(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964412
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】成形熱可塑性樹脂の生産工程
(51)【国際特許分類】
B29C 69/02 20060101AFI20160721BHJP
B29C 51/08 20060101ALI20160721BHJP
B29C 61/02 20060101ALI20160721BHJP
B65B 29/02 20060101ALI20160721BHJP
B65D 77/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
B29C69/02
B29C51/08
B29C61/02
B65B29/02
B65D77/00 E
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-508728(P2014-508728)
(86)(22)【出願日】2012年4月11日
(65)【公表番号】特表2014-519423(P2014-519423A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】EP2012056529
(87)【国際公開番号】WO2012150109
(87)【国際公開日】20121108
【審査請求日】2015年2月12日
(31)【優先権主張番号】11164540.4
(32)【優先日】2011年5月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590003065
【氏名又は名称】ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン・マイケル・ウッドワード
【審査官】
大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−538925(JP,A)
【文献】
特開昭56−164817(JP,A)
【文献】
特開2010−069281(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0151060(US,A1)
【文献】
特開2009−006135(JP,A)
【文献】
特開2002−292726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/08
B29C 61/02
B29C 69/02
B65B 29/02
B65D 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)シートに第1の成形形状を作り出すような外形を有する形成具によってシートを成形するステップと、
(ii)雄形成具を前記第1の成形形状内に位置決めするステップであって、前記雄形成具が少なくとも1つの頂点を備えた外形を前記第1の成形形状内に有する、ステップと、
(iii)前記第1の成形形状の温度をステップ(i)における成形温度よりも上げることで、前記第1の成形形状を元のシートの形に戻すように収縮させ、それによって前記雄形成具の外形にするステップと、
を含む、熱可塑性材料のシートを少なくとも1つの頂点を備えた三次元形状に成形する工程。
【請求項2】
前記熱可塑性材料の平均厚みが1.0mmより小さい、請求項1に記載の工程。
【請求項3】
前記熱可塑性材料がガス透過性である、請求項1または請求項2に記載の工程。
【請求項4】
前記熱可塑性材料が織物の形態をしている、請求項3に記載の工程。
【請求項5】
ステップ(i)において、前記第1の成形形状が雄形成具で成形されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の工程。
【請求項6】
ステップ(iii)において、前記第1の成形形状の温度を100℃よりも高く上げる、請求項1から5までのいずれか1項に記載の工程。
【請求項7】
前記雄形成具はピラミッド形である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の工程。
【請求項8】
前記雄形成具が複数の頂点を備えている、請求項1から6までのいずれか1項に記載の工程。
【請求項9】
ステップ(i)の前記形成具が、前記熱可塑性材料と接触するところに縁部または頂点が全くない外形を有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の工程。
【請求項10】
前記熱可塑性材料がポリ乳酸を含む、請求項1から9までのいずれか1項に記載の工程。
【請求項11】
粒子状製品を前記三次元形状に堆積させるステップが後に続く、請求項1から10までのいずれか1項に記載の工程。
【請求項12】
前記熱可塑性材料をシールして、密閉多孔性浸出用パックを生産するステップが後に続く、請求項11に記載の工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形熱可塑性樹脂の製造に関し、詳細には、ティーバッグのような浸出用パック(infusible packet)で、予め定められた三次元形状、特に尖った形体(feature)を有する形状の浸出用パックを成形することに関する。
【背景技術】
【0002】
長年、ティーバッグのような浸出用パックは、多孔性フィルター材からなる正方形または丸い二重シートで、通常、紙で作られていて、お茶のような浸出性材料がシートの間に挟まれているものが主に入手可能であった。このようなパックでは、パック内の浸出性材料の流れが実質的に二次元に制限される。結果として、このようなパックの浸出性能には限界がある。
【0003】
このため、過去数十年間、大量生産された浸出用パックで、より三次元的な形状を有し、浸出性物質が移動する空間をより大きくできるものが開発されてきた。特に成功したのは四面体形状のパックであり、国際公開第95/01907号 (Unilever)および国際公開第2004/033303号 (I.M.A. SPA)として発行された国際特許出願に記載されたパックなどである。
【0004】
四面体パックを製造する場合、従来、フィルター材からなるチューブに互いに垂直な横向きのシール部を作ることによって四面体形状が形成される。このような製造を行うために設計された装置は、他の三次元形状を製造するには不向きである。
【0005】
したがって、さまざまな三次元形状、特に、尖った形体で、例えば四面体形状にあるような頂点に代表される形体を備えた形状を製造できる工程を開発することが望ましいであろう。
【0006】
定義
いずれの値域を指定する場合でも、任意の特定の上限値を任意の特定の下限値と関連づけることができることに留意すべきである。
【0007】
疑義を回避するために述べるが、用語「備える」は「含む」を意味するが、必ずしも「からなる」または「から構成される」を意味しないことが意図されている。言い換えれば、列挙したステップまたはオプションは網羅的である必要はない。
【0008】
本明細書に見られる発明の開示は、特許請求の範囲に多重従属性や冗長性がないかもしれないという事実にも拘わらず、互いに多重従属している特許請求の範囲に見られる全ての実施形体に及ぶとみなさなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第95/01907号
【特許文献2】国際公開第2004/033303号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明者らは、公知の熱成形工程にはさまざまな三次元形状を生成する能力があるが、浸出用パックの材料での使用には適さず、特に形状が尖った形体を備えている場合に適さないことに気付いた。
【0011】
第1に、浸出用パックは最も一般的には紙で作られているが、紙は熱成形可能ではない。第2に、浸出用パックが熱成形可能な材料から作られたとしても、材料は多孔性で、かつ、薄いために、熱成形には不向きである。
【0012】
公知の熱成形工程は、材料を加熱する第1のステップと、続いて材料を熱成形する第2のステップとを伴う。浸出用パックの材料の熱容量が非常に小さいということは、如何なる加熱もすぐに失われること意味する。よって、このやり方は機能しない。
【0013】
たとえ加熱の問題を解決する方法が見つけられたとしても、かなりの難題が残ると思われる。例えば、公知の熱成形技法では、通常、空気圧を使用して材料を成形するということを伴う。しかし、浸出用パックの材料は多孔性であるので、このやり方は実用的ではない。なぜならば、材料の両側で空気圧にどんなに差があっても、即座に等しくなってしまうからである。
【0014】
空気圧を使用せず、型を材料に押し込めば、許容できないほど大きな応力が材料、特に型のあらゆる尖った形体の周りに生じ、材料が破損する。
【0015】
よって、熱成形が、尖った形体を備えた三次元形状を浸出用パックの材料から生成する実用的な方法でないことが分かるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
しかしながら、本願発明者らは、驚いたことに、これらの障害を克服し、尖った形体を有する三次元形状で、浸出用パックの材料から形成可能である形状を生産できる成形工程を開発した。
【0017】
したがって、本発明は、
(i)シートに第1の成形形状を作り出すような外形を有する形成具によってシートを成形するステップと、
(ii)雄形成具を第1の成形形状内に位置決めするステップであって、雄形成具が少なくとも1つの頂点を備えた外形を第1の成形形状内に有する、ステップと、
(iii)第1の成形形状の温度をステップ(i)における成形温度よりも上げることで、第1の成形形状を元のシートの形に戻すように収縮させ、雄形成具の外形にするステップと、
を含む、熱可塑性材料のシートを少なくとも1つの頂点を備えた三次元形状に成形する工程に関するものである。
【0018】
この工程は、このように、熱可塑性材料を最終的な成形形状よりも大きな第1の成形形状に成形するステップを伴う。さらに、第1の成形形状には尖った形体はないので、成形中に材料内で生じる応力が材料全体に均一に広がる。いったん成形されると、第1の成形形状は尖った形体を有する雄形成具上に収縮して戻り、これにより、尖った形体を有する成形形状を生成する。
【0019】
尖った形体の周りに生じる応力は、完全に取り除かれはしないが、尖った形体を有する雄形成具で材料を直接熱成形した場合に直面する応力よりは著しく小さい。
【0020】
このように、本発明の工程によれば、非常に薄くて多孔性の材料でさえも、尖った形体を有する三次元形状に成形できる。
【0021】
よって、好ましくは、熱可塑性材料の平均厚みは1.0mmより小さく、好ましくは0.50mmよりも小さく、より好ましくは0.2mmよりも小さく、最も好ましくは0.01から0.1mmである。
【0022】
さらに、熱可塑性材料はガス透過性であることが好ましい。例えば、織物の形態をした熱可塑性材料の繊維を含んでもよい。
【0023】
雄形成具の外形には頂点がある。この頂点は、外形の1つまたは複数の面が合わさることで形成された先端、突端または最高点であり、幾何学的には事実上ゼロ次元である。しかし、実際には、頂点は例えば1または2mmの小さな領域に広がっていてもよく、また、僅かに丸くなっていてもよいことは分かるであろう。ある長さにわたって延びていて、一次元であり、2つの側面が合わさることで形成される縁部は、頂点を構成しない。
【0024】
頂点は、例えば円錐形の最高点であってもよく、この場合、頂点は1つの面または側面のみによって形成される。同様に、頂点は3つまたは4つの側面の最高点、例えば、直方体の角、または、ピラミッド状の外形の最高点であってもよい。
【0025】
雄形成具は、望まれる形状によっては、複数の頂点を外形に備えてもよい。
【0026】
熱可塑性材料からなるシートを成形する第1のステップは、当該技術で公知である任意の成形工程で行ってもよい。しかし、好ましくは、第1の成形形状は雄形成具で成形され、この結果、第1の成形形状が雄形成具の外形となる。しかし、第1のステップで採用されるいずれの雄形成具も、通常、熱可塑性材料と接触するところでは縁部または頂点がまったくない外形を有する。前述したように、これは、初期成形時に材料内の応力を少なくするためのである。
【0027】
加熱処理のステップはさまざまな方法で行えるが、熱可塑性材料を加熱する好ましい方法は、高温ガス流を熱可塑性材料にあてることである。このことは、材料が多孔性で、比較的薄い場合に特に効果的であるが、これは、材料の熱容量が小さいために加熱時間が短いからである。
【0028】
第3のステップにおける熱可塑性材料の温度は、第1の成形ステップでの温度よりも高く、好ましくは100℃よりも高く、より好ましくは120℃よりも高く、最も好ましくは130から200℃である。前述したように、これは、少なくとも、これらのレベルを超える温度のガスをあてることによって達成することができる。
【0029】
熱可塑性材料はさまざまな材料から作ることができるが、テレフタル酸ポリエチレン(PET)、および、ポリ乳酸(PLA)が好ましい。
【0030】
本発明による工程は、その後浸出用パックの材料として使用することができる三次元形状を生成可能である。例えば、四面体、ピラミッド形、平行六面体、角柱、錐体等の形状が可能である。もっとも、ピラミッドおよび/または四面体形状が好ましい。
【0031】
よって、本工程は、一般に、成形された熱可塑性材料に粒子状製品を堆積させるステップが後に続く。粒子状製品は、通常、茶葉のような浸出性エンティティー(entities)からなる。このステップは、次に、成形された材料をシールして密閉多孔性浸出用パックを生産するステップが後に続く。
【0032】
ここで、本発明を例として以下の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明による工程で使用する装置の側面図である。
【
図2】本発明による工程で使用する装置の別の側面図である。
【
図3】本発明による型および成形熱可塑性樹脂の略図である。
【
図4a】本発明による工程で成形された熱可塑性材料のイメージ図である。
【
図4b】本発明による工程で成形された熱可塑性材料のイメージ図である。
【
図4c】本発明による工程で成形された熱可塑性材料のイメージ図である。
【
図5】本発明による工程で作られた成形熱可塑性樹脂の形状のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図を参照すると、
図1は、多孔性ポリ乳酸のシート10を示している。このシートは、厚さが50μmであり、クランプ12の間に保持されている。雄形成具14がシート10の上に位置決めされ、温度100℃まで加熱されている。雄形成具14には、頂点、すなわち、尖った形体がなく、形状が半球形である。
【0035】
雄形成具14はシート10の方へ動かし、シート10に接触させる。シート10における材料の量が少ないため、シート10の温度は、雄形成具14と接触する領域で急に上がり、100℃に近づく。このように、熱成形のためにシート10を予め加熱処理する必要はない。
【0036】
雄形成具14は、
図2に示す位置になるまでシート10の方へ移動し続ける。この時点で、シート10は、第1の成形半球形形状20に形成されている。
【0037】
いったん第1の成形形状20が形成されたら、雄形成具14は撤収され、雄形成具22と置き換える。雄形成具22は形状が四面体であり、3つの側面(1つのみが示されている)によって形成された頂点24がある。雄形成具22は第1の成形形状20よりも小さく、接触することなく第1の成形形状20内に収まる。
【0038】
次に、第1の成形形状20は、温度140℃の高温空気をその上に通すことによって加熱される。これには、第1の成形形状22を元の形状10に戻るように収縮させるという効果がある。しかし、雄形成具22をおいたために第1の成形形状はそのようにすることができず、代わりに、雄形成具22の外形になる。これにより外形26が形成される。外形26は、雄形成具22の外形にほぼなっており、また、重要なことに、頂点24の外形になっている。形状26は収縮により形成されたので、材料に引き起こされる応力は大きく減少し、材料は全く破損しない。
【0039】
図4aから
図4cは、上記工程のさまざまな段階のイメージ図である。
図4aは、半球形の第1の成形形状20を雄形成具22が中に位置決めされた状態で示している。
【0040】
より厳密に雄形成具22の外形になるように、形状の、さらに改良したクランプ留め方法を採用して外形28を得ることもできる。
図4bは、クランプ30によって適切な位置にクランプ留めされた成形形状28を示している。さらに示されているのはチューブ32であり、このチューブ32から高温空気が流れる。
【0041】
図4cは、形成具22およびクランプ30が取り除かれたときの最終形状28を示している。尖った頂点を有する四面体形状が材料に形成されていることが分かる。
【0042】
図5は、クランプ12から取り外した最終形状28を、折り畳まれ、粒状浸出性材料を充填してシールする準備ができた後の最終形状38の別のイメージ図と共に示している。
【符号の説明】
【0043】
10 シート
12 クランプ
14 雄形成具
20 成形形状
22 雄形成具
24 頂点
26 外形
28 外形
30 クランプ
32 チューブ
38 最終形状