特許第5964449号(P5964449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5964449連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964449
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/56 20060101AFI20160721BHJP
   C21D 9/573 20060101ALI20160721BHJP
   C21D 11/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C21D9/56 101C
   C21D9/573 101Z
   C21D11/00 104
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-547097(P2014-547097)
(86)(22)【出願日】2012年12月12日
(65)【公表番号】特表2015-504973(P2015-504973A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】KR2012010776
(87)【国際公開番号】WO2013089422
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年6月13日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0135026
(32)【優先日】2011年12月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,ギュ テク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュン ホン
【審査官】 静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−013046(JP,A)
【文献】 特開昭59−059835(JP,A)
【文献】 特開昭57−060030(JP,A)
【文献】 特開平05−202425(JP,A)
【文献】 特開昭62−267466(JP,A)
【文献】 特開平03−207821(JP,A)
【文献】 特開平06−116655(JP,A)
【文献】 特開2003−277834(JP,A)
【文献】 実開昭59−040350(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/52−9/66
C21D 1/00
C21D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個の長さ方向流量制御ノズルブロックのセットと、2個の幅方向流量制御ノズルブロックのセットとが交互に配置された連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度を均一に制御するための方法において、
ストリップ温度検出値とストリップ情報を用いて、ストリップの前後面からそれぞれミ
ストを噴射させる長さ方向流量制御ノズルブロックおよび幅方向流量制御ノズルブロック
のバルブ開度を決定する段階(A)と、
決定されたバルブ開度に対して、ストリップの出側目標温度から毎周期ストリップの出
側実際温度を差し引いてミスト噴射流量を調節するように前記長さ方向流量制御ノズルブ
ロックの開度補償値を決定する段階(B)と、
決定されたバルブ開度に対して、ストリップの幅方向の複数の領域でミスト噴射流量を
個別的に調節するように前記幅方向流量制御ノズルブロックの複数のサーボバルブの開度
値を決定する段階(C)と、を含んでなり、
前記長さ方向流量制御ノズルブロックおよび前記幅方向流量制御ノズルブロックのバル
ブ開度を決定する段階(A)は、
NEXTコイル情報入力モジュールからストリップの厚さ、幅および鋼種の情報を受け
取る段階(A1)と、
現在の入側ストリップ温度、現在の出側ストリップ温度および目標のストリップ温度か
ら補償冷却熱量を計算する段階(A2)と、
前記長さ方向流量制御ノズルブロックまたは前記幅方向流量制御ノズルブロックのバル
ブにミストを供給するメインバルブを流れるミスト流量値を計算する段階(A3)と、
前記ミスト流量値を噴射ノズルブロック決定モジュールで予め定められたブロックの数
で割り、バルブ流量係数値を計算する段階(A4)と、
前記バルブ流量係数値を用いて前記長さ方向流量制御ノズルブロックおよび前記幅方向
流量制御ノズルブロックのバルブ開度を決定する段階(A5)と、を含んでなり、
前記長さ方向流量制御ノズルブロックの開度補償値を決定する段階(B)は、
比例−積分制御器を備える長さ方向温度制御器によって実行され、
下記式5を用いてミスト流量を算出し、下記式6によって流量係数を計算し、該流量係数に基づいてバルブ開度(α)を計算する段階を含んでなり、
前記幅方向流量制御ノズルブロックの複数のサーボバルブの開度値を決定する段階(C
)は、ストリップの幅を複数の領域に分け、前記幅方向流量制御ノズルブロックには複数
の領域にそれぞれ位置するようにストリップの幅方向に分離された複数のサーボバルブを
設置し、複数のサーボバルブは幅方向温度制御器によって流量が制御され、幅方向温度制
御器はストリップの幅方向目標温度分布からストリップの幅方向実測温度分布値を差し引
いて前記幅方向温度制御器の入力値として使用し、複数のサーボバルブに対してそれぞれ
下記式5を用いてミスト流量を算出し、下記式6によって流量係数を計算し、該流量係数基づきサーボバルブのバルブ開度(α)を計算する段階を含み、ストリップの幅方向温度制御を実行し、
ストリップに噴射されるミストの噴射流量の制御によってストリップの温度を均一に制
御し、ストリップの平坦度の変化を最小化するように構成されたことを特徴とする連続焼
鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法。
【数5】
【数6】
【請求項2】
前記補償冷却熱量を計算する段階(A2)は、下記式3(=式2−式1)を用いて補償冷却熱量を計算することを特徴とする請求項1に記載の連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法。
【数1】
【数2】
【数3】
【請求項3】
前記ミスト流量値を計算する段階(A3)は、下記式4によって求められた下記式5を用いて前記ミスト流量値を計算することを特徴とする請求項1に記載の連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法。
【数4】
【数5】
【請求項4】
連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度を均一に制御するための装置において、
急冷帯の入出側でストリップの温度を測定するストリップセンター温度測定器と幅方向温度測定器、
ストリップの温度制御のためにストリップの前後面にそれぞれ上下に複数セット設置された長さ方向流量制御ノズルブロック、および
ストリップの幅を複数の領域に分け、それぞれの領域に噴射されるミストの流量をそれぞれのサーボバルブで制御することにより、ストリップの幅方向に噴射されるミストの流量を互いに異なるように制御してストリップの幅方向の温度を均一に制御する複数セットの幅方向流量制御ノズルブロック、を含み、
2個の長さ方向流量制御ノズルブロックのセットと、2個の幅方向流量制御ノズルブロックのセットとが交互に配置され、
前記ストリップセンター温度測定器と前記幅方向温度測定器から得られた温度検出値を用いて前記長さ方向流量制御ノズルブロックおよび前記幅方向流量制御ノズルブロックのミスト噴射流量をそれぞれ制御してストリップの温度を均一に制御し、ストリップの平坦度の変化を最小化するように構成されたことを特徴とする連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御装置。
【請求項5】
前記幅方向流量制御ノズルブロックは、ストリップの幅を複数の領域に分け、それぞれの領域に噴射されるミストの流量を複数のサーボバルブによって個別的に制御するように構成されたことを特徴とする請求項4に記載の連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法および装置に係り、より詳しくは、連続焼鈍ラインの急冷帯の入力端および出力端で幅方向の温度を検出し、フィードバック・フィードフォワード制御技法を用いて冷却ノズルブロックの幅方向ミスト(mist)流量の制御を行うことにより、ストリップの幅方向の温度を均一に制御してストリップの平坦度の変化を最小化するようにした、連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一貫総合製鉄所に備えられた連続焼鈍ラインのファーネス(Furnace)構成を図1に示した。
このような連続焼鈍ラインのファーネス10は、その入側に入力されるストリップが、予熱帯11で加熱帯12の排ガスを用いて予熱され、加熱帯12でラジアンチューブを介して間接加熱されて昇温する。
加熱帯12を通過したストリップは、均熱帯13で一定の温度に均熱処理され、徐冷帯14で雰囲気ガスの循環冷却によって徐冷される。
徐冷帯14を通過したストリップは、急冷帯15で主ガスジェット、冷却ロールおよび補助ガスジェットを用いて冷却され、過時効帯16で過時効処理されて最終冷却帯17で冷却する。
【0003】
このような連続焼鈍ラインのファーネス10は、予熱帯11および加熱帯12でストリップ内の結晶粒が回復および再結晶し、均熱帯13で結晶粒が成長する。
また、ストリップの温度を下降させる徐冷帯14では固溶炭素の溶解度が大きくなり、急冷帯15では固溶炭素が過飽和になり、この固溶炭素の過飽和により形成された炭化物(Fe3C)は過時効帯16で析出する。
このような連続焼鈍ラインのファーネス10における急冷帯15のストリップ温度を制御する方法として、幾つかの技術が提案されている。
すなわち、従来の技術としては、特許文献1(韓国公開特許第2005−0051023号)の「連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ冷却速度制御方法」が提示されている。
【0004】
このような従来の方式は、連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ冷却速度制御方法に関するもので、急冷帯を通過するストリップの冷却速度およびストリップ内の炭素濃度を一定に維持することができるため、均一な品質の冷延鋼板の生産が可能な方法である。
特許文献2(韓国公開特許第2004−0047308号)の「焼鈍炉のストリップ冷却装置」は、焼鈍炉の急冷帯におけるストリップを目標の温度に均一に冷却するための装置に関し、ロール内への冷却水の供給によるロール冷却を用いた均一冷却に関する発明である。
また、特許文献3(韓国公開特許第2003−0054513号)の「連続焼鈍炉における冷却帯のストリップ冷却制御方法」には、連続焼鈍炉の冷却帯で冷却ファンの出力変化を制御してストリップの冷却を制御する方法が紹介されている。
ところが、このような従来の技術はいずれも、ストリップの長さ方向の温度を制御することを目的としており、幅方向の温度を制御することが不可能であるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第2005−0051023号
【特許文献2】韓国公開特許第2004−0047308号
【特許文献3】韓国公開特許第2003−0054513号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述した従来の問題点を解消するためになされたもので、その目的は、垂直方向に動くストリップの幅方向の温度分布を所望の形態に制御することにより、究極的にストリップの不均一冷却による平坦度の不良を最小化することができる連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法および装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、連続焼鈍ラインにおける急冷帯の入力端および出力端の幅方向温度計を用いて温度を検出し、フィードバック・フィードフォワード制御技法を用いて急冷帯の幅方向ミスト噴射流量の制御によってストリップの幅方向の温度を均一に制御することにより、ストリップの平坦度の変化を最小化するようにした連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法は、ストリップ温度検出値とストリップ情報を用いて、ストリップの前後面からそれぞれミストを噴射させる長さ方向流量制御ノズルブロックおよび幅方向流量制御ノズルブロックのバルブ開度を決定する段階と、決定されたバルブ開度に対して、ストリップの出側目標温度から毎周期ストリップの出側実際温度を差し引いてミスト噴射流量を調節するように長さ方向流量制御ノズルブロックの開度補償値を決定する段階と、決定されたバルブ開度に対して、ストリップの幅方向の多数の領域でミスト噴射流量を個別的に調節するように幅方向流量制御ノズルブロックの多数のサーボバルブの開度値を決定する段階とを含んでなり、ストリップに噴射されるミストの噴射流量の制御によってストリップの温度を均一に制御し、ストリップの平坦度の変化を最小化するように構成されたことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明の連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御装置は、急冷帯の入出側でストリップの温度を測定するストリップセンター温度測定器と幅方向温度測定器、ストリップの温度制御のためにストリップの前後面にそれぞれ上下に多数セット設置された長さ方向流量制御ノズルブロック、およびストリップの幅を多数の領域に分け、それぞれの領域に噴射されるミストの流量をそれぞれのサーボバルブで制御することにより、ストリップの幅方向に噴射されるミストの流量を互いに異なるように制御してストリップの幅方向の温度を均一に制御する多数セットの幅方向流量制御ノズルブロック、を含み、ストリップセンター温度測定器と幅方向温度測定器から得られた温度検出値を用いて長さ方向流量制御ノズルブロックおよび幅方向流量制御ノズルブロックのミスト噴射流量をそれぞれ制御してストリップの温度を均一に制御し、ストリップの平坦度の変化を最小化するように構成されたことを特徴とする。
【0009】
また、幅方向流量制御ノズルブロックは、ストリップの幅を多数の領域に分け、それぞれの領域に噴射されるミストの流量を多数のサーボバルブによって個別的に制御するよう構成されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、本発明の連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法および装置は、ストリップの前後面に長さ方向流量制御ノズルブロックと幅方向量制御ノズルブロックを多数区画設置し、急冷帯の入出側に設置されたストリップセンター温度測定器と幅方向温度測定器から得られた温度検出値を用いて、長さ方向流量制御ノズルブロックと幅方向流量制御ノズルブロックからそれぞれ噴射されるミストの噴射流量をそれぞれ制御することにより、垂直方向に動くストリップの幅方向温度分布を所望の形態に制御することができ、究極的にストリップの不均一冷却による平坦度の不良を最小化することができる優れた効果がある。
また、本発明によれば、本発明の連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法および装置は、連続焼鈍ラインにおける急冷帯の入力端および出力端の幅方向温度計を用いて温度を検出し、フィードバック・フィードフォワード制御技法を用いて急冷帯の幅方向ミスト噴射流量の制御によってストリップの幅方向の温度を均一に制御することができ、これにより、ストリップの平坦度の変化を最小化することができる優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一般な連続焼鈍ラインの全体構成図である。
図2】本発明に係る連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御装置が適用される連続焼鈍ラインの急冷帯を詳細に示す断面図である。
図3】本発明に備えられた急冷帯の幅方向分割噴射ノズルブロックを示す構成図である。
図4図3に示した噴射ノズルブロックのミスト噴射ノズルの詳細図である。
図5】本発明に係る連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法を全体的に示す説明図である。
図6】本発明に係る連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法で活用される長さ方向出側温度制御器の構成図である。
図7】本発明に係る連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法で活用される幅方向温度制御器の構成図である。
図8】本発明に係る連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法で実行される幅方向温度偏差の計算ロジックである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施例をより詳細に説明する。
本発明の連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法および装置は、連続焼鈍ラインにおける急冷帯の入力端および出力端の温度計を用いて温度を検出し、フィードバック・フィードフォワード制御技法を用いて急冷帯のミスト噴射流量制御によってストリップの温度を均一に冷却制御することができることから、ストリップの平坦度の変化を最小化することができる。
【0013】
まず、本発明に係る連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御装置100を添付図に基づいて説明する(図2参照)。
本発明の連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御装置100は、ストリップの温度制御のために冷却ノズルブロックをストリップの前後面にそれぞれ上下に複数設置するが、長さ方向流量制御ノズルブロックと幅方向流量制御ノズルブロックに区画して複数セット設置する。
このように本発明に係る連続焼鈍ラインおける急冷帯のストリップ温度制御装置100が適用される連続焼鈍ラインの急冷帯200は、図2に示したとおり、冷却ノズルブロックが上下に11セット構成されるが、11セットのうち、長さ方向流量制御ノズルブロックは6セットであり、幅方向流量制御ノズルブロックは5セットである。冷却ノズルブロックは、それぞれストリップの前後面に設置され、それらの間をストリップSが通過する。
【0014】
すなわち、ストリップSの温度を均一に制御するために、長さ方向流量制御ノズルブロックは急冷帯200の入側から1番ブロック211、2番ブロック212、5番ブロック215、6番ブロック216、9番ブロック219、10番ブロック220に設置され、幅方向流量制御ノズルブロックは急冷帯200の入側から3番ブロック213、4番ブロック214、7番ブロック217、8番ブロック218、11番ブロック221に順次設置される。
本発明に係る連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御装置100は、図5に示したとおり、急冷帯200の入出側にストリップセンター温度測定器231a、231bと幅方向温度測定器233a、233bを備える。
すなわち、本発明は、ストリップの温度制御のために急冷帯200の入出側のストリップセンター温度測定器231a、231bを設置し、幅方向の温度制御のために幅方向温度測定器233a、233bを設置し、ストリップの実測温度値を検出する。
【0015】
このような本発明に係る連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御装置100は、ストリップセンター温度測定器231a、231bと幅方向温度測定器233a、233bから得られた温度検出値を用いて長さ方向流量制御ノズルブロックおよび幅方向流量制御ノズルブロックのミスト噴射流量をそれぞれ制御する。
本発明が適用される急冷帯200は、生産されるストリップ素材の鋼種および大きさによって要求される冷却率(Cooling Rate:℃/sec)が異なり、これにより合計11セットのノズルブロックの流量を決定する制御が求められる。
【0016】
このようなノズルブロックから噴射されるストリップ冷却媒体はミスト(mist)である。これは、図4に示したとおり、ノズルの内部で窒素と冷却水とが混合されてミストを噴射させる。
急冷帯200に設置された長さ方向流量制御ノズルブロックは、急冷帯200の入側から1番ブロック211、2番ブロック212、5番ブロック215、6番ブロック216、9番ブロック219、10番ブロック220に設置され、図5に示したとおり、各ブロックのメインバルブ331を調節してミスト流量を調節する。
【0017】
また、幅方向流量制御ノズルブロックは、3番ブロック213、4番ブロック214、7番ブロック217、8番ブロック218、11番ブロック221であって、それぞれ図3および図5に示したとおり、各ブロックのメインバルブ331の後端でストリップの幅方向に多数の領域、好ましくは5領域に分け、各5領域の流量を個別的にサーボバルブ332を介してそれぞれ制御する。
すなわち、幅方向流量制御ノズルブロックに備えられた5セットのサーボバルブ332は、図3に示したとおり、それぞれのバルブ開度補償値を決定して、連続焼鈍ラインの急冷帯200に設置された3番ブロック213、4番ブロック214、7番ブロック217、8番ブロック218、11番ブロック221の位置で、ストリップの幅方向に分離された5つのサーボバルブ332別に異なる流量のミストを噴射する。
このように本発明の連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御装置100は、急冷帯200のミスト噴射流量制御によってストリップの温度を均一に制御することができ、その結果としてストリップの平坦度の変化を最小化することができる。
【0018】
前述した本発明の連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御装置100を用いて、ストリップの冷却温度を制御する本発明の連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法300について、より詳細に説明する。
本発明に係る連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法300は、ストリップセンター温度測定器231a、231bと幅方向温度測定器233a、233bから得られた温度検出値を用いて長さ方向流量制御ノズルブロックおよび幅方向流量制御ノズルブロックのミスト噴射流量をそれぞれ制御する。
【0019】
本発明の連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法300は、図5に示したとおり、ストリップセンター温度測定器と幅方向温度測定器を用いて得られた温度検出値とコイル情報を用いて、ミスト噴射流量をそれぞれ計算し、長さ方向流量制御ノズルブロックおよび幅方向流量制御ノズルブロックのミスト噴射流量をそれぞれ制御する。
この本発明に係る連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法300は、連続焼鈍ラインに備えられた制御コンピュータ(図示せず)によっで行われるが、制御コンピュータでは、内蔵された各種モジュールに入力された各種数式によって演算が自動的に行われる。
【0020】
まず、本発明に係る連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法300は、急冷帯200の入出側に設置されたストリップセンター温度測定器231a、231bと幅方向温度測定器233a、233bから得られた温度検出値を用いて、ストリップの前後面にそれぞれ上下に多数設置された長さ方向流量制御ノズルブロックおよび幅方向流量制御ノズルブロックのバルブ開度を決定する段階Aが行われる。
このような長さ方向流量制御ノズルブロックおよび幅方向流量制御ノズルブロックのバルブ開度を決定する段階Aは、図5に示したとおり、まず制御コンピュータ(図示せず)に内蔵されたNextコイル情報入力モジュールからストリップの厚さ、幅および鋼種情報を受け取り(段階A1)、ストリップセンター温度測定器231a、231bから現在の入側ストリップ温度および出側ストリップ温度を受け取り、目標のストリップ温度から下記式3(=式2−式1)を用いて補償冷却熱量計算モジュールで補償冷却熱量を計算する段階A2が行われる。
【0021】
【数1】
【数2】
【数3】
次に、下記式4によって求められた式5を用いてミスト流量値を計算する段階(A3)が行われる。
【0022】
【数4】
【数5】
次に、ミスト流量値を、制御コンピュータの噴射ノズルブロック決定モジュールで予め定められたブロックの数で割り(段階A4)、得られた数値をバルブ開度計算モジュールの入力値として使用し、この値を用いて下記数式6からバルブ流量係数(Cv)値を計算する。
【数6】
バルブ流量係数(Cv)値を用いて最終各ブロックのバルブ開度を決定する段階A5が行われる。
【0023】
のような段階によって決定されたバルブ開度値が、コイルが変わる地点で、後述するような段階Bでの長さ方向流量制御ノズルブロックの初期バルブ開度値327になる。
また、後述するような段階Cでの幅方向流量制御ノズルブロックに対しては、バルブ開度値を5で割った値328が幅方向流量制御ノズルブロックのバルブ開度値になる。
【0024】
そして、本発明に係る連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法300は、次いで、決定されたバルブ開度に対して、ストリップの出側目標温度から毎周期ストリップの出側実際温度を差し引いて長さ方向流量制御ノズルブロックの開度補償値356を決定する段階Bが行われる。
このような段階Bは、段階A5で決定されたバルブ開度に対して、ストリップの出側目標温度353から毎周期ストリップの出側実際温度354を差し引いて長さ方向流量制御ノズルブロックの開度補償値356を決定する段階Bであって、比例−積分制御器348aを含む長さ方向温度制御器348によって実行される。
このような長さ方向温度制御器348の詳細な構成を図6に示した。すなわち、長さ方向温度制御器348では、ストリップの出側目標温度353から毎周期ストリップの出側実際温度354を差し引いた値を長さ方向温度制御器348の入力値にして開度補償値356を計算する。
このような過程で、長さ方向温度制御器348は、段階A3でも引用された下記式5を用いてミスト流量を算出する。
【0025】
【数5】
次に、段階A5で引用された下記式6によって流量係数Cvを計算する。
【数6】
その後、流量係数に基づいてバルブ開度(α)を計算する
【0026】
このような過程を経て、長さ方向流量制御ノズルブロックの開度補償値356を決定し、これを反映して連続焼鈍ラインの急冷帯200に設置された1番ブロック211、2番ブロック212、5番ブロック215、6番ブロック216、9番ブロック219、10番ブロック220の長さ方向流量制御ノズルブロックからミストを噴射する。
次に、本発明に係る連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法300は、決定されたバルブ開度に対して、ストリップSの幅方向の多数の領域でミスト噴射流量を個別的に調節するように幅方向流量制御ノズルブロックの多数のサーボバルブ332の開度値を決定する段階Cが行われる。
すなわち、段階Cでは、ストリップSの幅方向の温度制御のためにストリップの幅を5つの領域に分け、幅方向流量制御ノズルブロックに、それぞれストリップの幅方向に分離された5つのサーボバルブ332を設置し(図3および図5参照)、ストリップの幅方向目標温度分布365からストリップの幅方向実測温度分布値366を差し引いて幅方向の温度制御器369の入力値として使用する。
【0027】
幅方向温度制御器369は、段階A5で決定されたバルブ開度に対して、ストリップの幅方向目標温度分布365から毎周期ストリップの幅方向実測温度分布値366を差し引いて幅方向流量制御ノズルブロックのそれぞれのサーボバルブ332の開度値を計算する。
このような過程で、幅方向温度制御器369は、図5および図7に示すように、幅方向目標温度分布365から、幅方向温度測定器233a、233bによって得られた幅方向実測温度分布値366を差し引き、得られた値を幅方向温度制御器369の入力値にして幅方向流量制御ノズルの開度値を計算する。
【0028】
ここで、図5に示した幅方向温度制御モジュール373で行われる幅方向温度偏差の計算ロジックを図8に示した。
また、幅方向温度制御器369の詳細な構成が図7に示されており、それぞれのサーボバルブ332に対する開度値は段階Bで採用された長さ方向温度制御器348の制御ロジックと同様に使用され、そのパラメータ値は幅方向のノズルに合わせてそれぞれ修正される。
【0029】
幅方向温度制御器369は、5つのサーボバルブ332に対してそれぞれ下記式5を用いてミスト流量を算出する。
【数5】
下記式6によって流量係数Cvを計算する。
【数6】
流量係数に基づいて5つのサーボバルブ332の開度をそれぞれ計算する
【0030】
このような過程を経て、段階Cでは、幅方向流量制御ノズルブロックの5セットのサーボバルブ332のバルブ開度補償値をそれぞれ決定し、連続焼鈍ラインの急冷帯200に設置された3番ブロック213、4番ブロック214、7番ブロック217、8番ブロック218、11番ブロック221の幅方向流量制御ノズルブロックから、ストリップの幅方向に分離された5つのサーボバルブ332毎に異なるようにミストをストリップの5つの領域にそれぞれ噴射する。
前述した本発明の連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法300によれば、ストリップSの前後面に長さ方向流量制御ノズルブロックと幅方向流量制御ノズルブロックを多数区画設置し、急冷帯200の入出側に設置されたストリップセンター温度測定器231a、231bと幅方向温度測定器233a、233bから得られた温度検出値を用いて、長さ方向流量制御ノズルブロックと幅方向流量制御ノズルブロックからそれぞれ噴射されるミストの噴射流量をそれぞれ制御することにより、垂直方向に動くストリップの幅方向温度分布を所望の形態に制御する。
したがって、本発明によれば、究極的にストリップの不均一冷却による平坦度の不良を最小化することができる。
【0031】
また、本発明の連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法300によれば、連続焼鈍ラインにおける急冷帯300の入力端および出力端の幅方向温度計を用いて温度を検出し、フィードバック・フィードフォワード制御技法を用いて急冷帯200の幅方向のミスト噴射流量制御によってストリップの幅方向の温度を均一に制御することができることから、ストリップの平坦度の変化を最小化することができる。
【0032】
以上、本発明を特定の実施例に関連して詳細に説明したが、本発明はこのような特定の構造に限定されるものではない。当該分野における通常の知識を有する者であれば、添付された請求の範囲に記載された本発明の技術思想および権利範囲を逸脱することなく、本発明に様々な修正または変更を加えることができるであろう。しかし、それらの単純な設計的修正または変形構造はいずれも明白に本発明の権利範囲内に属することを予め明らかにしておく。
【符号の説明】
【0033】
10 ファーネス
11 予熱帯
12 加熱帯
13 均熱帯
14 徐冷帯
15、200 急冷帯
16 過時効帯
17 最終冷却帯
100 連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御装置
211 1番ブロック
212 2番ブロック
213 3番ブロック
214 4番ブロック
215 5番ブロック
216 6番ブロック
217 7番ブロック
218 8番ブロック
219 9番ブロック
220 10番ブロック
221 11番ブロック
231a、231b ストリップセンター温度測定器(長さ方向温度測定器)
233a、233b 幅方向温度測定器
300 連続焼鈍ラインにおける急冷帯のストリップ温度制御方法
327 長さ方向流量制御ノズルブロックの初期バルブ開度値
328 幅方向流量制御ノズルブロックのバルブ開度値
331 メインバルブ
332 サーボバルブ
348 長さ方向温度制御器
348a 比例−積分制御器
353 ストリップの出側目標温度
354 毎周期ストリップの出側実際温度
356 長さ方向流量制御ノズルブロックの開度補償値
365 ストリップの幅方向目標温度分布
366 ストリップの幅方向実測温度分布値
369 幅方向温度制御器
373 幅方向温度制御モジュール
A 長さ方向流量制御ノズルブロックおよび幅方向流量制御ノズルブロックのバルブ開度を決定する段階
A1 Nextコイル情報入力モジュールから情報を受け取る段階
A2 補償冷却熱量を計算する段階
A3 ミスト流量値を計算する段階
A4 ミスト流量値をブロックの数で割る段階
A5 最終各ブロックのバルブ開度を決定する段階
B 長さ方向流量制御ノズルブロックの開度補償値を決定する段階
C 幅方向流量制御ノズルブロックのそれぞれのサーボバルブの開度値を決定する段階
S ストリップ
T1,T2,T3,T4,T5 幅方向実測温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8