特許第5964457号(P5964457)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5964457家具のフラップ扉のためのアクチュエータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964457
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】家具のフラップ扉のためのアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   E05F 1/10 20060101AFI20160721BHJP
   E05D 15/40 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   E05F1/10
   E05D15/40
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-553576(P2014-553576)
(86)(22)【出願日】2012年11月8日
(65)【公表番号】特表2015-508851(P2015-508851A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】AT2012000284
(87)【国際公開番号】WO2013113047
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2014年9月18日
(31)【優先権主張番号】A123/2012
(32)【優先日】2012年1月30日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルム ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルドリッヒ,アルミン
【審査官】 佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−48970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00− 13/04、
17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具(1)のフラップ扉(3)のためのアクチュエータ(4)であって、当該アクチュエータは、
前記フラップ扉(3)を移動させるための閉位置と開位置との間で旋回可能に取り付けられた少なくとも一つの作動アーム(6)と、
前記作動アーム(6)に作用するバネ装置(9)と、
前記バネ装置(9)の作用力を前記作動アーム(6)に伝達するための伝達機構(11)と、を含んでおり、
前記伝達機構(11)を少なくとも2つの作動位置間にて移動可能にするシフト装置(26)が提供されており、
第1の作動位置では、前記バネ装置(9)は、前記閉位置の直前の開位置において、前記閉位置の方向に作用する閉作用力で前記作動アーム(6)に作用し、
第2の作動位置では、前記バネ装置(9)は、前記作動アーム(6)の前記直前の開位置において、前記開位置の方向に作用する作用力を及ぼし、
前記伝達機構(11)は、ヒンジ軸(19)によって互いに接続された少なくとも2つのレバー(18、30)を有しており、
前記ヒンジ軸(19)の位置は、前記シフト装置(26)によって移動可能である、
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記作動アーム(6)の前記直前の開位置は、その閉位置から開始する2°から8°の範囲の角度であり、好適には5°である、
ことを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ヒンジ軸(19)の位置は、前記第1の作動位置に対応する第1の位置と、前記第2の作動位置に対応する少なくとも一つの第2の位置との間で移動可能である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記レバー(18)は、好適には移動する軸部材(17)を有しており、
前記レバー(30)は、収容体に対して好適には固定された軸部材(20)を有しており、
前記軸部材(17)と前記軸部材(20)との間の概念的な接続線に対応する作用力線(28)に対する前記ヒンジ軸(19)の位置は、前記シフト装置(26)によって、前記作用力線(28)に向かうように、および、前記作用力線(28)から離れるように移動可能である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記ヒンジ軸(19)の位置は、前記シフト装置(26)によって連続的に移動可能であるか、または、所定の位置で位置決め可能である、
ことを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記シフト装置(26)は、調節ネジ(27)を有しており、前記ヒンジ軸(19)の位置は前記調節ネジ(27)によって調節および/または固定できる、
ことを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記レバー(30)は、好適にはスロット形状のガイド(29)を有しており、前記調節ネジ(27)は前記ガイド(29)に沿って位置決めできる、
ことを特徴とする請求項に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記ヒンジ軸(19)には、旋回部(36)によって前記レバー(30)にヒンジ式に接続されたピン(31)が取り付けられている、
ことを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記レバー(30)は、ガイドトラック(38)を有しており、前記ピン(31)は前記ガイドトラック(38)に沿って、または、前記ガイドトラック(38)内で制限的に移動可能に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記伝達機構(11)は、前記シフト装置(26)によって、修正された第2の開位置に移動可能であり、前記修正された第2の開位置において、前記作動アーム(6)が、前記バネ装置(9)によって、前記第1の作動モードよりも小さい閉作用力で、閉位置、または、閉位置付近で作用を受ける、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項11】
前記作動アーム(6)または前記作動アーム(6)に接続された前記フラップ扉(3)を閉位置に保持させる保持装置(7)が提供されている、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項12】
前記フラップ扉(3)の閉動作を制動する制動装置(35)、好適には流体ダンパが提供されている、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項13】
家具枠体(2)と、
前記家具枠体(2)に対して移動可能に取り付けられており、請求項1から12のいずれか1項に記載のアクチュエータ(4)によって移動可能に取り付けられているフラップ扉(3)と、
を備えた家具(1)。
【請求項14】
前記フラップ扉(3)は、前記家具枠体(2)に対して水平に延在する旋回軸周囲で上方に移動可能に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項13記載の家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具のフラップ扉のためのアクチュエータに関する。このアクチュエータは、フラップ扉を移動させるために閉位置と開位置との間で旋回可能に取り付けられた少なくとも一つの作動アームと、作動アームに作用するバネ装置と、バネ装置の作用力を作動アームに伝達するための伝達機構と、を含んでいる。
【0002】
さらに本発明は、家具枠体と、家具枠体に対して移動可能に取り付けられており、解説するようなアクチュエータによって移動可能に取り付けられたフラップ扉と、を備えた家具に関する。
【背景技術】
【0003】
DE10203269A1は、家具フラップ扉のための装着装置について解説しており、旋回可能に取り付けられた作動アームは、ガス圧スプリングの形態のバネ装置によって作動される。この作動アームまたはそれに接続されたフラップ扉は、フラップ扉が閉状態に保持され、意図しない開動作が防止されるよう、閉作用力を伴うガス圧スプリングの作用力によって閉位置に保持される。死点位置の通過後、フラップ扉が開位置の所定位置に保持されるよう、ガス圧スプリングはフラップ扉に上方保持トルクを及ぼす。ここでの欠点は、フラップ扉が開けられるとき、ユーザまたはおそらく提供されているであろう排出装置が、ガス圧スプリングによって及ぼされる閉作用力に打ち勝つために相当な作用力を適用しなければならないことである。さらに、その装着装置は、閉動作の最終領域において作動アームに閉作用力を常に及ぼすように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE10203269A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前述の欠点を回避しつつ、本明細書の当初部分で解説したようなアクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴によって達成される。本発明の別な有利な形態は、従属請求項において述べられている。
【0007】
したがって、伝達機構を少なくとも2つの作動位置間にて移動可能にするシフト装置が提供され、第1の作動位置では、バネ装置は、閉位置の直前の開位置において、閉位置の方向に作用する閉作用力で、作動アームに作用し、第2の作動位置では、バネ装置は、作動アームの前記の直前の開位置において、開位置の方向に作用する作用力を及ぼす。
【0008】
前述の作動アームの“直前の開位置”は、その閉位置から開始する2°から8°の範囲の角度でよく、好適にはその角度は5°である。
【0009】
換言すれば、伝達機構は、シフト装置の人手での操作によって自由に選択できる少なくとも2つの作動位置を有している。第1の作動位置では、作動アームは、閉位置または閉位置付近で、好適には0°から8°の作動アームの開角度で、バネ装置による閉作用力で作動され、それにより、作動アームまたは作動アームに接続されたフラップ扉は、閉位置で拘束される。
【0010】
対照的に、第2の作動位置では、作動アームは、閉位置または閉位置付近で、バネ装置による開作用力で作動され、それにより、作動アームまたはそれに接続されたフラップ扉が、作動アームの閉位置から開始して開位置の方向に既に移動しているか、または、おそらく僅かな閉作用力に打ち勝った後に、開位置の方向に移動される。したがって、ユーザは、フラップ扉を開けるために作用力を適用する必要がないか、ほとんど適用する必要がなく、作動アームまたはフラップ扉の開動作はバネ装置によって補助されている。この作動位置は、特に、タッチラッチ機能を有する排出装置が閉端位置からの家具フラップ扉の排出のために配置されているとき有利であり、排出装置がフラップ扉を開けるときにバネ装置からの僅かな作用力のみに打ち勝たなければならない。
【0011】
したがって、シフト装置は、それぞれの使用のために必要である特定のアクチュエータを必要とせず、異なる作動モードまたは使用のために一つの同じアクチュエータを利用できるようにする。例えば、このアクチュエータは、標準の利用(フラップ扉を閉端位置に引き戻す)、および、タッチラッチ利用(フラップ扉を閉端位置から排出させる)のためにも等しく利用できる。伝達機構は、作動アームが閉位置または閉位置付近(0°から8°の開角度範囲)で、バネ装置からの異なる付勢力によって作動される、少なくとも2つの作動位置間において、シフト装置によって移動可能である。
【0012】
この点で、
第1の作動位置において、作動アームは、閉位置または閉位置付近でバネ装置による閉作用力で作動され、
第2の作動位置において、作動アームは、閉位置または閉位置付近でバネ装置による開位置の方向への作用力で作動され、
修正された第2の作動位置において、作動アームは、第1の作動モードよりも小さい閉作用力で、バネ装置によって、閉位置または閉位置付近で作動される。
【0013】
作動アームが、閉位置または閉位置付近で開作用力によって作動される作動位置では、閉位置にて(すなわち家具枠体に対する位置にて)作動アームまたはフラップ扉を保持する保持装置が提供され、それにより、作動アームまたはこれに接続されたフラップ扉の意図しない開動作が防止される
【0014】
本発明のさらなる詳細および利点については、図面に示す実施例によって解説する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、家具の斜視図であり、フラップ扉はアクチュエータによって家具枠体に対して上方に移動可能に取り付けられている。
図2図2は、アクチュエータの1実施例の斜視図である。
図3a図3aは、異なる作動位置における作動アームの側面図である。
図3b図3bは、異なる作動位置における作動アームの側面図である。
図4a図4aは、アクチュエータの斜視図である。
図4b図4bは、異なる位置でのシフト装置の詳細図である。
図4c図4cは、異なる位置でのシフト装置の詳細図である。
図5a図5aは、組み立てられた状態のアクチュエータのシフト装置を図示している。
図5b図5bは、分解された状態のアクチュエータのシフト装置を図示している。
図6図6は、作動アームの作動角度に応じた多様な作動位置におけるバネ作用力に関する曲線のグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、家具枠体2に両側にて固定されたアクチュエータ4、40によって移動可能に取り付けられたフラップ扉3を備えた家具1を示している。アクチュエータ4、40は、水平軸周りで旋回可能に取り付けられたフラップ扉3を移動させる作動アーム6、60をそれぞれ有しており、それにより、フラップ扉3は、水平に延びる旋回軸周囲で家具枠体2に対して上方に移動可能に取り付けられる。アクチュエータ4は、家具枠体2への取り付けのための収容体5を有している。フラップ扉3の意図しない開動作が防止されるよう、作動アーム6、60の閉位置または閉位置付近にあるアクチュエータ4、40が、作動アーム6、60に開作用力を及ぼす作動位置を提供できる保持装置7が概略的に示されている。
【0017】
この目的のため、保持装置7は少なくとも2つの部材を含むことができ、第1の部材は家具枠体2に配置されており、第2の部材はフラップ扉3に配置されており、これら2つの部材は、フラップ扉3の閉位置において、互いに対して磁気吸引力を作用させる。この構造において、保持装置7は作用力保存手段によって作動される排出要素を有することができ、それによってフラップ扉3は、作用力保存手段のロック解除(ここでは補助的駆動力)が実行された後に開位置へと移動できる。保持装置7の作用力保存手段は、保持装置7の磁気保持力に打ち勝ち、よってフラップ扉3はアクチュエータ4、40のバネ装置(図2)の作用力によって開位置へとさらに移動できる。
【0018】
代わりに、または、追加的に、保持装置7はそこに提供された反転ループまたはハート型曲線部を備えた収容体を有していてもよく、フラップ扉3に配置された制御ピンは、その反転ループまたはハート型曲線部に沿って移動可能にガイドされ、解除可能なロック位置にガイドされる。そのロック位置は、フラップ扉3に手動で押し込み作用力および/または引張作用力を加えることによって再度解除でき、よってフラップ扉3はアクチュエータ(4、40)のバネ装置(図2)の作用力によって開位置へと移動できる。そのような解除可能なロック構造は「タッチラッチ(Touch−Latch)装置」に関して既に知られており、さらに詳説する必要なはい。図示の実施例では、保持装置7は家具枠体2のアクチュエータ(4、40)から離れて配置されているが、アクチュエータ(4、40)の一部としての機能的装置の形態でもよい。
【0019】
図2は、アクチュエータ4の可能な1実施例の斜視図である。この図では、作動アーム6は閉位置にあり、移動し、かつ、水平に延伸する軸部材8の周囲で旋回可能に取り付けられている。アクチュエータ4は、一方が固定バネ基部10に支持され、他方が伝達機構11によって作動アーム6に作用するバネ装置9を有している。バネ装置9は少なくとも1つのコイルバネ(好適には圧縮バネ)を有している。図示の実施例では、伝達機構11は、固定軸部材13周囲で旋回可能に取り付けられた二重アーム偏位レバー12を含んでいる。偏位レバー12の端部では、バネ装置9が旋回取付点14と係合し、バネ装置9の旋回取付点14は偏位レバー12の軸部材13に対して螺状スピンドル16に沿って調節装置15によって移動可能であり、作動アーム6に作用するバネ装置9の作用力はフラップ扉3の選択的な重量補償のために調節可能である。レバー18は、移動する軸部材17によって偏位レバー12の他方の端部にヒンジ式に接続されており、さらにヒンジ軸19により別なレバー30に接続されている。レバー30は固定軸部材20の周囲で旋回可能に取り付けられている。主レバー21は、レバー30に、移動する軸部材22により接続されており、移動する軸部材23によりヒンジレバー24にも接続されている。ヒンジレバー24は、固定軸部材25の周囲で旋回可能である。主レバー21は、移動旋回軸部材8により作動アーム6に接続されている。
【0020】
関連するシフト装置26は、2つのレバー18と30との間の回転軸を確立するヒンジ軸19の位置を移動可能にする調節ネジ27を有しており、よって伝達機構11の異なる作動位置が選択できる。アクチュエータ4の動的特性は、以降の図面においても解説および示すように、シフト装置26によって創出される、2つの軸部材(17、20)に対するヒンジ軸19の位置の移動によって変更できる。
【0021】
図3aは、アクチュエータ4の側面図であり、シフト装置26は理解を容易にするために示されていない。ヒンジ軸19の位置は伝達機構11の第1の作動位置に対応し、よってバネ装置9は、閉位置および所定の直前の開位置において閉作用力で作動アーム6に作用する。伝達機構11の動的特性は、軸部材17、ヒンジ軸19および軸部材20の位置によって決定される。この状況を解説するため、作用力線28が、移動する軸部材17と、収容体に対して固定された軸部材20との間で破線により示されており、この点で、図3aでは、移動可能に取り付けられたヒンジ軸19は作用力線28から比較的に大きく離れている。第1の作動位置において、閉位置および閉位置の直前の開位置にある作動アーム6は、閉位置の方向へバネ装置9の閉作用力を受ける。ヒンジ軸19が作用力線28を越えて移動すると、バネ装置9は作動アーム6に開位置の方向への作用力を及ぼす。アクチュエータ4は、フラップ扉3の閉動作を制動する流体ダンパ(好適にはピストンシリンダユニット)の形態の制動装置35も有している。
【0022】
一方、図3bは、伝達機構11の第2の作動位置に対応するヒンジ軸19の位置を示しており、よってバネ装置9は作動アーム6の前述の直前の開位置において作動アーム6に開位置の方向に作用力を及ぼす。図3aの場合と異なり、移動可能なヒンジ軸19の位置は、作用力線28にかなり接近した作動アーム6の閉位置に配置されている。確かに、図示した作動アーム6の完全閉位置において、開位置の方向への作動アーム6の作動直後に、僅かな閉作用力がバネ装置によって作動アーム6にまだ及んでいるため、ヒンジ軸19は作用力線28を越えて直ちに移動される。前述の作動アーム6の直前の開位置(例えば5°以上の開角度)では、作動アーム6はバネ装置9によって開位置の方向に既に付勢されている。ヒンジ軸19が図3aおよび図3bに示される作用力線28よりも下に来るよう、ヒンジ軸19の調節が行われるなら、作動アーム6は閉位置から開始する開動作を既に有している。しかしながら、この場合には、フラップ扉3が家具枠体2に対して閉端位置に十分に安定して保持されるよう、保持装置7(図1)が提供されるであろう。よって、軸部材17と20との間の概念的な接続線に対応する作用力線28に対するヒンジ軸19の位置は、シフト装置26によって、好適には作用力線28に対してほぼ直角に延びる方向で、そこに向かうように、および、そこから離れるように移動可能である。
【0023】
図4aは、アクチュエータ4の斜視図であり、伝達機構11の多様な作動位置を設定するためのシフト装置26の領域は、枠で囲まれて示されている。図4bは、その詳細な領域を拡大して示しており、図4bのヒンジ軸19の位置は伝達機構11の第2の作動位置に対応しており、この場合にはバネ装置9の作用力は、前述の作動アーム6の直前の開位置(好適には5°以上の開角度)から開動作関係で作動アーム6に作用する。図示の実施例では、シフト装置26は調節ネジ27を含んでおり、それによってヒンジ軸19の位置を調節および/または固定できる。調節ネジ27は、レバー30の好適にはスロット形状であるガイド29内で移動可能に取り付けられており、調節ネジ27の移動性はガイド29の外側輪郭および長さによって制限されている。図示の実施例では、調節ネジ27は固定ネジ27の形態であり、ヒンジ軸19の位置を調節するために、調節ネジ27が先ず解放され、ヒンジ軸19の位置が予め決められ、その後に調節ネジ27は再び締め付けられる。本発明によれば、調節ネジ27の回転運動は、例えばセルフロック式ウォームトランスミッション、偏心および/またはラックピニオン構造などによる伝達機構(ここでは図示せず)によりヒンジ軸19の直線運動へと変換されることは理解できよう。
【0024】
一方、図4cは、伝達機構11の第1の作動位置に対応する調節ネジ27またはヒンジ軸19の、図4bと比較して移動した位置を示しており、この場合には、バネ装置9は閉位置および前述の作動アーム6の直前の開位置において作動アーム6に閉作用力を及ぼす。図4bと比較した調節ネジ27の位置は、ガイド29の他方端にあり、よってヒンジ軸19の位置も上昇し、作用力線28(図3a)からさらに離れる。
【0025】
図5aは、ヒンジ軸19を調節するためのレバー18と30との間で作動可能なシフト装置26を示している。組み立てられた状態では、レバー18は、移動する軸部材17によって方向変更レバー12(図4a)に接続されており、一方、レバー20の移動する軸部材22は、主レバー21(図3aおよび図3b)に接続されている。レバー30は収容体に対して固定された軸部材20周囲で旋回可能に取り付けられている。調節ネジ27を解放し、それをガイド29に沿って予め位置決めすることで、ヒンジ軸19の位置を調節でき、よってアクチュエータ4の異なる作用位置を設定できる。調節ネジ27の位置決めが行われた後で、調節ネジ27を締め付けることでヒンジ軸19の位置を再び固定できる。
【0026】
図5bは、図5aに示す部材の分解図である。ヒンジ軸19には、旋回部36をレバー18に接続するピン31が取り付けられている。旋回部36は別のピン33によってレバー30に旋回可能に取り付けられている。組み立てられた状態では、調節ネジ27はレバー30のスロット形状ガイド29を通過し、旋回部36の対応する開口部37に係合する。さらに、この構造は(主レバー21への接続のための(図3aおよび図3b参照))軸部材22に取り付けられたピン32、および(レバー30をアクチュエータ4の収容体5に接続するために)軸部材20に取り付けられたピン34を有している。ヒンジ軸19に取り付けられたピン31は、レバー30の好適には湾曲したガイドトラック38(図5a)内またはガイドトラック38に沿って制限的に移動可能に取り付けられており、好適には予め設定された位置においても、調節ネジ27の調節によって位置決めできる。
【0027】
図6は、作動アーム6の開角度(α)に応じて作動アーム6に作用する作用力(F)のグラフを示している。曲線(A)は、伝達機構11の第1の開位置を例示的に示しており、作動アーム6の閉位置(α=0)では、作動アーム6に閉作用力が作用し、5°の開角度で、作動アーム6に作用力も作用し、よって、フラップ扉3が、最終閉領域における閉動作において閉端位置へと引っ張られ、所定の閉作用力で閉端位置で保持される。
【0028】
曲線(B)は、伝達機構11の第2の開位置の可能性を示しており、作動アーム6の閉位置(α=0°;α=5°)で、バネ装置9によって開作用力が作動アーム6に作用し、よって、開作用力が開角度範囲全体にわたって作動アーム6に作用する。
【0029】
曲線(C)は、伝達機構11の修正された第2の作動位置を例示的に示しており、作動アーム6の閉位置(α=0°)では、第1の開位置での曲線(A)と比較して小さい閉作用力が作動アーム6に作用し、よって、確かに作動アーム6が閉位置に保持されているが、死点位置の通過後(α=5°の開角度から)、バネ装置9の作用力によって開位置の方向に移動される。開動作は5°で既に実行されている。
【0030】
シフト装置26は作動アーム6の停止状態にてそれぞれの開位置を転換させる。移動可能なヒンジ軸19の位置は、それぞれの作動位置に対応する2以上の所定の位置またはラッチ位置においても固定でき、調節ネジ26によって、フラップ扉3のそれぞれの重量に応じて、その場での微調節も可能である。フラップ扉の重量を補償するために作動アーム6に作用するバネ作用力の調節は、図2に関連して解説した調節装置15によって実行され、作動アーム6に接続されたフラップ扉3がそれ自体によって上方に旋回せず、バネ装置9の予め設定された作用力によって開位置において定位置に保持されるよう、作動アーム6へのバネ装置9の作用力も調節できる。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6