意に多少厚くなったガラス部品の境界領域(シート端部)を切り落としてもよい。必要に応じて、ガラス部品はまた研磨および/またはコーティングされていてもよい。本発明による方法で、使用可能なガラスの表面積が非常に広いガラス部品を得ることができる。これは、ガラス部品のうち要求品質を備えた部分が非常に広いことを意味する。本発明の方法において、使用前に任意に除去されなければならないシート端部の表面積部分は小さい。好ましくは、ガラス部品は、1:2〜1:20,000の厚さ対幅の比を有する。
【0045】
好ましくは、ブランクはストリーク等級(streak class)においてC以下に分類されることができる。ストリーク等級は、光路差の結果である。ストリーク等級C以上については、平板を通る光路差が30nm未満でなければならない。
【0046】
本発明による方法によって得ることが可能なガラス部品もまた本発明によるものである。ガラス部品は少なくとも1つ、具体的には2つの火炎研磨された表面を含む。火炎研磨された表面は非常に滑らか、すなわちそれらの粗さは非常に少ない。火炎研磨の場合、機械的研磨と比べて表面は摩耗しないが、研磨される材料がそれが流動するような高温に加熱され、これにより滑らかになる。したがって、火炎研磨によって滑らかな表面を製造するコストは、非常に滑らかに機械的に研磨された表面を製造するよりも実質的に低い。
【0047】
本発明に係る方法で、少なくとも1つの火炎研磨された表面を有するガラス部品が得られる。本発明に係るガラス部品では、用語「表面」は、上面および/または下面を意味し、そのため、両方の面は残りの面と比べて最も大きい。
【0048】
本発明のガラス部品の火炎研磨された表面は、好ましくは5nm以下、好ましくは3nm以下、特に好ましくは1nm以下の二乗平均平方根粗さ(RqまたはRMS)を有する。薄いガラスの粗さの深さRtは、好ましくは6nm以下、さらに好ましくは4nm以下、特に好ましくは2nm以下である。粗さの深さは、DIN EN ISO 4287に従って決定される。
【0049】
機械的に研磨された表面の場合、粗さの値は一層悪い。さらに、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて機械的に研磨された表面の場合、研磨の痕跡が観察できる。さらに、機械的研磨剤、たとえばダイヤモンド粉末、酸化鉄および/またはCeO
2のAFM残留物を用いても観察できる。機械的に研磨された表面は、研磨工程の後に洗浄が必要なので、ガラス表面で特定のイオンの浸出が起こる。この特定のイオンの欠乏は、二次イオン質量分析(ToF−SIMS)を用いて検出できる。このようなイオンは、たとえばCa、Zn、Baおよびアルカリ金属である。
【0050】
以下において、本発明は以下の図および態様例によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は、側面視で本発明に係るリドロー装置の1つの例示的な態様の概略的構造の側面図を示している。このリドロー装置内では、ブランク1が装置を通って下向きに移動する。このリドロー装置は、2つの加熱設備を含んでおり、これらは装置の中央領域に配置されている。本態様では、加熱設備は、変形領域4が形成されるようにバッフル3によって遮断されている。ブランク1のうち変形領域4内に配置される一部は、加熱されて、温度T
2に達する。この部分は高さHを有する変形ゾーン5である。ブランク1は、ここでは2つの従動ロールの形態で実現されている延伸設備6を用いて下方に延伸される。ここでは同様にロールの形態で設計されている送り設備7が、ブランク1を延伸設備6の速度より低い速度で送る結果、ブランク1が変形領域4で変形される。ブランク1はより薄くなるので、変形工程の後段の厚さdは変形工程の前のそれDより小さくなる。ブランク1は、変形領域4に送られる前に、ここではバーナーの火炎によって示されている予熱設備8を用いて温度T
1に予熱される。変形領域4を通過した後、ブランク1は、氷晶によって示されている冷却設備9に供給される。
【
図2】
図2は、従来技術に係る方法の操作シーケンスの概要を示している。
図1との違いは、この場合、ブランクの幅Bの変化が示されている点である。ブランク1は、変形領域4へと移動する。変形領域4は、加熱設備2(ここでは抵抗ヒーター)で加熱される。ブランク1は、ガラスが低い粘度を有する変形ゾーン4がガラス中に形成されるように加熱される。ただし、この変形ゾーン4は、制限がないことと加熱設備2の高さとのために、本発明による変形ゾーンよりもはるかに大きい。そのため、ブランク1の幅の特に明らかな縮小をもたらす。また、ブランク1を長手方向に延伸する延伸設備6が示されている。
【
図3】
図3は、長さL、厚さDおよび幅Bを有するブランクを概要的に示している。
【
図4】
図4は、加熱設備として使用されていてもよい任意の輻射ヒーター6の作用機構を概要的に示している。ブランク1との距離に依存して、変形領域2の高さは異なる。この図には、保護設備8を用いて、可能な限り高さが低い変形領域2を得るように、保護設備8を用いて変形領域7を制限し得る方法も示されている。したがって、加熱設備の距離とさらには設計の両方が、変形領域2の高さの調整に役に立つ可能性がある。
【
図5】
図5は、ガラス製品の幅がリドロー加工プロセスにおける変形ゾーンの高さに依存していることを示している。より低い高さを有する変形ゾーンは、ブランクの幅の減少を低減させることが分かる。
【
図6】
図6は、例3の製品の幅bに対する板ガラス製品の厚さdの分布を示している。ここで、ガラス製品の縁のシート端部は比較的小さいことが分かる。一様に厚さが小さな部分はガラス製品の用途に使用できるが、シート端部は除去しなければならない。本発明に係る方法の使用は、とりわけ高い収率をもたらす。
【
図7】
図7は、高さ40mmのマッフルに5mm/分の速度で供給される厚さ4mmおよび幅400mmのブランクの場合における、延伸されたガラス部品の平均幅b(総幅)および延伸に必要とされる引抜力を例示的に示しており、これらのそれぞれは変形ゾーンにおけるブランクのガラスの粘度に依存している。ガラスは200mm/分で延伸される。粘度の増大に伴って、必要とされる引抜力がますます増加することが明らかに分かる。さらに、粘度の増大に伴って、得られる製品の平均幅bがますます減少することが分かる。
【
図8】
図8は、高さ40mmのマッフルに5mm/分の速度で供給される厚さ4mmおよび幅400mmのブランクの場合における、平均幅b(総幅)対延伸されたガラス部品の平均厚さd(正味厚さ)の比および延伸に必要とされる引抜力を例示的に示しており、これらのそれぞれは変形ゾーンにおけるブランクのガラスの粘度に依存している。ガラスは200mm/分で延伸される。粘度の増大に伴って、得られる製品のb/d比がますます減少することが分かる。
図7で粘度の増大に伴って平均幅bが減少することと比較すると、粘度の増大に伴って、b/d比は比較的より大きく減少する。
【0052】
[実施例]
例1:光学ガラスの延伸
ここでは、光学ガラス(フルオロリン酸塩ガラス)をたとえばB=120mmおよびD=14mmの寸法を有する棒状に成型する。次に、この棒をリドロー装置に挿入し、予熱ゾーンにてガラス転移点(約10
13dPas)に対応する温度に加熱する。高さが40mmで、10
7.6dPas未満の粘度、最大で約10
4dPasの粘度に少なくとも対応する温度を有する変形領域内にブランクを下向きに移動させる。出てきたガラスを冷却ゾーンを通過するように導き、延伸設備で固定して、ブランクが供給されるよりも速く延伸する。こうして、これは幅100mm、平均厚さ0.3mmを有するガラスのリボンをもたらす。
【0053】
例2:板ガラスの延伸
ブランクとして、幅300および厚さ10mmを有する板ガラス(Borofloat(登録商標))を準備する。予熱ゾーン(約Tg)を通過した後、このブランクを変形ゾーン内に移動させる。このゾーンを、幅全体および高さ20mmについて、10
4dPas〜10
7.6dPas未満の粘度に対応する最小温度に加熱する。冷却ゾーンを通過した後、出てきたガラスを延伸設備に固定する。ブランクの速度および製品の速度を適切に選択することによって、100μm以下の平均厚さを調整し、製品をシリンダ上に巻きつける。こうして、これは少なくとも250mmの幅を有する製品をもたらす。
【0054】
例3:板ガラスの延伸
幅50mmおよび厚さ1.1mmの板ガラス(Borofloat(登録商標))でできているブランクを準備する。予熱ゾーン(約Tg)を通過した後、このブランクを変形ゾーン内に移動させる。変形ゾーン内で、ガラスを幅全体および高さ3mmについて約10
7dPasの粘度に対応する温度に加熱する。冷却ゾーンを通過した後、出てきたガラス上におもりを取り付ける(延伸設備)。ブランクの速度およびおもりのサイズを適切に選択することによって、約50μmの平均厚さを調整する。こうして、これは少なくとも40mmの幅を有する製品をもたらす。
【表1】