特許第5964452号(P5964452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964452
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】プラスチック基板
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20160721BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   B32B27/34
   H01B5/14 A
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-549988(P2014-549988)
(86)(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公表番号】特表2015-508345(P2015-508345A)
(43)【公表日】2015年3月19日
(86)【国際出願番号】KR2012011459
(87)【国際公開番号】WO2013100557
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2014年6月26日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0142075
(32)【優先日】2011年12月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】314003797
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ハク−ギ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョ−ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チュ,チョル−ハ
【審査官】 細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−183949(JP,A)
【文献】 特開2011−175900(JP,A)
【文献】 特開2003−115221(JP,A)
【文献】 特開2008−231220(JP,A)
【文献】 特開平03−274256(JP,A)
【文献】 特開2005−187781(JP,A)
【文献】 特開2010−245044(JP,A)
【文献】 特開2007−234424(JP,A)
【文献】 特表2010−536981(JP,A)
【文献】 特開平04−008733(JP,A)
【文献】 特開2007−046054(JP,A)
【文献】 特開2005−294084(JP,A)
【文献】 特開2009−146747(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0317592(US,A1)
【文献】 特表2012−503299(JP,A)
【文献】 特表2011−526552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアンヒドリド類と芳香族ジカルボニル化合物とジアミン類との重合によるポリイミド系樹脂前駆体のイミド化物を含み、黄色度が5以下であり、UV分光計で透過度を測定したときに550nmでの透過度が80%以上を満足するポリイミド系フィルムと;
前記ポリイミド系フィルムの一面上に形成されたハードコート層と;
前記ポリイミドフィルムの残りの一面上に形成された透明電極層と;を含んでなることを特徴とする、プラスチック基板。
【請求項2】
前記ハードコート層はポリシラザンまたはシリカ、およびアクリル系樹脂またはポリウレタン系樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック基板。
【請求項3】
前記透明電極層はITO、IZO、Ag、およびAgナノワイヤーの中から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック基板。
【請求項4】
前記ポリイミド系フィルムは表面改質されたことを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック基板。
【請求項5】
前記表面改質はプラズマ処理またはコロナー処理によるものであることを特徴とする、請求項4に記載のプラスチック基板。
【請求項6】
前記ポリイミド系フィルムと前記透明電極層との間に形成された、酸化シリコンまたは窒化シリコンの中から選ばれた少なくとも1層の無機層をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック基板。
【請求項7】
前記透明電極層の少なくとも一面に形成された、1分子中に1つのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリレート化合物を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレートおよび1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む活性エネルギー線硬化型組成物の硬化層たる有機層をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック基板。
【請求項8】
前記ハードコート層上に形成された、1分子中に1つのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリレート化合物を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレートおよび1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む活性エネルギー線硬化型組成物の硬化層たる有機層をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック基板。
【請求項9】
前記ポリイミド系フィルムと前記透明電極層との間に形成された、ハードコート層をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック基板。
【請求項10】
前記ハードコート層は1〜50μmの厚さを有することを特徴とする、請求項1または9に記載のプラスチック基板。
【請求項11】
前記透明電極層は1〜100nmの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック基板。
【請求項12】
前記有機層は1〜10μmの厚さを有することを特徴とする、請求項7または8に記載のプラスチック基板。
【請求項13】
前記無機層は10〜100nmの厚さを有することを特徴とする、請求項6に記載のプラスチック基板。
【請求項14】
前記ポリイミド系フィルムは、
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物(TDA)、9,9−ビス(トリフルオロメチル)−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボキシルジアンヒドリド(6FCDA)および4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)(HBDA)の中から選ばれた少なくとも1種、並びにピロメリト酸二無水物(PMDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)およびオキシジフタル酸二無水物(ODPA)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジアンヒドリドに由来する単位構造と、
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−フェニル]プロパン(6HMDA)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2−TFDB)、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(3,3’−TFDB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(3−アミノフェニル)スルホン(3DDS)、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4DDS)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−133)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134)、2,2’−ビス[3(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(3−BDAF)、2,2’−ビス[4(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4−BDAF)、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(3,3’−6F)、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(4,4’−6F)およびオキシジアニリン(ODA)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジアミンに由来する単位構造と、
テレフタロイルクロリド(p-Terephthaloyl chloride、TPC)、テレフタル酸(Terephthalic acid)、イソフタロイルジクロリド(Iso-phthaloyl dichloride)および4,4’−ベンゾイルクロリド(4,4’-benzoyl chloride)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジカルボニル化合物に由来する単位構造
を含むポリイミド系樹脂を含むものであることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック基板。
【請求項15】
前記ポリイミド系フィルムは、厚さ50〜200μmを基準として熱機械分析法によって50〜250℃の範囲で測定した平均線膨張係数(CTE)が30.0ppm/℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック基板。
【請求項16】
透明電極層の厚さ100nmを基準とするとき、面抵抗が50Ω/sq.以下であることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック基板。
【請求項17】
ジアンヒドリド類と芳香族ジカルボニル化合物とジアミン類との重合によるポリイミド系樹脂前駆体のイミド化物を含み、黄色度が5以下であり、UV分光計で透過度を測定したときに550nmでの透過度が80%以上を満足するポリイミド系フィルム上に、ハードコート層を形成する段階と;
ポリイミド系フィルムの残りの一面上に透明電極層を形成する段階と;を含んでなり、
透明電極層を形成する段階は、ポリイミド系フィルムの一面に透明電極層を蒸着および熱処理する段階を含み、蒸着または熱処理工程が100〜250℃で行われることを特徴とする、プラスチック基板の製造方法。
【請求項18】
請求項1のプラスチック基板を含むタッチスクリーンパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック基板、およびこれを含むタッチスクリーンパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ディスプレー方式が従来のCRT(Cathode Ray Tube)方式から平板ディスプレー方式、例えばプラズマディスプレー(Plasma Display Panel、PDP)、液晶ディスプレー(Liquid Crystal Display、LCD)、有機EL(Organic Light Emitting Diodes、OLED)などへ転換されている。特に、このような平板ディスプレーをフレキシブルディスプレーとして実現することができるように、全世界的に研究が盛んに行われている。
【0003】
上述したような平板ディスプレーでは、基本的に基板の素材としてガラスを用いる。一般な平板ディスプレーでは、TFT(薄膜トランジスタ)を形成させるための条件として高温熱処理が求められるので、これに最適な素材としてガラス基板が使われているのである。
【0004】
ところが、ガラス基板は、基本的に非常に硬い特性を持つので、可撓性が劣っており、フレキシブルディスプレーの基板には適さないという問題点がある。
【0005】
このため、フレキシブルディスプレー基板の素材として、ガラス基板と比較して重さ、成形性、非破壊性、デザインなどに優れるうえ、特にロールツーロール(Roll-to-Roll)生産方式で生産できて製造コストが節減できるプラスチック素材を用いる技術に関する研究が盛んに行われているが、未だ商用化に向けたプラスチック素材のフレキシブルディスプレー基板が開発されていない実情である。
【0006】
一方、タッチスクリーンパネル(TSP)は、電子手帳、液晶ディスプレー(Liquid Crystal Display、LCD)、PDP(Plasma Display Panel)、EL(Electroluminescence)などの平板ディスプレー装置と、CRT(Cathode Ray Tube)の様々な利点を持つフラットパネルディスプレー(Flat-Panel-Display)の機能を有し、ユーザーがディスプレーを介して所望の情報を選択するのに使われる道具であって、抵抗膜方式(Resistive Type)、静電容量方式(Capacity Type)、抵抗膜−マルチタッチ方式(Resistive-Multi Type)などに大別される。
【0007】
抵抗膜方式(Resistive Type)は、ガラスまたはプラスチック板上に抵抗成分の物質を塗布し、その上にポリエチレンフィルムをかぶせた形となっており、両面が互いに接しないように一定の間隔で絶縁棒が設置されている。作動原理は、抵抗膜の両端から一定の電流を流すと、抵抗膜が抵抗成分を有する抵抗体のように作用するため、両端に電圧がかかるというものである。手指で接触すると、上側表面のポリエステルフィルムが撓んで両面が接することになる。よって、両面の抵抗成分のため抵抗の並列接続のような形になり、抵抗値の変化が起こる。この際、両端に流れる電流によって電圧の変化も起こるが、このような電圧の変化程度から接触した指の位置が確認できる。抵抗膜方式は表面の圧力による作動を利用するもので解像度が高く応答速度が最も速いが、1ポイントしか駆動できないため、破損の危険性が大きいという欠点を持っている。
【0008】
静電容量方式(Capacitive Type)は、熱処理の施されているガラス両面に透明な特殊伝導性金属(TAO)をコートすることにより作られる。スクリーンの四隅に電圧をかけると、高周波がセンサーの全面に広がることになり、この際、スクリーンに手指が接触すると、電子の流れが変化し、このような変化を感知して座標を把握する。静電容量方式は、多数のポイントを同時に押して駆動可能であり、解像度が高く耐久性が良いという利点を持つものの、反応速度が遅く装着が難しいという欠点を持っている。
【0009】
最後に、抵抗膜−マルチタッチ方式(Resistive-Multi-Touch Type)は、1ポイントしか駆動できない抵抗膜方式の最大欠点を補完して改善させることにより、静電容量方式と同様に実行可能に実現した方式のことをいう。
【0010】
また、タッチスクリーンパネル(TSP)は、信号増幅の問題、解像度の差、設計および加工技術の難易度だけでなく、それぞれのタッチスクリーンパネルの特徴的な光学特性、電気特性、機械特性、耐環境特性、入力特性、耐久性および経済性などを考慮して個々の電子製品に選択して用いられており、特に電子手帳、PDA、携帯用PCおよびモバイルフォン(携帯電話)などにおいては抵抗膜方式(Resistive Type)と静電容量方式(Capacitive Type)が広く用いられる。
【0011】
タッチスクリーン製造技術の今後の方向は、従来の複雑な工程を最大限減らしても十分な耐久性を持つようにタッチスクリーンパネルの厚さをさらに薄くする必要がある。その理由は、光透過率を高めてディスプレー輝度を低めても、既存の製品などの性能を実現するようにすることにより、消費電力を減少させてバッテリーの利用時間を増やすことができるようにするためである。
【0012】
一般な抵抗膜方式(Resistive Type)のタッチスクリーンが提案されたことがある。
【0013】
これを考察すると、液晶ディスプレーの一面に設けられるウィンドウフィルム(またはOverlay Film)と、ウィンドウフィルムの下面に付着し、液晶ディスプレーモジュールに情報を電気的に入力するために設けられる第1/第2ITOフィルムを含み、ウィンドウフィルムは第1ITOフィルムを保護するために備えられるものである。これは一般なPET(Poly Ethylene Terephthalate)フィルムで製作され、第1ITOフィルムはOCA(Optical Clear Adhesive)によってウィンドウフィルム(またはOverlay Film)と接着される。第1ITOフィルムおよび第2ITOフィルムは、それぞれ、銀を用いた第1/第2電極層の縁部(Edge)にプリントされており、第1/第2電極層間には絶縁のために両面テープが付着し、Dot Spacerによって一定の間隔で離れて、手指またはタッチペンなどを用いた外部からの圧力(タッチ)印加の際に電気的に相互接続されることにより、正確なタッチ位置を感知することになる。
【0014】
このような場合、ウィンドウフィルム101と第1ITOフィルムとの間に光透明接着剤(Optical Clear Adhesive、OCA)を用いるラミネート工程によって、光透過率が低下するうえ、ウィンドウフィルムを配置し、OCAによって第1ITOフィルムを付着させる別個の工程を行わなければならないので、工程処理が複雑であり、工程費用が上昇するという問題点がある。
【0015】
また、この技術は、ITOフィルムの形成されているITO膜をレーザーウェットエッチングによってパターニングするので、ウィンドウフィルム(或いはPETフィルム)の所望の領域にITOを選択的にコートすることができない。
【0016】
一般に、タッチスクリーン(Touch Screen)の製造において、透明基板としてはPET(polyethylene terephthalate)フィルムを最も多く使用する。特に、PETフィルムは、費用が低廉であるという利点はあるが、130℃以上で変形を起こすほど熱に弱いという不利益がある。
【0017】
よって、PETフィルムにITO(Indium Tin Oxide)薄膜が蒸着された状態で後続の熱処理工程を行うと、PETフィルムが膨張または収縮することにより、ITO薄膜に浮き上がりまたは割れ(Crack)が発生する。上述したような不良現象を防止するために、最近、1次工程として透明基板を予め高温に長時間晒した後、後続の工程を行う方法が採用されている。ところが、このような前処理工程は、結果的にタッチスクリーン製造時間の遅延につながって生産率を低下させるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、光透過度に優れるうえ、高硬度特性、ITO工程性および柔軟性を満たすプラスチック基板を提供しようとする。
【0019】
本発明は、ウィンドウフィルムと電極フィルムの機能を共に行うことが可能なプラスチック基板を提供しようとする。
【0020】
本発明は、このようなプラスチック基板を含むことにより、積層されるフィルムの数を減らしてより薄膜化が可能となったタッチスクリーンパネルを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るプラスチック基板は、ジアンヒドリド類とジアミン類との重合、またはジアンヒドリド類と芳香族ジカルボニル化合物とジアミン類との重合によるポリイミド系樹脂前駆体のイミド化物を含み、黄色度が5以下であり、UV分光計で透過度を測定したときに550nmでの透過度が80%以上を満足するポリイミド系フィルムと;前記ポリイミド系フィルムの一面上に形成されたハードコート層と;ポリイミドフィルムの残りの一面上に形成された透明電極層と;を含んでなる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、ハードコート層は、ポリシラザンまたはシリカ、およびアクリル系樹脂またはポリウレタン系樹脂を含む有無機ハイブリッド系のハードコート組成物から形成されたものであってもよい。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、透明電極層は、ITO、IZO、Ag、およびAgナノワイヤーの中から選ばれた少なくとも1種を含むものであってもよい。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、ポリイミド系フィルムは、表面改質されたものであってもよく、表面改質の一例としてはプラズマ処理またはコロナー処理が挙げられる。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、ポリイミド系フィルムと透明電極層との間に形成された、酸化シリコンまたは窒化シリコンの中から選ばれた少なくとも1種の無機層をさらに含んでもよい。
【0026】
また、本発明の一実施形態によれば、透明電極層の少なくとも一面に、1分子中に1つのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリレート化合物を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレートおよび1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物の硬化層たる有機層をさらに含んでもよい。
【0027】
このような有機層はハードコート層上に形成されてもよい。
【0028】
上述したハードコート層はポリイミド系フィルムと透明電極層との間に形成されてもよい。
【0029】
本発明の好適な一実施形態によれば、ハードコート層は1〜50μmの厚さを有してもよい。
【0030】
本発明の好適な一実施形態によれば、透明電極層は1〜100nmの厚さを有してもよい。
【0031】
本発明の好適な一実施形態によれば、前記無機層は10〜100nmの厚さを有してもよい。
【0032】
本発明の好適な一実施形態において、前記物性を満足するポリイミド系フィルムは、
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物(TDA)、9,9−ビス(トリフルオロメチル)−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボキシルジアンヒドリド(6FCDA)および4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)(HBDA)の中から選ばれた少なくとも1種、並びにピロメリト酸二無水物(PMDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)およびオキシジフタル酸二無水物(ODPA)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジアンヒドリドに由来する単位構造と、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−フェニル]プロパン(6HMDA)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2−TFDB)、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(3,3’−TFDB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(3−アミノフェニル)スルホン(3DDS)、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4DDS)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−133)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134)、2,2’−ビス[3(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(3−BDAF)、2,2’−ビス[4(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4−BDAF)、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(3,3’−6F)、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(4,4’−6F)およびオキシジアニリン(ODA)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジアミンに由来する単位構造とを含むポリイミド系樹脂、または、
前記芳香族ジアンヒドリド由来の単位構造とテレフタロイルクロリド(p-Terephthaloyl chloride、TPC)、テレフタル酸(Terephthalic acid)、イソフタロイルジクロリド(Iso-phthaloyl dichloride)および4,4’−ベンゾイルクロリド(4,4’-benzoyl chloride)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジカルボニル化合物に由来する単位構造と前記芳香族ジアミン由来の単位構造とを含むポリイミド系樹脂を含むものであってもよい。
【0033】
本発明の好適な一実施形態に係るポリイミド系フィルムは、厚さ50〜200μmを基準として熱機械分析法によって50〜250℃の範囲で測定した平均線膨張係数(CTE)が30.0ppm/℃以下であってもよい。
【0034】
本発明の構造を持つプラスチック基板は、透明電極層の厚さ100nmを基準とするとき、面抵抗が50Ω/sq.以下であって、低抵抗の実現が可能である。
【0035】
本発明の他の実施形態では、このようなジアンヒドリド類とジアミン類との重合、またはジアンヒドリド類と芳香族ジカルボニル化合物とジアミン類との重合によるポリイミド系樹脂前駆体のイミド化物を含み、黄色度が5以下であり、UV分光計で透過度を測定したときに550nmでの透過度が80%以上を満足するポリイミド系フィルム上に、ハードコート層を形成する段階と;ポリイミド系フィルムの残りの一面上に透明電極層を形成する段階とを含んでなり、透明電極層を形成する段階は、ポリイミド系フィルムの一面に透明電極層を蒸着および熱処理する段階を含み、蒸着または熱処理工程が100〜250℃で行われることを特徴とする、プラスチック基板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、透明性を確保し、ITO工程中にも黄変などの変形がなく、薄い厚さでも高硬度特性を有し、低い面抵抗の実現が可能であって、例えばタッチスクリーンパネルへの適用の際に構造の簡素化を実現することが可能なプラスチック基板を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に係るプラスチック基板は、ジアンヒドリド類とジアミン類との重合、またはジアンヒドリド類と芳香族ジカルボニル化合物とジアミン類との重合によるポリイミド系樹脂前駆体のイミド化物を含み、黄色度が5以下であり、UV分光計で透過度を測定するときに550nmでの透過度が80%以上を満足するポリイミド系フィルムと;前記ポリイミド系フィルムの一面上に形成されたハードコート層と;ポリイミドフィルムの残りの一面上に形成された透明電極層とを含んでなる。このようなハードコート層は、プラスチック基板の高硬度のための層であり、これによりタッチスクリーンパネル形成の際にウィンドウフィルムを省略することができる。また、このようなハードコート層は、後述する有機層と共に耐化学性を向上させることができるが、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、硫酸マグネシウム、水酸化カリウム、N−メチル−2−ピロリドンおよびメチルエチルケトンなどの有機溶媒への浸漬の後に肉眼的変化がないほど耐化学性を向上させることができる。
【0038】
本発明のフィルム厚さ50〜200μmを基準としてUV分光計で透過度を測定したとき、550nmでの透過度が88%以上、440nmでの透過度が70%以上であることが好ましい。
【0039】
前記黄色度と透過度を満足する本発明のポリイミドフィルムは、既存のポリイミドフィルムが有する黄色により使用が制限された用途、例えば光学用ウィンドウや透過型ディスプレーなどの透明性が要求される分野への使用が可能であり、また、フレキシブルディスプレー基板(Flexible Display substrate)用としての使用が可能である。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、ハードコート層は、ポリシラザンまたはシリカ、およびアクリル系樹脂またはポリウレタン系樹脂を含む有無機ハイブリッド系のハードコート組成物から形成されたものであってもよい。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、透明電極層は、ITO、IZO、Ag、およびAgナノワイヤーの中から選ばれた少なくとも1種を含むものであってもよい。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、ポリイミド系フィルムは表面改質されたものであってもよく、表面改質はプラズマ処理またはコロナー処理によるものであってもよい。このような表面改質によって、本発明で例示している様々な層との表面接着力を向上させることができ、これにより光透過度、表面硬度、透湿特性もさらに向上させることができる。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、ポリイミド系フィルムと透明電極層との間に形成された、酸化シリコンまたは窒化シリコンの中から選ばれた少なくとも1種の無機層をさらに含んでもよい。
【0044】
また、本発明の一実施形態によれば、透明電極層の少なくとも一面に、1分子中に1つのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリレート化合物を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレートおよび1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む活性エネルギー線硬化型組成物の硬化層たる有機層をさらに含んでもよい。
【0045】
このような有機層はハードコート層上に形成されてもよい。
【0046】
上述したハードコート層は、ポリイミド系フィルムと透明電極層との間に形成されてもよい。
【0047】
本発明の好適な一実施形態によれば、ハードコート層は1〜50μmの厚さを有してもよい。
【0048】
本発明の好適な一実施形態によれば、透明電極層は1〜100nmの厚さを有してもよい。
【0049】
本発明の好適な一実施形態によれば、無機層は10〜100nmの厚さを有してもよい。
【0050】
本発明の好適な一実施形態において、前記物性を満足するポリイミド系フィルムは、例えば、
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物(TDA)、9,9−ビス(トリフルオロメチル)−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボキシルジアンヒドリド(6FCDA)および4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)(HBDA)の中から選ばれた少なくとも1種、並びにピロメリト酸二無水物(PMDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)およびオキシジフタル酸二無水物(ODPA)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジアンヒドリドに由来する単位構造と、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−フェニル]プロパン(6HMDA)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2−TFDB)、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(3,3’−TFDB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(3−アミノフェニル)スルホン(3DDS)、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4DDS)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−133)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134)、2,2’−ビス[3(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(3−BDAF)、2,2’−ビス[4(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4−BDAF)、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(3,3’−6F)、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(4,4’−6F)およびオキシジアニリン(ODA)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジアミンに由来する単位構造とを含むポリイミド系樹脂、または、
前記芳香族ジアンヒドリド由来の単位構造とテレフタロイルクロリド(p-Terephthaloyl chloride、TPC)、テレフタル酸(Terephthalic acid)、イソフタロイルジクロリド(Iso-phthaloyl dichloride)および4,4’−ベンゾイルクロリド(4,4’-benzoyl chloride)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジカルボニル化合物に由来する単位構造と前記芳香族ジアミン由来の単位構造とを含むポリイミド系樹脂を含むものであってもよい。
【0051】
本発明の好適な一実施形態に係るポリイミド系フィルムは、厚さ50〜200μmを基準として熱機械分析法によって50〜250℃の範囲で測定した平均線膨張係数(CTE)が30.0ppm/℃以下であってもよい。
【0052】
本発明のプラスチック基板は、カラーフィルターを形成する基板、OLED TFT基板、PV用基板および上部電極層基板などに使用できるが、この際、ポリイミド系フィルムは、フィルム上に透明電極層を形成する工程、いわゆるITO工程を経なければならないので、ポリイミド系フィルムの線膨張係数が高い場合には、高温のITO工程で線膨張係数だけ膨張した後、常温冷却の際にさらに収縮し、この際、基板と電極材料の膨張、収縮程度に差が大きければ、膜に損傷が発生し、素子の能力が低下するので、基板の線膨張係数が低いほど好ましく、本発明のフレキシブルプラスチック基板は、このような点を考慮して、フィルム厚さ50〜200μmを基準としてTMA法(熱機械分析法)によって50〜250℃で測定した平均線膨張係数(CTE)が30.0ppm/℃以下であることが好ましい。
【0053】
本発明の構造を持つプラスチック基板は、透明電極層の厚さ100nmを基準とするとき、面抵抗が50Ω/sq.以下であって、低抵抗の実現が可能である。
【0054】
本発明の他の一実施形態では、このようなジアンヒドリド類とジアミン類との重合、またはジアンヒドリド類と芳香族ジカルボニル化合物とジアミン類との重合によるポリイミド系樹脂前駆体のイミド化物を含み、黄色度が5以下であり、UV分光計で透過度を測定するときに550nmでの透過度が80%以上を満足するポリイミド系フィルム上に、ハードコート層を形成する段階と;ポリイミド系フィルムの残りの一面上に透明電極層を形成する段階とを含んでなり、透明電極層を形成する段階は、ポリイミド系フィルムの一面に透明電極層を蒸着および熱処理する段階を含み、蒸着または熱処理工程が100〜250℃で行われることを特徴とする、プラスチック基板の製造方法を提供する。
【0055】
このような構造的特徴を満足するプラスチック基板によれば、透明電極層形成の工程を高温の下で行うことができることにより、さらに低抵抗の基板を提供することができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
【0057】
<実施例1〜3>
反応器として攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた100mLの三口丸底フラスコに窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)28.78gを入れ、反応器の温度を0℃に降温した後、2,2−TFDB3.2023g(0.01mol)を溶解させ、この溶液を0℃に維持した。ここにBPDA0.88266g(0.003mol)を添加し、1時間攪拌してBPDAを完全に溶解させた後、6FDA3.10975g(0.007mol)を添加して完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であった。その後、溶液を常温に放置して8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度2100poiseのポリアミド酸溶液を得た。
【0058】
前記ポリアミド酸溶液に化学硬化剤として無水酢酸(Acetic Anhydride、Samchun社製)およびピリジン(Pyridine、Samchun社製)をそれぞれ2〜4当量添加した後、ポリアミド酸溶液を20〜180℃の温度内で10℃/minの速度で昇温させながら1〜10時間加熱してポリアミド酸溶液をイミド化した後、イミド化された溶液30gを水またはアルコール(メタノール、エタノール)などの非極性溶媒300gに投入して沈殿させ、沈殿した固形物を濾過および粉砕工程を経て微細粉末化した後、80〜100℃の真空乾燥オーブンで6時間乾燥させて約8gのポリイミド樹脂固形分粉末を得た。得られたポリイミド樹脂固形分を重合溶媒たるDMAcまたはDMF溶剤32gに溶解させて20wt%のポリイミド溶液を得た。これを用いて、製膜過程によって40〜400℃の範囲で温度を10℃/minの速度で昇温させながら1〜8時間加熱して厚さ100μmのポリイミドフィルムを得た。
【0059】
得られたフィルムを基材として、フィルムの上部に、ポリシラザンまたはシリカ、およびアクリル系樹脂またはウレタン系樹脂を含む有無機ハイブリッド系のハードコート組成物を用いてハードコート層を形成した。
【0060】
次に、ポリイミドフィルムの他の一面にITO電極層をスパッタ(sputter)を用いて蒸着し、RTA(Rapid Thermal Annealing)で熱処理して形成した。
【0061】
実施例1〜3は、ハードコート層の厚さ、ITO電極層の厚さおよびITO工程の温度を互いに異ならせた一例であって、これを要約して表1として示した。
【0062】
<実施例4>
反応器として攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた100mLの三口丸底フラスコに窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)28.78gを入れ、反応器の温度を0℃に降温した後、2,2−TFDB3.2023g(0.01mol)を溶解させ、この溶液を0℃に維持した。ここにBPDA0.88266g(0.003mol)を添加し、1時間攪拌してBPDAを完全に溶解させた後、6FDA1.33275g(0.003mol)を添加して完全に溶解させた。そして、TPC0.8121g(0.004mol)を添加して、固形分濃度15重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0063】
こうして得られたポリアミド酸溶液を用いて実施例1と同様の方法でプラスチック基板フィルムを製造した。
【0064】
具体的なポリイミドフィルムの厚さ、ハードコート層の厚さおよびITO電極層の厚さなどは表1に示した。
【0065】
<実施例5>
実施例1におけるポリアミド酸溶液の製造の際に組成を6FDAの代わりに6FCDA(9,9−ビス(トリフルオロメチル)−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボキシルジアンヒドリド)を用いてポリアミド酸溶液を製造し、これから実施例1と同様の方法でプラスチック基板フィルムを製造した。
【0066】
具体的なポリイミドフィルムの厚さ、ハードコート層の厚さおよびITO電極層の厚さなどは表1に示した。
【0067】
<比較例1>
反応器として攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた100mLの三口丸底フラスコに窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)28.78gを入れ、反応器の温度を0℃に降温した後、2,2−TFDB3.2023g(0.01mol)を溶解させ、この溶液を0℃に維持した。ここにBPDA0.88266g(0.003mol)を添加し、1時間攪拌してBPDAを完全に溶解させた後、6FDA3.10975g(0.007mol)を添加して完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であった。その後、溶液を常温に放置して8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度2100poiseのポリアミド酸溶液を得た。
【0068】
前記ポリアミド酸溶液に化学硬化剤として無水酢酸(Acetic Anhydride、Acetic oxide、Samchun社製)およびピリジン(Pyridine、Samchun社製)をそれぞれ2〜4当量添加した後、ポリアミド酸溶液を20〜180℃の温度内で10℃/minの速度で昇温させながら1〜10時間加熱してポリアミド酸溶液をイミド化した後、イミド化された溶液30gを水またはアルコール(メタノール、エタノール)などの非極性溶媒300gに投入して沈殿させ、沈殿した固形物を濾過および粉砕工程を経て微細粉末化した後、80〜100℃の真空乾燥オーブンで6時間乾燥させて約8gのポリイミド樹脂固形分粉末を得た。得られたポリイミド樹脂固形分を重合溶媒たるDMAcまたはDMF溶剤32gに溶解させて20wt%のポリイミド溶液を得た。これを用いて、製膜過程によって40〜400℃の温度範囲で温度を10℃/minの速度で昇温させながら1〜8時間加熱して厚さ100μmのポリイミドフィルムを得た。
【0069】
<比較例2>
ハードコート層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、プラスチック基板を製造した。
【0070】
<比較例3>
既存のタッチスクリーンパネルの基板フィルムとして用いられるPETフィルム。
【0071】
前述の実施例および比較例で製造されたプラスチック基板フィルムの物性を次のとおり測定して下記表1に示した。
【0072】
(1)線膨張係数(CTE)
製造されたポリイミドフィルムに対して、TMA(TA Instrument社製、Q400)を用いてTMA法によって50〜250℃での線膨張係数を測定した。
【0073】
試片サイズ:20mm×4mm
温度:常温(30℃)〜250℃まで昇温、10℃/minの昇温速度
荷重(Load):10g(試片に吊るす重りの重量)
(2)黄色度
製造されたポリイミドフィルムに対してUV分光計(Varian社製、Cary100)を用いてASTM E313規格で黄色度を測定した。
【0074】
(3)透過度
製造されたポリイミドフィルムに対してUV分光計(Varian社製、Cary100)を用いて可視光線透過度を測定した。
【0075】
(4)表面硬度
製造されたフィルムの表面硬度を鉛筆硬度計を用いてASTM D3363規格に従って測定した。1Kg荷重および45度傾斜の条件で鉛筆の芯を前記フィルムの表面に押し付けて動かすことにより測定した。
【0076】
(5)面抵抗
表面抵抗測定は、低抵抗計(CMT−SR 2000N(AIT(Advanced Instrument Technology)社製、4−Point Probe System、測定範囲:10×10-3〜10×10)を用いて10回測定し、その平均値を求めた。
【0077】
【表1】
上記表1より、実施例1〜3のポリイミド系フィルム層、ハードコート層および透明電極層を含むプラスチック基板の場合は透明性を保ち且つ表面硬度に優れることが分かる。また、ITO工程温度250℃までも安定している。すなわち、このような程度の高温でも黄変において良好な結果を示した。これに対し、既存の透明電極基板のプラスチック基材として有用なPETフィルムの場合は、100℃程度の工程温度で黄変を起こすうえ、電極基板への適用の際に面抵抗値があまり高いという問題点があることが分かる。
【0078】
面抵抗の電極層の厚さまたは電極層形成時の工程温度に影響されるが、実施例では、同厚さの電極層の形成の際に工程温度が高くなるにつれて面抵抗は益々低くなる結果を示した。このような結果および比較例による結果からみて、本発明のプラスチック基板によれば、透明電極層形成の工程を高温の下で行うことができることにより、さらに低い面抵抗の実現が可能となることを確認することができる。