(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
先部と後部に夫々軸穴を有した複数の耐張碍子を直列に連結し、且つ一つの前記耐張碍子の後部軸穴と他の前記耐張碍子の先部軸穴を連通させた状態で連結部材により回動可能に連結した耐張碍子装置を構成する2つの隣接する前記耐張碍子を支持する碍子支持ユニットであって、
前記2つの隣接する耐張碍子に加わる張力を緩和して前記連結部材を中心として該2つの耐張碍子をV字状の位置関係とした状態で、該2つの耐張碍子を夫々支持する一対の碍子支持部材と、
前記2つの耐張碍子の位置関係の変化に応じて、前記一対の碍子支持部材の角度を変化させる角度可変機構と、を備えたことを特徴とする碍子支持ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0012】
〔耐張碍子装置〕
図1は、耐張碍子装置の模式図である。
高圧配電線Wを腕金100や電柱等の支持物に引き留める耐張碍子装置200は、複数の耐張碍子210(210A、210B)を直列に連結した構成を有する。
各耐張碍子210は先部側(腕金100側)から、軸穴(先部軸穴213)が貫通形成された先部金具211と、磁器からなる絶縁体としての碍子本体215と、軸穴(後部軸穴219)が貫通形成された後部連結片217とを備える。一方の耐張碍子210Aの後部軸穴219を他方の耐張碍子210Bの先部軸穴213と連通させた状態にて、両軸穴にコッタピンCP(連結部材)を挿入することにより、2つの耐張碍子210A、210BはコッタピンCPを中心として回動可能に連設される。なお、コッタピンCPには、脱落防止用の割りピンBRが挿入される。
【0013】
図1に示す耐張碍子装置200は2つの耐張碍子210を備えている。
耐張碍子装置200の先部側に位置する一方の耐張碍子210Aは、先部金具211に連結されたねじりストラップ230を介して腕金100によって支持されている。先部金具211はねじりストラップ230に対してコッタピンCPによって回動可能に支持され、且つ割りピンBRによって脱落を防止されている。
耐張碍子装置200の後部側に位置する他方の耐張碍子210Bは、後部連結片217に連結された高圧引留クランプ240を介して高圧電線を支持する。後部連結片217は高圧引留クランプ240に対してコッタピンCPによって回動可能に支持され、割りピンBRによって脱落を防止されている。
なお、耐張碍子装置200が電柱によって支持される場合、一方の耐張碍子210Aは電柱に巻き付け固定された電柱バンド及び一枚リンクを介して電柱と連結され、支持される。
雷害や地絡事故等により耐張碍子210が破損した場合には、破損した耐張碍子のみを交換する必要がある。耐張碍子210の交換の際には、張線器によって高圧引留クランプ240を腕金100側に引き寄せて、耐張碍子装置200にかかる張力、即ちコッタピンCPが支持する張力を張線器によって緩和する。その後、2つの耐張碍子210を接続するコッタピンCPを抜き取る作業が必要となる。
【0014】
〔本発明の原理〕
図2は、耐張碍子装置の張力を緩和した時の耐張碍子の姿勢を示す模式図である。
耐張碍子装置200の先部側に位置する一方の耐張碍子210Aの先部軸穴213を頂点A、一方の耐張碍子210Aの後部軸穴219(又は後部側に位置する他方の耐張碍子210Bの先部軸穴213)を頂点B、他方の耐張碍子210Bの後部軸穴219を頂点Cとする。
各耐張碍子210の先部軸穴213と後部軸穴219との距離は一定であり、可変しない(AB=BC)。また、耐張碍子装置200に張力がかかっているとき、頂点A、B、Cは、一直線上にある(
図3(a)参照)。更に、2つの耐張碍子210A、210Bは、夫々コッタピンCPA、CPB、CPCを中心として回動する。
張線器によって高圧引留クランプ240を腕金100側に引き寄せて耐張碍子装置200にかかる張力を緩和すると、耐張碍子210A、210BがコッタピンCPA、CPB、CPCを中心として回動する。耐張碍子210A、210Bは自重により降下して3つの頂点によって三角形ABCが形成される。
線分ACの長さと2つの耐張碍子の角度(角ABC)は、耐張碍子装置200からコッタピンCPBを除去する作業時(耐張碍子の撤去時)と、一方の耐張碍子210Aの後部軸穴219と他方の耐張碍子210Bの先部軸穴213とを連通させてコッタピンCPBを挿入する作業時(耐張碍子の取付時)の何れにおいても、同じであるという特徴を有する。
【0015】
図3(a)〜(c)は、張線器による高圧引留クランプの腕金側への引き寄せ距離と隣接する耐張碍子の角度との関係を示す模式図である。(a)は引き寄せ前(張力緩和前)を示し、(b)及び(c)は引き寄せ後(張力緩和後)を示す。引き寄せ前において頂点A、B、Cは、略一直線上に並んでいる。
2つの耐張碍子210A、210Bの傾斜角度(即ち角ABC)は、張線器による高圧引留クランプ240の腕金100側への引き寄せ距離に応じて変化する。引き寄せ距離が小さい場合は
図3(b)に示すように耐張碍子210A、210Bの傾斜角度は小さくなり(角ABCは大きくなり)、引き寄せ距離が大きい場合は
図3(c)に示すように耐張碍子210A、210Bの傾斜角度は大きくなる(角ABCは小さくなる)。
従って、コッタピンCPBの抜き取り時と挿入時において、2つの耐張碍子210A、210Bの傾斜角度(即ち角ABC)を耐張碍子装置200の張力緩和直後の角度に保持しつつ、両耐張碍子210A、210Bを支持することができれば、コッタピンCPBの挿抜が容易となる。
【0016】
本発明の一実施形態に係る碍子支持装置について
図4に基づいて説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る碍子支持装置を示す図である。本実施形態に係る碍子支持装置は、連結された2つの耐張碍子の傾斜角度に応じて変形し、2つの耐張碍子の傾斜角度を、耐張碍子の撤去時と取付時において同一角度で保持できるようにした点に特徴がある。
碍子支持装置1は、耐張碍子装置200を構成する耐張碍子210の少なくとも一方を交換する際に、2つの隣接する耐張碍子210A、210Bを支持する装置である。
碍子支持装置1は、V字状の位置関係にある2つの耐張碍子210A、210Bを支持する碍子支持ユニット10と、碍子支持ユニット10を支持して作動させる作動ユニット50とを備えて構成される。
【0017】
<碍子支持ユニット>
碍子支持ユニット10は、2つの隣接する耐張碍子210A、210Bに加わる張力を緩和してコッタピンCPB(連結部材)を中心として2つの耐張碍子をV字状の位置関係とした状態で、該2つの耐張碍子を夫々支持する一対の碍子支持部材11、11と、2つの耐張碍子210A、210Bの位置関係の変化(V字角度の変化)に応じて、一対の碍子支持部材11、11の角度(傾斜姿勢)を変化させる角度可変機構30とを備えている。
【0018】
<<碍子支持部材>>
図5は、本発明の一実施形態に係る碍子支持装置の上面図及びA−A断面図である。
碍子支持部材11は、耐張碍子210を支持する碍子支持部13と、碍子支持部13に付設された被ガイド部19及び連設部23とを有する。碍子支持部材11は、絶縁性を有した軽量な非金属材料として例えば樹脂から形成される。
2つの碍子支持部材11、11は、碍子支持突起15の突出位置を除いて同一の形態である。以下、2つの碍子支持部材11、11の同一構成部分については特に区別せずに説明する。
【0019】
碍子支持部13は、耐張碍子210の下部を支持する碍子支持凹所17を備える。
碍子支持凹所17は耐張碍子210の碍子本体215の外径が最大となる部分と係合可能な湾曲形状であり、碍子支持凹所17の内径(幅及び深さ)は軸方向に略一定である。概略円錐形状の先部金具211に対して碍子支持凹所17の内径が軸方向に略一定となるようにしたのは、耐張碍子210が碍子支持凹所17に嵌合して碍子支持凹所17から取り出しが困難となることを防止するためである。
碍子支持凹所17のうち、耐張碍子210の先部金具211を支持する先部側(図中左側)には、先部金具211の下面を支持する碍子支持突起15が突出形成されている。碍子支持突起15は、碍子支持部材11が傾斜した姿勢にあるときに、耐張碍子210を碍子支持凹所17内で安定させる役割を果たす。
各碍子支持部13は、耐張碍子210同士を接続するコッタピンCPB部分を回避した位置において耐張碍子210を支持するように、その形状及び大きさが設定されている(
図7等参照)。碍子支持ユニット10の2つの碍子支持部13間には、コッタピンCPB挿抜用の空間が形成される。
【0020】
被ガイド部19は、碍子支持部材11の角度を可変させる角度可変機構30を構成する。
被ガイド部19は、碍子支持部材11から下方に突出した突起片であり、被ガイド部19の少なくとも二箇所には、挿通穴21、21が幅方向に貫通形成されている。なお、幅方向とは、碍子支持部材11、11が支持する2つの耐張碍子210A、210BのコッタピンCPBの軸方向に沿った方向である。被ガイド部19には、2つの挿通穴21、21を利用して位置固定で2つのスライダ35、35が設けられる。被ガイド部19には3以上の挿通穴及びスライダを設けてもよい。
なお、スライダについては、角度可変機構と共に後述する。
連設部23は、碍子支持ユニット10を作動ユニット50に対して連動可能に一体化する。連設部23は、碍子支持部13から被ガイド部19とは異なる方向(或いは離反する方向)に下方に突出した突起片であり、先端部には、幅方向に連設穴25が貫通形成されている。
【0021】
<<角度可変機構>>
図6(a)、(b)は、碍子支持ユニット部分を分割して示した図である。
角度可変機構30は、下方に湾曲した円弧状のガイドスリット33を備えたベース部31と、碍子支持部材11の被ガイド部19に位置固定で設けられた二箇所のスライダ35とを備えて構成される。ガイドスリット33は、2つの耐張碍子210A、210Bの位置関係の変化に追従して各碍子支持部13、13の姿勢(角度、及び位置)を変化させる役割を果たす。スライダ35は、ガイドスリット33内を進退することにより2つの耐張碍子210A、210Bの位置関係の変化に追従して碍子支持部13、13の姿勢を変化させる。
【0022】
角度可変機構30は、碍子支持部材11を間に挟んで碍子支持部材11の幅方向に対向して配置された2つのベース部31を備える。ベース部31は、概略U字状に湾曲した板状の部材である。ガイドスリット33は、ベース部31の湾曲に沿って形成されている。
角度可変機構30を構成するスライダ35は、
図4に示すように、一端部にフランジ状の大径部37を備えると共に他端部にピン穴38が貫通形成されたピン部材36と、ピン部材36が挿通されるワッシャ39と、ピン穴38に挿入される割ピン40とを備える。
【0023】
ベース部31、31と碍子支持部材11とは、以下のようにして一体化される。
図6(b)に示すように、2つのベース部31のガイドスリット33と碍子支持部材11の被ガイド部19に設けられた挿通穴21とを連通させた状態にて、幅方向一端側に位置するベース部31のガイドスリット33を介して挿通穴21内にスライダ35を構成するピン部材36を挿入する。幅方向一端側に位置するベース部31のガイドスリット33から突出したピン部材36の他端部にワッシャ39を挿入し、ピン穴38内に割ピン40を挿入することによって、ピン部材36の脱落が防止されると共に、ベース部31と碍子支持部材11は一体化される。
スライダ35はガイドスリット33内を自在に往復移動可能となり、スライダ35の移動に伴って碍子支持部材11はガイドスリット33に沿って移動する。
【0024】
ここで、ベース部31には2つの碍子支持部材11、11が取り付けられる。2つの碍子支持部材11は正面から見て、一方の碍子支持部材11の被ガイド部19が他方の碍子支持部材11側に突出し、一方の碍子支持部材11の連設部23が他方の碍子支持部材11から離間するように対称的に配置される。
ガイドスリット33は、
図4の正面図に示すように、各碍子支持部材11、11が夫々耐張碍子210A、210Bを支持したときに、2つの耐張碍子210A、210Bを連結するコッタピンCPBを中心とする円弧上に形成されている。このため、碍子支持部材11は、コッタピンCPBを中心として回動する2つの耐張碍子210A、210Bの位置変化及び姿勢変化に合わせて移動する。
また、碍子支持部材11の被ガイド部19には少なくとも2つのスライダ35を位置固定で設けているため、スライダ35がガイドスリット33内を進退することにより、ガイドスリット33内におけるスライダ35の位置に応じて、碍子支持部13の姿勢が変化する。
これにより、碍子支持部13は、コッタピンCPを中心として回動する2つの耐張碍子210A、210Bの位置関係の変化に追従して碍子支持部13の姿勢を変化させる。
【0025】
<作動ユニット>
作動ユニット50は、先端部においてベース部31を支持する第一操作杆51と、第一操作杆51を軸方向に沿って進退自在に支持する第二操作杆61と、第二操作杆61によって一端部69aを回動自在に軸支されると共に、他端部69bによって各碍子支持部材11、11を回動自在に軸支する2つのリンクアーム69、69と、を備えている。
本実施形態において第二操作杆61は第一操作杆51を進退自在に挿通する筒状の部材である。作動ユニット50は、第一操作杆51に対して第二操作杆61を進退させることにより、各リンクアーム69、69を介して各スライダ35をガイドスリット33に沿って進退させるように構成されている。
【0026】
<<第一操作杆>>
図4及び
図6に示すように、第一操作杆51は、先端部に設けられてベース部31が連結された角柱部材53と、角柱部材53の後端部に一体化された内側絶縁棒部材55とを備える。内側絶縁棒部材55の軸方向と直交する方向における断面形状は、概略円形状である。
角柱部材53と内側絶縁棒部材55とは、例えば角柱部材53の後端部と内側絶縁棒部材55の先端部に夫々内装された心棒57を介して一体化される。心棒57は、角柱部材53と内側絶縁棒部材55の夫々に例えばスプリングピン59等によって強固に固定される。
角柱部材53の先端部53aは、一対のベース部31によって挟まれる碍子支持部13の幅に合わせて幅方向に突出した構成を有し、ベース部31は先端部53aに対してネジ等により固定、一体化される。
【0027】
<<第二操作杆>>
第二操作杆61は、先端部に設けられて各リンクアーム69、69を支持する角筒部材63と、角筒部材63の後端部に一体化された中空円筒状の外側絶縁棒部材65とを備える。角筒部材63と外側絶縁棒部材65とは、例えば接着剤等により強固に一体化される。角筒部材63の側面には、リンクアーム69の一端部69aを回動自在に軸支する軸支部67が外径方向に突出形成されている。軸支部67には、リンクアーム69を回動自在に連設するための軸穴が形成されている。
図4に示すように外側絶縁棒部材65には、降雨時の水切り用に設けられた雨切ツバ71が配置され、雨切ツバ71の後方(下方)には安全限界位置を示す安全限界ツバ73が配置されている。なお、安全限界ツバ73よりも後方側が、作業員が把持するグリップ部75である。グリップ部75には、外側絶縁棒部材65の外周部を熱収縮チューブ等にて包囲することによって、滑り止め加工が施されている。
【0028】
<<操作杆の位置関係>>
角筒部材63の中空部内には、角柱部材53が進退可能且つ相対回転不能に挿通される。外側絶縁棒部材65の中空部内には、内側絶縁棒部材55が進退可能に挿通される。内側絶縁棒部材55の外側絶縁棒部材65に対する相対回転は、角柱部材53と角筒部材63とが組み合わせられることによって禁止される。
【0029】
<<角度固定機構>>
外側絶縁棒部材65の下端部には、内側絶縁棒部材55(第一操作杆51)に対する外側絶縁棒部材65(第二操作杆61)の軸方向位置(長手方向位置)を固定するストッパとしてのクランプ部材80が配置されている。クランプ部材80には、例えば自転車等によく使用されるシートクランプを用いることができる。
クランプ部材80は、外側絶縁棒部材65の下端部に軸方向に沿って形成されたスリット81の幅を縮小させたり開放したりする。クランプ部材80が外側絶縁棒部材65を締め付けてスリット81幅が縮小したときに、内側絶縁棒部材55に対する外側絶縁棒部材65の軸方向移動が禁止される。また、スリット81が開放したときには、内側絶縁棒部材55に対する外側絶縁棒部材65の軸方向移動が許容される。
クランプ部材80は、2つの碍子支持部材11の角度及び姿勢を固定する角度固定機構として機能する。
【0030】
<<リンクアーム>>
リンクアーム69の一端部69aと他端部69bは、夫々第二操作杆61の軸支部67と、碍子支持部材11の連設部23に対して、軸部材によって回動自在、且つ着脱自在に連設される。軸部材は、例えばスライダ35のピン部材36と同様の構成を有し、スライダ35と同様にワッシャと割りピンによって脱落を防止される。
リンクアーム69の一端部69aは、一端部69aに設けた軸穴と第二操作杆61の軸支部67に設けた軸穴とを連通させた状態にて、両穴に軸部材を挿入することにより、軸支部67に対して回動自在、且つ着脱自在に連設される。
リンクアーム69の他端部69bは、他端部69bに設けた軸穴と、碍子支持部材11の連設部23に設けた連設穴25とを連通させた状態にて、両穴に軸部材を挿入することにより、碍子支持部材11に対して回動自在、且つ着脱自在に連設される。
【0031】
<動作>
碍子支持装置の動作について
図7に基づいて説明する。
図7(a)〜(c)は、碍子支持装置の動作を示す正面図である。
第二操作杆61が第一操作杆51に対して降下した降下位置(
図7(a))にあるとき、リンクアーム69は連設部23を介して碍子支持部材11を降下させる。スライダ35がガイドスリット33の最下端に位置することで、2つの碍子支持部13は、耐張碍子210を水平に保持可能な初期姿勢をとる。このとき、2つの碍子支持部材11の被ガイド部19は当接して、碍子支持部13同士の接近を禁止する。
図7(b)に示すように、第二操作杆61が第一操作杆51に対して降下位置から上昇すると、リンクアーム69は連設部23を介して碍子支持部材11を上昇させる。碍子支持部材11の上昇に伴ってスライダ35がガイドスリット33内を上昇する。ガイドスリット33は、碍子支持部材11が支持する耐張碍子210のコッタピンCPを中心とする円弧上に形成されているため、碍子支持部13は、2つの耐張碍子210の位置関係の変化に追従して傾斜した姿勢に変位する。また、碍子支持ユニット10は、正面からみて、第一操作杆51と第二操作杆61の軸方向に沿って線対称な形状である。このため、2つの碍子支持部材11、11は、第二操作杆61を第一操作杆51に対して移動させることにより、ガイドスリット33に沿って互いに接近する方向、又は互いに離間する方向に対称的に移動する。
【0032】
図7(c)に示すように、第二操作杆61が第一操作杆51に対して更に上昇すると、リンクアーム69は連設部23を介して碍子支持部材11を更に上昇させる。スライダ35がガイドスリット33の端部にまで移動すると、碍子支持部13の傾斜は最大となる。
リンクアーム69の各端部は、軸支部67と連設部23に回動自在に連結されているため、2つの碍子支持部材11の接近又は離間移動、及び傾斜角度の変化に伴って、互いの他端部69bが接近又は離間する。
図7(a)〜(c)の何れの姿勢においても2つの碍子支持部13間には、コッタピンCP挿抜用の空間が形成される。
【0033】
<使用方法>
碍子支持装置を利用した耐張碍子の交換手順について説明する。
図8(a)〜(d)は、耐張碍子の交換手順を示す正面図である。
図8(a)は、耐張碍子の張力が緩和されていない初期状態を示す。
図8(b)に示すように、張線器によって高圧引留クランプ240を腕金100側に引き寄せて、耐張碍子装置200の張力を緩和すると、2つの耐張碍子210A、210Bは自重により降下してV字状の姿勢に変位する。
図8(c)に示すように、碍子支持装置1を耐張碍子210に接近させる(図中矢印B方向)。このとき、第一操作杆51と第二操作杆61とが軸方向に相対移動可能となるように、クランプ部材80(
図4参照)を弛緩させておく。また、第二操作杆61を第一操作杆51に対して上昇させて、碍子支持部13の傾斜角度が耐張碍子210の傾斜角度に合うように移動させる(矢印C方向)。
図8(d)に示すように、碍子支持部13の傾斜角度が耐張碍子210の傾斜角度に合致し、耐張碍子210が碍子支持凹所17内に係合したとき、クランプ部材80(
図4参照)を締結して、第二操作杆61を第一操作杆51に対して位置固定する。これにより、碍子支持部材11の傾斜角度が固定される。碍子支持装置1によって耐張碍子210を下方から支持した状態のとき、コッタピンCPには荷重(耐張碍子210の重力)がかかっていない状態となるため、コッタピンCPを容易に抜き取ることができる。コッタピンを抜き取った後は、碍子支持装置1を耐張碍子210から離間させる。
【0034】
その後は従来の碍子交換方法と同様であり、交換対象の耐張碍子210を絶縁ヤットコにて把持すると共に、他のコッタピンを抜き取って耐張碍子210を撤去する。碍子の取付手順は撤去手順と逆の手順にて実施すればよい。
2つの耐張碍子210を連結する際には、碍子支持装置1によって耐張碍子210を下方から支持し、2つの耐張碍子210をV字状の姿勢に保持する。碍子支持装置1の碍子支持部材11の傾斜角度は、耐張碍子210がV字状の姿勢となったときの傾斜角度(
図8(d)の姿勢)で固定されているため、先部軸穴213と後部軸穴219とを容易に連通させることができ、且つ、コッタピンCPの挿入時にはコッタピンCPに不要な荷重がかからないため、コッタピンを容易に挿入することができる。
【0035】
以上説明した碍子支持装置の各部材は、ネジ、ワッシャ、割りピン、スプリングピン、及びクランプ部材以外は、絶縁性を有した軽量な非金属材料から構成される。
なお、高圧耐張碍子には一般用と耐塩用があり、両者は大きさ及び形状が異なる。碍子支持部材11の碍子支持部13は、支持する高圧耐張碍子に適した大きさ及び形状に形成されるが、一般用の高圧耐張碍子を支持する碍子支持ユニットと耐塩用の高圧耐張碍子を支持する碍子支持ユニットとの間には、基本的な構造の違いはない。また、本実施形態に示した碍子支持ユニットにおいて、碍子支持部材11とベース部31は分解、組み立て自在であるため、支持する高圧耐張碍子に適した碍子支持部材11をベース部31に装着することで、その他の部品を共有することができる。
【0036】
〔本発明の構成、作用、効果のまとめ〕
<第一の実施態様>
本実施態様は、先部と後部に夫々軸穴(先部軸穴213、後部軸穴219)を有した複数の耐張碍子210を直列に連結し、且つ一つの耐張碍子の後部軸穴と他の耐張碍子の先部軸穴を連通させた状態で連結部材(コッタピンCP)により回動可能に連結した耐張碍子装置1を構成する2つの隣接する耐張碍子を支持する碍子支持ユニット10であって、2つの隣接する耐張碍子に加わる張力を緩和して連結部材を中心として該2つの耐張碍子をV字状の位置関係とした状態で、該2つの耐張碍子を夫々支持する一対の碍子支持部材11、11と、2つの耐張碍子の位置関係の変化に応じて、一対の碍子支持部材の角度を変化させる角度可変機構30と、を備えたことを特徴とする。
本態様によれば、V字状の位置関係にある2つの耐張碍子を夫々支持する一対の碍子支持部材と、2つの耐張碍子の位置関係の変化に応じて、一対の碍子支持部材の角度を変化させる角度可変機構を備えたので、2つの隣接する耐張碍子を、作業に最適な姿勢及び位置関係にて支持することができる。
【0037】
<第二の実施態様>
本実施態様において碍子支持部材11は、耐張碍子210を支持する碍子支持部13と、碍子支持部に付設された被ガイド部19と、を有し、角度可変機構30は、円弧状のガイドスリット33を備えたベース部31と、被ガイド部に設けられてガイドスリット内を進退することにより2つの耐張碍子の位置関係の変化に追従して碍子支持部の姿勢を変化させる少なくとも二箇所のスライダ35と、を備えたことを特徴とする。
少なくとも2つのスライダ35が円弧状のガイドスリット33によってガイドされることにより、碍子支持部材11はガイドスリット33に沿って円弧状の軌跡を描きながら移動すると共に、ガイドスリットの角度に合わせてその姿勢を変化させる。
本態様によれば、碍子支持部材11は、コッタピンCPを中心として回動する隣接する2つの耐張碍子の位置変化に追従して、姿勢を変化させることができる。
【0038】
<第三の実施態様>
本実施態様は、碍子支持ユニット10と、該碍子支持ユニットを支持して作動させる作動ユニット50と、を備えた碍子支持装置1であって、作動ユニットは、ベース部31を先端部において支持する第一操作杆51と、第一操作杆を軸方向に沿って進退自在に支持する第二操作杆61と、第二操作杆によって一端部を回動自在に軸支されると共に、他端部によって各碍子支持部材11を回動自在に軸支する2つのリンクアーム69、69と、を備え、第一操作杆に対して第二操作杆を進退させることにより各リンクアームを介してスライダ35をガイドスリット内に沿って進退させるように構成したことを特徴とする。
本態様によれば、第二操作杆61の軸方向位置を第一操作杆51に対して相対的に変化させることで、第二操作杆に連結された碍子支持部材を、第一操作杆に連結されたベース部のガイドスリットに沿って移動させると共に姿勢を変位させることができる。
【0039】
<第四の実施態様>
本実施態様は、第一操作杆51に対する第二操作杆61の軸方向位置を固定するストッパ(クランプ部材80)を備えたことを特徴とする。
本態様によれば、第一操作杆51と第二操作杆61の軸方向位置を固定することによって、2つの碍子支持部材11の角度姿勢を固定することができる。