(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
金属の切断及び溶接等に使用されるレーザ発振器は、部分反射ミラー及び全反射ミラー等の種々の光学部品を備えている。通常、それら光学部品は、専用の保持器に装着された状態でレーザ発振器に内蔵されている。そして、光学部品の周囲の真空状態又は気密状態を確保し、かつ光学部品に機械的な応力が加わるのを防止するために、光学部品はOリング又はガスケット等の弾性シール部材を介して保持器に装着されている。特に、ガスレーザ発振器においては、ガスの流路の気密性を確保するためのOリングが、部分反射ミラー及び全反射ミラー等の光学部品の側面に取り付けられている。このような光学部品のシール構造が特許文献1に例示されている。同様に、レーザ加工機の加工ヘッドにおいては、アシストガスを遮断するためのOリング又はガスケットがレンズ等の光学部品の側面に取り付けられている。
【0003】
ところで、レーザ発振器又はレーザ加工機の光学部品がクリーニング又は交換のために取り外された場合には、クリーニング済みの光学部品又は新品の光学部品を保持器に再び装着する作業が必要になる。このような光学部品の装着作業には、光学部品の側面にOリング又はガスケット等の弾性シール部材を再び取り付ける作業が含まれている。
図14〜
図18は、従来の炭酸ガスレーザ発振器における光学部品の装着作業の手順を時系列で示す概略図である。
【0004】
図14では、光学部品(ミラー6)を保持する保持器(ミラーホルダ7)が共振器から取り外されている。
図14の状態では、ミラー6の側面61とミラーホルダ7の周壁部72との間に大径のOリング8が配置されており、ミラー6の下面63とミラーホルダ7の支持部71との間に小径のOリング9が配置されている。それらOリング8,9は、共振器の真空状態を維持する役割に加えて、ミラー6をミラーホルダ7の中央に位置決めする役割を果たしている。続いて、
図15では、ミラー6がミラーホルダ7から取り外され、平坦なミラー置き台Tに置かれている。ミラー6が
図15の状態にされたら、ミラー6の下面63のクリーニングが開始される。クリーニングの最後には、クリーニングペーパCPを用いた下面63の仕上げ拭きが行われる。続いて、
図16では、ミラー6がミラーホルダ7に再び置かれている。
図16の状態では、小径のOリング9がミラーの下面63とミラーホルダ7の支持部71との間に予め配置されている。
【0005】
続いて、
図17は、大径のOリング8がミラー6とミラーホルダ7との間に取り付けられる途中の状態を示している。
図17のように、本例による取付作業では、作業者がOリング8を指で下向きに押圧することによって、Oリング8をミラー6の側面61とミラーホルダ7の周壁部72との間に取り付ける。その際、作業者は両手の指を使ってOリング8における周方向の複数の箇所を均等に押圧することが好ましい。これによりOリング8がミラー6の側面61とミラーホルダ7の周壁部72との間の環状溝に押し込まれる。なお、ミラーホルダ7の周壁部72は、Oリング8が適度に圧縮された状態で取り付けられるように設計されている。
【0006】
ところが、作業者の指を使った取付作業においては、作業者の技量が低いことが原因でOリング8における周方向の各部に不均等な押圧力が加えられ、その結果、Oリング8がミラー6又はミラーホルダ7に対して傾いた姿勢で取り付けられる虞がある。或いは、ミラーホルダ7及びOリング8の製造誤差、又はOリング8の経年変化による膨潤が原因で、Oリング8が上記の環状溝からはみ出すことによって、Oリング8がミラーホルダ7に対して傾いた姿勢で取り付けられる虞がある。このようにOリング8が傾いた姿勢で取り付けられると、Oリング8の弾性的な復元力によってミラー6がミラーホルダ7から浮き上がる虞がある。
【0007】
図18は、ミラーホルダ7に対して傾いた姿勢で取り付けられたOリング8を示している。
図18の状態では、Oリング8の一部が上記の環状溝からはみ出しており、その結果、ミラー6の下面63がミラーホルダ7から浮き上がっている。また、Oリング8の取付作業の途中で作業者の指が誤ってミラー6に触れると、ミラー6のコーティングが損傷したりミラー6に汚損物が付着したりする虞がある。また、作業者がOリング8をミラー6及びミラーホルダ7に対して水平な姿勢で取り付けようと試行錯誤すると、Oリング8の取付作業の所要時間が長期化する虞がある。さらに、上記の環状溝へのOリング8の押し込み量が不十分である場合には、Oリング8がミラー6の上面62よりも上方に突出するので、その後に行われる上面62のクリーニングに支障をきたす虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
作業者が光学部品に直接触れずに弾性シール部材を光学部品と保持器との間に正確に取り付けることを可能にする取付治具が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、光学部品の環状の側面と、光学部品を保持する保持器と、の間に
Oリングを取り付けるのに使用される取付治具であって、光学部品の側面と交差する上面に当接可能な第1の当接面と、第1の当接面を取り囲むように配置され、第1の当接面に垂直な方向において第1の当接面よりも突出した突出部と、突出部の先端に設けられ、
Oリングに当接可能な第2の当接面と、を備え
ており、突出部の突出高さが光学部品の側面の高さよりも小さい、取付治具が提供される。
本発明の第
2の態様によれば、第
1の態様において、第2の当接面を取り囲むように配置され、保持器に当接可能な位置決め部をさらに備え、位置決め部が保持器に当接することによって、側面の高さ方向における
Oリングの取付位置が決定される、取付治具が提供される。
本発明の第
3の態様によれば、第1
または第2の態様において、突出部は、第1の当接面を取り囲むように互いに離間して配置された複数の部分から構成される、取付治具が提供される。
本発明の第
4の態様によれば、第1〜第
3の態様のいずれか1つにおいて、互いに反対を向いた2つの面を含み、第1の当接面、突出部、及び第2の当接面が、2つの面のそれぞれに設けられる、取付治具が提供される。
本発明の第
5の態様によれば、第
4の態様において、位置決め部が、第2の当接面に垂直な方向において第2の当接面よりも突出し、記第2の当接面が、光学部品よりも大きい他の光学部品の上面にさらに当接可能であり、位置決め部の突出方向の先端が、他の光学部品に対応する他の
Oリングにさらに当接可能である、取付治具が提供される。
本発明の第
6の態様によれば、第1〜第
5の態様のいずれか1つにおいて、取付治具が、多面体の形態を有し、第1の当接面、突出部、及び第2の当接面が、多面体の少なくとも2つの面のそれぞれに設けられる、取付治具が提供される。
本発明の第
7の態様によれば、第1〜第
6の態様のいずれか1つにおいて、突出部が、第1の当接面を取り囲むように互いに離間して配置された複数の切欠き部を有し、複数の切欠き部が、第1の当接面に上面で接触する光学部品を取り外すのに使用される、取付治具が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の
第1の態様によれば、
Oリングに当接可能な第2の当接面が、光学部品の上面に当接可能な第1の当接面を取り囲むように配置された突出部の先端に設けられている。よって、作業者は取付治具を保持器に向かって移動させるだけで、
Oリングの周方向の各部に均等な押圧力を加えることができるので、
Oリングが光学部品又は保持器に対して傾いた姿勢で取り付けられるのを防止することができる。
特に、第1の態様によれば、作業者は光学部品
、例えばミラー又はレンズ等の光学部品の側面に直接触れずに
Oリングを光学部品の側面と保持器との間に正確に取り付けることができる
。
さらに、第1の態様によれば、突出部の先端が第1の当接面に置かれた光学部品を越えて突出することが防止される。よって、
第1の態様によれば、取付治具が、
Oリングを取り付ける取付治具の機能に加えて、光学部品のクリーニング中に光学部品を支持する支持治具としての機能を発揮しうる。
本発明の
第2の態様によれば、位置決め部が保持器に当接することによって、保持器に対する取付治具の停止位置が決定され、その結果、光学部品及び保持器に対する
Oリングの取付位置が決定される。よって、
第2の態様によれば、第2の当接面に対する位置決め部の当接面の位置を適切に設定することで、光学部品及び保持器に対する
Oリングの取付位置を任意に調整することが可能になる。
本発明の
第3の態様によれば、
Oリングの取付作業中に作業者が突出部の複数の部分の間の隙間を介して光学部品を視認できるので、
Oリングの取付作業が簡便化されうる。
本発明の
第4の態様によれば、
Oリングの取付作業に使用される取付構造部が取付治具の両面に設けられているので、1つの取付治具を用いて2種類の光学部品に
Oリングを取り付けることが可能になる。
本発明の
第5の態様によれば、第2の当接面が、より大型の光学部品の上面にさらに当接可能であり、かつ位置決め部の突出方向の先端が、より大型の光学部品に対応する
Oリングにさらに当接可能である。よって、
第5の態様によれば、1つの取付治具を用いて2種類の光学部品に
Oリングを取り付けることが可能になるとともに、取付治具の全体形状が簡素化されうる。
本発明の
第6の態様によれば、
Oリングの取付作業に使用される取付構造部が多面体の少なくとも2つの面に設けられているので、1つの取付治具を用いて複数種類の光学部品に
Oリングを取り付けることが可能になる。
本発明の
第7の態様によれば、光学部品が第1の当接面に置かれているときに、作業者の指先が切欠き部を通って光学部品に到達できるので、作業者は光学部品を容易に把持して取り出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。各図面において、同様の構成要素には同様の符号が付与されている。なお、以下の記載は、特許請求の範囲に記載される発明の技術的範囲や用語の意義等を限定するものではない。
【0014】
図1〜
図13を参照して、本発明の1つの実施形態の取付治具について説明する。本実施形態の取付治具は、光学部品の環状の側面に環状の弾性シール部材を取り付けるのに使用される。特に、本実施形態の取付治具は、レーザ発振器又はレーザ加工機等に内蔵される種々の光学部品の側面と、それら光学部品を保持する専用の保持器と、の間に環状の弾性シール部材を取り付けるのに使用される(
図3〜
図5を参照)。
【0015】
図1は、本実施形態の例示的な取付治具1を光学部品2と一緒に示す部分破断斜視図である。本例の光学部品2は、部分反射ミラー、全反射ミラー、又はレンズ等の円盤状の光学部品であり、環状に延びる側面21並びに側面21と交差する上面22及び下面23を有している。また、本例の取付治具1によって取り付けられる弾性シール部材は、光学部品2の側面21と、光学部品2を保持する専用の保持器と、の間の環状溝を密封する弾性シール部材である。以下では、取付治具1によって取り付けられる弾性シール部材を他の弾性シール部材と区別するために「側面用の弾性シール部材」と称することがある。
図3〜
図5に例示的な側面用の弾性シール部材4の縦断面が示されている。本例による側面用の弾性シール部材4はOリング又はガスケット等の樹脂製の環状部材である。ただし、側面用の弾性シール部材4は、適度な弾性を有するシール用の環状部材であればいかなるものであってもよい。
【0016】
ここで、
図1の取付治具1の詳細な構造について説明する前に、光学部品2を保持する専用の保持器の構造について説明する。
図3〜
図5に例示的な保持器3の縦断面が示されている。
図3〜
図5のように、本例の保持器3は、光学部品2を保持する上方部分30を有する筒状体であり、その上方部分30には、光学部品2の下面23を支持する環状の支持部31が設けられている。より具体的に、本例の保持器3の支持部31は、そこに装着された弾性シール部材5によって光学部品2の下面23を支持している。以下では、光学部品2の下面23を支持する弾性シール部材5を、上述した側面用の弾性シール部材4と区別して「下面用の弾性シール部材5」と称することがある。また、本例の保持器3の上方部分30には、支持部31を取り囲むように配置され、かつ支持部31よりも上方に突出した筒状の周壁部32が設けられている。
図4及び
図5のように、本例の取付治具1は、支持部31に置かれた光学部品2の側面21と周壁部32との間に弾性シール部材4を取り付けるのに使用される。取付治具1の具体的な使用方法については後述する。
【0017】
再び
図1を参照すると、本例の取付治具1は、互いに反対を向いた2つの主面を含む円盤状の全体形状を有しており、一方の主面TSには、光学部品2の厚さ方向の一部分のみを収容可能な円形の凹部10が形成されている。つまり、
図1のように、光学部品2が取付治具1に置かれると、光学部品2の厚さ方向の一部分のみが取付治具1の凹部10に収容され、光学部品2の残りの部分は凹部10の外側に露出される。また、本例の取付治具1は、光学部品2の上面22に当接可能な第1の当接面A1を有している。
図1のように、第1の当接面A1は凹部10の内側に設けられている。そして、第1の当接面A1は、光学部品2の上面22の少なくとも一部に接触して光学部品2を支持するように構成されている(
図4も参照)。
図1中の第1の当接面A1は円形の凹部10と同心の連続した環状面であるものの、本実施形態の取付治具1における第1の当接面A1は他の形態を有していてもよい。例えば、第1の当接面A1は、円形又は扇形のような他の形状を有する連続した面であってもよいし、円形の凹部10の周方向に沿って配置された複数の不連続な面であってもよい。
【0018】
引き続き
図1を参照すると、本例の取付治具1は、第1の当接面A1を取り囲むように配置され、かつ第1の当接面A1に垂直な方向において第1の当接面A1よりも上方に突出した突出部11を有している。
図1のように、本例の突出部11は、凹部10を取り囲むように配置された筒状体の形態を有している。そして、本例の取付治具1は、突出部11の突出方向の先端に設けられ、かつ側面用の弾性シール部材4に当接可能な第2の当接面A2を有している(
図4も参照)。
図1中の第2の当接面A2は、第1の当接面A1と同心の連続した環状面である。従って、第2の当接面A2が弾性シール部材4に当接すると、弾性シール部材4の全周にわたって均等な押圧力が、第2の当接面A2から弾性シール部材4に加えられる。これにより、弾性シール部材4が光学部品2又は保持器3に対して傾いた姿勢で取り付けられることが防止される。この点についてはさらに後述する。
【0019】
引き続き
図1を参照すると、本例の取付治具1において、突出部11の突出高さ(h1)は、光学部品2の側面21の高さ(h2)よりも小さくされる(つまり、h1<h2である)。ここでいう突出部11の突出高さ(h1)とは、第1の当接面A1に垂直な方向における突出部11の寸法、すなわち、突出部11の筒状体の高さを意味している。また、光学部品2の側面21の高さ(h2)とは、側面21の周方向に垂直な方向における側面21の寸法、すなわち、光学部品2の側面21の厚さを意味している。突出部11の突出高さ(h1)を側面21の高さ(h2)よりも小さくすれば、突出部11の先端が第1の当接面A1に置かれた光学部品2を越えて突出することが防止される。従って、本例の取付治具1によれば、光学部品2の下面23がクリーニングペーパで拭かれるときに、クリーニングペーパが取付治具1と干渉することが防止される(
図2も参照)。このように、本例の取付治具1は、弾性シール部材4を取り付ける取付治具としての機能に加えて、下面23のクリーニング中に光学部品2を支持する支持治具としての機能を発揮しうる。
【0020】
次に、
図1の取付治具1の使用方法について説明する。
図2〜
図5は、
図1の取付治具1を用いて側面用の弾性シール部材4を取り付ける手順を時系列で示す概略図である。先ず、
図2では、光学部品2が保持器3から取り外されて取付治具1に置かれている。
図2の状態では、取付治具1の第1の当接面A1が鉛直方向の上向きにされている。そして、光学部品2の上面22が第1の当接面A1に置かれることによって、光学部品2の下面23が鉛直方向の上向きにされている。取付治具1及び光学部品2が
図2の状態にされたら、光学部品2の下面23がクリーニングペーパCPで拭かれる。このように、本例の取付治具1は、下面23のクリーニング中に光学部品2を支持する目的にも使用される。
【0021】
続いて、
図3では、下面23のクリーニング後に、光学部品2が保持器3に再び置かれている。
図3の状態では、下面用の弾性シール部材5が光学部品2の下面23と保持器3との間に既に取り付けられており、側面用の弾性シール部材4が光学部品2の側面21に仮留めされている。続いて、
図4では、側面用の弾性シール部材4が、取付治具1によって、光学部品2の側面21と保持器3の周壁部32との間に取り付けられている。
図3の状態から
図4の状態に遷移する間に、取付治具1が図中の矢印A40の方向に移動することによって、第2の当接面A2が側面用の弾性シール部材4に上方から当接する。
【0022】
その後、取付治具1が矢印A40の方向にさらに移動すると、第2の当接面A2からの押圧力によって、弾性シール部材4が側面21と周壁部32との間の環状溝に押し込まれる。つまり、弾性シール部材4は光学部品2の側面21に沿って下向きに滑動する。ここで、第2の当接面A2は第1の当接面A1を取り囲むように配置された突出部11の先端に設けられているので、作業者は取付治具1を保持器3に向かって(矢印A40の方向に)移動させるだけで弾性シール部材4の周方向の各部に均等な押圧力を加えることができる。これにより、弾性シール部材4が光学部品2又は保持器3に対して傾いた姿勢で取り付けられることが防止される。
【0023】
その後、取付治具1が矢印A40の方向にさらに移動すると、第2の当接面A2の周縁部が周壁部32の上端に当接することによって、取付治具1が停止させられる。これをもって弾性シール部材4の取付作業が完了する。なお、取付治具1が矢印A40の方向に移動する途中で第1の当接面A1が光学部品2の上面22に当接し、その後は第1の当接面A1が光学部品2の上面22を支持する。これにより、弾性シール部材4の取付作業の途中で光学部品2が保持器3から浮き上がることが防止される。
【0024】
続いて、
図5では、弾性シール部材4の取付作業の後に、取付治具1が保持器3から取り外されている。
図5の状態では、弾性シール部材4の全体が光学部品2の上面22よりも下方に位置しているので、光学部品2の上面22をクリーニングペーパCPで拭くときにクリーニングペーパCPが弾性シール部材4と干渉することはない。このように、本例の取付治具1によれば、側面用の弾性シール部材4を光学部品2と保持器3との間に取り付けた後に、上面22のクリーニングを行うことが可能になる。また、弾性シール部材4の全体が光学部品2の上面22よりも下方に位置しているので、上面22のクリーニングに使用される洗浄剤が側面21と弾性シール部材4との間に侵入することもない。
【0025】
次に、本実施形態の取付治具1の変形例について説明する。
図6は、本実施形態の取付治具1の第1の変形例を示す、
図1と同様の部分破断斜視図である。
図6のように、本例の取付治具1は、上述した第1の当接面A1、突出部11、及び第2の当接面A2に加えて、突出部11の先端に形成された位置決め部12を有している。本例の位置決め部12は、第2の当接面A2を取り囲むように配置され、かつ第2の当接面A2に垂直な方向において第2の当接面A2よりも突出している。
図6のように、本例の位置決め部12は、突出部11の先端にさらに突出形成された筒状体である。そして、本例の位置決め部12の突出方向の先端には、保持器3の周壁部32の上端に当接可能な第3の当接面A3が設けられている。
【0026】
つまり、本例の取付治具1を用いた取付作業では、位置決め部12の第3の当接面A3が保持器3に当接することによって、保持器3に対する取付治具1の停止位置が決定され、その結果、光学部品2及び保持器3に対する弾性シール部材4の取付位置が決定される。従って、本例の取付治具1によれば、第2の当接面A2に対する第3の当接面A3の位置(すなわち、位置決め部12の突出高さ)を適切に設定することによって、光学部品2及び保持器3に対する弾性シール部材4の取付位置を任意に調整できる。このように、本例の取付治具1によれば、光学部品2の寸法又は保持器3の形状等に応じた弾性シール部材4の最適な取付位置を達成できる。
【0027】
図7は、本実施形態の取付治具1の第2の変形例を示す、
図6と同様の部分破断斜視図である。本例の取付治具1は、
図6の取付治具1と同様に、第1の当接面A1、突出部11、及び第2の当接面A2に加えて、位置決め部12及び第3の当接面A3を有している。ところが、
図6中の突出部11が単一の筒状体であるのに対して、本例の突出部11は、第1の当接面A1を取り囲むように互いに離間して配置された複数の部分から構成されている。より具体的に、本例の突出部11は、第1の当接面A1を取り囲むように等間隔で配置された4つの部分から構成されている(ただし、
図7には3つの部分のみが示されている)。そして、本例の位置決め部12及び第3の当接面A3は、突出部11を構成する複数の部分のそれぞれに設けられている。
【0028】
つまり、本例による第2の当接面A2は、
図1及び
図6中の例のような1つの連続した面ではなく、互いに離間した複数の不連続な面から構成されている。この場合も第2の当接面A2が全体として第1の当接面A1を取り囲むように配置されているので、作業者は取付治具1を保持器3に向かって移動させるだけで、弾性シール部材4の周方向の各部に概ね均等な押圧力を加えることができる。また、本例の突出部11の構造によれば、弾性シール部材4の取付作業中に、作業者が上記の複数の部分を介して光学部品2を視認できるようになる。つまり、本例の取付治具1によれば、光学部品2の視認性が向上するので、弾性シール部材4の取付作業が簡便化されうる。
【0029】
図8は、本実施形態の取付治具1の第3の変形例を示す、
図6と同様の部分破断斜視図である。本例の取付治具1は、
図6の取付治具1と同様に、第1の当接面A1、突出部11、及び第2の当接面A2に加えて、位置決め部12及び第3の当接面A3を有している。ところが、
図6中の第2の当接面A2が1つの連続した環状面であるのに対して、本例による第2の当接面A2は、突出部11の先端にさらに突出形成された多数の突起13の先端面から構成されている。
図8中の多数の突起13は、突出部11の筒状体の周方向に沿って概ね均等に配列されている。この場合も第2の当接面A2は全体として第1の当接面A1を取り囲むように配置されているので、作業者は取付治具1を保持器3に向かって移動させるだけで、弾性シール部材4の周方向の各部に概ね均等な押圧力を加えることができる。
【0030】
図9は、本実施形態の取付治具1の第4の変形例を示す、
図1と同様の部分破断斜視図である。本例の取付治具1は、
図1の取付治具1と同様に、互いに反対を向いた2つの主面を含む円盤状の全体形状を有している。ところが、
図1の取付治具1では第1の当接面A1、突出部11、及び第2の当接面A2が一方の主面TSのみに設けられているのに対して、本例の取付治具1では第1の当接面A1、突出部11、及び第2の当接面A2が2つの主面TS,BSのそれぞれに設けられている。以下では、第1の当接面A1、突出部11、及び第2の当接面A2の1つの組合せを集合的に「取付構造部」と称することがある。本例の取付治具1では、一方の主面TS側の取付構造部が、他方の主面BS側の取付構造部とは異なる寸法の光学部品2に弾性シール部材4を取り付けるように構成されることが好ましい。
【0031】
例えば、一方の主面TS側の取付構造部(すなわち、第1の当接面A1、突出部11、及び第2の当接面A2の組合せ)は、直径1.5インチ(約3.8cm)の光学部品2に弾性シール部材4を取り付けるように構成される。そして、他方の主面BS側の取付構造部は、直径1.1インチ(約2.8cm)の光学部品2に弾性シール部材4を取り付けるように構成される。このように、本例の取付治具1では、弾性シール部材4の取付作業に使用される取付構造部(すなわち、第1の当接面A1、突出部11、及び第2の当接面A2の組合せ)が円盤の両面に設けられているので、1つの取付治具1を用いて2種類の光学部品2に弾性シール部材4を取り付けることが可能になる。
【0032】
図10は、本実施形態の取付治具1の第5の変形例を示す、
図6と同様の部分破断斜視図である。本例の取付治具1は、
図6の取付治具1と同様に、第1の当接面A1、突出部11、及び第2の当接面A2に加えて、位置決め部12及び第3の当接面A3を有している。上述した通り、第1の当接面A1は、光学部品2の上面22に当接可能である。より具体的に、
図10中の第1の当接面A1は直径1.1インチ(約2.8cm)の光学部品2の上面22に当接可能である。また、第2の当接面A2は、光学部品2の側面用の弾性シール部材4(
図10では省略)に当接可能であり、第3の当接面A3は、保持器3の周壁部32(
図10では省略)に当接可能である。
【0033】
図11は、
図10の取付治具1を示す他の部分破断斜視図である。
図11のように、本例による第2の当接面A2は、上記の光学部品2よりも大きい他の光学部品2’の上面22’にも当接可能である。つまり、
図10及び
図11中の第2の当接面A2は、直径1.1インチ(約2.8cm)の光学部品2の側面用の弾性シール部材4だけでなく、直径1.5インチ(約3.8cm)の他の光学部品2’の上面22’にも当接可能である。また、本例による第3の先端面A3は、他の光学部品2’の側面用の弾性シール部材にも当接可能である。つまり、
図10及び
図11中の第3の当接面A3は、保持器3の周壁部32だけでなく、直径1.5インチ(約3.8cm)の光学部品2’の側面用の弾性シール部材(
図11では省略)にも当接可能である。
【0034】
図10及び
図11から分かるように、本例の取付治具1では、第1の当接面A1、突出部11、及び第2の当接面A2の組合せが第1の取付構造部として機能し、かつ第2の当接面A2、位置決め部12、及び第3の当接面A3の組合せが第2の取付構造部として機能しうる。このように、本例の取付治具1は、
図9の例と同様に2つの取付構造部を有するものの、それら取付構造部は、
図9の例とは異なり円盤の同一の主面TSに設けられている。よって、本例の取付治具1によれば、1つの取付治具1を用いて2種類の光学部品2に弾性シール部材4を取り付けることが可能になるとともに、取付治具1の全体形状が簡素化されうる。
【0035】
図12は、本実施形態の取付治具1の第6の変形例を示す斜視図である。本例の取付治具1は、
図1の取付治具1のような円盤状の全体形状ではなく、複数の面を含む多面体の全体形状を有している。より具体的に、
図12の取付治具1は、6つの面を含む六面体の全体形状を有している。そして、本例の取付治具1では、弾性シール部材4の取付作業に使用される取付構造部(すなわち、第1の当接面A1、突出部11、及び第2の当接面A2の組合せ)が、多面体における少なくとも2つの面のそれぞれに設けられている。より具体的に、
図12の取付治具1では、取付構造部が六面体の3つの面S1,S2,S3のそれぞれに設けられている。六面体のそれぞれの面の取付構造部は、残りの面の取付構造部とは異なる寸法の光学部品2に弾性シール部材4を取り付けるように構成されることが好ましい。
【0036】
例えば、六面体の第1の面S1の取付構造部(すなわち、第1の当接面A1、突出部11、及び第2の当接面A2の組合せ)は、直径1.1インチ(約2.8cm)の光学部品2に弾性シール部材4を取り付けるように構成される。他方、六面体の第2の面S2の取付構造部は、直径1.5インチ(約3.8cm)の光学部品2に弾性シール部材4を取り付けるように構成される。そして、六面体の第3の面S3の取付構造部は、直径2.0インチ(約5.1cm)の光学部品2に弾性シール部材4を取り付けるように構成される。このように、本例の取付治具1では、弾性シール部材4の取付作業に使用される取付構造部が多面体の複数の面S1,S2,S3のそれぞれに設けられているので、1つの取付治具1を用いて複数種類の光学部品2に弾性シール部材4を取り付けることが可能になる。
【0037】
なお、
図12の取付治具1では、多面体の第3の面S3の突出部11のみが複数の部分から構成されており、残りの面S1,S2の突出部11は単一の筒状体から構成されている。ただし、それら全ての面S1,S2,S3の突出部11が複数の部分から構成されていてもよいし、それら全ての面S1,S2,S3の突出部11が単一の筒状体から構成されていてもよい。また、
図12の取付治具1では、位置決め部12及び第3の当接面A3が多面体の第3の面S3のみに設けられているものの、位置決め部12及び第3の当接面A3がそれら全ての面S1,S2,S3に設けられてもよい。或いは、多面体のどの面にも位置決め部12及び第3の当接面A3が設けられない場合もある。
【0038】
図13は、本実施形態の取付治具1の第7の変形例を示す斜視図である。
図13のように、本例の取付治具1は、上述した第1の当接面A1、突出部11、及び第2の当接面A2を有しており、本例の突出部11は、
図1の例と同様に、第1の当接面A1を取り囲むように配置された単一の筒状体の形態を有している。そして、本例の突出部11には、筒状体の周方向において互いに離間する複数の切欠き部14が設けられている。より具体的に、
図13中の突出部11には、円筒体の周方向において等間隔に配置された2つの切欠き部14が設けられている。それら切欠き部14の各々は、作業者の指先を通過させることができる寸法及び形状を有している。
【0039】
本例の切欠き部14は、作業者が第1の当接面A1に上面22で接触する光学部品2を取付治具1から取り出すのに使用される。つまり、光学部品2が取付治具1に置かれているときに(
図2を参照)、作業者の指先が切欠き部14を通って光学部品2の側面21に到達できるので、作業者は光学部品2の側面21を容易に把持することができる。これにより、上述した下面23のクリーニング後に光学部品2が取付治具1から容易に取り出されるので、光学部品2を保持器3に再び装着する作業の所要時間が短縮されうる。なお、
図13のように、本例による第2の当接面A2は、切欠き部14によって分断された複数の不連続な面から構成されている。そして、本例の取付治具1は上述した位置決め部12及び第3の当接面A3をさらに有することができ、その場合には、位置決め部12及び第3の当接面A3が、第2の当接面A2を構成する複数の不連続な面のそれぞれに設けられる。
【0040】
図6〜
図13の取付治具1の使用方法は、上述した
図1の取付治具1の使用方法と同様である(
図2〜
図5を参照)。そして、
図6〜
図13の取付治具1においても、弾性シール部材4に当接可能な第2の当接面A2は、光学部品2の上面22に当接可能な第1の当接面A1を取り囲むように配置された突出部11の先端に設けられている、よって、作業者は取付治具1を保持器3に向かって移動させるだけで弾性シール部材4の周方向の各部に均等な押圧力を加えることができるので、弾性シール部材4が光学部品2又は保持器3に対して傾いた姿勢で取り付けられるのを防止することができる。すなわち、
図6〜
図13の取付治具1を使用する場合も、作業者は光学部品2に直接触れずに弾性シール部材4を光学部品2の側面21と保持器3との間に正確に取り付けることができる。
【0041】
本発明は、上記の実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で種々改変されうる。従って、上記の実施形態に記載された取付治具1、光学部品2、保持器3、並びに弾性シール部材4の各部の寸法、形状、及び材質等は一例にすぎず、本発明の効果を達成するために多様な寸法、形状、及び形状等が採用されうる。