(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スペーサ本体は正面視概略四角形状であり、前記ワイヤ装着部と前記3つの電線装着部は前記スペーサ本体の頂点に対応する部分に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電線スペーサ。
弾性的に開閉する電線出入れ用の切り込み部を有し、且つ該切り込み部と連通して前記電線を保持する中空部を有した電線保持部と、該電線保持部に連設されて押圧操作された時に前記切り込み部を開放する操作部と、を有した弾性体からなる電線保持ブッシュを備え、
前記電線保持部は、前記装着凹所と前記クリップ本体とによって挟持されることを特徴とする請求項4に記載の電線スペーサ。
前記メッセンジャワイヤ装着部、及び前記各電線装着部間に位置する前記スペーサ本体の外面には、沿面距離を増大させる凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の電線スペーサ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0009】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第一の実施形態〕
本発明の第一の実施形態に係る電線スペーサについて説明する。
図1は、電線スペーサの使用状態を示す図である。電線スペーサ1は、メッセンジャワイヤMWの下方に逆三角形状に並行して架設された3本の電線EWの間隔を一定に保持する部材である。電線スペーサ1は、メッセンジャワイヤMWが装着されるワイヤ装着部20と、3本の電線が夫々装着される装着凹所31を有した3つの電線装着部30とを有したスペーサ本体10を備えている。
【0010】
<スペーサ本体>
図2は、スペーサ本体を示す図である。
図3は、スペーサ本体に備えられたメッセンジャワイヤ装着部を示す斜視図である。
スペーサ本体10は、正面視概略四角形状、より詳しくは概略菱形形状であり、スペーサ本体10の最上部に位置する一の頂点に対応する部分にメッセンジャワイヤ装着部(以下単に「ワイヤ装着部」という)20が配置され、他の三つの頂点に対応する部分に電線装着部30が配置されている。スペーサ本体10の中央部には開口部13が形成されており、ワイヤ装着部20と電線装着部30との間、及び電線装着部30同士の間は連設部11によって接続されている。各連設部11の外周には複数のフランジ12、12…が形成されており、沿面距離を増大させる凹凸形状となっている。
なお、以下では便宜上、スペーサ本体10に関して、スペーサ本体10に装着する電線EW又はメッセンジャワイヤMWの軸線に沿った方向を奥行方向として説明する。
【0011】
スペーサ本体10は絶縁性材料から構成される。具体的にはスペーサ本体10は磁器製とすることができる他、ガラスや合成樹脂等を用いて作製することができる。例えばスペーサ本体10として、吸湿性の少ないエポキシ樹脂系強化プラスチック、ポリエステル樹脂系強化プラスチックまたはこれと同等以上の素材を用いることができる。或いはスペーサ本体10としては、芯材としてIEC61109-5.4(コアの材質試験)に適合するエポキシEガラス系引抜成型品を用い、外被として高重合度ポリオルガノシロキサンをベースポリマーとし、耐候性、耐トラッキング性に優れたシリコーンゴム等、種々の材料から構成することができる。
【0012】
ワイヤ装着部20は、ワイヤ受入口23及びワイヤ受入口23から受け入れたワイヤMWを係止する係止凹部25を有する一対のフック部材21、21を備えている。各フック部材21、21は、メッセンジャワイヤMWを挿抜可能な離隔を有して側面22、22同士を対向配置されると共に、各ワイヤ受入口23、23が互いに逆向きに開口している。各係止凹部25、25は各フック部材21、21の面方向と直交する姿勢(図中奥行方向を軸線方向とする姿勢)で収容した1本のメッセンジャワイヤMWを抜け落ち不能に支持する支持空間を形成する。なお、側面22の面方向は、フック部材21が伸びる方向に対して直交する方向である。
ワイヤMWはワイヤ保持ブッシュ40を介してワイヤ装着部20に装着される。各フック部材21、21の頂部には、ワイヤ保持ブッシュ40と係合するブッシュ係合凹所27が形成されている。
【0013】
電線装着部30は電線装着用の装着凹所31と、装着凹所31と連続する内面形状を有し、スペーサ本体10の奥行方向(前面及び背面)に夫々突出形成された半筒状のクリップ係止部33、33と、を有する。各クリップ係止部33、33の外周面には、奥行き方向に沿って伸びる2本の線状の凹所(凹条)からなる被係止凹所35、35が、周方向位置を変えて形成されている。
電線EWを受け入れる装着凹所31はスペーサ本体10の外側に開口している。
【0014】
<ワイヤ保持ブッシュ>
ワイヤMWはメッセンジャワイヤ保持ブッシュ(以下単に「ワイヤ保持ブッシュ」という)40を介してワイヤ装着部20に装着される。
図4は、メッセンジャワイヤ保持ブッシュを示す図である。
ワイヤ保持ブッシュ40は、軸方向に沿ってワイヤ挿入用のスリット43が形成された半筒状のワイヤ保持部41と、ワイヤ保持部41の外周面から外径方向に突出する軸部45と、軸部45の先端に接続された笠部47とを備えている。
【0015】
ワイヤ保持ブッシュ40は、ワイヤMWと係止凹部25との隙間を埋めると共に、ワイヤ装着部20に対してワイヤMWのガタツキを防止しつつ安定して装着するための部材であり、弾性変形可能な絶縁性部材として例えばゴム素材から構成される。
ワイヤ保持部41は、素材が有する摩擦力と弾性により、ワイヤMWをワイヤ保持部41内にて回転しない程度に密着・保持できればよい。また、ワイヤ保持部41は、ワイヤ装着部20の2つのフック部材21間に形成された間隙を通過可能、且つ、係止凹部25の内面形状に係合する外形状を有する。
【0016】
軸部45は概略円柱形状であり、2つのフック部材21間に形成された間隙内で軸周りに回転可能な直径を有する。また、軸部45は弾性変形して2つのフック部材21の各側面22、22に密着する。
笠部47は、絶縁ヤットコにて把持するに好適な大きさを有する。笠部47のワイヤ保持部41との対向面(下面)はワイヤ装着部20の頂部に係合する係合面であり、ワイヤ装着部20に形成されたブッシュ係合凹所27に係合する係合凸部49が形成されている。係合凸部49がブッシュ係合凹所27に係合したとき、スペーサ本体10に対するワイヤ保持ブッシュ40の回転やズレが防止される。また、笠部47の上面は上方に突出する湾曲形状であり、係合凸部49がブッシュ係合凹所27に係合した場合には、笠部47の上面とスペーサ本体10は無段差状となる。
【0017】
<電線保持ブッシュ>
電線EWは、電線保持ブッシュ60を介して電線装着部30に装着される。
図5は、電線保持ブッシュを示す図である。
電線保持ブッシュ60は、電線EWと装着凹所31との隙間を埋めると共に、電線装着部30に対して電線EWのガタツキを防止しつつ安定して装着するための部材であり、例えばゴム等の絶縁性を有する弾性体から構成される。
【0018】
電線保持ブッシュ60は、電線を挟持する半円筒状の挟持片61、61と、挟持片61、61を開閉自在に連設するヒンジ部63と、挟持片61、61に連設されて挟持片61、61をヒンジ部63周りに開閉移動させる操作部71とを備えている。
本実施形態における電線保持ブッシュ60において挟持片61、61とヒンジ部63とは一体に形成された中空筒状であり、電線EWを保持する電線保持部67を構成する。電線保持部67は、軸方向に沿って形成されると共に弾性的に開閉する電線出し入れ用の切り込み部65を有し、且つ切り込み部65と連通して電線EWを保持する中空部66を有する。
操作部71は正面視概略U字状であり、電線保持部67に連設されて押圧操作された時に切り込み部65を開放する。即ち電線保持部67は、操作部71に対する押圧操作により弾性変形して拡開した切り込み部65から挿入された電線を中空部66内に保持する構成である。
操作部71は絶縁ヤットコ100の把持部101により把持可能な奥行を有している。操作部71は電線保持部67の軸方向中間部に連設されており、軸方向両端部の外周面は露出している。操作部71の各端部は電線保持部67の外周部適所に周方向位置を違えて連設されている。また、操作部71と電線保持部67との2つの連設部分69、69間に位置する電線保持部の部分がヒンジ部63として機能する。
【0019】
電線保持部67の外面形状は、スペーサ本体10の装着凹所31に係合する形状及び大きさに設定されている。ここで、電線保持ブッシュ60の中空部66の内面形状は
図5の正面図に示すように、架設される電線EWの外径(200sq、25sq、58sq等)に対応して形成される。
【0020】
<脱落防止クリップ>
図6は、脱落防止クリップを示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は正面図である。
脱落防止クリップ80(電線脱落防止クリップ)は、内部に電線EWを保持した状態で電線装着部30の各クリップ係止部33に係止される一対のクリップ本体83と、クリップ本体83を、把持片87を介して軸線方向に接続する接続片89と、を備えている。脱落防止クリップ80は、装着凹所31内に装着された電線EWの装着凹所31からの脱落を防止する部材であり、弾性変形可能な絶縁性材料から構成される。例えば脱落防止クリップ80としては、良質の耐候性ポリエチレン樹脂を主体とした原料、又はこれと同等以上の特性を有する原料を所定形状に成形加工したものを用いることができる。
脱落防止クリップ80は、電線装着部30の前面及び背面に突出した各クリップ係止部33、33に係止される一対のクリップ体81、81を有する。各クリップ体81、81は、対向する先端部に被係止凹所35内に係止される係止爪84を有した正面視概略C字状のクリップ本体83と、クリップ本体83の中間部適所に周方向位置を異ならせて夫々連設されると共に、脱落防止クリップを電線装着部30に装着する際に絶縁ヤットコ100にて把持するための把持片87、87とを備えている。
2つのクリップ体81、81は奥行き方向に所定の離隔を有して配置されており、クリップ本体83との連設部から離間した把持片87、87の各端部に配置された接続片89、89によって接続、一体化されて1つの脱落防止クリップ80を構成する。
【0021】
<使用方法>
本実施形態に係る電線スペーサの使用方法について説明する。
図7〜
図11は、電線スペーサの取付手順を示す図である。
まず、
図7に示すように、ワイヤMWをワイヤ保持ブッシュ40へ装着する。即ち、ワイヤ保持ブッシュ40の笠部47適所を絶縁ヤットコ100の把持部101にて把持し、架設されたワイヤMWをスリット43からワイヤ保持部41内に装着する。
続いて
図8に示すように、スペーサ本体10の最下方に位置する電線装着部30部分を絶縁ヤットコ100にて保持する。ここで、電線装着部30部分はスペーサ本体10の奥行方向に突出しているので、電線装着部30部分を絶縁ヤットコ100のアゴ部103、103の内周面105、105によって挟持することで、スペーサ本体10を安定して保持するようにする。そして、最下方に位置する電線EWとこれに隣接する電線EW間にスペーサ本体10を挿入し、ワイヤ装着部20をワイヤ保持ブッシュ40に接近させる。
【0022】
図9には、ワイヤ保持ブッシュ40によって保持されたワイヤMWと、スペーサ本体10のワイヤ装着部20部分を拡大して示している。なお、図中紙面に垂直な方向が、ワイヤMWの軸線方向である。
図9(a)に示すように、ワイヤ装着部20をワイヤ保持ブッシュ40に接近させる際には、ワイヤ装着部20の側面22、22の面方向をワイヤMWの軸線方向に沿わせた状態としておく。
図9(b)に示すように、各フック部材21、21の対向する側面22、22間にワイヤ保持部41及び軸部45を挿入する。そして、スペーサ本体10を矢印方向に90度回転させることにより、
図9(c)に示すように、ワイヤMWがフック部材21、21の面方向と直交する姿勢で係止凹部25、25内に係止される。このとき、ワイヤ保持ブッシュ40の係合凸部49がブッシュ係合凹所27に係合して、スペーサ本体10に対するワイヤ保持ブッシュ40の回転やズレが防止される。
【0023】
電線スペーサは電線EWの軸線方向に所定の間隔(2〜3mごと)に複数個が取り付けられるため、電線スペーサのうちの一部の電線スペーサを交換する場合は、複数の電線EW間が所定の間隔にて保持された状態にある。また、電線装着部30の装着凹所31はスペーサ本体10の外側に向けて開口しているので、ワイヤMWがフック部材21、21の面方向と直交する姿勢となったとき、
図10に示すように3本の電線EWは自然と装着凹所31内に入り込む。
続いて、電線EWに電線保持ブッシュ60を装着する。この作業は、一旦、装着凹所31内に入り込んだ電線EWを不図示の絶縁操作棒や絶縁ヤットコにて装着凹所31外に移動させてから実施する。操作部71を絶縁ヤットコ100の把持部101にて押圧操作すると、ヒンジ部63が電線保持部67の内周側に湾曲変形する。ヒンジ部63の弾性変形に伴って挟持片61の切り込み部65が拡開するので、切り込み部65から中空部66内に電線EWを装着する。操作部71から絶縁ヤットコ100を離間させれば切り込み部65は閉止し、電線EWが電線保持ブッシュ60に保持される。電線EWを適宜移動させて、電線保持ブッシュ60が装着された電線EW部分を装着凹所31内に嵌合させる。
【0024】
最後に、脱落防止クリップ80を電線保持ブッシュ60に重ねてスペーサ本体10に装着する。
図11に示すように、把持片87を絶縁ヤットコ100の把持部101にて把持し、電線保持ブッシュ60の操作部71がクリップ本体83、83間に入るように移動させる(
図11、
図1側面図参照)。4つの係止爪84を夫々電線装着部30の被係止凹所35に係止する。以上の操作を他の2つの電線EWに対しても同様に実施する。
図1に示すように、脱落防止クリップ80が装着されたとき、電線保持ブッシュ60の電線保持部67は、装着凹所31とクリップ本体83とによって挟持される。このとき、クリップ本体83の係止爪84側の内周面85はクリップ係止部33の外周面に密着する。また、クリップ本体83の内周側の最奥部86は、電線保持ブッシュ60のヒンジ部63の外周面に密着する。これにより、電線EWに対して装着凹所31外に抜け出す力(スペーサ本体10に対して放射方向の力)が加わったとしても、電線保持ブッシュ60は電線EWを脱落不能に保持する。
【0025】
<効果>
以上のように、スペーサ本体10の形状を菱形状としたので、電線EWがスペーサ本体10内に入り込むことはない。スペーサ本体の装着作業時に電線EWが揺れた場合であっても、電線同士の接近を防止できる。
また、スペーサ本体10を菱形形状とし、菱形の頂点に対応する部分に設けたワイヤ装着部20と電線装着部30とを互いに連設部11によって接続したので、従来の十字形状(或いは卍形状)のスペーサに比べてねじれや曲げに対する強度を高めることができる。
スペーサによって間隔を保持された電線の脱落及び揺れを防止するためには、電線が装着凹所内に密着保持されている必要がある。しかし、架設される電線EWには種々の外径のものが存在する。装着凹所31の内径を変えたスペーサ本体10を電線の外径ごとに作製することは非効率的である。本実施形態においては、電線保持ブッシュ60を介して電線EWを装着凹所31に装着し、電線を保持した電線保持ブッシュをクリップ本体との間で挟持するようにした。内径の異なる電線保持ブッシュを使用することで、外径の異なる種々の電線をスペーサ本体によって保持することができる上、1つのスペーサ本体10で外径の異なる種々の電線に対応できる。また、操作部を押圧操作すれば切り込み部が開放されるので、絶縁ヤットコを利用した電線装着操作が容易である。
スペーサ本体10の連設部11にフランジ12を形成して、連設部の形状を、沿面距離を増大させる凹凸形状にしたので、スペーサ本体10の絶縁性能を高めることができる。従って、本電線スペーサ1は、塩害発生地域にて使用するに好適である。
【0026】
ワイヤ装着部20には、ワイヤ受入口23、23を互いに逆向きに開口させたフック部材21、21を奥行き方向に並べて配置した。フック部材間にメッセンジャワイヤを挿入した後、90度回転させることで、メッセンジャワイヤを2つのフック部材に脱落不能に支持でき、間接活線工具による装着操作が容易である。
ワイヤ保持ブッシュ40の係合凸部49がフック部材21のブッシュ係合凹所27に係合するので、スペーサ本体10に対するワイヤ保持ブッシュ40の回転やズレが防止される。
電線保持ブッシュ及び電線脱落防止クリップにより、電線をスペーサ本体の電線装着部に取り付けるので、間接活線用工具による取り扱いが困難な巻付バインドを用いることなく、電線の脱落を防止することができる。また、巻付バインドを使用しないため、線間距離が短い架空送電線に対しても間接活線工法による工事が可能である。
脱落防止クリップ80の2つのクリップ体81、81は、スペーサ本体10を正面側と背面側から挟むように装着される。両クリップ体81、81は、互いに電線の軸線方向への移動を阻止するので、電線脱落防止クリップによる電線の保持効果が高い。
【0027】
<電線スペーサの使用場面の一例>
本実施形態に係る電線スペーサは、特に従来、巻付バインドを使用して電線に装着された複数の電線スペーサのうちの一部が破損した場合に、破損した電線スペーサのみを間接活線工法にて交換する場合に好適である。この場合は、取替対象の電線スペーサを固定している巻付バインドの一部を間接活線作業用のカッターにて切断して、電線スペーサのみを取り外す。取り外した電線スペーサに近い位置、且つ残置された巻付バインドを回避した位置に本実施形態に係る電線スペーサを装着する。
このように本実施形態に係る電線スペーサは、間接活線工具による取り扱いに適した構成を有するため、送電を停止させずに間接活線工法による早期復旧が可能となる。
【0028】
〔変形実施形態〕
本実施形態に係る電線スペーサは、絶縁ヤットコによって把持される把持突片をスペーサ本体に備えた点に特徴がある。
図12(a)〜(c)はスペーサ本体の変形例を示す図である。
スペーサ本体110は最下部の頂点部分に位置する電線装着部30Aから開口部13側に突出した把持突片113を有する。把持突片113は、例えば
図12(b)に示すように平板状としてもよいし、
図12(c)に示すように中央部を奥行き方向(前面側と後面側)に膨出させた形状としてもよい。平板状の把持突片113Aとした場合は、絶縁ヤットコ100の先端部に設けた把持部101によって把持される。また、膨出形状の把持突片113Bとした場合は、絶縁ヤットコ100のアゴ部103の内周面105によって把持される。
スペーサ本体110に把持突片113を設けたため、クリップ係止部111は装着凹所31の周方向に離間して配置されている。即ち、クリップ係止部111は、装着凹所31の周方向の端部に対応する位置にのみ形成されている。装着凹所31の周方向中間部に対応する部位がスペーサ本体110の前面及び背面へ突出していないため、絶縁ヤットコとの干渉が防止される。
クリップ係止部111の外周面111aは、クリップ本体83の係止爪84側の内周面に密着する。また、装着凹所31の周方向中間部側に位置するクリップ係止部111の外面111bには、係止爪84が係止される。
【0029】
〔実施態様例とその効果〕
本発明は、以下の態様にて実施することができる。
<第一の実施態様>
本態様に係る電線スペーサ1は、メッセンジャワイヤMWの下方に並行して架設された3本の電線EWの間隔を一定に保持する電線スペーサであり、メッセンジャワイヤが装着されるワイヤ装着部20と、3本の電線が夫々装着される装着凹所31を有した3つの電線装着部30とを有したスペーサ本体10を備え、ワイヤ装着部は、ワイヤ受入口23及びワイヤ受入口から受け入れたメッセンジャワイヤを係止する係止凹部25を有する一対のフック部材21を備え、各フック部材は、各係止凹部によって1本の前記メッセンジャワイヤを抜け落ち不能に支持する支持空間を形成すると共に、メッセンジャワイヤを挿抜可能な離隔を有して対向配置され、且つ各ワイヤ受入口が互いに逆向きに開口していることを特徴とする。
本態様によれば、フック部材間にメッセンジャワイヤを挿入した後、90度回転させることで、メッセンジャワイヤを各フック部材に係止でき、間接活線工具による装着操作が容易である。
【0030】
<第二の実施態様>
本態様に係る電線スペーサ1においてスペーサ本体10は正面視概略四角形状であり、ワイヤ装着部20と3つの電線装着部30はスペーサ本体10の頂点に対応する部分に形成されていることを特徴とする。
スペーサ本体10の形状を概略四角形状としたので、電線EWがスペーサ本体内に入り込むことはない。スペーサ本体の装着作業時に電線が揺れた場合であっても、電線同士の接近を防止できる。また、スペーサ本体10を概略四角形状とし、四角形の頂点に対応する部分にワイヤ装着部20と電線装着部30とを設けたので、従来の十字形状(或いは卍形状)のスペーサに比べてねじれや曲げに対する強度を高めることができる。
【0031】
<第三の実施態様>
本態様に係る電線スペーサ1は、夫々内部に電線EWを保持した状態で各電線装着部30に夫々係止される電線脱落防止クリップ80を備えていることを特徴とする。
電線を電線脱落防止クリップにより電線装着部に係止するので、間接活線用工具による取り扱いが困難な巻付バインドを用いることなく、電線の脱落を防止することができる。
【0032】
<第四の実施態様>
本態様に係る電線スペーサ1において電線装着部30は、装着した電線EWの軸線方向に対応する各面から夫々の軸線方向に突出形成されたクリップ係止部33を備え、電線脱落防止クリップ80は、電線を保持した状態で各クリップ係止部に係止される一対のクリップ本体83と、クリップ本体を軸線方向に接続する接続片89と、を備えていることを特徴とする。
クリップ本体の電線の軸線方向への移動を阻止するので、電線脱落防止クリップによる電線の保持効果を高めることができる。
【0033】
<第五の実施態様>
本態様に係る電線スペーサ1は、弾性的に開閉する電線出入れ用の切り込み部65を有し、且つ切り込み部と連通して電線を保持する中空部を有した電線保持部67と、電線保持部に連設されて押圧操作された時に切り込み部を開放する操作部71と、を有した弾性体からなる電線保持ブッシュ60を備え、電線保持部は、装着凹所31とクリップ本体83とによって挟持されることを特徴とする。
内径の異なる電線保持ブッシュを使用することで、1つのスペーサ本体で外径の異なる種々の電線に対応できる。また、操作部を押圧操作すれば切り込み部が開放されるので、絶縁ヤットコを利用した電線装着操作が容易である。
【0034】
<第六の実施態様>
本態様に係る電線スペーサ1は、メッセンジャワイヤMW挿入用のスリット43が形成された半筒状のワイヤ保持部41と、ワイヤ保持部から外径方向に突出する軸部45と、軸部の先端に接続されると共にワイヤ保持部との対向面に係合凸部49が形成された笠部47と、を有してメッセンジャワイヤを保持するワイヤ保持ブッシュ40を備え、各フック部材21には、ワイヤ保持ブッシュの係合凸部と係合するブッシュ係合凹所27が夫々形成されていることを特徴とする。
ワイヤ保持ブッシュの係合凸部がフック部材のブッシュ係合凹所に係合するので、スペーサ本体10に対するワイヤ保持ブッシュの回転やズレが防止される。
【0035】
<第七の実施態様>
本態様に係る電線スペーサ1は、ワイヤ装着部20、及び各電線装着部30間に位置するスペーサ本体10(連設部11)の外面には、沿面距離を増大させる凹凸(フランジ12)が形成されていることを特徴とする。
凹凸によりスペーサ本体の絶縁性能が高まるので、電線スペーサを塩害発生地域においても使用できる。